作品名 作者名 カップリング
「錯綜」 乖離氏 -


その日の放課後、私は図書館のドアをくぐっていた

「あ、アヤナちゃん、さっそく課題の調べ物?」

受付の的山さんが、座ったまま私の方を向いた

「ええ、にしても人がいないのね」
「うん、本当にみんな本読まないよ〜」

見回してみても私たち以外、本当に人がいない
図書委員の顧問の先生も、普段は閉館時間の時にくるだけだ

「この5年間の社会環境の変遷、って随分漠然としたテーマよね」

社会科の授業の課題だが、どんなテーマに絞るかは個人の自由だった
クラスの男子の中には阪神タイガースの変遷をテーマに選んだ子もいたくらいだ
先生は苦笑していたが、やる気はあるようなので許可したのだろう

「アヤナちゃんは何を調べるの?」
「そうね、とりあえず新聞の縮刷版ってあるでしょう?  あれを見て何かテーマを探そうかなって」
「あ、それならあっちの一番奥だよ ちょうど五年分までは棚に並んでるから」

的山さんが嬉しそうに答える
せっかく何処に何があるか覚えても、それを生かす機会が無いって、つまらなそうに言っていたっけ

でも、本当は私も知っている
それが一番奥の、人の目が届かない所にあることを

がらっ・・・・・
またドアが開いて、二人目の利用者がやって来た

「あ、小久保君もなんだ〜 やっぱり調べ物?」

利用者が倍増して的山さんは、ますます嬉しそうだ

「うん、ほら、昔の新聞をまとめたやつあっただろ? あれ見て、よさそうなの決めようと思ってさ」
「あ、そうなんだ? アヤナちゃんもそれ見て決めるって言ってるよ」
「そうなんだ?」

彼が私の方を向いて尋ねる

「そうよ 小久保君に真似されちゃったわね」
「真似じゃないだろ」

ちょっとむっとした表情でやり返してくる


「あ、新聞のやつはあっちの一番奥だよ、小久保君」

さっき言った事を的山さんがまた口にする
本当に毎回暇で、説明したくて仕方なかったみたいね

「じゃあ、早速見てみるか」

的山さんの指差した方に彼は足を踏み出す
私も、仕方ないわね、という素振りで後に続いた

「あ、人の目が届かないからって、おかしな事しちゃ駄目だよ、二人とも」
「!? お前、またメガネに変な事吹き込まれたろ?」

背中の方から聞こえた声に彼は振り向かずに答える
ちょっと声のトーンが変わったみたいだ

長い書架の端まで行って曲がると、部屋の隅に少し付け足したようなスペースがある
そこに縦に長い棚が付け足され、新聞の縮刷版はそこにきっちりと収められていた
ここは完全に物陰になり、すぐそばまで来ないと本当に人がいるのは見えない

「じゃあ、一番古いのから・・・」

上の方にある2000年の号に彼が手を伸ばす
その手を私は制するようにつかんだ

「本当に調べ物しに来たの? 小久保君」
「少しはした方がいいんじゃないのか」
「あなた、結構役者よね 偶然のふり、結構上手だったじゃない」

彼の問いかけを無視した私の言葉に彼は気まずそうな表情を見せる
そう、二人で示し合わせてここで落ち合う事にしていたのだ
いや、示し合わせたというよりは、彼は私の指示に従って行動したと言った方が真実に近いと思う

何のためかは言うまでもない
彼との行為を楽しむのに、ここはうってつけの場所だと思ったからだ

「なあ、本当にするのか? 向こうに的山がいるんだぞ」
「だったら来なければいいのに、ねえ? わざわざお芝居までして、しっかり来ちゃってる」

私の言葉に、彼はまたいつもの困惑の表情を浮かべる
何度見ても飽きない、彼のこの表情
私の顔にはついつい笑みが浮かんでしまう

今日は的山さんが当番なのは勿論知っていた
ひょっとしたら躊躇するかも、とは思ったけど、結局彼はこうして私の前にいる


「トイレとかとは違うだろ? こんなところでなんて」
「そうね、今までと同じようにはいかないわね」

ぎゅ・・・・
彼の手を更に強く握る

とく・・・とく・・・とく・・・・
彼の脈を感じる
段々と早くなってるような気がする

「今日は、あなたがして」

高揚する気分を抑えながら、淡々と命じるような口調で彼に懇願した

「俺がって・・・」
「ここで出すわけにはいかないでしょ? この前みたいに、あのどろどろした熱いの、いっぱい」
「よせよ、そんな事言うの」

彼がさすがにちょっと顔をしかめた
勿論、私もわざと露骨な言い回しをしたのだけど、彼はそこまで気づいているのだろうか

「だから、今日はあなたがして 」

念を押すように、手に力を入れてもう一度同じことを口にする
それでも彼にはまだためらいがあるようだ

ぐっ・・・
彼の手をそのまま自分の方へ引き寄せる
そのまま、その手を下に向け、スカートのすそから中へ導きいれた

「あ・・・その・・」

彼のうろたえた様な言葉には構わず、そのまま内股のあたりを撫でさせる
少し汗ばんだ彼の手の温かさがじかに伝わってくる

私はゆっくりと、彼の手を掴んでいた自分の手を離す
彼の手はそれでも私の脚に触れたままだ

「若田部・・・」
「する気になったみたいね? いいわよ、もっとあなたのしたいようにしても」
「いや、したいようにって言われても」

彼の手はためらうように、私の太股のあたりでうろうろしている
それだけでも私の鼓動は今まで感じた事がないくらい高まっているけど

「もっと上・・・」
「え?」

彼が聞き返す
何を言ったか聞こえなかったはずが無い
あくまで確認のはずだ

「もっと上・・触って、こんな風に」

一度は離した彼の腕を掴むと、そのまま上に押し上げる
彼の指が、下着越しに私の一番敏感な部分に押し当てられた



彼の手のひらの上に自分の手を重ねて動かす
彼の指が、私の肉の裂け目に沿って前後に往復する

「ん・・・あ・・・・」

思わず声がもれてしまう
こんなまだるっこしい刺激でさえ、背筋をぞくぞくするものが駆け抜ける
自分でもいやらしい声だな、と思ってしまう

「若田部、もうやめよう、な?」

彼の言葉を無視して、私は彼の指を自分のショーツに押し付け動かし続ける
彼の指、傍でみると結構細くてきれいだと思っていたけど、やっぱり男の指だ
じかにこうして触れると、やっぱり芯の方から太くできてる気がする

「やめない・・・やめるなんて許さないわよ」
「でも」
「どうしてもやめるなら、このまま的山さんを呼ぶわ」

彼はそれ以上答えなかった
そして、自分の意思で、ぎごちなくはあったけれど、その手を動かし始めた

くにゅ・・・・
割れ目の上の肉の芽に、彼の指の腹が刺激を伝える
自分でするのとさして変わりは無いはずなのに、私の体がその刺激を
普段の何倍にもむき出しで感じているように思えた

「ねえ、二人とも順調かな〜? 何か手伝わなくていい?」

いきなり的山さんの声が耳に飛び込んできた
彼の体が、文字通りびくん、と思わず反応してしまったのが分かった

「ああ、大丈夫だ 何か手伝ってほしいときは呼ぶから」
「そうなんだ〜? アヤナちゃん、小久保君におかしな事されてない〜?」
「大丈夫よ、でも何かあったら助けに来てね」

距離を置いて、私たちは大きな声でやりとりをする
言葉だけ聞いてると、なんて間抜けなやり取りなんだろう

「ん・・・はあ・・・」

普段と逆の立場で、私の方がちゃんと言葉が出ない
でも、何とか息を整えて、小久保君に語りかける

「ねえ、本当に的山さん呼びましょうか・・?」
「何言ってんだ」
「だって、おかしな事されちゃってるわよ、私」


ぐに・・・
その瞬間に彼の指に力がこもって、強い刺激が肉芽に伝わる

「んあっ!・・・・」
「ごめん、痛かったか?」

私の瞬間的な反応に彼も慌てたようだ
強気に転じられないところが、彼らしい
だからこそ小久保マサヒコなのだろう

「本当に的山さん来ちゃうわよ、もっと上手にしないと」
「だって若田部があんな声」
「今度は直にしてみて」
「じかに、って・・・?」
「分からないなら、また手取り足取りで教えないと駄目かしら?」

ごくん・・・・・
本当に音を立てて唾を飲み込むと、彼は黙ってうなづいた

彼の手はショーツの上側からすべるように、その中に潜り込んでくる
手のひらが陰毛をならすように密着し、指が割れ目に沿って被さるように触れる

くにゅ・・ぐにゅ・・・・
初めは遠慮がちに、でもやがて大胆に指がうごめいて
私の体の固く閉じていた入り口をほぐしていく

自分の理性も、その徐々にゆるんでいく口からだらしなくこぼれて行くような気がする

彼もほとんど言葉を口にしなくなった
ただ手だけが彼の意思そのもののように、なまめかしく蠢いている

「ねえ・・・今、ショーツの中、どうなってるか言ってみて」

彼は答えない
ただ、彼の手が触れているところからは、ぬめった触感が伝わる
私の体の中から、彼を受け入れる意思を示している

「あなたの指、入れてみて・・・そのまま」
「若田部、いいのか?」
「うん・・・簡単でしょ? 指一本曲げてみるだけでしょう」

つぷ・・・・
彼が指の一本を曲げて、その先を私の入り口にあてがうのがわかる



「・・・・」
つぷぅ・・ちゅぷぷ・・・
彼は目線だけを向けると、そのまま指を中へ突き入れて来た

予想以上に? いや、私の期待した通りにすんなりと
彼の指が私に中に上向きに埋まって行く

「っ・・・・ん・・・んあっ・・・」

本当に言葉にならない、うめくように声がもれて
他人の一部が自分の中に入ってくるのを私は感じていた
自分の指とは比較にならない、この不安定なで渦巻くような感覚

ちゅく・・・ちゅく・・・・

潤った通り道を彼の指が往復する
結局、やる気になってるじゃないの、小久保マサヒコ君
ちょっと上気した彼の、夢中になった表情
あの当惑したときの表情とも違う、もちろん普段の淡々としたそれとも違う

「あ・・・・はあ・・・・・」

本当に声しか出ない
両手で彼の肩につかまり、なすがままの状態に自分を置いてみる
彼の意識はただ私の中に出入りする自分の指だけに集中しているようだ

ちゅぷ・・じゅぷ・・・
卑猥な感触と共に、彼の指が私の中をかき混ぜて

「若田部・・すごいな、お前・・・」
彼のその言葉だけで、私の中で我慢していたものが一気に堰を切って流れ出す
背筋を下から上に痺れるような感覚が走り抜ける

「・・・・・っ!」
ぎゅううっ
彼の肩を掴む手に力が入って、気が付けば体が崩れそうになるのを必死にこらえていた

びくっ、びくっ・・・・・・
私の体が震えるのを感じて、慌てて彼は指の動きを止める

「ご、ごめん、大丈夫か?」

あ、何かいつもの彼に戻ってしまったみたいだ
ばつが悪そうに心配する彼の表情、これも嫌いじゃなかったりはするけど

ぬるっとした感覚を残して、彼が指を抜いて、手を下着の中から取り出す
指先がいやらしくてらっているのがはっきり分かった

「すごいいやらしいわね、それ」
「でもこれは、若田部、お前の・・・」
「あなたがしたのよ、小久保君、それは」
「・・・・・・」

そう、その困ったような表情
それが見られるんなら、もっといくらでも好きなようにさせてあげる
今日は、加えて今まで見た事のなかったカオも見られたし



「ねえ、まだ調べ物してるの二人とも?」
ぱたぱたと音をさせて的山さんが近づいてくる

「ああ大体終わったよ」
彼は咄嗟に手を後ろに組んで、そ知らぬ顔で答える
今日は彼の役者振りが見られて、何か楽しい気分だ

「ふ〜〜ん、じゃあテーマは何にしたの?」
「え? それは秘密だ、まだ」

調べてないんだから答えられるわけが無いわよね
役者としてはまだまだかな

「私はもう決めたわよ 幼稚園・保育園を取り巻く環境の変遷、こんな感じで」
「へ〜、さすがアヤナちゃんだね 小久保君見習うべき」

もともと興味があって調べていた事を口にしただけなのだけど
これで、その場は誤魔化せたと言う事でいいわね

ずるいぞ、と言いたそうな顔で彼がこっちを見ている
恨みがましい表情も、これはこれでいいかも、と思ってしまう

「じゃあ、俺は先帰るよ」
カバンを手に取ると、彼はそそくさと図書館を後にする
かえってわざとらしい様な気もするけど、まあこんなものかな

「じゃあね〜、小久保君」
的山さんは彼に声をかけると、受付の帳票の片づけを始めた
私もそろそろ帰ることにしよう




「じゃあ私も帰るわね、的山さん また明日」
「あ、ちょっと待ってアヤナちゃん」

その呼びかけに私が振り返ると、彼女は後片付けをしながら尋ねてきた

「ねえ・・・いつからあんな事してるの?」

言葉がすぐに出てこなかった


「・・・何の事?」
「あの辺って、周りからも見えないけど、逆に近くまで誰か来ても見えないんだよ」

かちゃ・・・
彼女は帳票を棚にしまうと鍵をかけた
ちょっと古めかしい形の鍵の音だけが妙にはっきり耳に響く

「あなたはどうしたいの? 的山さん」
「どうしたいとかじゃないよ ただどうしてって思ったから」
私の問いかけに彼女はこちらを見ずに答える

「私がしたいから、っていう答じゃだめなのかしら?」
「・・・・・よく分かんない、でも・・」

彼女の動揺が言葉の端から伝わってくる
小久保君の前では何食わぬ顔をしていたのに

彼女の方が役者としてはずっと上手だったわけね

「次の当番の日はいつなの? その時に教えてあげるわ、あなたの知りたい事」

私は何でこんな事を口にしているのだろう
人に知られちゃいけない秘密のはずだったのに、何故だろう、気持ちが昂ってくるのが分かる
どこかで、こうなることを望んでいたのだろうか

自然と私の口元に笑みが浮かんでいた・・・・・

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