作品名 |
作者名 |
カップリング |
「衝動」 |
乖離氏 |
マサ×アヤナ |
8月も終わりを告げようとしている日の夜
まだまだ寝苦しくなるような暑さの中
唐突に振り出した夏のにわか雨が,公園の遊具を叩き、水しぶきを跳ねさせている
大粒の雨は、公園の奥の茂みの中にも容赦なく落ちてくる
そして、その茂みの中で私はレインコートを脱ぎ捨てて、一糸まとわぬ姿になる
ざああああ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私の体に降り注ぐ雨粒は、あるものは弾け
あるものは、私の体に沿って流れ落ちていく
曲線の多い私の体を水滴が伝って流れ落ちる様は
我ながらなかなかにいやらしいと思う
ぐいっ・・・
私のコンプレックスの素でもある胸を、自分で下から持ち上げてみる
普段の自分が忌み嫌う、男に媚びる様なポーズをとってみると
雨粒が乳房の上を糸を引くように流れるのがよく見える
とことん下卑た、いやらしい想像が私の頭の中をかけめぐり
激しい雨音だけでなく、自分に近づく足音も聞こえなくさせていたに違いなかった
「わか・・たべ?」
彼の声が聞こえる
こんな時に一番会いたくなかった・・・
いや、本当は一番この姿を見てもらいたかった相手なのかも
「小久保君・・?」
私は、生まれたままの姿で彼の方に向き直った
確かに彼だ
呆気にとられた表情でこちらを見つめている
「い、いや、その・・・昼間買うの忘れた雑誌を買いに出かけて・・
そしたら、雨が・・・・だから、公園のトイレででも雨宿りを・・」
彼は目をそらして、聞かれもしないことを懸命にしゃべっている
本当なら立場は逆のはずなのにね
公園の公衆トイレの脇には自転車が立てかけてある
彼の言うことは本当に違いない
「何で? ・・・・何でこんな事してるんだ?」
「知りたいの?」
聞き返してきた私の反応が、彼には意外だったようだ
「て、言うか・・やっぱ良くない、と思う 危ないし・・その、上手く言えないけどさ
と、とにかく・・・お願いだから何か着てくれ」
脱ぎ捨てたレインコートを私に羽織らせると
彼は私の手をとって公園のトイレに駆け込んだ
カーテンで囲まれた障害者用トイレの広いスペースに入ると
私はその蓋を下ろしてその上に腰を下ろした
彼は困惑した表情のまま、その脇に立っている
「な、なあ、若田部・・・なんでこんなこと・・・
ひょっとして誰かに無理矢理させられてるのか?」
「何でそう思うのかしら? 私が好きでやってるとは思わないの?」
私の言葉に、彼の困惑は深まったようだ
「でなきゃ・・あ、ひょっとしてあのメガネに何か変な事吹き込まれたんじゃ・・・」
とうとうお姉さまのせいにしちゃいますか
たとえ尊敬する人でも、私は盲従するような人間じゃありません
「違うわよ でも、敢えて言うなら・・・」
「何なんだ・・?」
「全部あなたのせいなんだから そう、あなたの」
強い口調に彼はとまどったようだった
当然だ、私の言ってる事は私の中で完結している理由でしかないのだから
「そう、私ね、これ・・・一年生の時まで、昔からずっとしてたの 」
クラスの中でどこか浮く事の多かった私は
小学校の・・そう、5年生くらいの頃からだろうか
ストレスの捌け口をこんな歪んだ行為に求めるようになっていた
きっかけは何だったのだろう
兄が持っていたHな雑誌だったか、それと偶然アクセスしたその手のサイトか
今となっては、何が始まりだったかなんてどうでもいい事だ
初めは、わざと小さくなった古いスカートを履いてみたりするところからだった
短いスカートの下から下着が覗くのを、誰かに見られるかも・・・
そんなところから始まった行為が、エスカレートしていくのに時間はかからなかった
いつ誰に見られるか分からない中で、自分の体を曝け出して・・・
この恐怖を伴った行為の最中には、なぜか自分の中のもやもやしたものが
溶けて流れていくような感覚を味わうことができた
この,変態と言われても仕方の無い行為への欲求が影を潜めたのはいつ頃からだったのか
そう、それはあなたたちと関わるようになってから・・・・
あれ程憎らしく思えた天野さん・・・・
自分と接点があるとは思えなかった的山さん
中村のおねえさまや、濱中先生
そして・・・小久保君、あなたよ
あなた達と接するようになって、不思議なくらい心の中のわだかまった物が
きれいに消えてゆくのが自分でもよく分かった
あなたたちには感謝してるわ、
この事は嘘じゃない・・・・
でもね、そうやってあなた達と・・
いや、あなたと近しくなっていく内に
また、あの衝動が私の中に湧いてくるようになった
あなたが天野さんや、濱中先生と楽しそうに話しているのを見ると
何か不快な、もしゃもしゃした嫌な感情がこみ上げて来る
それだけじゃない、あなたと天野さんのいやらしい行為を想像したりもする
想像の中のあなたの相手は、濱中先生や的山さんに変わる事もある
馬鹿げてるとは思う でも、ひょっとしたら、あなたがそんな事してるんじゃないかって
想像しただけで何かおかしくなりそう
でも、そういう想像をするのがやめられない
いや、そういう想像をしているときの興奮にも似た気分が私は好きだ
正直に言ってしまうと
不快な筈なのに、止められない想像
そして、この感情を鎮める為、御無沙汰だったこの行為を再開するのに
大して時間はかからなかった
「あなたも脱いで小久保君・・・・恥ずかしいなら下だけでいいわよ」
当惑したその表情も好き
何か、妙にぞくぞくするところがある
あなたは自分では気づいてないでしょうけど
私はあなたが好き・・・
いや、好きとかじゃない、あなたに欲情しているって言った方がいいのかも
やっぱり、私はすごいいやらしい女なんだ
「どうしたの? 早くして でないと、大きな声出して、人を呼ぶわよ」
もちろん、そんな事を本当にするつもりは無い
ただ、踏み出すためのきっかけが欲しいだけだ・・・
羽織っていたレインコートを再び脱ぎ捨て
躊躇する彼の前で、しゃがんだ私は
服に手をかけ、ゆっくりと彼の下半身を露出させていく・・・
やっと、望んでいたことが現実の物になるんだ・・・
私は今まで味わった事の無い昂揚を抑えることができなかった・・・・