作品名 作者名 カップリング
若田部スタイル ドミンゴ氏 アヤナ×マサヒコ

「お――い 委員長、花持ってきたぞ」
「ああ ありがとう 綺麗、百合の花ね」
「へー そうなんだ」
「緑化委員でしょ それくらい覚えときなさい」
 こんなどこかでしたような会話をしてマサヒコは教卓の上に花を置くと、近くにあったイスを引いて腰を下ろす。
 ポンポンッと黒板消しを窓際で叩いていたアヤナが振り向いた。
「あら? もしかして小久保くん、今日ヒマ?」
「……うん、よくわかんないけど、急にヒマになった」」 
 本当なら今日は家庭教師の日のはずなのだが、大人の都ご……もとい事情により急遽オフになっている。
 どんな事情かを問いただそうかとも思ったのだが、ガンを飛ばされたのでマサヒコは怖くて聞けなかった。
「なら、今日ちょっと付き合ってもらえる」
「ああ、べつにいいけど」
 普通はこの年頃の男子が女の子からこう言われれば、『それってデートじゃ?』と勘違いしてもよさそうなものだが、男女の機微に
疎いマサヒコは、照れるそぶりすら見せずにあっさり了承した。
 もっとも、誘ったアヤナの方は十分意識しているのか、
「一応言っておくけど、夜店で貰った金魚のエサとかその他諸々買った荷物持ちよ、誤解しな……ゴホゴホッ」
 黒板消しを盛大に叩きながら、取って付けた様な説明口調で捲くし立てる。
 後ろにいるマサヒコからは、アヤナがチョークの白い煙幕に包まれて見えなくなった。
「それはいいけどさ、もっと軽く叩けば?」
 そんなことはアヤナだってわざわざ言われなくてもわかってる。
 でもそうしないと、いくら鈍いマサヒコにもバレてしまうような気がするのだ。頬がうっすらと赤く染まってるのに……。

“ガタンッゴトンッ ガタンッゴトンッ……”
「わざとじゃ……ないよ……」
「……ええ……わかってるわ」
 お互い小声で話しているのだが、はっきりと聞こえる。
 二人の身長はさほど変わらないので、マサヒコが口を開くたびに、アヤナの耳元には息が掛かってくすぐったそうだ。
 なんでこんな意味深な雰囲気で、二人が会話をしているかといえば……。

 乗ったときはまだガラガラだった電車内も、一駅、二駅と通過する内に人でごった返してくる。
 マサヒコも頼りないとはいえ男の子、アヤナを周りの乗客から守ろうと強引に壁際に移動させたのだが、それがどういうわけだか
後ろから抱きつくような形になってしまい、二人はぴとりっと身体をくっつけ合っていた。
 朴念仁のマサヒコも流石にこの体勢はマズいと思ったのか、なんとかしようと壁に手をついて身体を離そうと試みてはいるのだが、
“グググッ……グゥッ……ググッ………カクンッ………”
 フィジカルの弱さを露呈するように、圧力に負けて虚しい腕立てをくり返す。
 それでも珍しく根性を見せて何度もトライして、その数だけマサヒコは現実の壁を味あわされていた。
 まぁもっとも、マサヒコが味わっているのは無力感だけではない。
 身長が変わらないということは、腰の位置もほとんど同じな訳で、結果的にマサヒコは何度も何度もアヤナのお尻の谷間に股間を
擦り付けていた。
 そして身体は生涯で男女問わず一番敏感な時期だろう。本人の意志とは関わりなく、恐ろしい速さで血液をある一点に集めてしまった。
 (げッ!? ヤバい……収まれ収まれ……ほんと収まれ……)
 いくらマサヒコが必死に念じても、この部位だけは従ってはくれない。
 意識すればするほど股間の体積は増していき、マサヒコの願いも虚しく完全に勃起してしまった。
 (……どうしたら……いいんだ?)
 このまま腕立てを続けるべきか、それとも動かずに股間が大人しくなるのを待つべきか? マサヒコが思案してると、
“ぴくんッ……”
 アヤナのお尻が微かに揺れる。
 当たり前だが、アヤナもこの事態には気づいていた。と、ようやくここで冒頭の会話になる訳である。

「あの、すぐ、その、大人しくさせるから」
「……うん」
 アヤナが小さくコクンッと頷く。年齢よりも大人びた顔は耳まで真っ赤で、普段よりも大分幼い印象を与えていた。
 そんなアヤナをガラス越しに眺めながら、マサヒコは待ちの構えに入る。
 これ以上アクションを起こしても無駄なのは、腕立て伏せでイヤというほど思い知らされた。
 (まぁ果報は寝て待て、なんて濱中先生も言ってたしな)
 腕の中にすっぽりとアヤナを抱きかかえながら、心の中ではアイを思い浮かべる。‥‥考えてみればマサヒコはずいぶんと失礼だ。
 アヤナの柳眉が僅かに跳ねる。こういったときの女の子の勘は、男であるマサヒコが思ってるよりもずっと鋭い。
 心の中ではムクムクと対抗心……を装ったなにかが鎌首をもたげていた。
 (どういう了見かしらねぇ、小久保くん……私を無視しようなんて……どんな女か知らないけど、こっちを……私を見なさい!!)
 人はそれを嫉妬というのだが、とにかくカァッとなったアヤナは大胆な行動にでる。
 マサヒコの股間の勃起を中心に、円を描くようにゆっくりと少しずつ、アヤナはお尻を蠢かせた。
「え!?」
 ガラスに映るマサヒコが驚いた顔でアヤナを見る。その視線から逃げるようにアヤナは顔をうつむかせた。
 これ以上は赤くならないと思っていた顔には、さらに羞恥の色が上塗りされる。
 勢いとはいえ中学生の女の子がこんな“ハレンチ”なことをするのは、それこそ顔から火が出るくらいに恥ずかしいはずだ。
 それが心憎からず想っている相手ならばなおさらである。
「ちょ、い、委員長!?なに……」
「いいよ……」
 小さな、それでもすでに覚悟を終了させている声が、マサヒコの言葉を遮った。
「はい?」
「……お、大きくしても……い、いいから……」
 アヤナは声を上ずらせながら、マサヒコの勃起をお尻でこねまわす。それでマサヒコには、ようやくアヤナの言葉の意味が呑みこめた。
 (大きくしていい……って、そ、それはつまり、まぁその……いやでも……でもなぁ……)
「……小久保くん」
 煮え切らない思考の堂々巡りをくり返すマサヒコは、切なそうな声に呼ばれてハッと顔を上げる。ガラスのアヤナと目が合った。
「お願いだから……おっきくして……」

“プツンッ……”
 そんな音が聞こえるわけはない。でも、確かにマサヒコは自分の中で、なにかが切れる音を聴いた。
「あ……」
 アヤナの腰をつかむと、マサヒコは強引に勃起へと引き寄せる。
 自分で誘っておきながらなんだが、アヤナは初めて見るマサヒコのワイルドな一面に、怯えたように身体を震わせた。
 そして、そんなオドオドしたアヤナを見たのはマサヒコも初めてで、牡を意識したばかりの少年の蒼い劣情を激しく煽る。
 荒い息遣いでアヤナのうなじに顔を埋めた。
「んふぅッ……」
“すぅ――ッ”
 息を一杯に吸い込むと、ふわりと髪から漂う仄かなシャンプーの匂いが、微かにする少女の体臭と混ざって少年の鼻孔をくすぐる。
 熱い吐息を後れ毛に感じて、アヤナは可愛らしく首を捻ると、指を噛みながら鼻に掛かったうめきを漏らした。
 マサヒコは肩口から窓ガラスに映るアヤナを覗き込む。
 なにかを堪えるかのような同級生の少女に、ゾクリとしたものを感じたとき、
“ぐにゅんッ……”
「んぁッ!」
 制服の胸元を待ち上げる中学生にしては発育の良すぎる双球を、マサヒコは両の手でわしづかみにしていた。
 反射的にアヤナはその手をつかむが、抵抗は形だけのもので振り払おうとはしない。
 乳房は童貞少年に、好き放題に弄り回されていた。
 未成熟の乳房は強く掴まれるとまだ痛みが走るのだが、マサヒコの好奇心を満たすかのような触り方にアヤナは喜びも覚えている。
 (小久保くん……女の子に全然慣れてない……私が初めてだったら……嬉しい…………かな……)
 そうやって乙女チックなことを考えながらも、アヤナのお尻はくねくねと右に左に揺れて、まるでマサヒコの益々昂ぶる勃起を
焦らしているかのようだ。
 中村がこの場にいたなら『将来有望』と褒めてくれるかもしれない。
 うなじに掛かるマサヒコの荒く熱い息遣いと、アヤナのお尻を執拗に追い回す勃起の硬さもそれを証明していた。
 ただ、いくらアヤナの身体が魅力的でも、電車内ではマサヒコはこれ以上の刺激は得られそうもない。

(気持ちいいんだけど……これじゃ…これだけじゃダメだ)
 これでは生殺しである。そんなマサヒコを神が哀れに……は思ってないだろうが目の前のドアが開いた。
「わぁ!?」
「きゃ!?」ッ
 二人は前のめりに倒れそうになりながら、もつれ合って外に出る。
その様子は周りの人達からは、微笑ましい中学生のカップルに見えただろう。
「委員長、ここで降りよ」
「あ!? ちょ、小久保くん!?」
 この駅の近辺にはペットショップはないかもしれない。それでも……マサヒコはアヤナの手を握って引っ張るように歩き出す。
「早く……早く二人っきりになりたい」
「あ……」
 これがいまのマサヒコの、偽らざる気持ちだった。

「ねぇ、小久保くんどこかに……どこか行くあてはあるの?」
「……うん……まぁ……」
 息を弾ませながらそう聞いてくるアヤナに、マサヒコはなんとも頼りない返事を返した。
 二人が電車を降りてからそろそろ三十分は経ってるが、この辺りに土地勘のないマサヒコにそんなものがあるわけがない。
 駅の周辺をひたすらウロウロするのがそれを証明していた。
「ふぅ〜 小久保くん、ちょっと一息入れない?」
 握られている手にキュッと力を入れるとアヤナは足を止める。洒落たセンス、を僅かに外してしまった喫茶店の前だ。
 そのとき『これぞ天啓』というものか、喫茶店を見るマサヒコの頭の中には画期的な(実際は穴だらけな)プランが浮かぶ。
「うん、清潔そうな店だし、これならいいよな」
「? よくわからないけど、じゃあ入りましょう」
 アヤナの中ではもうとうに、思春期特有の過剰なまでの性欲は去っていた。
 こうやって男の子と手をつないで歩き、喫茶店でお茶をする。PTAが推奨するような、清く正しい男女交際だけで充分満足している。
 マサヒコの中ではというと、全然まったく満足していなかった。それは心の中が見えずとも、股間を見ればわかる。
 そこはズボンの布地を突き破りそうなほど元気に膨らんでいた。
 過程を楽しめる女性と、そんな余裕のない男性の差が、中学生の時点ですでにはっきりと出ている。
“カララ〜〜ン”
 軽やかな音をさせて喫茶店の扉を開けると、ウエイトレスのおばさんが中学生のカップルを営業スマイルで出迎えた。

「いらっしゃいませ」
「二人で……」
「こちらのお席へどうぞ」
 通された席に着くなり、マサヒコは自分の注文をすると席を立つ。
「ちょっとトイレ見てくる」
「あ、うん」
 手持ち無沙汰でアヤナが一人取り残されるが、すぐにマサヒコは戻ってきた。
「来て……」
「え、ちょ、なに!?」
 アヤナの手を取ると、マサヒコは店の奥へとズンズン歩いていく。
“カチャッ……”
 扉を開けてアヤナを押し込むように先に入れると、マサヒコは後ろ手に鍵を掛けた。
「小久保くん?」
「ごめん……こんなとこしか思いつかなかった」
 振り向かせたアヤナを抱きしめると、熱に浮かされたような声で耳元に囁きながら、股間の勃起をスカートの上から、恥丘にグリグリと
擦り付けてくる。
「さっきの……続き……」
「え?………あ……」
 気づいたときには、もうアヤナの唇は奪われていた。
“カツッ……”
 歯と歯が当たって無粋な音を立てる。唇を重ねる二人はぴくりっとも動かない。
 アヤナの目が驚愕に大きく見開かれる。
「……あ」
 マサヒコがすぐに唇を離すと、アヤナの口唇は呆けたように半開きになった。紅い舌がチロリッと覗くと、
「んンッ!?」
 開かれたアヤナの唇に、マサヒコは誘われるように再び唇を重ねる。

「ン……む……ん―……」
 マサヒコはさっきよりも強く唇を押し付けると、アダルトビデオやエロ本、そして家庭教師から教えられた怪しげな知識を一つ一つ
 思い出しながらアヤナの白い歯を押し割ると、経験ゼロの舌を口中に侵入させた。
「んむッ……ふぅ……んンッ……んぅ……」
 不器用な口づけを続けていると、やがてアヤナの舌もオズオズとマサヒコの舌に絡めてくる。
 嫌がられているわけじゃないとわかり、マサヒコはちょっとホッした。
 アヤナはぶるぶると身体を震わせながら、指先が白くなるくらいにマサヒコの制服のシャツを握り締めている。
 ただ、震えているのはアヤナだけではなく、
 (ど、どうやって息継ぎしたらいいんだ!? )
 こんなことなら中村の相手をもっとしてやるんだったと、マサヒコはちょっぴり後悔した。
 とりあえず、少し顔を傾けてみる。
「んむぅッ!?」
 アヤナが鼻に掛かった息を漏らす。
 マサヒコのささやかな努力は返って唇の密着度を高めることになり、より深く舌を誘い入れてしまった。
 (く、苦しい……)
 もうお互いあきらかに恥じらいや感動ではなく、呼吸困難で身体を震わせている。
 『だったら離れればいいじゃん』とは思うのだが、なにか相手よりも先に離れると愛が薄いような気がして、二人の間では
思春期にはありがちな、微笑ましくも馬鹿馬鹿しい我慢比べが始まった。
「ううッ……むぅ………んッ………んぅッ……ぐぅッ………」
 顔を真っ赤にさせながらも二人は舌を動かす。どちらかといえば、いまはもうアヤナの舌の方が積極的に動いていた。

 (こ、これは勝負よ……小久保くんでも負けられない)
 攻守はすでに逆転していて、マサヒコの舌は二人の口内を行ったり来たり逃げ回っている。
 アヤナの背中に廻されているマサヒコの手が、タップ寸前、結んで開いてをくり返していた。そして、
「…………ぶはぁッ!!」
 弾かれたようにマサヒコが唇を離す。アヤナの見事な一本勝ちだ。
 (……勝った)
 こんなもで勝ち負けを争ってしょうがないのだが、荒い息遣いでアヤナは満足したように便器に腰を降ろす。
 マサヒコも壁にもたれて、ずるずると床に腰を降ろした。
「はぁはぁ……はぁはぁ……はぁはぁ……はぁはぁ」
 しばらくは二人の荒い息遣いだけが音のすべてになる。
「ふぅ……!?」
 マサヒコが何気なく顔を上げると、アヤナの膝小僧が目の前だ。その奥には……
「委員長……やっぱり勝負に負けたらバツゲームだよね」
「え?……あ、ああ……ええ」
 素に戻ったのか、いまさら気恥ずかしそうに目を逸らすアヤナの膝小僧に、マサヒコはそっと手を置いた。

「それじゃ……何したらいい?」
 マサヒコの手は膝小僧をすりすりしながら、少しずつその範囲を広げていく。
 指先はスカートの中に出たり入ったりと、アヤナがバツゲームを決めるのを“早く早く”と急かしているようだ。
 どんなバツゲームをマサヒコが望んでいるのかは、漠然とだがアヤナもわかってはいる。でも、それだとなんだか釈然としない。
 (勝ったのは私よね?決めるのも私)
 それが勝者と敗者、最も古い秩序が帰結する当然の権利。
「ねぇ、委員長」
 マサヒコの手のひらは、“膝”と呼称するには難しい部位にまで侵入している。手首まですっぽりとスカートの中に消えていた。
 もうそこは、世間一般では“太股”と言う。
 マサヒコの手は太股のなめらかさを味わいながら、女の子の大事な部位を窺っていた。
 じりじりと進んでくるマサヒコの手でスカートは捲れあがり、あと少しで下着が見えそうである。
 無意識だろうが余った手は、大きくふくらんだ股間を抑えていた。
そのなんとも情けないマサヒコの姿に、アヤナの中でバツゲームのアイデアが浮かび上がる。
「……立って」
「え?」
「バツゲーム決めたから……立って」
「だってもう勃っ……あ!?、ああ、うん、わ、わかった」
 マサヒコは慌てて立ち上がった。気をつけてはいたのだが、かなり大人な二人に毒されているのを、こんなときだが実感する。
 ちょうど股間のふくらみは、アヤナの目線の高さだ。

「……見せて」
「へ?」
 自己反省するようにうつむいていたマサヒコは、大きくはないが無視できない力が込められているアヤナの声に顔を上げる。
 アヤナの目線はマサヒコの顔ではなく、べつの部分に向けられていた。
「……小久保くんの……それ………見せて……」
「それ?」
 熱っぽいアヤナの視線を追わなくとも、まぁ、『それ』の正体はわかってはいるのだが、
「これ?」
 その好奇の視線の行き着く先、ズボンをふくらませている『それ』を見下ろしながら、マサヒコはマヌケな返事を返す。
「……うん」
 自分の言葉がどれだけはしたないかは、真っ赤な顔のアヤナも重々承知しているが、目はマサヒコの股間のふくらみに釘付けだ。
 出してしまった言葉を引っ込める事は出来ない。
 ならば恥ずかしさの分だけイケるところまでイカないと損だと、アヤナは開き直りの境地になっていた。
「小久保くん、勝負に勝ったのは?」
「……委員長」
「バツゲームを言い出したのは?」
「……オレ」
「さぁ」
 理論立ててマサヒコに詰め寄るアヤナ。この『さぁ』は、早く脱いで見せてくれという事だろう。
「……うぅ」
「さぁ」
 元々アヤナとこういう事をする為に連れ込んだトイレなのだが、マサヒコの目論んでいた展開とは大分違くなっていた。
 上目遣いでマサヒコを窺っているアヤナは、とても許してくれそうもない。実際アヤナは、
 (困っている小久保くんの顔……カワイイかも……ゴメンね……)
 などと思っているので、バツゲームが撤回される事はない。
「くッ!」
 (よ、よし! オレも男だ!! やったろうじゃん!!)
 マサヒコは意を決すると、侠気の無駄遣いをしているような気もするが、勢いよくチャックを下ろした。
 パンツの前開きに手を掛ける。思わずアヤナは、身体をグッと乗り出してしまった。

 (そんなに期待されてもなぁ……)
 食い入るように見つめるアヤナには悪いが、特別人様に自慢できるような立派なブツではない。
 今更、『ごめん、さっきのナシね』と言える雰囲気ではとうになくなっている。
「はぁ〜〜」
 評価を受ける前から少しヘコんでいる思春期の心など“我関せず”といった感じで、こちらも思春期らしさ爆発の元気いっぱいの
勃起を取り出した。
 マサヒコの勃起は、大きさも形も中学生平均で、特別悲観するほどのブツではないのだが、この年頃のこの部位の会話は、
たとえ男同士であっても国家機密クラスのトップシークレットである。
 他人とは比べるチャンスがない。だからマサヒコは初めて他人に、それも女の子に査定してもらう事になる。
 もっともマサヒコは“女の子”というより、アヤナの評価が男として気になった。
「き、き、……」
「ききっ?」
 アヤナは勃起を震える指先で指しながら、マサヒコが『これは胸張ってもいい反応なのかな?』などと考えた瞬間、
「キャアアアアアア〜〜〜〜〜〜!!」
 店中に轟けとばかりの悲鳴を上げる。
「いいっ!?」
「モガッ!!」
 マサヒコは慌ててアヤナの口元を抑えた。
“ドンッドンッ……”
「どうしましたお客さん!!」
 すぐにウェイトレスのおばさんだろう、ドアを叩いてくる。
「い、いえ、なんでも、あ、そうだ、ウオシュレット、ウオシュレットに驚いちゃって」
「ああ、なんだもう、びっくりさせないでくださいよ」
「すいません」
 悲鳴は女の子なのに、こうして受け答えしているのが男の子でも気にしない、非常にアバウトな店で助かった。
“コツン・コツン・コツン・コツン・コツン………”
じっと息を殺しながら、おばさんの足音が去るのを待って、アヤナの口元から手を離す。
「び、びっびったぁ〜〜」
 マサヒコの額からはドッと汗が流れていた。

「ご、ごめんなさい」
 謝るアヤナの、だがその視線は、マサヒコの股間の勃起に釘付けである。どうやらマサヒコの男の面子は守られたようだ。
 (なにこれ?なにこれ?なにこれ?オ…チン…チン……なの? え!?でも小さい頃見たお父さんのと全然違う!!)
 一時のパニック状態が去ると、今度はアヤナは好奇心いっぱいでジロジロと、マサヒコが気恥ずかしくなるくらいに顔を近づけてくる。
 ここを“亀頭”などと評するのはアヤナも知っている。中々一言で的を得た巧い表現だ。
 グロテスクなのに、どこかしら愛嬌があるというのも両者は一致している。
 すっかり熱心な観察者になったアヤナは、さら勃起に顔を近づけた。もうファーストコンタクトの恐怖心はどこかに吹き飛んだようだ。
「はぁ〜〜」
 勃起を見つめるアヤナは、至近距離で感心したような吐息を洩らす。なにに感心しているのかは、マサヒコには窺い知れないが、
 (い、息がかかって……くすぐったい)
 アヤナにはそんな意図はないだろうが、男にとってこの熱心すぎる観察はヘビの生殺し状態、ソフトな焦らしプレイになっていた。
「こ、小久保くん な、なにか出てきた」
「え?」
 見れば亀頭の鈴口に、ポッチリと先走りの液が透明な玉を作っている。
「なに……これ?……精液……じゃないよね?」
 アヤナも中学生だ。保健体育の授業は受けているので、当然知識はある。しかし百の知識も一の経験に敵わない。
 尿道から出てくるものは、オシッコでなければアヤナには精液以外は考えられなかったが、これは白ではなく透明だ。
 マサヒコは病気では?と心配になる。
 アヤナの表情から、それはマサヒコにも読み取れた。その心配りを無下にも出来ず、マサヒコは仕方なくしたくもない説明をする。
「いや、これはその……気持ち……よくて……その……」
「え? 気持ちいいの……え?、なんで?」
 なにかしたわけでもないのに、なぜマサヒコが気持ちいいなどと言うのかアヤナにはわからない。
「息が、その、息が当たって……」
「息が当たると……気持ちいいの?」
 マサヒコはこれは生殺し状態から抜け出すチャンスだと思った。

「え〜〜っと、その、あの……」
 でもそれを、自分から言い出せないのがマサヒコである。
「もっと……気持ちいい事あるの?」
「アア……ええ……………………………うん」
「言って……言ってくれたら………私するよ……なんでも……」
“プツンッ……”
 本日二度目。マサヒコの中でいい音が聞こえた。
「さ、触ってみて」
「え?」
「これ……触ってみて」
「……うん」
 恐る恐るといった緊張した面持ちで、マサヒコの勃起にアヤナは手を伸ばす。
 細く白い指先が、縦割れの唇にできた透明な玉に触れた。
 勃起に一瞬“ピリッ”とした感覚が走ったが、マサヒコはアヤナを怖がらせないように微動だにしない。
 しばらくするとアヤナの指先が、ぬるぬると透明な雫の玉を、ゆっくりと亀頭に塗り広げるように蠢きだしていた。

 くるくると描かれる円が少しずつ大きくなり、やがて亀頭が妖しく濡れ光ると、アヤナはそっと勃起に優しく指を絡める。
「……くぅッ」
 マサヒコの背筋をゾクッとしたものが走り、洩れそうになる声を、奥歯を噛みながら必死に喉で殺した。
 肛門を締めて、いくらなんでも〔童貞でも〕早すぎる暴発を堪える。
「あ……」
 なんとか早撃ちをしないですんだマサヒコは、勃起を両手で包んだまま、上目遣いでこちらを窺うアヤナと目が合った。
「あの………ここから……どうしたらいいの?」
 アヤナがしゃべる。それだけでマサヒコの背筋にはゾクゾクが何度も走った。
 桜色の唇に向かって、本能のまま思いっきり腰を突き出したい欲求をグッと抑えて、マサヒコはアヤナにお願いする。
「え〜〜〜っと あ〜〜〜っと その…………………………………口…………つけて」
「え!?」
 煮え切らないマサヒコのセリフを要約すると『フェラチオしてほしい』ということだ。
 この種の保存をまるっきり無視した快感のみを求める行為は、全国ン千万人の童貞少年が選ぶ『女の子にしてもらいたい事ランキング』
などというものがあれば、間違いなく上位にランクインするだろう。
 ただこれが……全国ン千万人の純潔少女が選ぶ『女の子がしたくない事ランキング』でも上位にランクインしてしまうのがネックだ。
 当然まっさらの純潔少女であるアヤナは逡巡する。
 マサヒコの起っての願いなので聞いて上げたいのは山々なのだが、それは他人の排泄器官に口をつけろという事だ。
 これは正直、モラルとか貞操観念とかそういった事を抜きにしても、中学生の女の子には生理的にキツい。

 (……どうしよう)
 勃起とにらめっこするアヤナに、
「やっぱりイヤだよな……ごめん、言った事忘れて」
 この世の終わりというくらいのマサヒコの沈んだ声。これにて切腹とまではいかないが、顔には『残念!!』と出ていた。
“キュン……”
 年頃の女の子が、モラル、貞操観念、そして生理的嫌悪などの壁を乗り越えるのは、実は簡単である。
 好きという気持ちが乙女チックな心を満たせば、あっさりと大胆な行動が取れた。
“チュッ……”
 迷いのない動きで先端の鈴口にキスをする。
「うッ!」
 アヤナは目を閉じて、眉間に皺を寄せながら、舌先から感じる味を確認するように口をモゴモゴさせた。
 (なんだか……ヘンな味)
 口の中にしょっぱいような苦いような不思議な味、でもマズくはない。
 これならと思い、アヤナはチロッと舌を出すと、急角度でそそり立つ静脈の浮いた裏筋にそっと押し当てる。
“ちろちろ……”
 その行為は舐めるというには慎重で控えめなものだ。事実、勃起に接触している面積は、舌よりも唇のほうが大きい。
 小鳥が啄ばむように甲斐甲斐しく、根元から亀頭のでっぱりに唾液を塗りたくる様に何度も行き来する。
「い、委員長」
 マサヒコの手が生意気に、どこで覚えてきたのか〔そりゃ言うまでもない事だが〕アヤナの髪の毛を撫で付けた。
 一応はマサヒコなりに格好つけたポーズだったのだが、
「ごめんなさい」
「へ?」
 いきなり謝られて面食らう。童貞少年はアドリブに弱いのだ。
「こういうの……やり方がよくわからなくて……」
「あ、ああ そういう事か」
「あの……こうしてほしいとか思ったら……言って……私……ちゃんとするから」
“プツン……”
 三本目。明日は脳外科に行ったほうがいい。

「く、咥えてみ……うぁ!」
 マサヒコの言葉は、温かくねっとりとした感触に遮られた。
 躊躇わず、アヤナは口をいっぱいに開き、亀頭をすっぽり丸呑みしている。マサヒコは大きく背を反らせた。
 そのの反応に気をよくしたのか、アヤナも更に勃起を深く吸い込もうとするが…
「んッ!? カハァッ ゴホッゴホッ」
 喉の奥に当たったのか、アヤナは咳き込んでしまう。
「無理しなくていいから」
 アヤナを気づかうマサヒコだが、咳き込む姿に内心密かに感動もしていた。
「コフッ…エフッ……んンッ………ふぅ……」
 やむなくアヤナは頭部を後退させる。
 口から少しずつ姿を現す勃起は唾液でヌラヌラと濡れ光っていて、見下ろすマサヒコからは堪らなく卑猥な光景だった。
 アヤナは今ので懲りたのか勃起を口から吐き出すと、今度は先っちょの鈴口に舌を挿し込んでくすぐってから、
裏筋を“ツ―――ッ”と滑り降りる。
 舌先はそのまま袋にまで降りてきて、その中にある玉をパクリッと頬張ると、一つ一つ丁寧にコロコロと転がした。
「はぅッ!」
 これには自分の身体のウィークポイントを、毎夜の一人エッチで知り尽くしていると思っていたマサヒコにも、全く未知の快感である。
 マサヒコの中では『ここまでさせるのはやりすぎだよなぁ?』と、この年頃特有の潔癖さが頭をもたげてはいるのだが、
「んン……くぅん………うう……」
 一方で、やはりこの年頃特有の蒼い性欲を持て余しているマサヒコが断るには、ジワジワとせり上がってくるような玉しゃぶりの
快感はとても新鮮で魅力的すぎた。
 その上、マサヒコに輪を掛けて潔癖症気味のアヤナがしてくれてるんだと思うと、牡の征服欲も刺激されて快感に増々拍車を掛ける。
 それを証明するように鈴口から透明な液が零れ、勃起を伝って袋に流れ落ち、モゴモゴしているアヤナの唇に触れた。
“ヌロ〜〜〜〜”
 気づいたアヤナは玉から口を離すと、先走りの液を舌で舐め取りながら亀頭へと戻ってくると、

“はむ……”
 再度チャレンジで頬張る。
 さっきはいきなり奥まで呑み込んで痛い目にあったので、今度は勃起の大きさを測るように慎重に口内に収めていった。
「ふぅッ…んむッ……」
 ギリギリまで含んだところで一度呼吸を整え、進んだのと同じようにゆっくりと頭を引いていく。
 それを二、三度くり返すと、もうコツを掴んだのか、多少ぎこちない動きながらも、アヤナの唇は徐々に往復を始めた。
“ちゅぷ…ちゃぷ……ちゅるる……にゅちゅ……”
 口の端から零れそうになる唾液をアヤナがすすり上げる度に、口内が“きゅぅッ”と収縮して、亀頭が強く圧迫される。
「ふぁッ!」
 マサヒコは女の子のような声を出して仰け反ってしまったが、そんな事を恥じてる余裕はすでに、いやとっくにない。
 いちいちマサヒコの反応を窺っているのか、アヤナはそれを見て頭の振りを激しくする。
 マサヒコの両手はカリカリとトイレのドアを引っ掻き、膝はガクガクと震えて限界が迫っている事は明白だった。
「んッ、んンッ、んッ……むぁッ……ふぅ…んンッ……じゅるる………」
 アヤナもなにかを感じ取ったのか、更に勃起をしごく速度を上げる。マサヒコの腰の辺りがじ〜〜んと痺れてきた。
 (ヤバイ!!)
 マサヒコが思ったときには、笠を広げて亀頭がふくらみ、内側から爆ぜる。
「んンッ!?」
 口唇愛撫初体験のアヤナは、これには驚いて慌てて勃起を吐き出した。結果的にはそれがマズかったのか、

“びゅッ・びちゅッ!”
 避けようのない至近距離から、アヤナの顔に青臭い精液が容赦なく浴びせられる。
“びゅッ・びゅぐぅんッ!……”
 (……なんでだろう)
 しつこいくらいに放たれるマサヒコの精液に、アヤナは顔を白く汚されながら戸惑った。
 ひどい事をされているはずなのに、ドキドキと胸が高鳴り、身体が熱く火照る。
 (……小久保くん……だから……)
 唇から口内に流れ込んできた精液を、アヤナはコクンッと喉を鳴らして飲み込んだ。

 目をつぶりながら、まるで見せつけるようにゆっくりと、アヤナは舌を伸ばして唇についているマサヒコの精液を舐め取っていくと、
「ん……ふぅ……んン……んぅ…………」
 口をモゴモゴさせて唾と塗しながら、粘つく白濁液を少しずつ嚥下していた。
 おそらく、アヤナにとっては無意識の行為だったとは思う。
 しかしそれは視覚的にマサヒコの快楽中枢を刺激して、若いというべきか呆れるというべきか、荒い息を吐きながらも勃起は急激に
力を取り戻し、出したばかりなのに萎える気配は微塵もなかった。
「……委員長」
 マサヒコはアヤナを欲望の対象としてだけ見ているわけではない……のだが、
「!?」
 目を開けたアヤナの視界に、そそり立つ勃起の姿が飛び込んできた。思わずビクッと身体を仰け反らせてしまう。
「……立って」
 さっきアヤナが言ったセリフを、今度はマサヒコがそっくりそのまま口にした。続きは大分違うが…………。
「立って後ろ向いて」
 アヤナの手を取ってそっと立たせると、トイレの蓋を閉める。
「ここに手をついて……」
 耳元で囁かれてアヤナは身体を一瞬だけ堅くしたが大人しく両手をついた。必然的にお尻をマサヒコに向けて高く掲げる格好になる。
 視線を感じるのか、それとも次の言葉を予期してのものか、アヤナは身体をプルプルと捕食される前の小動物の様に震わせていた。
「動いちゃダメだよ」
 マサヒコはしゃがみ込み、スカートの裾を掴むと腰まで一気に捲り上げてしまう。

「!?」
 アヤナは咄嗟にスカートを捲くる手を払いそうになったが、マサヒコの言葉が脳裏に蘇ると、健気にその衝動を意志の力で抑え込んだ。
「動いちゃダメだよ」
 もう一度マサヒコは同じセリフを言うと、アヤナの羞恥心を煽るように(そんな意図は多分ないだろうが)ゆっくりと薄皮を剥くように
水色の縞々ショーツをずり下ろす。
 熱すぎる視線と外気を感じているのか、アヤナは白いお尻をプルプルと震わせて、情欲に潤んでいるマサヒコの目を愉しませた。
「足、もっと開いて……」
 優しく、というよりも恐る恐るといった感じでマサヒコはお願いする。
 この格好を取らされたときから、マサヒコが恥ずかしいお願いをするだろうことはアヤナも薄々わかってはいた。わかってはいたが、
「うぅッ……」
 足は中々開こうとはしない。わかるのと出来るのは、まったくの別問題である。
 アヤナも出来るならマサヒコのお願いに応えてあげたいが、女の子の羞恥心とはそれこそ中々どうして簡単に消えるものではない。
 そしてこんなときにモノを言うのは、
「……アヤナ」
“ドキンッ”
 ファーストネームを呼ばれただけで心臓が、というよりもハートが跳ね上がる。
 背中に覆い被さるようにアヤナの耳元に唇を寄せると、
「お願い……」
 本人の意志とは関わりなくオートで発動するマサヒコのスペシャルウェポン、“乙女の本能くすぐり攻撃”が炸裂した。
「はぁ……はぁ……はぁ…………」
 荒い息遣いの中でゆっくりと、天岩戸のようにアヤナの足が開いていく。
「ありがとう」
「んぅ……」
 囁かれマサヒコの声が熱い。アヤナはくすぐったそうに首を傾げる。
「動いちゃ……ダメだよ」
 猛る勃起をアヤナの生肌のお尻に押し付けるように密着させながら、マサヒコは前に手を廻してスカートの奥へと差し入れた。

“ぬちゅ……”
「あッ!?」
 二人の声がキレイにハモる。ただ、二人が声を出した理由はまったく異質のものだった。一方は驚愕の為、もう一方は羞恥の為。
 どちらが前者でどちらが後者かは言うまでもなく、そして前者の気持ちが歓喜にクラスチェンジするのに時間はいらなかった。
 (ぬ、濡れて……る? オ、オレが濡らしてる……んだよな………オレが委員長を…………)
 たしかにアヤナのそこはもう、湿っているなどという段階をとうに過ぎている。
「ううッ………くぅんッ……んンッ………ん………んぅッ!!」
 マサヒコはフンフンッと鼻息も荒く、掌で女性の神秘の部位の形を確認する様にゆるゆると上下に揺すりながらチヨットずつ、
淡い恥毛に塗り込むように、アヤナの羞恥心を煽るように、透明なぬめりを広げていく。
 愛撫とも呼べない僅かそれだけの動きに、これが愛の成せる業か、アヤナの唇からはあきらかな喘ぎ声が零れた。
 それがまた新たな快楽のエッセンスになって、盛っている童貞少年のマサヒコがいきなり中指を粘膜の狭間に沈み込ませても、
“ぬちゅッ”
「うぁッ!?」
 不躾な侵入者を歓迎するような艶やかな声を洩らしてしまう。
 すぐに秘唇からはクチャクチャとガムを噛むような音が立ち、膣内に溜まっていた愛液が入れられた中指を伝って外へと溢れ出すと、
中途半端に降ろされているショーツにハシタないシミを幾つも作った。
 童貞少年の好奇心を満たそうとするような、自分でするときよりもずっと激しい抽送にアヤナの性感は急速に高められていく。
「はひッ…ひッ……あッ……はぁッ……ン……んふぁ…………あふぁッ!」
 ぬかるみを不器用に弄る指先にヒダヒダが纏わりつき、アヤナの誰も踏み入ったことのない秘唇はオトコの指を貪欲に銜え込んでいた。
 最初は“異物の侵入を拒んでいるのでは?”と思わせるほどのキツさだったが、いったん指が入ってしまうと今度はそれを逃すまいと
キュッキュッと締めつけてくる。
「ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……んぁッ……ひぁッ!!」
 そして熱心に、というよりも厭きずに指先を蠢かせていたマサヒコは、もちろん偶然のビギナーズラックだが、女の子の弱点の一つを
的確に探り当て擦り上げた。

 一際甲高い嬌声をトイレで響かせるアヤナの頭の中に、パチパチと白い閃光が無数に走る。
 いくら鈍いマサヒコでも、ここが女の子のウィークポイントだと気づいたのか、硬くなっている突起を指の腹で転がして連続的に
アヤナに快楽のパルスを送り込んでいた。
「はぁ……はぁ……はぁ…………」
 そして初めて触れる女の子の粘膜の不思議な柔らかさに夢中になっているマサヒコにしても、アヤナのお尻が右に左に揺れて勃起を
刺激してくるから堪らない。
 牡の本能の底に潜む獣性が疼いて、どうしても指戯が乱暴になってしまう。
「ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……んぁッ……ぅああッ……あ!?……ああッ………ふぁッ!!」
 爪先が女の子の真珠を引っかいた。
 同時にアヤナには白いフラッシュが瞬いて、ガクガクと笑っていた膝がカクンッと折れる。
 マサヒコに支えられながらその腕の中で、感電でもしたかのようにアヤナはビクンビクンッと身体を震わせた。
 そんなグッタリと自分に身を預けてくるアヤナに愛しさを募らせながらも、マサヒコの瞳からは光が、勃起からは力強さがまったく
失われていない。
「委員長…………まだ……だいじょうぶ……かな?………」


 自分の名を呼ぶマサヒコの声も、虚脱状態のアヤナにはどこか遠くのものに聞こえる。
 (……イク……ッてやつなの………いまのが……こんなの……初めて…………)
 マサヒコに言ってやれば泣いて喜びそうなことを心に浮かべながら、アヤナは前のめりに、便器にもたれ掛かるように倒れ込んだ。
 中学生にもなればオナニーくらいは皆、いやもちろんリンコの様な弱冠の例外もいるだろうが、アヤナも一度ならずしたことがある。
 しかし、『イク』というところまでの快感を導き出した経験はまだない。
 アヤナの知っていたのは、そこにいくまでの前座のようなもので、初めて襲われた未知の感覚の虜になっていた。
 いままでは指戯が拙いという根本的な理由もあるが、毎夜ベッドでマサヒコを想いながら秘唇を弄っていても、粘膜の狭間に入れるのは
処女には怖くて、早々に女の子の真珠を責めて終わらせていたのである。
 こんな素敵な感覚をスルーしていたとは、アヤナはちょっぴり臆病な自分に後悔した。
 このように過去を顧みて素直に反省できるのは非常にいいことである。ただ、その後悔はもう少し先延ばしした方がいいかもしれない。
“ぬちゅ……”
「きゃうッ!!」
 上回る感覚が間髪いれずアヤナの身体に襲いかかった。
 半分アッチの世界にイッていたアヤナの意識が、新たな刺激に無理やりにリアルへと引き戻される。
「!?」
 顔だけ後ろを振り向くと、マサヒコがお尻に口をつけていた。
 アヤナの乏しい性知識ではそんなところに口をつけるのは〔好きな者同士でも〕ありえない。
「やッ……こ、小久保く……んンッ!………そ、そんなと……あ!?…………うぁッ!?きたな…くッ……うッ…ひぅッ!?」
 そんな少女のモラルなどには一切関知せずに、少年の火の点いた欲望はひたすら突っ走る。
 マサヒコの舌はぬちゃっぬちゃっと音を立てながらなんの抵抗もなく柔らかな秘肉の中に沈み込んだ。
 浅く深く、アヤナの女の子の粘膜の海を、マサヒコの舌先が好き勝手に泳ぐ。

“ちゅるん・じゅう・ちゅく……”
 マサヒコの口内にアヤナの秘唇から湧き出す、理性を奪い〔とっくにないが〕狂わす淫らなシロップが流れ込んできた。
“じゅッ……じゅるる………じゅずずッ…………”
 それをマサヒコはなんの躊躇いもなく、下品な音を立てて啜り上げる。
「うぁッ………そん…音…んンッ…だめ……ひぅッ………だ……め……んッ!?……ぅあッ!!」
 聞いているのかいないのか、アヤナの懇願を無視して、更に音を立てて淫らなシロップを飲み下しながら、マサヒコは“ぷっくり”と
膨らんでいる女の子の真珠に吸いついた。
「はひッ……ひッ……あ、ンぁッ……はぁ……んぁッ……ひッ、あ…あぁんッ………ひぁッ!!」
 強く吸われてアヤナは艶やかな悲鳴を上げる。右に左にアヤナのお尻は切なげに揺れていた。
 しかしそれも、見様によっては『もっともっと』とせがんでるようにも見えなくない。
 いや、見えなくないではなく、本人が自覚しているかどうかはともかく、多分おそらくそうなのだろう。
 (うん……きっとそうだ………そうに決まってる…………そうであって下さい)
 心の中、自信があるのかないのかよくわからない、願望込みの優柔不断な断定〔メチャ矛盾してる〕をするとマサヒコは立ち上がり、
もうどこに出しても恥ずかしくないほど大きく逞しく、カッチカッチ・ビンビンになっている勃起を握って、
「あの……委員長………その……いいかな?」
 お伺いを立てた。
 もし傍から客観的に見ている人がいたとしたら、百年の恋も覚めるんじゃないかというくらい、いまのマサヒコの姿はマヌケである。
 ただ幸いこういったことは、
「……うん……いいよ」
 そう言うアヤナの顔には、捧げる者の決意が読み取れた。二人の主観さえよければ、後はどうでもいい。
 潤んだアヤナの瞳もそれを物語っている。
 (……と、思うことにしよう)
 これが自信満々で思えるようになるのが経験だ。マサヒコはこれからもたくさんアヤナと経験したいな、などと考えながら、
「いくよ……」
 アヤナの腰を少し引き寄せて、柔らかなピンクの粘膜に“ピトッ”と勃起をくっつける。

「やっぱり……怖い……?」
 覚悟は完了しているんだろうが、アヤナはガチガチに緊張していた。
 これは生まれたときから刷り込まれてる、本能の恐怖だからどうしょもない。
 でも神様はちゃんと考えていて、失くすことは出来ないが、和らげる方法は用意してくれていた。
 マサヒコはアヤナがほっぺたを付けてる便器のフタに手を置くと、
「痛かったりしたら……噛んでいいから、それでもダメなら手を上げて」
 歯医者のようなセリフを真顔で言う。本人はギャグで言っているのではなく、いたって真剣である。だから可笑しいのだが……。
「ぷっ……くくっ……ふふっ………」
「な、なに?」
「うぅん なんでもない……わかったわ、痛かったら手を上げる」
「ああ、うん……いくよ」
 なにがなにやらマサヒコには窺い知れないが、とりあえずはアヤナの緊張を、少しとはいえ解きほぐすのには成功したようだ。
 角度を慎重に調節する……のだが、
「あ、あれ? ちょッ?、んんっと!?」
 アヤナの緊張がこんどはマサヒコに伝染したのか、手元がパンチドランカーのようにプルプルして中々照準が定まらない。
 どこに挿れるんだというのは舌まで入れたんだからわかっているのだが、お目当ての穴には行ったり来たりをマサヒコはくり返した。
 (よしっ!!)
 先っぽがちょこっとだけ正しい鍵穴にはまった感覚がある。マサヒコは苦労したがなんとかロックオンに成功した。
 そしてその喜びと、また外したら大変だというアセりからか、一気にマサヒコはアヤナの膣奥へ腰を突入させる。
 ヴァージンを気遣ってやる心の余裕は、チェリーくんにはすでにない。
“ずにゅッ”
「ッ!?」
 突然の鋭い痛みにアヤナの喉から声にならない声が出る。ついでにマサヒコの喉からも。
 早くもアヤナはアイドルばりに白い歯をマサヒコの腕に突き立てた。
 いやもうこれは、アヤナは顎の強さまで優等生なのか、突き刺さるという表現が正しいだろう。
「…んぐッ……いッ…いいッ………」
 かなり処女膜貫通の痛みは強烈なのか、アヤナはマサヒコの腕にジャンジャカ歯を食い込ませてくる。
 それでも秘唇は粘液質な音とともに、複雑に入り組んだ柔らかな肉壁を巻き込んで、熱くヌメりながら、奥へ奥へと勃起を誘うように
締めつけていた。

 マサヒコの腕はいま燃えるように、痛いを通り越して熱かったが、
 (……こっちだって初めてなんだから……気持ちいいだけじゃ不公平だよな……)
 これが小久保マサヒコの人柄なのか、苦悶の表情のアヤナを見下ろしていると、ただ気持ちいいだけの自分が許せない。
 だが腕をおもいっきり噛まれ、燃えるような痛みに襲われても、その罪悪感はまったく全然消えてはいない。
 むしろより深く感じている。マサヒコの熱いのはなにも腕だけではないのだ。
 はっきりと言ってしまえばダントツでもう一つの方が熱くて…………ものスゴ〜〜〜〜く気持ちいいのである。
 マサヒコには“ス―――ッ”と内股に一筋の血を伝わせ、頬を涙で濡らすアヤナを見ながら、腰をケモノのように振る趣味はないが、
ジッとしていてもプリプリとした肉壁の触感は、どエラい快感を若く未熟な脳髄に叩き込んでいた。
 だからこういう催促めいたことを言ってしまうのもむべなるかな……。
「あの、さ……う、動いていいかな」
 一応アヤナの噛む力が弱まってきたのを見計らって聞いているのだが、どこか後ろ髪を自分の良心に引っ張られる。
“カパッ”
 噛んでいた腕にくっきりとした歯型を残してアヤナは口を離した。マサヒコを見つめるその目は笑っている。
「……名前」
「へ?」
「名前で呼んでくれたら…………動いてもいいわ」
 こういうのは素で言われると恥ずかしいものだ。
 でもマサヒコは顔こそ赤くはさせるが、零コンマ何秒かでアヤナのファーストネームを口にする。
 マサヒコにしては驚くほどの決断の早さだ。
「ア、アヤナッ!!」
 理性に抑えつけられていたケモノの血が爆発したのか、マサヒコは容赦なく腰をなにかに憑かれたように振りたくる。
“じゅむッ……ずぅッ…じゅむッ……じゅむッ……ずちゅッ!……”
「はひッ!?……ひッ……あ、ンぁッ……ひッ……あ、ンぁッ………はぁ……んぁッ……」
 アヤナもすぐにあきらかな快感を訴える鳴き声でそれに応えた。
 マサヒコはアヤナの背中に覆い被さると、制服の中に手を入れてブラジャーを乱暴にずり下げる。
 うなじに顔を突っ込みながら、
“きゅッ”
「ひんッ!」
 乳首を少し強めに捻った。アヤナの背がグッと反り上がる。

「うぁッ…は……ああッ……ひッ、あ…あぁんッ……ふぁッ、あッ…んぅッ…ぅああッ!!」
 二人の腰がぶつかる音と自分の上げるはしたない悲鳴、そしてなによりマサヒコの息遣い、アヤナの耳にはもうそれしか聞こえない。
 でもそれすらも、アヤナには段々聞こえなくなってきた。また頭の中を白いもやが覆っていく。
 ガクガクと身体を震わせているアヤナに、マサヒコはこれがトドメ〔自分にも〕とばかりに勃起を突き上げた。
「はひッ!!」
 亀頭がアヤナの膣内でブワッと膨らみ爆ぜる。
「ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……んぁッ……ぅああッ……あ!?……ああッ………ふぁッ!!」
 遠吠えをする犬のような格好になると、最奥に熱いほとばしりを感じながら、アヤナは白い奔流に飲み込まれた。
 ぶるぶると二、三秒震えてから、アヤナは電源を落としたようにガクリッと便器に突っ伏す。
 マサヒコもその背中に、折り重なるように力なく倒れ込む。
 しばらくは二人とも“ハァハァ”と荒い息を整えていたが、やっぱりそこは流石に男の子、マサヒコのほうが体力があるのか、
ノロノロと名残惜しそうにしながらも身を起こした。アヤナもそれに倣って身を起こす。
 ゆっくりと振り向いてマサヒコを見た。マサヒコもアヤナの目を真っ直ぐ見ている。逸らさない。
 (……こんなところで言うことじゃないんだろうけど……)
 トイレの中には性の匂いが濃厚に香っている。微かに血の匂いもした。女の子の想い描くシチュエーションとしては最低だろう。
 でもこの場で、ちょっと脳内麻薬を精製してハイになってるいまじゃないと、こんな恥ずかしいセリフをマサヒコは言えない気がした。
「あの、順番がムチャクチャなんだけど……」
「……うん」
 アヤナはマサヒコの言葉を潤んだ瞳でジッと待ってる。

「……付き合ってください」
 耳に響くその言葉に、アヤナの瞳からは“ホロリ”と涙が零れた。
「……グスッ……ずずっ……よろしく……グスッ………お願い……します………」
 マサヒコは出来たばかりの“彼女”の頬を、指先でそっと拭ってやる。
 “彼氏”になって一番最初にマサヒコがしたことは、普段の優等生の印象など放り投げて泣きじゃくるアヤナをあやすことだった。


                                         終わり

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