作品名 作者名 カップリング
「Be bound by a love」 クロム氏 -

「おはよう、マサヒコ君」
「……おはよう、アヤナ」
その日、起床したオレの視界に一番に飛び込んできたのは、ニッコリ微笑んだ若田部アヤナの顔だった。
「相変わらず寝起きが悪いのね。外はいい天気よ」
「ほう、そりゃよかった。外に出たらさぞ気持ちいいだろうな」
「ええ、そうでしょうね」
アヤナは笑顔のままベッドの縁に腰を下ろした。
「ところでアヤナ。変なこと聞くけど、ここはオレの下宿だよな?」
オレは大学進学と同時に家を出て、今はここで一人暮らしをしている。
夢遊病でも発病していない限り、寝ている間にどこかへ移動するなんてことはないだろう。
すなわち、ここはオレの下宿先であるはずなのだが。
「当たり前でしょ。私の部屋じゃないもの」
「じゃあなんでここにお前がいるんだ?」
「あら、私がいちゃ悪いの?」
「そうじゃなくて、どうやって入った?鍵かかってたろ」
「管理人さんに頼んだら開けてくれたわ」
「ああ、そう……」
それでいいのか、管理人?いくら頼まれたからって、住人に断りもなしに?
深く考えると頭痛がしそうなので、もう一つの疑問を解決することにしよう。
「なあアヤナ。もう一つ質問していいか?」
「先に私の質問に答えてくれるならね」
どうぞお先に、と目で合図する。どうせ拒否権はないのだから。
「私達って、付き合ってるのよね?」
「ああ、お前が日本に帰ってきた日からな」
アヤナは日本の大学に合格し、半年ほど前に帰国していた。オレたちはその時から付き合っている。
「あの時は私から告白したのよね?」
「世間一般であれを告白と呼ぶのか疑問だけど、まあそうだな」
アヤナが帰国した日、オレはコイツに呼び出された。
襟首をつかまれ物凄い形相で睨まれて、『私と付き合いなさい』だったか?
今思い出しても身震いする。あれは相当怖かった。
「で、アナタはOKしてくれた、と」
「まあ、そうなるな」
断りでもしたらそのまま括り殺されそうな勢いだった。
「ねえ、私のこと好き?」
「なんだよ急に…当たり前だろ」



始まりはどうであれ、今のオレとアヤナはいわゆる彼氏と彼女である。
好きでもない女性とそういった関係になれるほど、オレは器用じゃない。
「そんな言い方じゃダメ。好きなら好きってちゃんと言いなさい!」
険しい表情でアヤナがオレを一喝する。ここは逆らわない方がいい。
「……好きだ」
「フフ、よかった。私もよ」
険しい表情から一転、満面の笑みを浮かべるアヤナ。この変わり身の早さはなんなのだろう?
「質問はそれで終わりか?」
「ええ、おしまい」
その質問にどんな意味があったのかわからないが、とりあえず目の前の問題を優先させることにする。
「ならオレから質問させてもらうけど…これは何だ?」
オレは寝転んだままその物体を顎で示した。
「見てわからない?それは世間一般でいうところのタオルっていう代物よ」
「そんなことはわかってる。オレが聞きたいのは、なんでオレが、そのタオルで縛られてるのかってことだ」
そう。オレの両手両足は、タオルでベッドの端にキツく縛り付けられていた。
目を覚ました時にはもう既に拘束済み。先程から何度も試しているが、まったく動くことができない。
「世間一般を納得させられるだけの説明をしてもらいたいな」
この状況で世間云々もないもんだが、さて、アヤナは何と答えるつもりだろう?
「決まってるでしょう?アナタが逃げないようにするためよ」
「それはそれは…実にシンプルなお答えで……」
実に単純明解、これ以上ないというくらいストレートな解答だ。だが……
「なんでそんなことを?」
当然の疑問が浮かぶ。改造されるのか?バッタの能力を持つ某ヒーローみたいに改造されるのか?
「あら、質問は一つのはずでしょ?」
「そんなことはどうでもいい。とりあえず現状を説明してくれ。それからこれをほどいてくれ」
「二つ目は却下ね。最初の質問は…今は答えたくないわ」
「それじゃなんの解決にもなってねーだろ」
まったく、なんだというのだ。オレは別にアヤナを怒らせるようなことはしていないはずだが。
というか、仮に怒らせたとしても、何故朝からこんな目に遭わなくてはいけないのだ。
いや、別に昼とか夜なら構わないってわけじゃないけどさ……。
「なあ、マジで教えてくれよ。なんで朝一で自分の彼女に縛られなきゃいけないんだよ?」
「本当にわからないの?」
「わからないから聞いてるんだが」
アヤナはやれやれといった風に首を振り、ベッドから立ち上がった。
そしてこちらに向き直り、ビシッとオレを指差す。
「じゃあ教えてあげるわよ。マサヒコ君、私達付き合ってどれくらいになる?」
「え…お前が帰国してからだから…ちょうど半年くらいだろ」
「ええ、そうね。じゃあ、私達何回くらいデートしたか覚えてる?」
「んなこと言われても…休みの度にデートしてたし、三十回くらいじゃないか?」
「正確には三十八回よ」
「ほお……いちいち数えてたのか?」
「べ、別にいいでしょそんなことは!それより、デートの内容は覚えてる?」
「内容って…だいたい映画観たり美術館に行ったり…あ、あとお前の買い物に付き合わされたり……」
「それが理由よ」



「………は?」
アヤナの言葉に混乱する。デートしたことと縛られていることと、どんな関係が?
「まだわからないの?」
「ああ、まったくわかんねえ」
アヤナは怒りというよりも、むしろ呆れた表情でオレを見ている。
そんな目で見られても、わからないものはわからないんだから仕方がない。
「仕方ないわね……えいッ!!」
「グッ…!」
今の会話に意味はない。アヤナがかけ声と共にオレの上に飛び乗り、オレが呻き声をあげただけだ。
アヤナはオレの上に馬乗りになった。
「なっ……なにすんだよ!」
今のは結構効いた。ついつい声も大きくなってしまう。
しかしアヤナはまったく動じる様子もなく、妖しい笑みを浮かべた。
「フフ…こうするのよ……」
アヤナは両手でオレの顔をしっかりロックすると、いきなり唇を押し付けてきた。
「!!??」
何が起きたのか理解できないでいるオレを、間髪入れずに、何か湿った生暖かい感触が襲う。
その感触はオレの口の中に無遠慮に侵入してきた。そして口腔内を好き勝手に這い回っていく。
アヤナにキスをされていて、しかも舌まで入れられていることに気付くまでに、少し時間が必要だった。
「ん……ンん…はぁ…ん…」
アヤナの色っぽい吐息が耳をくすぐるが、オレの方はそれどころではない。
突然のディープなキスに全身が硬直し、アヤナのなすがままになってしまっている。
アヤナがようやく顔をあげたころには、酸欠とショックでグロッキー気味になっていた。
「フフ…おわかりになった?」
「なにがだよ……」
「あら、わからなかった?それじゃあもう一回……」
「なっ、ちょっ、まっ……んむッ!?」
抵抗する間もなく、というか抵抗できないのだが、再び唇を塞がれてしまった。
(もう好きにしてくれ……)
全てを諦める。半ば自暴自棄な気分になりながら、オレは押し付けに似たアヤナの愛を受け入れることにした。
たっぷり一分は唇を吸われ、ようやくアヤナが唇を離す。
アヤナの唇には二人分の唾液が付着し、妖しく光っていた。
「ウフフ……」
アヤナが笑う。いつものアヤナは『キレイ』だが、今はそれに『ヨウエン』が加わっている。
その姿は破壊力倍増で、それを見たらどんな男だって狂わされてしまうに違いない。
しかしこれ以上は命に関わってくる…というのは言い過ぎだが、もう遠慮したい。
「なあアヤナ、気が済んだか?気が済んだならそろそろ解放して欲しいんだけど……」
だが、そんなオレの願いはいとも簡単に打ち砕かれた。
「ダメよ、まだ終わってないわ」
「ああ、そうですか……」
次はなんだ?もう一度ディープキスか?骨休めにバードキスか?それとも今度こそ本当に改造されるのか?
だが、アヤナの口から出た言葉はそんなものではなかった。
「ウフフ…マサヒコ君……私ね、今からアナタをレイプするのよ」



「ああ、なるほど、オレをレイプ…なるほど…なる?…な……な、なにィィィ!!!???」
あまりの衝撃に、思わず驚くのが時間差になってしまった。
そんなオレを、アヤナは悠然と、相変わらず妖しい笑みを浮かべたまま見下ろしている。
「フフ、驚いた?」
「あ、当たり前だろ!何の冗談だよ!?」
「あら、冗談なんかじゃないわよ。そのためにこんなことしたんだから」
そうなのか。改造するためではなかったのか。だが、事態はある意味それ以上に深刻だ。
「ち、ちょっと待てアヤナ、なんでそんな暴挙に出なきゃならんのか、まずその理由を説明しろ!」
「さっき言ったでしょ。デートの内容が原因だって」
「内容って…映画に美術館に、買い物がか?ますますわからんのだが……」
「マサヒコ君、さっき言ったわよね?私達付き合って半年になるって」
「あ、ああ、言ったけど……」
「付き合って半年も経つっていうのに、どうしてそんな健全なコースばかりなの?」
「え…健全って……」
どういうことだ?ごく当たり前の、スタンダードなコースだと思うのだが。
「その様子だとまだわからないみたいね」
「ああ、まったく見当もつかないんだけど……」
相変わらずオレの上に馬乗りになったまま、アヤナは小さく溜め息を吐いた。
「私が言いたいのはね、半年も付き合ってて、なんで一度も抱いてくれないのかってことよ」
「なっ、いや、抱くって……」
オレはアヤナの言葉に言葉を詰まらせた。
「なんで抱いてくれないの?」
「いや、なんでと言われても……」
アヤナの言う通り、オレはアヤナを抱いたことがない。
オレが女性と付き合うのは、アヤナが初めてだ。それだけに、その辺の知識は極めて乏しかった。
とりわけ、女性を抱くなどといった行為は、ビギナーのオレには荷が勝ち過ぎていた。
別にしたくなかったわけではない。いや、本音を言えばしたかった。
だが、何と言えばいいのかわからず、いいムードになりかけても結局いつも尻すぼみ。
代わりにアヤナをネタにした自家発電の回数だけが増えていった。
「なんでと言われても……」
「……まあいいわ。とにかく、そういうわけだから。私は今からアナタをレイプします」
「いや、待て、それとこれとは別問題……」
「何が別問題よ…いい?私は三年も待ったのよ?だからアナタがOKしてくれた時、すごく嬉しかった。
だけど、それだけじゃダメなのよ。アナタは三年間間の開いた分まで私を愛してくれなきゃいけないの。
なのにアナタときたら…最近までキスもしてくれなかったじゃない。お互いもう子供じゃないんだから。
私はね、アナタにもっと…もっとたくさん愛して欲しいし、アナタにだってそうする義務があるのよ!」
最後の部分で再びオレに指を突き付けた。
(そう言われてもな……)
アヤナの言いたいことはよくわかる。確かにオレはそうする義務があるだろう。



だが、それとこれとでは話が違ってくる。なにかいい手は……
「言っておくけど、逃がさないわよ?それにアナタさっき私のこと好きって言ったわよね?
しっかり言質取らせてもらったから、どんなに抵抗しても無駄よ。もう観念しなさい」
どうやら完全に退路は絶たれているようだ。しかし、このままアヤナに好き放題されるのはよろしくない。
もちろんアヤナとそういうことをしたいとは思う。しかし今の状況は別だ。
なんとかしてアヤナを説得、あるいはこの場から逃走しなくては。
「なあアヤナ…お前の言いたいことはわかったよ。だけど、なにもこんな形でなくたっていいだろ?
なんて言うかその…もっとちゃんとした…ほら、デートの後でとかさ、いろいろあるじゃないか」
「ダメよ。そんなこと言って逃げようと思ってるんでしょ?絶対逃がさないわよ」
どうやらバレバレだったようだ。
(アヤナを説得するのは無理だ…だとしたら、この場からの逃走……)
オレは自分の手を拘束しているタオルを見た。どうやったのか知らないが、何をやってもほどけそうにない。
「それ、絶対にほどけないわよ?なにしろお姉様直伝なんだもの」
見透かされている。というか、中村の奴、アヤナに何教えてんだ?
(万事休す……)
もはやオレにはどうすることもできない。
それにしても、オレの初体験がこんな形になろうとは……。
「どうやら諦めたみたいね。フフ、それでいいのよ」
グッタリと動かなくなったオレを見て、アヤナが楽しそうに笑う。そして、オレの唇に軽くキスをした。
「マサヒコ君…好きよ……」
唇だけでなく、額、頬、鼻、瞼など、オレの顔のパーツのいたる所にキスの雨が降りつける。
動くことのできないオレは、アヤナの気が済むまで黙ってされるがままになっていた。
チュッチュッという音だけが、やけに大きく耳に響く。
どれくらいそうしていただろうか?アヤナがようやく顔を上げた。
「ねえマサヒコ君。アナタの着てるシャツって、高いものなの?」
オレがパジャマ代わりに着ているTシャツを摘んで、アヤナが唐突に尋ねる。
「いや…安物だけど……?」
「そう、ならかまわないわね。新しいの買ってあげるから」
そう言うと、アヤナはどこからかハサミを取り出した。
「なっ、ちょっ、待ってくれアヤナ!何するつもりだ!?」
慌てふためくオレの頬を、アヤナはハサミでピシャピシャと叩いた。
「大丈夫よ、痛くしないから」
物凄く楽しそうに笑ってる。
アヤナは笑顔のまま、オレのシャツにハサミを入れ始めた。
ジョキジョキと小気味のいい音を立てながら、シャツだったものがボロ切れに変わっていく。
「ウフフフフ……」
オレの上半身が露わになった。
「あのさ…なんか犯されてるみたいなんだけど……」
「現状が把握できてないみたいね。みたいじゃなくて、犯してるのよ」
「ああ、そうか……」
「それから先に断っておくけど、アナタの意見は全面的に無視するからそのつもりでね」
どうやらこの空間において、オレに人権はないらしい。
「マサヒコ君…肌キレイなのね」
アヤナはオレの上半身に指で触れ、撫で上げた。くすぐったくて逃げようとするが、ほとんど動けない。



「ちょっ…くすぐった……」
抗議の声は本当に無視された。アヤナの指の動きはさらに激しくなる。
「うっ…ぁ…くぅ…やめ……」
アヤナがやめるはずがない。今度はオレの身体に舌を這わせ始めた。
「うわっ…!ストップストップ、やめてくれッ!」
「ダメ。やめない。ガマンしなさい」
上目遣いにこちらを見上げ、妖しい笑みと共に舌を動かしていく。
そのたびにオレは女性のような声をあげ、身体をくねらせた。
こんな情けない姿を人に見られたら、オレは一生を消えない十字架を背負って生きていくはめになるだろう。
「そういえば…マサヒコ君って、ワキが弱かったんだっけ?」
「え、あ…ちょっ、待て、そこはマジでダメだってやめてくれうわすとっぷダメやめろッ!」
アヤナは止まらない。アヤナの舌がオレの弱点に触れ、そのまま刺激していく。
「〒&%♂♀←∧※!??」
声にならない叫びをあげてのたうちまわるオレ。だが、そんな姿はアヤナの行為をさらにエスカレートさせた。
ゾッとするほど残忍な笑顔を浮かべてこちらを見ている。
「ふふ、すごい反応ね。じゃあこうしたらどうなるのかしら?」
「ああぁあぁ゛〜〜!?」
いい加減オレの意識が薄れてくるまで、アヤナの責めは終わらなかった。
ようやく解放された時にはオレの身体はアヤナの唾液に塗れ、ピクピクと痙攣を繰り返していた。
「フフフ……」
アヤナは一端立ち上がると着ているものを脱ぎ始めた。高そうな服が次々と床の上に落ちていく。
アヤナはためらうことなく最後の一枚まで脱ぎ捨て、オレの前にその裸身をさらした。
白く、瑕一つない肌。これ以上ないというくらいに完成された肢体。
その美しさに、オレは自分が今置かれている状況も忘れて息を呑んだ。
「マサヒコ君…さ、アナタも脱いで……」
「この状況でどうやって脱げと?」
両手両足縛られて、どうやって脱げと?
「しかたないわねぇ……」
アヤナが再びハサミを手にしたのを見て、慌ててとめた。
「待て!そっちは切らなくてもいいだろ!」
「ああ、それもそうねぇ……」
アヤナはハサミを置くとオレのズボンに手をかけ、一気に引き下ろした。
オレのモノは再三に渡る口撫により、痛いほどに張り詰めていた。それが覆いを失い、勢いよく飛び出す。
「あら、意外と立派なのね」
アヤナはそれを興味深そうに見つめ、その手でそっと触れた。
「うっ……」
その瞬間アヤナの手の中でオレのモノがビクッと跳ねる。
「フフ…かわいい……」
アヤナはベッドに上ると、オレのモノに柔らかな唇を押し付けた。
そして舌を出すと、先端から根元まで丹念に嘗めていく。
ピチャッ ピチャッ ピチュッ ピチャッ
卑猥な音が部屋を満たしていく。
「クッ…ぁ…あ……」
経験したことのない快感に、思わず声が洩れる。



「マサヒコ君…気持ちいい?」
「あ、ああ……」
「ふふ、よかった…ねえ、私にもして……?」
シックスナインというやつだろうか?アヤナがオレの上に跨がった。
目の前に蠱惑的な光景が広がる。その部分はもう既に十分過ぎるほどの湿り気を帯びていた。
無意識のうちに、オレはその部分に舌を這わせていた。
「ん…はぁ…あッ……」
アヤナの口から甘い吐息が洩れ、それに合わせるように大量の蜜が溢れてくる。
秘裂に口をつけ、その熱い液体を音を立てて啜ると、アヤナの動きに変化が現れた。
「あッ…んんッ、ああッ……!」
今までオレのモノを刺激していた舌の動きが止まり、その声にも快楽の色がはっきりと見てとれる。
感じている、のだろうか?
それならと思い舌をさらに激しく動かそうとした途端、アヤナはその身を起こした。
「マサヒコくん……」
アヤナがこちらに向き直った。息が荒い。頬が上気している。口許がだらしなく弛んでいる。
初めて見るアヤナの表情は、ゾクッとする色気をまとっていた。
ハルピュイアという女神に魅入られたら、こんな感じだろうか?
その腕に抱かれ、快楽に酔い痴れて死んでいく男達の気持ちも、今ならわかる気がした。
「マサヒコ君……」
アヤナはもう一度オレの名を呼び、唇を無茶苦茶に押し付けてきた。
それが済むと再び身体を起こし、無言でオレのモノを手にとった。
「待てよアヤナ、そのままする気かよ?」
「平気よ…今日は大丈夫な日だから……」
「いや、だからって……」
「ゴチャゴチャ煩いわねぇ…アナタの意見は聞かないって言ったでしょ?」
そう言うとアヤナは自分の入口にオレのモノをあてがい、ゆっくりと腰を下ろしていった。
「はっ…ぁぁああ……」
アヤナの口から声が洩れる。オレのモノが熱い肉壁に包み込まれた。
ゆっくりゆっくり、アヤナの中に飲み込まれていく。
「うっ…あ、はっ……ああぁ…クッ……」
オレはそこで異変に気付いた。アヤナの口からこぼれる声が先程までのものと明らかに違う。
何かを耐えるような、苦痛を堪えるような、そんな感じ。
「アヤナ……?」
不審に思いアヤナの方を見て、オレは自分の目を疑った。
オレとアヤナのつながった部分から、紅い血が流れ出ていたのだ。
「アヤナ…まさかお前…初めて、だったのか?」



「……ええ、そうよ」
「なんで…なんで言わなかったんだよ…オレはてっきり……」
「てっきり何よ…私がそんな安い女だと思う?」
「でも…だからって……」
まだ何か言おうとするオレの口を、アヤナは手で塞いだ。
「いいの…初めてはアナタに捧げるって決めてたんだもの……」
「アヤナ……」
アヤナはそれ以上何も言わなかった。そのままさらに深く、腰を沈めていく。
「ああ…い、た…ッ……」
アヤナの美しい顔が苦痛に歪む。だがアヤナはやめなかった。
徐々にだが、アヤナの中に飲み込まれていく。
「やっぱり痛いのね……」
「大丈夫なのか…やっぱりやめ……」
「やめない…大丈夫じゃないけど…平気だから……」
アヤナはそこから一気に腰を下ろした。
「アアアッ!!」
オレのモノが根元まで飲み込まれた途端、アヤナの身体が大きくのけ反る。
アヤナはそのまま動かなくなった。肩を上下させ、目許には涙を浮かべている。
「アヤナ…大丈夫か?」
「大丈夫じゃないって言ってるでしょ…もういいから何も言わないで……」
呼吸を整えると、アヤナは身体を上下させ始めた。
「あっ…ッ、はぁ…あッ……んんッ!」
アヤナの口から呻き声が洩れる。だがそれとは逆に、オレの身体は正直な反応を示していた。
アヤナの中は温かく、痛いくらいにオレのモノを締め付けてくる。
アヤナに苦痛を与えるだけとわかっているのに、アヤナを突き上げる腰の動きをとめられなかった。
「あぁ…あっ、あ…マサヒコ、くんッ…!」
「アヤナッ…!」
込み上げてくる衝動を抑えられない。
「アヤナ…もう……」
「うん、いいよ……そのままきて……」

アヤナとオレの動きが同調する。オレの中で何かが破裂した。
「クッ……!」
オレはアヤナの中に全てを吐き出した。
「あッ…あああぁぁッ!!」
内側に流れ込んでくる奔流がアヤナに悲鳴をあげさせる。アヤナは崩れ落ち、オレの上に覆い被さった。
オレの耳元で荒い息遣いが響く。
「マサヒコ君…愛してるわ……」
オレはアヤナの髪を撫でようとした。が、腕は縛られたままだった……。



「ふう……」
ようやく解放された自分の手を擦り、オレは息を吐いた。
痛くはないが、縛られていた部分がやや赤くなっている。
「なあアヤナ…今更こんなこと言うのもなんだけど、何もこんな方法でなくてもよかったんじゃないか?」
オレは横で脱力しているアヤナに声をかけた。
「煩いわねぇ…普通に迫ったんじゃ逃げられるかもしれないでしょ。」
アヤナは気怠そうにこちらを向いた。
「それに、これはお姉様のアドバイスでもあったのよ」
「中村先生の?」
「そう。お姉様、昔この方法で豊田先生から主導権を奪取したんですって」
「ああ、そうですか……」
オレは中村・豊田両先生のやり取りを思い出した。
(ちょっと待て…ということは、オレ達もああなるのか……?)
自分の想像に思わず身震いする。
「どうかしたの?」
「あ…い、いや、何でもない……」
そうは言いながらも、不思議そうにこちらを見上げるアヤナの顔が、
あの眼鏡をかけた悪魔と重なって見えて、オレはもう一度小さく身震いした。


(fin)

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