作品名 作者名 カップリング
No Title クロム氏 -

ある晴れた日。小久保宅。マサヒコの部屋の前。
パタン。
自室のドアをそっと閉める。
まるで、部屋の中の『現実』を拒絶するかのように…。
(OK、ひとまず落ち着こう)深呼吸。
(まずオレは買い物に出かけた。ノートと消しゴムを買った。それは今手に持っている)
ここまでは何の問題もない。
(次だ。家に帰ると母さんはいなかった。まあどうせカラオケだろう。いつものことだ)
これも問題なし。
(そして、今オレは自分の部屋の前にいる。間違いなく、ここはオレの部屋だ)
まあ間違えるわけもなく。
(だとしたら…)
そっとドアを開ける。
バタン!!
再びドアを閉める。荒々しく。力の限り。
まるで見てはならないものを見てしまったかのように…。
(だとしたら、アレは何なんだよ!!)
心の中で絶叫。

わが目を疑う光景に直面した時、人は二通りの方法でそれを回避しようとする。
一つは、目の前の状況を無理やり自分の常識の範疇に収めてしまう方法。
そしてもう一つは…
(忘れよう。オレは誓って何も見ていない)
…現実逃避。
そっと回れ右をし、静かに現実から離れようとするマサヒコ。
しかし、その先に救いの道はなかった。
突然ドアが開き、そこから伸びた手がマサヒコの襟首をしっかりと掴まえたのだ。
「何で逃げんのよ。」
手の主。日常の破壊者。中村リョーコ。一度掴まったら逃げられない。
「あああ〜」
断末魔のような悲鳴と共にこちらの世界に連れ戻されるマサヒコ。
こうなったらもう諦めるしかない。ガックリとうなだれて、リョーコの方に向き直る。
逆らうのは自分の首を絞める結果になりかねない。
だがしかし。そこで妙なことに気付く。
いつもなら怖いもの無しであるはずのリョーコの顔に、はっきりと動揺の色が見て取れるのだ。
「待ってたのよ、アンタのこと」リョーコはそう言うと自分も廊下に出て、後ろ手にドアを閉めた。
「あれはもう私達の手には追えないわ。後のことはアンタに任せるから、しっかりやんなさい」
一方的に捲し立て、その場を離れようとするリョーコ。
今度はマサヒコがその腕を掴んだ。
「待て。せめてこの状況を説明していけ」
「いやよ」「何故?」「面倒臭い」「なんだそりゃ!?」
微笑ましいやり取り…。
そうこうしているうちに、再度ドアが開いた。
「先生〜」「先輩〜、置いてかないで下さいよ〜」
的山リンコと濱中アイ登場。
二人とも何故か虚ろな眼をしている。
「先生…。的山も。中で何があったんですか?」
マサヒコがそう尋ねた途端、二人の表情は恐怖に凍り付き、ボロボロと大粒の涙をこぼし始めた。
「中村先生…」
「ったく、仕方無いわねぇー」
二人に比べると比較的冷静なリョーコにより、漸く事の真相が明らかにされた。



「な、なんじゃそりゃー!?」開口一番、マサヒコ絶叫。
「そういうわけだから、しっかりね」
「いや、待って下さいよ。原因はアンタらでしょうが」つめよるマサヒコ。
「それはそうだけど、もう頼れんのはアンタだけなの。
それに、ここはアンタの部屋でしょ?つまりアンタにも十分責任はあるのよ!」
ビシッとマサヒコを指差すリョーコ。あまりの理不尽さにマサヒコ絶句。しばし茫然。
そして、気付いた時には三人の姿は見る影もなかった。
「な、納得いかねぇーーー!!!」聞く者のいない叫びが、虚しく響いた…。

ドアノブに手を掛け、ゆっくりと回す。
この扉の向こうになにがあろうと、もはや退路はない。
そっとドアを開け、中の様子を伺う。
ドアの隙間からみえたのは、彼の幼馴染み、天野ミサキの背中であった。

アイが家庭教師に付いて以来、ミサキがこの部屋に出入りする機会も多々あった。
それ故、彼女がここに居ること自体には、何の問題もない。
問題は、部屋中に転がる、缶、カン、can。言うまでも無く、未成年が飲んで良い類いのものではない。
そして何より、部屋の中央に座する少女の両手には、
転がっているものと同じラベリングのなされた缶がしっかりと握られているのであった…。

要約すると、リョーコの口からなされた説明は次の様なものであった。
マサヒコが出かけた直後、ミサキが小久保家を訪問。
これ幸いとミサキに留守番を押しつけ、マサ母外出。
五分後、リョーコとリンコが用もなく登場。
さらに五分後、マサ母にバッタリ出会ってしまったためにこれまた留守番を押しつけられたアイが登場。
「冷蔵庫の中のもの、勝手に食べたり飲んだりしていいから」
そう残していったマサ母の言葉に従い冷蔵庫から飲み物を取り出し、
他愛ない世間話がなされていたのであった。
あったのだが。
「リン、飲み物の追加とって来てよ」
リョーコのこの一言が、惨劇の引き金となった。
「ハーイ」素直に従うリンコ。
しかし二分後。
(あ、コレは…)
リンコの持ってきたドリンクをみて、ハッとするリョーコ。
いわゆるチューハイ。ジュースと間違えて誤飲、病院に運ばれるケースも多々あるので注意が必要。
良識ある大人なら決して未成年に飲ませたりはしない。良識があれば。
(黙っててみよう。面白そうだし)
…どうやらなかったようで。
これが失敗だった。
後はご想像の通り。それを飲んでしまったミサキが悪酔い。
リョーコですらも酔っ払いには勝てず。いわんやアイ・リンをや。
アイ・リンがミサキの異変に気付いてソレを飲まなかったのが唯一の救いである。
その後マサヒコが帰宅するまで、素面の三人はひたすらその狂宴に耐えていたのだという。




(ほぼ100パーメガネの責任じゃねーか!)心の中でリョーコを呪うマサヒコ。
しかしそんなことで事態が改善されるはずもなく。
かといってこのまま放置できるはずもなく。
覚悟を決めて虎穴に踏み込んでいった。

「よ、ようミサキ。大丈夫か?」
彼女の背中に向けて当たり障りのない言葉をかけてみる。
「……」   無反応。
「わ、悪かったな、留守番なんかさせて。母さんにも困ったもんだよ」
「……」   無反応。
「ま、まあオレも帰ってきたし。今日のところはお開きってことで…」
バッ!突然ミサキが振り返る。
濁った目、半開きになった口、無表情。…正直怖い。
以前にも酔った彼女を見たことがあったが、今の様子はその時の比ではない。
無言のまま、機械染みた動作で自分の横を指差すミサキ。座れ、という意味だろう。
逆らえようはずもなく。恐る恐る彼女の横に腰を下ろすマサヒコ。
「な、なあミサキ…」無言のプレッシャーに耐えられず、とにかく話しかけてみる。
「お前の飲んでるそれ、健全な中学生には少し早いんじゃないかなーなんて思ったりして
…ないです…」
睨まれて敗北。まあ仕方無いが。
(うーん、マジでヤベーぞ。何とかしてこいつから酒取り上げねーと…。
色々取り返しのつかないことに…)
グッ。突如目の前に突き出された缶に、思考中断。
ミサキが手にした缶の一方を差し出していた。
これが意味するものは一つなわけで。
「いや、オレは…」
「………飲めないの?私の酒が?」無機質な声。
「…いただきます」涙を流しつつ缶を受け取る。
逆らえない。逆らえるわけがない。
半ば自棄になって中身をあおるマサヒコ。
いっそこのまま自分も酔いつぶれることができたならどんなに楽だろう、とか考えながら。



三十分後。次々と突き出される酒を延々とあおり続けたマサヒコ。
ついに、部屋に残された最後の一本を飲み干した。
(やった…やっと終わった…よくやったぞ、オレ!)息も絶え絶えに、そんなことを考える。
「……無くなっちゃった?」
「あ、ああ。だからもう終わりに…」
解放されたい、この狂宴から。その一心でミサキをなだめる。
しかし、宴はまだ終わらない…。
「ねぇ、マサちゃぁん、目瞑って」
「へ?なんで?」予想外のミサキの言葉に間抜けな返事を返すマサヒコ。
「……瞑れよ」  圧力。
「……ハイ」  服従。
(何されんの、オレ)言われるままに目を閉じ、恐怖に耐えるマサヒコ。
だが、十秒が過ぎ、二十秒が過ぎても何も起こらない。
耐え切れずに目を開ける。
「あれ?」
ミサキがいない。
(ミサキはどこに…)
ドサリ。背中に重圧。恐る恐る振り返ると、背後霊、もといミサキが背中に覆いかぶさっていた。
すぐ近くにミサキの顔。
「フフフ……」  笑っている。声だけが。顔は無表情のまま。
(マ、マジで怖い)幼馴染みの放つ異質な雰囲気に戦慄する。
アイやリンコがあそこまで怯えていた理由が理解できた。
「ねぇ、マサちゃァん」ミサキが耳元で囁く。
「な、何でしょう?」
「ワタシのこと、好きィ?」
「へ?」予想外の言葉に再び間抜けな声をあげる。
「好きなのォ?嫌いなのォ?男ならはっきりしなさいよ!」突如激昂。
「い、いや、オレ達幼馴染みじゃん?それにお前とはマジでいい友達だと思ってるし、別に嫌いってことは…」
「それだけぇ?そんなんで女の子が満足するとでも思ってんのぉ?」
無機質に間延びした声が、しだいに怒気を含んでいくのがわかる。
「いや、お前のことは兄妹みたいに思ってたし、今までそういう風に見たことがないっつうか…」
しどろもどろになりながらも、何とかこの場を回避しようとするマサヒコ。まあ努力はしたのだが。
「分かったぁ。マサちゃん、アヤナちゃんとかアイ先生みたいに、胸の大きな子が好きなんだ。
どーせワタシのは小さいですよーぉ」  泣き出してしまった。
「いや、好きとか嫌いとかじゃなくて…そ、それに胸小さくてもあんまり気にならない…」
フォローを試みるマサヒコ。…まああまりフォローになっていないが。
「そ、そんなことより、お前少し酔ってんじゃないか」
少しでないのは誰の目にも明らかだが。
「うん、ここは早く家に帰って休んだ方が…」
言い終わらないうちに、ミサキに異変。
何かを考えるように顔をしかめると、次の瞬間パァっと笑顔になる。



「ワタシ、酔ってるのぉ?」
「う、うん。だから早く休んだ方が…」
「そうかぁ〜、ワタシ酔ってるんだぁ」
どうやらマサヒコの言葉の後半は無視されたようで。
それでも懸命にこの場を収拾しようと試みる。
「なあ、帰るのが面倒なら酔いが醒めるまでそこの…」そこのベッドで寝てて良い。
そう続けるはずだった。だができなかった。何故か?

ドタッ!突然床に引き倒されたからである。
「イテテ…何すんだよ、ミサ…キ…」  そこで凍り付く。
気付くとマウントポジションを取られていた。
「フフフ……」笑っている。今度は満面の笑みで。
ガシッ。両手で顔を掴まれる。
(ヤバイ、このままだとオレの生命は確実に危険にさらされる!)身の危険を感じ、抵抗を試みる。
「ま、待ってくれミサキ!落ち着こう!いつものお前ならこの状況が明らかにおかしいのが分かるだろ!?」
だが。
「フフ、マサちゃぁん、ワタシ酔ってるんだよ?酔っ払いに理屈が通じるわけないでしょう?
それにね、酔っ払いは何しても許されるんだよぉ」
それは違う、とつっこもうとしたマサヒコ。
しかし、その口は塞がれていた。ミサキの唇によって。
(!?)
あまりに突然の出来事に何が起きているのか理解できないマサヒコ。
事態が認識できたのは、ミサキが漸く顔をあげてからであった。
「ちょっ、おまっ、何してんだよ!」
「あれぇ、分かんなかった?じゃあもう一回」
再び口を塞がれる。抵抗できない。諦め、されるがままのマサヒコ。
だが、今度はそれだけでは終わらなかった。
何かが口の中に侵入してくる。それがミサキの舌だと気付くのに数秒を要した。
ディープキスの未知の感触に固まるマサヒコ。
たっぷり三分はそうしていたであろうか、漸くミサキが体を離す。
自分もミサキも口の周りが唾液にまみれているのが分かる。
「ウフフ…」楽しそうに笑うミサキ。片や、ぐったりするマサヒコ。
「なあ……気が済んだらそろそろオレの上から降りて欲しいんだが」
ここまできても一応の抵抗を見せる辺りは、やはりマサヒコであるが。
「何言ってるのぉ、これで終わりなわけないでしょう」  一蹴される。
「ねぇマサちゃん」
「…何でしょう」
もはや逃げられない。とすれば、彼に残された道は一つ。
なるべくさからわず、覚悟をキメて嵐が過ぎ去るのを待つだけである。
「Hしよ」  そう言って服に手を掛けるミサキ。
「な、なにぃ!?」  覚悟崩壊。
「ちょっ、ちょっと待て、ストップ!」
不自由な体勢から、必死でミサキの手を止める。
「落ち着こう、ミサキ。とにかく待て…だから服を脱ぐなぁ!」



「もう、何なのよさっきからぁ。マサちゃん、そんなにワタシとするのが嫌なのぉ?」
「い、嫌とかじゃなくてだな、ほら、オレらまだ中学生だし。まだそうゆうのは早い・・・」
「ワタシのファーストキス奪っといて何言ってんのよぉ」
「うっ…」 奪われたのはむしろオレの方なんだけど、とは言えない。怖いから。
「い、いや、あれだよホラ、すっげぇ卑猥だぞ。いつもみたいに…」
「当たり前でしょ、卑猥なことするんだからぁ」
「だから、そうじゃなくてだな…」
「それとも何?やっぱり胸の小さい子は嫌なの?はっきりしなさいよ!」
「い、嫌じゃありません!」
ミサキの背後から立ち上ぼる闘気に思わずそう叫ぶ。
逆らえば死ぬ。確実に。
「じゃあいいじゃない、問題なし。ねぇ、しようよぉ」
そう言って再び服を脱ぎ始める。
「それにね、マサちゃん。これでもワタシ、毎日バストアップ体操もしてるし、
マッサージだって欠かさずやってるんだよぉ。全部あなたのためなんだからね。
マサちゃんには、ワタシの努力に答える義務があるのよ」
「そうなのか?」
「そうなの。だからよく見て」
ついに一糸纏わぬ姿になるミサキ。
「どう?ワタシ、キレイ?」
だがマサヒコはそれどころではない。
目の前の幼馴染みの裸体を直視できない。ギュッと目を瞑る。
(落ち着け、オレ。このパターンは、こいつが酔いつぶれて寝ちまうオチのはずだ!それまで耐えるんだ!)
心の中で自分を励ますのだが。
「駄目だよぉ、マサちゃん。そのオチは他の職人さんがもう使ってるんだから。パクリは良くないよぉ」
「あああ〜」  マサヒコ、本日二度目の断末魔の叫び。
…失礼致しました。



まあとにかく。逃げられそうにない。
それに実を言えば先程から、正確には唇を奪われた辺りから、密かに興奮はしていたわけで。
しかし。それでもやはり、マサヒコはマサヒコなわけで。
残った理性を総動員する。
「ミサキ、とにかく落ち着いてオレの話を聞いてくれ」
「ワタシは冷静だよ」
「いいから聞けって。さっきも言ったけど、オレはお前のこと、マジで良い友達だと思ってる。」
「……」
「だから、それがこんな形で崩れたりして欲しくないんだ」
「…関係ないよ、そんなこと」
「関係ないってお前…」
「ワタシは…ワタシはマサちゃんに抱いて欲しいの」
ややうつむいてそうもらすミサキ。
「…なあ、やっぱりマズいよ。お前も酔ってるからそんなこと言うんだろうし。やっぱり止めにし…」
最後まで言い切ることができなかった。
うつむいたミサキの瞳に、涙が溜まっているのに気付いたから。
「マサちゃん、やっぱりワタシのこと嫌いなの…?」
涙が一筋、こぼれ落ちた。
「マサちゃんが…マサちゃんが悪いんだよ。ワタシはこんなにマサちゃんのことが好きなのに。
ワタシの気持ちに気付いてくれなくて。いつも、ワタシはあなたを見てたのに。
あなたにもっと、ワタシだけを、見ていて欲しかったのに!」
「ミサキ…」
言いたくても言い出せなかった、自分の胸の内。溜まったものを押し流すように、涙は流れおちる。
そっと、マサヒコはミサキを抱き寄せた。
「あ……」
「ごめんな、ミサキ」  少女の耳元で囁く。
「オレ、馬鹿だから。何となくお前の気持ちにも気付いてたけど、
どうしたらいいか分からなかったんだ。…一言言えば良いだけだったのに」
「マサちゃん…」
もう一度、強くミサキを抱き締める。
言うのをためらっていた。分かっていたのに。
自分の本心を、どこか深くに押し込めていた。
言ってしまえば、居心地の良い日常が壊れてしまいそうで。
それが怖くて。
だがそのせいで、今目の前にいる少女は涙を流している。
オレが臆病だから。
失うことを恐れていたから。
この涙は、オレが流させたんだ。
…もうためらわない。
彼女を悲しませてはいけない。
今なら言える。
「オレ、お前のことが、スゲー好きだ。在り来たりな言葉だけど、これが、オレの本当の気持ちだ」
返事はなかった。その代わり、しばらくの間、部屋には少女の啜り泣く声が、小さく響いていた。



少し暗くなってきた部屋。
その片隅で、生まれたままの姿になった少年と少女が、互いの唇を貪り合っていた。
「…く…うん…」
激しく舌を絡めあう。
映画のようにスマートなキスではなく、もっと雑な、本能のままのキスに、思わず息を漏らす。
二人が唇を離した時には、息苦しさと興奮とから、どちらの顔も真っ赤になっていた。
荒い息遣いのまま、マサヒコはミサキの体に触れる。上気した肌を、そっと撫でた。
「んっ…」
生まれて始めて受ける愛撫に漏れそうになる声を、必死で押さえている。
ギュッと目を瞑り、込み上げて来る感覚に耐えていた。
(ミサキ・・・スゲェ可愛い)
見慣れたいつもの姿とは違う、ゾクリとする色気を伴った幼馴染み。
まだ抜け切らないアルコールも、それを助長しているようだ。
その容姿に、マサヒコの理性も限界に近付いていた。
愛撫する指を胸の辺りに持っていく。
小さいながらも確かに女性として成長したその部分に、そっと掌で触れる。
「マサちゃん…ワタシ、胸、小さいから…恥ずかしいよぉ」
「関係ないって言ったろ?それにミサキ、すごくキレイだ」
そう言うと、胸への愛撫を止め、代わりにその部分に口をつける。
「え!?あっ、だ、ダメッ…」
目を瞑っていたために、いきなりの刺激に驚き、思わず声をあげる。
「あっ…うっ…!」
マサヒコの舌の動きに合わせて、ミサキの口から声が漏れる。
「あん…あうん…あっ…はぁ」
ミサキの反応を楽しみつつ、さらにもう片方の乳房にも愛撫を加える。
「あぁ、マサちゃん…。やだ、気持ちいいよぉ」
その言葉を受けて、マサヒコの愛撫も激しさを増す。
胸部への攻撃を止めると、ゆっくりとミサキの秘部に指を這わせていく。
「うっ…あああっ!」
敏感な部分への刺激に、ミサキの声が一オクターブ高くなる。
その唇を再び自分の唇で塞いだ。
もう一度激しく舌を絡め合いながら、指でミサキの秘所をなぞる。
「んっ…くふ…ふぁぁ…」
ミサキの口からこぼれる声からも、感じているのがはっきり見て取れる。
秘所を刺激するマサヒコの指も、いつの間にか愛液でベトベトになっていた。
「ミサキ…入れるよ…」
「うん、いいよ…。来て…」
自分のソレをミサキの秘所にあてがい、ゆっくりと沈めていく。
「うっ…くっ…」
先程までとは打って変わって、ミサキの表情がみるみる苦痛にゆがんでいく。
「大丈夫か?無理なら止めてもいいんだぞ」
「ううん…大丈夫だから…」
痛みに耐え、精一杯の笑顔を作ろうとする。
「分かった…ゆっくりいくから、力抜いて」
ゆっくりと、しかし確実にミサキの中にマサヒコのモノが埋まっていく。
マサヒコの背中に、ミサキの爪が食い込む。
彼女の痛みに比べたら、自分の感じる痛みなど無いに等しい。
漸く、根元まで入り切る。
「ミサキ、全部入ったよ」
そう言うとミサキの額に軽く口付けする。
「うん…やっとマサちゃんと…一つになれたんだね」
「痛くないか?」
「うん、痛い…。痛いけど…嬉しい」
大好きな人と結ばれた幸せ。痛みでさえも、その幸福の印であった。



「じゃあ、動くよ」
そう言って少しづつ、ゆっくりと腰を動かす。
「うっ…はぁ…あっ…あっ…」ミサキは苦しそうな声をあげた。
ミサキの中はきつく、自分が動くたびに彼女に苦痛を与えているのがわかる。
「大丈夫か?」   もう一度問い掛ける。
「うん、何か…変。痛いけど……気持ちいいの」
嘘だろう。
お互い初めて同士、自分はともかく、おそらく彼女に快感などないに違いない。
しかし、マサヒコは動きを止めなかった。
痛みに耐え、健気に自分を気遣ってくれる幼馴染みのために。
「そろそろだから……もう少し強く動くよ?」
声を出さず、首だけで頷くミサキ。
そんなミサキの頬に手を添え、軽くキスをする。
そして、動くことに集中する。
「あっ…ああっ…あっあっ…!」
ミサキがマサヒコの首に腕を回し、ギュッと力を込める。
マサヒコも限界に近付いていた。
「ミサキ、オレ…もう」
「うん、…来て…来てぇ…!」
絶頂を迎え、中に射精する。
ドクドクと溢れる精液に、ミサキの体が二度三度と痙攣した。

どのくらいそうしていただろうか。
気がつくと部屋の中はすっかり闇に覆われていた。
「ねぇ、マサちゃん」
傍らの少女が話しかけてくる。
「ん?」
「こんなことになっちゃったけど、後悔しない?」
「……するわけないだろ。ミサキは、オレの大切な人なんだから」
そう言ってミサキを抱き寄せる。
伝わってくる体温が心地よかった。
「うん…ありがとう…」
最後の方はかすれて聞き取れなかった。泣いているのかもしれない。
その姿があまりに愛しく思えた。
少し濡れたミサキの頬に軽く触れ、再び唇を重ね……




「ただいま〜。マサヒコ、いないの〜?」
絶妙の(あるいは最悪の)タイミングでマサ母帰宅。
「ヤバイ!母さんだ!」
大量の空き缶、裸で抱き合う男と女。
こんなモノを見られたら、トンデモナイコトになるのは目に見えている。
とにかく、服だけでも着なくては、言い逃れもできない。
「ミサキ、何してんだ!お前も早く服を…」
返事はなかった。
代わりに聞こえてきたのは、スゥスゥという規則正しい寝息であった。
ただでさえアルコールに弱い彼女が、今まで意識を保っていた方が不思議なくらいで、
そのツケが今になって現れたのであるが…。
「お、おいマジかよ!洒落になんねーぞコレ!」
「おーい、マサヒコ。いるなら返事しなさいよー」
階下から母の声が近付いてくる。
「ああ、クソ!」

その後、大急ぎで自分の服を身に着け、不審がる母を無理やり追い返し、
眠ったままのミサキに服を着せ、こっそりと家まで運びこむ、
という離れ業を何とかやり遂げたマサヒコ。
しかし部屋に残る空き缶を発見され、大変なことになったことは、
あまり深く追及しないでおこう。

(fin)

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