作品名 作者名 カップリング
在りし日のめもりー 82氏 マサヒコママ×マサヒコパパ

ん……んっ…………あ、はぁっ……うん、くぅ……っ。

一定の間隔で響く声。薄い暗がりの中で蠢く一組の男女。
その一室は甘ったるい熱気で満たされ、二人の裸体にねっとりと絡みついている。
もう如何ほどの時間がたっただろうか。
食べる、寝る、そして相手を求める―――飽く事無く、単純なサイクルを繰り返すうちに、
普段の時間の感覚はすっかり狂っていた。
たぶんまだ、連休の中ほどだと思うのだが……。

「フ、ん……ね、今度は……」
いいように貫かれていた女は、不意に男の身体をどかし、寝かせつける
そうしておいて、今度は自分が男の上に跨り始めた。
「いくよ、いいよね?」
眼下の相手が頷くのを確認して、女は自分の秘所に男根をあてがい、
ためらいもせずに腰を落としていく。
ぶじゅ、っ、じゅじゅ。
「あ、ああぁぁ―――……」
愛液がかき混ぜられる音と同時に、ゆるゆると、湿った嬌声が漏れ、
女の顔はより強い歓喜の色に染まった。
押し寄せる快感に、腰はピクン、ピクンと軽く震え、
咥え込んだ男のモノを気持ちよさげに味わっている。

「やっぱり、私、このカッコが好きだな…………ぁあんっ!?」
女の感想、その語尾は急に跳ね上がった。
原因は下になる男の突き上げる催促による。
「ちょっと、やァん、まだ、まだぁ、じっとしてて、よ……ぉ」
「あまり待たせるなよ。イジメみたいだぞ?」
「だから、んもぅ、今度……はぁっ、私がリードするっ、番だってばぁっ!」
男の呼びかけにそう抗議し、わずかに目を吊り上げると、女もすぐ腰を揺すり始めた。
阿吽の呼吸か、その艶かしいくねりは、間もなく男の突き上げと同調されていく。
ギシッ、ギシッ、ギシッ。
二人の乗るベッドが、かすかな軋みを鳴らす。
時には左右に、時には円形に。
二人だけの時間で、自分の欲情に素直になっている彼女は、
騎乗位となった格好で存分に腰を操る。
「ふ、ふぅん、あぁ……イイ、イイよぅ。アナタので、いっぱい、激しっ! ん、ンンぅ!」
普段はさっぱりとしている性格の反動か。
交わる時の彼女は、いつも執拗なまでに悦びを表に出したがった。
それは、今日のこの時も例に漏れない。

恥ずかしげも無く、情熱的な、そして淫らな言葉が口から紡がれる。
「ねぇ、どぉ? ア、アナタも……気持ちいい、かな……っ」
「ン……わかってるクセに、今さら言わせるなよ……」
女の腰を掴み、ズブリと、また一段と深く挿れ込んでから、
男はニコリと笑って、もう1つだけセリフを付け加えた。
イイ女だよ、お前は―――女にとって、最上級といっていい褒め言葉が、
彼女の耳の奥を優しく刺激する。
「えへ、へ……」
むず痒そうに眉を寄せると、女はより激しく腰を動かしていった。
片方の手で自分の乳を揉み、もう片方の手は背後に回し男の太ももに沿え、
動かしやすいように身体のバランスを保つ。
そうしつつ、自分の最も感じる部分を、突き立てられた男の肉棒を以って、探し当てていく。
「あ、くうっ、とろける……これイイッ、中にっ、こすれて……はふぅん、ふっ、ふぅ、もう腰が勝手にっ!」
探し当てる間にも、熱く勃った塊は、諸所の肉壁を擦り沿っている。
そこから生まれる快楽のパルスは、強く、弱く、脳の奥から背筋にかけて走り、
他の感覚を泥のように溶かしていった。
もはや、女も、そして男も、脳内に響く共感の大半は、交わりから来る悦びに占領されている。

「ひっ!」
最も敏感な部分が擦れ合った瞬時、より一層強い刺激のうねりが沸き起こった。
それはすぐに意識のグリーンゾーンを越え、イエローゾーン、そして限界点まで近づいていく。
「っく、ダメになる、おかしくなっちゃうぅ。ねぇ、私、もう、もう……」
むせび泣く声はところどころで裏返り、女の方は完全に余裕をなくしているように見てとれた。
「お願い、アナタも…………あ゛ぁっ!? ま……またイッちゃう、先にイッちゃうよぉ!
 一緒にイキたいのに、止まらない、アソコが止まらないのっ!!」
女は訴える。ガクガクと身体をゆすり、ただひたすらに上下運動を繰り返しながら。
「ねぇ、イこ? ねぇ! 一緒に……お願い、私だけじゃイヤッ」
「んっ!」
男も頷くと、腰を強く打ち込んだ。繰り返されるグラインド運動が、柔肉を蹂躙していく。
溜まりに溜まった精液は、先端に押し上げられ、解放の瞬間を待つ。そして―――、
どぷぅ―――ぐぷっ、ぐぷぅ。
一気に放たれたそれは、愛液と交じり合い、彼女の中をめいっぱい満たした。
「あぁ、ぁはあ…………アナタの熱ぅい、熱いよぉ。すご……たくさん、こんな……の」
ほぼ同時に登り詰めた女は、ガクンと前に倒れ、男の胸に身を投げ出した。
こぽり、こぽり、となお、痙攣した膣内では、二人分の欲望が波打っている。

部屋の中では、しばしの間、男女の満たされた息遣いが響いていた。


「……とまぁ、こんな風に、あの頃は私も激しく―――」
と、しばしの間続いた思い出話は、帰宅した少年の声で断ち切られた。
「ただいまー…………って、アレ?」
マサヒコが玄関を上がり、台所を覗いたところで、その表情は若干疑問めいたものになった。
「あら、お帰りなさい」
出迎える声は普段の母のもの。
マサヒコの視線はまず母へ、
次にテーブルを挟んで母の向かいに座っているミサキの方に向けられた。
「二人で何してんの?」
何か口をモゴモゴ動かす彼女に代わり、マサヒコママが応えた。
「あぁ、ミサキちゃんね。アンタに何か借りたいものがあったらしいけど、
 マサヒコ出かけてたでしょ。
 で、暇潰しってわけじゃないけど、女同士で話してたの、ねー?」
「は、はいっ」
同意を求められて頷くミサキの声は、妙に舞い上がっている。
それだけでなく、よく見るとその頬は火照りっぱなしになっているようだった。
何か、言いようも無い悪寒を覚え、マサヒコは母に確認をする。
「あー……念のために聞きたいんですけど、二人でどういうお話を?」
「別にぃ。私ぐらいの大人だったら、フツーの話だけど」
「いや、だから、内容は……」
「私の若い頃の話、若い頃の。そうねぇ、もっと具体的に言うなら……」
マサヒコママは、あごに手を沿え軽く首を傾ける。
「お父さんと夜を一緒に過ごした時とか、
 褥を共にした時とか、身体を寄せ合った時とか……」

あっという間に青ざめるマサヒコと、真っ赤になるミサキ。
対照的な二人を尻目に、会心の回答を思いついたという風に、マサヒコママは手をポンと叩いた。
「そうそう、ぶっちゃければ私らの子作りの時の話」
もちろんマサヒコを、ね…………と結ばれた瞬間、彼女の息子はついにブッ!と吹き出した。
脱力し、バランスを崩しかける身体を必死に堪え、混乱する中で思わず怒鳴り返す。
「なんでそんな話してんだよ!!」
「いやホラ、人生の先輩として」
「だからって、そんな話するか!?」
「いーじゃない、女同士なんだし」
「よくねーっ!! コイツは他人(よそ)様だろ!!!」
矢継ぎ早に声を上げるマサヒコ。しかし、余裕たっぷりにマサヒコママはにやける。
「あらァ、本当にミサキちゃんは『他人様』なの?」
「な、何だよ、その言い方は」
一瞬、たじろいだマサヒコを興味深そうに眺めながら、マサヒコママはうんうんと頷く。
「ま、いーけどね。息子のアンタがそういうなら、そういう事にしておくわ。今は、とりあえず」
どうにも形勢が悪くなり、マサヒコは、「あのぅ、私も……そういうの……よく聞きたくて、その……」などと
モジモジ呟いているミサキを慌しく立たせた。
そのまま―――意味深に笑う母を視界に入れないようにしつつ、
彼女の手を引っ張って、二階へ向かおうとする。
ようやく台所のドアを開いた少年の背後に、母から最後の声が響いた。
「マサヒコォ、今更だけど、欲しいならどっちが欲しいー?」
「何がっ!?」
「んーと、妹か弟か。要望があるなら、お父さんともっと頑張ってみるけどぉ」
「知るかーっ!!」
バタン!―――荒々しくドアが閉められ、忙しげな足音が階上へと消えていった。

「あー、面白かった」
くっくっ……と、人の悪い笑みをこぼし、マサヒコママは一人ごちた。
息子と、その幼馴染が、まんざらでもない仲となっている事は、既に感づいていた。
故に、二人をセットとした弄ぶり甲斐もまた、面白いぐらいにあるのだが。

「……けど、本当に父さんと『溺れてた』頃もあったわよねぇ……」
先ほど、ミサキに話していた事のほとんどは事実だった。
今でこそだいぶ落ち着いてきたが、かつては一日中抱きあって、
それでも物足りなく感じていた日々も、夫婦の歴史に刻まれている。
ふと振り返って思う。余程、夫―――あの人との相性が良いのだろうか、と。
今でも月に何度か、外泊で燃え上がる夜もあるが、
互いの濃厚な責めの前に、我を忘れる事も少なくないのだから。
「また、新しいプレイでも開発しようかしら……。
 あ、そーいえば、最近は成年本やレディコミもネットで取り寄せられるんだっけ」
知識の源泉を得る手段として、新たなモノがある事に気付く彼女。
若さを失わぬ主婦は、来るべき夫との夜を想い、
思索の狭間に意識をゆだねるのだった。

〜〜〜END〜〜〜

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