作品名 |
作者名 |
カップリング |
リョーコ14歳/誘惑 |
541氏 |
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§ 誘惑
放課後の音楽準備室。
「どうぞ」
「はい、いただきます」
リョーコは、音楽教師から渡されたカップを手にとった。
立ち上る湯気に乗ってココアの甘い香りが部屋に拡がる。
「音楽が五教科に入っていないからといって、いい加減
な態度で授業をうけてもらっては困るわ。」
「そんなつもりはありません。ただ今日は考え事をして
いて…」
「それがいい加減ってことなのよ。授業中は授業に集中
しなさい」
散々な一日だった。学校医の前で逆上し、廊下で下着姿
を披露し、音楽教師から放課後に呼び出されて説教中…
いつもの彼女ならば、ブチキレて街へ夜遊びに繰り出す
ところだが、暴行未遂事件の直後では、そんな勇気も無
い。
「お返事は?」
「はい、申し訳ありませんでした。三浦先生」
本心では、五教科以外は適当にやれば良いと考えている
リョーコであったが、文句のつけようのない優等生的な
返答をした。
(満足した?これで解放してよね、先生)
三浦はさらに何か言いたそうであったが、諦めて
「…わかればいいのよ。冷めないうちにどうぞ」
と話を切り上げた。
リョーコはカップに口をつけ、中身をゆっくりと啜る。
ココアの甘い味が口の中に拡がった。
一方、三浦は自分のエスプレッソカップを手にとると、
濃くて熱い中身を一気に飲み干した。
三浦はリョーコがカップの中身を飲み干す様子をじっと
眺めていたが、やがてリョーコの背後にまわり、肩に手
をかけて言った。
「中村さん、事件のことは聞いてるわ。大変だったわね」
(またその話。もう、うんざり)
もちろんあの事件は、まだ生々しい体験として彼女の中
にある。体に染み付いた恐怖も抜けていない。しかし、
他人から同情めいた言葉をかけられるのは、まっぴら御免
だった。
三浦はリョーコの肩に置いた手に力を込めて続けた。
「問題を自分だけで抱え込んでいてはダメよ。どこかで
吐き出さないと。。。」
(ゲロをですか?三浦先生)
音楽教師三浦の失恋ヤケ酒ゲロ事件は、生徒で知らぬも
のがいない有名事件である。リョーコはニヤリと笑った。
もちろん、背後の三浦には彼女の表情は見えない。
「あら、中村さん」
「えっ」
リョーコは思わずドキリとした。
内心で三浦を揶揄したことを見透かされたと思った。
「貴方、かなり肩が凝ってるわね。揉んであげるわ」
「はあ…」
「私、マッサージは上手いのよ。気持ち良くしてあげるわね」
「え、そんな」
「はいはい、遠慮しないで。眼を閉じて力を抜いて」
揶揄したことで少々引け目を感じていたリョーコは、三
浦の為すがままに身を委ねた。三浦の指先が、リョーコ
の肩先から首筋へ、首筋から背中へリズミカルに動いて
ゆく。リョーコは、自分の体から緊張が解けていくのを
感じた。三浦のマッサージの腕は確かなようだった。
「どう?」
「気持ち、、良いです」
「私、ピアニスト志望だったのよ。だから指遣いには
自信があるのよ」
(ピアノとマッサージの腕前は関係は無いじゃん)
リョーコは心の中でツッコミを入れた。
背中から腰までの指圧を終えると、三浦は指先を揃えて
リョーコの背中全体をゆっくりと擦り始めた。ある時は
強く、かと思えば、触れているかいないか微妙なタッチ
で背中を指が走ってゆく。くすぐったい感触、、やがて
それは快感に変わっていく。
「ぅん」
リョーコは軽く呻き声を上げた。三浦はそれを待ってい
たかのように、今度は指先をわき腹からバスト下へ這わ
せてゆく。リョーコは、自分の皮膚感覚がどんどん鋭敏
になっていくのが判った。制服越しなのに三浦の指先の
一本一本の動きが感じられた。
「どう?」
「き、気持ち、、良い、です」
先ほどと同じ言葉だが、明らかに意味は異なっていた。
三浦は、リョーコの制服の下に手を差し入れ、脇の下か
らバスト上に指を滑らせた。その軌跡にそってリョーコ
の体に電流のように快感が走った。
「どう?もっと続ける?」
「あ、もっと」
「ん、目上の人にものを頼む言葉ではないわね」
一瞬、リョーコの中に反抗心が湧き上がったが、結局は
目の前の快楽に負けてしまった。
「つ、続きを。。お願いします」
三浦は返事を聞くと満足げに微笑み、すっと手を伸ばし
てリョーコの眼鏡を外した。
驚いて眼を開けたリョーコを、上から覗き込む三浦。
「貴方の目、綺麗ね。吸い込まれそう」
三浦は上から被さるように顔を近づけて、リョーコの瞼
の上に軽くキスをした。額に、鼻先に、両頬に、三浦の
唇が触れていく。
「せ、先生、いったいなニォ」
言葉の最後は口にできなかった。三浦の唇がリョーコの
口を塞ぎ、舌がリョーコの口蓋を優しく撫ぜる。口の中
に三浦が飲んだエスプレッソの苦味が拡がった。
(苦い、これが私のファーストキスの味?)
悪ぶって夜遊びもしてみたが、まだ夢見がちな14歳の
少女である。自分のファーストキスは、素敵な男性とロ
マンチックな場面でするのだという、ぼんやりとした憧
れのようなものがあった。年上の女教師と放課後の教室
でするなんて想定外である。これではまるで、安っぽい
エロ小説か、AVのシナリオだ。
三浦はキスを続ける。舌を深く差し入れると、リョーコ
の舌を絡め取って愛撫する。リョーコの心理的動揺には
お構いなく、それは快楽をもたらした。三浦が舌を後退
させると、リョーコは思わずそれを追って舌を突き出し
た。三浦の唇がそれを力強く吸い上げる。
チュボ
湿った音を立てて二人の唇が離れた。
「どう?大人のキスの味は」
「苦いです」
リョーコの返答には二重の意味があった。エスプレッソ
の苦味と、こんな形でファーストキスを奪われた苦さ。
「え? ああ、さっき飲んだエスプレッソのせいね」
三浦は意外な答えに戸惑ったが、二重の意味には気付か
ず、表面的な意味に対してのみ答えた。
(TO BE CONTINUED)