作品名 作者名 カップリング
リョーコ14歳/事件 541氏

重低音のリズムと煙草の煙が渦巻く週末のクラブ。
リョーコは暗い瞳で、ぼんやりとフロアで盛り上がる男女を眺めていた。
無邪気にはしゃぐ少女、暗い店内でもサングラスを外さない気取った男、その男
に絡みつくケバイ化粧の女が嬌声を上げた。
「えーっ、マジ17歳!私とタメね〜」

リョーコは目を凝らし、化粧女を興味深げに観察した。
塗りすぎの口紅に、センスの無いアイライン、細かく編んだ髪の下からのぞく
うなじは妙に幼い。男の目は誤魔化せても、同性の目は誤魔化せない。
(ふっ、私と同じ歳ぐらいね)
自分と同じ14歳前後だとリョーコは鑑定した。
(背伸びしたい年頃か)
彼女はシニカルな笑いを浮かべ、ジャケットからメンソールを取り出して火を付
けた。煙をゆっくり吸い込み、天井へ向けて静かに吐き出し、目を閉じた。
背にした壁から伝わる冷気が心地良かった。

中村リョーコ、14歳の秋。
中学校での成績はトップクラス。ロングの髪に、清楚な眼鏡姿。
周囲の大人たちからの評判は総じて良い。そんな優等生タイプの彼女であったが、
夏休み以降、彼女は夜の街に繰り出すようになった。原因は多々あるが、決定的
だったのは両親の別居だった。母の浮気をなじり、出ていってしまった父。その
父に会いにいけば、聞かされるのは母親への悪口ばかり。一方、浮気相手を娘に
紹介しようとする母。誰も彼女自身を気遣ってくれない。全てが疎ましかった。

「なあ、リョーコ。今夜はオール?」
目を開くと店の常連客の男が立っていた。自称K大二回生、イケメン。以前にも
何度か会話をしたことがあるが、彼の軽薄さがリョーコには気に入らなかった。
「なんだよ、タバコの火消えてるじゃん。そんなのをいつまでも咥えていないで、
オレのを咥えてくれよ」
(サイテー)
リョーコは火の消えたメンソールを灰皿に投げ込むと、彼に背を向けた。

「悪い、私帰る」
背後のイケメン軽薄男にそう告げると、リョーコはクラブのドアを抜けた。
(予定狂ったなー、どこで時間つぶすかな)
帰宅するつもりが無い彼女は、そんなことを考えつつ表通りへと続く狭い
階段を上っていた。そのとき、不意に背後から腕を掴まれた。
「待てよ、逃げんなヨー」
先ほどの軽薄男が追ってきたのだった。不意を突かれた彼女は階段を踏み外
して後に倒れ、男に背後から抱きすくめられる形になった。
(マズッ)
「いやっ、離して」
「つれなくすんなよ、ナ」
「離さないと、大声出すわよ」
大声を出しても、誰も気付かないことは彼女も承知していた。
人目の無い薄暗い階段、周囲にはクラブから漏れる重低音が響いていた。
「誰もコネーヨ」
男は、リョーコのジャケットを背中にずり下げて、彼女の両腕の自由を奪い、
ブラウスのボタンを外しにかかった。リョーコも必死の抵抗を試みるが、
14歳の少女の筋力ではどうにもならなかった。

男の手がブラの下に滑り込む。
「リョーコ、おまえガキのくせしてチチでかいな」
「…」
怒りに震えて、何も言い返せなかった。彼女はセックスどころかキスの経験
さえなかった。当然、男性から体を愛撫されたこともない。連夜のクラブ通
いも、彼女の男性経験値を上げることは無かった。彼女は様々な男女をただ
観察し分析していた。リョーコはクラブの中でも孤高を保った存在だった。

男の指が、彼女の乳首に達した。反射的にリョーコは激しく身を捻ったため、
乳首を強くねじられる結果となった。全身に激痛が走り、体が激しく震えた。
「バカ。暴れるから痛い目にあうんだ、おとなしくしてろ。気持ち良くしてやるよ」
「…」
リョーコの頭の中は、屈辱と怒りが渦巻いていた。強く噛んだ唇から血が滲む。
やがて、男の愛撫に反応して乳首が硬くなっていくことに気付いた時、彼女は
自分の体にも裏切られたと感じた。リョーコの周囲から音と灯りが消え、体が
地の底へ沈み込んでいく、深い、冷たい、闇の中へ。絶望感に身を委ねた彼女
の体から力が抜けていった。

暗い階段。立ったままで、男に後ろから抱かれて胸を愛撫されるリョーコ。
彼女が抵抗を止めて力を抜いたのを確認した男は、彼女の体を階段の踊り場
まで運び、ゆっくりと床に横たえた。

前のボタンを胸の下で留めたまま、背中まで下ろされたジャケットが彼女の
両腕を拘束していた。ジャケットの下のブラウスは前を大きくはだけられ、
細い肩と少女らしいシンプルなブラが晒された。
「最初から、こうしておとなしくしてればいいんだヨ。」
ブラの肩紐に男の両手がかかり、ゆっくりと肘まで下ろされる。それにつれ
て、ブラに隠されていた張りのある乳房がゆっくりと男の目の前に晒された。
「ヒュー、すげーな」
両脇と下側からジャケットやブラウスで寄せ上げられたリョーコの乳房は、
正面に向けて大きく盛り上がっていた。その先端にある乳輪は強く収縮し、
乳首がチェス盤上のビショップのように突き立っていた。男の舌が乳首の
先端に触れた。

リョーコの乳房に、男は夢中で舌を這わせていた。巨乳ではないが、張りの
ある形の良い乳房。両手で強く揉むと、皮膚の下の静脈が鮮やかに浮かび
あがった。
「どうだ、リョーコ。感じるだろ」
「…」
無言の返事を、肯定と解釈した男は、再び乳首に吸い付いた。

まったく感じていなかった。先ほどまでの屈辱も怒りも消えていた。
リョーコの精神は、肉体と切り離されて周囲を漂っているかのようだった。
(これって、幽体離脱?)
眼下に、半裸の姿で横たわり男に弄ばれている自身の肉体があった。その姿を
リョーコは他人を見るように無感動に観察していた。男の手が乳房から離れて、
レザースカートの中に伸びていった。
(お気に入りのパンツなのに。ダメにされたら嫌だな)
自身の純潔の危機よりも、パンツの方が気になった。

男の手がパンツの中で蠢いていた。
指がリョーコのクリを擦った。残りの指が陰唇を掻き分けて、奥へ入っていく。
しかし、湿りの足らない内部の感触に、男は舌打ちをして指を引き抜いた。
「まずはフェラで抜いてくれナ」
男はそう宣言すると、ベルトを緩めて半立ちのペニスを引き出した。

(フーン、これが男のアレか)
初めて見る実物を、興味深く観察した。
男は、リョーコの口元にペニスの先を近づけた。
(ママも今頃、あいつのアレを咥えている)
母親と浮気相手の行為を想像し、自らの境遇とダブらせたとき、リョーコの中
に怒りの火が灯り、彼女の精神と肉体が再び結合した。
男がペニスの先を唇に押し当ててくる。嫌悪感から彼女は首を横に振ってペニス
をよけた。戸惑った男が少し腰を浮かせた。

「ちゃんと、おしゃぶりしてくれヨー」
(私は、アンタの玩具じゃない!)
両腕は拘束をうけて自由に動かせないが、脚の方は自由だ。
両足を高く振り上げ、一気に振り下ろす。
その反動で上体を跳ね起こし、男の股間に頭突きを加えた。

男は飛び退いて、中腰の姿勢で強烈な股間の痛みに耐えていた。
リョーコは、立ち上がって後退すると、背中を階段の壁に押し当てて体を沈めた。
ジャケットがずり上がり両腕の拘束が解かれた。
「私は、あんたのような屑に抱かれる女じゃないわ」
今までうけた屈辱を晴らすために、リョーコはそう言い放った。

そのまま一目散に階段を駆け上がるべきだった。だが、リョーコは現場から脱出
することより、ブラの肩紐やブラウスのボタンを付け直すことを優先した。この
一瞬の状況判断ミスが致命的だった。

「舐めてんじゃねーぞ、このアマ!」
男の張り手がリョーコの左頬に炸裂した。目につけていたカラーコンタクトが
弾け飛んだ。周囲で世界が半回転して、体が床に叩きつけられた。ブラウスの
襟を掴まれ上半身を引起されると、さらに左右の頬に一発づつ。アップに留め
た髪がほどけて顔にかかる。夜遊び用の仮面が剥がれ、素顔に戻ったリョーコ
は、物理的な暴力に怯えて震えていた。

〜エピローグ

「中村さん。学校の先生がみえたわよ」
付き添いの婦警からそう告げられて目を上げると、戸口に生活指導の関根の姿があった。
リョーコは学校では優等生を続けていた。夜遊びするリョーコは別人格といっても
差し支えないほどだ。関根は、彼女の昼と夜の両方の顔を知る最初の大人となった。

「中村、本当にお前なのか」
関根の問いに、コクリと頷くリョーコ。
関根はにわかには信じられない面持ちで、リョーコに近づき顔を覗き込んだ。
関根を見返すリョーコの瞳は虚ろだった。

「一体何が…」
リョーコに向けた質問を婦警が途中で遮って、手にした日誌を関根に渡した。

金曜深夜、A町2丁目8号、クラブK入り口付近で、暴行事件発生。
被害者の女性(未成年)は、両腕および腹部に打撲傷。顔面に内出血、擦傷あり。
全治一週間。犯人が同女に暴力を加えている現場を、店の客が見つけて警察に通報。
犯人は逃走中。同女の証言によれば、犯人は5分間にわたって殴る蹴るの暴行を加え、
強姦に及ぼうとしたが、未遂におわった模様。

「婦警さん、中村のご両親とお話をしたいのですが」
「それが、ご家族の方はまだこちらには…」
「来ていない?」
「はい…連絡はとれたのですが、別居中で顔を合わせたくないとかで」

関根は、リョーコに向き直るとこういった。
「中村、辛いことや困ったことがあったら何でも先生に相談しろ」
「先生に相談してもどうにもならない」
「ああ、そうかもしれん。だかな、中村。先生はおまえを見捨てない」
虚ろだったリョーコの瞳の奥で何かが揺れた。
「本当に?」
「ああ、本当だ。信じろ、中村」
「私を見捨てない?」
リョーコは、ゆっくりと近づくと関根の胸に顔を埋めた。彼女は込み上げてくる
感情を必死に抑えようとした。できなかった。その夜、初めて大声を上げて泣いた。
頬を伝う涙が擦り傷に沁みた。

(END)

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