作品名 作者名 カップリング
No Title 518氏 -

幼馴染とラブラブ!それがグローバルスタンダード 〜天野ミサキ編〜



今朝方まで降っていた雨は止みはしたが、水溜りに映る空は鈍色。
せっかくのクリスマスだと言うのにまだまだ怪しい空模様。
「降ってきそうだね」
空を見上げて、ミサキはポツリ。
「マサ君もそう思わない?」
隣りを歩くマサヒコに同意を求めるが。
マサヒコはぐったりしている。
「大丈夫マサ君?」
「……一応な」
彼がこれほど疲れているのはもちろんわけがある。

今日はクリスマス。
キリスト生誕を祝う日なのだが、そんな事このちっちゃな島国の人間は知ったこっちゃない。
騒げればいいのだ。
それが恋人と一緒なら尚のこと。
まあそんなわけで。
まだまだ初々しいカップル、マサヒコとミサキもそのお祭り騒ぎに便乗。
朝、わざわざ外で待ち合わせて映画(ミサキの強い希望で恋愛モノ)を見て。
昼、パスタがおいしいと評判の店でランチ。
夜、小久保家天野家合同でのパーティー。
以上のように今日の予定は盛りだくさん。

そして二人はつい先ほど食事を終わらせ家への帰途についているところ。
「なあミサキ」
「なに?」
「なんで、あの店に、あんなにも、大勢、お前の、クラスメートが、居合わせたんだ?」
一字一句、区切って強く言うのはマサヒコが怒っている時の特徴だ。
もちろん長い付き合いのミサキはそのことを重々承知。
「えっと……あはは、なんでだろう?」
ジャージー姿の二人組を思い出しつつそう言ってごまかそうとしたミサキだが、
「ミ・サ・キ!」
「う……」
そうもいかないらしい。
マサヒコ君、珍しく御立腹気味。
「えっと、実はね。今日のデートのコースは教室で考えてたんだけど。
そしたらあのお店のパスタがリーズナブルでおいしいよって教えてくれた子がいたの。
だから多分そのルートで今日のことがばれたんだと思うの」
「なるほど」
その結果、件の店にはミサキのクラスメート達が大挙して押しかけ。
マサヒコはパンダか珍獣かと思われるほどの扱いを受けたのだ。
「前々からみんなマサ君に会いたいがってたから。ごめんね」
そう言って上目使いにマサヒコを見つめる。
実はマサヒコ、ミサキのこれにかなり弱い。
昔と違い身長差のできた今、これをやられると弱い。
なんだかとっても弱い。
白旗を振るしかなくなってしまうのだ。


「いいって。別に本気で怒ってるわけじゃないんだから」
「うん、わかってる。マサ君優しいから」
そう言ってにこりと微笑む。
「だからホントはクラスの友達ともっと早く会って欲しかったんだよ」
「なんで?」
「だって……自慢したいんだもん。マサ君のこと」
「……」
「見せびらかしたいんだもん。この人が私の彼氏だ!って」
「……」
「…照れてる?」
図星を指され、ごまかす意味でミサキの髪をくしゃくしゃっとする。
「わっ!?……もう!せっかく綺麗にセットしたのに」
頬を膨らませて手櫛でセットし直す。
「なあ、ミサキ」
「なにマサ君?」
「じゃあ俺もいいよな?」
「え?なにが?」
「お前のこと紹介してもさ。俺だって見せびらかしたいんだよ。
どーだかわいい彼女だろ!ってな」
マサヒコの言葉にミサキはちょっと驚いた様子だったが、
「うん!」
笑顔で頷いた。
「私頑張るよ。マサ君が自慢出来るような彼女になれるように!」
「頑張るって……何を?今でも十分自慢になるぜ。聖光行ってて、頭だっていいんだから」
「ううん。そんなのよりもっと大事な事」
「なんだよ?」
「お料理!いつかマサ君のお弁当つくってあげるから。
その時に自慢して。「これが俺の彼女が作ってくれたお弁当だぞ」って」
「……ああ」
先の長そうな話だと思ったがなにも言わない。
先は長いだろうが、彼女ならいつか必ずやり遂げるだろうから。
努力家の彼女なら。
その事を一番よく知っているのは……自分なのだから。
「今日のパーティーの料理私も作るんだ。楽しみにしててね」
「ああ。もちろんだよ」
そう言うと。
彼女は嬉しそうに笑って。
ちょっと照れたのか、赤い顔を見られないように。
軽い足取りでマサヒコの先を歩いた。






天然少女の魅力にメロメロ!クラスメートとの甘い関係 〜的山リンコ編〜



軽い足取りでマサヒコの先を歩いていたリンコが不意に振り返る。
「ね〜小久保君。雪降らないかな?」
「さあどうだろう。夕方からは雨が降るって話だけど……」
そう言って地面に目をやる。
昨夜の雨で出来た水溜りは寒さのせいで凍りついている。
「気温もかなり低いみたいだし、ひょっとしたら雪になるかもな」
「ほんと!?だったら今日はホワイトクリスマスだぁ!!」
大喜びでピョンピョン跳ねまわるリンコ。
危なっかしげにその様子を見ているマサヒコ。
すると案の定。
「わぁ!?」
地面の氷に足を取られ、すってんころりん……とならぬよう。
マサヒコが手を差し出しリンコを抱きとめる。
「危ないぞ」
「っとと。ありがと、小久保君」
ギュッと抱きついてくる。
ちなみにここは往来。
人通りもあるし、モチのロンに人の目はその二倍ある。
恥ずかしい。
「離れろ」
マサヒコはリンコを引き剥がす。
するとリンコは、
「む〜……小久保君冷た〜い」
頬を膨らませて厳重抗議。
「いや、そんなこと言われても……恥ずかしいものは恥ずかしいんだし」
「ぶ〜……じゃあさ。手、繋ごう?」
「手か…」
「だめ?」
眉をハの字にして見つめられては勝ち目なし。
「ほら」
わざわざ手袋を外して右手をリンコへ差し出してやる。
リンコは嬉しそうに自分も手袋を外し、左手でしっかり握る。
「えへへ……こうしてると手袋してなくても暖かいよね」
「そーだな」
「こーするともっと暖かいし」
そう言ってリンコは繋いだ手をマサヒコのコートのポケットへ。
「ね?」
「……バカップルだな」
ぼそりと呟いた一言は幸いにもリンコの耳に届かなかったようだ。
「にしても……いいのか?的山んちのクリスマスパーティーに俺が参加しても」
「うん。お父さん小久保君に会うの楽しみにしてたよ」
「……」
マサヒコの額にイヤな汗が浮かぶ。
マサヒコはリンコの母とは何度も会ったことがあるが父とは面識が無い。
かわいい一人娘につく悪い虫を一目見てやろうとするリンコ父の思惑が見えた気がした。


「やっぱり遠慮しようかな」
「え〜!?なんでなんで!」
「や、その…家族団欒に外部の人間が混じるのはどうかなって」
「……そんなこと言わないでよ」
沈んだ声にリンコを見ると。
今まで見た事もないほど悲しそうな顔をしたリンコがそこにいた。
「的山……」
「小久保君はもう家族だよ。お母さんも小久保君が来るって言うから料理張り切ってたし。
お父さんだって玄関で驚かせてやるんだってクラッカーいっぱい買ってたし。
それに、それに…私だって……」
「もういいよ的山」
涙が浮かんできたので。
指で拭ってやる。
「ごめんな。バカな事言った」
「うん。ホントにバカな事言ったよ」
「そうだな。じゃあ、厚意に甘えさせてもらうよ」
「ホントに?」
「ああ。けど…おじさんはがっかりするかもな」
「なんで?」
「玄関でクラッカー持って待ってるんだろ?そんなこと聞かされたら驚けやしないからな」
「……あ」
思い至って、リンコは口を押さえるが……もう遅い。
「小久保くんおねがい!驚いてあげて。お父さんこーいうこと大好きなの」
「まあ努力はしてみるよ」
もう的山家は目の前。
「私がドア開けるから。小久保君驚いてあげてね」
「ああ」
「それじゃあ……ただいま〜」
玄関を開ける。
パンパンッ!という破裂音と共に紙テープがマサヒコに降りかかった。
「メリークリスマス!小久保君!」






世の流れはツンデレ一直線!詰まるところは照れ屋さん♪ 〜若田部アヤナ編〜



玄関を開ける。
パンパンッ!という破裂音と共に紙テープがマサヒコに降りかかった。
「メリークリスマス!小久保君!」
驚き固まるマサヒコ。
その様子をクラッカーの持ち主、アヤナが愉快そうに眺めていた。
「ずいぶんと驚いたようね」
「ああ……かなりびびったよ」
今だ驚きの抜けきらないマサヒコの様子にアヤナはまた吹き出す。
あんまり笑われるものだからマサヒコも流石に少し不機嫌になる。
「そんなに笑うなよ」
「フフフ…ごめんなさい。ちょっと待ってね」
散らばった紙テープを簡単に玄関の隅に集めながらアヤナは靴を履く。
「それじゃあいきましょう。今夜は何処につれてってくれるのかしら?」
「……期待には添えられないと思う」
「あら、そうなの?楽しみね」
にっこり笑うアヤナだったが、その笑みは10分後、消え去った。
「まさかここじゃないでしょうね?」
「ここは通過点だよ。ちょっと待っててくれ」
アヤナを待たせてマサヒコが入っていったのは某ケンタッキー。
予約してあったのか、すぐに出てくる。
「お待たせ」
「お待たせじゃないわよ。今夜はどこかのレストランで食事するんじゃないの?」
「えっと……ウチじゃだめか?」
「……」
「ほんとは高級レストランとかにしたかったんだけど色々あって」
「……」
「ごめんな、若田部」
「……行きましょ」
そう言って先に歩き出す。
マサヒコもその後を追う。
家までの距離は5分もかからないのだが、その間二人の間に会話はない。
マサヒコは申し訳ない気持ちでいっぱいで、話しかける事も出来なかった。
家に着き、鍵をさしこんだ時。
「はぁ……」
アヤナのため息に、居たたまれなくなって、
「ごめん」
もう一度謝った。
「謝らないで言い訳の一つもすればいいのに。私知ってるのよ」
「へ?」
「お金、貸しちゃったんでしょ?友達に。保険証無いからお金かかるからって」
「!?」
つい先日、大学の友人が風邪をこじらせ通院したのだが、彼は故あって保険証を持っていなかった。
その場合医療費は全額負担。
大学生には少々キツイ金額になってしまった。
だから、マサヒコは彼に貸したのだ。
本当ならアヤナへのプレゼントと食事に使うつもりだった貯金も全部。


「なんで知ってるんだよ?」
その事実を知っていたことに驚きを隠せない。
「噂で聞いたのよ。まったく……一言相談してくれれば私が料理作ったりしたわよ。
そんなファーストフードなんかよりおいしく作る自信もあるのに」
「……そうだな」
「ちょっとは頼ってほしいものね。恋人なんだから」
「悪い」
「謝らないでよ。まったく…でも、そんな不器用な所も嫌いじゃないわ」
「若田部……」
アヤナの言葉にちょっと照れる。
言ったアヤナも照れたのだろう。
「ちょっと!いつまで玄関で待たせるのよ。早く中に入れてよ。寒いじゃないの」
「あ、ああ。悪い」
家へとアヤナを招き入れ、リビングへ通す。
「あら。ケーキはそれなりに豪華ね」
リビングに置かれていたそれを見て感心したようにアヤナ。
「やっぱりクリスマスの主役はチキンよりもケーキだものね」
「あ〜……」
するとマサヒコは居心地悪そうに視線をさ迷わせる。
「どうしたの?小久保君」
「悪い。ケーキのが安上がりなんだ」
「そうなの?結構高そうに見えるんだけど」
「それ……俺が作ったんだ」
「……うそ」
驚き、目を丸くする。
「小久保君……お菓子なんか作れたの?」
「2、3日前から母さんに教えてもらってさ。
それなりに頑張ったけど……味の保証はしないぞ。なにしろ初めてなんだからな」
「そんなの……おいしいに決まってるじゃないの」
アヤナの言葉にマサヒコは苦笑する。
「食べる前から言うなよ」
「食べなくったってわかるわよ。小久保君が一生懸命作ってくれた物なんだから。
おいしいに決まってるじゃないの」
「そうかぁ?」
「私が作ってくれたものいつもおいしいって言ってくれるじゃない」
「アレはホントに上手いからだよ。俺のなんか――」
「小久保君」
マサヒコの口に指を押しつけ、それ以上喋らせない。


「答えて。このケーキ、私のために作ってくれたんでしょ?」
喋れないマサヒコは頷いて肯定を示す。
「じゃあおいしいわよ。私の為に、小久保君が作ってくれたものなんだもの。
よく言うでしょ?料理は愛情。愛情こそが最高のスパイスだって」
ウインクし、マサヒコの口から指を話す。
「なるほど……じゃあ若田部がいつも作ってくれる料理があんなにも美味いのは
俺への愛情がたっぷり詰まってるからなんだな?」
「そ!そんなわけ………あるわよぅ」
マサヒコにじっと見つめられたので。
否定しきれず真っ赤になって俯いてしまう。
世界よ見るがいい。ツンデレはここにあり。
「そ、それよりケーキ食べましょう!私がじっくり吟味してあげるわ!」
「お手柔らかに頼むよ。それこそ愛情程度しかおいしくなる要素はないんだからな。
まあその分愛情はこれでもかってほど詰め込んだつもりだから」
「あう……」
気を取り直してツンになったと思ったらまたデレ。
かわいいじゃないか。
マサヒコはそんなアヤナを愛しく思いながらケーキを取り分ける。
「ほい」
「ありがと。じゃあいただきます」
「召し上がれ」
パクッとアヤナはケーキを頬張る。
そして満面の笑顔で言った。
「甘い」






年上美女に「かんぱい」!じょーおーさまの手管に篭絡 〜中村リョーコ編〜



「甘い」
食後のケーキを口にするなりリョーコはうめく。
「そりゃケーキですから」
そんなリョーコにマサヒコは冷静にツッコむ。
「甘い物嫌いでしたっけ?」
「嫌いじゃないけど、酒にはあわないわね」
「まあ、そりゃそうでしょうね。酒飲みのことを辛党っていいますし」
「しまったわね……チキンを少し残しておけばよかったわ」
ちらりとテーブルの上の皿に目をやる。
既にそこには骨だけしかない。
「骨をしゃぶってやろうかしら?」
「鳥骨ですから止めてください」
「そうね。鳥骨は鋭く割れるから危険……ってこら!わたしゃ犬か!」
ペチッとマサヒコの頭を叩く。
「普通そこは「しゃぶるなら俺のモノをどうぞ」でしょうが!」
それもどうだろう。
「まったく……マサったら付き合い出してからツッコミがぬるいんじゃないの?
まああっちの方のツッコミはなかなか」
「んなこと言わんでいい」
ぴしゃりと叩きつけるような言葉に、
「そうそう♪マサはそうでなくっちゃ」
リョーコは満足そうにマサヒコの頭を撫でる。
「子供じゃないんですから。頭撫でるの止めてくださいよ……だからと言って
別の所を撫でろという意味ではない」
「……わかってるわよ」
今まさにマサヒコの股間を撫でようとしていた手を止める。
しょうがないと言った表情でケーキを食べる。
そんなリョーコの様子にマサヒコは苦笑する。
「食事中も結構飲んだじゃないですか。足りないんですか?」
「正直物足りないわね」
「はあ、そうですか」
「毎年クリスマスは浴びるほど飲んでたんだもの」
「浴びるほど、ですか」
「それこそ意識が飛ぶまで飲むからね。
まあ今年はそんなになるまでは飲むつもりはないけど」
「どうしてですか?」
「マサとこうやってゆるい会話してる方が楽しいもの」
「……」
やられた…と、マサヒコは思う。
この人は自由奔放でやりたい放題やるくせにこーいう所はきちんと抑えてくる。
そーいうところがずるいと思う。
本心でないとしても、方便だとしても。
喜んでしまう自分がいるのだから、完敗だ。


「でも……もうちょっと飲みたいわね」
ほらやっぱり。
「ねえマサ。お酒とつまみ買ってきてくれない」
喜ばせておいておねだり。
見事な連携。
「はいはい。わかりましたよ」
内心思うところはあるが素直に従う。
「で、なにをどれだけ買ってくればいいんですか?」
「そうねぇ……」
しばらく考えていたようだが、不意に立ちあがる。
「いいわ。私もついてくから」
「は?いや、俺一人で行きますから。待っててくれればいいですよ」
「……鈍い所は変わってないのね」
フウとため息をつく。
「少しでも一緒にいたいじゃない」
「…は?」
「察しなさいなまったく……そーいうところがまだ子供なのよ」
そう言って頭を撫でられる。
「ほら、行くわよ」
「…はい」
本当に、敵わないと思う。
「あら、雨降ってるわね……」
「そうですね……母さんまた俺の使ってるな。婦人物しか残ってないや」
仕方なくそれを使う事にする。
玄関を開け、表に出ると冷気が身体を包みこむ。
ブルっと身体を震わせながら降りかえり、
「それじゃあ行きましょうか」
そう言って。
真っ赤な傘を広げる。






やっぱりこの人!家庭教師アイ先生バンザイ 〜濱中アイ編〜



真っ赤な傘を広げる。
しかし、それすらももどかしいのか、開ききる前にアイは建物から駆けて来た。
「ごめんねマサヒコ君、待たせちゃって」
「いえ。お仕事ご苦労様です。大変ですね」
「まあ今は大事な時期だから」
にこりと笑う。
アイの仕事は塾の教師。
担当は中学生が中心なので受験前の12月は色々忙しい。
それでも、今日はクリスマスなのだ。
楽しんだって罰は当たらないだろう。
「それじゃあ行きましょうか」
「うん」
マサヒコとアイ、二人並んで歩く。
そんな二人を見て驚いたり、指を指したりする少年少女がいる。
「生徒ですか?」
「うん。受け持ちの子達」
彼らに手を振りながらアイは答える。
「みんないい子達なんだよ」
「……そうですか」
「マサヒコ君?」
ちょっと間があった子とに不思議そうに首を傾げると、
「こっち来ませんか?」
「え?」
「ですから、ここに」
自分の隣りを示す。
つまり、
「アイアイ傘?」
アイの言葉に頷く。
「どうしたの急に?」
「いえ、別に」
はぐらかすマサヒコだが、アイは笑う。
「マサヒコ君ってさ、意外にやきもち焼きだよね」
「……」
ずばり図星を指されてマサヒコはぷいっとそっぽを向く。
「ごめんごめん」
クスクスと笑いながら傘をたたみ、マサヒコの傘の中に入って腕に抱きつく。
マサヒコは驚いた様にアイを見る。
「だめ?」
「いえ」
濡れない様、傘をアイの方へ傾ける。


「でも、よかったんですか?」
「え?なにが?」
「よくわかんないですけど、付き合いとかってあるんじゃないんですか?
教師同士で忘年会とか」「大丈夫。ウチは忘年会とかやらないから。
マサヒコ君こそよかったの?学校の友達とのお付き合いとかないの?」
「知り合いとは昼のうちに軽くパーティーしましたから」
「……」
「どうしたんですか?」
「女の子もいた?」
「それは、まあ」
「ふ〜ん…そうなんだ…ふ〜ん、へ〜」
アイの頬がぷく〜っと膨れていく。
マサヒコは笑う。
「人の事言えないじゃないですか」
「なにが?」
「やきもち焼きですね」
「う……」
やり返されてアイはうめく。
うめいてから腕をバタバタさせる。
「だ、だって!だってだって!!……心配だよ、やっぱり」
「心配無用ですよ」
にっこり笑う。
その笑顔からアイは逃れるように顔を背ける。
真っ赤になった顔を見られぬよう。
傘の外に目をやると、羽根のように舞い落ちる白いかけらがあった。
「あ、雪だ」
アイが傘から手を出し、雪を受け止める。
「ホワイトクリスマスですね」
「ひゃっ!つめたーい♪」
御機嫌ではしゃぐアイをマサヒコは優しい目で見つめる。
「ほらマサヒコ君!雪――」
笑顔で振り向いたアイの目の前にマサヒコの顔。
そのままマサヒコの顔はさらに近づいて、触れる。
「マ、マサヒコ君!」
「イヤでしたか?」
「全然イヤじゃないけど……ここ人も多いし」
「大丈夫ですよ。傘さしてますから」
「…そっか。じゃあ」
アイの手がマサヒコ首に回る。
「メリークリスマス、マサヒコ君」
そう言って。
長いキスをした。

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