作品名 作者名 カップリング
No Title 518氏 マサヒコ×アヤナ

「……あっつぅ」 
暑さに耐えかねてマサヒコは目を覚ました。 
時刻は…何時頃だろう? 
カーテンの隙間から差し込む陽射しは強い。 
が、夏の陽射しは朝も昼も似たようなもので判別がつかない。 
いや、今はそんなことどうでもいい。 
「暑い」 
寝起きでまったく動かない頭が訴える。 
今はこの暑さを何とかしろ、と。 
ベッドを転がると、床が目に入った。 
そこにぽつんと、灼熱地獄から天国へと誘ってくれる神器が鎮座していた。 
エアコンのリモコンだ。 
笑みを浮かべてベッドから起きあがり、リモコンを手にしようとした。 
瞬間、 
「うわっ!?」 
腕を引っ張られ、ベッドに倒れこむ。 
そして、熱い塊が圧し掛かってくる。 
「私を置いてどこに行くつもり?」 
「……若田部?」 
とろんとした目で圧し掛かってきた人物を見る。 
一糸纏わぬ姿で、白い肌を晒している同級生。 
胸にあたるアヤナの柔らかな感触がいい感じだ。 
混乱した様子をマサヒコの表情から見て取ったのだろう。 
「寝ぼけてる?現状把握できてないの?」 
クスクス笑いながら、からかうような声色。 
なんなら教えてあげましょうか?と。 
目がそう言っていた。 
「いや、大丈夫。思い出した」 
「ほんとうに?」 
「ああ」 


夏休みに入って。 
マサヒコは両親の実家に帰省する事になった。 
しかし受験生と言うことで断り。 
両親だけで1週間ほどそれぞれの実家に帰省する事になった。 
一方アヤナの家はといえば、相変わらずで。 
父は出張、母は近所のマダムと避暑旅行、兄はサークル仲間と海外逃亡。 
だが、今回に限ってそれは好都合。 
マサヒコは丸1週間若田部家に転がり込む事にしたのだ。 
そして。 
昨夜はその第1泊目なので二人そろってかなり羽目を外した。 
具体的に言うと。 
父のワインセラーから安物ワインを拝借したのだ。 
「二人で一本空けたんだっけ?」 
「そうよ。その後の事は覚えてる?」 
「……」 
「呆れた。こんなにしておいて」 
そう言って、アヤナは上半身を起こす。 
「げげっ!」 
マサヒコ絶句。 
アヤナの白磁のような肌のいたるところにつけられたキスマーク。 
まあ、これはよしとしよう。 
たまにつける事があるから。 
しかし。 
「は、歯型!?」 
「噛むんだもん。あたし痛いっ!て言ってるのに」 
拗ねた様に唇を突き出すアヤナ。 
それを見て「かわいいなぁ」と思う余裕はマサヒコにはない。 
「……まじ?」 
「大マジよ。だいたい、あなたでなく誰がこんな事できるのよ?」 
「たしかに」 
自分では無理だろう。 
第三者がつけたのならそいつの事を包丁持って追っかけまわす事だろう。 
いや、これもマジで。 
「はぁ……」 
マサヒコは片手で顔を覆う。 
アルコールは控えよう……心底そう思いながら。 
「ねえ」 
「ん?」 
「わたし、あなたにかな〜りひどい事されちゃったんだけど」 
「……ああ」 
「ね。だから…慰めて」 


甘えるような、劣情に満ちた声色。 
ぞくりと、背筋に冷たいものが。 
躊躇わず、マサヒコはアヤナの首に手を回し引き寄せる。 
キス?とアヤナに思わせておいて、首筋を甘噛み。 
「ちょっ!え!?ま、また噛むの?」 
「いやか?」 
「いや……じゃないけど……」 
顔を赤らめて、これまた拗ねたようにそっぽを向くアヤナ。 
いいツンデレだ。 
「冗談だよ。もう噛まない噛まない」 
「ほん――んっ!」 
本当?と問いかけ様と。 
正面を見たアヤナの口を塞ぐ。 
もちろん自分の口で。 
勝手知ったる他人のウチ、ならぬクチ。 
遠慮なく入りこみ、好き勝手に蹂躙する。 
吸いつき、絡め取り、舐め、押しつける。 
僅かな隙間から、アヤナの熱い吐息が漏れる。 
ぴちゃぴちゃと静かな室内に水音が響く。 
アヤナの小さな唇を散々嬲った後、マサヒコの口は首筋へ。 
先ほどの甘噛みの跡と、昨夜の歯型の跡に舌を這わせる。 
「ひぁっ!ちょ……まって!」 
「なんで?」 
「なん……ひぅ!……て……くすぐった……んぁ!」 
舌を這わせる度、アヤナの身体がびくりと反応する。 
かわいい。 
手を胸に這わせる。 
触れるか触れないかのソフトタッチ。 
「ひゃっ!だから……くすぐったいってばぁ……」 
「弱いよな、くすぐられるの。こことか」 
「きゃ!」 
わき腹をくすぐると激しく反応。 
「こことか」 
「ふわ!」 
おなかをなでると激しく反応。 
「ここ」 
「っ!!」 
あごの下に舌を這わせると激しく反応。 


「いい反応だな」 
「……からかって面白い?」 
「面白くはない」 
「??」 
「かわいい」 
言葉に、アヤナは赤くなる。 
さらにマサヒコの胸にポコポコパンチを見舞う。 
痛くもなんともない。 
そんなしぐさもかわいいッス。 
とはいえ、お姫様を不機嫌なままにしておくのはあまりよろしくない。 
ポコポコと叩きつづける腕を取り、手の甲に恭しく口付け、 
「御無礼はお許しを、姫。これもひとえにあなたを愛するが故」 
気取ったセリフ。 
アヤナはきょとんとしていたが、クスクスと笑い出し、 
「うむ。許して遣わす」 
気取ったセリフで返す。 
「ただし、小久保マサヒコ。覚えておくがいい。 
万一にもそなたが不義を働いたときの姫の怒りは並大抵の物ではないと」 
「言われるまでもございませんよ。私のかわいい姫」 
アヤナの身体を抱きしめる。 
抱きしめたアヤナの身体は小刻みに震えていて。 
抱きしめるマサヒコの身体も震えていて。 
「「ぷっ!」」 
二人同時に吹き出してしまった。 
そのまま笑い転げる。 
お互いのセリフの大仰さと言うかばかばかしさに大爆笑。 
それでも、嘘はない。 
好きだからちょっと意地悪をしてしまうし、それを許せる。 
けれど一度裏切ったら……。 


まあ、そんなことはないと思うけど。 
「ねえ、小久保君。そろそろ」 
「ああ……ここに座れよ」 
あぐらをかいた自分の上にアヤナを誘う。 
対面座位。 
「ん……そう言え、ば…はじめての時も……ああっ!」 
アヤナがゆっくり腰を落とし、マサヒコのモノを奥深くまで飲み込む。 
「この……格好だった…ね」 
「背中に思いっきりツメ立てられたんだよなぁ。あれは痛かった」 
「私は…んぁっ!……もっと、痛かった……の……よ!」 
「わかってる…」 
抱きついてきたアヤナの身体を抱き返しながら、 
そーいえばかなり暑かった事を今更思い出していた。 
アヤナの身体も、マサヒコの身体も汗びっしょりだ。 
この上激しい運動したら脱水症状になるんじゃなかろうか? 
一瞬そんなことが頭をよぎったが。 
お互い情欲に火が点いてしまったのだからしょうがない。 
なんといっても若いのだ、二人共。 
マサヒコが突き上げる様に腰を動かせば、アヤナもそれに会わせるように動く。 
「ッ……悪い…俺、限界……」 
激しい動きにすぐに限界が来る。 
アヤナもそうらしく、マサヒコにギュッと抱きつく。 
「うぁっ……なかに……だしていいからっ!……ふぁぁ!……」 
「くっ!」 
マサヒコはアヤナの中に欲望をぶちまけ、アヤナを抱きしめたままベットに倒れこむ。 
「……なあ、わかたべ」 
「なに?」 
「……あっつくないか?」 
「暑いわよ」 
「だよなぁ…」 
そう言いながらもアヤナを抱きしめる手の力は一向に緩まない。 


くすりとアヤナは笑う。 
「暑いから離れてほしいんだけど?」 
そうは言っても、マサヒコは離れないだろうと思っていたのだが。 
「ん。そうか」 
「え、ええ!?」 
あっさり離れてしまう。 
ちょっぴりショックなアヤナ。 
だが。 
マサヒコはすぐにまたアヤナに抱き付いてきた。 
それは嬉しいのだが。 
「暑いから離れてって言ったじゃない」 
ちょっと拗ねてみる。 
「わかってるよ。だからこれ」 
「リモコン……エアコンの?」 
「そう」 
温度最低、風量強。 
クールビズくそ食らえと言わんばかりの設定にしてスイッチON。 
流石若田部家の高級エアコンと誉めるべきだろう、すぐに部屋が冷えていく。 
「これならくっついててもいいよな?」 
「……そうね」 
やられた…と思い、悔しかったのでアヤナはマサヒコに力いっぱい抱きついてやった。 
「く、苦し……」 
「じゃあ離れようか?」 
「……我慢します」 
「よろしい」 
力を緩め、マサヒコの胸に頬を寄せる。 
マサヒコはアヤナの頭をかき抱く。 

やがて聞こえてきたのは穏やかな寝息が二つ。 


END 

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