作品名 | 作者名 | カップリング |
NoTitle | 518氏 | リョーコ×マサヒコ |
「……切れた」 「「は?」」 ここは小久保さんちのマサヒコの部屋。 いつものようにアイマサヒコと中村リンのかてきょ教え子コンビに加え、 ミサキとアヤナの成績優秀コンビがたむろしていたのだが。 不意の中村の言葉に全員が何事かと中村を見る。 「ど、どーしたんですかお姉様?」 「…切れたのよ」 「タバコはベランダで吸ってくださいね」 「別にニコチンが切れたわけじゃないわよ」 「え?じゃあ…」 不思議そうな一同をよそに中村は、 「マサ」 そう言って自分のすぐ横をバンバンと叩く。 こっちゃこいってことなのだろうと判断したマサヒコは中村の横に腰を下す。 「なんすか?」 「……」 向かい合って座る二人。 中村はマサヒコをじっくりと眺める。 一方のマサヒコはじっくり観察され、少々居心地が悪そうで、改めて質問。 「な、なんすか?」 「…ふむ。顔はまあまあなのよね」 「は?」 「後は…」 おもむろに、中村はマサヒコに抱きついた。 「!?」 「なっ!!??」 突然の事に驚き声も出ないマサヒコ、そして眉を吊り上げるミサキ。 そんなことお構い無しに、中村は抱きついたままマサヒコの背中や腕、足などを触る。 「ふ~ん…肉付きもそれほど悪くないわねぇ」 一通り触れた所でマサヒコを解放する。 「な、なにするんですか!?」 ズザザザ!とあとずさるマサヒコ。 警戒心むき出しだ。 「まあまあ、そう警戒しないで。時にマサ」 「はい?」 「明日の休日はなにしてるの?」 「なにって、別に予定はないですから…多分ゲームでもしてますよ」 「ふ~ん……なるほどなるほど」 一人納得した様子で何度も頷く。 「あの…先輩?ホントにどうしたんですか?」 「なんでもないわよ。あ、リン、そこ違う」 「え?え!?どこですか?」 「そっちのスペルよ。そこじゃない!」 「はぅぅ~…」 「ほれマサ、あんたもいつまで小動物みたいに警戒してない。 家庭教師の時間なんだから、文字通りのタイムイズマネーよ。元を取りなさい」 「あ、はい」 急にまともな事を言い出した中村に戸惑いながらも元の場所に戻る。 その後は中村が真面目に授業をした為、脱線する事もなく、珍しく身のある授業が行われた。 そして翌日。 「ふぁ~…」 寝ぼけ眼で一階に降りてきたマサヒコ、キッチンの母に挨拶。 「おはよ母さん」 「おはよう。ご飯食べる?」 「ん」 席につき、あくびをしながら朝食を待っているとインターホンがなる。 「あら、誰かしら?マサヒコ、味噌汁は自分でよそって」 「ん」 母が玄関に行ってしまったので自分で朝食の準備。 今日の朝食はご飯、味噌汁、卵焼き、鯖の塩焼き、茄子の浅漬け。 どれもおいしそうだ。 「いただきます」 律儀に手を合わせ、いざ、という時に、 「マサヒコ、お客さん」 「へ?」 予想外の展開。 「客?俺に?こんな時間に?誰?」 「行きゃわかるわよ」 母に促されるまま玄関に行くと、 「よっ」 「中村先生?」 中村がいた。 「さあいくわよ」 「は?」 「さっさと着替えてらっしゃい」 「へ?」 「バジャマのままでいいんなら別にそれでもいいけどね」 「ほ?」 「パジャマのままでいいのね?」 「えっと…10分ください」 「5分よ」 「…はい」 わけがわからないままマサヒコはダッシュで二階に上がり着替える。 サイフと携帯をポケットに突っ込み一階へ。 台所で味噌汁と卵焼きを胃に流し込む。 「ごちそうさま」 「もういいの?」 「出かけるんだってさ」 「ふ~ん」 母の返事を背にすぐさま洗面台へ。 歯を磨きつつ、ぼさぼさの髪を梳かそうとするが、流石に両方一度にはキツイ。 もたもたしていると、 「はい5分経ったわよ」 中村がぬっと洗面所に入ってくる。 「も、もう3分ください」 「しょーがないわね」 やれやれとため息をつきつつ櫛を持ちマサヒコの髪を梳かす。 「髪は私がやったげるから、歯磨くのに集中しなさい」 「はい」 とは言ったものの。 普段髪を他人に触らせることなんかないマサヒコ。 髪に中村の手を感じてなんだか妙にくすぐったい。 「手が止まってるわよ」 「ふぁい」 慌てて手を動かす。 なんとも不思議な雰囲気だった。 「それで、どこ行くんですか?」 いつもより髪がビシッと決まっているマサヒコが中村に問う。 「ん~…どこ行きたい?」 「どこ行きたいって…決めてたんじゃないんですか!?そもそもなんでうちにきたんですか?」 「マサとどっか行きたくなって…ごめんね?迷惑だったよね?」 口元に両手を持っていき目を潤ませる。 「迷惑じゃないですから、そのぶりっ子ポーズは勘弁してください。 ぶりっ子セリフは勘弁してください。背筋に冷たい物が走ります」 「…ちっ」 舌打ちする。 まあ道端でじたばたされるよりはナンボかましだろう。 いつぞやなんて店の中で横になってじたばたされたことがある。 正直あれは恥ずかしかった。 なんて、マサヒコがどーでもいいことを考えている間に中村は。 ふら~っと歩き。 ぶらりと電車に乗り。 ふらふらとデパートまでやってきた。 んでぶら~っとデパートの中を見て回る。 別に「ふ」と「ら」を用いたオノマトペの限界に挑戦ってわけではない。 ……まあちょっと頑張ってはみたけどね。 「あ、屋上でヒーローショーやってるみたいですよ」 「…マサ見たいの?」 「いえ、まったく」 「じゃあ言わないでよ」 「…すいません」 「マサ、なんか欲しいもんとかある?」 「買ってくれるんですか?」 「んなわけないでしょ」 聞いといてそれかよ!と思ったが口には出さない。 蛇が出てくるとわかっている薮をつつくつもりはないマサヒコ。 「中村先生はなんか欲しい物あるんですか?」 「買ってくれるの?」 「中学生にたからんでくださいよ」 「残念」 言葉と裏腹にまったく残念でなさそうな中村。 「で、欲しい物はないんですか?」 「ん~…」 中村は何か考えていたが、 「あ、ひらめいた」 言葉通り、何事かひらめいた様子で、 「ちょうどいいわ。マサ、協力してもらうわよ」 にっこり微笑みかけてきたので。 「……」 「逃げるな」 全速力で逃げようとしたが捕まってしまった。 ガッテム!! 「後生です!マジで勘弁してください!」 「だ~め♪」 死に物狂いで逃げようとするマサヒコ。 これ以上ない爽やかな笑顔でマサヒコを羽交い締めにして引きずる中村。 まったく対照的な二人がいるのは下着売り場。 女性下着売り場。 そりゃマサヒコ、抵抗するってもんだ。 「なにが楽しいんですか!?俺をこんな所に連れて来てなにが楽しいんですか!?」 「恥辱に悶えるあんたの表情」 「泣きましょうか?警察呼ばれるほどに泣いてやりましょうか?」 「や~ねぇ。男ならベットの上で鳴かせて見なさい」 「……」 マサヒコ、息を大きく吸い込み、 「はいはいストップ」 「むが!?」 アクションを起こす寸前に中村に口を塞がれる。 「叫んだり泣いたりしたら「ちかん~!!」って叫んでやるわよ?」 「うわぁ~!たちわるぅ~!」 「あきらめなさい……あ、マサ」 「なんですか!?」 「どう?これ似合う?」 黒のレース付きを胸に当てる中村。 マサヒコ、ノックアウト寸前だ。 「俺に聞かないでくださいよ…」 「あんた以外に誰に聞けってのよ」 「店員さんにでも聞いてください」 赤い顔で、中村から視線を逸らしつつマサヒコ。 なんだかんだ言っても彼もお年頃。 女性下着は少々刺激がキツイ。 それを知ってか知らずか、 「ねえ似合う?似合う?」 しつこ程にマサヒコに意見を求める。 いぢめっ子め。 「…似合いますよ」 「見もしないで似合うかなんてわかんないでしょ」 不機嫌そうな中村の言葉に、マサヒコはやむなく中村を見る。 先ほどの黒のレース付きを胸に当てている中村。 「…似合いますよ」 改めて見てみると確かにその通り。 大人っぽい…いや、実際に大人なのだが…中村によく似合いそうだ。 言外にその辺りを感じ取ったのだろう、 「そう?」 中村も満更でもない様子で、なんだか嬉しそう。 「ふむ。試着するからちょっと待ってなさい」 「はあ…って!待ってるってここでですか!?」 「当たり前じゃない。いい?まってなさいよ」 「はい…」 もはや涙目のマサヒコを置いて中村は試着室へ。 残されたマサヒコは物凄く居心地が悪い。 そりゃ男一人が女性者下着売り場に取り残された日には……。 「間違っても知り合いには見られたくないな…」 そう思いながらため息をつき、何気なく視線を巡らせたら、 「「あ」」 知り合いと目があっちゃった。 ある意味最悪の相手と。 「あ~!小久保君だぁ!!」 「あああああ!!!」 最悪の相手こと的山リンコは嬉しそうに手をブンブンと振りながらマサヒコの元へと駆け寄ってくる。 「おはよ~!こんなところでなにしてるの?」 酷な質問だ。 女性下着売り場に佇む男。 そんな男に「こんな所でなにしてるの?」との問いかけ。 男はなんて答えりゃいい? 簡単。 答えなければいいのだ。 「えっと…ま、的山こそなにしてるんだ?」 そんなわけで、マサヒコは質問のベクトルを捻じ曲げる。 「もちろん買い物だよ」 「へ~、なに買いに来たんだ?」 狙い通り会話の方向が変わったことに満足しながらそう言ったのだが、 「下着。ミサキちゃんとアヤナちゃんも一緒だよ」 「なにぃ!?」 「ミサキちゃ~んアヤナちゃ~ん!こっちこっち~!」 あうちっ!地雷ふんじった。 「リンちゃん一人で先に――こ、小久保君!?」 事態はさらに悪い方へと向かっている様子。 「こんな所でなにしてるの小久保君!?」 「えっと…買い物…かな?」 「「か、買いもの!?」」 異口同音にミサキとアヤナ。 そりゃそうだ。 今いるのは、くどい様だが女性下着売り場。 マサヒコがなにを買うというのだ? 「な、なにを買いに来たのかなぁ~?」 言葉使いこそ丁寧だが……笑顔が怖いよミサキさん。 「違う!俺が買うんじゃなくって中村先生がだよ」 「中村先生?」 「お姉様と買い物に来てるの?」 「ああ」 そう言って背後の試着室を指差すと、ひょっこり中村が顔を出す。 「マサ、ちょっと」 「なんすか?」 「ホック留めて」 「……はぁ!?」 「ほれ、入って入って」 試着室から伸びた腕がマサヒコの襟首をガシッと掴む。 マサヒコ、死に物狂いで抵抗。 一番近くにいたリンコにしがみつく。 「こら、なに抵抗してるのよ!」 「します!するとき!しないでか!!」 「妙な活用してないで、さっさと入りなさい」 「たすけて亀の怪獣~!」 ビッグなヤツに助けを求めるマサヒコだが。 そんなマサヒコを救ったのは亀の怪獣でも未来の世界の猫型ロボットでもない。 「中村先生!」 「おや、ミサキちゃん」 幼馴染の少女だった。 持つべきものは友だね。 「小久保君になにさせようとしてるんですか!」 「ブラのホックを留めてもらおうかな~と」 「させないでください!嫌がってるじゃないですか!」 言われて中村はマサヒコを見る。 半泣きで、リンコによしよしと頭を撫でられている。 「そんな…泣いて喜ばなくってもいいのに」 「あれのどこが喜んでるんですか!」 「わかったわよ。自分でやればいいんでしょ?」 「あ、お姉様。なんなら私が」 「大丈夫よ」 アヤナの申し出をあっさり断り、試着室の中に引っ込んでしまう。 つーか自分で出来るんなら最初から自分でやれ!とツッコむ人間はいない。 「まったくあの人は…」 ふうとため息をつくミサキ。 「小久保君だいじょ――」 大丈夫だった?と声をかけようとして、眉が危険な角度につりあがる。 「よ~しよ~し。大丈夫だよ~怖くないよ~」 マサヒコはまだリンコにしがみつき、頭を撫でられていたからだ。 「小久保君!いつまでリンちゃんにしがみついてるの!!」 ドンとマサヒコを突き飛ばす。 その衝撃で我に返ったのか、 「…あれ?」 キョロキョロと辺りを見まわす。 そしてすっごく爽やかな笑顔になる。 「ああ、夢か。そうだよな。なんで中村先生がブラのホック止めてくれなんて俺に言うんだ? そんなわけあるわけないじゃないか。はっはっはっ!」 「それは現実だよ小久保君」 「あああああああ!!」 悶えるマサヒコ。 精神的にかなりキてしまっているようだ。 「お、おちついて小久保君!大丈夫…大丈夫だから」 どさくさに紛れてマサヒコを抱きとめ、ポンポンと背を叩くミサキ。 役得だ。 「およ?なに抱き合ってるのあんたら?」 試着も終わったのか、中村が試着室からでてくる。 「…お姉様、小久保君が大変な事になってるんですけど」 「大変な事?」 「情緒不安定になってますよ、かなり」 「あらら」 「せんせ~、小久保君のこといぢめちゃダメですよ~!」 リンコにポコポコと攻撃とは言えない打撃を加えられ、「ふむ」と中村は思案する。 「確かにちょっとからかいすぎたか……」 ちょっと反省。 言いかえるとちょっとだけ反省。 よーするにあんまり反省してねぇ。 「マサ」 呼びかけるとミサキに抱きしめられているマサヒコの身体がビクリと反応する。 こいつは重症だ。 「大丈夫よ~、怖くないわよ~。もうからかったりしないから、ね?」 「……」 ミサキの影に隠れる様にマサヒコは中村の様子を窺う。 事は小動物の餌付けの様相を呈している。 「ほら、おいでマサ」 「……もう、からかったりしませんか?」 「しないしない」 「…下着売り場から出ますか?」 「これ買ったらね」 手の中の黒レース付きを示す。 気に入ったらしい。 「ほら、だからおいで」 「…わかりました」 ミサキの影から出てくる。 「悪かったわね。ちょっとやりすぎたわ。昼ご飯おごるから勘弁ね」 ポンポンと肩を叩きつつ歩きだす。 マサヒコも中村について歩く。 「……なんだったの?いったい?」 「知らないわよ……」 残されたミサキとアヤナ。 唖然と二人の後ろ姿を見送る。 「大体!なんで小久保君と中村先生が一緒なのよ!?」 「私に言われても知らないわよ。でもお姉様も昨日ちょっと様子変だったし」 「言われてみれば…」 いきなりマサヒコに抱きついたことを思い出し、顔を見合わせる二人。 中村になにかあったのだろうか?と無言のうちに考えていると。 「アヤナちゃ~ん!これアヤナちゃんに似合うと思うんだけど!」 どこに行っていたのか、パタパタと走ってきたリンコ。 その手に持たれている物は… 「なんで私にこんなのを勧めるのよ!!」 PCVヴィニル製のビスチェ。黒。 じょーおーさまです。 つーかなんでそんなマニアックなアイテムがデパートの下着売り場に?謎だ。 リンコは力説する。 「ぜっっったいアヤナちゃんに似合うよ!」 「あなたは私をどんな風に見てるのよー!!?」 「若田部さん落ち着いてぇ!」 ちょっとした騒動を巻き起こす三人だった。 その後のマサヒコと中村。 女性服売り場へ。 中村が次々と試着。 その度にマサヒコに意見を求める。 特にからかう様子もないのでマサヒコも素直に感想を述べる。 まあ「似合いますよ」「素敵ですよ」を基本に誉めるばかりなのだが。 お世辞とわかっていても誉められて喜ばない人間はいない。 中村もその例に漏れず、上機嫌で春物を数着購入。 次に男物を物色。 中村がマサヒコを着せ替え人形の様にする。 「あら、それも似合うわね」 「先生…服、着るのはいいんですけど」 「なに?あ、次これ着てみて」 「買ってくれるんですか?」 「自分で買いなさい」 「………」 理不尽。 でもなにも言わない。 代わりに、 「…はぁ」 こっそりため息をついた。 結局マサヒコが買ったのはドライメッシュシャツ数枚。 試着はしなかったが一枚持っているので着心地がいいのは証明済み。 これから徐々に暑くなっていくし、ちょうどいいだろうとの考えからだ。 マサヒコが購入した時、時刻は既に正午を大きく回っていた。 「そろそろご飯にするか。マサ、どこかリクエストある?」 「あ、どこでもいいっす」 「…じゃあ立ち食い蕎麦屋で」 「座って、落ち着いて食べたいです」 「じゃあ○ックでいいわね」 との事で○ックに決定。 デパートを出て近くの○ックへとGO! ちなみに。 道中中村の荷物もマサヒコが持っていた。 あと、「○ック」じゃなくて「○クド」だろーが!とかいうツッコミは無しで。 「じゃあ約束通り奢ってあげるわ。1000円まで好きなもの頼んでいいわよ」 「…1000円ですか」 「おごってもらうのに贅沢言わない!」 「…はい」 釈然としないものを感じながらも注文。 セットメニュー+単品バーガー数個を注文しても1000円でおつりが来るのが○ックのいい所。 十分にマサヒコの胃袋を満たしてくれるだろう量の注文をする。 「中村先生、聞いてもいいですか?」 バーガーを一つ食べきった所で朝からの疑問をぶつけてみる。 中村に視線で先を促され、マサヒコは疑問を口にする。 「いったいどうしたんですか?」 「アバウトな質問ね」 「すいません。でも他に言いようもないですし」 「それを上手いこと言ってみなさい。国語の実戦練習と思って」 「……」 からかわれている…というよりは試されている感じだ。 マサヒコは考えながら次のバーガーを口にする。 たっぷり時間をかけてバーガーを処理。 当然、たっぷり思考する時間はあったわけで。 再び中村に質問。 「今日はこれでおしまいですか?」 「それ、さっきの質問と関係ないじゃないの」 「……」 確かにそうだ。 マサヒコはポテトをかじる。 Lサイズだから結構な量がある。 「……んぐっ!!」 …喉に詰った。 「ほら、考えごとしながら食べてるから」 差し出されるジュースを受け取り、流し込み、ホッと一息。 「助かりました」 「どういたしまして」 そう言って笑う中村からマサヒコは視線を外す。 優しげな、母性を感じさせる笑顔だったので。 ちょっとグッときてしまったのだ。 ……気を取りなおして三度目の質問。 「え…と、今日はなんで俺を誘ったんですか?」 「なんとなく、じゃダメかしら?」 「昨日急に抱きついたのは?」 「それもなんとなく」 「じゃあ…今日、この後はどうするんですか?」 「どうしたい?」 疑問をぶつけてもはぐらかされる…と言うか、答えになってない答えを返され。 終いには逆に疑問で返された。 疑問に疑問で答えるのはどうだろう?なんて思いながらも、 「あ~…えと、なんか朝からずっと小忙しかったんで、ゆっくりしたいです」 疑問に答えるのがマサヒコがマサヒコたるゆえんだ。 「ゆっくりか…好都合ね」 「は?それって――」 「マサ……ついてるわよ。ほっぺた」 「えっ!?」 少々不穏なものを感じ、突っ込んだ事を聞こうとした矢先に気勢をそがれた。 頬をペーパーナプキンで拭うマサヒコを中村は愉快そうに見ていた。 その後は特に会話もないまま食事が進み、ものの5分もしないうちにごちそうさま。 食べ終わると中村はマサヒコを引きつれ、どこかへと向かい歩き出す。 マサヒコは大人しくついていくだけだ。 やがて繁華街から離れ、住宅街へ。 最終的に辿り着いたのは一軒(一棟?)のマンション。 「えっと…中村先生、ひょっとしてここって……」 なんとなく答えを予想しながらマサヒコ。 果たして帰ってきたのは、 「自宅よ」 予想通りのものだった。 中村はエレベーターにのりこむ。 「ほれマサ」 「あ、はい…って!なんで俺を自宅に招待!?」 「ゆっくりしたいんでしょ?」 言いつつ階数ボタンを押す。 二人を乗せた昇降機は駆動音と共に上昇、目的の階に到着。 さっさと歩き出す中村を追うマサヒコ。 そのまま中村の部屋の中にまでお邪魔してしまう。 「ジュースくらい出して上げるから座ってて」 「あ、はい……じゃなくて!なんで俺をここに連れて来たんすか!?」 「だってゆっくりしたいって言ったじゃないの。さっきも言ったわよこのセリフ」 そう言ってマサヒコの前にオレンジジュースを置く。 「いや、言いましたけど…」 「それに、昼ご飯食べたら眠くなっちゃって…私昼寝が趣味だし」 「知りませんよそんなこと」 深くて思いため息をつくマサヒコ。 「なに?私の家じゃゆっくりくつろげないっての?」 「…仮にも女の人の、一人暮しの家に二人きりなんて、 あんまりくつろげないと思いますけど」 「おや、私のこと女って見てくれてるんだ?」 「そりゃ、まあ……いちおー」 やや戸惑いながらも素直に頷くマサヒコ。 「嬉しいこと言ってくれるわねぇ……よし、ご褒美を上げよう!」 中村はそう言ったかと思うとマサヒコを手招きをする。 「な、なんすか?」 「いいからいらっしゃい」 マサヒコのシックスセンスはこれ以上なく警鐘を鳴らしているのだが。 逆らえないのがこれまたマサヒコの性格。 警戒しながら近寄った所で、中村にベットに押し倒された。 「おわぁ!な、なにするんですか!!?」 「いったでしょ?ご褒美を上げるって。美人オネーサマと添い寝をさせてあげよってわけよ」 中村に抱きつかれ、マサヒコは、 「遠慮します。固辞します。御免被ります。謹んで辞退します。帰ります。バイバイです」 ありとあらゆる言葉で拒否をするが、 「だめ」 一言で跳ね除けられる。 「ダメがダメです!帰りま――うわ!足絡めてこないで――おお!当たってます! 背中に当たってますって!うひゃ!どこ触ってるんすか!!」 「はっはっはっ!よいではないかよいではないか!」 「きゃー!!」 なんか……立場がおかしい二人。 普通逆じゃね? 「あらまあ、あんた肌スベスベね。ほっぺたもぷにぷにだし。ホントに男?」 「左手で触ってるからわかるででしょーが!」 マサヒコの言葉通り。 中村の右手は頬に、そして左手はマサヒコの股間を円を描くように這い回っている。 「あ、それもそうか。うんうん。確かに男だわ」 「納得していただけたのなら何卒その手を御放しになられますよう、望む次第であります!」 「や!!」 「即答!?しかも短っ!!」 中村の手はさらに激しくマサヒコの股間を刺激する。 やばい。 これはヤバイですよ奥さん! 「せ、先生!中村先生!マジでストップ!これ以上はヤバイですって!」 「な~にがやばいのかしらん♪…………あ、固くなってきた」 「ううう……」 若さ溢れるマサヒコの下半身は中村の愛撫だかなんだかに敏感に反応してしまう。 「あらあら。もうこんなにして!」 「は、はなせぇ!!」 じたばたと、本格的に暴れ出したマサヒコを中村はマウントをとって押さえ込む。 ……いや、騎乗位か!? 「ほら、暴れないの。下の階の人に迷惑でしょ?」 「俺に迷惑だって認識はないんですか!?」 「ない」 「だから、なんで即答なんですか!?」 半泣きのマサヒコ。 今日はよく泣きそうになる。きっと厄日だ。 天中殺と暗剣殺が手に手を取り合ってやって来たに違いない。 「大丈夫。私に任せて」 「……」 だがしかし。 天中殺と暗剣(以下略)だろうとも、人事を尽くすが光明を産む。 「お…りゃあ!!」 「!!?」 マサヒコ、反撃に打って出る。 腹の上辺りに座りこんでいた中村の顔に足を掛ける。 そして全身の力を連動させ、中村を後ろに引き倒しつつ、マサヒコは上半身を起こす。 流れるように一連の動作を行う。 昨日見ていた格闘技番組がこんな所で役に立とうとは、まさに風吹けば桶屋はウハウハ理論。 ………だと思ったのだが。 「もう、マサったら。自分が主導権握りたいならそういえばいいのに。 でも、あんまりがっつくと嫌われるわよ?」 確かに。 体勢だけ見れば、いわゆるまんぐりがえしの体勢。 その事実に気づき、マサヒコは固まってしまう。 それがいけなかった。 さっさと逃げていればよかったのに。 戦場では常に一瞬の判断が生死を別つと言うのに。 「隙あり」 「うおぉ!?」 技を見事に返され、体勢は再び中村のマウントへと移行。 「んっふっふっ。覚悟なさいマサ」 「っ!」 中村の顔がゆっくり降りて来る。 そして唇が触れる。 軽く、押しつけるだけのキス。 半ば予想していたとはいえ、動揺を隠せないマサヒコ。 目を見開くマサヒコを尻目に、中村はさらに舌を挿し入れる。 中村はマサヒコの舌を絡めとろうとするが、萎縮しているのかうまくいかない。 (無理ないか。ファーストキスでディープキスだもんね) ならばと、舌で唇をなぞるようにするとマサヒコの体が反応する。 くすぐったいのか、身体をよじって中村から逃れようとするが、そうは問屋が卸さない。 中村は巧みな体重移動でマサヒコを完全に制しつつ、さらに丹念に舐め上げる。 マサヒコの動きが鈍くなってきた所で中村は顔を離す。 「どう?ファーストキスの感想は?」 「…ファーストじゃありませんよ」 「えっ!?嘘!!?」 マサヒコの発言にビックリする中村。 だが、すぐに気づく。 言ったマサヒコの様子がおかしい。 なんと言えばいいのだろうか……悪戯を隠す子供のような様子。 中村、ピンと来る。 「マサ…なんでそんな嘘つくわけ?」 「いや、なんかやられっぱなしだと悔しいんで」 「それにしたって嘘つくならもう少し上手くつきなさいよ」 「…普通嘘つくなって言いませんか?」 「別についてもいいわよ。ただね、嘘つきには罰が待ってるってことをわからせてあげる」 「は?……うお!!」 中村の手がマサヒコの股間を摩る。 先ほどまでの愛撫で既に硬くいきり立っているそこ。 柔らかく、時に激しく。 強弱をつけて撫でまわされ。 下半身からわきあがる快楽にマサヒコは苦悶の表情を浮かべる。 「気持ちいい?」 「……」 ここで気持ちいいと言ってしまえば負け確定だ。 それだけは避けたい。 この状態から脱出する術はまだあるはずだ。 野球はツーアウトから。サッカーはロスタイムに奇跡が起こる。 歯を食いしばって耐えるマサヒコ。 しかし。 だがしかし。 相手はあの中村なのだ。 「強情ね。なら…」 「うわぁぁ!」 チャックを下げられ、トランクスの隙間から手が侵入。 直に触られ、たまらずマサヒコは声を上げてしまう。 「ここをこうして…ほらほら、どう?」 「おうっ!…くぁっ!」 自分で触る以上の快感に、マサヒコは強く歯を食いしばり、耐えようとしたが……限界だった。 マサヒコの意識が真っ白になる。 同時に、それまで必死に堪えていた熱いものを一気に放出し中村の手とトランクスを汚す。 「すごい量……マサ、溜ま――」 ティッシュで手を拭きながらマサヒコの顔を見る。 睨みつけられていることに気づき、流石に中村も後ろめたくなる。 「えっと…あはは、ごめん」 そう言ってごまかすようにマサヒコに口付けし、驚く。 僅かに血の味がした。 出血するほどに、マサヒコは歯を食いしばっていたのだ。 「……ごめん」 シュンと、青菜に塩が如く元気をなくす中村の様子に、マサヒコも表情を崩す。 「…先生、デパートで言いましたよね?「もうからかったりしない」って。 覚えてますか?なのにこれはなんなんですか。いくらなんでもやりすぎですって」 「……私は、からかってるつもりはないわよ」 「じゃあこれは――」 「全部本気よ」 きっぱり言われ、マサヒコは絶句する。 中村はさらに続ける。 「私はマサが欲しいの。それだけよ。からかうつもりは毛頭ないわ。 まあ…多少茶化すような感じにはなるけど、それもひっくるめて全部本気」 「な、なんで!?」 「まあ簡単に言えば、切れたから」 「そーいえばそんなこと昨日も言ってましたけど…何が切れたんですか?」 「男」 「……男てあんた…他あたって下さい!」 「誰でもいいってわけじゃないの。言ったでしょ?私はマサが欲しいの。マサがいいの」 「そ、そんなこと言われても……」 ひどく動揺するマサヒコにさらに追い討ち。 「マサは…私のこと嫌い?」 「っ!!」 卑怯だと思う。 そんなこと言われてはっきり「嫌い」と言える男が何人いる? まして中村、中身はともかく外身は一級品。 「嫌い……」 「…そう」 「じゃ、ないです」 ニヤリと中村が笑みを浮かべる。 「じゃああーんなことやこーんなことしても問題ないわね」 「いやいやいや!問題あるだろ!」 あっという間に上下とも脱がされ、素っ裸にされる。 中村、マサの裸(おもに上半身)をじっくり観察して一言。 「…ムカツク」 「なにがですかぁ!?」 肌の綺麗さに思わず嫉妬。 「うっさい!」 「わけがわかぁぁぁ!」 首筋のあたりを舐められマサヒコは甲高い声をあげる。 「な、なに…おぅ!?」 「どんな感じ?」 「どんなって…ぅぐ!…くすぐったぁ!」 「ふむ」 中村の舌がつつつっと滑りおりてくる。 が、鎖骨のあたりで動きをいったん止める。 「マサ、キスマークって知ってる?」 「……メーカーですか?」 「こっちのよ」 「っ!」 鎖骨のあたりを強く吸われる。 「ほら、できた」 にっこり笑う中村。 マサヒコもその跡を確認しようとするが、 「…見えないっす」 場所が悪い。 しかし、マサヒコがうっかり言ってしまった一言はもっと悪い。 「見えない?じゃあもっとよく見える所につけてあげよう」 「うぇ!?結構です!」 「結構なのね?じゃあつけよう。たくさんつけよう」 「ちがっ!そーゆう意味じゃぁぁぁぁ!」 日本語って難しいですね。 マサヒコは全身にキスマークをつけられていく。 「さて。いよいよマサお待ちかねのここに来たわけね」 「べ、べつに…まって……くっ」 マサヒコの下半身に舌をはわせる。 よく言われるアイスキャンディーを舐めるような感じで。 もちろん手は袋の方を刺激している。 マサヒコの反応を見て微妙に舐める位置、強さ等をかえる。 正に熟練の手管。 マサに熟練のテクだ。 意味もなく掛詞。 ……本当に意味はない。 中村にあの手この手で攻められるマサヒコ。 必死に堪えるが、限界が近い。 中村もそれを察したのだろう。 手早く服を脱ぎ、裸になる。 「どう?なかなかのもんでしょ?」 マサヒコに惜しげもなく裸体を見せつける。 肌には染み一つなく、張りがあって若若しい。 「……綺麗だ」 思わずもらしたマサヒコの一言に、思わず赤くなってしまう中村。 綺麗だなんて正直聞き飽きた言葉ですらある。 行為の最中にも何度も言われた。 しかし。 マサヒコほど純粋に、心の底から、綺麗といわれた事は……多分、ない。 赤くなった純な自分をごまかすかのように中村はマサヒコのものを膣に納める。 「うおぁう!」 マサヒコは悲鳴だかなんだかよくわからない声をあげてしまう。 手や口とは違う、真綿で閉めつけられるかのような感触。 気を抜けばすぐに達してしまいそう。 流石にそれは情けないので歯を食いしばり、拳を握って快楽を堪える。 それでも…そんなには持ちそうにない。 一方の中村もマサヒコのモノを中に納めた瞬間に甲高い嬌声を上げていた。 (なに……これ!?……凄く…っ!……感じちゃう!!) 今まで何度も行ってきた行為なのに。 体がひどく敏感になっている。 ここしばらく行為をしていなかった事もあるだろう。 しかし、大部分は精神的な物だろう。 マサヒコを感じたいと思っている。 マサヒコを求めている。 その思いが身体へフィードバックしているのだろう。 「うあ!……い…いい!…気持ちいい!……」 中村の歓喜の叫び。 もっとマサヒコを感じたい、もっとマサヒコを貪りたい。 しかし、 「うあああああ!で、出る!」 「あ…」 マサヒコが堪えきれず放出してしまう。 「……マサ」 中村、マサヒコの顔を掴む。 「私はまだまだなのに、一人だけイッちゃうなんて」 「……す……いま…せん……」 息も絶え絶え謝罪する。 (まったく…無理やりやられて、好き勝手言われてるのに謝るなんてね) しかしそれがマサヒコらしくもある。 ついつい顔がほころんでしまう。 「さ、マサ。もう十分休んだでしょ?」 「え゙!?ま、まさか…」 「私はまだまだイッてないんだから。頑張ってもらうわよ」 「………」 「逃げるな」 全力で脱出しようとしたマサヒコだがあっさり捕まる。 「ふふふ、どうせ逃げられやしないんだから」 柔らかなタッチで触れられマサヒコの下半身はあっという間に元気になる。 「楽しみましょう」 妖艶に囁かれマサヒコはごくりと唾を飲み込んだ。 マサヒコはフラフラと帰宅の途についていた。 あの後中村と何度も交わり、計5回イかされた。 途中から反撃してはみたが1回イかせるのが精一杯だった。 まあルーキーVS歴戦の兵だった事を考えれば上々の戦績だろう。 それはともかく、 「だるぅ……」 猛烈な倦怠感に襲われるマサヒコ。 「頑張れ俺…もう少しで自宅だ」 重い身体を引き摺る用にして歩く。 自宅への最後の角を曲がると、 「お?」 ミサキ、アヤナ、リンコの三人がマサヒコの家の前に、つまりミサキの家の前にいた。 「あ、小久保君だぁ!」 目ざとく発見したリンコがブンブン手を振っている。 一刻も早く自室で休みたい所ではあるが、手を振られて無視するわけにもいかない。 「よう。どうしたんだ三人そろって」 「ミサキちゃんちでお茶して今帰るとこだよ。ね?」 「ええ。小久保君は今までお姉様と?」 「まあな」 「…なんか、疲れてない?」 ミサキの言葉にマサヒコ、大きなため息。 「中村先生の相手を一日したんだぜ?そりゃ疲れるって」 「そ、そうだね。精神的に大変そうだもんね」 同意するミサキ。 まあマサヒコが疲れているのは精神だけではないのだが。 そういった意味で内心ちょっとビクビクのマサヒコ。 「じゃあ俺疲れてるから」 「あ、うん。ごめんね引きとめて」 謝って来るミサキに手を振りマサヒコは家に入ろうとしたのだが。 「……どうした的山?」 リンコがジーッとマサヒコを凝視。 少しづつ近づいて来る。 「的山?」 「リンちゃん?」 「的山さん?」 三人の呼びかけにも答えず、リンコはさらにマサヒコに接近。 「う~ん…」 不意にリンコが首を傾げる。 「的山?」 「リンちゃん?」 「的山さん?」 再び呼びかけるがリンコは何事か考えこみ返事が無い。 三人顔を見合わせていると、 「あー!そっか!そうなんだ!」 リンコが叫ぶ。 「匂いだ!」 「「は?」」 「っっ!!!」 リンコの言葉に首を傾げる二人と思い当たる事があり、焦る一人。 「どうしたのリンちゃん?」 「なんか違和感があるな~って思ってたんだけどね。 小久保君の匂いが昼と違うの」 「匂いが、違う?」 「うん。あれ?でもこの匂いって確か…」 不思議そうな顔をするリンコ。 青ざめるマサヒコをよそに決定的な一言を発する。 「中村先生のシャンプーの匂いだ」 「「ええ!?」」 以下、ミサキとアヤナの頭の中。 現在のマサヒコの髪の匂い=中村の愛用するシャンプーの匂い。 昼まではそうではなかく、昼以降にマサヒコの匂いが変化。 昼以降もマサヒコは中村と一緒。 「小久保く~ん」 「は、はい」 すっごく怖い笑顔のミサキ。 「ひょっとして、中村先生のお家に行ったのかなぁ?」 「あ、いやそれは…」 「行ったのかな~?」 「……」 「逃げない!」 全速力で逃げようとしたが捕まってしまった。 逃げようとしてよく捕まる日だ。 やっぱり今日は天中殺と暗剣殺が手に手を取り合ってやって来たに違いない。 「ごらんの通り被告は質問を前に逃走を計りました。 これはやましい事があると自供しているような物です! 検察としては改めて私の部屋で尋問する事を要求します!!」 「弁護側も真相究明の為に天野さんの部屋での尋問を傍聴する事を要求します!」 「「裁判長!判断を!!」」 (なぜか検察な)ミサキと(なぜか弁護士の)アヤナの言葉に、 (これまたなぜか裁判長の)リンコは、 「うん、許可」 あっさり頷く。 「まて!話し合おう!あ、こら!腕を引っ張るな! 家に引き摺りこもうとするな!待ってくれ!俺は、俺はぁぁ!!」 パタン。 天野家の戸は、閉ざされた。 その後、中で何が行われたのかは当事者しか知らない。 つーか知りたくもない。 END
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