作品名 作者名 カップリング
続々アイ先生とマサヒコ君 518氏 アイ×マサヒコ

「一の実戦は十の訓練に勝る!」
「はあ…たまに聞きますね、その言葉」
授業中の突然のアイの言葉にマサヒコは気のない返事をする。
彼の思うところはただ一つ。
やれやれ、また脱線か……なわけで。
「それで。その言葉がどうしたんですか?」
「言葉通りよ!実力をつけるためには実戦あるのみ!」
そう言ってマサヒコが今日返してもらったばかりの化学テストをかかげる。
「と、いうわけで。化学の点数が悪かったマサヒコ君を次の休みに科学博物館へとごあんな〜い♪」
「次の休み…って、明日なんですけど」
「そうね。だから明日行きましょう!」
「…まあ別に用事もないからいいですけど」
いつものように流されるままのマサヒコ。
「じゃあ決定!9時に迎えに来るからちゃんと起きててね」
「分かりました……ところで先生」
「なぁに?」
「今って英語の授業のはずなのになんで急に化学の話が出てきたんですか?」
「…細かい事は気にしない!」
言い切るアイの様子に…マサヒコはため息をついた。


「と、いう訳で。明日出かけるから」
「ふ〜ん…」
アイも帰宅し、今は夕食。
父は今日も残業らしく、母と二人の食卓。
今日あった事を話している最後にアイから提案された事を母に話していたマサヒコ。
「でも…化学なのに科学博物館に行く意味ってあるのかな?」
いわゆる化(ばけ)学と科学は似て非なるもの。
マサヒコの不安も当然なのだが、
「いいじゃない別に。同じ理科科目には変わりないんだし」

母が一蹴。
「そりゃそうだけど…」
「そもそも、デートなんだからそんな細かい事考えなくてもいいんじゃないの?」
「……は?」
「疑問に疑問で返すなって教わらなかった?」
「いやいや!重要なのはそこじゃなくって!」
パタパタと手を振るマサヒコ。
「デートじゃないだろ?授業の一環だって」
「休みの日に男女が二人で出かけるんでしょ?デートじゃないの」
「いやいや。いやいやいや!」
否定を続けるマサヒコの態度に母は眉をひそめる。
「なに?あんた濱中先生とデートしたくないわけ?迷惑なわけ?」
「いや、そうじゃなくて…気分の問題ってゆーか…」
「気分の問題ならなおさらよ。デートの方が楽しいでしょ」
「そりゃそうかもしれないけど…課外授業のつもりでつれていってくれてるのに、それって失礼じゃないか?」
「…課外授業のつもりならね」
「どーゆう意味だよ?」
「言葉通りよ」
そう言って母は笑う。
一方のマサヒコは…なんとも、不思議な気分だった。
果たして明日の外出は課外授業か?デートか?
願わくば………。


翌日。
天候やや曇り。
マサヒコは……手を引いて歩いていた。
半泣きのアイの手を引いて歩いていた。

なぜそんな状況に至ったのか?
けちのつき始めは。
まずアイが30分ほど遅刻した。
寝坊したらしく、寝癖のついたままだった。
さらに科学博物館に着いてみれば休館日だった。
だったらと隣の美術館に行ってみたら改装工事中で臨時休館。
予定が狂いまくって焦るやら慌てるやらしているアイを落ち着かせるべく、マサヒコがジュースを買った。
アイが落とした。
謝るアイ。
彼女を慰めるべくこんどは屋台のホットドッグを買った。
今度はカラスに襲われて落とした。
この時点でアイは半泣き。
半泣きの女性とその傍にいる男。
さあ、悪いのはどっち!?
答え、男に決まってる。
世間はそう見るわけで。
通行人もそう見るわけで。
注目を集めるハメになったマサヒコはアイの手を引いてその場を離れなければならなかったのだ。


歩く事約10分。
「そろそろ泣きやんでくださいよ先生」
「だって……ぐす……せっかく…ひっく…」
「ほら、つきましたよ」
「…着いた?」
マサヒコの言葉にアイが顔を上げると、そこはとある大きな建物前。
「…東が丘水族館?」
建物の看板に書いてある文字をそのまま読む。
「ここ、昔両親に連れられてきた事があるんです。
今日は科学の授業は無理でしたけど、生物の授業って事で。入りませんか?」
「…うん!」
嬉しそうに、笑顔で頷くアイを見て、マサヒコはホッと胸をなでおろす。

正直。
泣いているアイなど見たくは無い。
笑顔のほうがいいに決まってる。


水族館でのアイのはしゃぎ方はなかなかの物があった。
「マ、マサヒコ君!ここ怪獣がいるって書いてあるわよ!ゴジラ!?ラモス!!??」
「怪獣じゃなくって海獣ですから」
「あ…」
「それと、ラモスは怪獣じゃありませんから」
とか、
「マサヒコ君イルカイルカ!」
「かわいいですね」
「知ってる?イルカはエロ・コケーションで意志疎通してるのよ」
「それを言うならエコー・ロケーションじゃあ?」
とか、
「わ〜!おっきなタカアシガニ〜」
「ホントにでっかいですねぇ」
「…何人前かしら?」
「………」
とか、
「魚って結構長生きするんですね。このイワシもう10年も生きてるって書いてありますよ」
「…おいしそう」
「…お腹、すいたんですね」
と言った具合で。
まあ、途中から空腹のせいで見るもの全てが食料に見えていたようだが。
そんなわけで少し遅めの昼食を併設されているレストランで取ることにする。
「…水族館のレストランのおすすめメニューがシーフードパスタってのはどうなんだろう?」
「え?なにか言った?」
注文したシーフードパスタをおいしそうに頬張りながらアイ。

「いえ、なんでもありません。それより先生」
「なに?」
「ついてます」
そう言って口元を指差してやると、アイは慌ててハンカチで拭う。
「それにしても…相変わらずよく食べますね」
「そうかな?」
首を傾げるアイ。
その胃袋には既にシーフードサラダ、海鮮丼、そして今シーフードパスタも収まろうとしている。
いったいこの細身の身体のどこにそんな容量が?
「…人体は神秘だ」
「??」
思わず呟いたマサヒコの言葉にアイは不思議そうな顔をするのだった。


昼食の後、アシカショーを見て、さらに一通り見てまわり水族館から出る。
「あ〜、おもしろかった」
「そうですね」
水族館の興奮を持続したままのアイはあれがすごかった、きれいだった、かわいかった、と饒舌。
マサヒコは聞き手にまわる。
話しながら歩くのは水族館のそばの自然公園。
昼食の時に水族館を出たら行こうと二人で話していた場所だ。
公園内は休日のわりに人の数が少ない。
その中を二人、肩を並べて歩く。
それは課外授業などでなく、完全にデートの様相なのだが。
アイも、マサヒコもその事に気づかない。
いや。
例え気づいたとしてもだからどうだ?という事になる。
デートだろうがそうでなかろうが。
二人にとっては自然な時間なわけで。
とても、楽しい時間。

そんな時間に別れを告げさせたのは、大自然の気まぐれだった。
突然の雨。
いまはまだ穏やかだが、瞬く間に大粒へと姿を変えることだろう。
「わわわっ!?雨!?」
「何処か雨宿り出来る所は!?」
自分の着ていた上着をアイの頭にかけてやりながらマサヒコは辺りを見まわす。
さて。
改めて確認するがアイとマサヒコのいた所は自然公園。
雨宿りの出来るような建物は無い。
だから二人は雨宿りの出来そうな樹を探して公園内を駆け巡るハメになった。
ようやく雨宿りできる樹を見つけた頃には雨は本降りへと変わっていた。
「うわ〜…すごい降りですね」
「そうね」
「先生濡れませんでしたか?」
「大丈夫だよ。ありがとう」
そう言って上着をマサヒコに返す。
「おかげで私はあんまり濡れなかったよ」
「なによりです」
言いながら上着を絞る。
「…マサヒコ君は、優しいね」
「そうですか?そんな事無いと思いますけど…」
そう言ってたいぶ水分を搾り出した上着を羽織る。
「ううん、優しいよ。マサヒコくんは優しい」
「……」
アイの言葉に、マサヒコは空に視線を向ける。
かなり照れている様子。
そんなマサヒコの様子に、アイは自然に笑みを浮かべる。
マサヒコは、典型的な現代っ子だ。
言われた事はやるが、言われないとやらない。

しかし、人を思いやる事だけは彼はすすんで行う。
優しい、ホントに優しい彼。
「マサヒコ君」
「はい?」
呼ばれ、向いたかと思うと、唇に柔らかな感触。
目の前には目を閉じたアイの顔。
キスをされていると気づき、マサヒコは顔が熱くなるのを感じる。
そういえば。
今までアイと身体を重ねる機会が二度あったが、アイからキスをしてくるのは始めてだ。
そんな事を頭の片隅で思ったマサヒコ。
雨の降る音が、やけに静かに感じた。
どれくらい時間が流れたのか。
1分、或いは2分。
酷く長く感じられたアイからのキスはやがて終わる。
離れるアイとマサヒコ。
ほぅっと、熱いため息がアイの口から漏れる。
「先生…」
問いたげなマサヒコの視線。
アイは、そのマサヒコの視線を受け止め、
「好き…」
たった一言。
そう言った。
そう言った後。
恥ずかしさに真っ赤になり、そっぽを向いてしまう。
アイの目に写るは雨を弾く緑の木々草木。
見るもの全てにフィルターがかかったように朧げで、頼りない。
不意に。
わけもなく不安になってアイはマサヒコを見た。
朧げな世界にあって、彼だけは鮮明。

それは同じ場所で雨宿りをしているからであり、そして――。
「んっ――!!?」
突然、脈絡も無く唇を合わせられ、アイは驚きに目を見開く。
マサヒコの行為はそれだけに留まらない。
服の上からアイの胸に触れ、乱暴に揉む。
「んー!んー!!」
アイは抗議の声を上げようとするがキスの最中ではそれも叶わず。
言葉にならないうめきを上げるのみ。
マサヒコの行為はさらにエスカレート。
キスをやめたかと思うとアイの服を下着ごとたくし上げ、胸を露出させると、舌でなぞる。
「んんっ!」
その刺激に、ビクッとアイの身体が反応。
「や、やめ…マサヒコく……ああっ!」
身体を震わせながら懇願するが。
マサヒコにやめる様子は無い。
逆に激しさが増す。
その時になりようやく、アイはマサヒコの様子がおかしいことに気づく。
はぁはぁと、酷く荒い息。
今まで身体を重ねた時にもマサヒコは何処か余裕があったと言うか…アイの事を第一に考えている節があった。
それが今はまったくない。
ただ己の欲を満たそうとしている。
その事実にぞっとアイの背筋に冷たい物が走る。
畏怖の情。
アイは恐怖を覚え、
「やぁ!!」
マサヒコから離れようとするが、樹に押しつけられ逃れられない。
「マサヒコ君!ねえ……どうしちゃったの…ねえ!」
「……」

マサヒコはなにも言わず……ただ。
一瞬、胸を責めるのをやめ、アイを見上げた。
アイとマサヒコ。
視線が交錯する。
怯え、戸惑い、不安げな感情を宿したアイの目。
そしてマサヒコは…獣の目。
普通ならその目を見て恐怖を覚えた事だろう。
しかし。
その目を見たアイにはなんとも言えない感情が芽生えた。
なんと言えばいいか…えもいわれぬ悦び。
彼をそんな目にさせた、女としての優越感…とでも言えば言いのだろうか。
マサヒコは左手を胸に残したまま、右手をアイのスカートの中に忍ばせ、下着の上からスリットを擦る。
「ひゃっ!」
そこは既に下着の上からでも分かるほど濡れている。
マサヒコは自分のズボンをずり下げる。
「マサヒコ君!?ま、まさかここでそこま――ひぅ!」
マサヒコのモノが侵入してくる感覚にアイは悲鳴を上げる。
痛みは無いが…今までに比べマサヒコのモノが大きく感じられる。
「んぁ!…ふぁあ!…」
自然、声が出る。
激しい。
今までになく激しく腰を動かすマサヒコ。
深く突き入れ、掻き混ぜ、貪欲に快楽を貪る。
「だめ!だめぇ!!」
刺激の強さにアイは達してしまうが、マサヒコは動きを止めない。
「ああぁ!!!」
敏感になった身体をさらに抉られ、悲鳴に近い叫びをアイが上げる。
「やぁ!奥に!ひぃぃ!!」
「くぅっ!」
強い締め付けに、マサヒコはアイの中に精を放つ。

それと同時にアイはマサヒコに持たれかかる。
「あはは…腰に、全然力が入らない」
苦笑するアイに、マサヒコはそっとキスをした。


雨は降りつづけている。
「…すいません」
雨音に消え去りそうな程小さなマサヒコの声に、アイは首を傾げる。
「なにが?」
「その…いきなりあんなコトして。しかもこんなところで」
「そうだね」
「すいませんでした」
「別にいやだったわけじゃないよ。ただ…ちょっとビックリしたかな」
アイは疑問をマサヒコにぶつける。
「でも急にどうしちゃったの?」
「いえ…なんか、急に押さえがきかなくなって」
「ふ〜ん」
「…すいません」
何度目かのマサヒコの謝罪にアイは笑顔。
「謝らなくってもいいよ。私も…その……気持ちよかったし」
そう言って真っ赤になってしまう。
赤くなった顔を見られまいと空を見上げると、
「雨上がったね」
「あ、ホントだ」
「それじゃあ帰ろうか」
そう言ってアイはマサヒコの手を取り歩き出そうとするが、
「?? マサヒコ君?」
マサヒコが動かない。
「どうしたの?」

首を傾げるアイに、マサヒコはアイの手を握り返しながら、
「…もうちょっと、こうしてちゃだめですか?」
そう言う。
「…そうだね。もうちょっとこうしてようか」
アイは再び樹に持たれかかる。
「先生」
「なあに?」
「その……俺も、です」
「?? なにが?」
アイの疑問にマサヒコはなにも答えず、真っ赤で俯いている。
意味がわからずきょとんとしていたアイだが、
「…………あぅ」
意味に気づき、マサヒコに負けず劣らず真っ赤になる。
マサヒコの言葉の前にあるべき言葉は……
マサヒコが応えたかった言葉は……

好き。
俺もです。


END

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