作品名 作者名 カップリング
NoTitle 518氏 ミサキ×マサヒコ×アヤナ

艱難汝を玉にす…なんて言葉もある。
意味は試練は人を成長させるとかなんとか。
じゃあこれも成長するための試練なのだろうか?
マサヒコは思う。
右に幼馴染。
左の委員長。
かわいいと美人。
タイプは違えど、どうやら二人共男子からは人気があるらしい。
その事実をマサヒコは身をもって知る事になってしまっていた。
妬みや嫉みのきっつい視線を感じる。
ちくちくと感じる。
これと言うのも左右に座る少女達が原因なわけで。
もっと具体的に言うと。
何故か二人から告白を受けちゃったわけで。
マサヒコは思う。
「……なぜだ?」
「きっと政治のせいだよ」
「それは違う」
的山なのに的外れなことを言うリンコに鋭いツッコミ。
いかなる状況に置かれてもつっこまずにはいられない小久保マサヒコ、14歳の昼下がりだった。


発端はそう…放課後の教室。
「好き」
「……ぬ?」
勇気を持って、ありったけの想いを込めて言ったミサキの言葉にマサヒコが返したのはよりによって「ぬ?」。
せめて「は?」か「へ?」であったのならば救われただろう…………気がする。
ミサキからすれば「ぬ?」も「は?」も「へ?」も「け?」もいやに決まっている。
欲しいのは「俺も…」的な言葉なのだから。

流石にマサヒコも「ぬ?」だけで終わらせるほど非道(?)ではない。
「え…っと…好き?……このカバン?」
「……」
自分の持つカバンを示すマサヒコにミサキは泣きそうな顔で首を振る。
マサヒコ、結構非道だ。
「じゃあ……俺?」
「うん…好き」
「……なんで!?」
「何でって言われても…好きなんだもん。しょうがないよぉ……」
「わわわっ!な、泣くなよ」
「だってぇ…」
ぽろぽろと涙を零し始めたミサキにマサヒコはとりあえずハンカチを差し出す。
ミサキは素直に受け取り、涙を拭う。
その僅かな時間に、マサヒコは混乱する頭を落ち着けようとするのだが、
「小久保君は……私のこと、好き?」
その暇すら与えられないようで。
仕方なく、まとまらないまま考えを言葉に出す。
「えっと…好きって言ってもらえてすっごく嬉しい…と思う。告白されるのって初めてだし」
「じゃあ!」
喜びの表情を見せるミサキを手で制する。
「けど…天野のことが好きかって言われると…正直「うん」とは言えない」
「私のこと…嫌いなの?」
「だから待てって!天野とは幼馴染だし、いい友達だと思ってるし。
いきなり恋愛感情どうこうを言われると…よくわからないんだ」
「よく、わからない?」
「ああ。だから、少し時間をくれないか?」
「そ、そうだよね。急にこんなこと言われても困っちゃうもんね。ごめんね」
「…嫌いじゃないんだ。それだけはわかって欲しい」
「やさしいね。小久保君は」
「いや、そんなことは…」

「そんな所も好きなんだよ」
「……」
「照れてる?」
「うっせえ」
耳まで赤くして無愛想に言い放つマサヒコを見てミサキはくすくすと笑う。
「じゃあ私帰るね。返事はいつでもいいから。でも……できれば早いほうがいいかな」
「…善処する」
「うん。じゃあね」
そう言って出ていくミサキを見て、マサヒコはホッと息をつく。
緊張が解けたのと、ミサキに笑顔が戻ったから。
けれど、決して問題が解決されたわけではない。
問題はこれからなのだ。


翌日。
ミサキがマサヒコに告白したことはクラスの女子の間に知れ渡っていた。
どうやら立ち聞きした女生徒が居たらしい。
そしてそれを知る事となった少女がここにも一人。
「天野さんか小久保君に告白!?」
「う、うん」
アヤナに情報を伝えた女生徒Aはアヤナの迫力に気おされる。
「もしも小久保君がOKの返事をすれば天野さんは彼氏持ち…私との差を広げるつもりね!」
「いや、そんな事無いと思うんだけど…」
遠慮がちに愚見を申し上げる女生徒A。
しかし自分の世界に入りこんでいるアヤナにはとどなかい。
「だったら!私も彼氏を作るわ!ふふふ…負けないわよ天野さん!」
そう言ってさらに自分の世界に入りこんでしまうアヤナ。
「…ねえねえ」
「なになに?あたらしい天野さん情報?」

「ううん。若田部さんなんだけどさ、結構面白い子よね」
「今ごろ気づいたの?」
女生徒AとBの会話。
つんけんしていて、プライドが高く、敬遠されがちに思われる若田部アヤナ。
その実、クラスの女子からは結構面白がられていちゃったりする。
本人は夢にも思わないだろうが。


「そんなわけで私と付き合いなさい」
「何が「そんなわけ」かわからないが、とにかく落ち着け若田部」
放課後の屋上。
放課後の教室、校舎裏に次ぐ告白のメッカだろう場所にマサヒコとアヤナはいた。
そして会話の内容も基本的に期待に沿うもので。
「あなた天野さんから告白されたんでしょう?」
「なんで知ってるんだよ!?」
「クラス中その話で持ちきりだもの…って!そんな事はどーでもいいの。
とにかく私と付き合いなさい」
アヤナの言葉にマサヒコはため息をつく。
「あ〜、なんとなく話は見えた。天野に彼氏ができるなら私にもって対抗心か」
「そうよ!天野さんにはどんなことであれ負けるわけにはいかないのよ!」
どうやら周りの予想以上にアヤナはミサキに対してライバル心を持っているらしい。
まあそれはとりあえず置いておくことにして。
マサヒコは思ったままを口にする。
「だからって告白の相手まで俺でなくてもいいだろ」
「だって…他にあても無いし」
「いや、そうかもしれないけどさ…」
「それに。あなた意外に優しいし、顔も悪くないし、成績もそこそこのレベルだし……」
そこまで言い、アヤナはふと考える。
確かに、彼氏が欲しいと思ったのはミサキに対する対抗心からだ。
それで真っ先に浮かんだ彼氏候補はマサヒコだったわけで。

そのことになんの疑問も、躊躇いも、戸惑いも抱かなかった。
事実、告白までしてしまっているわけだし。
改めて考える。
なぜこうも容易く告白までしてしまった?
普通はもう少し悩むものではないのだろうか?
なぜ?なぜ??
…マサヒコだからか?
マサヒコだったからか?
他の誰でもないマサヒコだったから?
だとしたら。
ミサキへの対抗心などではなく。
否。
ミサキへの対抗心にかこつけて。
大義名分を手に入れて。
それで…告白した?
ひょっとして。
マサヒコのことが…好き?
「っ!!?」
「お、おい!?」
いきなり真っ赤になったアヤナの様子にマサヒコは駆け寄る。
「大丈夫か?いきなり真っ赤になったぞ?」
「だ、だいじょうぶ!」
かなりの裏声でそう言い、マサヒコから距離をとる。
「あの…小久保君」
「なんだ?」
「さっきの…その…ことなんだけどね」
「??」
「その…告白のことなんだけどね」
「ああ」
言われようやく思い至ったのか、マサヒコは苦笑する。

「天野に対抗したい気持ちはわかるけど…いや、ほんとはわかんないけど…とにかく。
もうちょっと…なんだ、その…」
うまい言葉が見つからず言いあぐねていると、
「ううん……対抗心じゃない」
「は?」
「私……多分…小久保君ことが、好き…なんだと思う」
「…の?」
マサヒコよ、「ぬ?」の次は「の?」か。
なかなかのボキャブラリーだ。
…まあそれはともかく。
「今気づいたの。対抗心って所も少なからずあったと思うけど、けど小久保君だから告白しちゃったと思うの」
「……」
マサヒコ絶句。
「急にこんなこと言われても困るでしょうから…返事は今度でいいから」
そう言ってドアへと向かいかけ、振りかえる。
「でも、できれば早いほうがいいかな」
そうだけ言ってドアから出ていく。
残されたのはマサヒコ。
自分の置かれた状況を、二人から告白を受けると言う事実を認識し。
とりあえず一言。
「ぎゃふん」
…大したボキャブラリーだ。


お約束と言うかなんと言うか。
屋上での一件も立ち聞きされていたらしく。
アヤナがマサヒコに告白したことは翌日にはやはりクラス中に広まっており…。
冒頭に至る、といった次第だ。

「はぁ…」
自分の置かれた立場を改めて認識し、マサヒコはやりきれない思いでため息をつく。
「だめだよ小久保君。ため息つくと幸せが逃げてっちゃうよ」
「逃げた幸せのかわりに平穏がひょっこりやってきたらなぁと心から思うぞ、俺は」
「ん〜…でもやっぱりため息つかないほうがいいよ」
そう言ってにっこり笑うリンコを見て、少しだけマサヒコの心が癒される。
何しろ朝から誰にも声を掛けられなかったのだ。
原因は言うまでも無く自分の両脇に陣取る二人。
休み時間の度に自分の両脇に腰をおろす。
そして話しかけてもこないのだ。
正味怖いっちゅー話だ。
二人を恐れてか仲のよい男子生徒も寄って来ず、それどころか恨みがましい視線を送る。
その上興味深げな女子生徒の好奇に満ちた視線。
多感な思春期真っ只中なマサヒコの心をささくれ立たせるには十二分。
リンコが話しかけてきてくれてほんとに嬉しい。
「なあ的山。長いなぁ、一日って」
「そうかなぁ?私一日なんてあっという間だと思うけど」
「それは的山がのんびりしてるからだと思うぞ」
「あ〜!小久保君ひどい!」
「はははっ、悪い悪い」
和む和む。
両隣の二人がきっつい視線をリンコに向けているが、さすがは的山さん。
まったく気づかないという天然っぷりを発揮してくれている。
「そーいえば今日は家庭教師の授業がある日だね」
「ああ。今回ほど待ち遠しく思った日は無いよ。正直」
「そうなの?」
「そりゃそうだ」
その先の言葉は口には出さない。
(ともかく、人生経験豊富なあの二人にこの事について相談に乗ってもらいたいんだよ)
そう思うマサヒコ。

その事からもマサヒコがかなり参っている事は想像に容易い。
常のマサヒコならばアイはともかく中村に相談などという愚は犯さなかっただろう。
そして。
その決定的判断ミスが後の悲劇(喜劇?)を呼ぶ事となるのだが。
マサヒコはその事を知らない……。
憐れなり小久保マサヒコ!


授業も終わり放課後。
部活や委員の仕事のある人間を除いて下校。
その例に漏れないマサヒコとその愉快な仲間たち。
具体的に名を挙げるとマサヒコ、ミサキ、アヤナ、そしてリンコの四人。
向かうは家庭教師二人の待つ小久保家。
その道中、マサヒコの両腕は美少女二人に抱えこまれていて注目の的だったことは言わないでおいてやろう。
マサヒコ泣きそうだし。


「…今日はなんか妙な雰囲気ね」
中村の言葉はある意味必然。
「そうですね。なんかピリピリしてますし…マサヒコ君学校でなにかあった?」
アイの言葉にマサヒコは待ってましたとばかりにちらりとミサキとアヤナを見る。
「今日母さんいないんだ。二人で下行ってお茶の用意してくれないか?」
「うん」
「いいわよ」
「悪いな」
ミサキとアヤナ、両者頷き連れ立って部屋から出ていく。
それを確認し、マサヒコは大きく息をつく。
「マサ、ため息つくと幸せ逃げるわよ」
「逃げた幸せのかわりに平穏が得られますから。いくらでもついてやりますよ」

「…ど、どうしたのマサヒコ君!?いつになくヤサグレてるわよ」
「ほれほれ、何があったかお姉さん達に話してみな」
「実は――」
ここ数日の出来事、ミサキとアヤナに告白されたことを素直に話す。
「は〜…そんなことがあったんだ〜…」
「もてもてね、マサ」
「そんな良いもんじゃないスよ。針のむしろって言葉を身を持って体感したんですから」
沈痛な面持ちのマサヒコ。
あまりの表情に中村やリンコすらも口を紡いでしまう。
しばらく沈黙が部屋を支配する。
沈黙を破ったのはマサヒコ。
「それで…どうしたら言いと思います?」
「どうしたらって言われても…」
「あ〜ダメダメ、アイに聞いても。この子そーいった経験皆無だから参考になんかなんないわ」
「先輩酷い!私だって……私にだって……」
「私にだって…なに?」
「いえ…何でもありません」
はらはらと涙するアイ。
どうやらホントに皆無だったらしい。
だとすれば残されたのアドバイザーは中村ただ一人。
「さて、それで、マサ」
「はい」
「どっちが好きなの?ミサキちゃん?アヤナちゃん?」
「いや、それがわかんないから相談してるんじゃないですか」
「……マサ」
中村が真剣な表情になる。
「あんたバカ?」
「…ええ、まあそれなりに」
「あんたが思う以上にあんたバカよ。言うなれば大バカってとこね」
「せ、先輩!」

あんまりな言い草にアイが嗜めようとするが、中村の強い視線に気圧される。
「どっちが好きかわからなくて、私達に相談?そんなことに何の意味があるの?
あんたの心、気持ち、考えが私達にわかるわけないじゃない」
「それはそうですけど…」
「それともなに?私がミサキちゃんって言えばミサキちゃんと。
アヤナちゃんって言えばアヤナちゃんと付き合うつもり?違うでしょ?」
「……」
「ちょっとキツイ言い方になっちゃったけど。あんたの気持ちも少しはわからないでもないのよ?」
「え?」
「二人を傷つけたくない。二人の友情に障害ができる事はないかって考えてんでしょ、どうせ」
「…はい」
「言わせてもらうと、それって二人にすっごく失礼よ」
「え?なんで?」
「二人の関係を考えてるのは評価できるけど、じゃあ二人とあんたの関係は?
一番大事なのはそこでしょう?少なくともあの二人にとってはね」
「!!?」
マサヒコは酷くショックを受ける。
「私の言ってる事、わかる?」
「…俺が、二人に気を使ってるつもりの行為は、あの二人に対しての侮辱って事ですか?」
「そうね。言うなれば…優しいフリをして本質から目を背けてるってとこね」
「……」
神妙な面持ちで俯き、ひざの上で拳を握るマサヒコ。
音が聞こえてきそうなほど歯を強く食いしばっているのが傍目にもわかる。
おそらく…自分を責めているのだろう。
「マサヒコ君」
見かねて、アイがマサヒコの手を握る。
「……先生……」
「そんなに自分を責めないで。先輩はああ言ったけど、優しいフリだって言ったけど。
違うよ。君はきっと、ホントに二人の事を思いやってるから。
だから、自分の事なんかどうでもよくなっちゃってただけ。目を背けてたわけじゃないよ」

「でも、俺…」
「その事に気づいて自分を責める君の優しさ…そんな所にあの二人は惹かれたんだよ、きっと」
「まあ…そうね。あんたに主体性がないのは今更だしね」
「先輩!」
「別に貶してる訳じゃないわ。事実を言っただけよ」
飄々と言い放つ。
あながち間違っていないだけにアイも言い返せない。
「ま、のんびり考えなさいな。時間が解決してくれるかもしれないし」
「時間が解決?」
「最も簡単な例だと…どっちかが他に好きな人ができるとかね」
「え〜それはないと思いますよ。学校で二人共小久保君にべったりでしたから」
リンコの言葉に中村はやれやれとため息をつく。
「せいぜいじっくり考えなさい。若いんだから時間はいくらでもあるわけだし」
「はあ…そうします」
「でも、ほんとにだめだと思ったら私達に相談してね。いつでも相談に乗るから」
「はい。ありがとうございます」
マサヒコは感謝の意を示すために深深と頭を下げた。
中村の言葉も耳に痛かったが、間違いなく事実。
アイの慰めも嬉しかった。
「…ありがとうございます」
もう一度感謝の言葉を述べる。
「まああれよマサ。いざとなったら二人と付き合っちゃえばいいし〜。二股二股」
「……」
感謝した事をちょっぴり後悔。


さて。
マサヒコが精神的にちょびっと成長した日以降もミサキとアヤナの争いは続いたわけで。
行動は徐々にエスカレート、そしてついにこの日。
事件が起こった。

それは美術の時間。
二人一組で人物画をかくことになったのだが、そうなると当然。
「小久保君!ペアになろっ!」
「あら残念ね。小久保君は既に私とペアなのよ」
「そうなの小久保君!?」
マサヒコはブンブンと首を振る。
「嘘つかないでよ若田部さん!さ、いこ小久保君」
そう言ってミサキはマサヒコの右腕を引っ張る。
「まちなさい!だからってあなたとペアになるなんて小久保君は言ってないわよ!」
負けじとアヤナは左腕を引っ張る。
「お、おいおいおい!」
両者に腕を引っ張られるマサヒコは振りほどこうとするが、二人共両腕で抱えこんでいるため無理。
教師を見るが…目を逸らされた。
そりゃないぜと思いながらクラスメイト達を見る。
生暖かい目で見守ってくれてやがった。
「離しなさい!」
「そっちこそ!」
「まてまてまて〜!」
言っても聞くわけがないわけで。
「わ〜…子供を取り合うお母さんたちだ〜」
「大岡裁きはどうでもいいから!」
「先に手を放したほうがお母さんだね!」
暢気なリンコ。
どうやらあぶれた方と組もうとしているようだ。

ミサキが引っ張ればアヤナも引っ張り、アヤナが引っ張ればミサキも引っ張る。
勝負は一進一退。
そして、勝負は唐突に終焉を迎える。

 コキンッ!

「!!!???」
「「「「「あ……」」」」」
なにかが外れる音が教室に響き…
「おおお〜!!!」
マサヒコの絶叫も響いた。


「…脱臼?」
「はい。全治1週間だそうです」
しゅんとした様子のミサキが校門までリンコを迎えにきていた中村に答える。
補足するとリンコは日直で少々遅れている。
「なんとまあ…マサもとんだ災難だね」
呆れた様子の中村の言葉にミサキとアヤナはさらに落ちこむ。
「やっぱり、嫌われちゃいましたよね…私達」
「大丈夫なんじゃない?」
「でもお姉様、脱臼までさせちゃったんですよ」
「たかが脱臼じゃない。脱臼なんてあれよ、女と一緒だから」
「「は?」」
「ハメればよくなるから」
さらりと下ネタを飛ばし高笑い。
中村さんは今日も絶好調。
「まああれよ。お見舞いにでも行けば許してくれるわよ」
「…そうですね」
「あ、でもそれじゃあなにか持っていった方がいいわね……お姉様何がいいと思います?」

アヤナの問いに中村はふと一計を案じる。
うまく行けばマサヒコも喜んでくれることだろう。
「そーいえばあんたらマサヒコ取り合ってるんだったわね」
「「…はい」」
改めて第三者に言われると照れるのか、赤くなって肯定する。
「じゃあお見舞い品は決まりね」
「「??」」
疑問の表情を浮かべる二人に対し、中村は微笑んだ。
それは悪魔の微笑み。


右肩脱臼の怪我を負ったマサヒコは病院に直行。
その後母親と共に帰宅し、今はベットに横になっていた。
とりあえず外れた肩は入れ直してもらったため、鈍痛は残るが右腕は動く。
ホッと一安心。
しかし、それで安心していてはいられない。
またいつこのような怪我を追うハメになるかわからないのだ。
「けど問題は…俺自身なんだよなぁ」
そう言ってため息。
家庭教師二人に色々言われてからずっと考えてはいるのだが…一向に答えは出ない。
これならばよっぽど方程式を解いているほうが楽だ。
「はぁ…」
再びため息。
するとドアがノックされる。
母だと思い「どうぞ〜」と気楽に返事をしたのだが、入ってきた二人を見て絶句する。
「天野!?委員長!?」
「「こ、こんにちは〜…」」
二人ともやや緊張気味。
マサヒコはベットに横になったまま、二人はドアのそばに立ったまま固まってしまう。

そうしていると、
「…なにしてんのあんたら?」
母、お茶を持って登場。
「ほら二人とも、こんなとこに立ってないで中入って座って」
「あ、はい」
「お邪魔します」
部屋に入るのにお邪魔しますはどうだろうと思いながら
マサヒコは母がテーブルにお茶を並べていくのを眺めていたのだが、不意に母と目が合う。
「そうそう。マサヒコ、私ちょっと出かけるから」
「ええ!!??」
「父さんが重要書類忘れたらしくってね。夕食までには帰ってくるから」
そう言って部屋からでていってしまう。
マサヒコ大ショック。
これでは有事の際に頼りになるのは己だけではないか!
また怪我をしてしまったらどうしろってんだバッキャロー!!
レスキューは何番だ?118?おいおい、それは海難救助だ。
184?ヘイボーイ、それは非通知通話だぜ。
などなど。
馬鹿げた事を考えていたのだが。
「小久保君…ごめんね」
「え?なにが?」
ミサキの言葉にこっちに帰ってくる。
「何がって…ほら。私達のせいで脱臼しちゃったじゃない」
「…私達のこと…嫌いになった?」
不安そうな二人。
そんな二人を見て。
マサヒコは申し訳ない気持ちで一杯だった。
「それはこっちのセリフだ」
「え?」

「元はと言えば俺が優柔不断で、二人への答えを保留してるのが悪いんだから。
悪いのは俺だよ。嫌われる事があっても、嫌いになるようなことはないよ」
「小久保君…」
「二人には…ホントに悪いと思ってるよ。ごめんな、ほんとに」
そう言って頭を下げる。
「そんな」
「怪我させたのは私達なのよ。頭を上げてよ」
「俺のせいで二人の関係もギクシャクさせてる。頭下げたぐらいで許されることじゃないってるけど。
俺、他にどうすることもできないから…ホントごめん」
「「……」」
心底申し訳なさそうなマサヒコの様子に、二人は顔を見合わせ……頷き合う。
「ねえ、小久保君。私達考えたの」
「きっと小久保君は私達二人から告白されてすごく悩んでるだろうって」
「だからね。小久保君がどちらかを選びやすい様にしようと思うの」
選びやすいようにする??一体どういうことだろうと思いマサヒコは眉をひそめる。
それが伝わったのだろう。
ミサキが立ちあがり、服に手をかける。
「お、おい!なにしてんだよ!?」
「だって…脱がなきゃだめだし」
「はぁ!?一体何をするつもりなんだよ!?」
「お姉様がいったの」
そう言うアヤナは既にスカートに手をかけている。
「付き合うのなら体の相性も大切だって」
「!!!」
マサヒコ絶句。
そして思う。
中村、今度合ったらあんたのメガネを指紋塗れにしてやる、と。
マサヒコが中村へのちゃっちい報復を考えている間にミサキ、アヤナ共に一糸纏わぬ姿になる。
「小久保君。小久保君も脱いで」
「それとも脱がせて欲しい?」

「待て!落ち着け!話せばわかる!な?OK。二人共落ち着こう!人間冷静さを失っちゃおしまいだ」
「私は十分冷静だよ、マサちゃん」
いつの間にやら呼称が「小久保君」から幼い頃の「マサちゃん」へと変化しているミサキ。
そのことからも決して冷静とは思えない。
まあ異性に裸を晒しているのだ。
冷静でいられる方がどうかしているかもしれない。
「さあ、小久保君…」
「マサちゃん…」
「っ!」
咄嗟に逃げようとしたマサヒコだが。
もとの体勢が悪かった事もあり、あっさり二人に捕まる。
「さあ、脱ぎ脱ぎしましょうね〜」
「大丈夫。怖くないよ〜」
「ぎゃー!!」
男一人と女二人。
ましてこの年頃はまだ男女間の力の差が微妙な時期。
マサヒコはあっさり脱がされる。
流石にトランクスを脱がす時はミサキとアヤナも躊躇した様だが。
それでも一気に脱がされ、観察される。
「おいおいおい!」
「いいじゃない。小久保くんも私達の事、見ていいんだから。お互い様よ」
「そうかぁ?」
「そうなの!」
「んむっ!」
アヤナはマサヒコに抱きつき、唇を合わせる。
「あぁ!若田部さんずるい!」
「早い者勝ちよ」
そう言って再びマサヒコにキス。
「あー!あー!!あぁー!!!」
「ふふ…そーいえば、小久保君キスの経験は?」

「いや、無いけど…あ、いや。今したけどさ」
「そう。小久保君の初めて貰っちゃった♪」
嬉しそうに言うアヤナ。
対照的にミサキは涙を浮かべる。
「う〜!」
「ふふふ、私の勝ちね天野さん」
「だったら私は!」
言うが早いか、ミサキもマサヒコに口付ける。
ただし、それで終わらない。
舌をマサヒコの口内へと挿し入れ、マサヒコの舌を絡め取る。
ミサキの性交渉知識を総動員しての必死の行為。
やがて離れるとマサヒコとミサキの口の間に唾液の橋が掛かる。
「くっ…やるわね天野さん!」
「勉強や、家庭科の実践では負けてもマサちゃんを想う気持ちでは絶対に負けないんだから!」
火花を散らす二人。
そんな二人に流されるままのマサヒコ。
つーか、流れは激流だ。
下手に逆らえば死は免れない。
…まあ逆らわなくても死ぬかも知れんのだが。
言える事はただ一つ。
マサヒコには既にどうする事も出来はしない。
それに、徐々にだが二人に侵食され始めている。
ぶっちゃけ興奮してきました。
マサヒコは睨み合う二人の一方、アヤナの胸を揉む。
「ひんっ!?」
「おお…」
激しく反応するアヤナと、初めての感触に感嘆の声を上げるマサヒコ。
さらに手に力を入れ、マサヒコはアヤナの胸を嬲る。
「や…ぁ……」
「マサちゃ――ひぅ!」

さらに空いた手をミサキの股間へ。
うっすらと毛が生えたそこを摩る。
急所を触られ、喘ぐ声にマサヒコのテンションはどんどん上がっていく。
しかし、レッドゾーン到達寸前でふと我に帰る。
(このまま突っ走っていいのか?二人一緒だぞ?まずいだろそれは)
残っていた僅かな良心がマサヒコをとどめる。
しか〜し。
「マサちゃん…やめようとか思ってるでしょ」
「無駄よ小久保君。もし今逃げようとしたりやめようとしたら…悲鳴上げるわよ」
「なっ!?」
「そしたらどうなるかしら?少なくとも天野さんちの親御さんは飛び込んでくるんじゃないかしら?」
「うん。今日お父さんもいるし」
マサヒコ絶句。
退路無し。
ならば。進むしかない。
「…いいんだな?」
「うん」
「ここに来た時から覚悟は決めてるもの」
「…わかった」
ミサキ、アヤナの決意を感じ、マサヒコも覚悟を決める。
こうなった以上、もはや突き進むしかない。
ケ・セラ・セラだ。
早速と言わんばかりにマサヒコは…
「……」
「どうしたの小久保君?」
「いや…どうしたものかと思って。一対二のプレイ法なんて知らないぞ、俺は」
そう。
童貞でいきなり二人を相手にするのはちとレベルが高すぎる。
「とりあえず各個撃破って事で。OK?」
「うん。あ、でも…どっちから?」

「…わかった。天野さんに譲るわ」
「え?」
アヤナの意外な申し出にミサキが驚く。
「先に告白したのは天野さんだしね。それに…初めて同士だと痛いって聞くし。
まあ私の為の実験台ってとこね」
そう言って悪ぶって見せるが…顔が赤い。
ミサキが長い事マサヒコの事を想っているのはアヤナも知っている事で。
本当はその事に配慮して先を譲ったのだろうが、意固地な性格がそれを素直に表現させないようだ。
しかし、ミサキにはそんなことお見通しのようで。
「…ありがとう」
「っ!いいから!さっさとやっちゃいなさい!後がつかえてるんだから」
「うん…ありがとう」
そして…改めてミサキとマサヒコは向かい合う。
「えっと…マサちゃん」
「ん?」
「優しくしてね?」
「…保証はできん。何しろ俺も初めてなんだからな」
「そ、そんな不安になるような事いわないでよぉ」
「代わる、天野さん?」
「いやっ!」
アヤナの提案を一蹴。
きっとマサヒコを睨み、気圧されるマサヒコに抱きつき、そのままキス。
それは先ほどと同じ様に舌を絡めるディープなモノ。
驚き目を見開くマサヒコと対照的にミサキは目を強く瞑っている。
ミサキの積極さに驚いたマサヒコだが…気づく
その身体は僅かに震えているわけで。
初めてなのは彼女も一緒で、彼女も酷く緊張しているのだ。
その彼女がここまでしているのだ。

ここでびびっていては男が廃る。
マサヒコ、覚悟完了。
矢でも鉄砲でも持って来いモード発動。
ミサキの胸に手を這わせ、柔らかなそれを揉む。
偶然か?或いは才能があるのか?
マサヒコの手はミサキの弱い所を的確に刺激。
ミサキは甘い喘ぎを上げる。
そんな事とは露知らず、マサヒコは胸の柔らかさに感動しつつさらに手の動きを激しくする。
「ふぁぁ!!」
「…気持ちいいのか?」
「う、ん!……ひああ!!」
右手を下半身へと滑らした瞬間、ミサキがより一層高い声で鳴く。
そこは既に僅かではあるが濡れている。
もっと触れたい。
もっとよく観察したいと思い、下半身へ視線をやろうとするが。
「マサちゃ〜ん…」
ミサキが甘えた声で、口を突き出す。
いわゆるキスをしてくれとのボディランゲージ。
素直にそれに答えるマサヒコだが。
そのせいでどうにも下半身への攻撃が疎かになってしまう。
下手に触って痛がられたりしたらアレだし…との思いがマサヒコにはあるのだ。
だからじっくり観察しながらゆっくり、ソフトに責めたいのだが…。
ミサキが不安で一杯なのはマサヒコも重々承知なわけで。
そしてミサキはキスでその不安を紛らわしているようなので。
できる限りミサキにキスをしてやりたい。
しかしそうすると下半身を濡らすための行為が疎かになって…
と、思っていたのだが。
「ひぁぁぁ!!」
「天野!?」
いきなり甲高い声を上げたミサキに驚く。

「やっぱりここは誰でも弱いのね」
「委員長!?」
「こっちは私が濡らしといてあげるから。小久保君は天野さんを落ち着かせてあげて」
そう言ってアヤナはミサキの下半身へと舌を這わせる。
アヤナの舌が動くたび、ミサキが切なげに鳴く。
その声は長い付き合いのあるマサヒコも今まで聞いたものではなく、酷く女を感じさせられる。
そのためか、マサヒコの担当する(?)ミサキの上半身への責めも激しいモノとなる。
「小久保君、そろそろいいみたいよ」
「なにが?」
「何がって…天野さんのほうの準備はもう十分みたいよ」
マサヒコはミサキを見る。
コクリと頷く。
「…いくぞ」
「うん…っ!!」
狭い肉壁を分け入り、なにかを貫通する感触。
その瞬間、ミサキの指がマサヒコの背に激しく食い込む。
マサヒコは痛みに顔をしかめるが…ミサキの感じる痛みはこんなモノではないだろうと、甘んじて受け入れる。
やがて、マサヒコのモノが根元まで埋まる。
「大丈夫、天野さん?」
「っ!……」
アヤナが問うが、ミサキは返事ができない様子で首を振る。
それはマサヒコも同様。
ただし、彼の場合はミサキから受ける心地よい圧迫感のせい。
さらなる快楽を貪るために腰を動かしたい所だが…耐える。
自分の快楽のためにミサキに辛い思いをさせるのはマサヒコにとって本意ではない。
ミサキが痛みに耐えるまでじっくりと待つ。
大分落ち着いたのを確認し、ゆっくりと腰を動かす。
初めこそ苦痛のうめきを上げていたミサキだが、元々敏感な体質なのだろう。
すぐに甘い、艶の混じった物へと変化する。

「マ…マサちゃん……わ、わたし…おかしくなっちゃうぅぅ!!」
そう言ってマサヒコに強く抱きつく。
そろそろ限界の近いマサヒコもミサキを強く抱き、腰を激しく動かす。
ミサキもマサヒコの動きに合わせ腰を使う。
そして迎える絶頂。
ミサキにその刺激は強すぎたのか。
マサヒコの出した物を感じながら意識は暗転。気を失ってしまう。
しかしそれはマサヒコも似たようなもので、あまりの気持ちよさに頭が真っ白になる。
その余韻に浸っていたかったのだが、
「小久保君……次は私…ね?」
「…ああ」
後がつかえているわけで。
ミサキをベットの隅に横たえ、アヤナとの行為に備える。
幸いな事に(?)マサヒコの下半身はまだまだ行けるぜと激しく自己主張をしている。
「えっと…天野さんと同じセリフでアレだけど……優しくしてね」
「いちおーそのつもりだ」
そう言ってミサキと違い豊かなアヤナの胸を揉む。
「ん…」
「やっぱ柔らかいな〜…」
率直な感想を述べるとアヤナは顔を真っ赤にする。
「でも…男の子からいやらしい目で見られたり、肩こったりで大変なのよ。大きいと」
ミサキやリンコが聞いたら憤慨しそうな事を言う。
「そっか…大変なんだな」
「…小久保君は」
「??」
「小久保君は、大きい方が…嬉しい?」
「ん〜…やっぱ大きいと揉み応えはあるというかなんと言うか…その……」
マサヒコの言葉にアヤナは笑みを浮かべる。
「やっぱり小久保君…やさしい」
「へ?」

「天野さんの事、気遣ってるんでしょ?天野さんあんまり大きくないものね」
あっさり見破られ、マサヒコは何もいえない。
そのかわり胸を今まで以上に責める。
登頂部を指の腹で摩り、擦り、はさみ、吸い付く。
そのたびにアヤナは声を上げる。
胸がふやけそうなほど責めつづけていると、
「こ…くぼくん…」
「ん?」
「その……下も…」
「ああ。わかってる」
別の場所をおねだりされる。
マサヒコは胸を責める手を止めることなく、顔をそこに持っていく。
「へ〜…こーなってるんだ…」
「っ!そんなじっくり見な――ひっ!!」
舌を這わせられ、甲高い声を上げる。
「やっ…ああっ!!」
「……なあ、委員長。実は気になる事があるんだけど」
マサヒコの問いかけにアヤナは首を傾げる。
「なに?」
「さっき天野のここ責める時にさ「やっぱりここは誰でも弱いのね」って言ったよな?」
その時の事を思い出し、アヤナは頷いてから……真っ赤になる。
「赤くなったって事は…俺の想像はあってるって考えていいのかな?」
「ち、ちが――ひんっ!!」
マサヒコは指を軽く突き入れ刺激し、アヤナに違うと言わせない。
「自分でいじった事あるんだな、ここ?」
「そんなこと…無い……んあ!!」
指で広げられ、舌を挿し入れられ激しく悶える。
「…俺、嘘つきは嫌いだな」
「っ!!?」
マサヒコの言葉にアヤナの顔がへにゃっと泣きそうなものになる。

「―――る」
「ん?」
「触った事……ある…」
「やっぱりか…」
「っ…」
羞恥にアヤナの顔が赤くなる。
しかし、その後のマサヒコの言葉にアヤナは驚く事となる。
「じゃあ気持ちいい所とかわかるよな?」
「うん…」
「じゃあその場所教えてくれないか?」
「え?」
「いや、やっぱさ。こーいうことするなら気持ちよくなって欲しいし」
「小久保君…」
別にマサヒコはアヤナを言葉責めしたかったわけではなく。
純粋にアヤナに気持ちよくなって欲しかっただけで。
その事実にアヤナは胸が一杯になる。
「ありがとう、小久保君……でもね、小久保君のしたいようにしてくれていいから」
「いや、それだと…なんて言うか…情けない話気持ちよくしてやれる自信がが…」
「あのね…小久保君がしてくれるから、気持ちいいの」
「??」
「テレビとか漫画で無理やりされてても濡れて来ちゃうとかってよくあるけど、そんなこと無いから。
嫌いな人に触られたって全然気持ちよくないと思う。
逆に好きな人に触れてもらうとそれだけで感じちゃったりするの」
「そんなものなのか?」
「ええ。事実今そうだもの」
にっこり笑いかけられ…改めて照れるマサヒコ、
「そ、そろそろいいかな?」
ごまかすようにアヤナに話しかける。
「うん…あ、ちょっと待って」
「ん?」

「あの…ね。後ろからしてくれない?」
「へ!?」
突然の提案に驚くマサヒコ。
その間にアヤナは身体を反転させ四つ這いの姿勢になる。
「な、なんでバックで?」
「こっちの方が痛くないって……聞いたから」
どこ情報か問い詰めたい所だ。
まあ答えてくれないだろうけど。
アヤナもなかなかに耳年増のようだ。
そんな事を思いながらマサヒコはともかく挿入する。
「いっ!くぁ!!いっ!…たい…痛い!」
苦悶のうめきを上げ、アヤナはシーツを強く掴む。
「委員長、力抜け」
「だっ……痛いし……」
「力入れるともっと痛いぞ……多分」
「そうは…言っても…」
息も絶え絶えのアヤナ。
少しでも楽になればと思いマサヒコはアヤナの胸を揉むのだが、
「小久保君…重い」
アヤナにのしかかる形になり余計な負担をかけてしまう。
それならば、とマサヒコはアヤナの身体を持ち上げ、座った自分の上にのせる。
いわゆる後背座位。
そしてアヤナをギュッと抱きしめる。
それだけでアヤナは甘いため息をつき、リラックスする。
「大丈夫か?」
「ん…もう少し動かないでいてくれる?」
「ああ」
マサヒコはアヤナを抱いたまま、首に舌を這わせる。
生暖かな感触にアヤナは身を震わせるが…ある事に気づく。

「こ、小久保君!」
「ん?」
「あの…その…キ、キスマークはつけないでね。明日体育あるから」
万が一にもキスマークが見つかったらシャレにもならない。
それはマサヒコも重々承知なので、舌を這わせ、甘噛みするにとどめる。
さらに胸を手で責める。
それらの行為で、気持ちよくなってきたのか。
アヤナが僅かに腰を動かし拙いながらも快感を得ようとする。
マサヒコもそれに合わせるように下から突き上げる。
始めは緩やかだった両者の動きは、すぐに激しい物へと代わる。
汗が流れ、互いのその匂いに又興奮する。
「こ、くぼくん…わた、し…もう!」
「もうちょい!俺も、あと少しで…」
より一層二人の身体が激しく踊る。
荒い息。
飛び散る汗。
やがて。
アヤナの身体がびくびくと痙攣する
同時にマサヒコのモノを強く締めつけ、マサヒコを絶頂へと導く。
ばったりとベットに崩れ落ちる。
「ねえ、小久保君」
呼吸を整えていたマサヒコは問われ顔だけ向ける。
「結局、天野さんと私、どっちが相性よかった?」
「どっちって言われても…」
「私よねマサちゃん」
「天野!気づいてたのか?」
「ちょうど今ね。ね、私よねマサちゃん」
「私でしょ小久保君?」
「あ〜……ごめん、よくわかんなかった」
そう言ってマサヒコは頭を下げる。

顔を見合わせるミサキとアヤナ。
「じゃあ…」
「もう一回ね」
「ええ!?」
「「え〜い♪」」
「わぁぁあ!」
二人にのしかかられ、マサヒコは悲鳴を上げる。
母親が帰ってくるまでまだまだ時間がありそうだった。


教室には異様な雰囲気が漂っていた。
なぜならば…
「ねえねえ。あの二人昨日まで仲悪かったのに…」
「うん。今日はどうしたのかしら?」
とは女子生徒AとBの会話。
視線の先にはここ最近クラスの話題を独占していたミサキとアヤナの姿。
ピリピリしてた前日までと打って変わって、
「なんか…仲良くなって無い?」
「そうよねぇ。アレは間違いなく小久保君問題で進展があったわね」
「やっぱりそうよね!?なにがあったのかしら?」
教室のあちこちで不思議そうに囁かれている。
だが囁くだけで誰も二人に話しかけようとはしない。
だって…なんか怖い答えが返ってきたらいやだし。
頼みのリンコは日直の仕事で黒板をきれいにしている真っ最中。
「おはよ〜っす」
そんな中、ふらりと教室に入ってきたマサヒコ。
当然のように全員の注目が集まり…全員が絶句する。
やつれてた。
確実に衰弱していた。
ふらふらと自分の席に向かうマサヒコにリンコが話しかける。

「おはよ〜小久保君」
「ああ…」
マサヒコが席につくと同時に、
「おはよう小久保君」
「大丈夫マサちゃん?」
「ああ…」
アヤナとミサキがここしばらくのようにマサヒコの両隣に腰を下ろす。
「あれ?二人共仲良くなってる?」
今更!!?と言ったツッコミが聞こえてきそうだ。さすがはリンコ。
「小久保君がやつれててアヤナちゃんとミサキちゃんが仲がよくなってて……」
むうとリンコは眉をひそめる。
「これは…昨夜は3P!!?」
「「「ないない」」」
クラスメイト達のツッコミを聞き、マサヒコは机に突っ伏しながら心の中で一言。
(当たり)
それにしても天然って怖いと思ったマサヒコ大人になった日の翌日の出来事。


END

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