作品名 |
作者名 |
カップリング |
NoTitle |
36氏 |
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「・・・んっ・・・あっ・・・あん・・・」
喘ぎ声がヤニ臭い部屋に響く。
左手を乳房に、右手は中指の腹でクリトリスを押し潰し
指先を少しだけ膣内に入れ、掻き回す。
中途半端な甘い痺れが頭の中を支配している。
リョーコが自慰を始めてから、それなりの時間が経っていた。
普段なら、既に何度かイッてるはずなのに
「・・・イケない・・・」
理由は何となく分かっていた。
前のオトコと別れたのが、ちょうどこの季節だった。
その年はやたらと寒く、初めての一人暮しに、慣れと淋しさを感じていた。
彼とは毎日連絡を取っていた。
高三の時から付き合い始めた。
進学後は彼が地元を離れてしまったため、俗に言う遠距離恋愛になってしまった。
一人暮しの淋しさを、相手の声を聞いて紛らわしていた。
違和感に気付いたのは一週間程前。
聞こえる声がどこかよそよそしい。
(変だな)
と思いながら、しかし声を聞ける喜びがその疑問を忘れさせていた。
初めは、なにを言われているのか理解出来なかった。
電話から聞こえる謝罪と別離の言葉に涙を流した。
一晩泣き明かし、朝には涙も枯れ果てた。
疲れと悲しみで飽和状態の頭のなかで
「遠距離恋愛は破綻する」という在り来りな言葉が浮かんで、奥底に沈んでいった。
一つ大きな溜め息をつき、左手と右手の自慰行為をやめた。
右手の中指は、指先が少し濡れている。
中途半端な快楽による切なさは、絶頂に達したあとの虚しさよりも
遥かにキツイ。
濡れた指先を口に含み、リョーコは眠りについた。
翌日。
リョーコは昼近くに目を覚ました。
寒い。
エアコンをつけ、部屋が暖まるまでシャワーを浴びて待つことにした。
裸のままでバスルームまで足早に移動した。
大学の講義はサボろう。
熱いシャワーを浴びる。
家庭教師のバイトすらサボリたくなるけだるさを、どうにかシャワーで流した。
「先輩、ホントにスイマセン・・・」
鼻声に咳を交えた声。
この種の声を聞くのは本日二度目だ。
最初はリンコ。次はアイ。
二人揃って風邪らしい。
「このツケ、体で払ってもらうわよ」
軽いジョークを飛ばすが、返す余裕も無いようだ。
今日の家庭教師は、リョーコがマサヒコに教えることになった。
中学校まで迎えに行こうかとも考えたが、そんな気分ではないので止めた。
マサヒコの家に着いた。
どうやら彼の母はカラオケに行ったらしい。
予めアイが連絡を入れていたらしく
リョーコ一人だけなのを見てもマサヒコは驚かなかった。
「濱中先生、大丈夫っすかね?」
「心配ならお見舞いに行ってあげたら?住所教えてあげるわよ。あー、でも寝込みを襲」
「襲いません」
言い終わらないうちに、アッサリ返されてしまった。どうもキレが悪い。
マサヒコの部屋にはコタツがあった。
リョーコの正面ではマサヒコが数学の問題に悪戦苦闘している。
最近は彼も大分理解ってきたようで、以前のようにすぐに質問したりしなくなった。
誰であれ、生徒の一所懸命な姿は好感が持てる。
リョーコは正面のマサヒコを見る。
華奢に見えるが、それなりに男の体つきをしている。
母親譲りだろうか?サラサラした、細い髪。
以外と睫毛が長い。
マサのことをこんな視点では見たことはなかった。
意外と私好みであることに、今気付いた。
いままで、こうして二人きりでいることが無かったからか
それとも、最近不感症気味の体がそうさせるのか。
やけにマサヒコを異性として意識してしまう。
今・・・今ここで・・・したら・・・イケるだろうか・・・?
中途半端な快楽の地獄から逃れることができるかもしれない。
普段のリョーコなら考えもしない淫らな妄想。
テキストの問題に悩むマサヒコの顔を見つめる。
まだ幼さの残るあどけない顔に、頭のなかを倫理感や貞操観念がもたげる。
しかし、体の変化を前にして、頭の葛藤は蝋燭の火のように吹き消されてしまった。
乳首が隆起している。
クリトリスが立っているのが解る。
頭の中を、また、あの中途半端な快楽が支配している。
まだ触れていないのにも関わらず、だ。
いま、触ってしまったら、どうなってしまうだろうか。
その先にある快楽を知っているがゆえに、抗えない。
リョーコはマサヒコに気付かれないように、ゆっくりとズボンのフックを外し、チャックを下ろす。
パンティの上から少し、撫でてみる。
「・・・っ!」
思わず声をあげそうになった。マサヒコは気付いていない。
(・・・濡れてる・・・)
軽く触れるだけで解ってしまう。
昨日まで、感じることが出来なかった、一つ上の快楽。
リョーコはすっかり夢中になってしまった。
パンティを横にずらし、直接弄る。
視線はマサヒコを捉らえて離さない。
教え子の目の前でこんなことをしている・・・
その思いが、さらに快楽の深みへと、リョーコを引きずりこんだ。
クリトリスを掌で押し潰し、二本の指が膣内を掻き回す。
コタツのおかげか、淫靡な水音はマサヒコの耳には届いていない。
リョーコの表情は極力平静を保ちながら、しかし興奮で耳まで赤く染まっていた。
膣内が、侵入した二本の指を激しく締め付け始めた。
(キュウキュウしてるっ・・・もうすぐ・・・クルッ・・・!)
指の動きをさらに激しくした。
コタツの中は、淫靡な音と香りと熱で蒸していた。
「・・・っ!・・・ッ!!・・・ッぁ!・・・ッァ!!」
(ダメっ!声、でちゃう!うぁっ!あ、あ、あぁっ!イク・・・!イッちゃうっ・・・アアッ!!)
叫びそうになって、自慰を始めてから初めてマサヒコから視線をはずし、コタツ布団に顔を埋めた。
体がピクンピクンと痙攣している。
膣内がくわえ込んだ指を更に奥へと引き込むように蠢動している。
(この問題・・・わかんねーよ)
散々悪戦苦闘したが、あとちょっとで答えが解りそうなのに、解らない。
ギブアップ。
中村先生に教えて貰おうかなと考え始めていたその時。
ボスッ
という音と共に、リョーコがコタツ布団に顔を埋めた。
マサヒコは驚き、顔を上げた。
「???どうしたんすか!?」
「・・・っ!だ、大丈夫っ!何でも無いから!ちょっとトイレ借りるわよ!」
リョーコはそう早口でまくし立て、
若干頼りない足取りで、しかし素早く部屋を出ていった。
唖然とするマサヒコ。
ちらっと見えたリョーコの顔がやたらと真っ赤だった。
「風邪でもひいたのかな?流行ってるぽいし」
などと、見当違いのことを考えていた。
十五分後。
帰ってきたリョーコは
いつも通りの表情にもどっていた。が、頬や耳にはまだ赤みが若干残っている。
「なんか顔、まだ赤いんデスケド・・・本当に大丈夫すか?」
「大丈夫ったらダイジョーブ!
それより、あんたさっきから同じ問題に何分掛けてんの!
私に聞くなり、飛ばして次やるなりしなさい!」
どうやら心配は杞憂だったらしい。
授業再開。
授業が終わる頃にはリョーコは普段のペースを取り戻していた。
「お疲れ様っす。すいませんでした。」
「これも仕事のうちよ。まあ、このツケはアイに体で払って貰うけどネ」
「ハハハ(汗」
「じゃ帰るわね」
「はい。今日はありがとうございました」
アイの失態なのにわざわざ頭をさげるマサヒコ。
・・・何だか無性に可愛くなって。
チュッ
「それはこっちのセリフ!今日はありがとね!」
突然のキスと感謝の言葉にパニックを起こし
ポカンとしているマサヒコを置いてリョーコは走って帰って行った・・・
空気が美味しい。
煙草に火を付ける。
煙草もウマく感じる。
つい昨日まで感じていた倦怠感が嘘のようだ。
帰ったら、まず先にシャワーを浴びよう。
温めのお湯で。今日の全てを流してしまわないように。
今日は久しぶりにぐっすり眠れそうだ。
夜空に浮かぶ星たちを見上げながら
自然と零れる笑みを浮かべ
リョーコは家路を軽い足取りで帰っていった。
おわり