作品名 |
作者名 |
カップリング |
No Title |
244氏 |
マサヒコ×ミサキ |
ミサキside
雪とうっすら出た光が綴る幻想世界。まだ夜の長い冬が続いている。
受験まであと一ヶ月もない。
私達、そう受験生にとってはどれだけこの時期を活用できるかによって結果が左右される。
(あ〜あ、また徹夜しちゃったよ…)
名門校である聖光は学校で上位の成績にいる私でも正直厳しい。
この大事な時期なんだからといつも以上に集中してやっていたらいつのまにか5時を
向かえてしまった。
(どうしよう…これで寝ちゃったら遅刻しちゃうかもしれないし…)
ここで寝てしまって遅刻したら内申に響く。そしたら大変だ、と思い眠気覚ましに
お風呂に入る事にした。ちょうど出る頃にはお母さんも起きているだろう。
そう思い、着替えとタオルを持って脱衣所に向かった。
ちょうどお風呂から出るとお母さんの朝ご飯の支度が終わったようだ。
本日はご飯、味噌汁、焼き魚、御新香と和食のメニュー。
徹夜したせいか食欲が無い。だけどちゃんと栄養付けなきゃとお母さんが心配するので無理やり食べる事にした。
自分の部屋に戻るとちょうど時計は7時を指していた。
ずっと暖房を付けていたせいであろう、部屋に熱がこもっている。
(どうしよう…また眠くなってきた……)
暖かさと満腹感のせいかまた眠気が出てきた。
(ここで寝てはダメだ。起きろ、ミサキ!)
目を瞑ると幼なじみの彼が私に向かって必死に叫んでいる。
(ダメだよぉ、マサちゃん。私はもう疲れたよ…)
たとえパ○ラッシュでさえ○ロは起こせなかったようにマサちゃんでは今の私を
起こせそうになかった。
私にはリンちゃん並にうっかりの盲点があった。
まず1つはお母さんが寝坊したら起こしてくれるだろうと思っていた事。
しかしお母さんは朝早くからマサちゃんのお母さんにカラオケに連行され不在。
なんでも10時前までは早朝割引があると言っていたのが覚えにある。
そしてもう1つ、お風呂に入った後、良く髪を乾かしていなかったのだ。
おかげでありとあらゆる方向に寝癖が向いている。
(あ〜、もうどうしようっ!時間が無いのに…これじゃ直している時間がないよ〜)
女の子にとって寝癖をつけたまま学校に行くなど死活問題なのだ。
考えている時間はない。
今の最優先事項は洗面所に向かい寝癖をなおす事なのだ。
「あの時の私は陸上部に入っていたらスポーツ推薦を貰えたんじゃないかと思えるくらいの速さでした」
後の私はこう語っていた。
寝癖をカール・ル○スのごとく素早く解かし、ハ○テのごとく身支度を整えたのに9時を回っていた。
もう今更急いだ所で1時間目には間に合わない。
なら急がずにゆっくり行こう。
そう思って雪の中という真っ白な戦場へと足を向けた…
外に出ると銀幕の世界が広がっていた。
(う…寒すぎだよ……)
気温は氷点下が続いているそうだ。この雪もしばらくは降り続けるだろう。
雪というのは受験生にとって天敵となる。もし滑って転んだりしたら縁起が悪い。
昔はマサちゃんと一緒に雪だるまを作ったり、幼稚園で雪合戦をしたりと楽しい事がたくさんあった。
小学生の頃までは毎年、雪が降るのを楽しみにしてた記憶がある。
それもいつのまにかおっくうに感じるようになってしまった。
(は〜、リンちゃんなんかは嬉しいだろうな〜)
童心が懐かしい。だけど寒いのは嫌なのだ。
(沖縄はこの時期もあったかいんだろうな〜。受験が終わったら2人っきりで行きたいな〜
2人っきりでいっぱい遊んで、2人で1つのジュースを飲んで、2人で同じベッドに寝て……以下長いので略)
私の妄想で2日目の夜が終わった所でマサちゃんの家の前まで来た。
お母さん同士で出かけたのだから今、家には誰もいないだろう。
だけど…おかしい。
「なんでマサちゃんの部屋の明かりが点いているんだろう…」
続く……のかな……
マサヒコside
まったくこんな大事な時期にオレはなにをしているのだろう…
頭の中に先日聞いた除夜の鐘が間近で鳴り響いている。
たぶん風呂に入ったあとでよく髪を乾かさずにコンビニに行ったのが原因だ。
まったく、我が事ながらホントにバカをした…
頼みの綱である母さんはなぜかいない。
昨日の夜、明日はカラオケと張り切っていたからもうきっと出かけたのだろう。
(あ〜、オレってついてないな…)
あの人の事だからカラオケいったあと喫茶店でお茶して帰ってくるに決まっている。
そうなると夕方までは絶対に帰って来ない…
気だるく上を見つめる。
視界には無機質な天井が映っているだけだ。
最低限、今やらなくてはいけない事。そう、それは…
(せめて学校には連絡しないと…)
これではサボりあつかいになってしまう。そんな事では内申があぶない。
なんとか動かそうとするが身体は思うように動かない。
何度やっても身体はまったく動かない。中村先生に縛られた時のような感じだ。
風邪で体力がないのに身体に強制労働をさせたため意識が朦朧としてきた。
(あ〜、もうダメだ…。やべぇ、天使が降りてきた…パ○ラッシュ、僕はもうつかれたよ…)
こんな所でパ○ラッシュが見えるあたりが幼なじみなんだろう。
もう抗う気力もないので素直に寝る事にした。
(ん…少し寝ちまったのか?)
時計を見ると9時を回っている。
おおよそ2時間寝たという事だ。
(少しは身体が動くようだし、今の内に学校に電話しとくか。)
這い出るようにベッドから抜け、歩伏前進っぽい事をしながら電話の所に向かった。
たぶんオレは風邪で考える事が出来なかったのだろう。
目の前には階段がある。
だけど今は立つ気力なんて微塵もない。
元気だった時はなんかしら考えて下におりていた。
だけどオレは何を考えたか歩伏前進のまま降りてしまった。
ドンッ! バキっ! ズゴッ!
まあ、当たり前の結果だろう。
雷○やス○イクならともかく、オレはそんな特殊な訓練されているでもないし、
風邪で平行感覚がない今なら階段を転げ落ちるのは当たり前だった。
顔を上げると上から生暖かいものが垂れてくる。
(やべぇ…落ちた時に額を切っちまったみたいだ……)
一気に落ちたおかげ(?)か目の前にはもう電話がある。
死力を尽くし進もうとしたが腕に鈍痛が走りだした。
(腕まで打っちまったのかよ…もう前に進めないじゃん…)
頭からは血、もう進行不可能。しかも毒(風邪)にかかっている。
ゲームだったらとっくにゲームオーバーで誰もがコンティニューしているこの状況。
(まったく…オレにどうしろと??)
何もする事が出来ず血の気が引いて意識を朦朧としてきた。
(ヤバイ、このままだと死ぬ!や、薬草を探さなきゃ!あ、もうダメだ…zzz)
風邪でこの時はネガティブな思考だったと思いたい…
だが所詮、オレは○トの血を継ぐ者ではなかったのだ。
薬草もア○ールの水もない。もう絶体絶命。
そしてとうとうオレの意識は混沌へと落ちていった。
つづく…というかやっと本編へ……