作品名 作者名 カップリング
「少女と偏愛の行く末」 160氏 -

11月29日  21:35 天野宅
年末と言う言葉がちらほらと聞こえるようになってきた夜。
天野ミサキは期末試験に向けての勉強を急ピッチで進めていた。
この時期の試験は、当然のことながら志望校に合格するためには重要な関門のひとつであり、常日頃から成績優秀な生徒と
周囲には認識されているミサキとは言え、もちろんおろそかにする事はできない。
今日も帰宅してからマサヒコの家にお邪魔して、二人の家庭教師から教わっている二人の教え子を横目に見ながら自主学習。
自分の家に帰ってから、すぐに夕飯を食べ入浴を済ませ、今こうして机に向かっている。
勉強が本当に面白いとは思わないが、きっと将来に向けて必要な事なのだろうし、テストがいい点数で帰ってくれば、やはり
それは嬉しいし、気分も良くなる。
そんなミサキを机に向かわせる原動力が、あと25分後から行われる夜毎の狂宴であることは誰も知らないことであった。

11月29日 21:35 小久保宅
年末と言う言葉がちらほらと聞こえるようになってきた夜。
小久保マサヒコは期末試験に向けての勉強---などほとんどしていなかった。
彼がそのときしていたのは『息抜き』と言う都合の良い呪文で、彼の自身の中でのみ正当化されるゲームを楽しむ事だった。
この誰の役にも立ちそうに無い少年、マサヒコではあるが、彼の存在そのものが知らずして幼なじみの学習に対する原動力に
なっていると言うのは、これもやはり誰も知らないことであった。



11月29日 21:55 天野宅
本日の学習も予定通り。 いや、それよりも進んでいると言っても過言ではないミサキは、いそいそと教科書や参考書や筆記
用具を机の中にしまい込んでいた。 もっと夜遅くまで学習をしていそうな感のあるミサキだが、そんなことは学習が上手く進ま
ない効率の悪い人間がやることに過ぎないと確信している彼女。 勉強はだらだらやっても意味が無い。 勉強中における
集中力の維持が彼女の中では非常に大きなウェイトを占めている。
ミサキは机の中に学習用具をしまいこむと同時に、部屋の鍵を掛け、他の誰もいるはずのない自分の部屋をキョロキョロと
見回した後、部屋の収納スペースの一番奥底に入れてある、一つの箱を部屋の床に置いて狂宴の用意を始めた。
何事も時間厳守だ。 何があろうと、あと数分後にはその宴を開始しなければならない。

11月29日 21:55 小久保宅
マサヒコは相変わらずゲームに没頭している。 
先程の戦闘の結果が自分の思っていたとおりには成らなかったことに憤慨し、やり場の無い怒りに踏ん切りをつけるため
なのか駄々をこねる子供のように、自分に抵抗する事は絶対に無いコントローラーを放り投げ、ゲーム機を叩いている。
部屋の中から聞こえるマサヒコの奇声に、その扉を開けたママンが0.5秒も経ずに経緯を把握、自らの息子の情けなさに、
その目を禍々しく光らせ、チョッピングライト(打ち下ろしの右)をマサヒコにお見舞いし、母親とは思えぬ捨て台詞を吐いて
意識を失った息子を放置しながら部屋を出て行った。
この家族からは最早、受験生と言う言葉は既にポッカリと抜け落ちているようだ。



11月29日 22:00 天野宅
「ドンドンドンドンドン!『第339回マサちゃんを愛でる集い』パフパフゥー♪」
深夜帯に入ったこともあり、まさか自分の部屋の中で打楽器や喇叭を吹き鳴らすわけにも行かず、自らの声で代用する
ミサキのハイテンションな嬌声ではあるが、小さい声が響いた。
「さあ、回を重ねるごとに盛大になっていくこの集い。 解説の天野さんいかがですかぁー?」
「はいはいー。 どもー。 アナウンサーのミサキさーん。 こちらもすごい熱狂振りですよー」
『集い』とは言うものの登場人物の全てがミサキの一人芝居と言う、物悲しくも滑稽なこの狂宴にミサキが熱中しはじめた
のはいつのことだっただろうか?
「さて、今日のメニューなんですがぁ、339(ミサキ)回を記念して、○○市からお越しくださったペンネーム『マサちゃん
大好きっ子』さんの、集めたグッズを紹介して行きたいとおもいまーす♪」
お越しくださったのにペンネームかよ! と、普段のミサキからは想像することすら難しいこの姿。
文章で見るといかにも大きな声を上げているかのように見えるのだが、両親と同居している身としてはそれも出来ず、
呟きよりはやや大きい声、と言うボリュームでうわごとの様に一人話すミサキ。
和室が好きなミサキの両親は、いつも一階で夜を過ごすし『大事な時期だから勉強に集中させて』と言うミサキの願いから
階上に両親が上がってくる事はまずありえないため、この宴が両親に露見した事は勿論一度も無い。
もし、この宴が露見するような事があれば、もう今までのように「子を慈しみ優しく導く親と、両親を尊敬し期待を背かない娘」
と言う関係は継続しえないだろう。 多分、娘が病院に入ることになるか、両親の命が娘によってそこで絶たれワイドショー
などで面白おかしく脚色されるような事件に直結することになる。
この気高くも滑稽な宴はまだ始まったばかり……。

11月29日 22:00 小久保宅
マサヒコはまだ倒れたままのようだ。



11月29日 22:10 天野宅
「それでは『マサちゃん大好きっ子』さんが、今抱えているものからご紹介頂きましょう! パフパフゥ〜♪」
「えーとぉ、これはですねぇ……」
稚拙ながらも自らの声色や口調を使い分け、少しでも雰囲気を高めようとするミサキ。 他の誰もが聞いてはくれぬその
空しい声と同時に彼女が愛しい目で見つめはじめたのは、家庭科3のミサキが作成したマサヒコを模したぬいぐるみ。
その名を『マサヒコ☆petit 一型乙』と名づけられた一品である。
各形式の開発経緯を詳しく説明する余裕は無いが、零型と言う命名された試作品は、マサヒコと等身大にすると言う
稀有壮大な構想が仇となり、交通安全教室とかに登場する布製人形(車に轢かれたりするアレね)のようになってしまい、
また針金などで自立、とまではいかないものの形態を維持することを念頭に置いておかなかった為、いつも四肢のだらん
とした、やけに不気味なオブジェとしか思えなくなり、それ以上の改良は技術本部によりすぐに凍結されそのボディは放棄された。
一型と名づけられた先行生産品が現在の『マサヒコ☆petit』のベースなのだが、最初の甲型は全長30センチと言う
まあ常識的な大きさでミサキ的には、満足のいくものであった(家庭科3の技術故、他人には中米あたりに伝わるとされる
ブードゥー人形にしか見えないだろうが)。 しかし小久保宅を訪問する毎に、髪の毛の部分に使おうとマサヒコの
頭髪の密かに採取を続けていたところ『陰毛チェック』をされているのかと勘違いしたマサヒコが、部屋の清掃を強化した
ためにそれ以上の入手が困難となり、また冷静に考えてみれば、愛しい人のぬいぐるみにその人物そのものの毛髪を
使うなどと言うのは、人としてどうなのかと言う根本的な問題に突き当たったため、頭髪部分をフェルトで作成した現在の
一型乙がミサキの制式ぬいぐるみとなっている。(採取した頭髪はもちろん別に保存してあることは論を持たない)
「もぅ、この子を毎日抱いて、一緒に寝てるんですよぉ。 キャハッ♪」
おもむろにその『マサヒコ☆petit 一型乙』を胸に掻き抱き、ごろごろと床に転がるミサキ。
「うわー、羨ましいですねぇ。 解説の天野さん。 これ、どうでしょう?」
「ん〜。当然『アリ』ではないですか?」
「うわ、天野さんの『アリ』が一発目から出ましたね!」
「… ……」
「…… …」
現在、ミサキが開発を迷っているのが「いつでも・どこでも」と言うのを命題に構想を進めている「マサヒコ☆nano」である。
街の流行アイテムから名前の一部を借用するあたりからして、力が入っているのが分るが、何のことは無く、鞄などに
つけるスリングアクセのようなものだ。 ちなみになぜ開発を迷っているのかは
1.愛情が分散してしまうのではないか。
2.小っちゃいとおマタに挟んでギュー!などの破廉恥行為に使用することが出来ない。 と言う事らしい。
「…… … …」
一発目から『アリ』が出たせいなのか、早くも感極まってしまい『マサヒコ☆petit 一型乙』を抱き床に転がったまま
小刻みに痙攣するミサキ。 時々思い出したかのように大きくビクゥッ!と震えるのが更に不気味ではあるが、心配しなくとも
この姿を他の人間が見る事はない。

11月29日 22:10 小久保宅
マサヒコはまだ倒れたままのよう…ちょwwwwマサヒコテラヤバスwwwww



11月29日 22:30 天野宅
夢心地から立ち直ったミサキが『あ、時間がおしちゃってる。 予定厳守♪』などと、この期に及んではどうでもいいことを
気にしながら箱の中から取り出したのはおびただしい数のマサヒコの写真である。
「さて『マサちゃん大好きっ子』さんの次の一品はなんでしょう〜? ドンパフゥ〜♪」
ドンドンとかパフパフとか、言葉を繰り返す余裕も今のミサキには無くなって来たのか、楽器の音が省略されてきている。
ゴホン、と一つ咳払いをした後、いきなりの芝居が始まる。
「もしも誰かを好きで好きでしょうがなくなって…」
「それでも永遠に満たされないとわかってしまったら」
「私なら…」
元ネタにした漫画とは違い、ミサキは手に持っていた写真を全て空中に放り出した。 空中に散らばる印画紙に写った
マサヒコの顔、顔、顔…。
その全てがミサキを見つめているわけではない。 カメラ目線のモノも多少はあるが、あとの殆んどの写真は入手経路を
聞く事、いや活字にする事すら憚られるようなモノだ。
それでも彼女は満足だった。 自分の愛情の対象が自らの体の周りを乱舞するこの魅惑的な光景。
「相手を殺して… なんてありえない。 そんなのは逃げでしかない」
そういうとミサキは床にゴロゴロと数秒間転がっては最後に手に触れた写真を手に取り、ニヤニヤと見つめることを幾度か
繰り返し、ポツリと呟いた。
「だって…貴方は今ここに居るのだから…」
「……」
「……」
「わ、わ〜! ドンドンドン!パフパフゥ〜パフゥ♪」
さすがに今の自分の言動に健全な人間としては『ちょっと』変わったとこがあるのかも知れないと感じたミサキは、いきなり
『楽器音→省略』と言う先程のマイルールを破り、努めて明るく振舞う事で今の言動を『マサちゃん大好きっ子』さんの
芝居だった、と言う事にしたくなったらしい。
「い、いや〜、天野さん。 今のどうです? この迫真の演技!ノーベル賞モノじゃないですか?」
ノーベル賞に『演劇賞』は無いのだが、そんな些細な事もミサキにはどうでもいいことだ。
「うん!うん! 『アリアリ』ですよ!これはもう!」
「あ〜っと! 記念回にふさわしく『アリアリ』が出ましたぁ!『マサちゃん大好きっ子』さん『アリアリ』獲得!」
一回目の『アリ』であれだけ打ち震えたのだから『アリアリ』が出たからには、どうなってしまうのか、とも思うところだが
ミサキの興奮はそれほどではない。 自分の変態的芝居を取り繕うため、無理やりに『アリアリ』を出してしまった事に
思春期特有の潔癖さから来る嫌悪感が少し出たのかもしれない。
ちなみにこの宴において『アリ』以外の評価が出ることは殆どないが、ただの一度だけ駄目出し評価が出たことがある。
それは『第101回マサちゃん愛好会』(この頃はこういう名称だった。 やってる事は今も大して変わらないが)において、
数ヶ月前、雨降りの日に傘を忘れたマサヒコにハンカチを貸し、マサヒコのエキスを充分に吸い込んだハンカチを
そのまま自室の本棚の裏側に隠していた事を忘れていたのを思い出し、急遽本棚から取り出してよく見もせず
その香りを胸いっぱいに大きく吸い込んだところ、妙な臭いだったので、そこで初めてハンカチを良く見たところ
目一杯カビていた。 と言う事があった。
この時ミサキは激しく落ち込んだ。 せっかく香りを楽しもうかと思っていたのに。 胸一杯にその魅惑的な香りを
吸い込みたかったのに。 口の中に入れて、ねぶったり、しゃぶったりしてマサエキスを堪能しようと考えたのに。
最後にはお湯を掛けて出汁を取ろうかと真剣に考えたのに…。
一時の落胆が収まると、採点をしなくてはならないのだが今の今まで『アリ』以外の結果などを考慮した事も無かった
彼女は激しくうろたえて…。 その日の『会』は都合上中止と言うことに決定しミサキの闇歴史の一部となった。

11月29日 22:30 小久保宅
マサヒコはまだ(以下略)



11月29日 22:50 天野宅
気を取り直したミサキだが、やはり時間が押してしまっている。 せっかくの記念回なのに、と自分の迂闊さを呪うが
第一部終了予定の23:00までにはきっちり終わらせなければならないので、メニューにいれてあった『マサちゃんLOVEの
小部屋』(ミサキ作の非公開HP。 html直打ちで作成)の鑑賞会や、『マサヒコ Day by day』(マサヒコの日常をミサキ
視点から見た妄想日記)朗読会をすっ飛ばして、本日のメインイベントに入ろうとしていた。
「いよいよ本日のお宝公開の時間がやってまいりましたね〜♪ 『マサちゃん大好きっ子』さん、準備はどうでしょう?」
「はぁ〜い。 実はマサちゃん本人なんですよぉ」
「えええー!? そ、それはちょっと反則なのでは?」
「ええぇ?でもぉ、せっかく出てくれるっていうし〜♪」
そう言うと、ミサキが手に持っている機械のボタンを押すと同時に先程から装着しているヘッドホンから音声が流れ始めた。
『俺も ミサキ の事 が 好き だよ』
プチッ
『俺も ミサキ の事 が 好き だよ』
プチッ カチカチ プチッ
『俺… お 前のこと 前から』
プチッ
『俺… お 前のこと 前から』
「マ、マサちゃぁ〜んvVvvvvVV」
目を瞑り自分で自分を抱きしめながらクネクネするミサキ。
………大体、説明しなくても分る事ではあるが、これが今のミサキの最大のお宝「マサちゃんボイス集」である。
マサヒコ宅を訪問するときにいつも隠し持っているボイスレコーダーで、音源を採取し、自室のPCで切り貼りをして
それっぽい台詞を作り、聞くときの快感と言ったら! 以前はマサヒコが『ミサキ』と呼んでくれなかったために
『俺も 天野の事 が 好き だよ』と言う、mp3ファイルだったのが、この夏からはバージョンアップがされている。
所詮切り貼りされた音声なので、カーナビの案内より出来が悪い。 と言う程度なのだが、ミサキにはこれで充分
であった。 一度、偶然で物凄く切り貼り感が無い『ミサキ お前が 欲しい』mp3ファイルを作成する事が出来たが
平日の徹夜明けにソレを試聴した瞬間、椅子から転げ落ち鼻血を撒き散らして気を失い、学校に遅刻すると言う
醜態をさらしてしまったため、そのファイルは現在封印されている。
「マサちゃん…マサちゃん…あぅ…ふ…」
いつまでも終わる事の無いマサヒコボイスを聞くうちに、ミサキの意識が飛び始めてくる。
最近はいつもこうだ。 最後にこのメニューを持ってきてしまい、再生を繰り返すたびに『集い』がグダグダになり
トップ賞の決定や反省会がどうでも良くなってしまう。 でもまあ、記念回だし、今回は頑張った自分へのご褒美に
しよう。 などと負け犬OLのクリスマスイブみたいな言い訳が頭に一瞬浮かぶが、このままだと23:00からの第二部
の開催に支障が出てしまう。
ミサキは急いで意識を変態の深淵モードから通常モードに戻すと、結局トップ賞や反省会をすっぽかして第二部の
用意を始めた。



11月29日 22:50 小久保宅
マサヒコはようやく気づいたが、先程起こったことがどうしても思い出せない。 なにやら人生の根源において非常に
重要なことだったような気もするが、さりとて大した事でもなかったように感じる。
ゲームの続きをやろうとしたマサヒコだったが、ふと時計を見て時間が大分経っているのに気づき、慌てて鞄の中
から学校で悪友に借りたブツを取り出した。 なにせそのブツは悪友に明日には返さなくてはならないのだ。
ふとマサヒコは悪友から、そのブツを借りたときの記憶が苦々しく蘇る。 悪友が周りに気を使わない性格のため、
受け渡しを女子生徒に見られてしまい、散々責められたのだ。
「やだ!小久保君。 そんなもの学校にもって来ないでよ!」
「い、いや! これはアイツが…」
悲鳴を上げた女子生徒に慌てて弁解しようとするマサヒコに悪友が
「そうでーす! 小久保君直々の希望の品で〜す。 なんだ、なんだぁ? そんなに見たいんなら…ほら!」
と、マサヒコから取り戻したブツを女子生徒の目の前に近づける仕草をし
「きゃあ! そんなの近づけないでよ! このぉ…エッチ! ド変態ッ!!」
と殴り倒されたり
「色気づいちゃってさぁ。 ふーん、小久保君もそう言う人だったんだ。 奥さんに言っちゃおうっと♪」
「うるせーうるせー!」
などと一騒ぎがあったが、若田部や的山、それとミサキにばれる事だけはなかったのは幸いだった。
その苦労して入手したブツを使うのは今をおいてしかない。 本当は家族が寝静まってからが良いのだが、あまり
深夜だと明日も学校なので、差し障りがでてしまうし、それほど大きな声を出すわけでも無し。
鞄から取り出したそれをもう一度見ると、マサヒコにしては珍しく『男』としての下卑た笑いが浮かんでくるのを
抑えることが出来なかった。



11月29日 23:00 天野宅
第一部とは打って変わって静けさが支配する、第二部が始まった。
ミサキは女としての直感なのか、このところどうもこの時間になるとマサヒコが怪しい行為に耽っている、という事を
既に確信している。 いつもだったらミサキの家から見える小久保家のマサヒコの部屋は、寝る寸前に部屋のカー
テンを閉めるのに、最近はこの時間になると窓際にマサヒコの姿が現れ、周りをキョロキョロと見回したかと思うと
カーテンを閉めてしまうのだ。 その後も部屋の照明がついているので起きているのだけは間違いない。
そこで今日は第二部を開催する事に決定していた。 ちなみに『集い』というのは通常だと第二部は無く第一部だけで
終了し、ミサキはそのまますぐ寝始め、眠れなきゃオナニー。 のようなどうでもいい夜を送るのだが、第二部がある
夜と言うのは、マサヒコに何かが起こったときである。 たとえばマサヒコが風邪を引いて寝込んでいたり、右手を
捻挫したり、学校で授業中に当てられて答えが分らず、またそう言う時にはマサヒコを手助けしようと必ずミサキ念波
で送信する事にしている問題の答えをマサヒコが受信することができず、苦笑いしながら着席し凹んでいるのが分る日、などだ。
こういった時には必ず『集い』の第二部を開催し、マサヒコを陰から見守り『頑張って』と言うミサキ念波を一晩中送り
つける…じゃなくて送信するのがミサキなりの愛情表現だ。 もちろん見守っている最中にマサヒコに急な異変が
発生した場合に備え、異変を感知するシステムを完備しているのも中学生らしい愛情表現と言える。
一応誤解のないように説明しておくとこのシステムは通常、封印されており、能力を発揮する事は殆どない。
ミサキ的には『愛する人のプライバシー全てを知ってしまうのは、怖い』と言う事らしいが、この少女が心配しなけ
ればならないのは自分の行動そのものと言える。
まあ異変をすばやく察知するためにはいくつかのアイテムがあるのだが、その一つである全天候型カメラ(入手経路
不明)はマサヒコの部屋のカーテンが閉められてしまっているため、今日は使えない。
こんなことならやはりマサヒコの部屋にピンホール監視カメラシステム設置工事を前倒ししておくべきであった、と
激しく悔やむが後の祭りだ。 カメラそのものは設置済みだが、画質の良さを優先し同時に音声の採取も行いたかった
ので同軸ケーブルを用いる有線式にしようとしたのが仇となってしまった。 同軸ケーブルそのものが引かれていなけ
れば何の意味も持たない。 近日中に近所で行われる電気工事に併せ、工事員に偽装してマサヒコの部屋にケーブ
ルを引っ張るときにバックアップ用に無線でも画像/音声が飛ばせるよう、機器を追加しておこうとメモをとるミサキ。
そんなこんなで、多種多様に揃えられているアイテムの中でも今日使う事が出来るのは、マサヒコの部屋のコンセントに
偽造したFM式の糖蝶機(ミサキ的変換による)しかない。
ミサキは少しだけ緊張しながら、その再生装置のスイッチを入れた。



11月29日 23:00 小久保宅
マサヒコは履いていたパジャマのズボンを一気に脱ぎ捨てる。 まあ、履いたままでも出来ない事は無いが、これが
マサヒコなりのベストな格好なのだ。 万一、親が入ってきたときに言い訳の出来ない格好ではあるのが難点だが、
まあ、青少年特有の行為として、あのママンならからかわれるぐらいで済むだろう。 そう考えマサヒコはいよいよ
悪友から借りたブツを使い、健康な青少年男子としてはよくある行為に耽りはじめた。

11月29日 23:05 天野宅
スイッチを入れると同時に雑音に混じってマサヒコの部屋の音声が入り始める。 『やっぱりこの音質じゃ物足りないなぁ
でもカーテンが閉まってるからレーザー式糖蝶機は使えないし・・・』などと恋する乙女特有の回想をしていると、
イヤホンを通じて耳慣れぬ衣擦れの音が聞こえてくる。
「え?マサちゃん、服を脱いでる?」
ミサキは慌てて、イヤホンを再生装置から引っこ抜き、サラウンド機能付きの高品質ヘッドホンのジャックを乱暴に音声
端子に差し込んだ。 ヘッドホンをつけたまま端子にジャックをさしたため『ガリッ!』と言うノイズが鼓膜をヤバいくらいに
刺激したが、そんな事は気にしていられない。
『ふっ……ふっ…』
「え? な、なにこれ?」
ミサキが今まで聴いたことの無いような声を上げるマサヒコ。 いや声と言うより息遣いなのだろうか。
『ふっ……ふっ…』
「やだ…もしかしてマサちゃん……」
詳しい音声解析は、後に回すとして(回すのかよ)自分も思春期であるミサキは、このマサヒコの声を、自分の脳内データ
ベースに掛けるとマサヒコの耽る行為の解答が絞られてくるのだが、それを口に出すのにはさすがに乙女には憚られる。
『ふっ……ふっ……うぁ…』
規則的な息遣いの間に混じるマサヒコの確かな呻き声。
「だめ…、マサちゃん。 私たち受験生なのに…」
自分の事を思いっきり棚に上げ、マサヒコへの非難を口にするミサキ。
『いや、自分だってそう言う行為に耽る事はあるけど、部屋の電気をつけながらするもんじゃないし、こっ、こっこういうのは
もっと秘めやかにやるものでしょっ!』
自分が機器を設置していなければ、充分にマサヒコの行為が秘めやかなものだと言う事に気づかないミサキ。
『ふっ……ふっ……へへ結構キツイな…』
「えええッ? キッキツい!?って 何その卑猥な単語はっ! だっ誰に話しかけてるのよっ!」
まさか、一人で行為に耽っていると言うのではないのだろうか? だれかとその行為に耽っている…?
そ、それはもしかしてマサヒコが今まさに大人への階段を上ろうとしていると言う事なのだろうか?
ミサキは我慢できずに自室のカーテンを空けアイテムのひとつサーマルイメージャー(入手経路不明)のスイッチを入れ、
マサヒコの部屋の温度分布を見てみる。 ファインダーにはすぐにマサヒコの部屋の外壁を透過した部屋の温度分布がカラー
で表示されるが、比較高熱部分を指す赤色の固まりは二つしか見当たらない。 一つはマサヒコ。 もう一つは位置からして
テレビだろうか? イメージャーには望遠機能が無いので、形までは分らないのが難点だが、とりあえず部屋には一人しか
いなさそうだと安心する。
「そっ、そうよね…。 ビデオかなにか見ながらよね。 普通の男の子の場合は」
イメージャーのスイッチを切り、カーテンを閉め再び音声に集中するミサキ。 だが、その胸中にはどうしても複雑なモノが
生まれてきてしまう。 なぜ自分を御歌図(ミサキ的変換による)にしてくれないのか?
『そうよね…。 私…お子ちゃま体型だし。 マサちゃんはやっぱり…』



11月29日 23:10 小久保宅
椅子に座りつつテレビの画面を凝視しつつ、青少年に特有な飽くなき腕の反復運動を続けているマサヒコだったが、
もっと気楽な方が良いかと考え、その体勢を変えようとしていた。
『こんな真面目な体勢でやってもな。 慌てずに気楽に、だな』
こんなところを他の誰かに…、特にアイ先生や中村先生に見られたら大変だ。 一生からかわれるハメになるな、
と苦笑しつつ、
「よっと」
と、一言言って更なる動きに入るべく、ベッドに寝っころがった。

11月29日 23:10 天野宅
一人で悶々としながら、マサヒコの部屋から聞こえてくる音声に聞き入るミサキ。
『やっぱり、マサちゃんは若田部さんみたいな胸が大きい子が好みなのかなぁ』
自分のさっぱり成長しない胸が恨めしかった。 毎日バストアップ体操も欠かさず、嫌いな牛乳だって我慢して飲んでいる。
それなのに、自分の胸ときたら・・・。 ミサキは上着を脱ぎブラ一枚の自分の胸に手を当てて、軽く揉んでみる。
『はぁ〜、やっぱりペタンコだよぉ』
風呂に入ったときにマッサージなどをしたりもするのだが、こちらの方は深入りするとそのまま風呂場でパヤパヤとなって
しまうエッチな自分がこれまた恨めしかった。
『マッサージしてくれるのが、もしマサちゃんだったら…』
そんな卑猥な妄想に走り始める上がブラ一枚というミサキの体が晩秋の寒さでブルっと震えた。
「あ。 そうだ」
そう言うとミサキはクローゼットを開け、体操着の上衣を取り出し身につけた。 『なんで体操着?』と言う疑問が出るのは
当然だがこれは今年度の始め、小久保家に行った際、マサヒコがサイズが小さくなったので、ゴミ箱に捨てたものを失敬
したものだ。 色々と倫理的に問題があるとは分っているが、ミサキ本人は『リサイクル』と固く信じている。
『マサちゃんちの匂い…』
辛い事があったり、落ち込んだりしていても、この体操服を着ると元気が出てくる。 ミサキにとっては魔法の体操服なのだ。
『よっと………。んっ…………んっ……』
ミサキの耳に装着されたヘッドホンからのマサヒコの声はいつの間にか変化していた。 先程よりテンポの遅い息遣い。
こ、これはいわゆる体勢を変えて高まってきた、と言うヤツなのだろうか。 そういえば自分もそう言う行為に耽るときは
仰向けだけじゃなくてうつ伏せになったり、そのまま腰を上げてみたりと割と忙しいのを思い出す。
『んっ…………んっ……くぅ』



マサヒコの最後の『くぅ…』にミサキは居ても立ってもられなくなった。 マサちゃんが『今』快楽を感じている!
そう感じただけでミサキの大事なところが熱くなってくる。
「ぁう…、やだ……っふ…」
ミサキのその細い指は知らず知らずのうちに、自分の大事なところを刺激し始めている。
スカートを脱いで、今度は下が下着だけとなったミサキ。
「あぅ…く…ぁん」
見た目どおりそちらも色素の薄いミサキの大事なところからは、もう秘液が垂れ始めている。
ミサキの指の動きはいつの内からか、マサヒコの声に同調していく。
「マサちゃ…あぁん…ん」
『んっ…………んっ……』
「ゃ…あぅ…いぃ…くふぅ」
「…… …」
『… ……』
少しのインターバルがあり、マサヒコの部屋からの音声は苦しげなものに変わっていく。 
『うっ………うぁっ……』
「んぅ…マサちゃん……」
そのマサヒコの苦しげな声にミサキの指の動きの激しさが増していく。
『うっ………うぁっ……』
「あああっ…あううぅ…」
「うっ………うっ……ぁふぅ〜……』
「マサちゃ…あああぁあぁっ………」
この日、ミサキはマサヒコの音声によりいつになく興奮してしまいちょっと罪悪感が心に沁みた。
それでもミサキ的にはマサヒコと一緒に達する事が出来、満足だった。



11月29日 23:20 小久保宅
マサヒコは今、充実感とともに自分のベッドで寝転がっていた。
色々と言われはするが、自分だって健康な男子なのだ。 年を感じさせない可愛らしさのあるアイ先生。 なんのかんの
と言ってもそのメガネが妖艶な雰囲気をかもし出す中村先生。 それに中学生にしてはあの顔と胸は反則だぜって言う
若田部。 天然が語られる事が多いとは言え、間違いなく可愛くて性格と併せると破壊力倍増な的山・・・。
それと…気が強くて、お節介で、苦手なところもあるけれど…、やっぱり自分にとっては一番可愛いミサキ。
こんな美(少)女たちに囲まれていて、それを発散できないなんてのは地獄だ。 だから最近は毎日この時間に…その…。

体に感じ始めた張りを解消すべく、マサヒコは腕や脚にマッサージをしている。
今日は先程から悪友に借りた5kgの鉄アレイ×2を使った、筋力アップのためのトレーニングを最初にやって、次にゆっくり
ではあるが腹筋とスクワットを50回づつのメニューをこなすことが出来た。
心配していた息遣いも段々と体力が付いてきたせいか、それほど悩ましげな声を出さずに済んだ。 男のそんな声は
我ながら気持ち悪いからな〜、などと考えつつ。
筋トレをやっているなんて言う如何にも健全な青少年にありがちな行動ががバレるのは、やはり恥ずかしいマサヒコであった。


11月30日 08:40 市立東が丘中学
ミサキの顔は級友たちの話を聞くにつれ、真っ赤になっていく。
マサヒコが昨日、借りたものが何であったのか。
マサヒコが昨日出していた息遣いが何によるものだったのか。
そして自分がそれについて勘違いしてとった行動は、いかにバカらしいものだったのか。

ミサキは真剣にまともな社会復帰をしなければなぁ、と心に誓う。 
とりあえず怪しげな機器を全部捨てるのが優先事項なのだけはガチだった。

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