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カップリング |
「今夜のオカズは」 |
139氏 |
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「ウチの息子、好き嫌い激しくて、おかず選びに困るんですよ」
その発言は、マサヒコの母にとってはごく普通の、何気ない日常会話の中の一つだっ
たのだろう。だが、それを拡大解釈してしまうのが、濱中アイという人間なのであった。
「生徒の悩みに手をさしのべてやるのも(家庭)教師の務めよね……」
アイは、自室のクローゼットの中をゴソゴソと漁り始めた。何か良さそうなものは……。
そんな中、アルバムの中に一枚の写真を見つけた。もう随分と昔に撮ったものだ。
「うん、この路線なら……」
そして、アイはその写真を抜き出し、自分のハンドバッグの中にしまい込んだ。
次の日。家庭教師の授業を終え、帰ろうとしていたアイは、突然何かを思い出したか
のように、マサヒコに話しかけた。
「そうそう。お母様から聞いたんだけど」
「な、なんですか?」
母親から聞いた話と言われて、つい身構えてしまうマサヒコ。
「マサヒコ君って、おかずの好き嫌いが多いんだってね」
「あ、それは……その……」
いつだったか、身長の話になったとき、「好き嫌いはなくそう」と言ったのに、それ
が守られていないことを怒っているのだろうか。
「でね。私も手伝ってあげようと思って」
そう言うと、アイは自分のハンドバッグの中から、一枚の紙を取り出した。献立のレ
シピか何かだろうか。
「マサヒコ君、これならどうかな……?」
マサヒコが受け取ったその紙はメモなどではなく一枚の写真だった。そこに写ってい
るのは。
「……どーゆーこと?」
中学生とおぼしき少女の写真。それが昔のアイ先生だということはすぐに分かった。
運動会か何かだろうか。「2位」と書かれた旗を持って、元気良さそうにしている。も
ちろん身につけているのは体操着だ。今となっては絶滅危惧種とも言われている、紺色
のブルマーが時代を感じさせる。
「あの、先生、これは……」
「そ、それじゃあね! また今度!」
そう言うと、アイは大急ぎでマサヒコの家から出ていった。
「何だったんだ、一体……」
家庭教師として来てもらってから随分になるが、いまだにアイの行動パターンは分か
らないことが多い。結局どうすることもできず、途方に暮れるマサヒコだった。
(とりあえず、好き嫌いは良くないよな、うん)
マサヒコの視線の先に、鮮やかな夕焼け空が広がっていた。
「この分なら明日もいい天気だな〜」
その夜。風呂から上がったアイは、自室のベッドでぼんやりとしていた。寝るには少
し早く、かといって特にすることも無い、でもアイにとっては大切な時間の一つ。
「そういえば、マサヒコ君、今頃、あれ、使ってくれてるかな……」
あれ、とは、もちろん、今日手渡した、写真。
「今の中学校って、ブルマー履いてないんだもんね。きっと、マサヒコ君には新鮮に映
るはずよ。ブルマー履いた私のしゃし……」
そこまで考えて、ようやくアイは重大なことに気がついた。
その写真に写っているのが、自分だということに。
「ど、どうしよう。マサヒコ君が、私の写真をオカズにして、えっちなことを……私を
オカズにして……」
顔が熱くなるのが自分でも分かった。きっと、鏡を見たら真っ赤になっているに違い
ない。
なにしろ付き合い始めてから(もちろん、家庭教師と生徒、という意味である)それ
なりに時間が経っているし、夏には一緒に海にも行ったりしたわけで。その時には水着
姿も披露しているわけで。だからマサヒコ君が今の私のカラダをも想像しながら行為に
及ぶ、ということは十分考えられるわけで。
写真を渡す時点で気付けよ、とツッコミたくなるが、それが濱中アイという人物なの
である。
「どうしよう……。マサヒコ君が私の写真を見ながら、アソコを……アソコを……アソ
コを……」
アイの口から漏れていた言葉が、しばし止まる。
「どうやるんだろう? 男の子って」
今ここに中村リョーコがいたら、そりゃあもう、前から後ろから激しくツッコまれた
に違いない。
普段からエロネタに敏感とはいえ、未だ処女であるアイ。とういか、この歳に至るま
で男性との「おつきあい」をほとんどしたことは無く、ついでにいえばエロネタのほと
んどは中村リョーコからの聞き伝えで、エロ本(少女向けの告白体験記やティーンズラ
ブマンガから、男性向けのハードなものまで)すらもろくに読んだことも無かったから、
実際の知識は皆無に等しかったのである。
しばらく悩んだ後、アイは考えを少し変えることにした。
「そうだわ。マサヒコ君が、その、ふけっている最中に私がうっかりマサヒコ君の部屋
に入っちゃうのよ。興奮しているマサヒコ君は、そのまま私をベッドに押し倒して……」
「キャッ、マサヒコ君!?」
「先生がいけないんですよ。こんなもの、オレに見せるから……」
マサヒコが手にしているのは、以前手渡した、アイのブルマー姿の写真だった。
マサヒコはその写真を放り出すと、ベッドの上に横になったアイの胸を両手で揉み始
めた。
「アイ先生の胸、大きいですよね。それに、柔らかい……」
「だ、駄目よ、マサヒコ君」
「大丈夫ですよ。オレが気持ちよくしてあげますから」
マサヒコは服の上からアイの乳房を揉みながら、同時に、指先でその頂きを刺激した。
「あんっ!」
敏感になりつつある胸をさらに刺激され、アイの体を電流が走り抜ける。そしてそれ
は快感となって、アイを浸食していった。
いつのまにかアイは上着を脱がされ、ブラも外されていた。何も隠すものの無くなっ
たアイの胸を、マサヒコの手が直接に刺激する。
「ああっ、マサヒコ君っ」
先程とは比べ物にならない快感。温かい手のひらが自分の胸を蹂躙していく。そして、
それを気持ちいいと感じている自分がいることにアイは驚いていた。
「アイ先生……綺麗です、すごく」
「やあっ、駄目ぇっ」
「もっと……気持ちよく、させてあげます」
そういうと、マサヒコは、アイの乳首をその唇に含んだ。
「あぁん、あんっ、ひっ!」
さらに固くなった乳首を舌で転がす。もう片方の胸も、その手で刺激を与え続けられ
ている。
「お、おねがい、マサヒコ君、もう、ダメっ! アアァっ! ンンッ」
アイの中で、何かがはじけた気がした。
「あ、マサヒコ君……え?」
アイは、自分のベッドの上で横になっていた。なぜか、パジャマの上のボタンが外さ
れ、胸が露わになっている。その胸を潰すかのように掴んでいる自分の手──。
「わ、私……うそ……」
手のひらに伝わる心臓の鼓動は、今までに経験したことがないくらい高く、速いもの
だった。
「どうしちゃったんだろう、私……」
アイが起き上がろうとしたその時。自分の股間に違和感を感じた。熱くて、何か疼く
ような感覚。
そっとパジャマの中に手を伸ばし、ショーツの上からその場所に触れてみると、そこ
はかすかに湿っていた。
「え、これって……」
もっとよく確かめようとして、その場所を強く押してみる。
「あぁっっ!?」
ぷちゅ、と何かが溢れ出る音がした。同時に、先程とは違った快感が体の中を突き抜
ける。
アイはショーツの中に手を伸ばし、ほとんど触れたことの無いそこに手を伸ばした。
そこは、熱を帯びて、湿っていた。
「んっ……」
そのまま触り続けたいという誘惑を断ち切り、アイは指をショーツから引き抜く。引
き抜いた指は、自らの粘液でキラキラと輝いていた。
「濡れてる……」
その事を意識したことで、アイの中で何かが壊れた。
アイはパジャマのズボンとショーツを脱ぎ、もう一度指で自分のそこに触れた。
「ん……、ふ……ぅん」
人指し指を前後に滑らせる。あの部分から滲み出てくるぬめりを帯びた液体が、周囲
に塗り広げられていく。それによって指はよりスムーズに動くようになり、どんどん気
持ちよくなっていく。
アイは、中指も使ってそこをこすりだした。さらに、襞の中にほんの少し指を入れる。
それまで隠されていた襞に指が触れるたび、頭の中で小さく何かが弾ける。
「あん……マサヒコ君……いいよっ、すごく……」
アイはマサヒコの名前を口走ってしまったことにも気づかず、さらに指を動かす。指
だけではなく、腰全体もくねるように動かし、快感を貪る。
そして、終わりは突然やって来た。アイの指が、偶然にも、上の方にある突起に触れ
たのだ。
「イイ……あぁっ、い……イ……イイッ!」
ベッドの上で身体が弾む。
頭が真っ白になる。
脚がぶるぶる震えて、すぐにふぅっと力が抜けていった。
「あ…………はぁ……はぁ、はぁ……」
アイは、荒い呼吸を繰り返しながら、しばらくベッドの上で横たわっていた。
「マサヒコ君……」
:
:
:
『というわけなんです。どうしたらいいんでしょう、先輩』
「えーと、つまり、要約すると、マサヒコをオカズにオナっちゃったわけね、あんたは」
『そ、そんなはっきりと言わないでください〜〜〜!!』
受話器越しに、アイの泣き声が響く。
さて寝るか、と思いベッドに入った中村リョーコの元に電話がかかってきたのはつい
先程のこと。「相談がある」と言われて話を聞いたところ、アイはマサ母の話から、ど
ういう経緯でそうなり、その結果自分がどうなったかを、中村に話し出したのである。
……そりゃもう、こと細かに。
リョーコは二日酔いでも無いのに痛む頭を押さえながら、慎重に言葉を選んだ。
「犬にでも噛まれたと思って、忘れちゃいなさい」
……すいません、すげー適当でした。そりゃ、寝ようとしていたところ電話で呼び出
されちゃ、機嫌も悪くなるというものである。
「そんなことできませんよ〜。わたし、これからどうやってマサヒコ君の家庭教師を続
ければいいんでしょうか?」
「そんなに後悔するなら最初からスルな……」
『だ、だって、その、あの、指が勝手に……』
「いい? マサから見りゃ、あんただって立派な大人なんだよ。その大人が変に動揺し
てどうするのよ。ましてやマサは、今年は受験なのよ。教師が動揺していたら、生徒だ
って実力が発揮できるわけがないわ」
『はい……』
「それにね。オナニーは悪いことじゃないわ。それでストレス解消になるならむしろい
いことよ。もちろん、ヤリすぎは良くないけど、それはどんなことでも同じ。『過ぎた
るは及ばざるがごとし』って言葉、知らない?」
『そうなんですか?』
「あんたも初の教え子がいよいよ受験生って事で、すこしピリピリしてるのかもね。
ま、少しぐらい気楽にやっても罰は当たらないわよ。それより、さっきも言ったけど変
に動揺される方がよっぽど問題だわ」
『そ、そうですね! ありがとうございます、先輩。少し気が楽になりました』
「あー、じゃ、私はもう寝るけど、いいかい?」
『ええ。ありがとうございました。夜遅くに、すみません』
「ま、いいってことよ。今日はゆっくりおやすみ」
『はい。お休みなさい、先輩』
電話が切れたことを確認すると、リョーコはテーブルの上に置いてあったタバコに火
をつけた。もう眠気は完全に覚めてしまっていた。
「マサヒコねえ──」
リョーコはため息とともに煙を吐きだした。
「アイもマサもその方面にはかなり鈍感だからねえ……。面倒なことにならなきゃいい
けど」
一本吸い終えたリョーコは、もう一度ベッドに潜り、部屋の明かりを消した。
「それにしても、女子大生家庭教師と、教え子の中学生か……結構燃えるシチュエー
ションかもしれないわね」
そう言うと、リョーコは自分の股間に手を伸ばした。
「今夜のオカズはこれにするかね……」
完