作品名 |
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カップリング |
No Title |
12氏 |
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休み時間終了間際。
リンコが教室に入ると、マサヒコが両の手を交互に背中へまわそうと、ごそごそと落ち着きのない姿が目に入った。
「小久保くーん、なにやってるの? それ、ふしぎなおどり?」
困惑と呆れがまざった表情でマサヒコは振り返った。
「それともハッスルダンス?メダパニダンス?」
「あのなぁ…とりあえずドラクエから離れてくれ」
リンコの相手をしながらも、もぞもぞとマサヒコ。
「さっきから背中が痒くてさ。掻こうにも指が届かないんだよ、あークソッ」
意識したせいなのか、あまりの痒さにマサヒコは地団駄を踏むが。傍から見れば滑稽なだけ。
リンコはそんなマサヒコを見て、『マサヒコはふしぎなおどりをおどった。しかしなにもおこらなかった』などと、
ほけーっと脳内実況をしていたが。
「あ、じゃあ、私が背中掻いてあげるよ!」
にこぱっと笑って、マサヒコと向かい合うと、抱きしめるように自分の両手をマサヒコの背中にまわした。
天然少女の普通ありえないこの行動に、アストロンが掛かったごとくマサヒコは硬直する。
その間にも、リンコの両手はごそごそとマサヒコの背中を這い回る。
「んーこの辺? ねえ小久保君、どの辺が痒いのー?」
マサヒコの肩に顎を乗せ、胸も密着させ、背中の真ん中を人差し指でコリコリと掻いていく。
「ここ? それともここかなぁ? ねー小久保君、どこが痒いのか言ってくれないと分かんないよー?」
子猫がいたずらするように指4本を立てて、上から下へと背骨に沿って動かしたところで3ターン終了。
マサヒコのアストロンの効果が切れた。
「のわぁあぁぁぁ!?」
「わぁ!」
どう動いたのか、マサヒコはするりとリンコの抱擁(?)から抜け出した。
「あーびっくりした、いきなり大きな声出さないでよー」
「ちょ、おまっ!? な、何考えてんだ!?」
「何って、小久保君が背中が痒いっていうから、掻いてあげようと」
ほけけっと天然少女。それは邪念などこれっぽっちもありませんって顔で。
そしてマサヒコは、言葉が出ないのか、口をパクパクさせていて。
『マホトーン?』
リンコがまた脳内実況を始めようとしたところで、はあぁぁぁっとマサヒコは脱力。
「……あーとにかく的山くん、俺、後ろ向くから。掻くの頼む」
「? うん、分かったよー」
思いっきり疲労困ぱいなマサヒコを不思議に思いつつ、右手をにぎにぎさせる。
マサヒコは重い動きで180度体を回すと。
目の前には、両腕を組んで凛々しく仁王立ちしている女生徒ふたりがいたり。
凶悪に輝く4つの目に見据えられて、マサヒコはぎしりと、ふたたび硬直する。
「そう。背中が」
「痒いのね? じゃあ」
「私たちも」
「手伝ってあげるわよ?」
ミサキとアヤナは、マサヒコの心臓を鷲掴みしているがごとくそれぞれ右手を突き出す。
恐怖が見せた幻影か、ギラリと爪が光ったように見えた。
そしてリンコは。
「ねーここ? ここなの?」
目の前の修羅場を気にせず、コリコリと人差指でマサヒコの背中を引っかいていたり。
おわり