作品名 作者名 カップリング
No Title 541(2)氏 -

参加者名簿

1番  天野ミサキ
2番  新井カズヤ
3番  今岡ナツミ
4番  叶ミホ
5番  金城カオル
6番  黒田マナカ
7番  小久保マサヒコ
8番  城島カナミ
9番  城島シンジ
10番 関川エーコ
11番 濱中アイ
12番 福浦マホ
13番 的山リンコ
14番 矢野アキ
15番 吉見チカ
16番 若田部アヤナ



0 2006 6/9 19:00

「あー、よく寝た」
 矢野アキはおおきな伸びをして、ずっと同じ体勢でいた体をほぐした。今日の最後の授業は得意ではない退屈極まりない数学の授業。授業中に寝入ってしまうというのはすでに日常だった。
アキは伸びをしたあと、数回体を振って体を完璧にほぐす。もうすでに今日の授業はない。委員会の活動の日でもない。あとは帰りのホームルームと掃除を済ませ、帰路に着くだけだった。
だが、真っ先に飛び込んできたその風景は、見慣れた教室の物ではなかった。
 「あれ…、何、コレ…?」
 教室の照明より少し暗い蛍光灯の光に、黒板ではなくホワイトボードが照らされていた。別に特別教室で授業をしていたわけではなかったので、そこにホワイトボードなど存在するわけもない。左右を見渡すと、そこには全く知らない部屋が広がっていた。
 「えっ…、ちょっとここマジでどこ!?」
 椅子を倒さんばかりの勢いで立ち上がり、机に手をつく。その椅子は自分の座っていた椅子ではなく、会議室で見かける教室で使うものよりほんの少し豪華なパイプ椅子だった。
机も教室に備え付けてあるものではなく、やはり会議室に置いてあるような長机で、それがアキの力で少しだけ左右に揺れた。
自分が座っていた席の横では、なぜか城島カナミがすやすやと寝息を立てて眠っていた。
そして、さらに横の席では黒田マナカ、城島シンジといった見知った顔が全員それぞれの体勢で眠りに付いていた。さらに前のほうの席では、どういうわけか自分のまったく知らない人間がやはり眠っており、そのわけのわからない状況はますますアキの頭を混乱させた。
 「おい、カナミ!起きろ!」
 とりあえず横の席のカナミを起こす。アキに揺さぶられたカナミはすぐに目を覚ました。カナミは少しだけ寝ぼけたような素振りを見せていたが、すぐにアキの存在に気づいた。
 「あっ、アキちゃん、おはよう」
 「おはようじゃねえ!なんか私達知らないところにいるわよ!」
 アキは必死になってまくし立てたが、すぐにカナミの視線が変な方向に向いているのに気がついた。カナミは自分の目を見ることはせず、その少し上を向いている。
 「ちょっとカナミ…、アンタどこ見て…」
 「プッ、アキちゃん、犬耳のヘアバンドに首輪までして。まるで本物の犬みたい」
 「はあ!?」
 カナミの言葉に慌てて首と頭部に触れる。そこには、あるはずのない感触があった。首にはしっかりと冷たい金属製の首輪が巻かれていて、頭部にはヘアバンドが装着されている。
そのヘアバンドを外し、しっかりと見てみると、それはカナミの言ったとおりの、コスプレに使うような犬耳のヘアバンドだった。
 「なんじゃこりゃあー!!」
 驚きのあまり絶叫してそのヘアバンドを机に叩きつける。ガツンと大きな音を立て、そのヘアバンドは床に転がった。その音でマナカやシンジを始め周りの人間が次々と目を覚ました。
 「どこここだ?」
「ねえ、なんでみんな首輪してるわけ?」
 「あー、アヤナちゃんがいる〜!なんで〜!?」
それぞれ驚きを隠せない様子で状況を確かめている。アヤナという聞いた事のない名前に驚きそこを確かめると、数人の自分と年の変わらないであろう少女達と一人のこれまた同い年ほどの男子生徒がグループを作っていた。
 「あのー、これは一体何なんでしょうか?」
 アキは思い切ってその中の一人の女に声をかけた。パッと見年齢は自分と同じほどに
見えていたが、男子がその女に「先生」と声をかけていた。おそらく担任か何かだろう。
とにかく、何があったのかを知りたかった。
 「それが、私達もよく分からないの。みんな気がついたらここにいたみたいで。もしか
したらあなた達もそうなの?」
 「ええ…」
 まったく状況が飲み込めない。授業中に寝入ってしまい、気がついたら知らない部屋
の中。しかもそこには顔も見たことのない男女がいる。そしてその男女もなぜここにいるのかが分かっていないという風だった。
 「あの、一回外に出ませんか?ここがどこなのか確認したいんで」
 とにかく外に出てここがどこなのかを確認しなければならなかった。女を連れ、アキは部屋を出ようとした。だが、女は立つことをしなかった。それどころか何故か床に座り込むと、子犬のような潤んだ目でアキを見た。
女のその頭部には、先ほどアキが付けていたヘアバンドと同じものが装着され、アキにも同じものが取り付けられているであろう首輪の先には、リードが結わえられていた。



 「く、くううぅん」
 「何やってんだ!?アンタは!?」
 ほとんどひったくるようにしてヘアバンドを取ると、アキはムリヤリ女を立たせ、引きずるようにして部屋をあとにした。
 「何をやってるんですか!」
 「ご、ごめんなさい。あんなヘアバンドを付けるとついつい…」
 ついついってこの女はどんなプレイをさせられていたのか。そこまで考えて、アキは慌てて頭の中でその言葉を否定した。
その発想はカナミそのものではないか。とにかく女を落ち着かせ、そして一刻も早く事態を進展させなければならなかった。アキたちがいた部屋と外をつなぐ廊下を歩く。
廊下は電気が点いていたので移動に困りはしなかったが、窓がないせいかほんの少し恐怖感を煽る。
 「あっ!」
 突然女が叫びだし、アキを物陰に引きずり込んだ。突然の出来事にアキは小さく悲鳴を上げ、ほとんど尻餅の状態で派手に転倒してしまった。
 「何するんですか!」
 「あっ、いきなりゴメンね。でも、あそこに誰かいたの気づいてた?」
 「えっ?」
 女の指差す先には、数人の人影が移動していた。それは男と女のグループで、少し女の人数が多いように見える。さらにそのうちの何人かは、自分がよく知る人物に見えなくもなかった。
 「先輩、こんなところで何してるんだろう…」
 「先輩?」
 「うん、あそこに背の大きいメガネをかけた女の人がいるでしょ?あの人は私の先輩なの。あっ、あとスーツのメガネをかけていないほうの男の人はその先輩の彼氏で…。でも二人とも本当に何やってるんだろう…」
 その言葉にアキは何気なくその人物のほうを向いた。彼らは先ほどよりこちらに近づいており、視力に自信のないアキでもはっきりと顔が確認できる位置にいた。そして、そのうちの一人がアキの気配に気づいたのか、その視線をすっと泳がせた。
白衣に身を包んだその顔は、アキのよく見知った顔だった。
 「小宮山先生!?なんでここに!?」
 呆然とするアキの顔をその小宮山が捉えた。とたんにその顔が何かを企んでいるような顔に変わり、そそくさと身を隠す。そしてすぐに入れ替わりに現れたのは、これまたアキのよく見知った、マリア・ルーズベルトの顔だった。
マリアはアキの姿を確認するや否やキラリと目を光らせ、ダッシュで走り寄ってきた。
 「アキさーん!!」
 もうこうなればここから先の行動はただ一つ。マリアに捕まらぬよう、少しでも遠くへ逃げるのみだ。もし捕まってしまえば、身の毛もよだつ恐怖のお楽しみが待っている。
キスか、アナルか、もしくは処女喪失か。幾度となく未遂、もしくは完遂されてしまった数々の行為がアキの頭を駆け巡った。
 「うわあああ!!」
 先ほどついてしまった尻餅の痛みも忘れるほどの力走でこのまま最初の部屋まで逃げ切るはずだった。だが、背後からアキを追ってきた女がスタートダッシュに失敗しアキを巻き添えにする形で転倒した。
二人揃って間抜けな悲鳴を上げながらその場に団子虫のように転がり、すぐに互いの様子など気にせず我先にと立ち上がる。
女はマリアの特殊な性癖ど知らないはずだったが、なぜかアキと同じほどかそれ以上にパニックになっているようだった。



 すぐにマリアが追いついてきた。その視線を追ったアキはすぐにその眼が自分と女を捕らえていることに気がついた。このままでは女もろともマリアの餌食になってしまう。再度足に力を込め逃走を図ろうとした。
だが、ここにきて一つの重要なことに気がついた。女がアキのスカートの裾を握っていたのだ。このまま逃走を図れば最近ウエストが大きくなってきたとの理由でゆるめていたスカートのホックが取れ、スカートが脱げ、あられもない姿を晒してしまう。
一度カナミに風対策でスカートに錘をつけるというろくでもないアイディアの実験台にされ、道端でスカートの中身をさらけ出してしまうということはあったが、今回は明らかに状況が違う。マリアの前でスカートの中身を出してしまうことは自殺行為である。
ここはどうするべきか。もとからよい方ではない頭をフル回転させ、アキは一つの結論を出した。スカートを気にしつつここから逃げる。それしか考えられなかった。未だもがいている女には悪いが、セクハラされるのは勘弁だった。だが当然、それをマリアが許すわけがない。
アキのスカートを覗き込むような形で転んでいる女を見て変な妄想が掻き立てられてしまったのだろう、その舌がジュルリと音を立てた。
 「私も混ぜなサイ!」
 女とアキのスカートの間にムリヤリ顔を突っ込み、アキのスカートの中身を堪能しようとするマリア。もう何かを考えている場合ではなかった。マリアの突然の乱入に怯んだ女が力を緩めたその一瞬をアキは逃さなかった。
悪いほうではない瞬発力と火事場のバカ力を活かして、その場からの逃走にどうにか成功した。
 「うおおおおお!!」
 全速力で元来た道を引き返し、その勢いのまま部屋の中に飛び込む。すぐに女の悲鳴が背後から聞こえたが、そんな物を気にする余裕はなかった。アキのあまりの形相にカナミたちが少し驚いていた。
 「アキちゃん、何があったの?」
 「小宮山先生とマリア先生がいるぞ!なんか知らない人もいた!」
 その言葉に一人の金髪の少女が反応した。隣に座っていた少年と目配せをしたあと、おずおずと立ち上がりアキに話しかけた。
 「あの…、その知らない人ってメガネをかけた女の人じゃありませんでした?」
 「うん、そうだったけど…、もしかして知り合いなの?」
 再度二人が目配せをした。今度は少し驚いたような表情だった。
 「なんで中村先生が…」
 「中村先生?」
 「ええ、私達の家庭教師の先生です。さっきあなたと一緒に出て行ったのが、同じ家庭教師の濱中アイ先生で…」
 「家庭教師の先生が、なんでこんなところに?」
 「さあ…、私達にもさっぱりで…」
 何か釈然としない表情のまま、アキは席に着いた。そして時を同じくしてどうにかマリアから逃げ延びたと思われるアイが少し泣きそうな顔で部屋に戻ってきた。アキの姿を確認し、うなだれるようにして近づいていった。
 「ひどいよ〜、私だけ置き去りにするなんて〜」
 アイの着衣は程よく乱れていて、マリアに何をされたかは彼女を知っている者ならだいたい見当がつく。
 「何があったんですか?」
 事情を知らない男子生徒が聞いた。
 「外にいたら、なんかいきなり金髪の外人さんがそこの女の子のスカートに頭を突っ込んできたの。それで私は胸を触られて…、女の子は一人で逃げちゃうし…」
 その言葉にカナミがアキの方を向いた。
 「だめだよアキちゃーん、一人で勝手に逃げちゃー」
 「あの状況でそんなこと言ってられるか!」
 いつも通りのツッコミを入れたあと、アキはふとマナカの方を向いた。釣り目からマジメそうだが固そうな雰囲気を他人に与えてしまうというその目が、今はアキたちが入ってきたドアの方を向いていた。
 「どうしたの?」
 「誰かが入ってきます」
 その言葉に場が静まり返った。マナカの隣に座るカオルや最前列の席でアイの方を向いていたメガネの少女はまだキョトンとした表情を浮かべていたが、すぐに聞こえたドアの開く音とともに視線をそちらに向けた。



 すぐにぞろぞろと入ってきた女達に全員の視線が釘付けになった。「やっぱり先輩だ!」「中村先生!?」というアイ達の驚きに満ちた声に動じることもなく中村という女はヨッ、と小さく手を挙げてアイ達に余裕の挨拶をかます。
女たちの中には、白衣にメガネといういつものスタイルの小宮山もいた。
その背後で加藤先生、坪井先生の二人が何故か真っ青な顔をして小宮山の後をついてきていた。そのほかにもマリアや先ほど見た中村の彼氏だという男を含め、男女総勢7人もの集団がホワイトボードの辺りに集まった。
最初は全員がその光景にあっけにとられ、しばし言葉を発することもなく、ただただ成り行きを眺めていた。
 そして、その中央に小宮山が立った。わざわざ朝会のようにハンドマイクを手にしながら「あーあー、ただいまマイクのテスト中」などといかにもらしいことを繰り返していたが、ふいに立ち上がった一人の少女がそれをムリヤリ中断させた。
 「これは一体何なんですか」
 物腰の柔らかな、それでいて落ち着いた声。マナカだった。小宮山はマナカのほうに視線を向けると普段の何か良くないことを企んだ時のような笑顔を向けた。
 「まーまー黒田さん。これから全部説明するから座りなさい」
 マナカの表情が一瞬だけ曇り、それからその命令にしぶしぶといった感じで従った。小宮山はそれを見届け、ゆっくりと全体を見渡しながらマイクを手に取った。
 「さっき質問があったから、今からそれに答えるわね」
 妙に浮ついた、機嫌の良さそうな声に、アキは寒気を覚えた。彼女の機嫌がいい時は、大抵ロクな事が起こったためしがない。だが、今回はそれに輪をかけて嫌な予感がする。
自分自身、女の勘という奴が働いたときは決まってとんでもない目に遭っている。その勘が警告を発しているということは、またきっと何かのセクハラに巻き込まれることになるのだろう。
だが、その次に小宮山が発した言葉はアキの、いや、全員が予想だにしない言葉だった。
 「これから皆さんには、イカし合いをしてもらいます」

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