おキヌの中は、彼女自身の蜜と横島の放った白濁が混ざりあって、とろとろの感触に満たされている。

「横島……さん?」

 胸の下でおキヌが不安げに問いかけてくる。

「あ、えと、その……」

 挿れただけでイッてしまった。

 未経験の少年だ。それは仕方ない。

 だが、目の前の少女が少年を受け入れる痛みに必死で耐えていた姿を思うと情けなくて涙がチョチョ切れる。

「気持ち……良かったですか?」

「え?」

 少年にとっては予想外、少女にとっては当然の問いかけ、

「その、私の中って……気持ちよかったですか?」

「え? あ、うん……その、気持ちよすぎ」

 我慢できずに迸ってしまうくらい。

「私の中で横島さんが、気持ちよく……なってくれたんですね」

 真っ直ぐ問いただされて、

「う、うん」

 情けなくも、素直に答えるしかなかった。

「横島さん……っ」

 ギュッと、少女は再びしがみついて肌を押し付ける。

「嬉しいです」

 見ると、ポロポロと涙がこぼれていた。

「え? あの、おキヌちゃん」

「横島さんが……私の中で気持ちよくなってくれて……凄く嬉しい」

「おキヌちゃんっ」

『なんつーっ、なんつーええ娘やぁぁぁぁ、おキヌちゃん……めっちゃめちゃえぇ娘やぁ』

 愛しさが、溢れてたまらなくなった。

「おキヌちゃんっ」

 組み伏した少女を再び抱きしめる。

「ぁんっ♪ 横島さん……っ」

 抱きすくめられて、少女は頬を染め、

「……大好きです」

「俺も、おキヌちゃんが愛しくてたまんない」

「横島さん」

 互いに見詰め合って、思い出したように唇を重ねる。

「ん……んむぅ」

 舌を絡め合って、肌をすり合わせて、

 ゾクッ

 背筋に何ともいえない感覚が駆け抜ける。

 つい先ほど、奥を蹂躙された時と同じようで少し違う感覚だった。

「ん? んむ?」

 さっきまで力を失っていたものが、急速に活力を漲らせていた。

「ん……はぁっ」

 唇を重ねたままのおキヌが下腹部の異変に気づいて、恥ずかしげに上目に見上げてくる。

「あの、横島さん、もしかして?」

 離した唇、上気した頬、横島に問いかける。

「あ、えと……」

 少年は気まずそうに曖昧に笑う。

 おキヌの中で、少年の猛りは再びムクムクと鎌首をもたげ始めていた。

「また元気になったみたいだ……うぅぅ、おキヌちゃんが可愛すぎなんだよっ」

「え? あ、えと……っ」

 恥ずかしいが、嬉しい叫び。

 お互い真っ赤になっていた。

「あの、ビックリしました……入ったままで大っきくなって固くなるって、何だか不思議な感じです」

「うぅ、おキヌちゃん可愛い上に中がメチャメチャ気持ち良いんだよなぁ」

「え? えっと、その……そんなに良いですか? 私の……中って」

「すげぇ良いっ!!」

 間髪いれずに返答していた。

 その言葉に少女は一瞬、恥ずかしさでどうにかなってしまいそうになる。

「おキヌちゃんみたいな可愛い女の子の中に入ってるだけで最高なのに、中の感触がまた極上なんだよっ」

 くぅぅぅ、っと、拳握り締めんばかりに力説する。

『あっ、あうぅぅぅぅ、そんな、横島さん、そんな風に言われちゃうと恥ずかしい……』

 けれど、かろうじて嬉しさが勝っていた。

「えっ……と、横島さん……もっと、もっと気持ちよくなって、ください。私で、もっと気持ちよくなってください」

 少し遠慮がちに、

「その……私も、中が……気持ちよくなってきたみたいです、から」

 真っ赤になったまま囁いていた。

「えっ? で、でも、さっきあんなに痛そうに……」

「は、はい、確かにさっきまで、でも、不思議なんですけど、今は痛みとかいうより」

 ふっと、柔らかく微笑む。

「物凄く、幸せなんです」

「ぁ……ぁ」

『やられた……』

 思わずそう感じる、これほど可愛く微笑まれてしまったら、もうおキヌちゃん抜きでこの先を考えることなどできはしない。

「あの、それに……」

 ちょっと表情を伏せて、

「今、横島さんが、入ってる辺り……凄くゾクゾクして、変な感じなんです。でも、全然嫌じゃなくて、むしろ、横島さんがって思ったら」

 恥ずかしそうに見上げてくる。

「どうにかなってしまいそうになるほど幸せで、き、気持ち良い」

「えぇと……」

「胸と違う感じ、なんです。あの、『快感』って、こういうのを言うんですね……あぅっ!」

 その余りも可愛い姿に、再び横島の男根が怒張をましていく、呼応するようにおキヌの体が跳ねる。

「よ、横島さんっ……ぁっ、ぁあんっはぁっんっ」

 喘ぎと共に惚けたような、蕩けたような瞳、『気持ち良い』といったのは、気遣いでもなんでもなく、事実だということが横島にもよく分かった。

『く、くぁあぁぁぁぁぁぁ、可愛いっ、可愛すぎるっ』

 瞬く間に、おキヌの中にある横島は先ほどよりも激しく猛る。

「う、動いて……いい?」

「……はい」

 チュプッ

 入り口に水音と共に、固くなった横島の竿がゆっくり蠢く。

 ヒダを巻き込むようにゆっくり引き出して、再び沈み込む。

 チュプップッ、ツプ

「ふぁっ、ぁっあぁぁ、横島さんっ、横島さぁんっ」

「くぅぅ、し、締まる」

 桃色の吐息をつきながら互いの局部から掘り起こされる官能に意識が刈り取られそうだった。

 擦り付けあう、互いの秘所。求め合う、『咥え込む』と『突き動かす』、異なる動き。

 しかし、互いを欲する根源は変わらない。

「おキヌちゃんっ、おキヌちゃんっ」

「あぁっ!! 横島さん……横島さぁんっ」

 深く掘り起こされる快感と悦楽、そして、限りない喜びと至福。

 何より求め合う、繋がりながら更に更に、互いを余すところ無く求め合うのだ。

「横島さんっ、横島さんっ!! 入ってますっ。届いてますっ、横島さんが私の奥までっ」

 奥に当たり、膣のヒダと怒張のくびれ、カリ首が擦れるたびにゾクゾクと背筋に快感の波が打ち寄せてくる。

 少女が何度も何度も強くしがみつく、少年の背中は、白魚のような指によって引っかき傷だらけになっていた。

 が、それもまた互いをお求め合うが故である。

「うぅぅ、おキヌちゃんの中が、ニュルニュルッて、俺を引き込んでる……っ、き、気持ち良い」

「あぁぁ、やだっ、横島さん、抜かないで……ずっとっ、ずっと離さないでっ!!」

 先ほど大量に放ったばかりだというのに、横島は高まる射精感に迫られる。

「くぁぁぁぁ、や、ヤバッ、おキヌちゃん、俺……ヤバイッ、また、またイッちまう」

「あぁっ、ダメェっ、横島さんお願い、あと少しっ、あと少しだけ……私の中でっ」

「お、おキヌちゃん……っ!?」

「もっとっ!! もっともっと横島さんに貫かれたいんですっ!!」

 涙混じりに切なげな懇願が続く。

「もっともっと私の中を擦り付けて欲しいっ!! 横島さんっ、横島さぁんっ!!」

 ただひたすら、目の前の少年を求める叫び。

 愛しい人に貫かれる喜び。それが少女に言葉を紡がせる。

 しかし、その叫びは、むしろ、少年を追い詰めていった。

「くぅぅぅっ、で、でも、俺……俺っ」

 これほど求められて、これほど気持ちよくて、これほど扇情的なひと時が、耐えきれるはずもない。

 さっきから放ちたくてたまらない。少女の中はきつくて柔らかくてトロトロで少年を離すまいとギュウギュウに締め付けてくる。

 ヒダの一枚一枚に至るまで、男根の全てを包んで、射精衝動を容赦なく駆り立てている。

 先ほど挿れただけでイッてしまったほどだ。おキヌの中の気持ちよさはもはや筆舌に尽くしがたい。

「くぁぁぁ……あかんっ、おキヌちゃんっ!!」

「やぁぁっ、横島さん、もっと、もっとして、して下さいっ!!」

 ビュクゥッ!!

 おキヌの叫びも空しく二度目の射精が秘奥に注がれる。

「あぁっ、横島さんから出てる……奥で、奥でビクンッビクンッて」

 甘いため息をつきながらおキヌは自分の中に注ぎ込まれる白濁を受け止める。

 注がれすぎて、少し入り口から溢れ出していた。

「ぁふぅ……っ、横島さん」

 下から不満そうに上目遣いで見上げてくる黒髪美少女、頬をプゥッと膨らませている様がどうしようもなく可愛かったりする。

「ひどいです……もうちょっとだけ、頑張って欲しかったのに」

 グスッとこぼれた涙をぬぐっていた。

「あ、あうぅぅぅぅうぅっ、か、堪忍してぇぇぇぇぇ」

「あんまりですっ、私だって……私だって」

 その涙目ははっきり言って反則である。余りにも可愛すぎる。

「そ、そう言うても、気持ちよすぎて……」

 情けない表情でしどろもどろになっていく。

「わ、私だって横島さんにもっと気持ちよくして欲しいんですっ」

 思わず抗弁していた。

「え?」

「あ……」

 自分の言った言葉に、今更ながら少女は真っ赤に染まってしまう。

「あぅあぅっ、そ、その……これは、えっと」

 思わず我に返ってしまったのだろう。

 言いよどむうちにだんだん羞恥に頬が真っ赤に染まっていく。

「え、えぇと」

 横島も困ったように頬を掻いていた。

「……わないで、下さい」

 かすかに伏せた瞳は、こぼれそうに涙が浮かんでいた。

「え?」

「い、いやらしい娘だって……思わないで下さい。お願いですからっ」

 懇願する瞳は今にも泣きだしてしまいそうで、

「……おキヌちゃん」

「私……私、初めてなのに……こんなに乱れて……あまつさえ横島さんに……こんなこと言っちゃうなんて」

 小さく肩が震えていた。

「こんないやらしい……自分を棚に上げ……えっ?」

 ギュゥッ

 思いがけず抱きすくめられていた。

「おキヌちゃんって、ホント可愛いなぁ」

「え?」

 正面に居る少年はしみじみとした笑顔だった。

「いや、だってさ、俺がガツガツしてて……さっきも2回とも勝手にイッちまって」

 ちょっと、(男として)切なげに笑っている。

「最初なんて挿れただけだったし、さっきだって5分ももってないし、そら怒るよなぁ、でもさ」

 前半微妙に乾いた笑いだった。

「それで素直に怒ってくれたり、恥ずかしがったり、ホントに可愛いよなぁ……」

 しかし、後半は熔けていた。聞いているおキヌも熔けてきていた。

「せっかくおキヌちゃんも気持ちよくなってきたのに……あんなに可愛く身悶えるおキヌちゃんをみすみす見逃すとは……くそぉ、もったいないっ」

 心底、それだけが心残りなのだ。

「よ、横島さん?」

「俺もさ、嬉しいんだよ。おキヌちゃんが俺で『感じて』くれるのって」

「あ……っ」

 ポロポロと涙がこぼれていた。

「いやらしいっていうより……おキヌちゃんが感じてくれて、期待してくれて、すっげぇ嬉しいんだ……できれば、もっと感じて欲しいし、もっと悦ぶおキヌちゃんが見たいんだ」

 照れたようにポリポリと頭を掻いて、

「気持ちよくなってくれ始めて、ホント嬉しいんだよなぁ。もっとおキヌちゃんに気持ちよくなって欲しいんだけど、俺、まだ力足らずでさ」

 くぅぅっと、天を仰ぐ。

「おキヌちゃんの優しさに乗っかって勝手にイッちゃって、スケベ丸出しな俺だけど……嫌わんとってくれると助かるなぁって」

「そ、そんな、私、横島さんが大好きですっ。絶対嫌いになったりなんかしませんっ」

「たはは……おキヌちゃんに好かれるのってすげぇ嬉しい」

 ニカッと笑う。

「横島、さん……」

「……よぉしっ、おキヌちゃんのリクエストには、応えないと男じゃないよな」

「え? あ……」

 再び少女は自分の中でムクムクと膨れ上がってくるものを感じていた。

「あ、あの、横島さん……もしかして?」

 耳まで真っ赤になっていた。

「その……おキヌちゃん見てたら、さっきの思い出して、また」

 三度目の屹立。凄まじい回復速度だった。

 固く膨れ上がったそれは少女の秘奥の中でビクンビクンと脈動している。2回精を吐き出しているとはとても思えない。

「えっと、もう一回……していい?」

 頭を掻きながら、横島が情けない笑みを浮かべていていた。

「ぷ……っ、うふふっ」

 思わず吹き出して、さっきと違う涙が目じりからこぼれて指で拭う。

「もぉっ、横島さんったら」

 呆れたようでいて、安堵した少女の笑顔。

「いやぁ、俺もちょっと自分のスケベぶりに少し呆れてきた」

 他人事のように言う様がまた、実にらしい。

「はい、横島さん。もっともっと愛してください」

「よっしゃぁっ!!」

 ガッツポーズでもやりそうな勢いで、グッと拳を握り閉める。

「もぉ、横島さんのえっち」

 少し目線を伏せながら、照れた上目で横島を見上げる。

「はっはっはっは、俺からスケベ取ったら何も残らないぞっ」

「……せん」

「え?」

「そんなことありません。横島さんは溢れそうなくらいの優しさを持った素敵な人です」

「あ、いや」

「ちょっとだけ、騒がしかったり、スケベだったりで、誤解されちゃったりしますけど、正直で明るくて優しい……私の大切な人です」

「お、俺をそんなに褒められても何も出ないぞ」

「ギュって抱きしめてくれたらそれで良いです」

 屈託の無い笑顔、

 じぃぃぃんっ

「くぅぅぅ、やっぱおキヌちゃんはサイコーにえぇ娘やぁぁあぁぁっ」

 ギュゥ

 考える前にリクエストどおり抱きしめていた。

「よ、横島さんっ」

 真正面から褒められて少女は小さくなって頬を染めた。

「横島さん」

 安堵するように全身を預ける。

「ね、ねぇ、おキヌちゃん……」

 心持ち恐る恐る、少年は問いかけてくる。

「は、はいっ」

「あのさ、ちょっと違う体勢でしてみようって思うんだけど、いい?」

「えっ? あ、はい、そ、その、それは横島さんが……望むようにしてくださいっ」

「じゃ、じゃぁさ」

 言いながら横島は軽く上体を起こして、おキヌの左太腿の下から腕を差し入れると折り曲げた膝を担ぐように軽く支えていた。

「よ、横島さん?」

 今から何がされようというのだろうか?

 少女は好奇心と驚きの狭間で胸が高鳴るのを自覚していた。

「その、ここからうつ伏せに……なれる?」

「え? あ、は、はい」

 横島に言われるまま、支えられた膝の向きに沿って左向きに上半身を捻るように、仰向けからうつ伏せに変わっていく。

「ん……」

「よっ、と」

 横島は……おキヌの左ひざを反転させるように自分の前で反転させ……。

 グリッグリグリ……ッ

「んっ!」

 横島がうめく、横回転の刺激ははっきり言って未体験の領域だ。

「ふぁっぁあぁっ!!」

 反転する途中おキヌが短く叫んで動きは止まった。今、二人は互いの秘所を直角に根元同士つなぎ合わせるような体勢だ。

「お、おキヌちゃんっ!? 大丈夫っ、もしかして痛かった?」

 慌てる横島に、おキヌはとっさに目をそらす。

「え? いぇ……その」

 おキヌの秘所は障害物無く横島が根元まで押し込まれていて、しっかりと繋がりあっている。

「よ、横島さんの、が」

 応える声はしどろもどろで、でも、伝えるべきことは、

「さっきと違うところに当たって……気持ち……良かったん、です」

 確かに伝えて、慌ててうつ伏せになって枕にしがみついていた。

「そ、そーなん……?」

 肩越しに見える少女の耳たぶが真っ赤になっていた。

「もぉっ……恥ずかしいんですから……あんまり言わせないで下さい」

 少し拗ねたような声がまた可愛くて仕方ない。

「え? あ、うん……」

 おキヌはそのまま不貞腐れたように真っ赤な顔を枕にうずめていた。

 めちゃめちゃ可愛かった。その反応で横島は固さが増していた。

 背中が見える。きめ細かい柔らかそうな白い肌に背骨と肩甲骨が浮き出し、白い柔らかなお尻が横島の腰と密着していた。

「もう少し……くぅっ」

「ん……んぁっ」

 チュッ、チュル

 呟きながら残りの90度を捻って、少女の膝を敷布団にゆっくり下ろした。

 おキヌは布団に両膝を突いて少し腰を浮かせていた。

 これは横島の腰が少し浮き秘所で繋がった、おキヌちゃんのお尻が追従したからなのだが。

「ん、あぁっ! よ、横島さん……なんだか変です……さっきと全然違うところに当たって」

 うつ伏せのまま少女は愛しい少年に己の秘所を羽子から貫かれ、未体験の感覚に酔う。

『さ、さっきも気持ちよかったけど、こっちは……ふ、深いっ……どうしてっ!?』

 言葉に出来ないような、官能がくすぶって少女の感覚を焦がす。

「おキヌちゃん……」

 起こしていた上体を軽くかがめて……少女の両脇から腕をかいくぐらせる。

「あっ、そ、そんな横島さんっ」

 背中越しに胸を揉みしだかれていた。

「あぁっ、ダ、ダメェッ!! そんなっ、入ったままなのに、胸まで……っ! はぁっ!! んっんんっ!!」

 乳房をもてあそばれる感触と、背後から貫かれる感触が……少女の意識をホワイトアウトさせていく。

「だ、ダメですっ、気持ち良っ、あぁっ……横島さんが、横島さんがこんな、こんな風に入ってっ!!」

 グイグイと横島は腰を動かす。

 さっきと違う場所が擦れた。

 入っている角度が違うだけで、どんどん意識が恍惚に染まっていく。

「あっ、あぁっ!」

 どうにもならないほどの悦びにおキヌは震えていた。

 全身から力が抜けていく、膝が震えて自分を支えていられない。

「くぅぅ、こ、これは、これは予想以上に……締まるっ」

 横島も苦しげな声を上げる。

「あぁぁぁっ、よ、横島さぁぁぁんっ」

 ゾクゾクした快感がおキヌを攻め立てていった。

「深いっ、深いですっ、横島さんが……奥に奥にっ」

 叫びながら、全身が快楽に染まっていく、どうにもならず涙がこぼれて、枕が濡れていく。

「気持ち良いっ? おキヌちゃん」

 腰をぐりぐりと動かしながら横島は問いかける。既に2回放った後なので、先ほどより少し余裕があった。

「あぁぁっ、聞かないでっ、そんな恥ずかしいこと聞かないで、下さいっ!!」

 対しておキヌはさっきから高まりっぱなしで、どんどんさらに高まっていく。

「ふあぁっ!! あぁぁぁっ!! 横島さんっ、横島さぁぁぁんっ!!」

 ギュゥッと布団を握り締める。

 背後から犯される感覚が少女を責め立てる。深く挿入される横島がおキヌの意識をどこまでも深く熔かしていった。

 プチュッ! チュッ!! ジュプップッ!!

「あぁっ!! あっ、あぁぁふぁぁんっ!! は、恥ずかしい……でも、でもぉっ!!」

 羞恥のあまりに涙があふれてくる。

 が、無意識に膣は律動し、咥え込んだ固い竿を更に奥へ奥へと引き込もうとしていく。

『あぁっ、こんな、こんなに恥ずかしいのに……気持ちいいなんて』

 少女の意識がどんどん悦びに熔かされていく。

 愛しい人の猛りを飲み込まんとして、秘裂の奥が蠢いていた。

「はぁっ、はぁっ、おキヌちゃん……いいよ、吸い込まれそうだ、凄い気持ち良いっ」

「ぁんっ、あんっ、ふあっ!! んっ、あっ、あっ、あ……っ!!」

 灼熱のような衝動に満たされて、おキヌの意識はどんどん真っ白になっていく。

 繰り返される衝撃と、蹂躙される秘奥への快感。

「横島さんっ、よこしまさぁぁぁぁんっ!!」

「おキヌちゃん、いいっ、凄く良いよっ!!」

「横島さんっ! もっと、もっとくっつきたいのにっ!! 抱きしめて欲しいのにっ!!切ないっ!! 切ないですっ!!」

 背後から犯されるゆえ、おキヌの手は横島に触れることが出来ない。

 枕を抱きしめるが、そんなもので満たされるわけが無い。

 もどかしくて目じりに涙が溢れた。

 しかし、そのもどかしさが少女を快楽の渦へと引きずりこんでいく。

「おキヌちゃんっ!!」

 叫びに応えるように、横島は胸を揉みしだく。

「ふぁぁっ、よ、横島さんそんなっ!! あぁっ!!」

 柔らかな膨らみも蹂躙される。

 喜びが少女の意識を真っ白に吹っ飛ばした。

「ふぁっ、ふぁぁぁぁぁぁっ!!」

 一際高い嬌声が上がる。

 ビクッビクビクビクッ!

 少女の膣が激しく律動し、横島を締め上げた。

「くぁっ、こっ、これはっ」

 いきなりで激しいそのうねりに少年は耐えきれなかった。

 ビュクッ、ビュッビュククッ

「あ、あぁ……」

 意識が吹っ飛びそうになる。三度目の射精。

 グラ……ッ

 ドサッ

 力尽き、おキヌの背中に崩れ落ちた。

 少女の背中にもたれかかると、少女の腰も一気にペタッと崩れていた。

 拍子におキヌの中から横島の力尽きた男根が抜け落ちて、少女の入り口からは白濁の迸りがこぼれだしている。

「くあぁ……ま、またイッてもぉた」

 そう思うが、声に力が余り入らない。

 なんと言うか、全部持っていかれたというか放ってしまったと言うか、放った快感に未だ半分は放心している状態だった。

「……? おキヌちゃん? おキヌちゃんっ!」

 しかし、それでも、ぐったりとした少女に気づいて慌てて声をかけていた。

 少女が荒い息をついたまま真っ赤な顔でうつぶせている。

「なぁ、大丈夫? おキヌちゃん……」

 焦点の合わない瞳、上気した頬に荒く甘い吐息、色気を感じてしまうが、それよりもまずは心配が先に立つ。

「おキヌちゃん?」

 何度か声をかけた瞬間、少女はビクッと震える。

「……っ!!」

 火でも噴きそうなくらいに真っ赤な顔で、瞳の中心に理性が宿った。

 すごい勢いで枕に顔を埋めて……恐る恐る、小さな声を絞り出す。

「あ、あの横島さん……」

 わずかに覗いた潤む瞳に思わずたじろく。

「な、何?」

「横島さんが……その、出しちゃう瞬間ってどんな感じですか?」

「う、い、痛いとこ聞いてくるなっ」

 いきなりイッてしまった直後だけに答えづらい質問だった。

「こ、答えて下さいっ」

 相変わらずうつぶせたままだが、拒否を許さない。

「ん……んーどういったらいいんかな。飛ぶっていうか……気持ちよすぎて意識が熔けるって言うか」

「……私も飛んじゃったみたいです」

「え?」

「その……気持ちよくて」

 言うだけ言って、また枕に顔をうずめていた。

「も、もぉっ、あまり聞き直さないで下さいっ」

「えっと、その」

「その、私も……気持ちよかったん、です」

 かすかに肩越しに振り返って、最期にそれだけ搾り出していた。

「おキヌちゃんっ」

 ガシッ

 肩を捕まえて、うつ伏せの少女を仰向けに返し、

「え? あの、横島さん?」

 ギュッ

「あ、あぁ……」

 目一杯に抱きしめていた。

「よ、横島さぁん……」

 幸福感に熔けそうになった。

「可愛いよ……もぉ、めちゃめちゃに可愛すぎだよおキヌちゃん」

「嬉しい、です」

 しばらく二人並んで横たわっていた。

 時の流れさえ忘れてしまう。触れ合った肌と肌が愛しくて。

 互いに先ほどまでの行為の余韻に浸っていた。

「あ……あの、横島さん」

「ん?」

「す、すいません……ちょっと、重いです」

「あ……」

 少女の指摘にようやくワタワタと体を起こす。

 さっきから少女に覆い被さったままだったのだ。

「と、わ、ったっ」

 デンッ

 勢い余って尻餅ついてしまっていた。

「ててて……」

 長座姿勢で、軽く腰をさする羽目になっていた。

「プッ うふふっ」

 おキヌは小さく吹き出すと、さも楽しそうにコロコロと小さく笑っていた。

「……あんま笑わないでくれよ」

 バツの悪そうな顔で横島はつぶやく、その瞬間、改めて少女の裸体を眺めることとなった。

 軽く上気した白い肌は心持ち桜色をなし、伸びやかな四肢は美しく、白魚のような指は口元に添えられている。

 裸身はまさに美しいの一言、柔らかな膨らみも、くびれも、恥毛の草原に覆われた秘所も、全てが美しい。

 改めて非の打ち所がないほどの最高の美少女だと思える。思わず見惚れてしまうほどに。

「あ、えと……」

「どうしたんですか? 横島さん?」

「えっと、その……すげぇ綺麗だなって」

「え?」

 突然の褒め言葉に、少女は思わず絶句して、再び真っ赤に顔を染める。

「やっ……! 横島さんのえっちぃぃぃ」

 ようやく自分の裸体が凝視されていたことに気づいて、全身色をなしていた。

 ぺちぺちと横島の胸板を叩く様がまた可愛かった。

「ああぁぁぁぁぁ、そないなこと言われてもぉぉぉっ」

「そ、そんなことする横島さんにはお仕置きですっ」

 言うが早いか、長座姿勢の横島の股間に、おキヌが顔を近づける。

 焦ったのは当然横島である。

「ちょっ、ちょちょ、おキヌちゃんっ」

 少女の目の前には先ほどまで少女を貫いていた。横島の力を失った局部。

 先ほどまでの怒張がウソのように横島のソレは元気を失っていた。

「よ、横島さん……」

 気づいたら横島のソレに手を伸ばし、顔を更に近づけていた。

「お、おキヌちゃんっ!?」

 ビックリして身を引きそうになる。

「に、逃げないで下さい……っ」

「え?」

「さ、さっき横島さんが……私にしてくれたことの……その、お返しなんですから」

「で、でもさ、さっきから、3回も出しちゃった後だよ。その……」

 横島は焦る。先ほどまで目一杯浸かっていたような状態だけにアレの臭いが絡み付いているのは間違いないのだ。

「そんなの……関係ないです」

 チュッ

 おキヌの小さな唇が、横島の男根に口付ける。

「んっ」

 苦い味が口に広がる。口付けられた瞬間横島の腰がビクッと跳ねた。

「あぅっ、お、おキヌちゃんっ、だ、ダメだぁ……」

 チュッチュプッ、チュッ

 横島の制止に構わず、生臭く苦い味にも一切構わず、おキヌは横島の男根に舌を這わせた。

「ん……ん、ダメです。横島さんだって、さっき私がダメって言っても舐めちゃいました」

 少しだけ口を離して、横島の下腹部からおキヌの上目が見上げていた。

「だから、私も舐めちゃいます」

「いや、あの、それはっ」

 する前の話……。今は精液を散々放った後の性器である。

 横島の男根からは、精液特有の生臭いにおいがしっかりまとわりついている。

 味は色々言われているが、まず不快極まりない評価しかない精液にまみれたペニスを、おキヌに舐められるには抵抗がありすぎる。

「いや、だって、今の俺のって……凄いことになってるよ」

「横島さんだって、私の……を『どんどん溢れてくる』って言って舐めてました」

 ジッと見つめられた。

「ピチャピチャって……音が聞こえるたびに恥ずかしかったんですよっ」

「う……っ」

 少し責めるような上目に横島はたじろくしかなかった。

「で、でも……」

 頬を染めて、恥ずかしそうに

「横島さんにされて気持ちよかったから……横島さんにも気持ちよくなって欲しい、です」

 愛しさが弾けそうで、目の前の少女が、少年が、互いが愛しくて。

「お、おキヌちゃ……んっ、くぁっ」

 チュプッ

 再び少女は愛しい少年の分身を口に含む。

「ん、んむぅ」

 チュッ……コク、ピチュ、チュ

 喉を鳴らす、唾液交じりの精液がおキヌの喉の奥を通り過ぎていく。

「くぁぁぁぁぁぁっ」

 おキヌの舌が男根全体を舐め取るように舌を這わせる。

 だんだん、男根が固くなり始めていた。

『横島さんが……私で感じてくれて、こんなに……』

 上気して半分熔けたような瞳のまま、体液で濡れそぼったソレを愛撫する。

 耐え難いほど生臭い味さえも、横島が絶頂に至った証であると思うと愛しくてたまらなくなってくる。

 垂れてきた黒髪を右手で梳いて退け、左手はまだ、柔らかい男根に添える。

 ペロッ、チュッチュパッチュ……

 まるで横笛を吹くかのように、竿の側面から舌をチロチロと這わせていった。

「う、うぁ……」

 横島はゾクゾクするような感触に思わず声を漏らす。

「横島さん……気持ち良いですか?」

 小首をかしげながら、おキヌ。

 真下から上目遣いで見上げられて、思わず卒倒しそうだった。可愛すぎる。

「……それは、おキヌちゃんが一番よく分かってるんじゃないかな……」

 すっかり怒張した横島の男根。

「うふふ……嬉しいです」

 愛しそうに微笑んでいた。

「横島さん……こんなに固くなってます」

 ピーンとそそり立つ男根を手の内に、更に舌を陰嚢に這わせる。

「くぁっ、おキヌちゃん……っ、そんなところまでっ」

「ん、ひもひいいでふか?」

 二人ともすっかり涙目になっていた。

「よこひまひゃん……」

「くあぁぁぁぁぁぁっ」

 全身がぞくぞくしてくる。

 チュッ……チュプッ

 少女はようやく、少年の性器からその可愛らしい唇を離す。

「横島さん……もう一度……抱いてくれますか?」

 そして、少し躊躇いがちに上目遣いのまま、懇願する。

「お、おキヌちゃん?」

 上体を起こし、横島と向き合うようにペタンと座り込んで、真っ正面から瞳を見つめていた。

「その……今度は横島さんの顔を見ながら……気持ちよくさせてほしいんです」

 ゴクッ

 思わず生唾を飲み込んでいた。

 沈黙のまま数秒が流れていく。

「ダメですか?」

 少し残念そうな少女の声。

「ダメだったら……えっ!?」

 ギュッ

 声を遮るように横島は少女を抱き寄せていた。

「……俺も、おキヌちゃんの顔を見ながらが良いな」

「あっ」

 一瞬、抱きすくめられたことに驚き、ほどなくして悦びに熔ける。

「横島さん……」

「おキヌちゃん……」

「もっと……もっと、横島さんに愛されたいんです。私、横島さんが大好きで、大好きでたまらないんです」

 少女は腰を浮かして、少年の首筋にすがりつく。

「俺も、おキヌちゃんが愛しい……もっと、もっとおキヌちゃんを知りたい。何もかも俺のものにしたい」

 目の前の膨らみに顔をうずめ、頂にある桜色の突起を舌先でもてあそんだ。

「ふぁ……っ!! 横島さん、私も横島さんのことをもっとたくさん知りたいです。横島さんにもっとされたいです。だから、お願いです。私を離さないでください」

「離すわけないって、こんな可愛いのに、おキヌちゃんこそ俺から離れないでくれよ」

「はいっ」

 互いに強く抱きしめあう。

 抱きしめあったままで、少女の体は少しずつ、下がっていく。

 ピチュッ

「ふぁっ!!」

 水音ともに、秘裂に男根が触れる。

 ちょうど入り口の近く、互いの性器が触れ合っていた。

「あ……よ、横島さん」

 下腹部から伝わる熱い猛りの感触に、おキヌの秘裂から蜜が溢れ始めていた。

 それを自覚して思わず頬を染める。

「えっと、あの、おキヌちゃん……もし良かったら」

「え? はい?」

「このまま挿れて……いい?」

「……っ!?」

 真っ赤になってしまう。

『こ、このまま……そんな、でも、このままだったら横島さんをずっと……ずっと見たままで』

「ダメかな?」

 苦笑する横島。

「そ、そんなことはっ……その……横島さん」

 ジッと互いを見ている瞳同士、どちらともなく近づいていく。

 チュッ

 唇を重ね合う。

「ん……んふぅ……ん」

 少女は唇から広がる限りない幸福感に溶かされながら、自らの腰を少し動かしていた。

 チュッチュプッ

 そして、秘裂へ愛する人の怒張を包み込み始める。

「んっ、ふむぅ……っ」

 おキヌは自分の体を貫くものに全身をわななかせていた。

 もはや、受け入れる瞬間さえ悦び。

「んっ? むぅっ!?」

 少年は突然柔らかな感触に包まれた己の猛りに驚きを隠せない。

 チュプッツッププ……ッ

 最初の時より遙かに抵抗感なく少年のペニスは少女の秘裂に飲み込まれていく。

 膣に包み込まれるに従って快感が全身を貫いていく。

「ん……く、はぁっ」

 思わず唇を離していた。

 目の前の少女は目を閉じたまま、甘い息をつきながら、ゆっくりと腰を落としていく。

「おっ、おキヌちゃんっ」

「よ、横島さんっ、気持ちいい……ですか?」

「き、気持ちいいよ……って、おキヌちゃんっ」

「横島さんのアイデア……本当に素敵です。涙目になってる横島さんも、甘い吐息もこんなに近くで感じられるなんて」

 程なくして、互いの性器は根本まで繋がりあう。おキヌは横島の首にしがみつき、横島はおキヌを腰あたりで抱きかかえる。

「入ってくる瞬間も……たまらなくてっ、入ってる今も……幸せです」

「お、おキヌちゃん……」

 胸の奥から愛しさが溢れて止まらない。

 目の前の少女を、どのように愛すればいいのか、それさえ迷うほどに。

「横島さん……動いてください」

「え?」

 ここに至って横島は焦る。

 この体勢、横島は長座姿勢、おキヌが向き合うように抱き合っていた。

『う、動けんっ』

 この体勢ではいわゆる前後の動き。ピストン運動というやつはできない。

 限りなく致命的な弱点に今にいたってようやく気づいていた。

「? 横島さん?」

『え、えぇいっ、ままよっ』

 ユサッユサユサッ

 横島は繋がりあった部分を中心に腰をユサユサと揺らすことで好転を試みる。

「ふぁっ、あっあぁぁぁぁっ!!」

 予想外の反応があった。

「よ、横島さんっ、すごいっ、入り口がっ入り口が擦れてっ、あぁっ中もっ、中も掻き回されてっ!! あっ、あっ、あ……っ」

 おキヌは喘ぎながら、ゆるまりそうな両手を必死に横島の首筋で引き寄せようとしている。

 すさまじい手応えだった。蠢くたびに濡れた膣が横島のペニスを舐め回していた。

『も、もしかしてピストンよりこっちの方が良いのか?』

「あぁっぁんっ、ふぁっあぁぁっ」

 目の前の少女の反応がその威力をダイレクトに伝えてくる。

『くぉぉぉぉっ、やばいっ、これはっ』

 横島も程なくしてその威力を体験することとなっていた。

 全力でもって歯を食いしばる。

 ビクンビクンと反応するおキヌの膣内、そして、最小限ながら互いの性感を刺激しあう動き。

『くあぁぁぁぁぁっ、き、気持ちいいっ!!』

 横島を限界まで追い立てていく。

「ふぁぁっ!! 横島さんっ、横島さんっ、大好きですっ。もっと、もっと私をっ」

 少女の叫びが否応なく少年の官能を高見へ導く。

「お、おキヌちゃん、これヤバイっ」

「あぁ、横島さんっ、私も、私もこんなの初めてっ、あぁっ!!」

 ヤバイと思いつつも腰が止まらない。

 チュッチュプップチュッ

「お、おキヌちゃん……?」

 少女の腰が前後の動きにあわせて律動していた。

「あぁ、だって、だって……もどかしくてっ」

 横島の動きだけでなく、おキヌの腰の動きまで加わった律動。

 互いの官能を限界まで高め続ける。

「くぅぅぅぅっ、あぁぁぁっ、お、おキヌちゃんっ!!」

「あっ、んっ、ふぁぁっ、横島さぁぁぁぁんっ!!」

 キュゥッ

 おキヌの膣内が一際強く収縮するっ。

 ビュクッ!!

 ほぼ同時に、横島は四度目の精をおキヌの中に注ぎ込んでいた。

「あ、あぁ……」

 互いに恍惚に満ちた瞳で見つめ合う。

 おキヌの膣内から力が抜けて、クタッとした横島の男根がかすかに繋がっていた。

「横島さん……」

「おキヌちゃん……」

 チュッ

 再び口づけを交わして……、

 二人は抱き合ったまま、布団に横たわり、いつしか寝息を立て始めていく。

『ありがとう……素晴らしかったよ』

 布団で泥のように眠る二人を労わるように『作品世界』の声は静かに響き渡っていた。

『だが、残念だ。君たちの記憶は消えてしまうことになる』

 幾度とない愛の営みを繰り広げ、熱い迸りにめぐり合えた喜び。

『私は存在意義を全うすることが出来た』

 世界が光に包まれる。

『君たちは元の世界に帰るだろう。そして、ここでのことを忘れてしまうだろう……だが、それだけでは余りに忍びないのは私の我がままだろうか?』

 寝息を立て寄り添う二人の姿に『世界』は微笑む。

『君たちの愛の記憶は……このテープに収めさせてもらった……しばらくは存在が消えてしまったようになるだろうが、いずれ時が来れば、君たちの元に返ることになる』

『私は昇華され、消える……しかし、君たちの愛が不滅であることを心から祈っている』

 少しだけ寂しげに『作品世界』は終わりを告げた。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 毎度おなじみ通い妻よろしく長い黒髪の少女は年季の入った六畳間を訪れていた。

「もぉっ、横島さんっ。またこんなに散らかってますよっ」

 おキヌは、腰に手を当てて、呆れたような怒ったような顔でメッと横島を叱っていた。

 あれから結構な時間が経っていたからだろうか、少女の周りに青白い人玉は既に無く、ふよふよと浮いていることも無い。

 生き返ってから後、美神除霊事務所に居候して早1年、少女の柔らかな体つきも色気が増していた。

「あ、いや、まぁ、そうは言うてもおキヌちゃん、気が付いたらこうなってて……」

「もぉ、横島さんったら……」

 小さくため息ついて、手際よく片付けと掃除を始めていく、

「ほんとにしょうがないんだから」

 言いながらも、どこか楽しげに手馴れた様子で部屋を片付けていく。

「♪〜、ん?」

 ふと、少女は足を止める。

「あれ?」

 ふと、転がっているVHSテープに目を止め、手に取った……。

 ひくぅっ

 少女の笑顔が何だか殺気を帯びたような気配でもって固まっていた。

 その様子に嫌な予感を覚えた横島もとっさにそこへ視線向けて……絶望した。

「あっ、あぁぁぁっ、そ、それわぁぁぁぁっ!!」

「……」

 真っ赤になったおキヌの手にはビデオテープ。

 そのVHSテープに燦然と輝く、『18』の二重丸印。

 まぁ、それが何なのか聞くだけ野暮というものだろう。

 ちなみにタイトルは「乱れ巫女 −悦楽の夜明け− 主演:蒼井みのり」と書いてあるが、些細な問題、とは言えまい。

『あぁぁぁぁぁっ!! いつの間にかなくなった秘蔵の一品が何故ぇぇぇぇぇっ!!』

 横島の心の絶叫など関係無く、もはや事態は前に進むのみである。

 温厚なおキヌのこめかみにピクピクと青筋が立っている。

 よりにもよって「乱れ『巫女』」である。彼女の霊衣を考えれば、もはやセクハラと言われても仕方ない。

「……よぉこぉしぃまぁさぁぁぁん……っ」

 ふるふるふるふると、微妙な勢いで肩が小刻みに震えていた。

『あかんっ、こらあかんっ』

 下手な言い訳はも既に意味が無い。流石の横島もそれは分かった。

「あぁぁぁ、おキヌちゃんっ、堪忍やっ、堪忍やぁぁぁぁっ!!」

 ひたすら米つきバッタの如く土下座する。

「横島さん、もしかして巫女服姿の女の子をこういう目で見てるんですか?」

 両手でビデオテープを持ったまま、少し据わった目で横島に詰問する。

「え? あ、いや、その、それは」

 そう簡単に答えられる訳が無い。

 散々お世話になってティッシュ箱を空にしたことが芋づるで出てくる恐れすらある……。

 おキヌの目つきがだんだん胡乱な感じで半眼になって、

「ちょっと検証したほうが良いですね」

 言うが早いかおキヌはスタスタとテレビのほうに向かって歩き出す。

「へ?」

 ガチャッ ウィィィィィィン ブンッ

 呆気に取られる横島をおいて、彼女はさも当然のようにビデオデッキにテープを投入し、テレビの電源を入れる。

「ちょっ、ちょっと、おキヌちゃぁぁぁんっ!!!」

「横島さんがどういう趣味持っているのか確認してみますから」

 据わった目つきのまま黙々と作業を進めていく。

「ちょっ、いや、あの……っ」

「何ですかっ?」

 ビクゥッ!!

 ギンッと有無を言わせない目、横島を睨んで黙らせていた。

『怖ぇぇぇぇぇぇぇぇ……』

「な、何でもないです……」

 もはやえぐえぐと汚れちまった悲しみに涙するしかない。

 何もできることなど無い。まな板の上の鯉。

 いや、まだ息があって窒息寸前かもしれない。十二分に苦しむことだけならできる。

 テレビには横島にとっては見慣れた、おキヌにとっては知識でしか知らないテロップが流れていく。

「「え?」」

 二人揃って、呆然としていた。

 ブラウン管には自分たちの姿が映っている。

 青白い人魂を揺らすおキヌに至ってはもはや、確認することもばかばかしい。

「な、なんですかこれはっ?」

 おキヌが思わず真っ赤になって声を上げる。

「そ、そないなこと俺に聞かれても……っ」

 だがまぁ、見ていくうちに魂に刻まれた記憶というものもだんだん蘇っていった。

 結局のところ、この日、魂だけでなく、肉体に至るまで繋がってしまうことになるのは、また別の物語。

 めでたしめでたし(いろんな意味で)



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