煩悩ロボ ダイボンノー   ─出陣!ダイボンノー!!─ 

投稿者:犬雀


最初は単なる調査のはずだった。
本隊である美神さんたちが来る前にタマモと俺が先行偵察をするのは最近の俺たちの事務所ではセオリーだった。

 

変化すれば空も飛べ、幻術による撹乱と火炎攻撃の出来るタマモ。
文珠によりどんな状況にも対応できる俺。
さすがに経験とか知識不足で除霊そのもののをまかされることはないものの、状況の把握や簡易結界の準備などは一通りできる。
だから今回のように廃工場に集まる幽霊を退治するための偵察も俺とタマモのコンビにまかされた。
猪突猛進、触れなば切るをモットーとするシロでは搦め手は使えない。
その点、俺ならば師匠である美神さん譲りの罠を仕掛けることができる。
もっとも美衣さんの時美神さんは俺の罠をことごとく見破ったが、あれは美神さんが異常なのだ。
おキヌちゃんは直接戦闘には向いてない。
多数の霊団を相手にすれば無敵の強さを誇る彼女だが、笛を使うというその除霊スタイルゆえに偵察には向かないのだ。

 

したがって消去法で偵察には俺とタマモということになる。
そしてそれは今までは上手に機能していた。

 


慣れもあったのだろう。
軽く様子見のつもりで入った廃工場で俺たちはいきなり悪霊に襲われた。
落ち着いてかかれば大した相手ではなかったが、不意をつかれたタマモが集合霊の巨腕につかまれ地面に叩きつけられそうになった瞬間、俺は文珠を発動させた。
地面に投げつけられながらも放たれたタマモの狐火と俺の『炎』の文珠の相乗効果で悪霊は一瞬のうちに浄化される。
だがそれはタマモの犠牲によるものだ。
このままでは彼女は床に叩きつけられて死ぬ。
咄嗟に判断した俺は残った文珠に『柔』の文字を込め、タマモを抱きとめるべく走り出す。
間一髪でタマモと床の間に滑り込んだ俺の手元で『柔』の文珠が発動する。
ここまでは良かった。

 

だが咄嗟に込めた文字のせいかそれとも別な理由があったのか、かって西条に「霊能とは関係ないな」と言わしめた『柔』の文珠は予想もつかない威力を発揮した。

 

タマモの勢いを殺しきれずに彼女ごとひっくり返った俺を地面が柔らかく受け止める。
ここまでは計算どおりだったが地面は俺が想定したクッションの柔らかさをはるかに超え、まるで底なしの泥にまで軟化していた。

 

投げつけられたショックで気絶したタマモを抱いたまま、なすすべもなく俺と彼女は地面に沈み込む。
このままでは窒息する。
しかしタマモを抱いたまま次の文珠を準備するには時間がない。ていうか文珠そのものがない。
そしてついに俺とタマモは完全に地面へと飲み込まれた。

 

幸いだったのは地下に穴倉があったことだろう。
俺とタマモは地面の中で土に溺れることもなく、ほんのわずか呼吸を止めただけで穴の中に落ちた。
どうやら文珠の効果は上層の地面だけだったようで、穴の床は俺たちを手荒く迎え入れてくれた。
打ち付けた腰と頭が激しい痛みを伝えてくる。
咄嗟に庇ったタマモに怪我がないことを確認して俺は意識を闇へと委ねることにした。

 

 

 

 

ピタピタと頬を叩かれている気がする。
ついでになんだか泣きそうな声も聞こえる。
心地よい夢をさまされる煩わしさを感じながら目を開けてみれば目の前に人の気配がある。
同時に頬を叩く柔らかくて暖かい感触が俺の意識を呼び覚ました。

 

「タマモか?」

 

「返事ぐらいしなさいよ! 死んだかとおもったでしょ!」

 

「あ…すまん…なにしろなんも見えないもんだから…」

 

「仕方ないわね…狐火っと…」

 

不意に周囲が明るくなり突然の光に痛む目をこすってみれば俺を上から覗き込むタマモの顔が見えた。
タマモさん近すぎませんか?
なにゆえそんなに俺に接近なさっていますかキミは?

 

「なにマヌケな顔してんのよ?」

 

「だってなぁ…お前がそんな近くにいるからビックリしたんじゃねーか。だいたいなんでそんなに引っ付いているんだよ?」

 

「ほほう…そういうことを言うわけ?」

 

目に剣呑な光を浮かべてタマモは口を歪ませる。
なんだか知らんがピンチだ。
俺はなにをしたのだろう?

 

「いいから早く手を放してよ!」

 

「ぬお?」

 

言われて見れば俺はタマモの細い腰を抱いたままだった。
落ちるときに庇ったまま気絶していたのだから当然の結果だろう。
謎はとけた。

 

「早く放してってば! それともなに? このまま私にセクハラする気?」

 

だったら燃やすとタマモの目が語っている。
無論、俺にそのつもりはない。
単に目覚めたら目の前に美少女の顔が浮かんでいたという事実の処理に脳のスペックを使いきり、腕とか腰とかから送られてくる情報を一時的に保留にしていただけ。
平たく言えば「見とれていて頭がフリーズしてました」ってところだ。

 

「早くっ!」

 

「あ…ああ…」

 

いい加減タマモも疲れてたのだろう。
何しろ俺はかなりの力でタマモの柔らかい腰を抱いている。
彼女はといえば俺の顔から距離を開けるために最大限の力を使っている腕をちょっとでも緩めるとそのまま俺の胸に飛び込んでしまいかねないのだから。
見る見る不機嫌になるタマモの表情に遅ればせながら俺の脳内より指令が下る。
命じられたとおり手を放し、「セクハラするつもりはないですよー」との意思を込めて両手を頭上に上げてみせた。

 

「まったく…助けてくれたのは感謝するような気がしないでもないわけじゃないけど…何も気絶しながら抱き潰すことはないんじゃない? 背骨が折れるかと思ったわよ」

 

「すまんかった…」

 

「いいけどさ…」

 

フンと唇を尖らせてタマモはそっぽを向き、それから当初の目的に気がついたとばかりに俺から体を離そうとして…そのまま俺の胸へと飛び込んできた。

 

「あれ?…ちょっとなに? 下半身が動かない…」

 

「なに?!」

 

もしや落ちたときに庇いきれなかったか?
頭かどこか運動を司る中枢にダメージを受けたのかタマモ!
湧き上がる嫌な想像に慌てて飛び起きようとした俺もまた気がついた。

 

「ぬはあ! 俺も動かん!」

 

確かに動かない。
いやかすかに動く。指先とかは履き古しのスニーカーの中で動いている。
試しに足ジャンケンを試みればグーチョキパーすべてが出せた。
ならばここは禁断の秘儀「グーでありチョキでありパー」を出してみよう。

 

「ていっ!」

 

「は?」

 

俺の掛け声にタマモがキョトンとした声を出す。
当然だ。俺の靴の中で激しい運動が行われているなどタマモが知るはずはない。

 

「あだだだだだ…足つった!」

 

さすがに準備運動なしの秘儀は無理があった。
複雑極まりない運動にたちまち痙攣する俺のふくらはぎ。
だが痛みにのた打ち回ろうにも下半身は何かで固められたかのように動かない。
痛覚があるということは痛いほどって言うか痛いのでわかったから神経的な損傷ではないようだ。

 

「タマモちょっと足元を照らしてくれ」

 

「あ、うん…」

 

俺に言われたとおりにタマモが浮かべていた狐火を俺たちの足元に寄せる。
胸にかかるタマモの重みと柔らかさを感じつつ体を起こした俺の目に、まるでコンクリートで固められたかのように固そうな土くれに包まれた俺たちの下半身が飛び込んできた。

 

「な、なんじゃこりゃーー!」

 

「え? な、なに?」

 

俺の驚愕の声にタマモはビクンと跳ねる。自分の身に何が起こっているか上になっている彼女からは死角になっているのだから不安もひとしおなのだろう。
その大きな目がクリクリと不安げに揺れている。
とりあえず落ち着かせるために頭を撫でてやれば、今度はまん丸に見開かれるタマモの目。
うむ。コイツのこういう表情ってなかなか見れないから新鮮だ。

 

「あー。実はな…文珠どうやら失敗したらしい」

 

「え?」

 

そうだった。
本来、布団かマット程度になるはずの『柔』はどういうわけか地面を泥田に変えた。
当然その中を通り抜けてきた俺たちの体にも泥はつく。
そして文珠の効果が切れはじめたことでもとの固さを取り戻したらしい。
つまり俺たちは下半身を生き埋めにされたと同じってわけだ。
上半身の泥が少なかったのは幸いだった。
下手をすればじわじわと窒息していただろう。
などとかいつまんで説明してやるとタマモは目に見えてうろたえだす。

 

「ど、どうすんのよ!」

 

「どうするって言われても…」

 

「文珠でなんとかしなさいよ!」

 

「…うむ…ない…」

 

「は?」

 

「文珠はもうない…」

 

「ちょっとぉーーー!!」

 

二人っきりの地下の穴倉の中をタマモの絶叫が響きわたった。

 

 

****************************************

 

 

「ねえ…」

 

「あ?」

 

「助かるの私たち?」

 

「助かるさ! 死んでたまるか!」

 

「そ、そうよね…」

 

「おう! 童貞のまま死んではご先祖に顔向けが出来ん!!」

 

「アンタの先祖っていったい…………ってあれ?…なんか上半身も固まってきたような…」

 

「なんだとっ!」

 

迂闊だった。
泥が地面の固さを取り戻していくのなら、繊維の間にたっぷりと泥を含んでいる
俺たちの服もまた当然固まるだろう。
このままでは体全部が動かなくなるのは必至だ。
俺の頭の中にエビフライよろしく衣をつけて固まっている俺とタマモの幻が浮かぶ。
それはなんというかとてもマヌケな光景だった。
少なくとも「絶対に出会いたくない死に方ベスト10」には入っているだろう。

 

「タマモ…」

 

「なんとかなるの?!」

 

「脱げ…」

 

精一杯真剣さを込めた瞳とともに伝えられた俺の意思。
それに対する反応はまた真剣なものだった。

 

「嫌…」

 

「けど命にかかわるぞ!」

 

「でも嫌…」

 

「俺も脱ぐから」

 

「絶対に嫌…」

 

だんだんと不機嫌になっていくタマモ。
心なしか辺りの空気も重くなっていく。
そりゃタマモみたいな美少女にとって好きでもない男に肌を見せるのが嫌だということぐらい俺でも想像がつく。
だけど今はそんなことを言っている場合じゃない。
俺はプライドより命が惜しい。

 

「あのなー…そりゃお前が俺を嫌っているってのは知っているし、そんな俺なんかに見られたくないってのはわかるけどさ。今はそんなことを言っている場合じゃないだろ? なんだったら後で文珠で俺の記憶を消してもいいからさ」

 

「別に嫌ってるってわけじゃないわよ…」

 

「はあ? じゃあなんだよ?」

 

俺の質問にタマモはクッと唇を噛んで顔をそむける。
無言のまましばらくそうしていたが理由を言わないわけにもいかないと思いなおしたのだろう、まさに断腸の思いといった声音で弱々しく口を開いた。

 

「…………ぃ…から…」

 

「は?」

 

「…………小さいから…」

 

タマモの視線は自分の胸に注がれている。
まあ確かに標準よりちと小さいかも知れない。
だが気にするなタマモ。
美神さんやエミさんが大きすぎるんだ。

 

「あー。んー。あのなぁ…」

 

「横島はきっと私のこと小さいってバカにするでしょ?」

 

「せんせん…」

 

「だって大きい方が好きでしょ?」

 

「まあそりゃあ並みより特盛の方が…」

 

「だから嫌…」

 

すっかり拗ねたタマモに俺は密かに頭を抱えた。
下手な慰めや否定はかえって彼女を傷つけ意固地にしかねない。
ならばここは勢いで誤魔化すしかないだろう。
嘘も方便と言うではないか。

 

「そうか…わかった…だったら俺も本当のことを言おう!」

 

「え?」

 

「実は俺も小さいのだ!!」

 

「は?……………って当たり前でしょ! 男に胸があるわけないじゃない!」

 

「違う! 胸の話じゃない!」

 

「え?………胸じゃないってことは…もしかして…沖縄銘菓?」

 

「なんだよそれ?」

 

「ちんこすう…」

 

「吸うのか?! って「ちんすこう」だっての! 沖縄の人に聞かれたら殴られるぞ!」

 

「え? でも前に見たときはそんなに…」

 

「ちょっと待て…いつ見たんだお前?」

 

むう…確かにクラスメートの前で裸になった記憶はあるがタマモの前でブラブラさせた覚えはないのだが?
むむむ…首を傾げる俺の前でうろたえるタマモがパタパタと手を振っている。

 

「え? あ? い、いえ…違うのよ。ほらこの間の除霊でアンタ服破いて着替えたでしょ? そん時にチラッと見えたのよ。 わざと見たとか、「あれ?意外と筋肉あるんだ?」とか「へー。なんだかんだ言っても男なんだポッ」とか考えたわけじゃないからね!」

 

「その「ポッ」ってのはなんだよ?」

 

「わ、わたしそんなこと言ってませんことよ…」

 

あからさまに視線を反らせるタマモだがここで突っ込めば薮蛇になりそうだ。
今はそんなことにかまけている暇はない。
服はどんどん固くなってきている。

 

「まあ、とにかく俺のは小さいのだ…」

 

「あれで小さいの!? どうみてもノルウェー産輸入冷凍塩サバお一人様一パック198円ぐらいはあったと思うけど!?」

 

「また微妙な例えを……ていうかお前、誰と比べているんだ?」

 

「あ…ち、違うよ、違うからね! 前世の記憶って奴だからね! 誤解したら許さないからね!!」

 

今度は何かに慌てて必死に否定するタマモ。
よくわからんが大事なことらしい。

 

「そうか…なあタマモ…お前の生きた時代から遥か時を経て男の体型は進化したんだ……特に下が………今の男の平均は高知産特選生カツオ一本分ぐらいだ…」

 

「そ、そうなの? カツオブシじゃなくて?」

 

「ああ…だが…だが…俺は…俺って奴は…」

 

「そっか…進化に取り残されちゃったのね…」

 

ポツリと呟くタマモの目には憐憫の色と同種の悩みを抱えた者どうしに伝わる親愛の情がみてとれる。
くっ…嘘のはずなのになんでこんなに心が痛い!

 

「わかってくれるかタマモっ!」

 

「あ、うん…なんとなく…」

 

「というわけで小さい同士、なにを恥じることがあろう! そんなものはない! ビバちっちゃいものクラブ!」

 

「なんか違う気が………」

 

「なあタマモ…小さくてもいいんだ。要は使えれば問題ないんだ! そんなことを気に病む必要はない! そして何より俺はお前を死なせたくないっ!!」

 

 

俺の熱弁に押されタマモはしばらくキョトンとしていたが、熱い俺の思いが通じたのだろう。
少しだけ考えてコックリと頷いてくれる。
目元がほんのり赤いのは俺の名演説に感動しているせいかも知れない。

 

「……わかった…」

 

「わかってくれたか…」

 

「うん…」

 

「だったら脱ごう今すぐに! そろそろマジでやばい!」

 

「う、うん…でも変なことをしないでよ…」

 

「ああ…」

 

だがことはそうは簡単にいかなかった。
何しろ互いの下半身がキッチリと密着したまま固まっているし、タマモは俺の上で手を突っ張っているもんだから服を脱ぐという作業にはかなり不向きな体勢なのである。
とはいえ時間をかけるわけにもいかない。
泥はますます固まりつつある。
男の衣装の単純さゆえか、それとも着古してヨレヨレだったのがよかったのか、かなり不利な体勢ながらあっさりと上半身裸になった俺の上でなんとかベストを脱ぎ、片手でブラウスのボタンを外そうと悪戦苦闘しているタマモの頬にそっと触れた。
キョトンとした顔になるタマモを刺激しないように慎重に言葉を選ぶ。

 

「タマモ…脱がせてやるよ…」

 

「え?…ちょっ! な、なに言ってのよ!」

 

「けどこのままじゃ時間がかかりすぎる」

 

そしてますます服は脱げづらくなる。と説得すればタマモも仕方ないとばかりに頷いた。
実際、まだ3つしか外れていないブラウスのボタンという現実があるのだから彼女とて拒否することは出来なかったのだろう。

 

「いくぞ…」とわざわざ声に出す俺にこれまた律儀に頷くタマモ。
傍から見れば間抜けな光景かも知れないが俺たちは真剣だ。
何しろ命がかかっている。

 

プチプチと残りのボタンを全部外すとポロリと飛び出すスカイブルーのブラ。
本来だったらタマモの金髪とよくマッチしているであろうそれも今は泥に汚れて斑になっている。
しかしタマモ…フロントホックとはお兄さんちょっとビックリだぞ。
まあ外しやすくて助かるのは事実だが。
ブラウスを脱がせ、震える手をなんとか騙し騙しコントロールしてブラのホックを外すと慎ましいながらもポロリと零れるタマモのおっぱい。
プルンと慎ましいながらも柔らかそうに揺れるそれは緊張のせいか薄っすらと汗に湿っていた。

 

「あ、あんまりジロジロ見ないでよ…」

 

首筋まで真っ赤になったタマモの声が俺の脳を通り過ぎる。
だが俺はそんなものを聞いちゃいない。
なにしろ俺の脳内では今まさに「巨大ロボ 「大煩悩」」と「正義ロボ 理性君」が熱いバトルの真っ最中なのだ。
当然、俺の本能も応援に熱が入る。
ガンバレ! 負けるな! 「大煩悩」!! ええい何を苦戦しているか!ってどっちを応援している俺の本能!
まずいまずい。タマモと約束したのだ。
ここは嘘でも「理性君」に勝ってもらわねば。
心の中で血涙流す俺の本能の声援が届いたか「理性君」のフライング・ニール・キックが炸裂する。
よし………まあ…そのまま適当にガンバレ…「理性君」…。

 

「ねえってば…腕が疲れたんだけど…」

 

「あ、ああ…すまん…ちょいと見とれていた…」

 

「な! なにを言ってんのよ!? きゃっ!」

 

「ぬふあっ!」

 

照れて手を振り回した弾みで俺の上に落ちてくるタマモ。
互いの裸の胸が触れ、そこから甘美な電流が俺の脊髄を走り抜け、脳に達してダウンしていた「大煩悩」を直撃する。
たちまち湧き出る淫靡の力によって目覚める勇者。
まずい! 「大煩悩」のポテンシャルは圧倒的だ! このままでは「理性君」が負けると思いきや………おいおいおいおい…「大煩悩」とにこやかに握手なんかしてますよ。
さすが俺の理性と常識……勝ち目のない戦いには卑屈になりやがる。我がこととはいえ情けなさにちょっとだけ涙ぐむ俺の本能の前で、和気藹々と何事か相談していた二体のロボはやがて同時に頷くと俺に伝令をよこす。
なになに…。

 

『揉んでください』と端的に言ってくれる「大煩悩」。
そりゃまずいだろ…と俺が返せば今度は「理性君」から入電あり。

 

『大丈夫…策はある』

 

そうか策はあるのか……ならば良し!………ていうかそういう意味で理性的になられると本体としてはかなり悲しいものがあるのだがそこのところどうよ?
だが汚れちまった悲しみとは別にチャキチャキと演算する部分が俺にはある。
そして出た結論は……『上策』だった。

 

「タマモ…俺たちこのままじゃ助からないかも知れない…でも…方法がないわけじゃない…」

 

「なに?」

 

「文珠だ…」

 

「でももう無いって…」

 

「無いなら作ればいい…」

 

「出来るの?!」

 

「お前が協力してくれれば…」

 

「協力?」

 

俺の胸に顔をつけたまま「うーん」と考え出すタマモ。
だがすぐに思い当たったのだろう。逆さにされたコメツキムシを遥かに上回るばねで身を起こす。

 

「き、協力ってまさか私にエロいことをするつもりっ?!」

 

確かに俺の霊力は煩悩だ。
そんな俺が協力と言い出せば結論はそこしかない。
しまった焦りすぎたかと内心で臍を噛む俺に「理性君」から緊急電文が届く。

 

『ではこのまま死ぬしかない。生きるか死ぬか好きに選べと言え!』

 

待ていっ! 貴様、理性の癖になんだその鬼畜な二択は!?
ええい! やはり俺の理性など当てにならん! やるのだ! 「大煩悩」よ!
理性の暴走にちょいと引いていた「大煩悩」が俺の命を受けシャキッと敬礼すると何時の間にか抜き放った大剣を振りかぶった。

 

『煩悩剣 Hの字斬りぃぃぃ!』

 

斬りと言ったはずなのに高エネルギービームの直撃を受け、一たまりも無く吹き飛ぶ理性。
とりあえず胸を撫で下ろす俺に「大煩悩」から通信が届いた。
ん? ああ…そうだよな。
胸を隠すことも忘れて俺の上で目に涙を溜めて震えているタマモをなんとかしなきゃな…わかっているさ「大煩悩」よ。やっぱお前は頼りになるぜ。

 

「すまん…これって卑怯だよな…聞かなかったことにしてくれ…」

 

「………うーーーー………」

 

「ごめん…お前の気持ちも考えずに…」

 

「……ちょっとだけなら…」

 

「は?」

 

「ちょっとだけならしてもいい…」

 

「はい?」

 

「何度も言わせないで…」

 

「ちょっとだけなら良いのか?」

 

無言のままのナインテールがコックリと前後に揺れる。
そうか。タマモ…お前の気持ち。お前の思い。俺は今、モーレツに感動しているぞ。
けっけっけっ。もう途中で嫌だと言ってもとまらねーぜ!いただきます。
暴走し始める俺の本能の襟首を掴んで引き止めるのは「大煩悩」。
どうした? なにか問題が?
なになに?…ふむ…そうだな。やりすぎは良くないな。
確かに調子に乗って失敗するのは俺のパターンだ。
さすが俺の煩悩。よくわかっているじゃないか。
「大煩悩」のアドバイスにしたがって俺は顔を引き締め、力尽きたかまたの胸に顔を埋めたのタマモの髪の毛を優しく撫でると、ビクッと震えるタマモの耳元に彼女が怯えないように気を使いながら囁いた。

 

「ちょっとと言うと…揉んでもいいのか?」

 

返答はない。
ただ頭がほんのわずかだけ前後に揺れただけ。

 

「…もしかして…吸ってもいいとか?」

 

「それは駄目っ!」

 

むう…この辺がボーダーか。了解しましたタマモさん。
だから首に齧り付くのはやめてくれ。
そこはあと5ミリも歯が食い込めば頚動脈だから。

 

「わかった…すまんタマモ…この横島忠夫、今より修羅となる!」

 

「え?」

 

「我が生涯と技法のすべてを賭けて揉ませてもらおう!」

 

俺の胸の中でタマモがビクッと跳ねる。
不安なのはわかっているさタマモ。
大丈夫…俺はいつか来るこんな日のためにイメージトレーニングを積み重ねてきたんだ。

 

「いくぞタマモ!」

 

「う、うん!」

 

なんか変な具合に入った俺の気合が伝染したのかこっちも気合一杯のタマモの声。
ああ、ついに俺はお前と通じ合えたんだなあと感慨にふけりつつ俺はタマモの胸に手を伸ばそうとした…けど…。

 

「なあタマモさんや…」

 

「ナニカナ!」

 

緊張のあまりハイテンションのまま声を裏返しているタマモが俺の首筋にピッタリと顔をつけたままで返事をする。
そうなのだ。
今更気がついたのだがタマモは俺にピッタリと密着しているのだ。
つまり彼女の胸は俺の胸と水も入らないぐらいにくっついている。
いくら俺が1000の技法を持つ乳師でもこの体勢から放てる技はないのだ。

 

「出来れば体を起こしてくれると揉みやすいんだが…」

 

俺の注文にタマモはギュッと身をすくめる。
しばし小刻みに震えていたのは葛藤を整理していたのだろうが、それでもノロノロと身を起こす。
途端に俺の目に飛び込む彼女の慎ましい乳丘。
少女らしいなだらかな傾斜ながら、矛盾するかのようにふっくらと造形の美を感じさせる斜面のその頂、桃色の輪の中心で恥ずかしそうにしている三角点。
正式名称「ちちくび」
ぬう…やるなタマモ…俺ももうドキドキだ。

 

「あんまり見ないでってば…」

 

不躾な俺の視線を感じたのか弱々しく抗議の声を上げるタマモの頭を撫でてやる。
突然撫でられて驚いた顔をするタマモだが驚いたのは俺も同じだ。
今のは体が勝手に動いた。
もしや奴の仕業かと思って脳内で待機している「大煩悩」に通信を送っても、威風堂々と腕を組み仁王立ちしたまま『我関せず』と言うだけ。
にもかかわらず効果はあった。
目元をくっきりと紅く染めたタマモがゆっくりと頷く。
その瞳に勇気付けられ、俺の手はこの未知なる山へと一歩踏み出した。

 

まずはセオリー。
山を攻めるには急いではならん。
どんな山でもまずは最初の一歩が肝心なのだとばかりに小さくまとまった山の麓で遊ぶ我が指部隊。
焦るな。無謀な登頂は死に繋がるとの伝令に「おう!」と答える10人の勇士たち。
鬨の声も勇ましく彼らは俺の記憶に永遠に残るであろう第一歩を踏み出した。

 

胸の下側を触られてビクッと震えるタマモ。
うむ良い。その表情は実に良い。
『主よ。落ち着くのです』と脳内の「大煩悩」が目を閉じたまま俺を叱咤する。
ああ、わかっているさマイ・フレンド。
急いてはことを仕損じると俺は10人の登山隊に慎重な登攀を指示する。
「あいあいさー」と返事をして指部隊は麓の膨らみをそっとそっと探るように徘徊し出す。

 

「ん………や、やぁ…」

 

「痛かったか?」

 

俺の問いにただ首を横に振るタマモ。
大丈夫だ。痛くなんかしないさ。
そうだろ勇士たち。
「おう」と敬礼一発返し再び動く俺の指部隊。
ゆっくりと頂を目指す…と見せかけてまた麓に下りてくる。
なんというか…まるで俺の指じゃないみたいな優秀さで様々な情報が送ってよこす指部隊。
柔らかい…しかもなんて肌理の細かい肌だ。
例え日本一の米を使い、日本一の職人によって作られたつきたての餅でもこれほどの感触は出せまい。
断言しよう。今、俺が触っているのは日本一の手触りの餅…もとい乳だ。
その連想が食欲を呼んだわけでもないだろうが俺の喉がゴクリとなる。

 

「隊長。アタックを継続しますか?」との伝令に俺は「当然」と返信する。
もっとだ。もっと俺に情報を。

 

命令に従い指たちは何度も麓と山麓を往復してみせた。
あるものは下から上へ…だが頂上を目前に引き返す。
あるものはグルリと外周にそって円を描きつつ山頂を目指し、そしてまた充分な情報を仕入れて戻ってくる。。
それぞれが連携しつつそれぞれの方法でアプローチしていくうちに送られてくる情報はますます増えていった。
今なら指先で彼女の胸の中を流れる血の流れまで感じ取れること間違いない。
その証拠に俺の指はタマモの胸が汗でしっとりと濡れ始めていることを察知している。

 

無論、俺の体のほかの部分もサボっていたわけではない。
目も耳も鼻も、タマモによって休戦を命じられた舌と泥によって戦闘不能になっている下以外はその能力をフルに発揮して情報を収集している。
そして今、耳から「緊急」、同時に目からも「至急」との電文が届いた。
気がつけばタマモは閉じた目から銀色の雫を零しながら何かを言っている。

 

しまった! やりすぎたか?!と慌てた俺は脳内で目を閉じたまま仁王立ちしている「大煩悩」に救援を要請するが、彼は無言のまま腕を組み続けなんのリアクションも返してこない。
まさか…裏切ったのか「大煩悩」!! とうろたえる俺に耳から今度は正確な情報が届いた。

 

「いゃぁ…いゃぁ…」

 

囁くようなタマモの声は紛れも無く泣き声だ。
やはり俺はやりすぎたらしい。フォローしようにも「大煩悩」は沈黙したまま。
なすすべも無く動きを止めた俺めがけタマモが崩れ落ち彼女の唇が俺の喉に触れた。
すまん…タマモ…調子に乗りすぎた。
いいさ…仕方ない…俺が悪いんだ…。
諦観にも似た思いに支配され、俺はタマモの牙が俺の首に突き刺さる瞬間を待つ。
だが痛みはいつまでも襲ってこない。
かわりに濡れた唇が喉を小鳥のように啄ばむ感触が俺の体を走りぬける。
なんだコレは?
目よ!耳よ! 状況はどうなっている?!

 

「なんで…焦らすの………」

 

「え?」

 

「焦らしちゃやぁ…」

 

耳がもたらした彼女の言葉に俺の脳は思考を停止する。
だが、まるでそれを待っていたかのように、今まで瞑目していた「大煩悩」の目がクワッと見開かれ金色の輝きがあふれ出した。

 

『我、勝てり!』

 

「大煩悩」の一言で凍結から解除される俺の各部。
そうか…お前はこの時を待っていたのか…スゲェぜ「大煩悩」…お前って奴はやっぱ最高だぜ!

 

『主よ。今こそ甘い言葉を!』

 

「おう!」

 

思わず口に出た返事にビクリと跳ねるタマモの体を抱きしめ、俺はベソをかいたまま俺の首筋を甘噛みしているタマモの頭を抱く。

 

「タマモ…すまんかった…お前を大事にしすぎた…」

 

「ううん…嬉しいけど……でも…ちゃんとして…」

 

「おうともさ!」

 

まだ首筋を甘噛みしているタマモをそのままに俺は手を二人の胸の間に差し込んだ。
大丈夫。これだけ隙間があれば俺の5センチの爆弾揉みには充分だ。
いくぞタマモ!
総動員された指部隊がそれぞれの方向からタマモの乳房の中心目掛け侵攻を開始する。
有体に言えば「揉む」ってやつだ。
まだ幼いかすかに残る硬さが乳肉を通して伝わってくる。
ソフトに、あくまでもソフトにだぞ。わかっているな指部隊よ。

 

「あ…ん…や、やはぁ…そんないきなり…」

 

俺の首筋でタマモの吐息が漏れる。
凄くくすぐったいがいい感じだ。

 

『主よ。まだ天辺を攻めてはいかんですぞ』

 

マジか? だが今の俺はお前を信じている。従うとも。
俺の指示に従い指たちはそれぞれの方向から侵攻を継続する。
乳房の中に隠れた芯のような固さ。
俺の指はそれを解きほぐすかのように蠢く。
今の俺の指の動きは一流のピアニスト並みだろう。
その証拠に俺の首筋から漏れる吐息は天上の音楽よりも美しい。

 

「んぁん…駄目……駄目…そこ…強すぎる…の…」

 

なんだと?指部隊よ。指令を無視したのか?
痛がっているではないか?!営倉ものだぞコルァ!

 

『主よ。落ち着くのだ』

 

わかった「大煩悩」。お前はきっと正しいはずだ。

 

「……駄目……強すぎて………おかしくなりそう…」

 

「おかしくなってもいいさ…」

 

「あぁぁっ!」

 

俺の言葉を引き金にビクンと仰け反るタマモの白い喉が俺の目を焼く。
なんというか…すげえ綺麗だ。
今、この時、俺は確かに最高の女を悦ばせている。
仰け反ったまま小刻みに痙攣していたがゆっくりと俺の胸に崩れ落ちるタマモ。どうやら軽く高みに昇ったらしい。
よくやった指部隊。帰ったら二階級特進だ!

 

『主よ。ここで気を抜くのは下策』

 

了解だぜ「大煩悩」。指部隊再侵攻だ!
再び動き出す指部隊。
今度は先ほどとは違って乳房の中心に向けて侵攻じゃない。
どちらかといえば周辺の征圧だ。
伝令によれば乳房の真ん中の固さは薄れたかわりに、今度は全体が張り詰めた水風船のように固くなっているとのことだ。
「ほぐせ」との命令を忠実に実行する我が精鋭。
指が動くたびに俺の上でタマモの華奢な体が跳ねる。

 

「あっ! うっ! やぁん…い、今は駄目っ!」

 

「どうして?」

 

「だって…だって…あぁぁぁん!」

 

返事はないというか出来ないのだろう。
それほど指部隊の威力は絶大なのだ。
だが俺はタマモの声をもっと聞きたい。
そうだよな「大煩悩」?

 

『御意…』

 

よっしゃ!ナイスシンクロ!さすが俺の煩悩だぜ!
いくぞタマモ。覚悟はいいか?!

 

「え? な、なに?」

 

「タマモー!」

 

怒涛の進軍を見せる指部隊。
ソフトにかつ繊細に彼女の二つの膨らみをこね回す。
変幻自在、神出鬼没のその動きにタマモはなすすべも無く翻弄され、俺の胸の上で跳ね回った。

 

「あ、あ、あぁぁぁん」

 

心なしか手の中でタマモの胸が膨らんだ気がする。
指部隊一番のナイスガイ、万能選手の人差し指に確認の指示を出せば力強い返事が返ってきた。
胸全体もそうだが顕著な変化を見せた部分があると彼は言う。
彼女の乳丘の頂点を守るように広がっている桃色の乳輪は今、紅く染まりそして盛り上がってきていた。

 

『主よ。そこを攻めるのです』

 

ラジャーだ「大煩悩」。
俺は偵察していた人差し指に更なる威力偵察を命ずる。
指示を受け忠実な人差し指は桃色の輪をなぞるように徘徊する。

 

「あっ! あああっ! いゃあ…それいやぁ!」

 

よし効いている。タマモの声が一オクターブあがり体がまた跳ねる。
第二陣、いぶし銀の中指君の出動だ。
ぷっくらと膨らんだ乳輪を人差し指とともに抓むべし。

 

「ひうっ!」

 

捏ねるべし。

 

「はあぅっ!」

 

引っ掻くべし。

 

「あっ! あっ! あっ! あーーーーーーーーっ!」

 

長く尾を引く嬌声とともに崩れ落ちるタマモ。
いかん!指部隊、山崩れに巻き込まれるぞ一時撤収だ。
スポンと手を引っこ抜き、震えるタマモの背に回して髪の毛を撫でてやる。
荒い息を吐いていたタマモが顔を上げ、涙に潤んだ瞳が非難をこめて俺の目を覗き込む。
うお! なんちゅー色っぽさだタマモ。
すまん…今までお前をガキンチョと思っていた俺がバカだった。

 

素直に謝罪しようかと開きかけた口にタマモが襲い掛かる。
濡れた唇が俺の唇と合わさり、突然の反撃に固まった俺が何のリアクションも示せないでいるとおずおずと彼女の小さな舌が俺の唇を割って俺の口腔へと侵攻してきた。
最初はおずおずと動いたいた彼女の舌は俺の舌を見つけると激しくうねり、まるでヘビのように絡みつく。
タマモへの攻撃で乾いていた俺の口に流れ込むのは彼女の唾液。
甘い。とてつもなく甘い。頭の芯がくらくらする。
目を閉じ一心不乱に俺の舌を舐り唾液を流し込み続けるタマモの舌をお返しとばかりに強く吸うと彼女の目が見開かれそして焦点を失っていく。

 

『主よ』

 

ん?どうした「大煩悩」?今、激しく良いところなんだが?

 

『申し訳ない主よ。だが乳を忘れておられるかと』

 

おお。そうだった。と意識を戻せばタマモは俺の口を蹂躙しながらタマモが体を小さく揺すっていた。
これはなにを?

 

『おそらく先っちょを主にこすり付けているのではないかと』

 

なんと!事態はそこまで切迫しておったか!

 

『御意』

 

了解だ「大煩悩」。もう良いよな。

 

『ころあいかと』

 

うむ。感謝するぞ。
「大煩悩」に感謝しつつ俺はまだ夢中で俺の舌と戯れているタマモの頭を優しく押さえる。
トロンとした目で俺を見上げるタマモに心臓が跳ね上がるのを自覚しつつ、俺は彼女に囁いた。

 

「タマモ…なんかして欲しいことはないか?」

 

「う…」

 

途端にタマモの顔一面が桃色に染まる。
きっと自分がなにをしていたのか今更ながら気がついたのだろう。
いいんだタマモ。なにも恥ずかしいことじゃない。言ってくれ。
今の、いや、未来永劫、そんな顔したお前に俺は拒否権なぞ持てはしない。

 

「…………あの…………触って…欲しいの…」

 

「どこを?」

 

わざとらしい俺の台詞をまともに受けタマモの顔を彩る赤はますます濃くなった。
安心しろタマモ。きっと俺の顔も真っ赤だ。

 

「おっぱいの…先を……ねぇ…もう意地悪しないでよぅ…」

 

「任せとけっ!!」

 

恥らいながらも体を焼く欲望には勝てなかったタマモの台詞に俺の脳内で本能と「大煩悩」が喝采をあげる。
台詞一つで体中にエネルギーが満ちてくる。
凄いなタマモ。なんちゅー破壊力だ。
だが俺も男。ここでダウンするわけにはいかん!
漲る煩悩、力に変えて、俺はタマモを抱きしめグルリと体勢を入れ替えた。
下になったタマモが驚いた目で俺を見たが、俺と目があった途端に「ああ…」と小さく吐息を漏らすと唇を軽く突き出してくる。
貪るように可憐な唇を蹂躙し、後頭部に回されたタマモの手の熱さを感じながら俺は指部隊に突撃を命じた。
攻略目標「ちちくび」!
発見次第これを制圧、確保せよ!
さらに舌部隊!準備はいいか?!

 

「サー! イエッサー!」の返事も勇ましく勇躍する我が軍。
まずは先鋒人差し指。偵察から戦闘までなんでも器用にこなす彼が期待通りに俺の胸の下で自己主張していてたタマモの乳首を発見した。
すっかり固くなり小粒ながら立ち上がったそれを人差し指が横から爪をつかって軽く嬲る。

 

「んー! んー!」

 

俺と唇を合わせたままのタマモが一気に体を弓なりに逸らせる。
このままで苦しかろうと唇を放し、桜貝のようなタマモの耳に唇をよせ軽く息を吹き込むとそれだけでまたタマモの体が跳ねた。

 

「可愛いぞタマモ…」

 

「ばかぁ…こんな時に…そんなこと言うなぁ…ああっ!」

 

ちょっと乳首の横を掠めるだけでタマモの体は面白いぐらいに跳ねる。
下手をすれば振り落とされそうだ。
だがここで手加減をするような甘い男じゃないのだ俺は。

 

『確かに』

 

うっさいぞ「大煩悩」!
行くのだ中指。そしてパワーファイター親指よ!

 

俺の意を受け、出陣する三本指。
彼らの連携に敵はない。
三つの指が今やはちきれんばかりに膨らんだタマモの乳首を摘まみ上げる。

 

「ぁっ、んぁっ、あっ、ぁっ、ぁっ、よこしまっ、ぁぁぁっ…!」

 

「気持ちいいか?」

 

「ば、ばかっ!」

 

むう。まだ抵抗する気か?指部隊総攻撃!

 

「やっ! やぁ! やぁああ! 熱い! おっぱいが熱いよぉ!」

 

ああ。確かに熱い。まるで溶けてしまいそうな熱さが俺の手にも伝わってくる。
安心しろタマモ、今助けてやるぞ。
グリッと少し強めに乳首を捻るとタマモは激しく体を波打たせ、肺の中の空気を全て吐き出すかのように絶叫した。

 

「ひぁっ!ぁああぁぁあんんッ!」

 

長く続く嬌声の後にガクリと力を失い今まで俺の頭を押さえていた手が横に投げ出される。
体を起こして見てみれば、目は閉じられ、半分ほど開いた口元からトロリと銀色の糸が下に垂らし、そして胸は大きく上下を繰り返している。
どうやらまた昇りつめたようだ。

 

『お見事です。主よ』

 

ああ…だがこれで終わりじゃないんだろ?

 

『さすが我が主』

 

当然さ。だって…舌部隊がまだだしな。

 

『舐めないと約束したはずでは?』

 

お前は誰に向かってものを言っている?

 

『それでこそ我が主』

 

感嘆の意を漏らす「大煩悩」に応!と返事をし、俺はまだ呼吸を整え切れないタマモの胸を掴む。

 

「んあっ?」

 

突然の感触に目の焦点が会わないまま俺を見上げるタマモ。
やっぱスゲー色っぽい。

 

「タマモ…吸うぞ…」

 

俺の言葉が理解できないのかタマモの目はまだ焦点を結ばない。
それをいいことに俺は彼女の双乳を強めに握り締めた。

 

「ぁぁぁあああああッ!ぁぁあっ!あーーーーーッ!!!」

 

「すまん痛かったか?!」

 

慌てた俺にタマモは目に涙を浮かべながらフルフルと首を振る。
どうやら痛くはなかったらしい。

 

「………もっと強くしてもいい…」

 

「そうか…」

 

「うん…」

 

「かわいーぞコンチクショー!」

 

何かがプツンと切れた音とともに俺は彼女の胸の頂にむしゃぶりついた。
ギュッと胸を絞るようにつかみ上げ、柔らかい乳肉に押し出されるように突き出た胸の先端に下を這わせる。
今まで待機を命じられていて、タマモのディープキスに反撃しか出来なかった俺の舌は「今こそ我が力を見せる時」とばかりに踊り狂った。
さらにオクターブの上がった嬌声と跳ね上がるタマモの肢体。
これほど敏感になったところにこの攻撃は苛烈であろう。
同情するぞタマモ。止めはしないけどな。

 

「ひんっ! あんっ! ぁあっ、よこしまっ…よこしまっ! よこしまーー!!」

 

乳首の頂、平たくなった辺りにある溝を舌がほじくる。
まるで母乳が染み出すのを待つかのように。
無論、そんなものは出ないが俺の舌は確かな甘さを感じて酔っていた。

 

「ぁぁっ、っ…ぁあんッ!ぁあっ…ッ!ああああああー!! やぁ! 怖いよ…変だよ…助けてよこしまっ!」

 

すまんタマモ。今、助けてやるからな。
最終兵器「歯」よ。攻撃の時が来た。さあやれ!
「合点承知」と俺の忠実な僕が参戦し攻撃に幅が出る。
痛みを与えてはいかんと厳命された歯は命令に忠実に張り詰めたタマモの乳首を責め始めた。

 

「ひゃああッ!ぁあああぁんんんッ!! ああぁああッ!よこしまッ!よこしまぁッ!だめっ!助けてぇぇぇ!! ふあぁぁああっ!」

 

ガクガクと激しく痙攣し俺の頭をポカポカと叩きながらタマモは泣き叫ぶ。
そしてカリッとグミのような感触を歯に感じた時、ついにタマモは弾けた。

 

「あっ!、あっ!、うぁ!ひあぁあっあッ!、あっ…よこしまっ!…ああっあっあっ!やっ…もぉ…もおっ…止めてっ!……死んじゃうからっ!死んじゃうからぁぁ!!!! はああああーーーーーーーーーっ!!」

 

長く尾を引く絶叫を上げ、エビ反っていたタマモの体からガクリと力が抜ける。
体中が電気を流されているかのように時折ピクッピクッと震え、それにあわせて彼女の胸も震える。
まるでルアーを追うブラックバスのように目の前で揺れる乳首を再度咥えようとした俺の後頭部に「大煩悩」が蹴りをかまし、俺はやっと正気を取り戻した。

 

『主よ。しつこい男は嫌われます』

 

そ、そうだな。感謝するぞ。
彼に言われるままに俺はタマモの横に寝そべると彼女が正気を取り戻すまで、汗に濡れた金色の髪を撫で続けた。
それ以外のところを撫でたならまた暴走する危険があると「大煩悩」が言う。
俺もその通りだと思う。
こんな地下では時間の感覚もないから仕方ないが、かなりの時間撫で続けた甲斐があってタマモの呼吸が穏やかになっていく。
最初は過呼吸かと思えるぐらいだった息遣いも、破裂するんじゃと思えた胸の動きも今は静かにリズムを刻む。
漏れる息も大人しく「すーすー」と寝息のようだ。
……って寝息?

 

よくよく見ればタマモさん…いつの間にか俺の胸に子犬のように顔を擦り付けながら幸せそうに寝ておられました。
あー…なんか起こすのも忍びないし…しばらくこのままでいいか。
幸い文珠も出せそうだしと試しに集中してみれば、俺の掌から一気に三個がポロリと零れ落ちる。まあ当然だな。
さて、これでここから脱出するのも可能だろう。
後は固まった下半身を何とかしなきゃ。

 

『主よ。気づいておられませんでしたか?』

 

なにがだ「大煩悩」?

 

『主たちはすでに自由です』

 

おお! 言われて見れば最後は俺がタマモの上にっ!
そうか…俺って時々凄いからなぁ…。
んじゃタマモが起きたら帰るとするかぁ。

 

『それでよろしいので? 最後までなさらないのですか?』

 

ははは。わかっているだろ「大煩悩」。
今のタマモを見てみろ。
先ほどの乱れっぷりはどこへやら、こうして俺に甘えてくるコイツを今更どうこうできるか?

 

『それでこそ我が主。爽やかな顔で血涙流す姿が立派です』

 

ははは…こやつめ。

 

とりあえず自分の役目は終わったと笑顔で去っていく「大煩悩」に手を振り、タマモを起こさないように気をつけながら文珠で浄化した服をかけてやる。
「うーん」と身じろぎしたタマモに一瞬驚いたが目を覚ます様子はない。

 

ホッと一息ついて俺もまた無上の幸福感とともに沸きあがる睡魔に身を委ねることにした。

 

 


*******************************************

 

 


「ふーん…それは大変だったわね」

 

「はあ…」

 

兎に角なんとか無事に脱出できた俺たちは事務所に帰りつくと、おそらく徹夜で待っていてくれたのだろう、目の下にクマを作った不機嫌そうな美神さんにことの次第を報告する。
勿論、あのことは内緒だ。
ばれたら死ぬのは確実。
今までの俺なら余計なことを喋って自爆していただろうが、「大煩悩」という勇者を迎えた俺は一味違うのだ。
自分でも不思議なぐらいにすらすらと嘘が出る。
俺の横ではタマモが無言のままうつむいているのが気になったが、美神さんは疲れのせいだと思ってくれたらしい。
なんとかセーフだ。そもそも妖狐であるタマモは俺より嘘が上手い筈なのだから心配は無用だったろう。

 

「んじゃ朝ご飯ぐらいは食べていきなさい。タマモはどうする?」

 

「……わ、私っ?!」

 

「ええ…」

 

「あー。んと…先にシャワーしてくる…」

 

「そう?」

 

待ちなさいタマモさん。なんでそんなにあからさまに挙動不審なのですか?
そんな露骨に目を泳がせていたら美神さんに気づかれちゃうでしょうが。
ほら案の定、美神さんが少し半目で俺を見ている。

 

「ねえ…あんたたちなんかあった?」

 

「なにもないですよ…」

 

「ふーん…」

 

美神さんも確証がないのかそれ以上カマをかけてくることもなく、誤魔化せたかと内心で汗を拭う俺。
とりあえずと出されたコーヒーで喉を潤している間も美神さんは探るような視線を向けてくる。
だが大丈夫。
すでに危機は去ったと見ていいはずだ。そうだよな「大煩悩」。

 

だけど世間はそんなに甘くなかった。
突然、背後のドアが蹴り飛ばされたかのよう勢い良く開く。

 

「横島ーーーー!!」

 

バスタオル一枚を体に巻きつけ真っ赤な顔で乱入してきたのはシャワーに行ったはずののタマモだった。
彼女の剣幕に驚く美神さんと俺。
美神さんは当然だろうが、俺とてタマモが怒っている理由が想像できない。
なにがあったと思う「大煩悩」?と問いかけても返答が無い。

 

「どうしたのタマモ?」と聞く美神さんなど眼中に無いのか、タマモはそのままの姿でツカツカと俺の前にやってくるといきなりバスタオルを開いた。
俺の目に飛び込むのは昨夜さんざん親しんだ彼女の乳房。
心なしか大きくなった気もするがどうやらそれが原因で怒っているわけじゃないらしい。
「これ見なさいよ!」と指差した彼女の白い乳房に浮かぶのは黒い痣。
それはきっと昨夜の指部隊の戦闘の証だろう。

 

「まさか!? 触りすぎて腐ったのか?!」

 

「私の乳はスーパーの桃かいっ?! そうじゃなくて痣になってるじゃないの! 優しくするって言ったのに!」

 

「お前がもっと強くしてもいいって言ったんじゃねーか!」

 

「限度ってものがあるでしょ!」

 

言い合う俺とタマモ。
そして呆然と俺たちのやりとりを見ている美神さん………美神さん?
ははは…すっかり忘れていたぜ。

 

「ちょっとなにいきなり震えているのよ! 責任とりなさいよ!…「ふーーーーん…責任ねー」…ひっ!」

 

「んふふふふ…さてどういうことか説明してもらいましょうか?」

 

うわー。これは完璧に死亡ENDだ。
だっていつもの神通棍じゃないもん。美神さんが持っているのはボウガンだもん。
しかも装填済みだしー。

 

「い、いや…あのこれは…」

 

「ふんふん…これは?」

 

にこやかに笑いながら俺の心臓にボウガンを向けるのは止めて下さい。
タマモが怯えているじゃないですか。
ん?タマモ…何ゆえ俺の背後にいる?
俺を盾にする気か!
くっ! こうなったら手は一つしかない。
俺は文珠を叩きつけて煙幕を張ると後ろのタマモを抱き上げ窓へと走り出した。

 

「脱出っ!」

 

「逃げたっ!」

 

「ちょっ横島! 私ってば裸!」

 

「ええい! 細かいことにこだわるな! このままでは命が死ぬ!」

 

「そ、そうね!」 

 

窓を蹴り開け彼女を抱いたまま地面と飛び降り、背後から殺気とともに投げつけられる美神さんの怒声に尻を蹴飛ばされて俺は走り出す。
抱き上げた時は胸の中でジタバタしていたタマモも命が惜しいのか今はおとなしい。
それどころか俺の首に手を回し、ギュッと抱きつきながら俺の耳に口を寄せる。

 

「ねえ、このままずっと二人で逃げちゃおうか? うーんと遠いところまで…」

 

「それもいいな」

 

「……次はちゃんと優しくしなさいよ」

 

「善処する」

 

飛び交う矢を避けながらも、俺は笑いがこみ上げてくるのを押さえ切れなかった。
だってそうだろ?
バスタオルに包まれたこんな可愛い彼女を、お姫様抱っこしたまま逃げるなんてスペクタクル映画でもないことじゃないか?
そうだよな「大煩悩」。

 

俺の問いかけに、眠りから目覚めウオーミングアップを始めていた「大煩悩」は『御意』と微笑んでくれたのだった。

 

 


おしまい


 犬雀様ありがとうございました!!
 乳イジリのこだわりを垣間見た気分です(マテ

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