初日の出が差し込むアパート
横島の携帯がけたたましく鳴ったのは、新たな一年が始まったばかりの早朝だった。
「ん・・・・・・はぁ・・・・・・よこしま・・・・・・くぅん?」
電話の向こうから聞こえてきたのは悩ましげな女の声。
聞き間違えようもないその声は美神令子のものだった。
「んぁ? どうしたんスか? 美神さん・・・・・・」
美神からの電話に、横島の声は何処か不機嫌だった。
それもその筈。
彼の頬には大きな手形と、夥しい折檻の後が付いている。
里帰りしたおキヌやシロタマの不在をいいことに、彼は先程まで彼女と二年参りに出かけていた。
黒の和服で決めた美神に振り返る初詣客。
いい女と共に歩く優越感につい調子に乗った彼は、送り狼を敢行し見事に折檻を受けている。
「ああん・・・・・・すぐに・・・・・・事務所まで・・・・・・来て・・・・・・」
「何スか! さっきは追い出しておいて!! そりゃ、事務所に入った途端、ふざけて帯クルクルとかやろうとした俺も悪いッスけど・・・・・・アレはやり過ぎっすよ! マジで死ぬかと思ったんですから!!」
「そんなこと・・・・・・言わないで」
何かに耐えるような荒い息づかい。
いつになくしおらしい美神に、横島の態度が若干軟化する。
事務所中を逃げ回り、致命傷になりそうな神通棍の一撃を避けた記憶が脳裏から消えようとしていた。
「ったく・・・・・・で!? ナニがあったんすか?」
「横島君の・・・・・・こと・・・・・・考えながら触ってたら・・・・・・あん。 ぬ、濡れて来ちゃって・・・・・・お願い・・・・・・開いたまま・・・・・・待ってるからぁぁ・・・」
「え! 俺のこと考えながら触ったら濡れて? 開いたままぁ!?」
美神の説明に素っ頓狂な声をあげる横島。
彼の脳裏では、着物をはだけた美神が彼の名を呼びながら己の体にその指先を這わしている。
―――ぬ、濡れる?
美神の秘部―――肉の裂け目を想像した横島の鼻から、つうと鼻血が滴り落ちる。
そしてその分量は更なる想像に、ぼたぼたとその分量を増す。
―――ひ、開いたまま?
悲しいかな彼の脳裏には開いたソレは正確なイメージを結ばない。
しかし、自分のしなやかな指先でソレを開いた美神の姿は、初日の出に匹敵する程の神々しさだった。
あけ まして
おめ でとう
脳内妄想全開の横島。
そして彼の動きを決定づける一言を美神は口にする。
「お願い・・・・・・すぐに来て・・・・・・欲しいの」
―――ほ、欲しい!
ブシュッ!っと飛び出した鼻血と共に猛然とアパートを飛び出る横島。
―――令子待ってろ! 俺のお年玉はぱんぱんだぜ!!
彼は自転車に飛び乗り猛然と走り出す。
赤信号もおかまいナシだった。
彼は遮二無二ペダルを回す、回す、回す。
お正月だけにいつもより多めに回してゆく。
正にあけましておめでとう状態。
何度も車や電柱、ガードレールと接触しそうになりながら、彼は美神事務所に辿り着く。
流れでた鼻血は彼のTシャツを真っ赤に染めていた。
「待たせたな令子! 今すぐ俺のお年玉を!!」
ドアを開け、雪崩れ込むように室内に転がり込む横島
彼は令子の肉の裂け目に、己のお年玉の中身を残らず注ぐつもりだった。
濡れて開いた美神を探そうと部屋を見回した彼は、キッチンに佇む美神の向こうの
水
道
管
の
裂
あけ
おめ
ざに
め
た
あけ
おめ
終