: 2003年のコトノハ ふぇい氏&KARI−RING




SIDE:FEI

ビルにまぎれ下弦の月がゆらゆらと赤提灯を映してあかく

朝焼けは冷たく熱くはじまりにいろどりそえる今日も明日も

真夜中にじっと目を閉じ待っているコトノハの泡弾ける刹那


青竹で酌み交わす酒新年の遠き星から舞い降りる明日 1月1日
憎らしき髪を抜く癖年経ても許せぬもの多きわれなれば 1月7日
泣き虫の流した涙夕焼けに染まるドロップ甘く酸っぱく 1月8日
真夜中のジャングルジムはどこまでも星に近くてスバルをつかめ 1月9日
ポケットで大事にしてたあおいビー玉きみに会うたび思い出すんだ 1月13日
午年の最後の満月空駆けて街角に紅の目立つころ 1月17日
幸せを作る装置は右耳のうしろにあるのたまにはキスして 1月21日
この耳はロバの耳なり世の中の音を集めて光る石を生む 1月23日
いつまでも一緒にいようそれだけの言葉で強くなれる私も 1月24日
濡れそぼつ靴先凍ゆ帰り道ふと口ずさむ春を待つ歌 1月25日
年月がうがったほころびぽろぽろとふたり分の過去こぼれ落ちてく 1月26日
恋愛の化学変化はゆっくりと爆ぜないように熱発すべし 1月27日
音楽は発作のように沸いてきて青信号でステップ踏んで 1月28日
青白く激しく燃える恒星の光のごとしきみが微笑む 1月29日
心臓が壊れかけてる雨の夜も必ず明ける明日は晴れる 1月30日
爆竹の煙に酔ったひとびとの顔あかあかと夜を照らして 2月2日
永遠に咲く花はこの地上にはないと知ってて祈るのが恋 2月3日
じわじわとヒトの体の中からも春を感じるセンサー芽吹き 2月3日
宵闇の鏡に映る憂い顔励まし我は夜を駆け抜ける 2月5日
満月にぬらりと光る赤いいろ我を彩るいのちの海の 2月5日
地平線ほのかにけぶりそら霞み我追い越して去っていく冬 2月6日
5杯目の珈琲はラッテで尖ってる心を少しミルクで薄めて 2月8日
「またね」って書いて破ってキスだけを落として出てく今が怖くて 2月11日
そうなんだそうじゃないんだ 本音だけ言葉にしないやさしいきみは 2月12日
ぬる燗の煮え切らなさと照れ笑い解けた靴ひもほっとけないから 2月13日
「ほんとだよ」浮いては沈むストライクストレートだけはずすのがきみ 2月13日
ゆらゆらと我の背中に増えていく過去は熟成後こそ美味なり 2月17日
食後には胃腸にやさしい方程式解けたご褒美に甘いキスなど 2月18日
臙脂色鈍色に染む黄昏に生まれいずる我いよいよあかし 2月20日
お日様とともに回る日々我運ぶ線路は続くよちょっとそこまで 2月26日
こんなにも近いのに遠いケンケンパきみまで3歩背中で測る 2月28日
欲しいもの思いつかないなんていうきみのわがまま欲しいよぼくは 3月2日
きみがいてぼくがいる場所 お互いを感じるうでがぼくたちの家 3月3日
干からびた黄色い花が悲しくてタイムスリップコンタクトはずす 3月4日
刺すようなにおいを放つ白い壁塗り込めた過去思い出せない 3月7日
メールボックスはパンク寸前長じてなお捨てられないもの多き我なれば 3月9日
ずるずるとうっとおしいこの鼻水も私が戦っている証なり 3月11日
うす曇愛すればこそ傷つける無害だなんてもう言わせない 3月13日
好きなもの好きだと言えた昼下がり鏡の中の我うつくしく 3月14日
満天の地上の星々いくつものただいまおかえりおやすみなさい 3月15日
はなの色こころの色もとりどりにこの惑星(ほし)染めるfor your tomorrow 3月17日
笑えないユーモアの達人苦笑さえ通じない手強し敵は 3月20日
花のない海のこなたは春知らぬくになり夢に暁を忘る 3月25日
地平線かすんだ空に高く低く醒めない夢を飛んでいく我 3月28日
透明なきみの涙の染みこんだシャツ洗いつつ泣いてみるわれも 3月31日
みしみしと吾が心にも芽の吹いて花咲く季節夢見心地の 4月1日
寝穢く光に溺れ愛すべき人と何度も出会う春の朝   4月3日
くちびるが触れてる間目を閉じたきみの心はどのへんにいる? 4月7日
ゆらゆらと揺れるわが影道連れに探しに行こう明日へゆく道  4月7日
ときの声 戦は終わり血は乾く苦い気持ちは忘るるなかれ 4月9日
アスファルトはねる水音 街中が無口になって柳が揺れて 4月10日
冷え切ったシーツの海に沈んでくだれかのにおい探してる我 4月13日
美しいものは正しいなんて空焦がす炎の赤も地を染める赤も 4月14日
ニビイロに枯れてく春の霞空きれいな言葉はいらない今日は 4月15日
ばっさりと春霞晴れてせまりくる極彩色の今日という海 4月17日
手のひらに赤橙黄緑青藍紫透かしてみてよ空は何色? 4月21日
叫んでも叫んでもなおこの胸を焼く想いチリチリと太陽を撃て 4月24日
大空が泣いている日にぽっかりとただ生きているだけの時間に 4月25日
ぶすぶすとトマトの熟れる音がして午後の空気はまぶたに重し 4月28日
指先でペン弄ぶ癖だけが忘れないでいる遠い日の恋 4月29日
時計ごと腕が体がくちびるが心臓となれりきみ待つ黄昏 5月7日
好きですという言葉だけしかなくておなかがすくよきみに会いたくて 5月8日
ときどきは思い出すべしぐるぐるとはじめの一歩が怖かったころ 5月9日
三日月が追いかけてくるひっそりと泣きたい夜もたまにはあるよ 5月11日
どんよりと空があかい夜心臓が軋んで燃えて雨まで溶かす 5月12日
カツサンド+ツナサンド<野菜サンド 赤と緑は体にいいから 5月13日
雨の夜に走る流星暗闇を突き抜けてく光急げよジープ 5月14日
ほろ苦い言葉は萎えて紫煙だけきみの背を追う次第に遠く 5月15日
ゆらゆらと水面を目指す泡ひとつふたつみつ背を向けたまま言うアイシテル 5月16日
やわらかい鼻の子猫が丸くなる逃げたねずみは夢の中かな 5月20日
青空にきみの紙ヒコーキ重力と浮力がつくるキセキがひかり 5月22日
背中から夜が次第に染み込んで吾がくちびるはもうきみを呼び 5月24日
けんけんぱ振り返ったらきみがいる知っているからまたけんけんぱ 5月27日
白く白く煙がきみを包みいく煙草の香り甘くて苦い
肌と肌触れてなくてもぬくもりが伝わってくるそばにいるよ 6月1日
往来に傘の花咲くずぶ濡れのアスファルトごと泣くギシギシと 6月15日
いつまでも暮れぬ梅雨空泣き止まぬ我に寄り添う君のてのひら 6月23日
海原の青染めていく黄土色われら導く大地のかけら 7月9日
太陽がゆがんで見える知らぬ間にブラックホールとなった吾ゆえ 7月26日
ふりだしに戻る勇気よ秋の夜の空にまたたくあかい色の星 9月1日
闇空に金眼(きんまなこ)ひとつ湖や森や砂漠を映して光り 9月11日
いわし雲タンクトップの肩口にくすぶる夏を透明にして 9月13日
粉々に砕けた硝子輝きを失わぬまま宝箱の中 9月15日
どこにいてもそこが懐かしい場所になるあなたのかおりの風が吹くから 10月17日
疲れ果てなぎ倒されたきみとぼくやさしく揺らし電車は走る 12月10日



SIDE:KARI−RING

おとそつぐ小さな御猪口朝顔の花びらの形した4人分 1月1日
死ぬときは自分に満足いくときだとそれなら今は死ねないと言う 1月7日
右腕と左手の甲で涙ぬぐう幼き子の髪かきまわすきみ 1月9日
唇が動くたんびに白い息かかるくらいだ アノホシニチカエ 1月11日
炭酸が喉焼いていく水色のビー玉中に閉じこめたびんの 1月13日
生ビール持つ手を我につきつけて「飲んですっかり忘れてしまえ」 1月19日
ぎゅっとして背中に回る君の手の大きさなどに酔いたい今日は 1月21日
(友人の結婚をことほぐ歌)
やわらかなひかり少しずつ積もるようふたりの時間がこれから流れる 1月24日
ずっといっしょにいるって事がこんなにあたたかいものだということ 1月24日
水鳥の何百羽がゆらゆらと土手の菜の花見る吉野川 1月25日
きみがほしいたとえば君の過去はきみのもので未来はもっときみのものでも 1月27日
結局は心の機微も神経を流れる微弱な電流なのだ 1月28日
オリオンがこぼれるように降る息が白いことすら忘れたように 1月28日
星は生まれて死ぬんだって魂がその核の中にあったりするかも 1月30日
遠くの他人より近くにいるきみ頼る妖怪ポストに手紙を入れない 1月31日
濃い紺の空はらはらと横切って私の髪に落ちる粉雪 2月2日
ポイントはごとりと動くシグナルはひそりと変わる明日は立春 2月3日
水凍るほど寒い上空の風に磨かれきみに降る雪 2月4日
内壁がはがれ落ちてくぬるりとした感触女は子をなす生物 2月5日
単細胞同士が出会い分裂を繰り返すことを発生といえず 2月6日
紅梅がほころぶ音を聞きにいこう川面の風がまだ冷たくても 2月7日
食卓に湯飲みと冷たくなったお茶メモにも「飲んでください」の文字 2月11日
またね、明日ね、今度ね、一体ほんとは会いたいのだろうか 2月11日
口にして形に残せる程度ではないこの胸がきみを求める 2月12日

本音という永遠の嘘人間は攪拌可能な心だけ持つ(関口さん) 2月13日

マフラーをはずしたくなる3粒のチョコレートきみがうけとってくれたから 2月14日
都合のいい思い出ばかりをモザイクのようにあつめて羽に仕立てる 2月18日
ああ理科はこんな問題だったんだ昨日の入試は遠い存在 2月19日
つややかに髪梳く指の赤真空から星が生まれたみたい 2月21日
充電の赤いランプが消えるまで携帯電話の着メロはオフ 2月27日
すごく近い部分とすごく遠い部分がきみに混じってる僕はきみがほしい 3月2日
髪と爪少しずつ僕に触れてくる責任とって僕に預けて 3月3日
複数形つかっていることためらわず君に話せる僕の今の幸せ 3月3日
ぽつぽつと春雨のような形して白のコートを刺す冬の雨 3月7日
着信やメールにぴりぴりせずにいる時間はゆっくりゆっくり流れる 3月7日
「二ノ一」と書かれた竹の妹のものさしでなければ紙切れない我 3月10日
善人で軍人であるパラドックス「悪いやつなら殺してもいい?」 3月12日
好きな人がいます恋だと思います手の届かないあなたが好きです 3月13日
そんなこといわれなきゃ僕はこの気持ちに気づかずにいられたのに 3月14日
蛍舞うさとの竹林さわさわと春への風がふきぬけていく 3月15日
くもりでも雨でも雹でも太陽は明日の朝は必ずのぼる 3月17日
満月が右に左に真東に向かって蛇行する線路脇 3月21日
和傘なり雨を包んでしっとりと紙のにおいを漂わせている 3月25日
限界を超えるのが夢!なりたいと思うならなる自分でそうする 3月28日
押せ押せのくせに押されてひくきみの最後に笑った顔が大好き 3月31日
背中にはきみがいるから前だけを見るあの入道雲にのぼろう 4月2日
信頼が揺らいだのかと思っていたきみが僕の背を庇うようになったから 4月3日
笑った顔みたいからまたくすぐってみたりするのは反則ですか 4月7日
殴れ飛ばせ本音と本気は違うんだ。好きなら端からあきらめるなど言うな 4月8日
従軍の記者まで殺す戦場の狂気と恐怖を画面越しに見る 4月9日
勢いよく雲は流れる餅つきのうさぎをかすめ雨をひきつれ 4月11日
あたたかな雨だかえるの傘たたみかるがる降りゆく粒に濡れよう 4月13日
略奪も虐殺も強姦も正義のための世界はなんて単純なのだろう 4月14日
花の軸をあっという間に覆い隠す新緑をぬらす春の霧雨 4月15日
海に降る雨藍色の水平線を溶かしていくそれはつながっているから 4月21日
夕暮れにアクアマリンのピアスはずし笑うしかない僕はきみが好き 4月22日
正直になるな自分の気持ちなど気づくなきみが僕をすきなど 4月24日
自覚したきみがすきだと大いなる一歩の次はどうしたらいい? 4月25日
とんでもない「好き」なんてことあるわけない触れたいだけだし知りたいだけだし 4月28日
キスだってするのに恋人とは言えず利用されるなんて思いこみ 5月8日
夕暮れの中ドラマティックなシチュエーション「好き」も「キス」もきっと憐憫 5月8日
じゃあ一歩踏み出せばいい僕はきみを好きなんだから近づきたいなら 5月9日
ざまあみろお前と並んで走ってくやつは俺だよ。お前が好きだよ。 5月10日
どきどきするお前はお前の夢を見て俺は俺の夢追いかける 5月11日
ぶん殴られるより効いた「そんなことさせるために助けたんじゃない」 5月12日
時速100キロの車はぼんやり橋を照らす3秒くらいで駆け抜けるのに 5月13日
願わくば幸多かれと願うことできるんだ今きみの背中にいる 5月14日
前だけを見ているきみの背きりつける誰かは僕が殴り飛ばすから 5月15日
愛だとか好きだとかそういうんじゃないいっしょにいたいいっしょに走りたい 5月16日
のびやかに君の背中のカーブに沿い真っ白の猫ぐるぐると鳴く 5月21日
風もなくほとりほとりと垂直に落ちる白茶の竹の老いた葉 5月23日
最初から最後までただ全力で走る君の背に届けこの声 5月24日
好きだって言われなくても俺のこと好きだと知ってる真っ赤な耳たぶ 5月28日
知っていてもほしいと思う好きだという言葉は耳にここちよいから
がうがうと風吹き飛ばす白い雲紅い麦わら碧の睡蓮 6月1日
真緑のレモンバームを折りて取りつるす軒先ぬらす細い雨 6月15日
椰子の葉がざわざわと鳴るヤドカリが足音残す夏35度 6月24日
声高に叫びたいんだここにいる君が世界一だということ 7月9日
太陽に向かって咲く向日葵だってうなだれたりする飛行機雲背に 7月27日
きりきりと締め付けるよう曇天の間中にひとつ紅い惑星 9月2日
まだ薄青々としてもちつきの兎に遠く届かないでいる 9月11日
幾層も夏の残りを反射してうろこ雲は赤はっきりと赤 9月14日
力ある言葉が心動かせた例えばきみを好きということ 9月16日
やわらかな秋の光に包まれて紅葉の道とんでいく鳥 10月18日
うすぎりのりんご並べて焼くチーズケーキを君の手元へ  12月10日








2003年12月8日

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