ブランデー入りの紅茶用意する目覚ましなんかで起きないきみに   10月7日

「ひとつだけ誰かに誇れることがある」職人といわれる人が笑う  10月8日

明日への風が吹いてるベランダでビール片手に月見の夜は   10月9日
 
せみ時雨すだれ虫かご甲子園つむぎだされる盛夏の記憶   10月10日

ぎゅうぎゅうに痛さや辛さで膨らんだ僕はやさしくなんてなれない  10月13日

死んだはずの男は名前を呼び捨ててきれいな色した林檎手にとる   10月14日

ぱきぱきと銀の光をまきちらす上限の月はコンビニの上   10月16日

複数形使えることは正面を向き合っても息苦しさのない距離   10月17日

30種類以下だろう私の体を作る原子など  10月17日

一目惚れするほど無防備ではないけれど隣のきみの仕草などよし  10月19日

左側かさ差し伸べる人もなくほろほろと羊歯の胞子こぼれる 

木製のバット蹴り折るきみどうかこのプライドなど叩き壊して   10月21日

都合よく記憶喪失になる人をドラマは毎回救っているけど   10月21日

あれもこれもそれもと複雑にした張本人は隣で舟こぐ  10月23日

ぎゅうぎゅうとそれでも抱きしめつづけてる心がすこうし落ち着くために   10月24日

真四角の空間にいるころころと胡桃ころがるひとり月の下   10月25日


於斗矢さん  得るものと失うものは等しくて方程式の解は不定だ   10月26日


1か0かイエスかノーかで線引ける解見つけられず数学教える

厨房に立つ人砥石を取り出して南瓜切るため包丁を研ぐ   10月27日

クリスマスカラーといって日本では恋人たちの色赤と緑   10月28日

白と黒冬の上着を用意してスキヤキ鍋など買いに行く午後   10月30日


関口さん  抱いてごらんすぐそばにある温もりが必ず君に微笑むだろう

トントンと麺打つ師傳(しふ)の腕を振り五度目で細い拉麺となれり   10月7日

明日のこと笑顔で話せる毎日つきも星も風も味方にして  10月9日

真っ白なビールの泡を懐かしく思う盛夏の思い出のごと
10月9日

痛くても痛いと言えない痛みがわずかなやさしさをさえ酸化させ  10月12日

あおりんごあおいいろのまま売られてく夕焼け色に恋焦がれつつ   10月14日

酔うほどに香るこの花暗闇を甘く湿らす金銀の花  10月16日

僕らとかわたしたちとかいう音で暖を取る夜風が強くて   

空白を求めてじっとひざ抱え今宵も耐える原子の重さに  10月17日

火のついた硫黄のようにじりじりと人の気持ちの燃えることもあり  10月18日

髪の毛の一筋さえも残らぬよう溶けてしまおう初秋の雨に   10日19日

脱ぎ方を知らぬ鎧を着たままで一見鐘情焦がれ続けてる   10月20日

月曜日のど乾かしたシナプスが頭蓋の中でカサコソ揺れる   10月21日

爆弾が欲しくなる夕思い切り派手に壊して熟睡の淵へ  10月22日

古傷をいたわる手にも牙立てる私は野良犬都会に吼えて   10月23日

ゴウゴウと冷蔵庫鳴く夜腕が肩がほの寂しくて我を抱く我  10月24日

青空が心地よく澄み焼き芋の黄色が生える空腹の秋  10月27日

唐国のカボチャはみどり西方のあかいカボチャに恋して熟れて

木枯らしの冷たい渦がきみの肩抱けないでいる僕に微笑む   10月29日

満席の羊鍋屋はにぎわってガラス窓白く曇る冬近し  10月31日

手袋が嫌いな私の右手はあなたの左のポケットが好き





週末に行ける居酒屋生ビールジョッキで飲み干す。明日が休みなら   11月1日

にんじんのしゃきりと伸びた葉をつまむ指が覚えてるああ故郷のにおいだ   11月2日

達筆も出世の条件筆を持て習字する子ら平然という

於斗矢さん  神帰る社の庭の紅葉より濃きくれなゐを取りて口づけ   11月3日


人に言われてすぐ直すだけの計算や美術は私の中に残らず    11月4日

未だ青き楓を透けて射すグラデーションのかかりし陽光   

大人になることにあこがれてた15体育館の壁蹴飛ばしてた   11月5日


於斗矢さん  ぎこちない笑みにさよならできたなら大人なんだと決めた十五は   



手を伸ばせばなんでも手に取れること信じてた15の冬の霜柱立つ朝  

ぶーんと低速でまわる羽根の音蜂と機械の周波数から違う   11月10日

満ちていく月さえぎられる星光あふれる明るくなりすぎた夜   11月10日

かさりというかわいた声あげながら散る銀杏など追いかけてみる   11月12日

着メロはいつまでたっても「fragile」きみの隣でDLしたから

覚えていたくないこと他人にはただの思い出懐かしそうに言う  11月13日

ものすごく好きだという気持ちどれくらい人は保っていいられるのだろう   11月14日

川原には丸い小石海辺には灰色の砂水が運んでくるもの   11月15日

やわらかく愛を歌う声僕たちにとても似合わないから聞いていられる   11月16日

両手が抱えた宇宙の「無」の感覚何もないのが存在している   11月17日

パップラドンカルメの幻が浮かんでは消えるひとりの食卓   11月18日

目に見えるくらい強い輝きを持つ流星の降るグラウンドに立つ   11月19日

母の手は偉大なりなんて当たり前の感慨を帰省するたび口に出せない   11月21日

繰り返しキスするきみの唇のやわらかさなど思い出してる   11月22日

まだ青くうっすらとしたガスまとう牛の首飾りらしき星星   11月24日

アルコールの香り漂うだるげな日曜の夜カウンターにひとり   11月25日

ひとりいる柱時計とにらめっこした夕暮れの畳のにおい   11月25日

夕虹の二重にかかる左手は山右手は川半円形の  11月26日

ストーブの芯を回して銀行でくれたマッチで火をつける母   11月27日

落ちてるのかのぼってるのかわからないよだかの星をよぎる流星


老酒の雫のごとくひとの心も酔いを増すひとと出会えば   11月1日

牛蒡という漢字はあるのに牛蒡など食さないという漢字の国では   11月2日

お習字をお絵かきのように楽しんだ私の書く字褒める人なし   11月3日

十五にして解けなかった問いの答え突然振ってくる立つべきとしに   11月4日

一人きりのオフィスに響くたくさんの声機械という生き物たちの声  11月8日

宙空を泳ぐ三日月儚さが妖しさとなり暮れいくほどに
  11月10日

コートなどいらないけれど風が吹けば聞こえる枯れ葉たちの歌ごえ  11月11日

理由もなく携帯が鳴るのを待ってる秋の空気は媚薬のようで   11月12日

さようなら フラッシュバックするきみの声 着メロみたいにいつでもどこでも   11月13日

Only OneがOne of Themになった携帯の番号さえ忘れた今では   11月13日

大海のうねりのように高く低く果てなく続く好きってキモチは  11月14日

雨降りは空の雫の旅立ちの儀式なんだときみの子守唄  11月15日

きっと今星が降ってる目を閉じて耳を澄まして宇宙を感じて   11月17日

頭からまっさかさまに落ちるなら味噌汁の海カツどんのベッド   11月18日

流星は雨雲の向こうで降っていていくら待っても出会えないふたり  11月19日

母の背は追い越せても追い越せない25で母になった母を   11月20日

好きなものお預けにする老毛病例外だよね?私とのキスは   11月22日

冬空に震えるオリオン道しるべ失いし我の吐く息も凍り   11月23日

のどを焼く液体恋し月のない夜は長くて星は遠くて   11月24日

カタカタと時計の針は回る回る飽くこともなく諦めもせず   11月25日

雨上がり西日の差して窓燃えてきみの泣き顔虹にけぶりぬ

ヒーターを冬の夜の友とする我ぬくもりさえあればなんてウソ   11月26日

人知れず小さなあおい炎となり冷たく熱く燃え続けたい  11月27日

水音に蘇り来る遠き日に見上げた秋空タバコのにおい   11月29日

冬至前午後5時前のたそがれに背中を押され流れる街を
  11月30日


橙の柿くっきりと夕暮れの薄い青色切り取って落ちる  12月4日

ゆず半分みかん半分あと私風呂桶の中で今日が昨日になる

灰色の空気にひらり舞い落ちる雪画せよ我の白いセーター  12月6日

魔方陣で召還しよう真っ黒な空から落ちる一片の雪  12月7日

「確かめる」ためにハグする肌と肌触れ合った個所から流れ込む気持ち   12月8日

関口さん 海風はひたすら冷えて暖かき柔肌だけが僕の真実


吹き付ける風この黒き海の向こうため息あつめた 12月9日

固体から液体になる温度すぐ通していく白く見える雪  12月10日

生命と非生命に引く境界線海大きすぎて引けやしないのに   12月11日

きいいんと戦闘機が空切り裂いていく人を殺すための訓練   

人間の恋の季節は四六時中ころがっているから蹴飛ばしていく   12月12日

よっぱらって倒れこんだら温かな君の手があるこういうのがいい   12月15日

びしゃびしゃと無遠慮に降る冬らしくない雨の夜爪を切りすぎる  12月16日

淡い色のピンクが似合う少女らの濃い青色のアイシャドウかなし   12月17日

明日ならいつでもくると疑うこともなくいた20歳 クリスマスの夜   12月19日

なんの為に私はここにいるのだろうひとりモニタと向かい合う朝   12月21日

何故あの時あんな稚拙な判断しかできなかったのだろうあたしは   12月23日

雪照らす街頭のあり真っ黒な空から落ちる丸くない結晶   12月24日

そばにいることが当たり前だと言い切れるくらいいっしょにいてくれるきみ  12月25日


関口さん 来年はすぐそこにあるやわらかくあたたかいままの君のてのひら   12月26日



そこまではとんでいけないけどたとえれば言祝ぐ言葉を電報にて打つ   12月26日

青い空をバックに浮き立つトーキョーの建造物の群れはロウソク  12月29日

石畳落ち葉の舞いは哀しくて諦めること知ったその秋   12月6日

白銀はものごとをただ清らかに縁取る魔法我にも積もれ   12月7日

きみのほお思ったよりも冷たくてきみの体温確かめたくなり   12月8日

降る雪はすべての色を征服しでも永遠はこんな色じゃない   12月9日

60%以上は水で出来ている私の体も大海のカケラ  12月10日

境目が分からなくなり新月が闇夜に溶けても明日さえくれば   12月11日

凍りつく夜のしじまに猫の声わたしも恋がしてみたくなり

真夜中に咳をするきみ哀しくて明日の天気を気にしてる僕   12月13日

強い酒苦い流れに潤びてく記憶カサカサと泣いてみたくなり  12月16日

真夜中に爪を切る母もういいのと親をなくした少女の声で  

唇を彩る紅に憧れて明日ばかりみてた16のころ   12月17日

灯りのない夜は長くて雨雲がやけにまぶしい寝返りうてば   12月21日

後悔が途切れない夜熱燗でおかしい映画みてやり過ごし   12月22日

雪粒は水の結晶霧雨は温かい雪雪よ降れ降れ  12月24日

木漏れ日と木陰のように震えあう熱くも冷たくもないでもHAPPY   12月25日

永遠という魔法解くきみの呪文さようなら青ざめる空は澄み  12月27日
ふぇいさん & 関口氏 & 於斗矢さん & KARI−RING

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