あかい服を買ったあかはなんのいろおわりではなくはじまりのいろ 7月30日
はじまりのおわりに切った髪わかりやすすぎるいいわけがある 7月30日
ショートカットにするたびやさしくなるあの子偏屈になるわたし 7月31日
思い切り短くしてください髪といっしょにくだらないもの捨てられるよう 7月31日
くだらない思い出がぎっしり詰まった細胞でわたしはできてる 8月1日
細胞は培養できても人間は培養できない心はどこで入るのだろう 8月1日
葉緑素はなくても光と風と音楽で育つんだ心は
8月2日
先天性の聾者に音楽を教え続けた人の手には手話
8月2日
あたたかいてのひらつめたいてのひらふれればわかる?きみの気持ち 8月3日
唇と唇が触れる月明かり淡い夜には欲しいよきみが
8月3日
星を追い越して雲が飛ぶほほなでる風かなたのきみのぬくもり 8月4日
そばにいてとかすぐにきてとか言えなくなる前に電話でキスをしよう 8月4日
食前食後食間処方箋通りキスをあげるきみの笑顔のために 8月5日
キスをするなら名前も呼んで。カラダのためのキスならいらない 8月5日
はだかのままの名前でもう一度呼んでもっとそばに行けるように
少しずつ近づいていく指先が触れるくらいにこころとキモチが 8月6日
大皿の海原で溺れたんだね秋刀魚の目にもレモンがにじむ 8月6日
秋刀魚にはすだち味噌汁にもすだち出荷できないくずものをもらう
「あんたなんか大嫌い」は「ごめんなさい大好きです」なの分かってよ 8月7日
素直に口に出せるくらいだったら困らないのにね。こんなに好きなこと 8月8日
いなずまにぬらりと白く水道管の吐く泥我が血のごとく 8月18日
墨汁の空を真二つに切り裂いて避雷針白く輝くいかずち 8月19日
風の日は傘がさせないから手をつなぐ雨はいらない星よ降れ 8月19日
はらはらと髪を乱して吹く風がはらます夏の終わりの気配 8月20日
高き壁もて通りより友の荒家(いえ)隠す東洋の真珠は哀し 8月20日
青黒く腫れあがったまま包帯も巻かれたままの傷死ぬってそういうこと
星の鳴る夜に思い出すきみは花に埋もれ微笑む白き灰
灰色の日曜日に星はなく立ち尽くしているだけのぼくたち 8月21日
往きたいと泣いた君が生かすいのち空が高くみえる立秋のころ 8月21日
真四角の空間に座す昨日まできみが喧嘩をしていた宿舎の (本歌:寮の部屋服もコップも洗面器も明日も生きるためにおかれてある 美船弘子)
酔うほどに赤いお酒のむこうに見えるはきのうか明日かまぼろしか 8月23日
ぎらぎらの夏用水に遊ぶ麦わら帽子陽に透ける 8月23日
黒と白で出来ていても灰色にはならないピアノの音きらり
ひとりのときもウォークマンはいらない音楽は私の中にある 8月26日
0と1に変換できる音じゃない音たくさんある例えば歓声 8月26日
音のない一瞬のため歓声の中走る走る前だけをみて
何でこんなに嬉しいんだろうオレンジのユニフォーム着るきみがいること 8月27日
モニターが光る言いたいことがありすぎてでも伝えきれない夜 8月27日
ほの暗い明かりが照らすがーがーと壊れたエアコン回る深夜に 8月28日
いなずまの青き光照らす街の新しきさま飽きず眺める 8月28日
むしむしと湿度のカーテン高速のテールランプをぼおっと覆う
午後1時スクロールする文字の向こうにきみの顔が見える瞬間 8月29日
MSPゴシックの文字表現と行間がハンドルネームを人格付ける 8月29日
水遣りを忘るるなかれ日照りの日も心の花を枯らすなかれ 9月1日
心の風邪は目に見えないからちゃんと言葉で僕に伝えて 9月2日
午前0時のオフィス私だけが知っている魔物の吐息の甘さ 9月2日
昨日絶対パスワードかけてかえったPCのファイルが見られている朝
昨日よりわずかに早く傾く日秋の夕暮れ寄せる寂しさ 9月3日
中天よりあっという間に駆け下りてシチューの底のような夕焼け 9月3日
欲深き己の顔手鏡の中で影を引く水曜の午後 9月6日
(我が髭の下を向く癖の このごろにくき男ににたれば)
左右ひっくり返した虚像見て自画像を描くことを覚える 9月7日
鉛筆走らせるきみの百面相が語る生まれたてのストーリー 9月7日
左右対称ではない人間の本音はどちらに隠されている 9月8日
今日からは左手つなぐ見知らぬあなたのプロフィール目に焼き付ける 9月9日
ウィンドウ越しの関係ちょうどよく僕の嫌いな僕は見せない 9月9日
窓たたく風よ数千キロの彼方の旅物語聞かせておくれ 9月12日
淡い赤背景にしてくっきりと立つ積乱雲そよと吹く風 9月12日
星のない夜雲を突く摩天楼が生む人工の星
雲低く基地から飛び立つ戦闘機の灯りに白く反射しつづける 9月13日
うそつきは泥棒のはじまりうそつきは哀しいやさしさのカケラ 9月13日
方便のウソばかりつく君の中の鎧戸をこわすこの握りこぶし
長雨が終わりし夕暮れうそつきがついに真実告白せしごと 9月14日
かくしてるはずのウソだとわかってるだまされたフリしてくれる君
後悔を挟んで反して「うれしい」のコマを広げるオセロゲーム 9月17日
白と黒はっきり線を引いていた愛されること慣れきった日には 9月18日
船をこぐたびに近づく世界には愛というなのかげろうがいる 9月18日
激しさの心の奥底から見る愛という形なき電気信号 9月19日
毒針は私の胸におしろいとあかい紅とで塗りこめてある 9月19日
この心のかすかにぶれることすべて脳神経の伝播物質 9月22日
一滴のドーパミンから君の笑顔愛という名の電気信号 9月21日
君の肩すり抜けてきた風とまる僕の前髪夕暮れは紅 9月23日
涼風にスープのにおいをブレンドした秋の夕暮れいつも懐かし 9月23日
幻はどんどんきれいになっていく見果てぬ夢を結晶化して 9月24日
目を開けて見る夢もある怖くても目を閉じないで夢の果てまで
シナプスは形成されない裏切りという感情の憎悪の蓄積
残業は宿題に似て果てしない空白と時計とのにらめっこ 9月25日
空白の僕の背中を素通りし天使ははねをぱたぱたさせる 9月25日
きみの尖った肩甲骨のあたり抱きしめる羽根など生えぬように
きよらかで貴い羽根などいらないから僕の隣にきみがいてほしい 9月26日
アイジョウは空気のように水のようにあなたを生かしあなたを殺し 9月26日
きみがすきかどうかはわからないけどきみがいないと不安になるんだ
永遠に探し続けるぼくときみの間の距離は地図のない旅
羅針盤立てて角度がはかれたらきみを失わないでいられた? 9月27日
ダイヤでもルビーでもない石ころが輝く夕べ初めてのキス 9月27日
始めてのくちづけの時奪はれし過去の記憶と力のすべて
オレンジの陽光おどる線路ぞい走る道路の初めてのキス
がちがちの右手握って初めてのくちづけのため背かがめるきみ
マルボロの紫煙とともにはつ恋の魔法は解けり青空は高し 9月28日
雨過天晴呪文のように唱えつつ留守電とメール確かめる夜
どうしようなんて迷うくらいなら一気にすぱりと謝ってしまえ 9月28日
沈黙はノーではなくてイエスなのにそれでもきくの?アイシテル?って 9月29日
私の細胞の隅まで届くようきちんと伝えて「アイシテル」だけは 9月29日
始まりも終わりの時も変わらない想いだけはきみに伝えたい
借り物じゃなくってきみの言葉がほしい僕にも理解できるよう 9月30日
失って泣くだけ泣いて疲れたらおなかがすいてまた明日が来る 9月30日
目が溶けてしまいそうなほど泣いたってこぼれたミルクはもとにもどらない
諦めない!ストロー片手に言うきみの往生際の悪さに乾杯
吸い上げるという行為を人目にさらしても平気 関係ないひとだから 10月1日
関係ないそう思うほどに大きくなる私のなかのあなたの住処 10月1日
弱いとこ全部包んでぼたぼたと僕の変わりに涙する君 10月2日
青空と光で言葉交わす樹木も嵐の夜は声荒げ叫ぶ 10月2日
橙の夕焼け光合成の中碧の空気がおりてくる空
秋風に揺れる柳葉ペガサスの尾のちりばめる星雲も揺れ
光速で遠ざかる星の光なら届かないから不思議な理論 10月3日
遠ざかるあなたの背中は夕焼け色たそがれにまぎれ星にまぎれ 10月3日
手が大きい肩幅広くて胸厚いなんてことまで抱きしめる夜
手袋をなくした左手は凍えて温かい右手待ち焦がれてる 10月4日
無意識につながれる手があたたかい上着一枚はおる朝など
でたらめにメロディ口ずさむ帰り道上着からしみる夜風に酔えば
つらいときつらいといえば無条件に僕を抱きしめるきみにはいえない 10月5日
フェロモンも脳内麻薬もたとえれば見えない絵の具ぼくらをいろどる 10月6日
僕らと言う僕ときみとをきみらと言う人がいるほど僕らは二人
温かい紅茶の湯気に心がとける急に冷え込んだ秋の朝は 10月7日
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