座標の一点

手に入れる人は泡沫はっきりと

グラスに写る君の瞳(め)の色

霜月の時雨に色を落とすもみぢ葉

灰色の空背景にして

一瞬で鮮かに色降りつもる

このくれなゐに我が身を投げる

うつむきし項に添わす指の熱 

君が僕なら僕に抱かれる

キスやハグ肌の熱さもこの夜に

夜寒にあれどひとりとひとり

閨の隅香る橘いまむかし

手折りて君に捧げ持つ白

生け贄のごとくに裸体をさらす君

祭司になれぬ我は何者

散らされた紅縋り付く僕はだれ

全て失ったあの日があるのに

「今はもう誰も抱けない」なんてこと

君には決して言えるわけない

音のない声に両耳塞いでも

絶望の淵のぞきこむ君

考える僕が捨てられる月の夜

薄に風も雨音に似て 

腕の中おまえの鼓動確かめる

重なる肌から聞こえる一人

何万回言っても信じてもらえない

言葉じゃなくて肉体(からだ)じゃなくて

魂も身体も分かつこの時空

たて軸にはどちらをもってくる

XとYとで完結できるなら

僕も座標の中の一点 

祈りとか願いで繋がるものならば

存在しない神に貢ごう

ぽっかりと浮かぶ月くらい空洞の 

隙間を埋める君の質量

俺一人おまえ一人が俺たちに

複数形が運ぶ想いは 

雨が降り風が吹いても俺だけは
あなただけはと 仰ぐ流星


於斗矢さんかりりん






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