「せんせい」
携帯をあわてて右手に持ち替えて「ごめんすぐかけなおすから、じゃ」
「おれ今日の試合は3回戦まですすんだよ」竹刀を得意げにかまえてみせる
「わあ、先生!」ぴょんぴょんとんで喜んでくれる君に会えて嬉しい
数学を好きになったね、きらきらとしてるね、君に会えるのが好き
変わらない一重の瞳でぼさぼさの頭で私を見下ろしている
肩に手をまわそうとしてふらふらと宙をさまよう右手がかわいい
君に会えることが楽しみバスセンター裏のとおりの駐輪場の道
30点の国語の答案とともにだす100点の数学Aの答案
偶然が積み重なって出会えると「おれの先生」と呼ばれて思う
転職をきめずにいたなら、面接でうそ言わなければ、君を知らなかった
もしかしたら君のこころに残り得る「先生」ならば、それだけでいい
なぜ「塾の」先生ならばもやもやとした心の中を見せてくれるか
長ランを(古い!)着て腰履きのズボンでも「先生!」と呼ぶ笑顔はきれい
一度壁作るとこわすのが大変な当然だけど知らんふりの大人
壁、壁!壁!!たたいていれば穴はあくこちらが根負けさえしなければ
君の壁(時々蹴って)こわせたから君のまぶしい笑顔に会えた
全員の壁は一人じゃ壊せないもっと時間を、関心を、愛を!