BIRTHDAY CARD 3



 かなりますます追い詰められた悟浄はだらだらと額に汗を流し始めた。

 今度こそ、今度こそ当てに行かないとたまったものではない。しかし、今年の問題はハイレベルだ。これぞ!と思った人物がことごとくきれいに外れて、悟浄はこんなのお祝いでもなんでもない、という認識をまた新たにしてしまった。

「はい。悟浄」

 わたされた1枚のカードを悟浄は念入りに調べた。

『誕生日おめでとう、悟浄』

 太くて、ごつごつした字がそこに躍っている。

『こうやって俺がお前の誕生日を祝うことができるのかどうかは俺にはわからない。しかし、俺は、お前の誕生日を嬉しいものだと思ってる。お前が生まれてこなければ、当たり前のことだが俺はお前にあえなかったからだ。
 お前に会うまでおれはいろいろな生き方が人にはある、ということに気づいてはいなかった。お前の存在がお前が思っているように誰かを不幸にしたとしても、少なくともお前は俺を不幸になんかはしていない。それだけはずっと伝えたかった。
 もうそんなことをお前に伝える機会など決してないだろうと思っていた。しかし、思わぬところでお前と再会し、そしてお前が俺のことを覚えてくれていたということがどれだけ俺の心を満たすものだったということをどうやってお前に伝えればいいだろう。言葉でも行動でもどんな手段でも足りない。お前が俺にとってどんな存在なのかを表現するためには。

 だから俺は毎年毎年こんな機会をくれる猪八戒にとても感謝している。こういうきっかけでもなければ、俺はお前に俺の気持ちを伝えようとは思えないからだ。

 お前が俺を恨んでいるとすればそれは全く当然のことだ。俺はそれを当たり前だと思うし、しかし、それをきっちり受け入れようとは思わない。なぜなら俺はお前をちっとも恨んでないからだ。恨むお前を恨まない俺が受け入れることができるだなんてそれは嘘だろうと俺は思う。

 だが、知ってるか、悟浄。猪八戒はやけにきっぱりとこういいきった。お前は俺のことを恨んでなんかいない、と。

 俺は何だか猪八戒にそういわれたら、お前がそういう風に考えているような気がするようになってきた。それほど猪八戒の言葉にはなんだかよくわからない説得力があった。そういわれてから俺はどうしてそんなにその言葉に力があるのかとずっと考えてみていた。

 そして俺はある答えに行き当たった。なんだか一番しっくりする答えだ。

 それは俺がここに書くまでもない答えだろうからここには書かない。だが、俺はお前がこの日にうまれて俺とであったことが嬉しいと思うのと同じくらい、いやそれ以上に、お前がこの日に生まれて猪八戒とであったことを嬉しく思う。

 悟浄。誕生日おめでとう』



………………………どういうこたえだーーーーっっっ

 と、突っ込みたくなる気持ちを抑えて悟浄は一生懸命そのカードの書き主を考えてみた。

 外すと全く後がない。ここで当てておかないとえらいことになる。
 考えに考え抜いて、悟浄はその人物の名前を告げた。





 ―――――――――そして、当然のお約束ながら、見事にその答えを外した。











 


Q5 さて、上の文章を書いた人は一体誰でしょう?


 →答えは最終日。





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