□野望フェチ□



「……ルフィ〜〜〜〜」
「ななななんだよナミ!俺、全ッ然つまみ食いなんてしてねーから。いやほんとだって!」
「あんたねー、そんなのが私に通用するとでも思ってんの!」
「してね―ってば」
「…………………じゃああんたのその幸せそうなハラはナニっ」

 ログがたまるまであと3日あまり。サンジが他人の船の雑用係をこなさなければならない期日もあと3日だ。
 あと3日で食事つくりから解放されるかと思うとナミの心は大変晴れやかになろうというものであったはずなのだが、世の中そううまくはまわらないようにできている。
 大食漢のゴム船長がつまみ食いなしで生きていくなどということはそれはナミにとって目の前にぶら下がっているお金なしで生きていくということに等しいということはわかってはいたのだがこうも頻繁にやられると堪忍袋の緒も切れるというところだ。
 今日もサンジの下ごしらえをぺろりと平らげてくれた船長のおかげでナミがすっかり食事を作り直す羽目に陥っている。
 つまみ食いをされながら食事の支度を滞りなく進めていたサンジをナミは改めて海のコックだと認め、サンジが帰ってきたら強力な鍵のついた鍵つき冷蔵庫を買ってあげようと心のそこから決意した。

「というわけで、ウソップ、チョッパー、あんたたちルフィと一緒に買出しに行って来てね」
「何で俺たちが!」
「そうだそうだ!!」

 くるりと振り向いて、ウソップとチョッパーを指差し、宣言したナミに2人は抗議の声をあげる。

「……自分だけ罪をごまかそうって気じゃないわよねえ、ウソップ、チョッパー」

 背景に何かどす黒いものを背負って、唇の端を上げて笑うナミにウソップは「ごめんなさい」といってひれ伏し、チョッパーはガードポイントを取った。

「あんたたちで食べ尽くしたモノはあんたたちが責任もって買い足してきなさい!いっとくけど今度やったらただじゃおかないからね……!!!」

 背中を蹴り飛ばす勢いでナミは3人を船から追い出してから、ふう、と額の汗をぬぐった。

「まあ、これだけ海軍の少ない島も滅多にないだろうから、大丈夫よね…」





「やっぱあれだ、ルフィ。お前食いすぎだ」
「だってサンジの飯、うまいんからしかたねーだろ」

 山ほどの買出しの荷物を背負ったルフィにウソップが話し掛ける。チョッパーがチョコチョコ歩きながら持っている茶色い紙袋の中からはおいしそうな梨がひょこりと顔を出していた。

「いいか、腹八分目ってあるだろう。何事も適量が一番だぜ」
「そんなことより何で俺こんなに食い物持ってるのに食っちゃいけないんだ?」
「…………お前の学習能力のなさにはいつも感心するよ」
「ルフィ!命がおしくないのか?」

 ウソップとチョッパーがうなだれて力なく台詞をはく。ルフィはそんな二人を無視して、口を尖らせながら港をみやった。ゴーイングメリー号が大きな船にはさまれて浮かんでいるのが見えた。そして、そのかなり手前には見慣れた金色の頭と煙草の煙。

「おい、あれ、サンジじゃねーか?」

 ルフィがそういうと、ウソップとチョッパーは顔を上げ、当のサンジもこちらに気づいたらしく片手を挙げてそれに答えた。

「おう、なんだ、お前らもきてたのか?」
「サンジ…うまそうなものいっぱい買ってるなあ…」
「金持ちの船だからなあ。そろそろ少しはくすねてもばれねーかなって思ってるところだ」
「ダメだぞサンジ!!そんなことしてばれてまたあの船につかまったらどうするんだ!!」

 サンジの腕の中の紙袋からは名前は知らないがとにかく大変おいしそうな食材ということだけはわかる数々のものが溢れ出しそうになっていた。
 しかし煙草を片手に言うサンジに、チョッパーは必死で忠告をする。これ以上ナミにこき使われるのはいやだというのが正直なところなのだろうけれど。

「ところでルフィ。お前背中になに背負ってんだ?」
「食い物だ」

 胸を張って鼻から息を噴出しながらえらそうに答えるルフィにサンジは目を丸くした。

「…なんでお前が食い物背負ってて無事なんだ?」
「それがよー、これにはふかーいわけがあってよ―…サンジくん聞いてくれよ―――」

 ウソップが泣きながらサンジの肩に手をかけて一部始終を聞かせようとしたので仕方なくサンジはそれに付き合おうとも思ったが、とりあえず時間がないことに気づいた。
 早くヌールの船に帰らないと夕食の時間に間に合わなくなってしまう。

「いや、悪ぃんだがよ、俺は早く行かなきゃなんねーんだ」
「サンジ……」
「すまん、つまんね―ことでトラブル起こして拘束期間延長されたらたまったもんじゃねーからな」

 片方だけ唇を上げて笑っていうサンジにチョッパーがひどく心配そうな目を向けた。サンジはチョッパーの方を見もしなかったが、それには気づいたらしく、ピンク色の帽子をぽんぽんと優しくたたく。

「ああでもよ、ちょうどよかった。どうせお前ら暇だろうと思ってこーいうものを仕入れてきてみた」

 サンジがぽーんとエターナルポースを2つ、ルフィに向かってほおり投げた。

「……なんだこれ?」
「どーせお前ら暇だろ?なんでもここから1日航海した先の島にはお宝が眠ってるとか眠ってないとか…」
「お宝?」
「冒険だ!!」

 ルフィとチョッパーが目を輝かせて叫ぶとウソップは暗い顔をして胃のあたりを押さえ込んだ。

「すげーぞサンジ!どうやって見つけたんだ?」
「ん?そこの肉屋でこの2週間と4日、フォアグラ1kgと最上級松坂牛1kgと最高級阿波尾鶏3羽買い続けたらおまけにくれたんだ。まあお宝ってのはともかく、肉屋だからな、きっとうまそうな牛とか羊とかいる島だぜ」
「肉!!!」

 完全に目をキラキラとさせた船長と船医を前にして狙撃主は頭を抱え込んだ。

「持病のそんな得体の知れない島にいってはいけない病が……」
「あきらめろ、船長は行く気まんまんだ」
「……だってよー、海軍いたらどーすんだ?」
「そんなの今に始まったことじゃねーだろ。それにこの島見てみ?海軍なんて見かけねー」
「確かに…海軍のやつらを見かけね―なあ…この島って結構モグリなのか?」
「さあ?俺には海軍様のご意向はちーともわかんね―けどな」

 ウソップの肩をぽんぽんたたき、サンジはにかっと笑って言う。恨めしそうにウソップはサンジを睨みつけたが、当然サンジはそんなことで全く動じない。

「サンジ!俺はこの島に行くぞ!」
「おう、思う存分行ってくれ。んでうまそうなものがあったらちゃんと取って来てくれよな」

「任せろ!」

 腕をぐるぐる回しながらルフィが満面の笑顔で答える。しばらく首をひねっていたチョッパーが口を開いた。

「でもサンジ、なんでエターナルポースが2つもあるんだ?」
「…馬鹿、チョッパー、俺たちまたこの島に戻ってこなくちゃならねーんだから行きと帰りと2ついるだろうが」
「あ、そっか」

 てへへとテレ笑いをするチョッパーににっこり微笑み返して、サンジは胸ポケットから煙草を1本取り出して、火をつけた。思い切り吸い込んで、煙をふうっと吐き出す。

「善は急げだ!ナミに頼んでこよう!」
「お前がことわざを知っていることに俺はかなり違和感を感じるが、でもま、急いでいけよ」
「おう、サンジ!お土産楽しみにしてろよ!!」

 そう言って、山ほどの食料を抱えた3人組がゴーイングメリー号に消えるのをサンジは黙って立って見送った。

 碇があげられる音が聞こえ、メリー号が離岸するのを確認して、サンジはつぶやいた。

「しっかし、どうしてうちのクルーはあんなに離岸準備が早いのかねえ」

 そうして、くわえていた煙草を踏み消すと、ヌールの船に向かって歩いて行った。










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 その土地に着いたらエターナルポースはどちらを向くのでしょうか?やっぱり磁軸極に着いたとき磁石の針が真下を向こうとするように真下向くんでしょうか?そしたら島のどこが磁力の中心なんでしょうね。…なんて色々と想像が膨らみました。  感想なんかいただけると嬉しくて喜びの阿波踊りを踊っちゃいます。もしよろしければ掲示板とかメールとかに…

2003年8月8日



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