□HAPPY MERRY BIRTHDAY TO YOU□


……

 なんなのだ。
 一体。
 あの船長は。

 どうして誕生日がくると決まってえらい騒ぎを起こすのだろう。
 それほどあのコックの作った飯が食いたいのか。

 ゾロは見張り台の上で腕組みをしてふんぞり返って考えていた。
 黄色い月の明かりが固く閉じられたまぶたの上に降り注ぐ。

 3月2日はあのコックの誕生日だ。生まれた日だ。一年に一度しかこない日だ。
 しかしそんなのは特に3月2日に限ったことではなくて、3月1日だろうが3月3日だろうが一年に一度しかこないことは間違いない。
 
 あのコックに対して感謝の気持ちとかいてくれて嬉しいとかそういう感情がわいてくるのかどうかと言われればゾロにはそれはよくわからない。勿論、あんなにうまい飯を3食きちんと食わせてくれるのだからそれはとてもありがたいことなのだが、あのコックにとってそれは仕事であるのだから、大げさに感謝されても「当然のことをしたまでだ」ということになるだろうとゾロには思われるのだ。
 だから、食事の感想を別にゾロは言う必要がないと思っている。自分が「戦闘お疲れ様。敵をやっつけてくれてありがとう」などとあのコックに感謝される場面を想像するだに鳥肌が立つ。ゾロはゾロのやるべき仕事を果たしただけであって、それ以上でもそれ以下でもないのだから。

 しかし今回の船長命令だ。
 あのコックが喜ぶプレゼントを考えつかなければならない。

 ここでゾロはウソップもチョッパーも通ったとおりの思考回路の迷宮を歩いていた。結局は他人と被るのがいやだからという理由で時々気が向いたら買出しに付き合ってやらないこともない券は却下してしまった。
 しかしそうなると本当に何も思いつくものがない。
 キレイな女を紹介できればいいのだろうが生憎自分にはそんな知り合いはいない。ナミとキスする権利でもやろうかと考えたがそんなことをした場合どんなオソロシイ事態がゾロを待ち受けているのかわかったものではない。とりあえず一生かかっても返せない額の借金を突きつけられ、自分の首により高額の賞金がかかった時点で海軍に突き出されるのではないかと一瞬ゾロは想像しかけた。

「ゾロ――――!」
 肩から被っていた毛布をばさりと取り落としあたふたと慌てふためいたゾロは声の方角を見下ろした。
 ものすごいタイミングでナミがゾロに向かって声をかけたのだ。ゾロは一度深呼吸してできる限り気を落ち着けてから何気ない風を装って見張り台から身を乗り出してナミを見下ろした。
「サンジくんの誕生日のプレゼントのことでちょっとあんたに相談があるんだけど」
 右手を腰に当てて、何だか悪魔のような笑みを浮かべたナミがそこにいる。
 ゾロはごくりと唾を飲み込んだ。

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 サンジの誕生日まで毎日更新しますです。

2004年2月28日



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