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あ・・・、
ハマっちゃった・・・。
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【ガイエ】田中芳樹作品エロパロ【ハァハァ伝説】 3
1 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/01(水) 01:40:25 ID:1EJ215kP
ガイエ(田中芳樹)の作品でハァハァするスレ。
銀河英雄伝説、夏の魔術シリーズ、薬師寺涼子シリーズ、
アルスラーン戦記などのエロパロでマターリ萌え。
○過去ログ
【ガイエ】田中芳樹作品エロパロ【ハァハァ伝説】 2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1115051240/
【ガイエ】田中芳樹作品エロパロ【ハァハァ伝説】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1082470684/
銀河英雄伝説@エロパロ板
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1025910653/
○bbspinkスレ&SS保管庫
http://pinktower.com/yellow.ribbon.to/~geier/
2 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/01(水) 06:00:56 ID:YsnYBDi+
,、‐'''''''''ヽ、
/:::::;;-‐-、:::ヽ _,,,,,,,_
l::::::l _,,、-‐"iiiiiilllllllllllliiiiiiiー-ゞ:::::::::::ヽ,
ヽ::`/: : : : iiiiiilllll||llllliiiiii: : : :ヽイ~`ヽ:::::::i/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
. /;,..-‐、: : : : : l|l: : : : : : : : : : : : : \ ノ:::::}| やったね! トラトラトラのしまじろうが
>>2
ゲットだよ!
/: /: : : : :`.: : : : : : : : :/´ ̄\ : : : : : ヽ:::ノ | みんな、たまにははやくねてみよう! はやおきはさんもんのとくだよ!
. !: : : :iflllli、: : : : : : : : : : : : : : : :ヽ: : : : : :.! |
|: : : :llllf l: : : : : : : : : : :.iflllli、: : : : :<iii| |>1ちゃんへ いいすれっどをたてたね! これからもがんばろう!
|: : : :|llll |: : : : : : : : : : .llllf l: : : : : : : : :.| |>3ちゃんへ こんどは
>>2
をとれるようにがんばろう!
|: : : :.!lllll!' : : : : : : : : : : |llll |: : : : : : : : :i<>4くんへ まじれすしようかどうしようかまよったのかな?
/: : : : : ○ : : .!lllll!' : : : : : : : :.i |>5ちゃんへ おまえみたいなばかはおとなになってもやくにたたないからはやくしのう!
 ̄|: : :" ,,,,,,,,,,,,,|____ : : : : : : : :.<iii/ |>6くんへ がきのうちはなんでもゆるされるとおもったらおおまちがいだよ!
. /!.: |:::::/  ̄''''''''l ヽ: : : : :-─/─ |>7ちゃんへ もういいいからしね!
ヽ ヽ/ ノ : : :ヽ/ |>8いこうのみんなへ いつかはしぬんだからはやめにけいけんするのもじんせいだよ!
\ \,,_ _,,,/ : /\ \____________________________________
`''‐、、__  ̄ ̄ __,,,、-‐"
. //:::::/ヽ ̄ ̄ ̄ ̄ノ::::/\
. / /:::::/ ` ̄ ̄ ̄/:::::/. \
3 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/01(水) 19:09:23 ID:aTUgpk1A
保守
4 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/01(水) 22:23:44 ID:3pHVJA88
保守
5 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/02(木) 00:40:34 ID:2hgsJKun
>1乙〜
そして前スレ472さんをwktkしつつ待ってみる。
お涼がバージンなのかどうなのかは昔ライトノベル板でもちょっと話題になって、
作中の描写とか作者の傾向とかから判断した場合
「どう見ても処女です。本当にあ(ry」なんだけど
仮に「経験値少ないけど男性経験アリ」って場合は
どんなパターンがありそうか…という話になった時には↓みたいな感じの意見が出てた。
・一回ヤッただけでモノにしたと勘違いした相手をボコって終了
・好奇心とか勢いとかで一度だけ。でもお涼的にはさっさと忘れたい過去
・好奇心で…ってのはありそうだけど相手とは死別とかの方が萌える
あと、
パイズリフェラやら騎乗位やら繰り出してきて
やたら攻めに手慣れてる癖に、事が終わったら
お涼
↓
泉田 ○ 「あたしの処女は高いのよ!」
↓ /ヾ|>
_| ̄|○ .<
「ジブンイッショウオリョウノドレイデスカ?」
なんて同人誌なら見たことあるw
6 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/03(金) 01:51:44 ID:58txatdK
携帯からだと恐ろしく不便になってしまった…
これだって無事に書き込めるのやら。
てなワケで保守がてら。
7 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/04(土) 03:21:16 ID:X9q6fPOj
保守。
8 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/05(日) 01:27:32 ID:2rbHCjce
hosu
9 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/05(日) 21:49:38 ID:FaFweALy
保守
10 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/06(月) 12:26:01 ID:W9/Krpkd
もうじきバレンタインですなあ。
11 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/06(月) 23:00:33 ID:Hdd+FaWO
>5
ガイエ女性キャラ@バレンタイン
茉理ちゃん,アンネローゼ,エヴァ…店で売れるレベルの出来
フレデリカ…チョコサンドイッチでどうにか乗り切る
マリーカ…やはりここはチョコアイスで
カリン…「別にあんただけに買ったんじゃないからね!」とかイマイチ素直になりきれない
来夢,リディア…市販のチョコを溶かしてアルミカップとかに流し込んだ素朴なやつ。
冷蔵庫で急冷したため分離とかしててもまあご愛嬌
お涼…メイドの申し出を断って単独で手作り強行。それ何て地獄料理?
愛エプで言うインリン様レベルの出来で泉田ガクブル(((( ;゚Д゚))))
なっちゃん…チョコを全身に塗りたくり「あたくしを食(ry」ホストドン引き(((( ;゚Д゚))))
12 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/06(月) 23:02:15 ID:Hdd+FaWO
アンカー>10の間違いだ木綿orz
13 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/07(火) 00:40:54 ID:WiZHkwPv
バレンタイン@アル戦
ファランギース:男達からプレゼントもらいまくり。
アルフリード:もちろん手作りチョコ。中級のトリュフチョコをあたりを作る。
エラム:アルフリードに対抗していつの間にかチョコレートケーキなんぞを作ってしまう。
エステル:「今日はイアルダボート教徒の聖人を祝う日である。
お前達異教徒は企業の商戦にまんまと乗せられてイアルダボート教を侮辱している!」
(実は手作りしたけれど大失敗した)
14 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/07(火) 01:24:20 ID:7woMMCB5
エラム男なんだがw でも深く考えずにやってそうだ。
チョコがらみの口げんかからアルフリードのチョコを
食べることになる展開。
15 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/07(火) 17:34:49 ID:2YfPTRZr
ヒルダは下手な感じがするな。
16 :
薬師寺
:2006/02/08(水) 00:45:39 ID:/oNQXyQE
前の板で書くと言っていた者です。
まだ、エロの前までしか書けていません。
ヴァージンか違うかは、とりあえず触れずに書こうと思います。
エロ最中ですが、あの二人はお互い何と呼び合うのがベストでしょうか?
17 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/08(水) 02:37:58 ID:/RNasvYY
>>15
父親用と同じチョコを買ってプレゼントすると見た。
(いいチョコレートはそれしか知らない)
「ヒルダお嬢様がチョコレートをもう一つ買われている…!」
18 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/09(木) 08:03:47 ID:DKGWz7Qh
前スレが落ちてた。
保守しといた方が良かったかな。
19 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/09(木) 16:11:56 ID:TMc2lnub
>>18
新スレが立っちゃってるんだから、別に落ちても支障はなかったんじゃない?
無理して埋める必要もないわけだし。
20 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/10(金) 20:37:28 ID:27VW0MW3
>>16
スタンダードなら、セックル時は「涼子」、「準一郎」だと思われ。
照れがぬけず、「泉田クン」もありかと。
21 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/11(土) 01:02:51 ID:EGnRbxU8
>20
最初は照れが抜けずに「泉田クン」呼ばわりしてたお涼が
佳境に入ってきてタガが外れたように「準一郎」連呼したりなんかしたらテラモエスwww
22 :
薬師寺
:2006/02/11(土) 02:05:45 ID:sWrD8DQr
フムフム
涼子…、あの泉田が呼び捨てできるかな?
エロ最中なら上下関係も考えられないか…
けどヤリ始めにいきなり涼子はないな…
警視から始まって、お涼が涼子って呼べとでも言うのだろうか…?
皆さんアドバイスを
m(__)m
23 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/11(土) 10:06:37 ID:+GcyUFCK
>22
そういうとこの描写も書き手の力量の見せ所だよ。
他人に聞きまくるばっかりじゃなく自分でも考えてみ。
24 :
ナイトハルト
:2006/02/12(日) 15:49:31 ID:mlo2MMzI
ミュラーです・・・
陛下が息を荒くしながらエミールを寝室に招いたとです・・・
ミュラーです・・・
カイザーリンが実家に帰ってしまったとです・・・
ミュラーです・・・
軍務尚書が堂々とエロ本を買い、見つけた俺を睨んだとです・・・
ミュラーです・・・
ケスラー憲兵総監の体に傷がいっぱいあったとです。夜なにをしとるとですか・・・
ミュラーです・・・
ビッテンフェルト提督、俺を流し目で見るのはやめてください・・
俺にそっちの趣味はなかとです・・・
ミュラーです・・・
ミュラーです・・・
ミュラーです・・・
25 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/13(月) 21:45:11 ID:6O6zbClC
ワロタw
ミュラー!(ビッテンフェルトから)逃げてー超逃げてー!
陛下は男色に走るし、ヒルダは実家に帰っちゃうし、
これはローエングラム王朝崩壊の危機かw
26 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/14(火) 00:40:42 ID:VGVBpbwz
堂々とエロ本を買ってるオーベルシュタインワロスw
27 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/15(水) 02:20:20 ID:/bIPs0ts
ググっても茉理×始のサイトって本当見つかんないねー
おかげで自家発電…
28 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/16(木) 19:58:00 ID:TcfVCqef
>>24
ミュラー、逃げてー!(笑)
29 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/16(木) 21:20:17 ID:boWOhlog
そのころ同盟ではユリアンが
30 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/16(木) 21:36:33 ID:IzprwCRI
キャゼルヌ婦人に筆卸。
31 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/17(金) 03:33:43 ID:5xnRwnXm
そして筆卸の余勢をかってカリンの処女を強奪していた
「まっ待ってユリアン!あたし初めてなのっもっと優しくし・・て・・あっあ〜んっ」
32 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/17(金) 20:00:07 ID:89Tr3hx2
しかし、ユリアンも初めてだったので、うっかり危険日なのにも係わらず
中田氏。
33 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/17(金) 22:31:29 ID:L11DHY9C
そこでシェーンコップが一言
34 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/17(金) 23:00:23 ID:7lGFfERK
「やれやれだぜ」
35 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/18(土) 02:39:38 ID:pSQ97ijP
間違えて「こんなユリアンは嫌だ!」スレに来たかとオモタ
36 :
猪
:2006/02/18(土) 19:15:28 ID:iN/pwUY/
>24
ミュラーやらないか、俺の黒色槍騎兵なら鉄壁をも貫ける。
37 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/19(日) 08:53:02 ID:y/NQPVGA
>>27
前スレのあの方だろうか。
是非ここに自家発電の成果を…!!
38 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/21(火) 05:08:01 ID:6VE9FHNr
とりあえず悶えてください(前スレの人かな)
>>37
39 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/21(火) 05:08:33 ID:6VE9FHNr
バレンタイン。
それは男がどうにも気にせざるを得ない一日。
義理でもなんでも肉親以外からのチョコをゲットできるか否かで
2/14を境とする一年が幸先の良いように思えるかどうかの分かれ道。
女神が微笑まなかった男たちがお菓子会社の陰謀なだけだと声を張り上げようが
「そんなのキャラ宛てに来てるってだけでお前の人気じゃねーぞ勘違いすな!
早よ(お好きな題名を)の続きを書けい!」
と実に正しい抗議を髪と共に筆が退化しまくっている作者に申し立てようがなんだろうが
竜堂兄弟にとって、バレンタインはごく普通に通過していく年中行事である。
ピンポーン♪
「みんな、お早う」
「おはよう、茉理ちゃん」
「チョコレートありがとう茉理ちゃーん!」
「いきなりなんですか終君、恥ずかしいですよ」
扉を開けた茉理の目に飛び込んできたのは、終の満面の笑みと差し出された手。
そして背後で天を仰ぐ続に、笑顔の余。
「…始さんは?」
「職員会議とかで、もう出かけてますよ」
そう、となぜか緊張が解けたように息をついた後、茉理は紙袋を掲げて見せた。
「もちろん持ってきているわよ。はい、どうぞ」
「い〜やっほう!!」
「毎年毎年、ありがとうございます」
小躍りして弟の手を取り珍妙なダンスを繰り広げている終をあきれて見つつ、
茉理から紙袋を受け取った続は丁重にお礼の言葉を述べた。
「美味しいんだよね、茉理ちゃんのチョコクッキー」
いつのまにやら余が続の横に立ち、袋の中身を嬉しげに確かめていた。
終はいまだ一人舞い踊っている。
「これはずっと変わりませんね。味は格段に向上していますが」
含みのない続の穏やかな笑みと言葉に、茉理の記憶のページが捲られていく。
40 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/21(火) 05:09:13 ID:6VE9FHNr
―茉理がまだまだおぼつかない手つきで、それでも母親の冴子と一緒に作った
最初のバレンタインは、多少焦げたクッキーに溶かしたチョコをかけたもの。
「年の数だけあげたらいいんだって」
バレンタインと日付の近い行事と勘違いしてるんじゃないかなあと思いつつも
始は従妹が初めて手がけたお菓子をお礼を言って受け取ったのであった。
実際は、始の年齢よりずっと多い枚数のチョコクッキーが入っていたのだが。
小さな指にいくつかの絆創膏を巻いた女の子の期待に満ちた目で見つめられて
始は少々面映く感じながら幾枚かクッキーを口に運んだ。今一歩という味ではあったが
それよりも従妹の気持ちが有難くて可愛くて、始の心に春の空気が一足先に訪れた。
そして可愛らしく眉根をキュッと緊張させて見守る茉理を安心させるためでもなく
「おいしいよ。ありがとう」
と始は正直に言ったのだった。お世辞など毛頭なく、本心からそう感じられたのであった。
で…あったのだが、バレンタインが一週間も続くことになるとは思わなかった。
周囲の大人たちの微苦笑の中、茉理はせっせとクッキーを作り始はそれを食べきった。
それでも、その数日のうちで顕著に味の向上が見られたのはさすがというべきか。
始も用心したのだが、それでもしばらくしてのち歯医者の門をくぐったのは
今でも茉理には内緒である。
授業があるから、と茉理が竜堂家を辞した後、早速袋の検分を始めた終が声を上げた。
「あれ?始兄貴の分は?」
「袋にはちゃんと名前あるものね。続兄さんと終兄さんと、僕」
「きっと後で二人で約束でもしてるんじゃないですか?」
「そーだよなー。茉理ちゃんが始兄貴をとうとう見捨てたんじゃないかと思って
俺心配しちゃったよ」
「終君が心配してるのは自分の食糧事情でしょう。あの二人に限ってそんなことは
ありませんよ。まったくもう」
「それより、もう学校に行く時間だよ」
「よし、余。紙袋は持ったな?重かったら俺に遠慮なく言えよ、持ってやるからな」
「食べ物のことになると本当に手回しがいいんですね、終君は」
「「いってきまーす!!」」
足取りも軽く、兄弟はそれぞれの学校に登校していったのであった。
41 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/21(火) 05:10:05 ID:6VE9FHNr
さて、その日の夕食。
四兄弟は夕方茉理が届けてくれたビーフシチューをメインに、手でちぎって盛り付けるだけで
できるレタスサラダと、これまた切ったリンゴとヨーグルトを和えたものを食していた。
話題はやはり今日の戦果のそれぞれの報告であったり中身の感想であったりなのだが
いつもなら軽快に回転する会話も今日は微妙な空気に足が止まりがちである。
原因は分かっている。だが、それを明確に指摘するにはいかな勇敢な兄弟であろうと躊躇われた。
「結局、本来の意味でチョコを一番多く貰ったのは余君ということですね」
「俺だって数では負けてないぞ」
「今回のような場合は量より質です。見なさい、この凝ったラッピングの数々」
「終兄さんは男の人からも貰ってたねえ」
「…終君、宗旨替えでもしたんですか?!」
「だから!あれは〜つまり戦略的投資ってワケでえ、愛情じゃなくだなあ、人徳って」
終の言葉にかぶせるように
「なんでも、五月まででいいからうちの部に籍を置いてくれとか頼まれてたよ」
「ありていに言えば買収されたってことですね」
「いや、だってチョコに罪はないし捨てるなんて家訓に反するし」
「ま。いいですけどね」
「そういう続兄貴はどうだったんだよ」
「聞きますか?可愛い弟を無駄に落ち込ませるようなことはしたくないんですが」
「もういい。分かったからさ」
などと心温まる会話の最中にも食卓からは迅速に夕食が消えうせていった。
ご馳走様のあと年少二人が皿洗い、そして続は立ち上がり今だ寡黙な始にコーヒーをすすめた。
42 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/21(火) 05:10:42 ID:6VE9FHNr
淹れ立ての匂いに気が引き立ったのか、始の方から続に話しかけてきた。
「で、続はどうだったんだ?」
「まあ色々ですね。チョコがメインというよりは添え物というかんじでしたか」
「ほう」
「どれもこれも手に負えそうにないのでそっちはお返ししました。まあ察してください」
「高級時計とかか?」
「それもありましたが…ああ、これもそうでした」
「ホテルの食事券?」
「バイトから帰るときにロッカーに差し込まれていたもので返しようもなくって」
「食事くらいなら、と思うが」
「純情な女の子ならそうも考えますが、僕の職場が職場ですのでぞっとしませんね」
「なるほどね…」
流麗な書体で印刷された券を裏返してみると“宿泊付き”とある。
「本人の懐から出たお金じゃないでしょうから無視して構わないでしょう。
どうもこっちから誘ってもらいたかったらしいですけどね。僕にも選ぶ権利がありますし」
始としては苦笑するしかない。
そのままさりげなさを装って続は核心に触れてみた。
「そういえば、茉理ちゃんとは会えましたか?」
「いや、会ってないが…きっと忙しいんだろう」
それだけ聞けば十分だった。コーヒーカップを下げ年少二人のもとへ運んでいく。
「始兄さんどうだった?」
続は軽く両手を上げて見せた。
「俺、あんな始兄貴初めてみるよ」
「僕のまだ残っているからあげようかしら」
「余君は優しいですね。まあ二人の問題ですから、まあ大丈夫でしょうけど」
「なんだって続兄貴には分かるんだよ」
「人生経験の差、と申しておきましょうか。それより宿題は済んでるんですか?」
そうやって終の納得いかなそうな顔を封じた続であったが確信があるわけではない。
あの恋愛ごとにはまったく不得手な兄を知っているだけに、まさかの場合を
ちらりと考えなくもなかったが、あとは二人の気持ちを信じるしか術がなかった。
43 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/21(火) 21:59:43 ID:jcg2aPpw
4兄弟の会話が生き生きしていていいですね。
続きをお待ちしています。
44 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/22(水) 01:10:21 ID:Ktc5fGIb
>>37
です。
…ええ、まんまと悶えさせて頂いておりますとも。
つ、続き…!!
45 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/22(水) 13:46:42 ID:pLSA3ojL
>>44
いま出先でパソないんで、二日後に。
46 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/25(土) 00:27:55 ID:mHMs5P91
翌日、受け持ちの授業が無い始は一人家に居た。
「平日に休めるなんていいなぁ」と誰かのぼやきが聞こえる気がするがとんでもない。
学生の休日と違ってこっちには次回の授業の下準備というものがあるのだ。
それに論文のタネになりそうな資料にも幾つかあたらねばならない。
とはいえ、書庫に篭って古書まみれというのは普段の休みと寸分変わりなく、
そのことに思い至った始は一人憮然とした。既に夕刻なのか、書庫は薄暗い。
もう目ぼしい資料にはあらかた付箋を付け終わったということもあり
書庫から出るとコーヒーを淹れ、カップ片手にソファーに腰をかけた。
しばらくは先刻までの活字世界に思考をさまよわせていたのだが、やはりというか
結局、昨日から気にかかっているあのことに始の意識は向かってしまう。
(…お手上げだな…)
正直な心情におとなしく従うことにした始は、脳内の記憶を巻き戻していく。
そう、あれは叔父の靖一郎と学院の廊下で顔を合わせたときのことだった。
普段から始を前にすると浮き足立ったどうにも不自然な態度をとる叔父であったが
昨日はそれにさらに輪をかけた具合だった。始を見つけるなり話しかけてきたのだから。
「娘にね、チョコをもらったのだよ。なんでも超高級店のものだとかで、いや嬉しかったね」
「それは良かったですね」
47 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/25(土) 00:29:00 ID:mHMs5P91
茉理のことをわざわざ娘と言い換える、それは親戚でも学校ではけじめをつけなければ、という
殊勝な心がけからではもちろんない。その分かり易すぎる空気に始はうんざりしながらも、
礼を失しないようには相槌を打った。
「親や親戚ばかりでなしに、他にチョコをあげる相手ぐらい居てもいいだろうにねえ」
あまりに露骨な始への牽制であるが、反応するのも馬鹿らしい。
始は最小限の労力で口を笑みの形にもっていったのだが
「な…そんな顔されたって怖くな、ないからな?」
どうやら肉食獣の笑顔と映ったか。だがそう見えたとして、始には些かの不都合もない。
そそくさと理事長室の扉に逃げ込んだ叔父を冷ややかに見やり、始は学院を後にした。
叔父の言動に左右されたわけでもないが、茉理の通う青蘭女子大に向かうことにする。
長身で目立つ始は茉理の友人にはよく知られており、向こうから声をかけてきた。
「あのー、茉理ならさっきすごい急いで帰っていきましたよ」
「すれ違いになっちゃったわね、茉理ったら」
おそらく二人が待ち合わせをしていたのだと彼女らは思ったのだろう。
「あ。ああ、ありがとう…じゃあ」
それなら家かな、と気軽に考えて始は自宅に戻ったのだが、夕食のシチューを届けて
そのまま茉理はすぐ帰ってしまったのだという。他に言付けは無い、という。
すでに時間は午後七時。そして夜が更けても電話も何も竜堂家に掛かってこなかった…
48 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/25(土) 00:30:02 ID:mHMs5P91
なにも、たまたま、今年が無かったというだけではないか、そう思おうとして
そっちのほうがよほど不自然であることに気づく。他の三人には来ているのだから。
やはり…これがまずかったのだろうか、正面から茉理に対する気持ちをきかれると困る、
などと真剣に考えることを棚上げにし続けていたこと、それが今回の事態を招いたのか。
そうなのかもしれない。だが、茉理と縁が切れたのだとはまったく考えられなかった。
なんといっても茉理が生まれたときからの付き合いであるし、自分が一番彼女に近い男だと
思っていたし、そして茉理も、そう思ってくれていたのではなかったのか。
仮定ばかりの自問自答に行き詰まって、始は天を仰ぎ目を閉じた。
沈む始の意識を引き揚げるかのように玄関のベルが鳴る。
ドアを開けると竜堂家の文明生活を維持する司令官、もとい、茉理が立っていた。
「こんにちは、始さん。今、忙しい?」
「いや、茉理ちゃんならいつでも歓迎だよ」
「ああそうだ、はい、これ」
内で飛び跳ねた心臓を押さえながら紙袋を開けてみると、美味しそうなサンドイッチ。
「始さん好きだったわよね?カツサンド」
「…さっき軽く食べたばっかりだから後で頂くよ」
それより、と言いかけて言葉が詰まった。
待て、これがいけなかったのではないか?さきほどの自問が起き上がって始の肩を叩く。
茉理をそのまま居間に通し、今度は二人分のコーヒーを用意する。
49 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/25(土) 00:32:32 ID:mHMs5P91
だが、茉理と並んで座った始の第一声はこんなものだった。
「今年も皆にチョコクッキーありがとう」
どんな凶悪な悪党がダース単位で襲撃を掛けようがまったく動じない豪胆さを持つ家長も
この可憐な従妹の前には形無しである。
そんな始の忸怩たる内心も知らずに、茉理は手を振って恐縮してみせた。
「毎年代わり映えしないんだけどね、喜んでもらえたならなにより」
次こそ、と口を開きかけた始より半瞬先に、茉理が溜息とともに切り出した。
「チョコといえば、本当に今回のバレンタインは失敗しちゃったわ」
聞き捨てならない内容に、始はその先を促す。
「今までとは違うことをしてみようかなって思ったの」
「…それで?」
「友達の間で評判で、すごく人気あるし、私もあげたくなっちゃって」
何気ない口調で話す茉理に対して、始の緊張は危険水域にまで急上昇する。
「でも、それも無駄になっちゃった」
「どうして、茉理ちゃんがあげたっていうなら無駄なんてことないさ。
相手は絶対、嬉しかったと思うよ。俺が保証する」
すでに針はレッドゾーンに振り切っていたが、茉理があんまりにもしょげた顔をするので
なにをおいても大事にしてやりたい女の子のため、始は心を尽くして言葉を並べた。
50 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/25(土) 05:42:18 ID:mHMs5P91
「…確かに嬉しそうだったけど」
「じゃ、良かったじゃないか」
自分は今普通の顔が出来ているのだろうかと、始の意識の遠いところが呟く。
「でも、実の親にねえ」
「……」
「そんなに喜ばれても、ね。確かに泣き出さんばかりであったけど。
でもあれは父にあげる予定で買ったものじゃなかったのにな。…始さん?」
しばし絶句していた始であったが、さらと髪を揺らしてこっちを真剣に見つめる茉理に
今度は別の箇所が跳ね上がる。それも数秒のうちになんとか押さえつけるのに成功し、
始は深く息を吸って本題へと踏み切った。
「で、俺へのチョコはあるのかな?」
「もちろん!」
昨日から張り詰めていた糸が切れたのか、始はソファーに深く凭れかかった。
「なんとか昨日一晩で急いで作ったものなんだけど、はい、始さん」
「ありがとう」
「嬉しい?」
「そりゃあ好きな子からチョコ貰えたら嬉しいさ」
「あ、ありがとう」
茉理の頬が染まっているのを見て、今自分が何を言ったのかに始もようやく気づくが
なに構うことはない、事実、そうなのだし今さら隠し通すものでもない。
「始さん、めったにそういうこと言わないから…」
「…そんなに、かな?」
51 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/25(土) 05:44:02 ID:mHMs5P91
無言は有言に勝る。
「では、これから改めることにしようかな」
「そういうことは宣言してするものじゃないと思うし、慣れない事はしないほうがいいと思うし
ガリ勉になるっていいだす終君みたいというか、」
自分のことを理解しての言だというのは分かるが、それにしても例えが悪すぎると始は思う。
二人が思ったことを本人が知ったら「ぐれてやるぐれてやる」ときっと吠えるに違いない。
沈黙の天使がゆるりと通り抜けた後、意外なセリフが茉理の鼓膜をノックした。
「茉理ちゃん、食べさせて」
一瞬自分の聴覚を疑った茉理だったが、始の方は人の悪い笑みを浮かべている。
先ほどの喩えへの始なりのお返しなのかもしれない。
(そういうことなら…)
チョコレートの包装紙を取り去り、自作のトリュフを一つ摘まみ出すと
「どうぞ」
口紅も塗っていないのにつややかな唇にチョコを咥えた茉理に、今度は始が固まる番だった。
まさかこう来るとは、けれどもいまさら引っ込みもつかない始は、慎重に茉理に顔を近づけ
端を遠慮がちに齧る。極近距離に近づいて、茉理の睫毛が鳥の羽のように長いことに気付く。
そして、なんとも柔らかい感触が唇に一瞬残って茉理の顔が始から離れていった。
今の感触がなにを意味するか直感したものの、脳裏に染み通るにはしばらく時間を要した。
「美味しかった?」
きらめく生気が結晶化されたらかくやと思える、茉理の笑顔。
「…わからなかった」
チョコを一息で飲んでしまったのである。
「じゃあ、はい。」
今度はスティックにチョコを刺して始にすすめる。
「どう?」
味わっているのか始は無言のままで、気になった茉理が始の表情を伺うように顔を近づけると
始は茉理の後頭部を引き寄せ、チョコのかけらを茉理の口に放り込んでやった。
「美味しいよ、だろ?」
照れて恥ずかしいのか、ちょっと睨む茉理が始にはとても可愛く見える。
52 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/25(土) 05:44:54 ID:mHMs5P91
トリュフは洋酒が多く使ってあるのか香り高く、口に残る甘さは熱く溶けていく。
そういえばカカオは南国の木、コロンブスが持ち帰ってヨーロッパで流行を巻き起こした、
薬用とか興奮作用があるとかで―けれど、その所為だけじゃない。
一つ食べるたびに進んでいくキス、それの深さが二人を酔わせていく。
茉理は始の膝の上に横抱きにされ、茉理の腕は始の胴に回されている。
最後の一粒が二人の口の中で溶けるころにはすっかり茉理の目は潤んでいた。
始の熱も充分高まり、茉理は始の腕の中で身じろぎした。
―けれど
「今日は、ここまで」
不思議そうに見上げる茉理の目尻に紅が差した表情は極上の艶っぽさだが。
「タイムアップだ」
シンとした居間に夕刻を告げるメロディが静かに降って来る。
もうじきお腹を空かせた弟達が帰ってくる時間である。
身体は離れたが、まだお互いの熱が自分のそこここに感じられる。
それは実に心地よい余韻で、二人肩を持たせ掛け合ってしばし過ごした。
「今日はかき揚げを作るからね」
そういってエプロンをつけた茉理は、有能なハウスキーパーの顔に戻っていた。
ふと思い出して、どこのチョコレートを買ったのか茉理に尋ねてみた。
「ジャンポール・エヴァン。フランスのチョコよ」
答えながらも茉理は手際よく夕食の支度をしていく。
「天国、ね」
思いついたのだがさらりとは言えない。
「俺もまだまだ、だな」
「何か言った?始さん」
―俺にとっては君こそが天国の味だよ、なんて。
53 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/25(土) 05:46:13 ID:mHMs5P91
寸止めになっちまいましたが…
悶えるにはまだまだ甘っちょろかったですかね。
ではまた。ノシ
54 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/25(土) 07:16:23 ID:Bl3SKbU8
いえいえいえいえ!!
もう、充分悶えましたですよ!!
ありがとうありがとう!!
凄いや神ばっかだ。
あのー、またやって下さい。
55 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/25(土) 19:43:04 ID:VextZZPs
無名武官に無理やりやられるヒルダ書きたいけど読んでくれるひといるんだろーか。
56 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/25(土) 21:29:03 ID:r5+qXQZ/
単に、良家の子女が下種に凌辱され屈辱に泣く、なんて普通〜の展開のやつなら希望しない。
名前がヒルダなだけで内容がありきたりではダレそうなので…。
57 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/25(土) 22:19:52 ID:GKyTJ44j
むしろ良家の子女が下種を陵辱する奈津子様プレイとか
58 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/25(土) 22:57:05 ID:6mhQauF1
それはリディア姫あたりにお願いしたい
59 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/25(土) 23:07:48 ID:mHMs5P91
下種な無名武官が相手ってんじゃなくて同盟の遊び人二人のうちどっちかとか
面白そう。<<ヒルダvs
60 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/25(土) 23:17:59 ID:lqekFak3
無名武官が相手だと、名前を全然関係ないキャラに挿げ替えても
違和感のないテンプレSSになりそうな悪寒。
>58
バルを押し倒すリディア姫ハァハァ
61 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/26(日) 00:20:02 ID:LOxkmlar
頭打って超好色に生まれ変わってしまったラインハルトにまっさきにリョジョークされるヒルダとかは?
62 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/26(日) 00:51:02 ID:y47mEjSh
それもうラインハルトじゃない。
63 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/26(日) 01:30:17 ID:vWLtvRvm
同感、ラインハルトはラインハルトであるからこそ
話が盛り上がるし、読み手も楽しめる。
64 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/26(日) 04:05:11 ID:Cb6x2VpD
特殊な趣向なら注意書きは書いておいたほうがいいが、板ルールを逸脱しない範囲で
書きたければ書けば良い。
ここは書きたい人間が書いて、読みたい人間が読む所。
気に食わないならスルーすれば良いだけのことだ。あれこれ規制すると廃れる元。
>>61
ラインハルト好色話は過去ログにリンクされていたHPにあった。
そこの話は結構ここでも好評だったし、書きたければ書いたらいい。
65 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/26(日) 04:05:53 ID:rCVoqZp7
ヒルダリョウジョークか。前スレにロイエンタール相手の話があったが。
66 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/26(日) 09:36:44 ID:dgZ8AAbh
ラインハルトとヒルダ望む!
67 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/26(日) 12:34:02 ID:9roF8I9M
ユリアン美女探訪記とかって無いだろうか。手始めにフレデリカで…
68 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/26(日) 13:02:25 ID:a83Tel7j
>67
順番としては
1、フレデリカ
2、カリン
3、オルタンス
4、シャルロット&その妹
5、ドミニク
6、ヒルダ
7、エヴァンゼリン
8、マリーカ
9、アンネローゼ
この順番かな
69 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/27(月) 13:03:24 ID:/CWu+djR
えーっとね、
>>59
を書いたものですが、ちょっと自分で萌えまして
それを書いてしまいました。諸星あたるじゃないほうねw
あまり痛々しいのは苦手なので、そこらへんは省きました。
足りない人は脳内で補足してくだされ。
70 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/27(月) 13:03:53 ID:/CWu+djR
それは、彼には見慣れた光景であった。
数人の男の下卑た声に、床に横たわる白い二本の脚―
帝国軍と同盟軍、両艦混戦となり長距離砲が撃てない時に強力な戦力となる彼ら。
強引に艦体に擦り付いて磁力で張り付き、熱線で突破口を開くと精鋭の猛者達、
薔薇の騎士(ローゼンリッター)は馴れたことというように敵艦の各所へと
散らばっていった。艦長と操舵室と通信室を抑えたと報告を受け、掃討戦へと移る。
あっさり投降する帝国兵士に電磁錠をかけ、一室に詰め込んでいくのがだいたいであるが
中にはしぶとく抵抗するものもいる。だがそれも死神の斧を振り回す一陣に数を減らしていった。
隊長シェーンコップはその中でも最凶の死神と自他共に認める男。
ライフルビームをあっさり斧の柄で叩き落とすと無造作にそれを振り、ヴァルハラへの乗員を
たった今、一人増やしたところである。ヘルメット内部から「任務完了」との部下からの報告を受け
これから司令室に向かう途中のことであった。
照明が割れ火花を散らす通路を進み、薄暗くなった角を曲がったとき、その光景に出くわした。
帝国軍服を着た三人の男。二人は脇に立ち、一人の男がしゃがみこんで乱暴に女の服を剥いでいる。
やれやれ、と思いながらシェーンコップは装甲靴を踏み鳴らしてその集団に歩み寄っていった。
脇に居た男がその音に気付き、よほど驚いたのか気管からあり得れない奇音を発した。
とたんきびすを返して逃げ出していく。
その男はそのままにして、手始めに女の服を剥ぐ男の手元を間抜けな面で凝視している男の後頭部を
軽く手刀ではたくと、そのまま声も出さずに崩れ落ちた。
女にのしかかる男は、さらにのしかかられて、ようやく周囲の異変に気がついた。
見上げると、返り血に塗れ、滴る血をアクセサリーにした斧を持つ長身の男が壮絶な笑みを浮かべている。
これまた男は珍妙な声を上げ、だがしかし感心なことに気絶した男を肩に乗せて引きずり逃げていった。
どうせあの三人は、うちの優秀な部下が絞めてくれるだろうと鷹揚に見送ったシェーンコップは
床に倒れた女に目をやった。
71 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/27(月) 13:05:04 ID:/CWu+djR
貴族の坊ちゃん艦長が連れ込んだ愛人であろうか、と最初は思ったがそれにしては短髪で化粧も薄い。
とりあえず意識を確かめようと腕に抱き起こしたとき、シェーンコップは吐き捨てた。
「サイオキシンか!!」
女の瞳孔は薄暗い中にも関わらず最大限に見開かれ、急激な中毒症状が顕著に見られる。
体温は急上昇と下降を繰り返し、口はガチガチと震え下手をすれば舌を噛みそうである。
(幸い、暴行はまだ受けてないようだが…)
とりあえず毛布で身体をくるんでうちの衛生兵に届けておくか…と立ち上がろうとしたとき
「助けて…!」
と女がシェーンコップにすがり付いてきた。
「もう大丈夫だ。危険はない。今から助けるからこの場で少し待っていてくれ」
「いや、離れないで」
ここがベッドの上であれば実に色っぽいセリフなんだがな、と実に緊張感のない事を思ったが
サイオキシンがもたらす異様な怪力か、女の腕を振り解けない。無理に外せば骨を折ってしまいそうだ。
(仕方ない、このまま抱いていくか)
だが女は身をくねらせるので抱き上げるのに一苦労する。やりづらいので手の装甲も床に放り投げ
もう一度抱き上げかけると、指にヌルリとした液体を感じた。
シェーンコップが手を回しているのは腰の下である。つまり粘液の元は―
「ち!まったく」
今度こそ舌打ちをして、さっきの男共をなんでブチ殺さなかったのか今更悔やまれる。
サイオキシンと催淫剤と、最悪のカクテルをこの女性は飲まされてしまっている。
こんな状態で男ばかりの医療テントに持っていっては、傷病者といえども油断がならない。
なんとかしなくては、まあ、方法がないってわけじゃないんだが…
思案の前半から後半のうちに、とる手段はシェーンコップの中では決まっていた。
72 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/27(月) 13:05:47 ID:/CWu+djR
全部の装甲を外し、中の機能性ウエアも脱ぐと鍛え上げられた肉体が現れる。
相手する女性全員が、まあ、と目を潤ませて胸をはずませた身体であるが、今回の女性は
もっと切羽詰った事情ですでに目が潤んでしまっている。胸も、そうは無い。
キス…は女性の名誉のために省くことにし、ひたすら身体の方をほぐすことに集中する。
できるだけ発汗をうながし、体内から毒分を排出させるというのが目的である。
しかし、実はシェーンコップ自身の欲望という事情もある。
大規模な戦闘が終わった後は、気がたかぶり続け治まりをつけづらい。
そのような時は女の柔らかい体に触れて沈んで、体内の獣を解放するのが一番近道で
なおかつ、彼の嗜好に一番一致する解消法でもあった。
ブルームハルトなぞは筋トレでそれをやり過ごすのだが、まったく奴は青すぎる。
純情な部下を今度こそ大人にしてやらねばな、と上司として気遣いつつ女の身体に手を這わす。
幾度か触れた反応と、そして差し込んだ指に触れる感触で彼女がまだ男を知らないというを知る。
先ほど乱暴されなかったのは、本当に幸運なことだった。あれが初体験では悲惨にありあまる。
(…これからのことについては、それは彼女が判断することだ)
うそぶきながらも手の運びには躊躇が全く無い。幾百も“戦場”を踏んだ男の自信であろうか。
その経験が女の価値を値踏みする。腰つきはまだまだ薄いし、まろやかさも足りない。
だが男の手に丹念にかかれば生来の輝きにまして極上の美酒になるであろう肉体だとみた。
半ば本気で彼女と二度目がないものか、と考えたシェーンコップであるが、一度きりというのも
また刹那的でいいということも、知っている。
差し込む指を二本に増やし、中を軽く掻くように引いて動かす。反応は上々だ。
薬の影響だとしても、それだけで女は快感をえるというわけではないのだ。
73 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/27(月) 13:07:17 ID:/CWu+djR
より汗を出させるために、救急キットから精製水をだして彼女の口に含ませようとするが
しまりを失ってよだれをたらす口から零れ落ちてしまう。仕方なく口移しで飲ませていく。
狙い通りに汗をかき始めた彼女であるが、もう一箇所からも水分が盛んに溢れている。
すでに下半身をくつろがせていたシェーンコップは、なるべく痛感を生じさせないよう
巧みに腰をひねり、ゆっくりと彼女の入り口を広げつつ自身をねじりこんでいった。
処女の狭さというのはあまりシェーンコップは好きではないが、女の反応は好ましい。
恥ずかしがりながらも身体の快感にまだ意識が追いつかずにとまどうところなど、
男女の運びにスムーズに乗る女との情事の合間だと新鮮に感じられる。
今回の彼女は、くすんだショートの金髪をうなじに張り付かせて喘ぐ声は色っぽいものの
腕は必死に迷子の子供のように自分に縋りついてくるというのが、なんともいじらしい。
目を合わすと美しいブルーグリーンの目が切なげにこっちの目を見つめ返してくる。
目尻からは幾度も涙を零れ落とさせ、それをシェーンコップはこの上ない優しさで舐め取っていく。
もう汗は十分にかいており、このまま二、三時間ほど安静に寝ていれば毒はすっかり抜けるだろう。
しかし、中途半端はお互いにとって良くない。
彼女の中はもうヒクヒクと痙攣を繰り返し頂点が近いことを知らせている。
そのまま彼女の快感を小刻みに煽ってやりそのまま押し上げる。
「あ、あっあっあっっっっ!ふぅ…い、や、あぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「うっ…く!」
彼女の内部が余韻に震えるのを充分堪能した後に引き抜き、腹の上に自分を放った。
74 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/27(月) 13:08:13 ID:/CWu+djR
三角巾で拭いとり始末をして、そこに男のものだろうか脱ぎ捨てられた軍服を着せてやる。
ぐったりと気を失った彼女にその黒と銀で彩られたお堅い服は驚くほどに良く似合った。
いや、仕立てたようにサイズがぴったりだ。
「帝国軍に女性兵士はいなかったはずだが…?」
亡命している間に制度が変わったりしたのだろうか、そんなことを思ったが、行為の後は
さすがのシェーンコップでも思考を持続しがたい。自分を探しにきた部下に彼女を引き渡し
今度は自分の休息のため、睡眠タンクへと歩をすすめた。
体力は回復したが食欲が抗議の声をあげているので、早速、豆のトマト煮という簡素な食事を
隊員に混じってとっていると、部下から奇妙な報告を受けた。
一つの脱出ポッドが排出されるのを確認した、けれど乗組員名簿には漏れが無いという。
ピンと脳に引っかかるものがあったのだが
「誤作動だろうよ、“男”は全員いるんだからな」
と不問にしておいた。こうしてシェーンコップの歴史にまた一人、女が記されたのである。
脱出ポッドに乗り込んで乗艦できそうな旗艦に通信をかけながら、女性は一人考えに沈んでいた。
やはりあれは迂闊だった。通信妨害のため人力で伝言するしかなかった状況で、直接目的の艦には
いけず、中継地点として寄ったあの駆逐艦。あの艦の司令部達が元貴族というのは承知していたが
戦闘の真っ最中であるし、短時間であるから大丈夫であろうと読んだ理性が裏目に出てしまった。
根拠の無い特権を奪われた者達が、あんなにも復讐の機会に燃え、てぐすね引いているだなんて
明朗な理念という空気を吸って生きている彼女にはとうてい看破しえなかったのだ。
引き締まった頬の下級兵士とは対照的に、たるんだ頬をした血色の悪い男に暗がりに腕を引かれて
みぞおちを突かれた後、酸素を求めて開閉した口に無理やり押し込まれたなにかの薬…
75 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/27(月) 13:09:05 ID:/CWu+djR
その後は記憶が途切れ途切れである。
気分が悪くて吐き気のする間に服が剥かれ、冷たい床に転がされたのは覚えている。
そして猛烈な不安と恐怖とで拠り所が感じられなかった自分を、暖かい人肌と
―おそらく、きっとあれは性的な快感というものだったのだろう、それで救ってくれた男の事と。
あの顔は、帝国貴族のような整い方をしていたが、それでも貴族の纏うあの雰囲気はなかった。
次に目覚めたのは老兵の背中の上で、ヒルダを脱出ポッドの格納場所まで運んでくれたのだった。
心配そうに見守る老人に笑顔を見せて、その温情に握手で持って感謝を示し、スイッチを入れたのだ。
そうして脳内のページを繰っていると、目の前の通信機がブンと音を立てた。
「フロイライン・マリーンドルフ。こちらに誘導いたします。周波を合わせて下さい」
スクリーンに映っているのは砂色の髪をした若き勇将、ミュラーである。
「ありがとう、あとはそちらにおまかせします」
通信が切れた後、ヒルダは目を閉じた。ミュラーの艦に収容されるまで一時間はあろう。
少し休めるかもしれない。
狭いコクピットはもう顔の記憶が薄れつつあるあの男の腕の中を思わせる。
自分の変化にはもう気がついている。目が覚めてとっさに確かめたのは自分の体であるが
股間を探ってみても、自分のぬかるみ以外のモノはそこにはなかった。
女として本当に最悪の事態ではなかったことには心の底から安堵したが、失った物も、分かる。
けれど、あれは事故だ。そう思うことに決めた。それに得たものも少なからずある。
人が心まで裸になり立ちすくみ震えあがったときに、人の肌の暖かさほど勝るものはないという
実感から得た経験が…
―単調に鳴る計器の音に、ヒルダの瞼は重さを急速に増していった。
76 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/27(月) 13:22:43 ID:/CWu+djR
終わり。って入れてなかったw
ではまたノシ
77 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/27(月) 17:16:15 ID:kJ+KOseE
>>76
GJ!
中田氏してたらエラい事になっていたかも…
78 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/27(月) 18:43:41 ID:SdHnmgya
>>68
サイコー!是非それでいこう!
79 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/28(火) 02:57:19 ID:rPjqUCm+
この流れなら言える!
ミッタマイヤー×ヒルダを書こうとして挫折したことがある。
80 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/28(火) 10:31:49 ID:w9KD+lVe
>>79
くじけるな!再挑戦だ!
81 :
名無しさん@ピンキー
:2006/02/28(火) 11:55:35 ID:MyzWa2my
>>76
そういうわけで、ヒルダはカイザーの藁になろうと思えたのか。
82 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/01(水) 01:13:02 ID:bQxiQkk3
>>81
その裏設定分かってもらえてニヤリとしました。
83 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/01(水) 04:10:37 ID:CGnqo8f7
カリン→ttp://yellow.ribbon.to/~kirano/uraseiindex.htm
フレデリカ→ttp://yotsuba.saiin.net/%7Eh-sora/menu.htm
だれかヒルダのない?
84 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/01(水) 18:07:29 ID:CGnqo8f7
保
85 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/01(水) 19:34:47 ID:POFd6v6N
>83
たとえ知ってても、いきなり個人サイトのURL晒すような奴には教えない。
自分が荒し依頼と同じことやってる自覚はある?
86 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/01(水) 21:37:23 ID:Aaf9Ofr7
直リンでは無いのだから構わないと思うが…
87 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/02(木) 01:48:00 ID:1ZdVmYf8
美女めぐりといっても普通に考えたらユリアンとヒルダという組み合わせは考え付かないだろうからサイトを探しても無いんじゃないか?
レンネンカンプにやられるフレデリカならどっかで見たことはあるが
88 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/02(木) 03:16:41 ID:ZQfFI9T2
裏サイトは匿名掲示板では晒さないのが常識だよ。
話題を共有するために見て欲しければヒントだけ書いて検索させるのが普通。
89 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/02(木) 22:17:43 ID:fKTv7TFq
ヒルダ〜♪いいね〜♪
90 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/03(金) 13:29:37 ID:W+gtVJsv
最近銀英伝みたけど、いい作品ですね。
91 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/03(金) 14:10:28 ID:awKgui71
>>90
いい奴だ(*´∀`*)♪
92 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/03(金) 16:32:24 ID:geRcS9yh
神が来る前にネタフリでもしてみるか。
そろそろホワイトデーなのでなにか。
世間の相場を知らない皇帝がすっごいものをお返し
しかも相談する相手を間違えたものだから(ry
もしくは魔術師夫妻のほのぼの系でもいい。
93 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/03(金) 17:18:10 ID:geRcS9yh
自家発酵した!
魔術師夫妻で一本予定。
94 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/03(金) 19:36:03 ID:awKgui71
>>93
待ってるよおおおお!!キタ━━━━━(゚ ∀゚ )━━━━━!!!!!
95 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/04(土) 00:39:15 ID:j2ysB2zB
>>93
皇帝一家も待ってるよおおおお!!
96 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/04(土) 03:08:05 ID:SnsCMFaV
>>92
カイザーの相談相手はロイエンタールですか?
97 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/04(土) 04:01:44 ID:+fw/IPVB
オーベルシュタインかも…
98 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/04(土) 04:56:56 ID:Uy76Hos2
ミッターマイヤーだったら、それなりにまともだろうしなあ…
99 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/04(土) 15:05:48 ID:waCqLqnh
ビッテンに「猪突猛進あるのみです陛下!!」とか言われたらどうすんだろうなぁ・・・
100 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/04(土) 16:11:54 ID:RMq60z2t
アイゼナッハならゼスチャーしそうだ。
101 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/04(土) 16:20:17 ID:AWqJmqDw
彼なら写真を芸術として額に入れて飾りたくなるだろう。
だから、ポーズ指導ぐらいする。
102 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/04(土) 18:58:56 ID:+fw/IPVB
元帝国人の、シェーンコップに聞いてみるのは?
でも、よけいなこといいそうだなぁ…
103 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/04(土) 21:52:14 ID:tfL+Negw
ヴェストパーレ男爵夫人はどうだ?
104 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/04(土) 22:20:59 ID:sEFZEKl2
ベーネミュンデの1人エチーとかどーよ?
105 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/05(日) 00:19:53 ID:zKQa1v5H
どうせ一人でやるなら
1、ヤンを思ってフレデリカが
2、ラインハルトを思ってヒルダが
3、キルヒアイスを思ってアンネローゼが
4、ラップとヤンを交互に思ってジェシカが
とかのほうが萌えるな。ユリアンとのエチーを想像して処女のカリンが一人エチーでもいいな
106 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/05(日) 00:22:28 ID:h51EKywQ
なんでヤンとフレデリカには子供ができなかったのだろう?
ラインハルトとヒルダは一回でヒットしたのに・・・
107 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/05(日) 01:17:22 ID:Ul4tuLWR
>>106
ヤ「昨夜のパイズリはとてもよかった」
フ「今夜はスマタにしましょう♪」
ヤ「はさむものばかりだね・・・・」
108 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/05(日) 01:40:42 ID:mquHFGYN
>>107
ワロス
ま、カイザーのところみたいに一発必中ってのは珍しいよ。
ヤン夫妻の短すぎた蜜月期間では子供が出来なくても仕方ないかなと。
109 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/05(日) 09:55:26 ID:ztQ1XDe2
>>106
ヤンの製紙が種なしだったのだよw
110 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/05(日) 13:51:30 ID:6ya7i4mh
実は女性だったとか
111 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/05(日) 15:21:26 ID:zKQa1v5H
>>110
ヤンが女性(´Д`;)?そういったネタは801板で
112 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/05(日) 21:39:09 ID:sNURUMfo
かっカリンタンがっ
処女のカリンタンが一人でエチー?(´Д`;)ハァハァ だっ誰か書いてくださらんか?
113 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/05(日) 23:54:27 ID:ztQ1XDe2
カリンよりフレデリカ〜
114 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 00:14:13 ID:auFJWh3T
フレデリカがラングに拷問される話をどっかで昔みたなぁ・・・・
115 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 00:16:15 ID:auFJWh3T
あ、俺のID 英雄だ・・・・・つまらんw
116 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 00:36:21 ID:pJfyupNh
14歳のフレデリカで・・・
117 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 00:50:58 ID:P4caXwj/
ヒルダの相手として
1.ラインハルト
2.ミッターマイヤー
3.ロイエンタール
4.オーベルシュタイン
5〜12.獅子の泉の七元帥(誰でも)
番外.同盟キャラで皇妃お慰め
ってどれが一番萌える??
個人的にはミュラーが読んでみたいが……
118 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 01:08:04 ID:l014ADYi
アッテンボローかな。
ミュラーとフレデリカがあったし、逆バージョンがあっても?と思う盛れ。
119 :
>105
:2006/03/06(月) 01:17:34 ID:P4caXwj/
萌えたので。一応全部やるつもりですが、とりあえずフレデリカいってみます。
「8月の新政府」として知られるイゼルローン共和政府の主席であるフレデリカ・G・ヤンは多忙だった。
しかし、いや、だからこそ、仕事の終ったあとの虚脱感は例えようがないほど心にこたえた。夕食を済ませ、シャワーを浴びて着替える。
ベッドに腰掛けて、彼女はカレンダーを眺めやった。
「そう、あの人が死んでから、もう半年過ぎたのね」
小さく独語する。あの人が死んでから。まったく、なんてことだろう? 初めは英雄に憧れる1ファンとして、次は副官として、次は妻として、常にヤン・ウェンリーを追いかけつづけてきたのに。彼はたった一年の幸福な時代を残して死に至った。
たった一年の、充実した夜の時間が連想された。彼女は勢いよく首をふる。不謹慎でもあり、自分がひどく淫乱なメスに思われた。ヤン・ウェンリーとの思い出は綺麗なものにしておきたい。
しかし、―――身体がうずく。
ヤンが死んでから、他の男性との交際は無論のこと、自慰すらいましめてきたフレデリカである。下半身のうずきに反応したいとは思わなかった。思わなかったが……
(故人を思いながらマスターベーションなんて! 天上から見ているあの人がどう思うかしら?)
そう考えると、余計に「感じて」しまうのである。
「困ったわ……」
ベッドに身体を預けると、フレデリカは天を仰いだ。
手を伸ばそうとするが、恥ずかしくてひっこめてしまう。無理やり寝てしまおうとワインを飲み干して蒲団にもぐりこんだが、身体が熱くなって完全に逆効果だった。
(あなた……ごめんなさい!)
フレデリカは、そっと秘密の茂みに手を伸ばした―――
眠いのでこのへんで。
120 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 02:39:45 ID:nEBHnFvr
既に萌えがっ(´Д`;)ハァハァ 続き待ってます
121 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 02:49:44 ID:hg66yt41
寸止め…できるだけ早い続きをよろ〜
122 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 04:35:40 ID:0LcrS5Gj
>>118
アッテンボロー×ヒルダタンいいっすね。
バーラト星系政府の要人としてか軍の代表として
帝国政府と折衝にきたアッテンボローと皇妃が・・・とか。
そういえばずーっと昔、アッテンボロー×アンネローゼってカップリングを見かけた。
読まなかったのでどんな内容か分からんが。
123 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 04:37:24 ID:0LcrS5Gj
自家発電したいんだが、ヒルダタンや姉ローゼのエッチチーンは
思いつくけど、アッテンボローが想像できんのよ。
124 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 10:14:41 ID:U53dZ7M2
>>123
たぶんきっと早漏
125 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 16:02:55 ID:+r7+BjFI
ヒルダ×マリンドルフ伯w
ヒルダ×病弱ないとこ(名前わすれた)
126 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 17:49:35 ID:PQprE/uF
さて、ホワイトデーには早いけど一足先に投下します。
いきます。↓
127 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 17:50:18 ID:PQprE/uF
「…後は冷蔵庫で一時間冷やせば出来上がりますからね」
エプロンをくるくるとたたみながら司令官は作戦終了を部下に告げた。
「やっとできたのか…」
「まだですよ!フレデリカさんがいらっしゃる前に片付け、済まして下さいね」
「うーむ」
腕を組む男の前に広がるのは、累々と積み重なった使用済みの調理器具、一個艦隊。
それと云うのも、今日はホワイトデー。
バレンタインデーにチョコクレープを手づくってくれたフレデリカのために
何かお返しを、と頼りなげに、しかし真剣に相談してきた帝国の天敵、無敵の魔術師
いやユリアンにとっては多分に世話のしがいがある被保護者ヤン・ウェンリーに
「だったら、こちらも心づくしのお菓子を作ってお返しにすればいいでしょう」
とユリアンは笑顔で進言したのであった。
一旦は双方とも非常にその計画に乗り気であったが、それを遂行していくにつれ
どちらがより後悔の色を濃くしたのかは定かではない。
「ああっ!ハンドミキサーはボウルの底に付けておいて持ち上げないで下さい!」
「そのイチゴは全部フードプロセッサーにかけないで少し残しておかないと!」
どうにか作戦が頓挫しないですんだのは、なによりも有能な司令官のお陰であり
ようやくこぎつけた最終局面にいたって胸を撫で下ろしたのはどちらであろうか。
128 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 17:51:00 ID:PQprE/uF
「じゃあ、これから僕は夜間訓練に出かけますから、後お願いしますね」
「ああ。気をつけておいで」
一応真剣な訓練だというのに、クラブ活動に出かけるのと変わらぬ声がけをするヤンに
緊張をそがれつつも、いつもと同じ暖かい応援をありがたく思うユリアンもまた、
「いってきます」
と同じく笑顔で応え、ヤンの住居のあるフロアから出かけていったのである。
「ふう、どう手をつけたものだかな」
これは長年の経験の賜物か危なげない手つきで紅茶を淹れ、それでブランデーを割ったものを
口に運びながらヤンはソファーに座り込んでぼやいていた。
時計を見るとまだ午後二時。フレデリカがやって来るのは一時間後。
流しにて待ち構える奴らの規模を見るに、自分でも三十分費やせば片付きそうな量である。
艦隊戦とはまるっきり違う部分の神経を消耗しすぎたのか、ブランデー入り紅茶のせいか
生来の性分か、ヤンはそのまま眠り込んでしまった。
…ひかえめに玄関のベルが鳴らされている。それが数度繰り返され
「ユリアーン、お客さんだよ」
柔らかいクッションに顔をうずめたまま声をあげる。
(どうせこの時間に来るのは正式な客じゃない、セールスか何かだって…さてもう一度)
さすがに眠りの女神も呆れ返ったのか、寝返りを打とうとしたヤンをソファーから
突き落とした。その衝撃に、ようやくヤンも目が覚める。怠惰という毛布を投げ捨て
起き上がり、ビジフォンも確認せずに慌てながら廊下を走って玄関に向かう。
玄関のロック外しがこんな時に限って何度も失敗してヤンは舌打ちをする。
普段は呑気な主人の切羽詰った迫力に恐れ入ったか、錠はカチリとロックを解き
その音と同時にヤンはドアを引いた。
129 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 17:51:39 ID:PQprE/uF
その来客はいきなり引かれたドアに一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに笑顔へと変わった。
「おくつろぎのところを申し訳ありません、提督」
「いや、大丈夫。お待たせして申し訳なかった」
「いいんですのよ。それより私こそお休みのところを起こしてしまって、すみません」
なんで寝てた事が分かったんだろう?目を丸くしたヤンにフレデリカは種明かしをした。
「ほっぺに、跡がくっきり残っていますもの」
くすくす笑うフレデリカの前で頬をこすったヤンは、クッションの刺繍が自分の頬に跡をつけた
犯人だと見当をつけた。だがこの場合罪が重いのは来客の存在を忘れていたヤンである。
「いや、その、なんといっていいか…」
気の毒なほどうろたえるヤンに、フレデリカは失意よりも愛しさが増すのを感じていた。
「私は気にしてませんわ。熱いお絞りをあてればそれぐらい、すぐ消えますから」
「じゃ、どうぞこちらに」
半端にのびた髪をかきまわしながら先を歩くヤンの後頭部が寝癖で跳ねているのに気付いたが
(それは言わないでおこう)
ヤンに対しては、どこまでも点が甘くなるフレデリカであった。
130 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 17:52:26 ID:PQprE/uF
お絞り作りますから少し借りますね、とことわってキッチンに向かったフレデリカを見送った後、
ヤンはあることを思い出し慌てて後を追いかけたが、もう遅かった。
「ああっ!その、それ…いま片付けようと思っていたところなんだ」
宿題を忘れたジュニアスクールの子でもずっと気の効いた事を言うだろうに、それ以下の
言い訳をしながらヤンはダイニングテーブルに置かれた残骸を流しに運ぼうとしたのだが
「それは後回しでいいですわ。それに、二人でやった方がずっと早く片付きますし」
それより、とフレデリカは続けて言った。
「今日は提督が手作りのスイーツを作って下さってるとユリアンから聞いてます。
本当に楽しみにしてきたんですよ」
もともと相当の美女である彼女が、さらにはにかみながらそんなことを言うのである。
ヤンは舞い上がる寸前であったが、かろうじて招待主であるということを思い出し
フレデリカを居間のテーブルに着かせる間に、どうにかデザートの最後の仕上げをした。
美しいカッティングが施されたガラス皿の上に鎮座しているのはストロベリームース。
女性が好きなもので、春を感じさせるならイチゴを使ったものにしましょうとの
ユリアンの提案であるが、ヤンにも出来るという制約をクリアしていたからでもある。
筒型に型抜きされた淡いピンク色の頂点に生クリームが絞られ、ミントの葉と
スライスしたイチゴがトッピングされている。そしてカスタードソースが流されて
(このソースはユリアン作なんだ、との注)イチゴソースが一筋、垂らされている。
盛り付けただけだよ、とヤンは言うがレストランに出てもおかしくない一皿である。
そして、一杯の紅茶。
131 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 17:54:41 ID:PQprE/uF
なんにせよ、あのヤン・ウェンリーが、あの不器用な人が、自分一人だけのために
頑張ってくれた、その事実だけでフレデリカは胸が一杯だったが、感想を言わねばなるまい。
磨かれたスプーンを手に取り、上品な仕草で口に運んだ。
「…美味しいですわ!本当に美味しいです」
「それは良かった。じゃ私もいただこうかな」
ユリアンの手がどれくらい入っているかなんて想像はヤンの照れた笑みの前には意味が無く、
この時間が続きますようにとフレデリカは心の底から願い、この幸福に全身で浸っていた。
紅茶が切れ、おかわりを淹れにヤンを制して立ち上がったフレデリカはポットと一緒に
ボウルも持って戻ってきた。
「それは…?」
「あんまりにもクリームが美味しくって、持ってきてしまいました」
少女のように快活な笑顔を見せて、フレデリカはボウルの中身をムースに盛っていく。
「お年頃になれば節制したりしましたけど、甘いものが本当に好きでして…」
どこを気使う必要があるのか、細くくびれたウエストの持ち主はヤンに微笑んでみせる。
そうしてとても美味しそうに山盛りのクリームを口にしているので、ヤンは自分もと
手を伸ばしたが、とうとう器用の神様の加護が見放したのか、ボウルをひっくり返してしまった。
132 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 18:01:39 ID:PQprE/uF
「まいったな…」
そんなことを呟いてもこの惨状が消えてなくなるわけではないのに無意識に出てしまう。
ナプキンを探そうと立ち上がるヤンを、フレデリカは慌てて押しとどめた。
「そのままで!被害が広がってしまいます。その場でお待ちになってて」
有能な副官はきびきびと上司に指示し、タオルを取りに居間を出て行った。
ソファにも飛び散ったクリームを拭き取り終わって、今度はヤンの方に身体を向ける。
「すまない」
ばつが悪い顔で謝る愛しい男に気にしないで、と声をかけようとしてフレデリカの頬がゆるむ。
「もう、顔にもついてますわ」
ヤンの頬に軽い感触と、音がした。離れていくフレデリカの頬はほんのりと染まっている。
133 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 19:27:56 ID:hg66yt41
wktk
134 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 21:16:44 ID:PQprE/uF
それだけでヤンの血圧は急上昇したというのに、さらに服のクリームを拭き取りに入って
屈みこんだ姿勢の所為で、襟ぐりが広く開いた春らしいたまご色のニットからフレデリカの
目を射んばかりの白い胸元とそれを彩る清楚な色使いのレースが見えたものだから、
ヤンの血液が今度は急下降した。
「…」
「…」
お互いに了解しているが、口にはしないというのが大人の気遣いでありマナーである。
なるべくさりげない動作でズボンに飛び散ったクリームを拭きとる作業を続けていく。
とにかく緊急処置が終わり、どちらともなくほっと息をついた。
「シャツ、脱いでください」
照れ隠しか、そっけないぐらいの簡素さで言い渡されたヤンはもつれる指を
どうにか動かしシャツを脱ぐと、フレデリカはそれを受け取り洗面所に向かった。
生クリームのタンパク質が固まらないようぬるま湯でざっと流し洗濯液に漬け込んだ後、
手を拭いながら戻ったフレデリカはなんとも言えない気持ちに包まれていた。
(結婚生活ってこんな感じなのかしら…)
補給基地でのプロポーズの時よりも、自分は結婚するのだという実感がひしひしと沸く。
それも相手は少女のころからずっとファンで、追いかけ続けたあの憧れの人。
135 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 21:17:23 ID:PQprE/uF
だが、この姿を見ていったい誰があのミラクルヤンだと気付くだろう。
申し訳なさそうな情けない顔をして、上半身裸のままソファーに胡坐をかく30過ぎの男。
(この人が、私の夫になるだなんて…夢みたい。)
どうか恋の魔法よ解けないでくれ、と半分真剣に黒魔術を考えたキャゼルヌも、
これを知ったら心配も杞憂で終わっていたことに感涙で咽ぶことであろう。
「じゃ、洗い物片付けますね」
食器をトレイに乗せてキッチンに運び、フレデリカは軽く腕まくりをした。
ひっくり返ったボウルにクリームがまだ残っているのをみて、思わず指で掬ってしまう。
ぺろりと指を舐めながら、つくづくと感心するフレデリカであった。
(本当、ユリアンって料理上手ねえ。地球に行く前に私もなんとかしなきゃ)
もう一度、というところでフレデリカの心臓は飛び上がった。
ヤンがいつの間にか後ろに立ってフレデリカの手元を覗き込んできたからだ。
「私ももらおうかな」
そのままフレデリカの指についたクリームを自分の口に持っていき、ぱくりとくわえた。
136 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/06(月) 21:17:56 ID:PQprE/uF
かあっとフレデリカの頬が染まった。
あまりに初々しい婚約者の反応に、ヤンの脳内で火花が散る。
上半身裸のままの姿でフレデリカをこちらに向かせ、精一杯優しく抱きしめると
フレデリカも心得たように持っていたボウルをテーブルに置き、両手をヤンに回した。
髪をまさぐり、上を向かせて不器用な、けれども情熱のこもったキスを唇に落とす。
そのまま唇を割っていき舌が絡んでいくとフレデリカはキュッと眉根を寄せた。
ブランデーの濃厚な味。ちゅく…微かな水音がキッチンに響く。
(身体をあたためていたのかしら…?)
そんな推測はセーターの背中にもぐりこんだ手の動きによって中断された。
暖かい、乾いた大きい手がフレデリカの肌を優しく撫で、ゆっくりと燃え立たせる。
唾液で濡れた唇を声を出さず「いい?」との形に動かすと、フレデリカは目で頷いた。
ちょうど腰の高さのテーブルにフレデリカが腰掛け、ヤンがのしかかる。
フレアスカートの脚は割り開かれ間にヤンが立ち、ストラップレスのブラは
後ろのホックを外すと難なく引き抜かれ、フレデリカのセーターは不規則に盛り上がる。
肌が外気にさらされ、セーターが捲り上げられたのだと分かる。ヤンに合わせて
セーターから首を抜き、フレデリカは白く輝く肌をヤンの前に惜しげもなくさらした。
137 :
119
:2006/03/07(火) 00:04:54 ID:kwqdOv4T
フレひとりエッチねた。
そっと内股をなで上げる。
「っ―――」
冷たい感触が、フレデリカの心を熱くさせる。
寝台にあったヤンの写真に目をやり、小さく呟く。
「あなたがいけないのよ……あんなにはやく逝ってしまうんだもの」
顔を赤らめ、フレデリカは写真たてをそっと倒した。
―――天上で観察なんてしないでくださいね……?
割れ目に、そっと指をすべらせる。
少しだけ溢れていた蜜が、指先を湿らせた。
懐かしい感触に、思わずフレデリカは涙を流す。処女を失った日、彼女は神に感謝すら捧げたのだ。あの人が、少し困った顔をして、そっと舌を伸ばして―――
未亡人というものは、こんなにも哀しい生き物なのか。
クリストスを刺激する。中指でそっと撫で上げ、親指で押さえ込む。
「あなた……」
無意識に流れでた旋律が、鳥肌を立てさせる。
指を三本突っ込むと、ぐちゃぐちゃにかき回した。蜜の甘酸っぱい匂いが、ベッドを侵食しだす……。フレデリカは我慢ならなくなって、乱暴に自分の胸を握りしめた。
酔いがまわり、頭の中に靄のようなものが立ち昇る。
それが結晶化して、人となる。
「ん―――?」
フレデリカは戸惑いの声をあげた。
分岐点
→ヤンが幽霊となって返り咲き
→ユリアン・ミンツと親子丼
→シェーンポップ
138 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/07(火) 00:16:08 ID:F8ao5oA5
ユリアンに一つ。
139 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/07(火) 00:16:30 ID:aQacpDdf
>>127
さん うををを(゜Д゜)!!久々にキタ━━━━━(゚ ∀゚ )━━━━━!!!!!続き待ってます!
>>137
テーマが一人エチーだからそれで終わっても良いと思う。けどとりあえずヤン亡霊となって返り咲きに一票
ところでシェーンポップ・・・・って?
140 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/07(火) 00:44:07 ID:ptLVc9xr
シェーンポップかわいいねシェーンポップ
141 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/07(火) 01:09:02 ID:c5YVCfjT
うを神続々降臨。
>>139
ちょっと打ち間違っただけだろうから突っ込むのはカワイソス
142 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/07(火) 01:51:55 ID:oU8WNyLn
先ほどまでの愛撫で、双丘の頂点は主張するかのように可憐に立ち上がっており、
目の前の光景にヤンは内心幾度感嘆したか分からない。
そして、大き目のテーブルの片隅に寄せられたボウルに目が留まった。
普段なら考えもしないようなことがヤンの脳内に閃く。
(そういえば…さっきはこぼしてしまって食べ損ねたし、)
考えるより前に、手はすでにボウルを引き寄せていた。
婚約後、幾度かヤンとそうなることはあったが、昼間から、それもベッド以外という
こともあって、フレデリカは恥ずかしさからか軽く目をつぶっていた。
ヤンの手つきは経験による自信か、初めてのときのような躊躇さは見られない。
不意に、胸にひんやりとした、それでいて奇妙な感触が訪れ、不思議に思った
フレデリカは目を開けて己の胸元を見下ろした。
「な、なにを…!」
あまりのことに身をよじるが、腕の途中で止まったセーターがその動きを制限する。
「ああん!うん、ん」
白い肌にこれまた純白の生クリームを盛られ、正に極上のデザートとなったフレデリカを
ヤンは熱心に舐め取っていく。
体温で暖められたクリームが丘を滑り降り、それをヤンの舌が追ってすくい取る。
思いもよらぬところからもたらされる快感に、フレデリカの皮膚がぞくりと粟立った。
143 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/07(火) 01:53:07 ID:oU8WNyLn
中身がこぼれたせいもあり、さほど間もなくクリームは全部きれいに舐め取られたが
そんなにも長い時間胸への愛撫を受けたことが無かったフレデリカの息はすっかりあがり、
美しい裸身をテーブルの上に力なく横たえていた。
単なる思い付きがそこまでフレデリカを蕩けさせたとは知らぬヤンは、手を伸ばして
スカートのホックを外し、腰を優しく抱き上げて床にスカートを滑り落とさせた。
すでに役割を果たさなくなっているレースに縁取られたパンティも丁寧に引き抜くと、
それは湿った音をたてて床に落ちる。
フレデリカの身体を引き起こすと、目線が丁度同じ高さになった。
なんて恥ずかしいことするんですか、と控えめに抗議する妻(予定)に優しくキスしながら
でも、気持ちよさそうだったよ。ここも、ほら。
テーブルに垂れるほど、しとどに濡れたそこを軽くかき回すと新妻(予定)は
白桃のような尻を揺すらせ、悦びの声をあげてヤンにしがみついた。
指を差し込むとじゅぷり、と水音がする。
軽く頭を振って快感に震えるフレデリカの膝を割り、ヤンは身をテーブルの下に沈めた。
144 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/07(火) 01:53:46 ID:oU8WNyLn
眼前には、充血して開ききり赤く濡れたフレデリカの華。
そのまま顔を寄せていき、頂点の芽を舐めしゃぶり、吸い上げ甘噛みをして快楽へと攻めたてる。
「っ!……ひ、あぁぁぁぁっ!」
さっきとは比べ物にならないほどの恥ずかしさにフレデリカは身悶えるが快楽に痺れた下半身は動かず
テーブルの端を握り締めるしかできない。
ぴちゅ…ちゅくっ…
生クリームと違い、舐めとっても舐めとっても雫は溢れてきりが無く、むしろ量を増す様子に
とうとう我慢ならなくなったヤンはズボンの前を緩め、フレデリカの膝を両腕に抱えると
ひくつくそこに自分の硬く猛ったモノを押し付けて一気に貫いた。
「やっ!やっ…ん…あぁああっ!」
侵入したヤン自身を締め出すところか、フレデリカの内部は自然と律動しては奥へ奥へと
誘うように蠢いて暖かく絡み付いてくる。
以前に身体を重ねた事と、テーブルの高さもほどよいことで、幾分か余裕のあるヤンは
緩急をつけて自在にフレデリカに腰を打ち込む。
ギシギシとテーブルは揺れ、振動でボウルがガランと派手な音を立てて床に転がり落ちるが
中身は空っぽなので気にも留めない。もし入ってても、この状態では目もくれないだろうが。
「あん!っやぁぁ…も、う…溶けちゃ、う」
さっき二人で食べたストロベリームースと同じく、全身を淡くピンクに染めたフレデリカの
イチゴのように赤い乳首と、甘いソースが溢れるそことをヤンはじっくりと咀嚼し、
時間をかけて彼女を味わっていく。
145 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/07(火) 01:54:37 ID:oU8WNyLn
「あ、あ、あっ、ああん!あっ、あっ、あっ、ぁああああ!!」
一際大きな声を上げてフレデリカは生クリームのような喉の白さを見せつけるように仰け反り
ふっと脱力した。先程まで歓声をあげていた唇に、淡い笑みが浮かぶ。
ヤンの背中が、ぶるりと震え、クッと声が漏れた。
「ああ…ウェンリー…」
ヤンの胸に頬擦りをしながら、愛しい男の名を呟く。
「愛してるよ…フレデリカ」
息の切れ間にヤンが囁き、フレデリカはうっとりと肯いた。
言葉もなく、二人の荒い息遣いだけがキッチンに満ちる。
腰に力が入らないのでヤンの手を借り、テーブルから引き起こされ床に足を下ろすと
内股を伝う感触に、フレデリカはふるりと身を震わせた。
「ちょっとやりすぎちゃったかな…」
いいえ、大丈夫ですわ、とフレデリカはヤンの唇を優しく指で押さえ
「それより、シャワー使わせていただけません?」
さきほどまでの快楽の残滓をシャワーで洗い流して、清潔なバスローブに身を包んでバスを出ると、
同じ格好をしたヤンがフレデリカを呼んでいる。ふかふかのスリッパを鳴らして側に寄っていくと
「お好みのドリンクはあるかい?」
「ガス水は、あります?」
「ええっと…こりゃちょっと高い場所にあるな」
待ってて、とヤンが冷蔵庫の奥に手を突っ込んでペリエの瓶を引きずり出しはいいが
その所為で整然と詰め込まれた内容物がガラガラと転げ落ち、ヤンの頭を直撃した。
憮然とした顔をするヤンに笑いが止まらないフレデリカであったが、早く冷蔵庫に仕舞わねば。
床に転げ落ちたものを拾い始めた二人の視線が、あるものに止まって動かなくなる…。
146 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/07(火) 01:55:11 ID:oU8WNyLn
訓練から怪我も無く無事に帰ったユリアンは、朝からスーパーマーケットに向かっている。
途中、ジョギングをするフレデリカとばったり会った。
「あらユリアン、おはよう。早いわね」
「ちょっとスーパーに買い物に行くんですよ。フレデリカさんは?体力づくり?」
「ううん、違うの!ダイエット、なの。ちょっと甘いもの食べすぎちゃって」
なぜか目線をユリアンから外して慌てたようにジョギングの口実を口にする。
「それでダイエット?そんな、するほどじゃないのに」
別れた後の道すがら、ユリアンは普段から意識しているから、ああやって美人なのかなあと
フレデリカの陰の努力にひたすら感心していた。
(一応、あのデザートはローカロリー計算で作ったんだけどな)
角のスーパーが見えてきて、ユリアンはもう一度買うものを脳内で確認する。
パンにかける蜂蜜と、焼いたスコーンにつけるジャムと、そうそうチョコレートクリームと。
全部一度に切らすなんて、自分にしては珍しいよなあ…。
〜end〜
147 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/07(火) 01:56:24 ID:oU8WNyLn
こうして、
>>119
さんのにつながると思ってくださればw
こんなことやってりゃそりゃ未亡人になって切なくなるよな…
(自分で書いておいてなんだソリャ)
ではまたノシ
148 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/07(火) 02:08:42 ID:aQacpDdf
乙━━━(゚ ∀゚ )━━━!!!!!こんなに早くくるとは!!神ありがとう!GJ!
>>141
漏れ139だけど、ごめんツッコんだんじゃなくってもしかしてシェーンコップとポプラン二人でってことなのかと思って聞いてみただけ
きつかったらスマソ。
149 :
119
:2006/03/07(火) 16:57:37 ID:oRH+1yTS
>127
神さまありがとう
>148
ごめんただの打ち間違え。でもシェーンコップとポプランだったら質も量も完全だしいいかも。むしろ気使わせてスマソ。
150 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/07(火) 17:36:30 ID:XujZI7tv
提督のチョコバナナ!(・∀・)
151 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/07(火) 22:59:16 ID:j9n9kElu
クリームにハチミツにジャムにチョコクリーム
高カロリーなプレイワロスww
152 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/08(水) 00:26:22 ID:HH5RcLMp
>>125
キュンメル男爵だな。それでいこう。
153 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/08(水) 06:19:47 ID:EGQGIZaO
それでは
>>152
神の降臨をしばし待つとしようか。
154 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/08(水) 07:52:46 ID:EGQGIZaO
アッテン×ヒルダできないこともなさそう。
あらすじは、出来た。ノシ
155 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/08(水) 08:37:27 ID:VEGccW5L
ここは神がたくさんおわしますスレですね。
>>152
,154お待ちしております。
156 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/08(水) 14:06:23 ID:Ot3k4l1x
突然動き出しましたね〜(o⌒∇⌒o)
お二人とも期待しています!
157 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/08(水) 17:43:46 ID:HH5RcLMp
楽しみだな〜
158 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/08(水) 20:07:50 ID:xJRyGVAJ
>>154
お待ちしております!
アッテン好きなんだけど、このスレではどうしても日陰者だし・・・
159 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/08(水) 21:47:56 ID:HH5RcLMp
神に期待して待ってます。
160 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/09(木) 01:59:54 ID:cjsbBDAO
アイゼナッハとその妻
キボン。
161 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/09(木) 02:11:01 ID:dKktFPG8
やっぱり会話は無いのか?w
162 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/09(木) 02:51:23 ID:HiDTaHCD
ケスラーとマリーカ読んで見たい。原作だと殆ど描かれていなかったので…
163 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/09(木) 04:28:24 ID:MUnugjm/
>>161
指を一回鳴らしたらフェラ。二回鳴らしたらバックの姿勢で尻を突き出す。
とかって決まっているんだよ、きっと。
164 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/09(木) 16:57:08 ID:A9JBm4NW
>>147
萌えた(*´д`)乙でした〜
蜂蜜とジャムとチョコクリーム全部使い切るとは
おまいらどんだけやったん(ry
ひとりエチーの続きも期待してますハァハァ
165 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/10(金) 00:08:05 ID:hda3mVbx
>>163
ワロタ
166 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/11(土) 00:06:40 ID:oBMS17Qn
神さま〜オラの願いを叶えてけれ〜
167 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/11(土) 01:13:44 ID:j3n16kn/
みんな頑張れ〜
>>119
さん待ってるよ!
168 :
119
:2006/03/11(土) 17:47:11 ID:ALuLizuz
>164さん167さん
分岐点設定したはいーがネタが浮ばない!
169 :
119
:2006/03/11(土) 18:02:05 ID:ALuLizuz
のでまぁ、ハインリッヒ×ヒルダ(微妙にひとりエッチっぽい)でも気分転換に書いてみます。
ハインリッヒが久しぶりに従姉に会いたがっているという。ヒルダはハンスからそう聞くと、上司であるラインハルトから一日の休みをもらった。ハインリッヒとは久しく会っていないのは事実である。きっと寂しい思いをしているのだろう。
「ハインリッヒ? 入るわよ」
「ヒルダ姉さん! どうぞ」
青白い頬が、わずかに紅潮したように見える。
ヒルダの姿を認めたとき、瞳に宿る光が歓喜から困惑に変わった。
「……あれ? どうして軍服なんですか?」
「わたし、一応軍人になったのよ」
「わぁ、すごい! さすがヒルダ姉さんだ。多分帝国ではじめての女性軍人ですよ」
ヒルダは微笑した。
「ヒルダ姉さんは、やっぱりすごいなぁ……」
恍惚とした表情である。ヒルダとハインリッヒは、2時間ほど談話した。陽が傾きはじめると、ヒルダは席をたつ。
「そろそろ帰るわね。暗くなるから……」
「え? もう帰るの?」
「ええ、それに仕事もあるし……」
「ラインハルト・フォン・ローエングラム侯爵の秘書としての?」
「ええまぁ」
珍しく歯切れの悪い返答であった。
「今日くらい止まっていってくださってもよろしいでしょう? 部屋はいくらでも用意しますから」
「そうねぇ……」
明日の朝、5時くらいに起きれば、出仕時刻には間に合うだろう。
ヒルダはそう考えると、うなづいた。
「そうね、そうしましょう」
「やった。ありがとう、ヒルダ姉さん」
ハインリッヒは微笑んだ。曇りのない嬉しそうな笑顔に、ヒルダは自分の決断が間違っていなかった事を知った。
170 :
119
:2006/03/11(土) 18:18:02 ID:ALuLizuz
止まる→泊まる 間違えました。
食事が済み、ハインリッヒと少し話すと、ヒルダは寝室に向かった。体が熱く、また眠かった。熱でも出たのだろうか? シャワーを浴び終えたヒルダのもとに、ハインリッヒの侍従である少年が駆けつけた。
「申し訳ございません、フロイライン・マリーンドルフ。ハインリッヒさまが眠れないので傍にいて欲しいとおっしゃられているのですが……」
「そう、ハインリッヒが……。いいわ、行きましょう」
ヒルダは快く承諾した。弱く儚い従弟の存在は、ヒルダの母性をくすぐったのだ。
「ハインリッヒ、入るわよ?」
「ヒルダ姉さん……」
ハインリッヒはベッドに上半身だけ起こしていた。
「どうしたの、顔色が悪いかと思ったらいいわね。よいことだわ」
「ヒルダ姉さん、お願いがあるんです」
「なあに?」
「僕はもうすぐ死ぬでしょう」
「ハインリッヒ!」
「いいえ、僕は知っているんです。知っていて、ヒルダ姉さんに最後のお願いがあるんです」
ハインリッヒは自分で自分の肩を抱きこんだ。声が過剰に震えていたが、三割がた演技だった。
「……僕、女のひとを抱いてみたいんです」
「……ハインリッヒ??」
「お願いです。今宵ヒルダ姉さんを抱かせていただけませんか?」
「ハインリッヒ、よく聞いてね。
まず第一に、そういった行為はあなたの体にさわるわ。
第二に、わたしたちは従姉弟で、倫理的に問題があるわ。
第三に、あなたのその体でそういった行為を行うのは不可能なのよ!」
「知っています、姉さん」
「だったら……」
ほっとしたヒルダだったが、次のハインリッヒの言葉で凍りついた。
「だからそういった行為を見せてくださいませんか?」
絶句したまま固まるヒルダに、ハインリッヒは話を続けた。
「僕、女性の裸体とか痴態とか見るのが好きなんです」
「ハインリッヒ……」
ヒルダは呟いた。まさかあんなにかわいかった小さな従弟にそんな趣味があるとは。男性って見た目によらないのね、と、ちょっと現実逃避して考える。
「僕、女性も知らずに天上に行くのかな……」
さびしそうに、ハインリッヒは独語し、涙をこぼした。完全に演技であるのだが、ヒルダは動転していてそのことに気づかなかった。
「な、泣かないで、ハインリッヒ……」
「だって、僕、僕……」
しゃくりあげて泣き出す従弟の姿に、ヒルダは決意を固めた。
「いいわ、いいわ、ハインリッヒ。見せてあげる。だから泣かないでね。でも、今日だけよ? いいわね」
ハインリッヒは顔をあげた。向日葵のような笑顔。
「ありがとう、ヒルダ姉さん……」
ヒルダは心の中で溜息を吐いた。
なんでこんなことになったんだろう……。
171 :
119
:2006/03/11(土) 18:31:03 ID:ALuLizuz
「で、どうしたらよいの」
ハインリッヒは嬉々として答える。
「まず服を脱いで」
「……電気、消していいかしら」
「駄目です! 見えないじゃないですか」
「……そうね」
ヒルダは金具をはずし、ベルトを取った。黒い制服が自然とはだかれ、薄い下着からブラジャーが覗く。白と淡紅色の、繊細な薔薇のレースでできたブラジャーに、ハインリッヒの瞳は惹き付けられた。
「勝負下着じゃないですか」
「違うわよ……」
否定する声が、我ながら弱弱しい。
「違いませんよ。誰とするつもりだったんです? もしかしてラインハルト・フォン・ローエングラム?」
ヒルダは真赤になって首をふった。が、ハインリッヒはまったく信じなかった。
「もしかしてそうなるかと思って準備してたんですか? いやらしいですね」
軽蔑したような声だった。……なんで自分はこんな目にあっているのだろう……? ヒルダはちょっと不思議だった。
「ちょっと上から揉ませてください」
「え? でも、見ているだけって……」
「そうですね。じゃあ揉んで下さい」
墓穴を掘るってこういうことを言うのかしら。
「ハインリッヒ、でも」
「約束を破られるのですか」
非難する響がある。「そうね」と諦め、ヒルダはそっと胸に手をやった。頭痛がして、うまく頭が働かない。
172 :
119
:2006/03/11(土) 18:51:01 ID:ALuLizuz
「もっと強く!」
叱責が飛ぶ。ヒルダはぼんやりする頭で、従わなくちゃ、と考えた。ブラジャーと薄い下着の上から、胸を掴んで揉む。薔薇のレースが肌に食い込む。
「っ―――」
「感じてるんですか?」
楽しそうなハインリッヒの声がした。ヒルダの顔が真赤になった。
「そうですね、もっと気持ちよくなりたいですよね。それじゃあ、下の方のベルトも外して、そこからショーツに手を入れてください」
ヒルダは無言でそれに従った。
「あっ……」
ショーツに入れた手の冷たさに、自然と声があがる。
「はははは、体は正直ですからね……人差し指と中指と薬指の中をぐちゃぐちゃにかき回してください。それから、下着の中に手を入れて、ブラジャーを外して直に揉んで下さい」
三本の指で刺激された性器は、蜜を溢れさせていた。水音が、静かに部屋に響く。
(いや。何なのこれ……)
甘酸っぱい匂いに嗅覚が反応する。体が喜びを感じていることに、ヒルダは困惑していた。
「やぁあ……あっ」
指がクリストスを刺激してしまい、彼女は自分でも予期しなかった声をあげた。ハインリッヒの目が細められる。
「いいなぁ、その顔。ヒルダ姉さんのそんな顔が見られるなんて、すごい名誉ですよ。
きっとその名誉は今までローエングラム侯爵が独占していたんでしょうね?」
ハインリッヒは勘違いをしている。ヒルダの頭脳の冷静な部分がそう言った。ラインハルトの顔が鮮明に浮び、逆にヒルダの快感は高まった。
ブラジャーのボタンを、むしろ積極的にはずして、ヒルダは乳首を人差し指と親指でもてあそぶ。
「あぁあ……あぁあ……あっ」
ピンクの乳首が、直立している。大理石の肌は、体中炎の神に接吻されたように赤い。
「そんな顔、マリーンドルフ伯が見たらなんていうかなぁ。淫乱な娘だって、きっと悲しむでしょうねぇ」
ハインリッヒは興に乗ったようにヒルダを責めた。
「僕もちょっと失望しましたがね、あの快活で聡明なヒルダ姉さんが、そんなメス豚みたいな格好しているのは……」
ハインリッヒは苦笑した。誰がそう仕向けたのか。
「しかしまぁ、感じるものは確かにあります」
とうとう立っていられなくなったヒルダが、床に崩れ落ちた。
「ちょうどいいですね。ズボンとパンツを脱いで足を開いてくださいな」
ヒルダは潤んだ瞳を従弟へ向けた。
173 :
119
:2006/03/11(土) 19:10:03 ID:ALuLizuz
「そんなこと、出来るはずないじゃない……」
「恥ずかしがらなくて結構ですよ。ここには僕と姉さんしかいませんから。脱いでください」
ヒルダはしぶしぶ、ズボンだけ脱いだ。薔薇のレースの下着から、薄くくすんだ金髪の恥毛が覗く。
「下着も脱いでもらえますかね?」
「だって、ハインリッヒ……」
「ここまで来て止めるのはなしですよ。それとも僕が脱がしてさしあげましょうか?」
ヒルダは首をふった。それは恥ずかしすぎる。下着を脱ぐと、蜜が尾をひいてきらきら輝く。ハインリッヒは微笑した。
「綺麗ですね。それ、僕に下さい」
「嫌!」
「……姉さん? 自分は今どんな状態にあるかわかってるんですか? 侍従と医者呼びますよ」
ハインリッヒの部屋には、いざというときのために侍従と医者にインターホンが繋がっていた。押せばすぐに医師団がかけつけるだろう。ヒルダはそのことを知っていた。
「わかったわ……」
彼女は立ち上がると、数歩歩いて、ハインリッヒに下着を手渡した。彼は楽しそうに下着を観察すると、そっと匂いを嗅いだ。
「ハインリッヒ!!」
ヒルダの顔が紅潮する。
「ヒルダ姉さん、少しうるさいですよ。貴女らしくないですね。ほら、床にお尻をついて股を広げてくださいな」
「……いつからそんな下品な言葉使うようになったの」
「御股をお開き下さいませとでも言えばいいんですか」
ヒルダは小さく嘆息した。莫迦な約束をした自分に向けてか、従弟のジョークセンスに向けてかは定かではなかったが。マリーンドルフ伯爵家の令嬢は、床に座った。
「足を開いてください」
「いや……」
「これは要望じゃないんです。命令ですよ」
ヒルダはしぶしぶ、足を開いた。ハインリッヒは眉をしかめる。
「見にくいですね。膝を両腕でかかえて、もっとよく見えるようにしてください」
「嫌よ……」
「なんなら侍従を呼んでやってもらってもいいんですが」
それはもっとお断りしたかった。ヒルダは、膝をかかえてあげた。性器がハインリッヒの目に飛び込む。
「ああ……」
「見られるだけで感じるなんて、意外にヒルダ姉さんも好きですねぇ」
ハインリッヒの言葉通り、ヒルダの性器からは次から次へと透明な液体が零れだしていた。
174 :
119
:2006/03/11(土) 19:14:06 ID:ALuLizuz
よく考えたらキュンメル男爵って書いてくれる人いたんだ……。
152神期待してますんでよろ。
175 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/11(土) 22:01:50 ID:j3n16kn/
すげぇ━━━━━━ヽ(゚Д゚)ノ━━━━━━ぇえ !!!! 119さんありがとう!うをををっ!
152神も待ってますよ〜
176 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/11(土) 23:10:51 ID:F/1znRd2
そんな…ここで神が身をひかれては殺生な!ヒルダタンも辛かろうにw
別腹は幾人居てもうれしいですよ!
ぜひとも、つ…続きを〜
177 :
119
:2006/03/12(日) 01:39:02 ID:RxXsElbX
では176さんのお言葉に甘えまして。
「やぁ……」
「何が嫌なんです? 頭脳明晰な姉さんらしくないですね。もっと論理的に話してくださいませんか」
「いつからそんなに悪い子になったの、ハインリッヒ」
むしろ救いを求めるような声に、ハインリッヒは笑って見せた。廃屋を吹き抜ける風を思わせる、空虚な笑み。
「姉さんが誘っているとしか思えないような軍服で来たから。貴女のせいですよ」
「―――そんな」
「まぁそれはいい。そうですね、下の方は充分堪能させていただきましたから、今度は上を脱いでいただけますか?」
「ハインリッヒ、ねぇ、やっぱり止めましょうよ、不健全だわ」
泣いて許しを請うヒルダを、楽しそうに病弱な従弟は見つめた。
「ヒルダ姉さんのそんな姿が見られるんだ。どうして止められる?」
口の中だけで呟く。
「姉さん、ヤーかナインか、です。ナインであれば侍従でもよんで脱衣を手伝わせますが……?」
インターホンに手を伸ばそうとするハインリッヒを、ヒルダは止めた。
「脱ぐわ、脱ぐから止めて……」
少年は微笑した。むしろ優しげな笑みだった。
「―――上着を落して」
黒と銀の、華麗な制服が床に接吻した。
「下着も脱いでください」
薄くブラジャーの透ける下着を、ヒルダは脱いだ。繊細なレースのブラジャーの網目から、白い素肌が顔を覗かせている。乳首は痛ましいほどに立っていた。
「ブラジャーのホックを外して、持ってきて、いや、立つことは不可能そうですね。床にでも置いておいて下さい」
ヒルダはその通りにした。
ブラジャーを外すと、豊かな胸が飛び出した。
「……? そうは見えませんが、これは矯正下着というものですか?」
「そんなところかしら」
顔を赤らめて、ヒルダはそう答えた。両手で覆い隠せないほどの、豊満な乳房。
「確かに、この胸に軍服は、軍人たちに犯してください、と頼み込むようなものですからね」
ハインリッヒは、素肌に軍服だけ着たヒルダを想像してみた。ヘタな風俗嬢のドレスよりも扇情的だ。
178 :
119
:2006/03/12(日) 01:54:45 ID:RxXsElbX
「そんな……」
ヒルダは視線をずらした。ふと、今まで受けた好奇の視線を思い出したからである。一般的にヒルダが独裁者の寵愛を受けていると考えられていること、婦女暴行はローエングラム支配下にあっては死に値する行為であることが、ヒルダを護ってはいたのだが。
「歴代の名将にレイプされる自分の姿でも浮びましたかな」
「ち、違うわよ」
「怪しいけれど、まぁいいでしょう。片方の手で胸を、もう片方の手で下の方の亀裂を触ってみてください」
ハインリッヒは急速に重くなっていく自分の頭脳を自覚していた。彼の体力気力ともに、あまり残されてはいない、はやくヒルダをいかせなければ……。
179 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/12(日) 11:13:11 ID:J52bIobP
すげ〜な!続き期待してますよ。
180 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/12(日) 12:35:29 ID:0MkOxQOz
>119さん
キュンメルの暗い情熱がイイ(゚∀゚)!!
続き待ってるよ〜
181 :
119
:2006/03/12(日) 12:37:17 ID:RxXsElbX
いかせなければ? なんだと言うのだろう。
ハインリッヒには確信があった。僕はもう死ぬ。結局、屋敷から外に出ることも叶わず、女を抱くことすら出来ず、この現世を旅立つのだ。
哀れんでくれ、などとは口が裂けても言えない。それは彼の矜持が許さない。神は不平等なのだ。一方では矜持のために戦うことが出来、死んでゆくことが可能な英雄たちがいるというのに、自分はそれを許可されない。それが自分の能力のせいならば納得できるだろう。
しかし、彼は病気のために豊かな未来の可能性をいくつも放棄しなければならなかったのだ。
「ヒルダ姉さん……」
声が震える。
ヒルダはハインリッヒのことはもう眼中にないようだった。進んで胸をいじり、性器内をかき回している。
彼は夕食に媚薬が混入されていたことを知っていたが(というか彼がそう指示したのだが)、聡明で快活で尊敬していた女性の痴態は、興奮とともに一種の失望を彼にもたらした。
結局、この人もメスなのだ。
「姉さん、そんな姿をローエングラム候にさらしているんですか?」
「そんなことあのお方はなさらないわ!」
ヒルダは、顔を上げて否定した。
瞬間、潤んだ瞳から涙が漏れて、頬を伝う。
「……きっとね、あの方も貴女のそういった姿を見ればこういった事をなさると思いますよ」
あの金髪のグリフォン! 美と才を象徴するかのような英雄! 彼は嫉妬していた。ヒルダの後ろに透けて見える男性に、同じ男性としての嫉視を投げかけていたのだ。
「ヒルダ姉さん……そうですねぇ、ベッドに登ってきてください。立てれますか?」
もう少しだけ、大神オーディンよ、吾が願いを聞き届け給え。
深まりつつある肉体的疲労を、どうにかしてごまかしながら、彼は心から願った。
182 :
119
:2006/03/12(日) 12:47:09 ID:RxXsElbX
ベッドに這いつくばるようにして登ってきた女性に、小さく彼は笑いかけた。
「綺麗ですよ、ヒルダ姉さん」
全身を、うっすらと汗がおおっている。
青緑色の瞳が、青白い肌の少年を、おびえるように映す。
その瞳なのだ。朝露に濡れたエメラルドの中に、蒼い炎がたゆたっている。
「僕のズボンを脱がせてください」
びくん、と、宝石の中の炎が大きく揺れた。
「―――脱がせれば、いいの?」
「そうです」
なるべく優しく微笑む。そう、手をかけて、ゆっくりとずらしてくれればいい。隆起した物体を目にして、ヒルダは思わず顔を背けた。
「下着も脱がせて下さったら嬉しいのですが?」
彼女は、汚物を触るように、それを脱がせた。
グロテスクな物体が、彼女の眼前に踊り出る。
「―――舐めて頂けませんかね?」
「嫌よ……」
「姉さん、ここまで来てそれはないでしょう。僕だってもう限界なんです」
哀しそうな顔が、ハインリッヒを直視した。
ああ、この人に教えてさしあげようか。そんな表情は男の扇情するようなものだと。
きっと天然で男を誘える人なのだ、この人は。
ハインリッヒは小さく笑った。よくもまぁ、大本営などという男性社会で無事に生きてこられたものだ。
183 :
119
:2006/03/12(日) 12:53:26 ID:RxXsElbX
「舌を伸ばして、そう、初めは先端からでいいんです」
淡紅色の薔薇のような、可憐な舌がそっと伸ばされる。その姿だけで、充分に魅力的だ。
「ゆっくり、全身を舐めてやってください……」
ヒルダはそれの味に、苦渋の表情をした。ハインリッヒは微笑した。
「まぁ、美味しいとは言いがたいものですからね。うーん、そう、気をちょっとずらしてあげましょう。お尻を高く上げてください」
「そんなはしたない格好できるわけ……」
「先ほど犬のように性器をあらわに乱れていらっしゃったのは何処のご令嬢でしたかな」
彼は破顔した。
ヒルダの、羞恥と憤怒の入りまじった表情の、なんと魅惑的なことだろうか。
ブルーグリーンの瞳には怒り、けれども唇から漏れる声は歓喜の呻き。
「それは……」
「早く!!」
悪童を叱り付けるような感覚て命令してみると、美しい伯爵令嬢はしぶしぶ尻をあげた。
184 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/12(日) 21:41:45 ID:BiVSYJRy
あっ ぴゅっ
185 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/13(月) 00:40:27 ID:yjk3teDJ
神降臨…
186 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/13(月) 03:52:07 ID:846dG/Yc
逝きそう・・・
187 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/13(月) 16:43:27 ID:846dG/Yc
エクセレント!
188 :
119
:2006/03/13(月) 22:52:09 ID:6VUs3aFd
骨と皮で構成された、生気のない手を伸ばす。すっと割れ目にそれを侵入させると、彼女は短い悲鳴を上げた。
「止めないで、咥えてください」
さらに付け加えられた命令に、ヒルダは一瞬ひるんだ。しばしの逡巡のあと、命令を実行する。
ハインリッヒは手を動かしながら、熱いものがこみ上げてくることを覚った。
せまりくる灼熱の快感に目を細めながらも、ハインリッヒは彼を口に含んだ令嬢に目をやった。彼女もそろそろ限界のようで、処女雪に朝焼けのさしたような肌が、小さく震えている。
「姉さん……姉さん!!」
彼は呼んだが、女性は答えない。何かに必死に耐えるような顔をしている。
五感のすべてが性に犯されてゆく。水音、鼻をつく匂い、熱をふくんだ瞳。
ハインリッヒは不意に絶叫した。
その瞬間、彼の手にも熱い液体が降りかかった。
「―――ヒルダ姉さん……」
ヒルダの精液に濡れた顔を優しく撫でて、ハインリッヒは心の中で語りかけた。
「僕はやっぱり死ぬんですね?」
そうでなければ、なぜこの聡明な令嬢が自分なんかの要求を聞くというのだろう。
このか弱い女性を抱くことすら、「お願い」しなければならないような脆弱な人生。
もうひとりの、この愛すべき従姉の仕える男は、自らの矜持に殉じることができるというのに!
「姉さん、やっぱり神さまは不平等なんだ……」
荒く息を吐き出す口に、人差し指と中指をすべりこませる。わざと水音を立てるようにして、口の中をかき回しながら、ハインリッヒは小さく呟いた。
189 :
119
:2006/03/13(月) 22:54:44 ID:6VUs3aFd
これで終わりです。
応援してくれた人たちに感謝します。
あとは神降臨を待つのみw
190 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/14(火) 03:09:34 ID:NsWUjnii
どうも、ご馳走様でした!!!
>>119
ヒルダの味は彼にとって、ほろ苦かったのでしょうな…
隠れ巨乳という設定も案外○ですね。
191 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/14(火) 15:38:38 ID:Kd07ATA1
>>119
こんな裏話があったとしてもおかしくないと思うくらいのいい出来でした。
GJ!
192 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/14(火) 23:51:30 ID:9gMsuACz
イイヨー!
>>119
SUNX
193 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/15(水) 12:47:12 ID:EMCoWKUC
>>119
なんともいえない暗さがたまらんかったよ
乙&GJ!
194 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/18(土) 01:30:50 ID:+Izp8rMt
あげ
195 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/18(土) 09:13:01 ID:Tpibzekb
>>119
乙
196 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/18(土) 11:04:04 ID:FiUL4QMj
お涼さんがレイプされちゃう小説キボウ
197 :
♯紀子
:2006/03/18(土) 15:50:03 ID:yARC6fmO
196さんそれは無理と言うもの。
レイプしたら世界各国から敵討が飛んでくるから。
ドラよけお涼曰く「決闘は女の嗜み。」(ブラックスパイダーアイランド)「やりたいからやるモンクあるか。」(巴里・妖都変)より。
198 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/18(土) 21:58:23 ID:pXc5+5YP
119様キルヒアイスを思って一人寂しく濡れる姉ローゼさまを是非!
199 :
119
:2006/03/18(土) 23:09:46 ID:G/CoH3TN
198様、それはフリードリヒ寵姫時代の話それともキルヒアイス死後の話??
200 :
198
:2006/03/19(日) 00:04:23 ID:jHEpgxkj
おお!119神様!小官はどちらでも萌えられるであります!119様のやりやすいほうでお願いします
あとできましたら
>>105
のユリアンを思って処女カリンが一人でというのもおねがいしたいです。クレクレですいません
201 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/19(日) 18:32:16 ID:jDpZe6Gi
今更ながら39氏、GJ!
ああいうのめちゃくちゃ萌える。
また書いてくれると踊るよ。
どうもアリガト!
202 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/20(月) 18:14:17 ID:dUzciOmp
お涼さんか〜、いいな。
203 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/20(月) 22:50:26 ID:i8xIYpra
お涼様がみすみす犯られるシチュエーションというと
泉田クンを人質に取られて交換条件でor
身体は泉田だけど中の人が別って状況しか思いつかん。
どっちに転んでもタダでは起きずに、泉田(素面)で口直ししそうだがw
204 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/20(月) 22:54:46 ID:BazW6fzf
媚薬嗅がされて(お涼様以外の手によって)理性なくした泉田クンと
半無理くり・半合意くらいが萌えるなぁ。
んでコトが済んで正気に戻ってドン底まで落ち込む泉田クンと何故か慰めるお涼。
205 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/22(水) 02:52:34 ID:8UOy2bom
お涼まだ〜
206 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/23(木) 15:25:41 ID:3UxGRomD
ワクワク
207 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/24(金) 04:14:59 ID:XQt2iIn+
アイゼナッハ家にて、朝食に目玉焼きの目が二つ出ると夜の合図である。
それは子持ちとなった夫婦二人が子供たちへの配慮のために考え出した秘密の通信。
とはいっても妻が出すアイディアに首を振って同意したというのが実情だが。
それでも二人はそれに十分満足していた。
世の不幸な妻の八割が嘆くという夫婦間の会話が皆無という悩みとは無縁だが
それでもここまで至る夫婦の道のりは平坦なものではなかった。
なぜ彼は無口なのかという疑問は、それを不可思議に思うからこそ発芽する。
そもそも夫婦二人のなれそめは互いの知人による紹介であった。
おそらく知人達は二人の似通う雰囲気を感じ取っていたからに違いない。
妻の方はさすがに女性とあって多少は意思表示のため口数は多かったのだが。
そして引き合わされた二人は相手の容姿を好ましく思い、多少のデートのときの
振る舞いにも幻滅を感じることはなかった。そして彼は結婚適齢期であった。
となれば次に来るのは両家の家族親族への婚約者の紹介である。
質実でありながら地味ではない、味は確かなレストランの一室に席が設けられた。
厳かに進められるべき食事会であり、レストランもそのように配慮したのだが
その個室から洩れる音量の大きさに支配人は何度も予約人数の確認をノートと
幾度も顔をつき合わせて念入りにチェックすることになる。
「いやーこんな素敵なお嬢さんが、私の息子とねえ、いや本当に有難い」
「あらあらアナタ、こんな目出度い席だからって舞い上がりすぎですわよ」
「いや私は大丈夫だよ、兄さんのようにはなりませんって」
「本当?いくら無礼講だからって上司のかつらを大暴露した義兄さんよ?」
「あれは大変だったなあ。はっはっは」
「それに義父さんだって」
「ああ父がなあ。新作戦を発案した嬉しさに周囲に自慢しまくってまんまと
同盟軍にスパイされちゃったあれなあ」
「だからってわけじゃありませんが、息子は本当に慎重な性質でしてホホホ」
「これなら安心だってことで俺も肩の荷が降ろせますよ」
「まだ退役まで数年あるんですから気を抜かないで下さいよ、アナタ!」
「いやはやこっちのことばかりで申し訳ない。さ、では始めましょうか」
208 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/24(金) 04:16:01 ID:XQt2iIn+
プロージット!!
妻側といえば、皿の上をみてムッツリとした顔へと変じた夫を見やり
さりげなくインゲンを自分の皿に盛り変える妻。あまりのさりげなさに
脇に控えるウェイターもその不躾さに眉を跳ね上げるのを忘れるほどであった。
慣れた事、といったように母親の仕草を見つめる娘。
父親は、年間多数の論文を発表する著名な経済学者でありながら
頭脳の高さと日常能力は比例しないという実例を自ら証明しているのである。
かくして、余計な口を開いて災禍を招かないよう心がける慎重な男が出来上がり
表情の如何とで相手の次の行動と心情を読める女性という稀有な夫婦がめでたく
誕生したのであった。
新婚初夜、お互いに何をなすべきか分かっている二人はベッドに入った。
彼の動作には軍人らしく無駄がなく、顔は平静時と変わらなかったが
滝のように流れる汗が、内心の緊張を物語っていた。
むろん新妻もそのことに気付いており、夫の動きを妨げないようさりげなく
体の位置を入れ替えたりしていた。ときおり妻の指が彼の身体に触れると
アイゼナッハの息が大きく、荒くなったように思えた。
ついに、その時がきた。
妻は割り開かれる肉の痛みにただ驚き彼にしがみつくしかなかったが
その驚きはさらなる驚きに取って代わった。
「あ、愛してるよ」
「ええ、あ、あなた、あっあっあ、ん、んん」
「うっくううううう、うあっ!おおおっ、お…ぐっ!ああああ!」
「あ、ああっ!……………。」
その声の賑やかなことといったら。妻のよがり声よりもバリエーションが広い。
アイゼナッハの叫びは静かな湖畔のホテルの一帯に響いたのかもしれない。
翌朝、ロビーに「野生の動物が多数いると思われます。散策時はご注意を」との
張り紙があったので。
そしてハネムーンベイビーが夫婦に訪れ、順調に家庭は営まれている。
あいかわらず慎重なアイゼナッハは職場では無駄口を一切開いていない。
彼の声は寝室でのみ聞かれるのであったがそのことを知る者は、誰も居ない。
209 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/24(金) 08:19:26 ID:Du812ZP7
GJ!
少々まわりくどいが読みやすい文体で
原作をよく読み込んでるなあと感服。
210 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/24(金) 09:28:56 ID:81OadVLn
GJ!
mopera+p2+自前ノートでコソーリ読んでたら、
爆笑しそうになったじゃまいか!
211 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/24(金) 16:09:47 ID:DtN8jYUi
207さん面白かった! 乙
212 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/24(金) 16:12:10 ID:DtN8jYUi
皇帝ラインハルトの国葬が終了した夜、ヒルダはアンネローゼの私室を訪れた。30分ほど談話したあと、アンネローゼは皇太后にこう言った。
「ヒルダさん、私はもしかしたら、あなたを不幸にしてしまったのかもしれません」
「アンネローゼさま……」
「でも、あなたは弟にとっても、帝国にとっても必要なお方です。どうぞ、何があろうと弟の意思を継いでやってください。お願いばかりしてしまって、本当に心苦しいのですけど」
「私は故人と比べ才なき身でございます。ですが、アンネローゼさまのお言葉、肝に銘じさせていただきます。どうぞ、今日はごゆっくりお眠りになられますよう」
ヒルダは頭を下げて、退室していった。白すぎる大公妃の肌の色が刃となって彼女の心を滑り、鋭い痛みを与えていた。アンネローゼは死ぬかもしれない。
俗世に生きていること自体が不思議なほど清く美しい女性は、本来ならば伝説の時代にのみ存在することを許されるのではないだろうか。
213 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/24(金) 16:13:43 ID:DtN8jYUi
ヒルダが去ったことを確認すると、アンネローゼは粉を葡萄酒にいれて溶かし、それを飲み干した。
今夜は眠ることができるだろうか。
そんなことを考えながら、蒲団に潜りこむ。
疲れきっていた彼女は予想外にもすぐに眠神の愛撫に身をゆだねられたが、深夜目がさめた。
「……まだ二時なの」
即効性のあるものの方がよかったかしら、と思いながら、アンネローゼは天蓋を眺めやった。
ふと、ヒルダの顔が浮んだ。
わずか数ヶ月で未亡人となり、24歳の若さで赤ん坊を抱えながら帝国を支えてゆかねばならない女性。
耐えられるだろうか。耐えられるとして、それが彼女の幸福となるのだろうか。
自分はまた、人の進むべき道を見誤らせたのだろうか。
くすんだ金髪が、まるで黄昏から夕陽へと空がうつりかわるように、見事な赤毛に取って代わった。
ジークフリード・キルヒアイス。
ヒルダと同様、豊かな可能性に充ちた人材。そして、それ以上の存在。
214 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/24(金) 16:14:48 ID:DtN8jYUi
アンネローゼはその男性を思い浮かべた瞬間、体に熱が走るのを感じ取った。
彼女の手は自然に胸へと運ばれていた。
あの子はきっとこうなることを望んでいたんだわ。
幽霊の存在など信じないアンネローゼであったが、苦笑しながら心の中でそう独語する。
あの青い瞳にこめられた淡い憧憬の念が、ときが経つにつれ磨かれ、真剣な男の視線を放つようになったとき、彼女は恐怖すら覚えた。
アンネローゼとラインハルトとジーク。幼い頃から大切に築きあげてきた三者の関係が、壊れてしまうのではないか。
彼女は、気づかれない優雅さで彼を避けた。それでも彼の視線は、熱心に彼女を追い求める。
手にはいらないと、わかっていながら。
215 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/24(金) 16:15:56 ID:DtN8jYUi
アンネローゼは、やや強く胸を揉んだ。
「ジーク……わたしのジーク……」
嗚咽交じりに呼ぶ。もう届きはしないのに!
大切なひとだった。
彼女にとっても、彼女の弟にとっても。
彼が死んでからは、アンネローゼは弟を避けた。
弟は未来へ向かって歩まねばならない。弟には未来が残されている。
懐古すべき過去だけをもつ自分とは違って。
そっと、手を股間に滑らせる。
そういった関係になることを、赤毛の青年は望んでいる。
しかしながら、彼はそれを彼女に強制することはできない。
彼は彼女から手を差しのべねば、何もできない。
それを知りつつ、アンネローゼは彼に手を差しのべようとはしなかった。
216 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/24(金) 16:17:23 ID:DtN8jYUi
静かに割れ目をかき回す。
彼女を熱心に愛撫した、あの皺枯れた手とは違う、瑞々しく柔らかな感触が、彼女の恥所を濡らしてゆく。
赤毛の青年、きっと女を知らないままに死んでいった青年。
あの人ならば、彼女をどんな風に扱っただろうか。
きっと、優しく、どこまでも大切に扱ってくれただろう。
そう、こんな風に……。
そっとクリトリスを撫で上げると、自然に甘い声が出る。
毒のまわってゆく感覚と、性的快感が混ざり合い、アンネローゼの思考を犯していった。
胸を強く揉み、蕾を指でつまむ。
大理石の肌を、赤い血の色が透過する。
青石色の瞳から、涙があふれて、頬を伝っては枕を濡らしていった。
「ジーク……」
一度だけ接吻を許した。熱く弾力のある唇が、そっと彼女をつつみこんだ。
アンネローゼは枕に顔を埋まらせた。
冷たく渇いた感触のシーツが、彼女の熱を孕んだ呼吸と唾液で熱く湿ったものにかわってゆく。
指を二本うちにいれてかき回す。
身体の芯を甘いものが侵食してゆく様子が、アンネローゼにははっきりと感じとれた。
やがてそれは彼女の身体を駆け上がり、彼女は自分でも驚くような艶声をあげ、仰け反って寝台に倒れこんだ。
217 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/24(金) 16:19:27 ID:DtN8jYUi
甘い吐息が、静謐な空気をふるわせる……。
毒がゆっくりと体をむしばんでゆく。
彼女は獅子帝のあとを追って死ぬ。
彼女は伝説の時代に属するべき人間だから。
ラインハルトが崩御した時点で、歴史的必然、物語的必然として、彼女は死を約束されていたのだ。
「ジーク……もうすぐ、あなたのところに行くからね」
アンネローゼは、胸元のロケットを開ける。
金の金具にはさまれた一房の赤毛を、彼女は見つめた。
手にとどかぬものへの憧憬を、その瞳にこめて。
218 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/24(金) 16:21:09 ID:DtN8jYUi
終了。
198さまリクどうもでした。
219 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/25(土) 05:52:18 ID:AWy5EW3u
死…死んでしまったのですね姉ローゼさまああああ。
でもやっぱり原作でも長生きせんような描写があったし
引き際が綺麗なような気がするよ。
エロさよりも切なさが勝った文体でよろしゅうございました。gj!!
220 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/25(土) 11:09:17 ID:x+S2kcIc
198ですが119神ありがとうございました!!相変わらずエロさ抜群な文章でGJです!
お姉さまの最期には泣けましたが219氏と同じくそれはそれで納得です。ありがとうございました!
221 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/25(土) 14:04:41 ID:7oCScqDR
アンネローゼと違ってヒルダは長生きしそうだ。
番外編でアレクの時代の銀英伝もみたいものだ。
222 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/25(土) 18:18:22 ID:xoHBZouO
オーストリアのマリア・テレジアのごとく女傑としてうまく帝国をおさめていきそうですね、ヒルダ皇后。
アレクはヒルダに頭があがらなさそう。
223 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/26(日) 02:11:12 ID:lwYfcC47
あのまま長生きしてもアンネローゼにとっては辛いだろうしな。
でも甥の成長を見届けて欲しいとも思うな。
224 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/26(日) 17:57:31 ID:Ml3MD24j
キルヒアイスってやはり道程のまま死んでしまったのか気になります。
幼年学校→軍隊とヤロウぱかりの生活だし…
想い人は皇帝の愛人だし…ラインハルトがキルヒアイスに「オーディンの吉原に行こう」とは言わないと思うし…
彼の性格からして想い人をオカズに自家発電すると思えないし…
朝起きたらパンツが汚れている事がしばしば?
パンツを洗ってるところをラインハルトに見られてたりして
225 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/26(日) 18:36:39 ID:xyIU91+9
ライン治人には近付けなくてもキルヒとはそれなりに話せるやつが
キルヒにエロ差し入れしてたんじゃないか?
で、エロ立体写真見ながらして。でもって最後は
いつも写真の顔が姉になり頬上気させたエロ顔思い浮かべては
発射→底なしの後悔っつう青春の彼。
226 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/26(日) 22:52:34 ID:eQc+Krzz
>>225
激しく同意 底なしの後悔してそうだよな
227 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/27(月) 12:40:13 ID:AgGb4oFG
アレクたん
228 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/27(月) 12:55:16 ID:uLmbvdZw
「おい、ジーク!このファイルありがとな。お礼にこれ付けとくよ」
そういって級友から放り投げられたディスクは二枚。
廊下に落ちるところを寸前でキャッチしたキルヒアイスは、彼に貸していた
戦略論の授業の内容をまとめたディスクを確かめ、後の一枚をみて首をかしげた。
そのもう一枚のほうにはタイトルもなにも書かれていない。
不思議に思う気持ちを抱えたままキルヒアイスは割り当てられた寮室にもどり
それをディスクスキャンにかけたが、危険のあるようなものではなさそうだった。
そもそも、お礼とか彼は言っていたがそんなたいしたことはしていない。
かえって助けられることのほうがよほど多いのに。
彼の親友であり守護天使の風貌でありながら、実際はトラブル収集源の
ラインハルトが毎度毎度覚えもないのに吹っ掛けられる決闘乱闘の類で
授業に遅れるたび、その都度機転の利いた言い訳を教師にしてくれている
貴族の子弟らしからぬ気の良い男で、彼の周りに集まる友人もまた多かった。
孤立しているラインハルトはともかく、その側にいるキルヒアイスに
なにくれと話しかけてくれる相手であり、二人が極端にクラス内で浮くことが
なかったのは彼のおかげであった。
その彼が、お礼だといってくれたこのディスク。
見てみようか、とキルヒアイスはその気になった。
ラインハルトは貴重な『皇帝陛下のご配慮』によるアンネローゼ様との面会で
今晩は九時を過ぎるまでは帰寮しないことは分かっている。
机の上の小型パソコンを起動させるとディスクはスリットに吸い込まれていった。
229 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/27(月) 13:11:02 ID:uLmbvdZw
起動させると、画面にはピンクの背景とともに文字列が映し出された。
R-18
それがいったい何を意味しているのかはキルヒアイスも知っている。
まだ彼が実家にいた頃、タンスの隅から偶然見つけ出した雑誌に
派手派手しく露出された女性の裸とともに踊っていたその単語。
あの時はただひたすら頭がカーッと熱くなるだけでクラクラしたのだが
あれを見てからしばらくはキルヒアイスは隣家に呼ばれるのが憂鬱であった。
あの本より露出度はずっと低いのに清潔な衣服からすんなりのびた細い首や
すらりとしたふくらはぎの白さを見ると、アンネローゼにも同じように
綺麗な裸がその服の下にあるのだという想像が勝手に膨らんでしまうのだ。
あんなに素敵な人なのに、そんなことを思ってしまう自分が恥ずかしくて
しかたなかったのだ。
だがその心配もすぐ無くなった。
アンネローゼが、後宮に連れ去られてしまったから。
酒に逃避して腑抜けになった父親に馬乗りになって拳を振るうラインハルト
その率直さがある意味キルヒアイスには羨ましかった。
キルヒアイスは後宮に召し上げられる意味を、もう知ってしまっていたから。
230 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/27(月) 13:26:54 ID:uLmbvdZw
姉を取り戻すために軍人になると誓いを立てたラインハルトに
幼年学校に招かれたとき、同じ怒りをもつものとして、そして
彼の胸につのるアンネローゼへの限りない憧憬をもつ少年として
ラインハルトと同じ道を往くことをキルヒアイスは当然と受け入れた。
それから数年、いわゆる色気とはずっと縁が無かったのだが。
上級生の噂として貴族の特権として、寮外にて放埓を満喫している話が
耳に入ってくるぐらいのもので、二人には興味がないものであった。
それよりもより早く上進するための道を探すことに心血を注いでいた。
そうして数秒ぼうっとしている間に画面は切り替わっていた。
白いベッドがあり、男が一人横たわっているのが映っている。
ずいぶんと殺風景だな、と思っているとピンク色の影が一瞬横切った。
そしてもう一度画面にフェイドインする。どうやらここは病室らしい。
横たわる男に屈みこんだ女性は、看護婦の姿をしていた。
231 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/27(月) 13:52:15 ID:uLmbvdZw
「どうしましたか…?」
女性は優しく男性の肌を拭き清めている。男は傷に触れたのか顔をしかめ
「あの時はしくじった!あのとき同盟軍が卑怯な真似さえしなかったら」
吐き捨てるように言うと、看護婦は男を優しくたしなめた。
「傷にさわりますよ。あら。まだ熱を持って腫れていますわね?」
「そこじゃなくって、ここですよ、看護婦さん」
男が看護婦の手を持って導いたのは自分の股間であった。
いつの間にか看護婦のまとめられた髪は解かれ金髪がふわりと舞う。
不自然に短いスカートはさらにずり上がり、下着が丸見えである。
さすがに先の展開が予測できたが、キルヒアイスの手は停止ボタンに
かからなかった。その頭さえ回らなかったのだ。脳が沸騰していく。
アングルが変わり、女性の顔が映し出される。美人の部類だろう。
キルヒアイスの鼓動が一瞬止まる。彼女の瞳は、深い青玉色であった。
顔の造作は違うのに、遠くからのアングルだと一瞬錯覚してしまう。
男に好きなように身体をまさぐられながら、彼女の口調は丁寧なままだ。
「熱を測りましょうね。ここは、どうかしら?」
一瞬の錯覚が、キルヒアイスの記憶を引き出す切掛けとなってしまった。
キルヒアイスが風邪で寝込み、両親が留守になってしまったとき
看病に来てくれたアンネローゼ。ああして優しく見舞ってくれたのだ。
そうなると彼女のセリフがアンネローゼの声で再生されてしまう。
画面では看護婦の衣装を半ば剥かれた女性が男にのしかかられ
柔らかそうな胸をもまれながら、片方の乳はねっとりとしゃぶられている。
男の顔は映らない。女性の方は長い金髪をシーツに散らし甘声をあげる。
いったん引き出された記憶は止まらない。冷たいタオルを額に乗せてくれた
滑らかでひんやりとしたアンネローゼの指、寝付く前に残してくれた
頬への口付けの弾力のある唇。ジーク、と呼んでくれたあたたかい声。
ダメだ、と意志が止めるが手はズボンの前を解き自身を引き出していた。
232 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/27(月) 14:11:50 ID:uLmbvdZw
もうキルヒアイスの目は画面を見ていない。
アンネローゼと離れて長いのに、その期間は彼の記憶を薄れさせず
反復された回数の分、鮮明な記憶としてキルヒアイスの脳に焼き付いている。
その記憶がよりにもよってこんな時に、これ以上ない甘美さで彼の理性を溶かす。
ラインハルトと同室のため自然の生理にはそれなりに手早く解消していたが
今晩は気遣う必要がないとあって、キルヒアイスの心も解放されていく。
彼の脳内では看護婦姿に身を包んだアンネローゼが淫らな姿勢で
切ないうめき声を上げていた。
サファイア色の瞳を潤ませながらキルヒアイスの手に身体を震わせつつ
彼の股間を優しく包んで上下に擦って「あなたも…いい?」
全裸以上にいやらしいナースキャップをつけたのみの下着姿。
薄目を開けるように見ると、彼女はますますアンネローゼに見えてくる。
その人が、こちらに白いお尻を見せて誘うように揺れる。男が跨った。
アングルは横に移り、ゆすぶられて揺れる乳房が画面に大写しになる。
その白さを際立たせるような浅黒い男の手がその胸をわしづかむ。
手は自身を上下に擦り続けたまま、思わず空いた手の方で羽枕を掴んだ。
あの人の声が、高く大きくなる。
「あ、ああっ…もう…気持ち、いいっ…!お願い、お願いっ!やっ」
砂時計のように括れた腰を掴み、思うままに甘い体を自分の下に組み敷きながら
あの人のお願いをまだまだ聞いてやらない。
「もう、逝、逝きます!ああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
233 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/27(月) 14:37:44 ID:uLmbvdZw
大また開きで男の膝に座り込み、後ろから挿され胸をもみしだかれて
画面の女性は絶叫し続ける。
しかも修正が甘いのか肝心な部分が接写の時はズルズルに濡れたそこと
粘液でブチュブチュに塗れた欲望がはっきり分かる。
性器の露骨ないやらしさと女の快感に溺れた声がキルヒアイスの理性を飛ばした。
いま脳裏に浮かぶ像は、同じような体位でアンネローゼの細い体を
思うままに舌でねぶって身をよじらせ、己をズブズブと突き立てている自分。
「ジーク、ジーク!ああっ!お願いよ、許して…っ」
「分かりました、逝くときは一緒ですよ」
「嬉しい…ジーク!ジーク!!ああああ〜〜〜〜〜〜〜〜」
「アンネローゼ様、出し…ますよ!」
っく!
擦っていた手にドクドクと熱い液体が零れ溢れていく。
慌てて手近なタオルを取って股間に押し当ててほっとすると同時に
さっきまでの熱情は潮が引いていくようにあっさりと消えていった。
あまりの開放感の強さに放心しながら、画面をぼんやりと見やる。
先ほどまでの痴態が無かったように楚々と看護服を着る彼女の顔は
アンネローゼとはやっぱりそれほど似ていなかった。
自分が空想の中で欲望が赴くままに蹂躙したのは彼女ではない。
アンネローゼである。
快楽の強さに慄きながら、それでもキルヒアイスは先ほどの妄想を
すっかり脳内から消し去ることが出来なかった。
あの人は、清楚なエプロンドレスが似合う清浄の園に住まう人なのに!
深く、深くキルヒアイスは己の浅ましさに落ち込んでいった。
なんて罪深い自分、こんな自分を見たらアンネローゼ様がなんと言うか!
せめて、せめてラインハルト様を助けることでお許しくださいませ。
そしてキルヒアイスは彼自身の誓いどおりにラインハルトの主席につぐ
二番の位置を保守し続けた。
あいかわらず親切でディスクを差し入れる友人はキルヒアイスの努力に
ひたすら感心していた。自分の親切がそれに一役買っているとは露知らず…
終わり。ノシ
234 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/27(月) 16:44:41 ID:uLmbvdZw
「お前も姉上のところに一緒に連れて行ければいいんだがな」
「いいえ、私には直接関係は無いのですから仕方ないですよ」
心底残念そうな顔をするラインハルトの心的負担を軽くしようと
キルヒアイスはそう言って見せたが、やはりアンネローゼに会えない
自分の境遇を口にしてみると、諦めの気持ちがより濃くなるのであった。
だが、キルヒアイスの心にあるのは失望だけでは無いのもまた事実である。
それをラインハルトに気取られないよう、キルヒアイスは言葉を継いだ。
「お気をつけていってらっしゃいませ」
「ああ。姉上にもお前がよろしくいっていたこと伝えておこう」
廊下に響く靴音が遠ざかり、完全に聞こえなくなってから扉を閉めた。
キルヒアイスの傾向はすっかり友人に見抜かれているようだ。
興奮と後ろめたさがない交ぜになった複雑な心境のままディスクを立ち上げる。
長い金髪の、綺麗なお姉さんタイプの女優が画面にあらわれた…。
こんな感じでやってたんじゃないでしょうかね。あの二人は。
235 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/27(月) 18:13:12 ID:jaTkqGmt
うわぁ…文体も設定も上手だなあ。
一人上手なのに堪能させられました。
また読ませて欲しいです。
236 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/28(火) 23:21:58 ID:ecf9tneY
ヒルダかわいいよヒルダ
237 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/29(水) 00:15:26 ID:qO/6FP/7
自慰という行為を知ったのは、13歳の夏だったように、カリンことカーテローゼ・クロイツェルは記憶している。
大好きな女優の情報を検索していたうちに、その女優のあわれもない姿がヒットしたのだ。
彼女は驚き、かつ、自分の大切な宝物が穢されたように感じて気持ちが悪くなった。
そのとき10を越えたばかりの彼女にとっては、性はただ汚らしいものであったから。
それがいつから変わってしまったのか、彼女はよく覚えていない。
いつの間にか、家族にこっそりと隠れて、女性の裸体の画像や官能小説を漁っている自分に気づいた。
はじめは見たり読んだりして興奮していただけの彼女であったが、とうとうある日、自分の下着の中に手をすべりこませてしまった。
目は文字をおいつつ、手でクリトリス、と呼ばれる、蕾を熱心に撫でる。
甘い吐息と、水音が室内を満たしてゆく。
まるで何か悪事を働くかのように、扉に鍵をかけ、蒲団にもぐりこんでおこなった。
最後には、我慢しきれなくなって、パソコンを閉じて両手を使って胸と下とを責めた。
まだふくらみはじめてもいない胸に、そのときはまだ小さくあまり感じることも少なかった桜の蕾。
何かがのぼりつめる感触、空気に溶け出してしまいそうな恐怖。
やがてそれが甘美な喜びと一緒になって、彼女の全身を麻痺させた。
その夜は、まどろみと手遊びとを、繰り返し行いながら過ごした。
朝陽がカーテンから透けて降りてきたとき、時計は5時をさしていた。
彼女は寝台から降りると、シャワー・ルームに向かう。
湯を浴びながら、彼女は男を知ったわけでもないくせに、少女から女になったような、奇妙な充実感を覚えている自分に気づいた。
薄く入れた紅茶色の髪の少女に、自慰は晩夏の夢として、美しく気持ちよい存在だとそのときは認識されたのだった。
たぶんつづきます。
238 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/29(水) 00:46:14 ID:kelaFdLV
>>237
うをををを!!GJ!GJ!!続きすげー楽しみ!これからユリアンとどう絡んでいくのか、絡まないまま妄想なのかいずれにしても楽しみだ
続き待ってます、がんばってくらはい
遅ればせながら
>>228
さんGJ!なんつーか後悔するキルヒアイスがすごくらしくてよかったよ 良いものをありがとう
239 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/29(水) 10:48:51 ID:B1pWcbLx
うおお!久しぶりに来たら神がいっぱい(゚∀゚)!
アイゼナッハ夫妻もアンネローゼもキルヒアイスもGJ!
>>237
の続きも楽しみにしてるよ!
240 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/29(水) 17:30:25 ID:UsAYP+73
ついにカリンまできたか!
241 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/29(水) 22:45:51 ID:qO/6FP/7
カリンっていつユリアンと出会ったんだ??
あと妄想で自慰(デリカみたいな感じになるっぽい)かユリ坊に命じられて自慰(ヒルダっぽい)かどっちが萌えます??
あと228さんGJ! なんとなくキルヒに共感。
242 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/29(水) 23:13:40 ID:kelaFdLV
宇宙歴799年 帝国歴490年(新帝国歴1年)の6月10日だそうだ(エンサイクロペディアより)
彼女は15歳、ユリアン17歳 小説で言うと六巻(デュアルだと違うと思う)「飛翔編」
八巻のラストで休戦協定、九巻のラストで初ファーストネーム、十巻の九章「黄金獅子旗に光なし」で恋人に
とりあえず手元の原作で調べてみた 役立つかな?
漏れは妄想でも命令でも激しく萌えますが(´Д`;)
243 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/30(木) 13:16:25 ID:Dg0VC95L
最初にお断り。けっこう長い小説です(のちにエロあり)
お待ちいただいていたあの方、おまっとさんでした。ヤツの話です。
244 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/30(木) 13:17:05 ID:Dg0VC95L
中年…いや、青年アッテンボローは景気の悪い顔を引っさげて街を歩いていた。
彼は倦んでいた。
永年の戦乱に終止符が打たれた後、彼が宇宙の次に選んだステージは地上であった。
アッテンボローは見通していたのである。
平和な時代に必要なのは天才ではなく、日常を維持していく賢人であるということを。
もちろん賢人とは彼自身のことではない。旧同盟軍の男どもの上に気高く立つあの人だ。
荒れた野原が回復すれば、可憐な花ばかりでなく雑草も勢い良く伸びるというもの。
アッテンボローは彼が敬愛する人たちが命がけで守り抜いた、民主主義という庭園の
草刈番として自ら立候補して、政治の世界へと身を投じたのである。
「いや、ありゃ身投げというより嬉々として首を突っ込んでいった感じだな」
外野の声を右から左へと通過させながら、アッテンボローは日々政治に励んでいた。
最初の頃は帝国との折衝やら議会の成立に東奔西走するやら活気に満ちた毎日だったが
適切な環境が整えば、民主主義のささやかな双葉のほかにも、毒草だって生えるのである。
トリューニヒトを百分の一にしたような輩が、戦乱中にはとんと見られなかったのに
同盟が復興するにつれ、清潔であるべき庭園の中に厭らしい蔦をワサワサと伸ばし始めている。
したがって、アッテンボローは草刈番として非常に忙しく働かねばならぬ最近である。
245 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/30(木) 13:18:02 ID:Dg0VC95L
正常で健全な政治の天秤のバランスを保つための片方の重りとして、彼の役目は重要だが
現実には多数与党の席端に追いやられた弱小野党の党首という立場でしかない。
それでも、彼は差し伸べられてくる手を丁重に退け続けていた。クリーンな相手であっても。
一匹狼を気取っていたわけではない。徒党を組み、それが暴走したとき誰が食い止めるのか?
「そのために、俺はあえて孤高を選んでいるんだ」
「何言ってやがんだ、頭を下げるのが嫌だっていうお前さんの性格だろうが」
「解釈はどーぞご自由に」
「っか〜!そんなところだけいっぱしの政治家に成長しやがって」
「いやいや、貴方様にはかないませんよ?」
「その嘘くさい選挙スマイルやめろって、うわ笑顔でこっち向くな!握手してくんな!
もーこいつをなんとかしてくれよユリアーン」
「ははは…相当ストレス溜まってるんで仕方ないですよ」
「ちょ、見捨てんなよっ!」
「彼も忙しいですからね、貴方も彼の立場を理解したほうがよろしいですよ?」
「すみません、よろしくお願いします」
「てめえ!先輩の窮地よりも女をとるかぁ!!」
「はっはっは。夜はこれからですよ飲みましょう!ポプラン君ぅん!」
「いーやーだーーーーーーーーーー!!!!!!」
246 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/30(木) 13:18:58 ID:Dg0VC95L
雑草退治の精神的疲労にはそういった他愛も無い話を気心の知れた相手とするのが
なによりの解消法であったが、それにも限界がきたようだ。
昨夜の深酒だけではない疲労が彼の内側で澱み、沈殿し積もり重なっている。
ニュース速報の光る文字が右から左へと流れていくのを、重い頭で眺めていた。
(政治家の看板を降ろして、ルポライターにでも鞍替えすっかな)
整ったインテリアの会議室で繰り返される徒労に似た質疑応答の地味さに比べて
ペン一本で巨悪を叩くという行為は遥かにアッテンボローの意欲をそそった。
(にしても、巨大メディアに殴り込むには特ダネの一本も持ってないと無理だろうな)
「なんか、いいネタでも飛び込んでこないかなあ!」
いつの間にか丸まっていた背中をそらし、大きく伸びをする。
頭上には彼の内心風景そのもののような曇り空が広がっていた。
247 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/30(木) 13:19:59 ID:Dg0VC95L
どれくらい立ち止まっていたのか、アッテンボローの背中に柔らかい物が衝突した。
謝りながら背後を振り向くと、ぶつかっただけなのに泣き出す手前の顔で相手に見上げられた。
「ど、どうなさいましたか?!」
「息子を探しているんです!迷子なんです!一緒に探して下さいませんか?」
突然そんな頼みごとを持ちかけられてもと戸惑いながら相手の正面へと向き直った。
サングラスをかけ、帽子を目深にかぶっているがそれでも相当の美女だというのが分かる。
身なりも、かなり上質なものだと見て取れた。
息子というからにはダンナ持ちだな――ポプランじゃないので人妻は圏外だが、
美人のSOSに応じるのはむしろ歓迎、もちろん喜んで引き受けますってことで
アッテンボローは「イエス」と力強く彼女の頼みに頷いた。
「で、ミセス。そのお子様の名前は?」
「…ごめんなさい、それは言えません。けれども服装なら。年は四歳、白のセーラーに
紺の半ズボンで金髪の子です」
「こんな人ごみの中じゃ、名前を呼ぶほうがてっとり早いでしょうに」
「それはできないのです。お願いです、なんとか一緒に探していただけないでしょうか?」
一度は承諾したのだし、目の前の彼女は見るからに焦燥している。
助ける気が失せたわけではちっともないが、それにしても、奇妙な事情である。
「ここらへんで子供が迷い込むようなところといえば…セントラルデパートですかね」
「連れて行ってください!」
248 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/30(木) 13:21:00 ID:Dg0VC95L
すぐ50メートルほど戻ると、巨大なウサギが子供たちに風船を配っている。
ピンときたアッテンボローがそのウサギに尋ねると、はたして、まさにその格好の男児に
風船を少し前に渡したのだという。
「じゃ、きっとまだ近くにいますよ」
緊張のあまり肩を震わせる彼女の肩をなだめるように優しく抱いて励ましたあと、
彼女の手を引いてデパートの玩具売り場の階まで足を速めた。
しかし、どの棚の陰をのぞいてみても、彼女が探す息子は見つからない。
とうとう、彼女はその場に手をつきうずくまってしまった。
宥めようと同じく膝をついたアッテンボローは彼女のハンドバッグから鳴る電子音に気が付いた。
それも耳に入っていない彼女にそれを教えると、彼女はもどかしそうに通信機を引っ張り出して
ボタンを押す。すると、画面にはまさに探していた姿の男児が映し出された。
お人形のような、という形容では足りないほどの美形な子で、アッテンボローが心底感嘆して
画面を眺めていると、彼女の珊瑚色の唇から帝国語が流れでた。
聞くともなしに聞いていると
「ああ!アレク!あなたいったいどうしたの!」
「ムッター、どこに居るの?」
甘えた可愛らしい声の後、次は同じく幼い子だがしっかり喋る子に代わったようだ。
「ごめんなさい!僕がいっしょにいながら」
「ああ、あなたもそこに一緒にいるのね!」
うん、うん、と彼女は相槌をうつ。
249 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/30(木) 13:22:08 ID:Dg0VC95L
「いいのよ、大丈夫、貴方はとても偉かったわ、フェリックス。いいえ、私がいけなかったのです」
ついで今度は大人の女性に代わった。クリーム色の髪にすみれ色の瞳をしたこれもなかなかの美人である。
「プリンツアレクを連れたフェリックスが二人だけでホテルに戻ってきて、こちらは仰天しましたわ。
とにかく、二人とも無事でようございました」
「ああもう、本当に申し訳ありませんでした。慣れない事はするもんじゃないわね」
「いいえ、あの年頃の男の子は本っ当に大変でございますから」
苦笑交じりに、しかしふんわりと優しげな女性の声がスピーカーから響く。
「少し…気を落ち着けてからホテルに帰ることにします。あとしばらく二人のことお願いしますわね」
どうぞお気をつけて、という声のあと画面はプツリと暗転した。
「息子さんも無事見つかったようですので、私もお役御免ですね」
耳に飛び込んできた幾つかの単語に、まさか、と思いつつ彼女にいとまを告げると
「いいえ!なにか、お礼をさせてください。一緒に探し回ってくださったのだから」
そう言った後、何かに気付いたように濃い色のサングラスの奥の瞳が見開かれた。
「貴方は…共和国議会議員のアッテンボロー氏?」
おや、というように眉をあげ、アッテンボローは首肯してみせた。
「しがない弱小野党議員ですがね。それにしても帝国人の貴女がよくご存知でいらっしゃる。
政治に興味がおありで?」
今度は彼女が可笑しそうに肩をすくめ、
「興味も何も…私は当事者ですから」
サングラスを外し、帽子を取るとふわり、と微笑んだ。
現れたくすんだ金髪、ブルーグリーンの美しい目にアッテンボローは息をのんだが
それよりなにより、そのあたりをはらうような気品はまちがいない。皇妃、
いや今は摂政皇太后であるヒルデガルド・フォン・ローエングラムその人であった。
アッテンボローは絶句した。
(おい、こりゃまた………とんでもない特ダネが降ってきたもんだな)
250 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/31(金) 07:26:29 ID:q/As657X
支援上ゲ(・∀・)
251 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/31(金) 07:40:06 ID:q/As657X
支援上ゲ(・∀・)
252 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/31(金) 12:13:58 ID:1wMPc8cp
wktk
253 :
♯紀子
:2006/03/31(金) 21:10:35 ID:i9zoatbG
「泉田君、今度は何処に出張がいい?香港、フランス、アメリカ東海岸は行ったし、そうね、次は英国なんて良いわね。」
「でも英国には幽霊がいますよ。」
「幽霊が何よ、他の国でも怪物にあってるじゃない。幽霊なんて下の下じゃない。それにリシェンヌ、マリアンヌもいるのよ。安心なさい。」
「ですが、まだ出張が決まった訳じゃないですよね?」
「でも一両日には命令が下るわ。」
254 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/32(土) 15:36:07 ID:e1elEasQ
>>249
おおー面白そう!
続き待ってます
255 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/32(土) 18:21:43 ID:fmuUjS8S
>>253
お涼様キタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆
256 :
名無しさん@ピンキー
:2006/03/32(土) 22:52:05 ID:tdQQivvV
アレク北ーーーー!
257 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/02(日) 00:08:39 ID:1P8K5Kbu
周りに気付いた人は居ないようだが、それにしても賑わうここで長話はまずいだろう。
そうだ、あそこがいい、馴染みの喫茶店。あそこのマスターの寡黙さは信用できる。
そこに案内することを告げて、そして彼女をなんと呼べばいいのか迷う。
「ヒルダ、でいいですわ。父もそうやって私を呼びますから」
「では、ヒルダさん。こちらに」
そうして車道側を自分が歩き、ヒルダをエスコートする。
街を行くすれちがうカップルには目を引く美女を連れた男もちらほらみかけるが、
(銀河随一の女性を傍らに歩くというのは、誰も一生無いだろう貴重な体験だよな)
士官学校に入る前まで志望していたジャーナリスト根性が、誇らしさよりそんなことを思わせる。
十人も入れば満席、というような喫茶店はいささか古びているが長年磨きこまれた様子が伺え
非常に居心地が良い場所で、アッテンボローは気に入っている。だが、ホテルの喫茶室のほうが
失礼がなかったんじゃないのか?そう気が付いて一瞬腰を浮かせかけた。
「なんだか落ち着きますわね。とても…懐かしい感じがします」
「そう言ってくれてこちらも一安心です」
冗談ではなく本気で胸をなでおろして見せるとヒルダは可笑しそうに微笑んだ。
258 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/02(日) 00:09:17 ID:1P8K5Kbu
コーヒーが来る間にヒルダから先刻までの事情を話された。
会見の予定があったが先方都合のキャンセルで半日オフになったこと。
ホテルの窓から下をみてアレクが騒ぐので少しだけ街を見るつもりであったこと。
そして一瞬目を離したらいなくなっていて、お付きの子も一緒にいなかったこと。
で、その子は幼いながらタクシーを止め、連絡先と共和国紙幣を入れた封筒を出して
無事にホテルに戻ってきたということ。
「しっかりしているの、フェリックスは。本当にあの子には苦労かけてばっかり」
皇帝ともなれば幼少時からお付きの子がいるのか、と驚いたアッテンボローに、
ヒルダはその子の身分を明かして見せた。それはさらにアッテンボローを驚かせた。
あの、ロイエンタールの遺児で、あの、ミッターマイヤーが養父!!
「そりゃ、もう、そういう運命の子なんでしょうな」
そんな溜息に似た感想しか出てこない。
帝国風に濃厚なクリームが付くコーヒーではないが、ヒルダには好評だったようである。
あとで誰にコーヒーを出したのかマスターに教えてやろうか、そんな悪戯心が胸に沸く。
「――じゃ、そろそろホテルにお送りしましょうか?」
「お忙しかったんですか?お引止めしてしまったかしら」
「いいえ、な〜んにも。侘しい独身男の休日ですから、私に出来る事なら何でも言って下さい」
では、とヒルダは控えめに切り出した。民主主義に反しない範囲であるならどんなことでも
引き受けようとアッテンボローは心を決めていた。
「これから共和国との折衝が続きますが、その前に、共和国の空気を感じておきたいのです。
文書を取り交わしても、一般民衆の心情までは書類に記載されていませんから」
さすがに皇太后となると考えが違う。率直に賞賛の気持ちを述べたがヒルダは笑って返した。
「…実は、アレクを口実に私も外を見て歩きたかっただけなんですけどね」
そう正直に言ってアッテンボローに向けた笑みは公的に整えられた笑顔ではなく、
ずっとくだけていたが、彼女の魅力を損なうどころか親しみを感じさせるものであった。
アッテンボローはカップを持つ手を空中停止させ、生気が煌くその笑顔に見惚れていた。
259 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/02(日) 00:09:57 ID:1P8K5Kbu
代金をテーブルの上において、ヒルダを促した。
いつの間にか分厚い雲は切れて青空がそこからのぞけている。
気温も急に上がって、四月だというのに初夏がいち早くやってきたようだ。
ジャケットの内側に汗が浮いている。視線をさ迷わせた先に、屋台が目に入った。
けっこうな美人をお連れですねえ、という親父にあいまいな表情で小銭を渡して
ベンチに座るヒルダのもとへ戻っていった。
「どうぞ、お好きなほうを」
「まあ。ではこちら、よろしいですか?」
ヒルダはアッテンボローに手を伸ばし、コーンに盛られたジェラートを受け取った。
冷たい甘みが口の中に広がり、清涼な風味が喉を滑り降りていく。
(噴水のある公園でアイスを食べる王女様、いや、彼女は女王様か。)
「『ローマの休日』だな」
独り言のつもりで呟かれた単語は、ヒルダの興味を引いたようである。
そこでアッテンボローは、それが古い古い、地球にまだ人類が留まっていた頃隆盛した
旧式のフィルムで記録され広く愛された映画の題名であるということをヒルダに教えた。
そしてその内容もかいつまんで。今の状況と一致の多さにヒルダも驚き、笑みが零れる。
「とても、おもしろそうですね」
「ええ、なんで士官学校の官舎でそれの上映会をやったりしましたね」
「そういうところまで自由なのですね、共和国は」
かなり真剣にヒルダは帝国との違いに感心している様子である。
「いいえ!とんでもない。官舎ですからね、もちろん娯楽は禁止でしたよ」
あたりを憚るように声をひそめて付け加えた。
「鬼教官の目をかいくぐってやるからこそ、面白かったんですよ」
目が丸くしたあと、とうとうヒルダは噴き出してしまった。
260 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/02(日) 00:10:58 ID:1P8K5Kbu
「そうそう、ヤン提督のアイディアでポップコーンやらジュースやら売って幾らか儲けました。
賞味期限ギリギリで廃棄手前のものを備蓄庫から拝借したんで元手はゼロってなもんで
…これも彼のアイディアですよ」
さすがに堂々と闇流しは威張れなかったので、さりげなく事実も付け加えておく。
ふざけた話に怒ることもなく、ヒルダは楽しげにアッテンボローの話に聞き入っていた。
「で、その売り上げはどうなさったの?」
「いやもなにも、上映成功を祝った打ち上げで、全部すっからかん」
ブルーグリーンの目をきらめかせ、ヒルダはその先を続けてみせた。
「もちろん、それも監視の目を盗んで抜け出した先のお店で、だったのでしょう?」
ずばり当てられて、そのとおりです、と二人で笑いあいながらアッテンボローはヒルダの
嫌味のない、非常に質のいい頭の良さにただただ感嘆しまくっていた。
(『あの』カイザーのお眼鏡にかなったのも、このひとならそりゃ当然ってものか)
「あの人も若いときはずいぶんと無茶をしたものだと姉上様が話してくださいましたが…」
「そんなすごい人とうちの提督を並べるなんて罰あたりますよ」
ヒルダがあの人、というのは一人しかいない。
「共和国の英雄とまで称された、提督なのに?」
「ええ。あれは軍の頂点だというのに、そう見えないことでまた軍随一の人でしたからね」
真面目くさって、実際は失礼なことを悪びれもなく口にする。
「じゃあ、皆があらたまった口調で作戦会議を進めようものなら」
「お前ら変なものでも食べたのか?なんて心配されるのがオチですな」
想像して一瞬の間があり、今度は声を出して二人で笑いあった。
261 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/02(日) 12:12:41 ID:aYtmv0sR
アッテンボロー×ヒルダいい感じ!
原作に近い文章GJ!
262 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/02(日) 12:36:57 ID:GUjkQrw8
GJ!
ものすごく自然な流れで、いいよいいよー。
263 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/02(日) 17:00:10 ID:w00x7l1A
す、素敵だ・・・
続き期待してます>アッテンボロー×ヒルダ
264 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/02(日) 20:36:40 ID:DIlnnMt6
>>260
久々に覗いたらアッテン来てた!
GJGJGJー!!!
265 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/02(日) 21:50:54 ID:qv2iPT8w
アッテン×ヒルダめっちゃいい感じ
266 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/03(月) 00:23:05 ID:RIMiakPy
アイスも食べ終わり、噴水の縁に腰掛けて公園を満喫する人々を二人、眺める。
戦争終結からまだ数年も立っていないのに、街はほぼ回復し終えたようだ。
父親が欠けた家族連れが多いが、子供の笑い声は希望の鐘の音のように公園に響き渡る。
「…あれから、あっという間に時が過ぎ去った気がしますわ」
アッテンボローは短く頷く。体制は違えど感傷というものは人類共通であるらしい。
「議員の仕事、大変なのでしょう?フレデリカさんから聞いています」
あーそれはそれは、と相槌を打ちながらも、アッテンボローが日々てこずっている事と
共和国が帝国に掲げてみせた理想とのギャップを思うと、赤面の至りという単語が脳裏をよぎる。
「あの人が民主主義の芽を摘まず残したのは、ヤン提督への寂寥からではありません。
自分の目前にまで乗り込んできた人達、その人らの覚悟の様を見て手を止めたのです」
語るヒルダは遠くを透かして見るかのような目をしている。
「自分の家族を愛するような自然な愛国心と、人為的に作られたナショナリズムを峻別できる程度の
賢明さを持ち合わせる、もしくは有権者に持たせるような民主主義が根付くほどには成熟している
と踏んだからです。そのように成長している過程なのでしょう?貴方が恥じることはありませんわ」
いや、その、となんとも歯切れの悪い返事をして、アッテンボローは自分らしい言い方にして返す。
「ヤン提督の置き形見ですしね。俺も他の皆も、民主主義の良しも悪しきも承知してます。
それに、死ぬときにああ楽しかった!と俺自身納得できる人生が送れそうなのはこっちでしょうし。
いいんです、俺は伊達と酔狂で議員やってんですから」
最後のところはいまいち飲み込めない様子であったが、ヒルダは概ね同意してくれた。
267 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/03(月) 00:24:30 ID:RIMiakPy
「わたくしの方も、なかなか難しいですわ。やはり帝国に憲法を成立させるというのは…
でも、ヤン提督の遺志とあの人が約束したことなのですから、やりがいのある仕事ですわ。
見てなさい、負けないんだから!」
最後の所は頑迷な老貴族らへの布告だろうか、彼女の身分にしては直截な言い様である。
すらりとした立ち姿と完璧な顔の造作は一流モデルといっていいほどの美しさであるが
それよりもきびきび律動的な挙措と、抜群の知性とたおやかさが同居するブルーグリーンの瞳、
変化を厭わず常に前を見据える健康な精神、さらには可愛らしい負けん気まで見せられた
アッテンボローはすっかり、ヒルダから目を離せなくなっていた。
――涼しい風が吹き始めた。
太陽はまた厚い雲に隠れ、時計は四時を回っている。公園の外に出て無人タクシーを掴まえ、
ヒルダをタクシーに乗り込ませた。
「さようなら。今日は貴方のお陰でとても…良い思い出がつくれました」
「もっと、あちこち案内してさしあげればよかったですね。それだけが残念です」
交わされた手がそっと離されるとタクシーの扉は閉じ、ヒルダが告げた先へと静かに走り出していった。
風は先刻より強くなりつつある。もう太陽が雲から出ることはないだろう。
胸に生まれたつむじ風を抱え、アッテンボローは自宅へと帰っていった。
268 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/03(月) 00:25:43 ID:RIMiakPy
アッテンボローは特に独身主義者というわけではない。事実、今の職業は男社会の軍隊と違って
出会いは多いし、また前途有望な青年とあって、ほとんどの相手が彼との交際に前向きであった。
「だいたいがいい子なんだが…」
「いまいち物足りないってか」
「贅沢、ってやつかもしれんな」
「ああ贅沢だ。ただでさえ少ない機会を自分からゼロに近づけてるんだからな」
「そちらさんこそ豊富だとかいう機会とやらを毎度毎度ゼロに戻してんでしょうが」
そう返すと、ポプランの顔がやに下がった。野郎に微笑まれるほど不気味なものはない。
「俺?俺ならもうプラスに戻してるぜ。健気な子で当然美人!知り合ったのはだなあ」
「お前のナンパテクニックなんぞ聞きたかないわ!」
「なんだと!人の親切を要らないたあ、お前政治に骨まで染まって庶民の人情を忘れちまったか?!」
以降どうなったか記憶がない。目を開けると見慣れた天井があり、自宅の寝室なのだと知れた。
どうにか帰ってきたようだが…見ると肩の付け根と頬に派手な青痣がスタンプされている。
ずいぶんと久しぶりの感覚を懐かしく思いながら、洗面所に向かい口をゆすいだ。
「っつ!」口の中も切れているようだ。ザブザブと冷水で顔をこすり、言い聞かせるように
鏡に向かって独語した。
「どうかしてるぜ、いくら伊達と酔狂とはいっても…相手は銀河頂点の女王様、だぜ?」
269 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/03(月) 01:13:59 ID:lqmAmwsu
天才的な文章力ですな!
270 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/03(月) 01:23:14 ID:5KHTZCeB
しかし…けちをつけるつもりではないけれど、ひとつだけ。
作品のクオリティは高いし、楽しませていただいている、という前提でですけど。
ポプランはアッテンには(慇懃無礼な)敬語ですよ〜。
逆にアッテンはポプランにはタメ口。
シェーンコップとごっちゃになってる?
失礼しました。続き楽しみにしてます。
271 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/03(月) 02:10:57 ID:KrciZbOr
どうエロに持っていくのか。((o( ̄ー ̄)o))ワクテカ
272 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/03(月) 10:18:30 ID:RIMiakPy
おお、気がつきませんで。
どうもありがと
>>270
273 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/03(月) 14:09:35 ID:RIMiakPy
議院の長い廊下を歩きながら、アッテンボローはぼやいていた。
「ったく、国の大きさにまったく比例してない無駄なでかさだぜ」
それでもここを使用しているのは、さらに小さい庁舎を建てるのがもったいないからだ。
新政府とはいえども華々しい立ち上がりではない。つまり倹約、いや合理的精神からである。
戦火を免れた古びた通路を数十メートル歩いて角を曲がり、ようやく目的の部屋に辿り着く。
扉を開けると廊下の暗さとは対照的なまぶしさに包まれた。
眼前一杯に広がる窓には一面の青空が広がり白く輝く入道雲が盛夏であることを告げているが
室内はエアコンの快適な空気で満たされていた。
自分を呼び出した相手の姿をアッテンボローは確認した。
無駄な飾りなどないシンプルなスーツ姿であったがそれでも十分に美しさを感じさせる女性。
「お呼びかかりまして参じました。小生、微力ながら力を尽くさせていただきます」
「そんなにかしこまらなくていいのよ」
とフレデリカに笑われてしまったが、もちろん彼流の冗談だという事は十分承知している。
控えめに彩られた唇を開き、呼び出した目的をアッテンボローに告げた。
「今月下旬、輸出業にかかわる条約の締結にフェザーンに向かいます」
「ええ、存じております」
「その随行員として、あなたにも付いてきてもらいたいのです」
「他に誰でも適任者がいますでしょうに」
「いいえ、与党だけではどうしても利益を重視する向きになりますから、政治的偏りを防ぐために
あなたが居ることが必要なんです。お願いしますわね」
物腰は柔らかながら、ノーと言わせない静かな迫力は、軍服に身を包んでヤンの側で立ち働いた
往事のフレデリカそのままであった。
「イエス、指令に従います」
唐突にフェザーン行きを命じられたアッテンボローに、フレデリカの微笑みは目に入らなかった。
274 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/03(月) 14:11:04 ID:RIMiakPy
――満面に焚かれるフラッシュの雨の中、二人の女性はペンを執り書面にサインを交わした。
互いの利益配分に衝突も起こることもなく、場は和やかに晩餐会へと移った。
そして大ホールのパーティへと流れ、そこでようやくアッテンボローはヒルダと対面できた。
国交のパーティであるからアッテンボローも正装で臨み、ヤンとは違い男ぶりを上げていたが
ヒルダはその彼さえくすませるほど非常に神々しいローブデコルデ姿で彼の目の前に現れた。
幼い姿で正装した皇帝アレクと共に、少し前まで幾重もの人の輪に埋もれていたヒルダだったが
ご就寝という事でアレクが下がった時に、彼女も人波から抜け出したということだった。
再会のあいさつを交わした後、アッテンボローから会話の口火を切った。
「最初は、どうなることかと思っていたんですよ。行きの船の中で血気盛んな人もいましたから。
帝国のことだ、どんな不公平なレートを持ち出してくるか知れたもんじゃない、とかね。
けどその男、今やすっかり貴女のファンですよ。女神と天使が相手とあっちゃ仕方ありません」
そんな体験はしょっちゅうなのであろう、驚きもせず、ヒルダは話の続きを待った。
「これだけこちら側の人心を懐柔させる効果があるなら…共和国のテレビに毎日出て頂けませんかね?」
真に受けたヒルダがそれはさすがに…と眉をひそめて考え込んでしまったので慌てて付け足した。
「いや、地道な交流こそが互いの永年の誤解を緩和していく一番確かな方法だと思ってます!
すみません。その…再会の嬉しさに舞い上がりすぎました」
柄にもなく赤面したアッテンボローにヒルダは怒ってませんよ、と優しく言葉をかけた。
「相変わらずですね」
ヒルダの視線に懐かしさ以上の感情が篭っていると思ったのは自惚れであろうか?
そしていくらか言葉を交わした後、ヒルダが尋ねてきた。
「あの二人に、続きはあったのかしら?」
しばし頭をめぐらせ、その質問があの映画の二人であることに思い至った。
「あれで終わりです。彼は新聞記者のまま、彼女は王女様として生きていくんでしょう」
映画の結末を教えながら、どうにも言えない感情も同時に胸に染み出していく。
「無邪気な王女様は心の痛みを知って一つ大人になり、事件を追うばかりの彼も記者として
一回り大きくなったという、いい話。なんじゃないですかね」
「あなたは、別の感想をお持ちという事かしら?」
あいまいにぼかした部分をヒルダは鋭く衝いてきた。
「そうですね…せっかくの記事を破り捨てることはなかろうに、とは思いました」
「そういえばジャーナリスト志望されていたんですわね」
質問の答えをはぐらかしたくせに、ヒルダが公園でのたわいもない会話を覚えてくれていたことに
しみじみとした嬉しさがアッテンボローの全身にこみ上げてきた。
275 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/03(月) 14:11:42 ID:RIMiakPy
「記者として、他になにかインタビューしたいことでもあります?」
「そう、ですね…。例えば、皇帝ラインハルトの話とかお願いしたいところです」
だしぬけに聞かれ、あまり考えもせずに口に出した図々しい希望をなんとヒルダは承諾した。
「でも、それをお話しするにはもう、時間がありませんね」
「いや!いいんです。出すぎたことを申し上げました」
そして沈黙が訪れ、あとに残された言葉は別れを告げるあいさつでしかない。
言うんだ、いやここで終わりにしたくないとアッテンボローの内はせめぎあっていた。
どちらの心情も折れないのは、ヒルダも、別れの言葉を言いにくそうにしているからだ。
(またいずれかの機会ににこやかに挨拶しあう、最初っからそれ以上でも以下でもない関係だろ?
もともと別の世界で生きてきて、これからもそう生きていく二人じゃないか。)
最後に勝ったのは、常識であった。アッテンボローは鈍る口を動かし別れを告げようとしていた。
突然、二人の間に電子音が割り込んできた。パーティバッグから通信機を取り出しヒルダは電話に出る。
通話を終え、振り向いたヒルダの顔には困惑という文字がありありと浮かんでいた。
「時間が、丸一日出来てしまいましたわ…」
「それだけあったら、インタビュー本一冊仕上げることも可能でしょうな」
これは神がもたらした幸運というべきか、悪魔の悪戯というべきか、とりあえず分かるのは
ヒルダに返した自分の言葉がとんでもなく間抜けなものだという、それだけであった。
276 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/03(月) 18:53:23 ID:RIMiakPy
今回の条約に好感触を得られた感激に双方大部分のものが浮かれており、壁際の二人に
目を留める人はほぼ皆無であった。電話はフレデリカ側からの予定変更の連絡だったようだ。
翌日の予定は、親和を深めるため皇太后私有の別荘で昼食会というものであったが
背後に財界を背負った共和国議員が、帝国側財界の大物との面会を希望したため
その予定が流れたというのである。もちろんフレデリカ本人から十分な謝辞もあった。
「急に、こんなこちらの都合をおし通してしまってまことに申し訳ありません」
「そちらこそタイトな日程で遠路お越しいただいているのですから、どうぞ気になさらずに」
「昼食会は、私的なもので、という意味でしたわよね?」
「ええ」
「でしたら、私の代理として一人行かせます。私が信頼を置く、とても大事な友人です」
「その人とは…?」
「きっと隣、いえ…その、迎えの車を約束した所にその者がいますから、よろしくお願いします」
「……分かりましたわ。フレデリカさんも今日の疲れを十分お取りなさいますよう」
「お気遣いありがとうございます。それでは」
翌朝、アッテンボローはまだ夢に片足突っ込んでるような心地でホテルの車止めに立っていた。
まさかまさかと足が浮きそうになるのを地面に縫い付けているのは一般常識というものであり、
フレデリカの友人として昼食を共にするというだけであって、個人感情なぞ混じっておらず、
(だから…だからなんだっていうんだ?!)
昨夜から堂々巡りしている脳内議論に決着がつく前に、アッテンボローの前に帝国印のハイヤーが
滑りこんできた。
昨夜のパーティで、フレデリカとの会話をヒルダから聞いたときは半信半疑であったが
お開きになり、宿であるホテルの部屋に戻るとフレデリカからメッセージが届いていた。
「私の代理として昼食会に出席するよう、お願いします」
澄ました声で、承諾した旨をフレデリカに内線で伝える。敵ではないがこういう状況に
背を向けることなどアッテンボローは意地でもしたくなかったのだ。だがそれだけか?否。
とはいえ、私的とはいえども相手は公人である。
「それがどうした!本でも何でもインタビュアーとしてやってやろうじゃないか」
277 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/03(月) 18:53:57 ID:RIMiakPy
アッテンボローは、開き直った。
そうなると車窓の景色も目に入るようになる。なだらかな隆起を描く低い丘が続いた後
視界が開け、夏の日差しを乱反射する湖が大小あちこちで銀色の光を発している。
ゆるいカーブを走り抜けたのち、瀟洒な趣味でまとめられた山荘の前でハイヤーは停車した。
出迎えたヒルダは供もつけず、身軽なパンツ姿でアッテンボローを歓迎した。
「フェザーンにも、こんな風光明媚なところがあったんですね」
「ええ、なかなかですわ。思い出の場所に似ている景色で、それで気に入って…」
湖から吹いてきた涼気を含んだ風が、二人の髪を散らしていく。
「さあ!席にどうぞいらして」
「ではお招きにあずかりまして」
供された昼食はコース料理のかしこまったものではなくカジュアルな料理ばかりだったが
どれも美味しく、付けられたパンの熱さとその美味さがいっそう彼の食欲をそそった。
「アレクに作っているのと同じで工夫とか何もないんですけど」
「手作り?!いや、お世辞でもなんでもなくとても美味しいです。うん、うまい」
「教師の教えと腕がいいんですわ」
フェリックスの養母で、ヒルダの育児の良き先輩でもあるミッターマイヤー夫人の
エヴァンゼリンの名が挙げられ、その後の話題はもっぱら彼ら夫妻についてとなった。
「――腕一杯の、黄色いバラを。」
「ええ、あの人もなにもそこだけ取り入れなくても」
「じゃあ、貴女も同じく」
「はい。ほとんどの色のバラを取り揃えて。玄関中にバラの香りが数日漂っていましたわ」
「はー」
次々に出てくる帝国軍の秘話に、アッテンボローは質問することをすっかり忘れていた。
戦場で相見えた数々の将官の違う一面を知って驚き、時に笑いを堪えられなかった。
278 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/03(月) 18:55:03 ID:RIMiakPy
食後のコーヒーにたっぷりとクリームを注ぎながらヒルダは話を続ける。
「ヤン提督の話も、もっと聞かせてくださいな」
「なにから話していいか…ちょっと、待ってくださいよ」
「迷うほど、あなた方の付き合いは長いんですのね」
「ええ、士官学校から含めるともう片手じゃ足りないぐらいです」
「羨ましいわ。副官として仕えていた年数はともかく夫婦としては私達短かったから」
「…その方面は、うちの人とゆっくり話されるのがよろしいでしょう」
視線をコーヒーに落とし、アッテンボローは音をさせないよう静かにカップを皿に置いた。
この山荘にエアコンはないが、開け放された窓から涼しい風が通り抜けていくので空調に慣れた身に
清清しいほどの爽快感をもたらしてくれる。
ヒルダが辞し、アッテンボローはあてがわれた客室にわずかな手荷物を置いてベッドに寝転がった。
綿のシーツは肌触りが良く、昼食に幾らか飲んだワインにも眠気を誘われ、意識がすっと沈んだ。
目覚めると、熾烈な太陽は勢力を弱めオレンジ色の光が室内に満ちていた。
そろそろここを辞さなければいけないな、と思ったが少し遅かったようだ。
ノックの音がして女主人が顔をのぞかせた。
「夕食を作らせましたので、これから食堂にどうぞ」
昼間とは違って、いまは夏らしく涼しげなワンピースに着替えている。
麻の清潔な質感はヒルダによく似合っており、アッテンボローは思ったままそれを告げた。
「え、ええ、ありがとうございます」
先導で前を歩くヒルダの耳が染まっているのに気付き、アッテンボローも面映くなる。
夕食は湖で取れる魚がメインで、ヒルダも飲める方なのでワインが二本空けられた。
食後はコーヒーではなく強い酒へと変わり、談話室のソファーに並んで腰を掛けた。
「本当はここまで長居するつもりはなかったんですが、お言葉に甘えてしまいました。
お子さん、プリンツアレクも寂しがっているんじゃないでしょうか?」
「あの子はフェリックスと一緒におりますし、それに母親がこのような立場という事も
幼いながらに彼なりに理解しています。これから今以上にあの子は大変になるのですから」
厳しいことを語りながら、その横顔はわが子への慈愛に満ち溢れていた。
279 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/03(月) 18:55:47 ID:RIMiakPy
「『アレクサンデル・ジークフリート・フォン・ローエングラム』あの子の名前ですね。
二つ目の名は、故ジークフリード・キルヒアイスからだと。そのように聞いております」
「ええ。あの人はわたくしの出産の報を聞いた先の執務室でインクで汚れた紙くずを山のように
こしらえたとかで。それを侍従のエミールから教えられてもちろん、嬉しかったのですけれども
可笑しくて仕方なかったのもよく覚えていますわ。父親らしい心も持ち合わせた人なのだわって」
その笑顔が、一瞬後に曇る。
「それにくらべて、わたくしは…妻らしいこと何一つあの人にしていなかったような気がします。
エヴァンゼリンさんを見ていますと、あまりいい奥さんじゃなかったかもしれませんね」
語尾が、震えていた。
「少し、酒がすすまれてしまったようですね」
ヒルダを立ち上がらせ彼女の寝室に送り、食堂から水差しとグラスを持って部屋に向かう。
私室に入るのは気がとがめてドアのところで立ち止まると、中に入るように促された。
部屋にあかりはついておらず、窓から差し込む月光が意外にも明るく部屋を照らしていた。
「何度も思っていたのです。皇妃がわたくしであの人に本当に良かったのかどうかを」
「良かったに、決まっているじゃないですか」
若葉からの木漏れ日の化身のようなヒルダが、いまは月の光に溶けていってしまいそうだ。
「あなただからこそ、皇帝ラインハルトも皇妃にあなたを選んだのだし、あなたがいたからこそ
皇帝は皇帝自身でいられたんです。彼と戦った俺の実感がそう言うんです、間違いありません」
「そう、かしら?」
ヒルダは微笑んだが、月光の陰になった側に一筋光るものがあった。
たまらず、アッテンボローはヒルダの細い体を胸のうちに引き寄せていた。
280 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/03(月) 18:56:36 ID:RIMiakPy
ようやく次ぎエロです。前おき長くてすまぬ。
281 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/03(月) 23:39:41 ID:O39LUG9F
>>280
wktk
282 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/04(火) 00:14:38 ID:aPKOW1cu
「それがどうした!」キター(AA略
ちょっと期待してましたw
283 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/04(火) 00:49:17 ID:qvpBQIIL
続き〜希望
284 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/04(火) 04:35:22 ID:qvpBQIIL
ヒルダ欲求不満
285 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/04(火) 07:17:32 ID:HVwQ+DVm
たとえ、エロがない展開でもオレは十分萌えた
286 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/04(火) 12:12:29 ID:aEoJ9fd/
うおおおおお続き来てた!
>>285
禿同
いい流れでふたりとも素敵だ
287 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/04(火) 16:39:10 ID:qvpBQIIL
できればヒルダはラインハルトだけのものでいてほしい。
アッテンボローなんて・・・
288 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/04(火) 16:46:52 ID:n6+xmsV0
俺も原作のヒルダは夫だけでいてくれると嬉しいが
この話はこの話で感じ良くて萌える
エロパロは楽しいね
職人氏乙!続き楽しみにしとる
289 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/04(火) 19:25:44 ID:YPEnQDNs
確かにヒルダは皇帝だけのものであってほしいが、
でもまだ24歳だし、男なしじゃかわいそーな気もすんな。
ちょっとアッテン誘ってる感じにはひいたが、
つづき楽しみにしてます
290 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/04(火) 19:46:22 ID:8Zzntr3u
ヒルダもフレデリカも別にあれ以降 男なしでもかまわないだろうけど
ここは2ちゃんのエロパロ板だしこういうのがあってもいいんじゃないかな
嫌な人はスルーしよう
続き待ってますよ
カリンの人も待ってます
291 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/04(火) 20:37:54 ID:pKBsLO6w
作者です。
アッテンは…藁止まり(ワラ
292 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/04(火) 22:46:57 ID:EVlhE7DO
こんな(ノーマルカプが)マイナーなジャンルで
カップリング論争しても不毛なだけだしマターリいきましょうや。
>291
乙です。エロがないここまでの展開でも丁寧で原作に近い描写に萌えた。
何か流れが微妙なので、続きはトリップ付けて投下した方がいいかも知れない。
騙りも防げるし、読みたくない人は専ブラからトリップをNGワードにすれば読み飛ばせるから。
293 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/05(水) 00:51:14 ID:6MIEE7HS
そうだなヒルダにはエミールがいる。
294 :
作者
◆UyhdNh9lUA
:2006/04/05(水) 09:44:10 ID:Qmuv4hn1
二人はくっつけない方に変えたのですげ長くなってます…orz
夜にはなんとか。
295 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/05(水) 09:52:32 ID:n27Z/zBi
くっつけない方??
気になるw
ローマの休日風なふたりは萌えた。
夜まで時間あるらしいんでカリン投下します。
296 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/05(水) 09:54:05 ID:n27Z/zBi
あ、詳しい返答くれた方ありがとうございました。
めちゃくちゃ参考になりました。
カリンはもともと男という生き物がどうも好きになれなかった。
知人、友人としてならばいい。歴史上には尊敬にたる人物が数多くいる。
だが、恋人としてはどうだろう?
男というものは、勝手に女を孕ませて、期待をもたせ、それを簡単に裏切ることのできる人種なのではないか?
ふと思い出すのは、さわやかな微風に髪を波立たせながら、美しい声で歌う母親。
ひとりぼっちで、ずっと幸せそうにカリンには微笑みながら、夫となるべき人物を待ちつづけたさびしいひと。
わたしは一生、父親を許さない!
カリンはそう思っていた。
その強い意識が、彼女に愛情をそそがれ、そそぐべき男性という存在を、無視させていた。
297 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/05(水) 09:55:26 ID:n27Z/zBi
「ふぅ……ん……あぁ」
鼻にかかった声をあげる。
大丈夫、今部屋にはひとりしかいない。
薄闇の世界、カーテンを透けて降り立つ光の梯だけがまぶしい。
その光は真っ直ぐにカリンにとどき、愛液を輝かせていた。
甘美な興奮よりも、罪悪感の方がカリンの身体をふるわせる。
おかずとして用意された数々の雑誌やHPは、彼女には過激で、男性にいじられ女性が喜びに身体をよじる姿が、潔癖症な彼女に失望を与えていた。
自分も外から見ればこんな格好をしているのだろうか?
それは彼女にとっては深刻な悩みだった。
なんて汚らしい、と思いつつ、彼女は若さゆえの熱をもてあます。
処理しなければ、昼間股間のあたりがうずめきだすし、処理すればしたで、欲望はいっそう増してしまう。
―――どうすればよいのだろう?
頭脳は冷静に問う。
心身は灼熱して快感に歓喜の声をあげている。
指でクリトリスを大きく弾いた時、彼女の身体が仰け反って、熱い液が指に絡んだ。
298 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/05(水) 09:56:41 ID:n27Z/zBi
昔に想いを馳せれば、確かに自慰は綺麗な夢だったのだ。
降りそそぐ陽光、温まる身体、甘い快感。
それは種族をたやさないための、生物の繁栄の知恵であったのだろう。
だが、カリンにとっては、男という存在がなくても、自分で自分を快くすることができるのだ、という事実が頼もしかった。
299 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/05(水) 09:57:58 ID:n27Z/zBi
―――なのに、何でなのよ!
二回目に入ろうとしたとき、カリンはふと亜麻色の髪の少年を思い出し、顔を朱に染めた。
なにものかに対する怒りと、羞恥のために。
亜麻色の髪の少年は、強く優しい少年だった。
いや、もう青年といった方が正しいのだろうか?
仰ぐべき師を失ってから、彼は目に見えて大きくなった。
喪失を、なにものかが埋めようとした結果なのかもしれない。
彼は信頼に足る人間だった。
真面目な、将来の豊かな青年だった。
そうであればこそ、彼を思い浮かべてしまった自分を、カリンは許せない。
「そうよ、あいつなんて、わたしのこと何とも思っちゃいないんだから」
小さく呟く。
それは間違いようのない真実だと、もうひとりのカリンがささやく。
ユリアン・ミンツ氏のことを想う慰めは、彼女の自尊心が許可しなかった。
300 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/05(水) 10:47:35 ID:Qmuv4hn1
おおーーーーーーーーーーーーーー!!
やった続き着た来た北!!キターーーーーーーーーーーーー!
嬉しいです。
>>296
301 :
作者
◆UyhdNh9lUA
:2006/04/05(水) 17:23:21 ID:Qmuv4hn1
上の書き込みの直後が自分ってちょっと恥ずかしいなり。
もう残り全部行きますんで、受け付けない人はスルーしてな。
302 :
作者
◆UyhdNh9lUA
:2006/04/05(水) 17:24:34 ID:Qmuv4hn1
月光が差す部屋で、涙で濡れたヒルダの瞳は億万の宝石よりも美しく光る。
「ごめんなさい、泣いてしまったりして」
「謝らないで、素直に泣いてしまっていいんですよ。そういう夜は、誰にでもあるものです。
俺の腕は銀河を包むほど大きくはないですが、女性を泣かせるだけの広さはありますから」
ヒルダが背負ってきたこの数年の重責が、抱きしめられたところから蒸発していくようだ。
彼女の体から強張りが抜けるまで、アッテンボローは静かにヒルダを抱きしめ続けていた。
呼吸が落ち着くのをみて、ヒルダの顔を両手で優しく包み込む。
親しい相手から、男の目に変わった相手を見てもヒルダはそこに留まっていた。
理性では判断できない感情に心が満たされて、足が縫い付けられたようになっていたのだ。
(分からない、でもこのまま部屋に残されるのは……一人になりたくない!)
急激に増した胸苦しさに突き動かされて、救いを求めるようにアッテンボローを見上げる。
視線がかち合う。アッテンボローの顔が近づいてきた。
目を閉じ、その時を待った。
そっと優しく触れるだけのキス。そういうキスもあるのだと初めてヒルダは知った。
「これで、今晩は眠れそうですか?」
アッテンボローが耳に囁いた声にヒルダの体は固くなった。
ここに居て、と口に出せず自分が手を置くところのシャツを握り締めることしかできなかったが
アッテンボローにはそれで通じたようだった。
もう一度、唇がヒルダに降りてきて今度は押し包むように触れてきた。
ヒルダの唇の瑞々しさを確かめるように、幾度もアッテンボローは触れて離れを繰り返した。
303 :
作者
◆UyhdNh9lUA
:2006/04/05(水) 17:25:09 ID:Qmuv4hn1
映画ならここでfinマークだが、二人は幕を降ろそうとはしなかった。
肩を支え、ヒルダをベッドに座らせると、より肩を引き寄せ深く口付ける。
最初はぎこちなかったが、すぐにのみこんだのかヒルダも同じように返してくれた。
ワンピースの背中のファスナーを下ろし、現れた細く白い肩を優しく指先で愛撫する。
しばらくして唇を離すと、ヒルダは少し早口で自己申告した。
「あの…ずいぶんひさしぶりなもので、その…すみません」
「大丈夫ですよ、俺に任せてください」
一国の女王にずいぶん大きく出たものだと自分のくそ度胸にいっそ拍手でもしたいが
それよりも、無粋でも何でも聞かねばならぬ重要なことがある。
「ええっとその…お持ちですか?避妊具」
「そこの、引き出しに入っているかと」
ヒルダから離れ、そこを開けてみるとそれはあった。未開封の箱が事情を物語る。
ここに訪れることなく、ヴァルハラに去っていたヒルダの夫。
これほど滑稽さと真剣さが同居する事態など、他にあるのだろうか?
ともかくさっさとセロハンを切り、手に一つ握りこんだ。
今まで触ったこともないようなすべらかさと光沢を持つ下着を取り去ると、自分とはまったく
違う白く抜けるような肌が現われた。ヒルダは静かに身体を横たえ、彼の手を待っている。
これまで見てきたヒルダの数々の姿が脳裏を流れていく。銀河の頂点に独り立つ、この女性。
でも今目の前にいるのは、幾万の人々と同じ健気に戦後を生きている一人の女性なのだ。
好きだ、とか愛しているなんて軽々しくも口に出来ないほどの真摯な想いが彼の内にある。
自分に出来ることなら、なんでもいいから彼女にしてあげたかった。
304 :
作者
◆UyhdNh9lUA
:2006/04/05(水) 17:25:50 ID:Qmuv4hn1
「わたくしもあなたも、あれからずいぶん長い道のりを歩いてきましたわね」
下からそっと手を伸ばされ、アッテンボローの頬が優しく撫でられた。
「まったく、天上で呑気に過ごしている人たちに俺たちの苦労を見せてやりたいですよ」
「本当ですわね」
ヒルダがありか無きかの笑みをそっと浮かべた。
――だが、これからのことには目を瞑っていてもらいたいね。
こんなとびきりのいい女を置いてくたばったあんたが悪いんだからな、カイザー。
ヒルダを押しつぶさないように覆いかぶさり、一児の母とは思えないほどの美を保つ肌に
指を滑らせていく。ほどよく乗った脂が蕩けそうな感触を手のひらに伝えてくる。
手加減しておこうという自制はあっさり破られ夢中でヒルダの身体に手を這わしていく。
ある点に差し掛かったとき、ちょうどそこが弱かったのかヒルダの背が反った。
跡を付けないよう気遣いながらそこを吸うとヒルダの息が乱れ、声が上がる。
平たい腹部を通り過ぎさらに手をのばすと、そこは熱く濡れていた。
ヒルダの足を割り開き、顔を近づける。
「あっ!なにを?…っん!」
起き上がりかけたが、おとがいを反らし再びヒルダの身体はベッドに沈み込んだ。
入り口に舌を差しこみ上の真珠を優しく指で撫で転がし、経験の少ない彼女をほぐしていく。
「やぁ…うぅんっ…ああっ」
そこを弄られ、たまらず喘ぐ声が勝手に出てしまう。何をされているのかも分からない。
ヒルダの声に甘みが帯びてきたのを聞き、アッテンボローは指への愛撫に切り替えた。
差し入れられた二本の指が自在に動くようになり、水気がそこに十分潤ったのをみると
手早くスキンを装着してそこにあてがった。
「…大丈夫ですか?」
「は、い」
初体験の快感に翻弄されまくり、天地が逆さまのような心地だったがなんとか返事をした。
一気に突き入れず、じわりと奥に分け入っていく。お互いの熱が全身をめぐり肌に溶けていく。
ヒルダの耳に口を寄せアッテンボローは彼女に小さく囁いた。返事は彼の背に回されたしなやかな腕。
――彼女が無言だったわけを彼が知るのはもうしばらく後になる。
305 :
作者
◆UyhdNh9lUA
:2006/04/05(水) 17:28:30 ID:Qmuv4hn1
それを合図にアッテンボローは腰を突き出した。ある所に擦るように動かすと、より中が蠢くのが分かり
外さぬようにそれを続けるとかなりの収縮が生じると共に、ヒルダの全身がさあっとバラ色に染まった。
さながら澄んだ泉にワインを一杯こぼしたかのような、あまりに鮮やかな表れだった。
その収縮にアッテンボローも放出した。二人の距離はそのとき限りなく極限に近づいていた。
だが実その数ミクロンの壁は、映画の二人の距離と同じぐらい、いやそれ以上であったか。
乱れた呼吸と鼓動が落ち着いた頃、身体を離し始末をしてヒルダに冷たい水を差し出した。
クリスタルを持つ手が揺れ、思いつめたヒルダの瞳がアッテンボローに向けられた。
「あなたの想い、とても、とても嬉しく思います、わたくしもそう思っていましたから」
けれど、と一瞬口ごもりアッテンボローに向き直った。
「私は少し…そう、少し、慎重にしなければならない立場なのです。あの人を選んだのも
自ら進んでこの役割に着いたのも、私の、私の意志でしていることなのですから」
雫がこぼれる寸前で、ヒルダの瞳が揺れる。
少し、に込められた彼女の言葉にならない心情を、アッテンボローは正確に理解した。
そして彼女の強靭さと、しなやかさと、まったくうちのあの人と同じだ、とも思う。
「…あの映画を昔見たときは、なんて意気地のない男だろうと思ってましたよ。
けれど、今は痛いほど分かります。彼はああするしかなかったんだ、とね」
(男の人からこんなにも優しい目をされたのは、父とあの人と、彼だけだわ…)
「ただ、一つ違うところがあるとすれば…」
「それは?」
「俺は、逆境があればあるほど燃える性格、ってところです」
そしていつの間にクリスタルのグラスを固く握り締めていたヒルダの両手をそっと解いてグラスを置き
しなやかな身体をすっぽり自分の腕に包み込んだ。
「ふう、どいつもこいつも」
「なんですの?」
「こっちも帝国も、あの二人は凡人には真似できない数々の武勲を戦場であげてきましたが、
一番の戦果はこれ、至宝の花嫁を陥落させたことです。まったく、尊敬に値します」
冗談めかしたように片目をつぶってアッテンボローは大げさに溜息をついてみせた。
切ない思いを双方抱きながら、国も立場も違う二人は朝まで静かな海のように抱き合っていた。
306 :
作者
◆UyhdNh9lUA
:2006/04/05(水) 17:29:30 ID:Qmuv4hn1
朝食の席、昨夜よりもだいぶ回復したものの暗い表情のヒルダにアッテンボローが話しかけた。
「貴女に、魔法の呪文を教えておきましょう」
「なんでしょうか?」
「これを一言口にするだけでどんな困難もあっという間に消え失せるんです」
「わたくしに教えてしまって、よろしいのですか?」
「いいんです!」
大仰に断言し、神妙な顔で付け加える。
「ただし、あんまり多用すると効果は無くなってしまいますのでご注意を」
「はい」
こっくりとヒルダが優等生のように素直に頷いた。
「じゃ、言いますよ。"それがどうした!"」
「は?」
「それがどうした!はい、言ってください」
「それが、どうした?」
「もっと力強く!」
「そ、それがどうした!」
「うん、上出来です」
「これでいいのでしょうか?」
「いやいや、これはヤン艦隊のピンチを幾度も救った霊験あらたかな呪文です。きっとこれから
貴女を何度も救うことでしょう」
効果の真偽はともかく、自分の気を慰めようというアッテンボローの優しさが嬉しかった。
ヒルダの笑みに、アッテンボローは少年のように心が浮き立つのを感じていた。
307 :
作者
◆UyhdNh9lUA
:2006/04/05(水) 17:30:29 ID:Qmuv4hn1
朝食後にハイヤーが呼ばれ、ヒルダが車止めまで見送りに来てくれた。
「またしばらく離れ離れですね」
そんなアッテンボローの言葉にヒルダの顔はなぜか固い。彼女はまだ戸惑っていたのだ。
私はこの人に好感を抱いている、間違いない。けれどあの人に抱いていた気持ちとは違う。
この先も同じように会って、そしてそれから…二人はどうしていくべきなんだろうか?
「ヒルダさん?」
アッテンボローがヒルダの肩に手をかけたその時、眩しい光が二人の目の前に炸裂した。
「テロか!?」
と一瞬肝が冷えたが、植え込みをガサガサと不恰好に横切る姿は敵兵の様子ではない。
元軍人の体が俊敏に動き、逃げる相手をすぐさま取り押さえ後ろ手にひねりあげた。
小型カメラが硬い音を立てて地面に転がり落ちる。踵を下ろし速攻踏み壊したのだが
「っへ、もう遅いよ。本社に転送しちまったからな」
「…分かった、もうお前はいい。痛くして悪かったな?もう行け!!」
不審者はフリーのカメラマンだった。手を払って振り向くと、青ざめた顔をしたヒルダがいた。
「写真が送られたとかいう出版社に憲兵隊を突入させましょうか?」
「いや!そこまでしなくていいですよ」
以外に過激な皇太后陛下の発言に驚く。
「なんとでもなりますから。なーに、俺なら大丈夫ですよ。それより貴女の名誉が心配だ」
「わたくしのことより…」
「このアッテンボロー様に喧嘩売ったことを相手に心底後悔させてやりますよ」
こんな緊急時に、ヒルダに向かってウインクなぞしてみせる。
「うちの艦隊仕込みのやり方でね!」
そしてヒルダに顔を寄せて耳打ちをした。もちろん、ヒルダはそれを快諾した。
不敵な笑みを浮かべるアッテンボロー。
堅物の教師から帝国軍までさんざん引っ掻き回した過去を思い出したのか、非常に楽しげである。
308 :
作者
◆UyhdNh9lUA
:2006/04/05(水) 17:31:21 ID:Qmuv4hn1
彼の目で踊る陽光を見たヒルダの内に熱が生まれ、そして強力な上昇気流が渦を巻いて立ち昇る。
巻き込まれて、ヒルダの心は一気に空へと舞い上げられた。
(そうか…私が彼に惹かれたのは…)
自由闊達が生きて呼吸をしているかのような男、自分とはまったく違う空気の中で生きている人。
だから、分かってしまった。
この人に自分が付いていく事はないだろうということを。
彼には彼の世界があって、自分にも心から大事にする者達の中に自分の居場所があるのだ。
ヒルダがようやく自分の気持ちに気付いたとき、それはすでに後姿を見せていた。
恋の成就と失恋を同時に出迎えたヒルダの視界が知らず、滲む。
そして、ラインハルトと自分との間に存在したのは紛れもなく愛であったのだという確信が
ヒルダの深いところから静かに湧き上がってきた。
初恋を知る前に愛が訪れ、その愛は初恋よりも儚く消えた。
しかし、愛は初恋が過ぎた後により確かな姿でもって彼女の前に再び現れたのだ。
(さよならを…言えるわね?ヒルデガルド・フォン・ローエングラム?)
顔を上げたヒルダに気がついて振り向いたアッテンボローは、彼女の顔を見てすべて悟った。
昨夜の翳りはどこにも見当たらず、それこそ彼が惹かれた生気にきらめく瞳がそこにあった。
美しい。天空に気高く光る星が地上で人の姿をとったならばきっとこのようであろう。
一度は彼の手元にあった宝石は、ヴァルハラの神の手により天に煌く星へと取り戻されたのだ。
だから、アッテンボローは自分から切り出した。
「俺…は、待っています。貴女が心を注いで育てる新しい帝国の姿を、楽しみに待っています。
貴女に恥じないよう、俺もやっていきます」
そうして、右手をヒルダに差し出した。その手を受けて固く握り締めながらヒルダは頷く。
「ええ、わたくしもあなたに同じことを言おうと思っていました」
そしてしばし見つめ合う。
悲痛の気持ちが互いに見て取れるが、相手に寄せる親愛の情はそれを遥かに上回ってありあまる。
「御武運を」
「御武運を」
手が離され――ヒルダは息が止まるほどアッテンボローに抱きしめられた。
目を閉じて、自分を暗い森から連れ出してくれた男の生きている証をしばらく頬を寄せて聞く。
風を感じ目を開けると、アッテンボローの姿はなく車のテールランプが遠ざかっていくのが見えた。
晩夏の風に吹かれてしばらく立ち尽くす。涙はとうに溢れていたが、じきに止まるだろう。
ヒルダは踵を返し、自分が居るべき所、帰りたい場所へ迷いなく歩いていった。
バックミラーに遠ざかる山荘が映る。ヒルダの姿はすでに見えなくなっていた。
切られるような痛みが胸に走るが
(悲劇に浸りきるなんてのは俺のキャラじゃない)
シリアスな状況のときほど生き生きと活動を始める性分が、今の彼の心を支えていた。
「あー。あとちょっとで皇帝ラインハルトもヤン提督も成し遂げなかった銀河統一も
夢じゃなかったのに……なんて、な!」
右手を持ち上げ目にのせる。閉じた瞼の裏が、熱かった。
309 :
作者
◆UyhdNh9lUA
:2006/04/05(水) 17:34:01 ID:Qmuv4hn1
翌日、アッテンボローがここ最近汚職疑惑を議会で追い詰めている政敵からビジフォンがきた。
自分の差し金とは当然言わず、どれほどダメージを受けているか確かめる為にかけてきたらしい。
適当に相槌を打って相手の卑小ぶりにとことん呆れ、アッテンボローは闘志を一層燃やした。
「どうだ、こうなったら言い開きも出来まい!今度はお前が追われる番だ!」
おいおい自分がやりましたって白状してるも同じじゃないかよ、と底抜けに呆れてしまう。
「ええ確かに載っていますね。でも隣のページもよくご覧下さいよ。いやはや、宣伝ご協力
まことにありがとうございます。はい。」
彼の手元の雑誌ページには、二人が親しく並び立つ写真とスキャンダラスな煽り文があるが
すぐ次のページにはなんと
「密着取材!“皇帝の真実”緊急発売!現在鋭意執筆中」との宣伝と共に本の出版予定が、
そして皇太后のメッセージも掲載されている。
「今まで遠かったそれぞれの国がこれで近く親しまれますように」
余裕綽々、怒りが半分といった口調でアッテンボローが続ける。
「では、また会議室でお会いしましょうな」
「ぐ…ぐぬぬぬうううう」
喧嘩には勝ったが、これから自分の歩いていく先の道のりを思うと気が遠くなる。
けれどあの人と俺は約束したのだ。あてもしれない約束だけれども。
「だが、そんな約束に男の一生かける事こそ伊達と酔狂ってものじゃないか?」
まだ残暑は続いているが、空だけは青く高く秋の気配を漂わせている。
椅子にかけた上着を掴むと、アッテンボローは彼の戦場へ颯爽と飛び出していった。
310 :
作者
◆UyhdNh9lUA
:2006/04/05(水) 17:40:13 ID:Qmuv4hn1
詰め込みすぎたっつうの自分…orz
疲れるでしょうから、休み休み読んでやってください。それじゃまたノシ
311 :
作者
◆UyhdNh9lUA
:2006/04/05(水) 19:16:25 ID:Qmuv4hn1
駄目押しにラスいち投下。これで本当に最後。
長々長々と読んでいただいた皆様ありがとう。これからは短く書く。
312 :
作者
◆UyhdNh9lUA
:2006/04/05(水) 19:17:01 ID:Qmuv4hn1
このところ、天候は荒れに荒れ、雷雨まじりの雹が地に降り注いでいた。
時を同じくして、ヴァルハラでは白皙の美貌を紅潮させ怒りを露にした金髪の男が
燃えるような赤毛の長身の青年に向かって掴みかからんばかりの勢いで吼えていた。
「キルヒアイス!これはなんだ!」
「なんだと言われましても…普通にいい話じゃないですか?これは」
ラインハルトの手にあるのはどこから仕入れたのかアッテンボロー著の“皇帝の真実”。
キルヒアイスが問題の箇所を読みあげた。
「――皇帝がその腕に抱いて愛した女性は生涯にわたってただ一人、
皇妃ヒルデガルドのみであった――いったい、この部分のどこが悪いのですか?」
「それはいいんだ!そうではなく、同盟軍のあまりの下品さに予は怒りを感じているのだ」
「と、いいますと…?」
「これを見ろ」
どういう仕組みか分からないがラインハルトが手をかざすと映像が空に浮かび出た。
アッテンボローから送りつけられた本を一通り読んだ後らしい。その男がしれっと言う。
「なんだあのカイザー、あの時もあの頃もあんな事成し遂げた時も、童貞だったってことかよ」
その感想は旧同盟軍中にあっというまに広がり、ラインハルトには非常に不本意なところで
共和国民のごく一部の人らに、一気に親しみを持たれてしまったのであった。
「くそうあの男、なんってことを!!」
「ラインハルト様、それぐらいにしてそろそろ三時にしましょう。今日はラインハルト様の
好物でいらっしゃるアプフェルトルテが写真の前に供えられていましたから頂きましょう」
どうにかラインハルトの噴火は一時収まったが、荒れ模様は当分続くことであろう。
その悪天候の原因を知らず作っていた男は、荒れ続きの空をみて舌打ちをかましていた。
健気で綺麗な女性が細腕で切り盛りしている戦争孤児院に今は転がり込んでいる
いまや旧同盟軍随一の遊び人の称号をいただくその男は、山盛りの洗濯済みのおむつを見て
盛大な溜息をはき出していた。
313 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/05(水) 20:05:15 ID:WyL8RW3b
>>◆UyhdNh9lUA
うはーーー!始めから終わりまで一気読みした!GJ!!
別れ際に「御武運を」とお互い言い合ったところが禿モエス!!
恋人同士にならず、またそれぞれの立場へと戻って行ったのも、彼等らしくてよかった。
いくつになってもふてぶてしさと男気を失わないアッテンは格好いいな!
「それがどうした!」って言わされるヒルダも可愛くて萌え。
そんで最後のラインハルトに笑ったw
機嫌の善し悪しで天候まで左右してしまうカイザー、ハゲワロスwww
>>295-299
カリンの続きキターーー!!
まだ続くよね?これで終わりじゃないよね?
ユリアンの事になると素直になれないカリン萌え!!!
314 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/05(水) 20:24:52 ID:n27Z/zBi
最後の別れが綺麗でよかった!!
最高でした。乙
にしてもカイザーはヒルダとアッテンの情事にきづかなかったんだろーか。
315 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/05(水) 21:08:56 ID:eoU1k+O5
>>◆UyhdNh9lUA
超GJ!
両者とも収まるべきとこに収まったというか、綺麗な終わり方だった
ちょwwwカイザーワロスwww
316 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/05(水) 22:19:55 ID:hktVGV7K
GJ!GJ!良い納め方だったな
ほんと、カイザーワロス 乙!!
>>296
すごいカリンっぽくていいなこれ 今だ行けミンツ! GJです
317 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/05(水) 22:38:49 ID:Ar/x3ka3
GJ、GJ!お前さん神だよ神!
二次創作っていいもんだなーって、改めて思った。すげー!
318 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/05(水) 23:54:21 ID:Mdyj80QJ
まさに神の仕事を見た。
文は美しいし台詞もまるで外伝読んだ気分にさせられる。
私は長編バッチコイだ。
カリンの続きと次回作に激しく期待してます。
319 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/06(木) 00:59:17 ID:AWOQQOz8
ヒルダがいいと言ってみるものだ
320 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/06(木) 01:13:57 ID:YF1iYYWv
>>295
カリンタン(´Д`;)ハァハァ
321 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/06(木) 19:22:15 ID:mh8MMWiV
切ないけど明るいラストでよかった。
避妊とかパパラッチとか、細かいとこまで乙でした。
読ませてくださってありがとう。GJ!
322 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/06(木) 20:10:09 ID:sm3tVwX8
セーラーのアレク(=ちびラインハルト)に萌え。
フェリックスは「ご学友」という感じになるんだろうか。
アッテン=ジャーナリスト志望=新聞記者
ヒルダ=皇妃=王女
っていうローマの休日設定はうまいなあ。
323 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/06(木) 23:24:08 ID:AWOQQOz8
ローマの休日知らない
324 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/06(木) 23:25:42 ID:LyMJRXvG
>>323
オードリー・ヘプバーン主演の名画。
機会があれば一度見てみることをオススメする。
325 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/07(金) 02:11:04 ID:69Wbvcz8
お涼さまの続きも読みたいyo
326 :
ばるはら
:2006/04/07(金) 04:33:58 ID:fhk9Vffk
作者です。けっこうな反響で嬉しかったので
>>314
さんのために、補足w
蛇足と罵られるかも…
327 :
ばるはら
:2006/04/07(金) 04:35:46 ID:fhk9Vffk
天上の国、ヴァルハラでは平穏な時間がとうとうと流れていた。
殺伐としていては困る。
だが、今夜に限ってはその平穏も無事保たれるかどうか。
「…ちょっと、そのね、悪趣味だよ?君たち」
「歴史家志望の人からすればこの状況に興味をひかれりゃしませんか?」
「そりゃあるけれど…。いや!それでも人としての良心ってものがね…」
「そういえば、まだ皇妃の顔を見たことがなかったんでしたな?」
(ごめん…フレデリカ。ごめん、ユリアン。ゴメンみんな…)
「さ、他の皆も寄って寄って!」
「貴様ら、何をしている!不敬罪だ!!」
「ち!帝国の奴ら、もうかぎつけてきやがった」
ヴァルハラにおわす神の守護女神、ワルキューレたちの撃墜数を競い合う二人が睨みあう。
「す、すみません!ただちに解散させますから!」
「…あなたは人が良すぎる!」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ?――はっ!」
人垣がザッと二つに割れ、赤毛の長身の青年を連れた金髪の男が中心に進み出た。
「卿ら、何の騒ぎだ?」
「はっ!マインカイザー。同盟軍の奴らがまた性懲りもなく下らない企みを」
「下らない企みとはなんだ!」
「では、なんだ?」
「下世話な好奇心だ!」
鼻息をふんと飛ばし意気揚々と胸を張る薔薇騎士団元隊長。
「余計悪いわ!!!」
血統書付き猫が相手を威嚇するかのように金銀妖眼の両目が光る。
328 :
ばるはら
:2006/04/07(金) 04:37:03 ID:fhk9Vffk
「二人とも下がれ!いったいなんなのだ騒ぎの元は…これか?」
あわててヤンがその前に立ちふさがろうとしたが、体技が遥かに上であるラインハルトに
あっさり雲の上に転がされてしまった。
「こ…これは!!!!!!!!!!」
「ヒルデガルド様…。相手は、一体誰なんでしょうか」
「うちの一員です」
とうとう覚悟を決めたヤンはベレー帽を両手でグッと握り締めた。
「そ…そんな…カイザーリンが!」
「見てはいけません!ラインハルト様!!」
棒立ちになるラインハルトをニヤニヤみやる薔薇隊長のわき腹をヤンは肘鉄で小突いた。
目が離せず、かといって平静でこの状況を見ていられる訳などなかったが全身が金縛りに遭う。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「まったく、天上で呑気に過ごしている人たちに俺たちの苦労を見せてやりたいですよ」
「本当ですわね」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(見ている、予は見ているぞ、二人とも!!)
空中に浮かび出る画像の枠をしっかと掴んで離さないラインハルト。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
――だが、これからのことには目を瞑っていてもらいたいね。
こんなとびきりのいい女を置いてくたばったあんたが悪いんだからな、カイザー。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ラインハルトの手が、降ろされた。手を振り画像を消してしまう。
「…彼の言うとおりだ。予がこの体たらくである以上、彼女の私事に踏み込むことは適わぬ」
そう言い残し、金髪の獅子は力なくその場から去っていった。
他の者に目礼し、即座にその後を気遣うように追っていくキルヒアイス。
「そういうことなので…解散しよう、解散。なっ!」
中途半端に伸びた髪を掻き回し、ヤンは撤収をうながした。
「そうですな。いささか気が削がれました」
これでその日の混乱は治まった様に思えたのだが…。
329 :
ばるはら
:2006/04/07(金) 05:17:47 ID:fhk9Vffk
翌朝、眠れなかったラインハルトは気晴らしに天花が咲き乱れる庭園を訪れていた。
まだ寝乱れた姿のまま新たに獲た女神の所から朝帰りをしてきた男がラインハルトを見て
近づいて来、肩にポンと手を置き意味ありげに微笑み、そして去っていった。
「…な、なんなのだ?」
疑問符を一杯頭上にとまらせたラインハルトをこの上ない美しい響きで呼ぶ声がする。
「マインカイザー。奴のことなど気にすることはありません」
「…そうか」
そこで終わっておけばよかったのだ。
「あれ程度で得意げだとは、奴のテクニックもたいしたことはないという事です」
「!!!!」
「どうなされましたかな?」
「ばか!卿は何をうっかりバラしてるんだ!!」
突っ込まれて自分が口走った内容に気付いて青ざめる。
(やはり、二軒梯子はヤリ過ぎたか…己の戦力を高く見積もり過ぎてしまったか)
「それも全部口に出して言っているぞ!まったくこんなだから血迷って反逆なぞ起こすのだ」
「黙れ、このナースフェチが!!」
「それは関係ないだろう!そもそもお前の所為で俺が死んでしまったんだろうが!!」
もはや敬称もすっとび激しい掴み合いが始まってしまった。
「卿ら、御前だぞ」
「「黙ってろ!この貧乏貴族!!」」
同時に怒鳴られて、あまりの侮辱に血がのぼる。
「な、な、それが元帥の地位にある者たちが言う事か!!」
今度は三つ巴となりとうとう手足が出始めた。
軍人の第六感が働いて、大気中がピリピリと帯電する気配を感じ取る。
即座に三人は姿勢をただし、至高の上司である男に向き直った。
「卿らの忠誠心、今日はほとほと良く分かったぞ」
内圧が急激に高まっていく様子に、その場の皆の背を絶望が冷たく滑り降りていく。
――審判の時がやってきた。
天が二つに裂けたかのような轟音が空気を震わせ鼓膜を嵐のように叩く。
魂だけの相手にブスブスと黒煙をあげさせた苛烈な獅子は、優雅にマントを翻し去っていった。
(キルヒアイス…俺は、俺は…これからヴァルハラでどう生きていったら良いのか?)
気の毒そうにラインハルトを見守るヤンだが、彼に声をかける資格はなかった。
同盟軍に帝国の不敬罪など関係ないと強引な主張に巻き込まれ、結局見てしまったのであった。
周囲の期待を背負ったキルヒアイスの取り成しにより、またヒルダの誠実な愛情を感じ取った
ラインハルトは自信を取り戻し、今日もヴァルハラを意気軒昂と過ごすようになっている。
その平穏が破られるのは、その数週間後のとある本の出版後のはなしである。
おしまいノシ
330 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/07(金) 05:53:54 ID:fhk9Vffk
〜キルヒアイスの取り成し〜
「ラインハルト様、ああいう事があって落ち込む気持ちは分からないでもないですが、
私の身の上もよくよく考えては下さいませんか?」
誠実な赤毛の友、そして清い体のまま天上へ自分が去らせてしまった彼の生き様を
今初めて発見したかのようにラインハルトの目が開かれた。
「…すまない。いつもお前には心苦労をかけてしまうな」
「分かっていただければいいのですよ」
少しだけ痛む心を抱え、いまだ少年のような精神を持つ親友に微笑んだ。
「もう、あの子は行ったかしら?」
「アンネローゼ様…貴女がヴァルハラにお越しになられた時は驚きましたよ」
「ええ。けれども天命、だったのだと思うわ」
そして二人は見つめ合う。
「アンネローゼ様…」
「ジーク…」
地上で結ばれなかった愛は天上でようやく実りの日を迎えていたのだ。
一人それに気付かぬ男はようやく枕を高くしてすやすや眠りについていた。
331 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/07(金) 11:52:04 ID:BwlCFexe
>>326-330
ヴァルハラ話も乙!
ラインハルトカワイソスwwwww
キルヒアイス腹黒すぎw
332 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/07(金) 12:39:10 ID:b/t2uUIt
314ですがわざわざありがとうございました!
いやぁ黒キル落ちといい、落ち込むラインハルトといい、
笑わせていただきました。
次回作期待してます! 乙
333 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/09(日) 16:54:02 ID:/oD4hSEQ
7日から誰も書き込まないとは是如何に?
334 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/09(日) 18:04:02 ID:wRsLOZ/K
>333
まあたまにはそういう事もあるかと。
ていうかageんな
335 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/09(日) 21:57:08 ID:HPK7iOTC
ヒルダ祭りに参加したいけどまとまらんのよ。
336 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/09(日) 23:12:50 ID:UXvJfVZm
「性奴ヒルダ」の影響受けまくったssだが投下してもいいんかな。
一応ハッピー・エンド
337 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/10(月) 00:44:03 ID:4NbM/BK3
よろしく
>>336
wktk
338 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/10(月) 09:58:39 ID:yjNSzWO6
>>336
待ってるよおおおおおおおおおおおおおおっ
超期待!
あすまんつい興奮して
ヒルダでそういうの大好物なので
性奴ヒルダ、そういえば一度読めて嬉しかったけどその後urlどっかに紛れてしまった…
もう一度読みたいが残念
339 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/10(月) 18:46:22 ID:v2iGzIK/
>>336
ヒルダに期待!私はいつまででも松四。
340 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/10(月) 20:50:38 ID:N609q6bJ
>>338
そういえば3年ぐらい前の初代スレにURLが貼ってあったなあ。
作者さんが降臨していたような気がする。
341 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/10(月) 21:17:19 ID:yjNSzWO6
>>340
たぶんそれ
それで読めたんだよ…つか同じ頃から居るんだなw
もう作者さんが覗いていらっしゃるかどうかもわからないが
というわけで336に激しく期待
342 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/10(月) 21:31:23 ID:N609q6bJ
>>341
なるほど、お互い長いキャリアですなw。
さっき試してみたらまだ読めるよ。
343 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/10(月) 21:48:10 ID:yjNSzWO6
うううらやましい
ここだけの話俺の専ブラってさ、dat落ちした読めないんだわ…
キャリア長くてもスキルないのなw
344 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/10(月) 23:02:22 ID:3z2OE2n5
いや「性奴ヒルダ」ほどの名作ではないのだが……。
以前どっかであった頭うって好色になっちまった陛下に真っ先に陵辱されるヒルダタソの話。
345 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/11(火) 00:07:44 ID:xHenF2Rx
陵辱しているくせに、ヒルダに位置を聞いたりする童貞カイザーキボンw
無理やりな状況なのに、そこんところの詰めが甘いカイザーにキュンとかする
可愛いヒルダもキボンw
いや、↑は無視してくれていいや。ハッピーエンドならなんでも家紋!
346 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/11(火) 01:49:19 ID:xHenF2Rx
お由紀は非処女という設定にしても構わんですか?
涼子は洩れの脳内にて処女決定済みだけどw
347 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/11(火) 06:47:03 ID:Lqx2UCrO
>>344
バッチこーい
348 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/11(火) 08:13:36 ID:pSJRufwy
>>346
みぎに同じくバッチこーい
349 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/11(火) 10:46:46 ID:y0zMb9Q1
ヒルダ待ちv
350 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/11(火) 21:35:03 ID:nwdb5o74
345さんの意見を取り入れて、とりあえず完成したので投下。
普通に長い。うえにスカトロもあり。やはり鬼畜(藁)
351 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/11(火) 21:36:36 ID:nwdb5o74
皇帝は暇をもてあましていた。
新領土総督として、正式に挙式したアンネローゼをともなって行ってしまったキルヒアイスの統治は、口を挟む余地もないほど完璧なものであるし。
帝国宰相ロイエンタールはエルフリーデとの結婚を正式に認められ、漁色家の称号はどこへやら、今ではすっかり落ち着いた家庭人になっていて、よく皇帝を補佐するし。
メックリンガーはバーラド自治政府高等弁務官としての大役を立派に果たしているし。
ヤン・ウェンリーは美しい新妻とのんびり穏やかな年金生活を送っているし。
「つまらぬ……」
というのが、最近の皇帝の口癖であった。
352 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/11(火) 21:38:27 ID:nwdb5o74
ラインハルトは暇な時間の有効利用法をしらなかった。
乗馬をしたり、コーヒーをすすってみたり、本を読んでみたりするが、
いまいち面白くない。
そんな皇帝は、ふとした気まぐれから、ビッテンフェルトを伴って
古典バレエの観賞に赴いた。
それを海鷲で笑い話の種にしていたワーレンは詩の朗読会に出席するよう命じられ、
ミュラーも音楽会に招かれた。
ラインハルトにとっては暇つぶしであったが、芸術などを理解せぬ諸提督にとっては
迷惑はなはだしかった。
皇帝の前で寝るわけにもいかず、質問されたら答えぬわけにはいかないからだ。
思いもよらぬ「芸術の秋」に、帝国の誇る勇者たちはとまどった。
それが解消されたのは、冬薔薇が春風の侵略の前に庭園から撤退しようとする、
そんなころであった。
353 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/11(火) 21:40:53 ID:nwdb5o74
一三時二〇分。
ラインハルトは普段、エレベーターを使うが、ときに気まぐれで
階段を上り下りすることがある。
彼は秘書官と副官を伴って階段を降りていったが、眩暈がして踏み外した。
「陛下!」
何人もの叫び声が、遠く彼を呼んだ。
豪奢な金髪が、踊り場に接吻する。
周りの人間は蒼褪め、担架でラインハルトを私室に運んでいった。
ラインハルトは寝台に寝かされ、一〇分ほどして目を薄っすらと開けたが、
そのころには発熱していることが明らかになっていた。
「過労でしょう。よくお眠りになられることです」
医師たちの言葉にラインハルトはうなずき、そのまま昼寝に入る。
「あの、よろしかったら、ここはわたくしがやっておきましょうか?」
控え目ながらヒルダがそう提案し、みなもうなずいた。
エミール少年は、いつもは通信教育で勉強しているのだが、
どうしても参加しなければならない講習会があって不在である。
私室にはヒルダひとり残された。
本来ならば、未婚の女性を、若い男性の部屋にひとりでいさせることを、
騎士道精紳を叩きこまれた帝国軍人ならばよしとしないに違いなかった。
しかし、皇帝の潔癖症は有名であり、その点での心配はいらないとみな思っていた。
それもそれで臣下たちの頭痛の種ではあったが……。
354 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/11(火) 21:41:58 ID:nwdb5o74
一四時、ラインハルトが目覚めた。
上半身を起こし、上着を背中にかけようとするヒルダを、どこか焦点のさだまらぬ目で見やる。
「陛下、お目覚めでございますか。
昼食を持ってこさせましょう。
何かご希望はございますか?」
ヒルダはラインハルトに上着を羽織らせると、少し心配そうにたずねた。
皇帝の頬は紅潮し、息が荒い。
(発熱のせいかしら)
やや虚ろな声がたずねた。
「何でもよいのか」
「はい、何なりとどうぞ」
ラインハルトの腕が伸ばされ、ヒルダの頭を抱えこんだ。
そしてそのまま、ヒルダの顔を自分の顔に近づける。
ヒルダは勢いよく抱き寄せられ、寝台に倒れこんでしまう。
皇帝は優秀な秘書官の耳元で熱っぽくささやいた。
「予の所望はあなただ、フロイライン」
355 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/11(火) 21:42:54 ID:nwdb5o74
「わ、わたくしは食べ物ではありません!」
動転して裏返った声の流れだす口を、ラインハルトは思い切り貪った。
軽い接吻ののち、舌と手で無理やり口を開けさせ、熱心に蹂躙する。
技術は稚拙であったが、あまりの激しさに熱い吐息がヒルダからもれる。
ラインハルトは満足そうに笑った。
それからスカーフをほどくと、ゆっくりと首筋に愛撫を移動させてゆく。
「あっ……いや」
弱々しい声が、甘い吐息とともに流れる。
ラインハルトはスーツのボタンを外してゆく。
356 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/11(火) 21:44:58 ID:nwdb5o74
スーツを脱がせ終えると、もう片方の腕を背中に回し、それから手首を
ひねって胸を触った。
短い悲鳴が、ヒルダの口からこぼれ落ちる。
ヒルダは必死で遠ざかろうとしたが、所詮若い男、それも軍人として
鍛えあげられた男性に叶うはずもなかった。
むしろ、ヒルダの身体の動きがラインハルトを刺激した。
ラインハルトは接吻でヒルダの声を奪いつつ、片手をブラウスの中に入れ、
下着越しに胸を強く揉む。
(いや……何をされているの!? 皇帝ご乱心? 熱のせい?
それとも頭を打ったせい??)
亡き母の教育方針により、性交渉の知識をまったく与えられずに育った娘は混乱した。
長いキスがやっと終わり、口が解放されると、ヒルダは喘ぎながら直訴する。
「へ……いか……何をなされるのです」
明晰な頭脳と、豊かな表現力をもつ彼女であったが、
この時はこうとしか言えなかった。
「見ての通りだ」
簡潔きわまりない返答をすると、皇帝はブラウスのボタンを
リズミカルに外していく。
ヒルダは恐怖に蒼褪めつつも、必死でなだめようとした。
「陛下は、いやがる女性に無理強いなさる方ではございませんわ」
「さきほど、予の好きなものならば何でもよいといったのは
あなたではないか。
予はあなたが食べたいのだ」
スカーフを取ると、ラインハルトはヒルダの首筋に顔をうずめてきた。
357 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/11(火) 22:13:34 ID:nwdb5o74
穢れを知らぬ処女雪に、赤い痕跡が残されてゆく……。
ヒルダは苦痛と、それとは少し違う感覚に眉をひそめた。
ラインハルトは口でヒルダを愛撫しつつ、両手でブラジャーを外そうとしていたが、
慣れないのかうまくできない。
「あの、よろしかったらわたくしがやりましょうか?」
苛ついた表情を見て、思わず助け舟を出してしまうヒルダ。
「いやだ!」
テストで赤点を取ってしまった秀才の表情で、皇帝は乗船を拒否した。
しょうがないのでヒルダはラインハルトがホックを外し終えるのを待ったが、
短気な皇帝は結局下着を思い切りまくりあげた。
あまりの勢いに、ブラジャーのホックが壊れてしまう。
「あっいや!」
ヒルダは両手で乳房を不逞の輩の視線から守ろうとした。
それから、壊れた下着を見やる。
(お気に入りだったのに……)
ヒルダは悲しくなった。
沈んだ表情のヒルダに、責任を感じたらしくラインハルトは慌てた。
(まさかエミールやシュトライト准将に命じる気じゃ……)
ヒルダは顔を真赤にして下着売り場を歩き回るエミールや、憮然とした表情で
ブラジャーの清算をすませるシュトライトの姿を想像し、失笑してしまいそうになった。
ラインハルトはそんな様子のヒルダに自尊心を傷つけられたらしく、
細い腕を掴んで乱暴に寝台に押し倒す。
胸が大きく揺れ、青緑色の瞳が、怯えた光をたたえてラインハルトを映しだしている。
全身は細く、少年のようにひきしまっている。
硬質な美貌とあいまって、ヒルダは脱いでもなお活発な少年のように見えたが、
ほっそりした四肢に似合わぬ豊満な乳房が、彼女が女であることを証明していた。
心の底にあった嗜虐心を刺激され、獅子帝は目を細める。
染みひとつ見当たらぬ、純白の肌がかすかに震えていた。
「―――綺麗だ、フロイライン。
美姫の名にふさわしいのは、予の艦体とあなただけだ」
ブリュンヒルトと並べられ、ヒルダは少し複雑な気分に陥った。
が、事態は現実逃避を許さない。
すぐに、白磁でできたような手が、胸におりてきた。
358 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/11(火) 22:14:45 ID:nwdb5o74
(いや、何なの、お父さま助けて)
ヒルダは、はじめて与えられた感覚に戸惑っていた。
甘美な痛みと言うべきものだった。
ラインハルトの左手は彼女の両手首をおさえ、右手は胸を揉んでいる。
舌は熱心に蕾を愛撫していた。
あぁ、という、意味をなさない音声が、硬質な唇から流れでてゆく。
胸に飽いたのか、右手が腹を這い、ベルトを外す。
パンツが太股辺りまで下ろされ、そっと内股を撫であげられる。
小さな悲鳴があがる。
ラインハルトは人差し指で、そっと下着の上から愛撫した。
繊細なレースの下着は、湿り気をおびている。
ラインハルトは、ヒルダの下着が娘らしいのに驚いていた。
てっきり、黒か白の無地だと思っていたのである。
瞳と肌の色によく映える薄緑を基調とし、所々薔薇の縫い取りのある、可憐な品。
(父親の趣味か?)
真実は使用人であるシュテルツァー夫人の趣味だったのだが、ラインハルトはそう思いこみ、
なんとなく複雑な気分になった。
359 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/11(火) 23:41:18 ID:nwdb5o74
357に一文入れ忘れてたので補足
沈んだ表情のヒルダに、責任を感じたらしくラインハルトは慌てた。
「あとで似たようなやつを買ってこさせるから……」
(まさかエミールやシュトライト准将に命じる気じゃ……)
360 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/11(火) 23:43:16 ID:nwdb5o74
ヒルダは抵抗を止めなかったが、それは逆にラインハルトの征服欲をあおった。
普段の彼ならば、このような自分を肯定しえなかっただろうが、今は夢のように思考に靄がかかり、その分本性が現れていた。
しばらく下着を通して、指の腹で優しく撫でていたが、突然中に手をいれた。
下腹部にいきなり与えられた冷たさに、やっ、と、短い叫びをヒルダはあげた。
それを聞いたラインハルトは、手を下着の中から引いて、全身でヒルダに乗りかかる。
動きを完全に封じこめられた娘は、そっと主君の顔をみあげた。
戦闘に望むものとは少し違う、真剣な男の表情があった。
(怖いわ……怖いわお父さま……)
皇帝の重度のシスコンぶりに軽く肩をすくめたことのあるヒルダだったが、自身も充分ファザコンの気があることには気づいていない。
ラインハルトは、ヒルダのスカーフで両手を背中に回して拘束すると、額に接吻を落とした。
361 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/11(火) 23:45:13 ID:nwdb5o74
それから、ゆっくりと彼は身体をおこす。
蒼氷色の瞳に光が踊っている。
主君の視線が、真っ直ぐにふくらみにあるのを見て、ヒルダは赤面した。
「陛下は……ご無体なまねはなららない方ですわ」
自分に言い聞かせるように、ヒルダはつぶやいた。
ラインハルトは聞こえなかったのか、あえて無視したのか、何の反応もしめさない。
口の端にかすかな笑みを浮かべつつ、伯爵令嬢の半裸を観賞する。
紅淡色の蕾が、痛ましいほど上をむいていた。
肌は抜けるように白く、育ちのよさを思わせる。
そして、秀麗な顔はいまや深紅の薔薇のように紅潮し、瞳は涙をたたえていた。
「―――フロイライン・マリーンドルフ」
いつもならば、はい、陛下、と活発に反応する彼女の唇だったが、薄く開いたまま何の言葉も紡ぎだそうとはしない。
ラインハルトは、彼に似合わない、卑しい笑みを薄く浮かべる。
それはヒルダが認識する前に消え、ラインハルトは下着ごと彼女のパンツをゆっくりと脱がせた。
まるで彼女に見せつけるかのように。
そして、靴に気づき、苦笑してふたつを放り投げる。
ヒルダは、靴が床に落ちる音を聞いた。
大声を出して助けを呼ぶのもいいかもしれない。
だが、皇帝に組み敷かれている様子を誰かに、
―親衛隊員なり副官なり男性ということになるだろう―に見られるのは遠慮したいし、それ以前に大きな声が出ない。
(……お父さま)
彼女は、敬愛するひとの名を呼んだが、救助に駆けつけてくれる確立は〇パーセントに近いだろう、と思う。
ラインハルトは、太股を掴んで強引に開かせたまま固定する。
そのまま、ヒルダが物心ついてからひとに見せたことも見たこともない秘所を舐めだした。
何度も波がおそいかかる。
そのたびに、彼女の理性はさらわれそうになってしまう。
自分が自分でなくなってしまうような恐怖が、彼女の身を震わせていた。
ラインハルトは舌を使って熱心に舐めまわす。
そのたびに、ヒルダは自己の意思とは無関係に甘い声をあげてしまう。
(いや……助けて……お父さま……)
午後の気だるい日差しが、皇帝と秘書官を照らしあげる。
手首は痛みを訴えていた。
だが、快感の波はしだいに大きくなり、ヒルダの最後の自己をさらっていった。
華奢な身体が仰け反り、ラインハルトの舌に愛液が絡む。
ラインハルトは、身体を起こすと、指でヒルダの液をすくって舐めた。
それから、ゆっくりとヒルダの口にそれを持っていき、舌に押しつける。
荒い息をつく娘には、もう反乱する気力も残されていないように見えた。
362 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/11(火) 23:48:39 ID:nwdb5o74
ラインハルトは、ぐったりした様子のヒルダをうつむかせ、菊座に舌を這わせた。
これによって、ヒルダは頭をつけて尻をあげた格好になる。
「な、何を……うぅ……ん……」
ラインハルトは片手でわざと乱暴に恥所を掻き回す。
ヒルダはよほど今そこを触られるのが嫌なようで、残った体力をふりしぼって逃れようとする様子が、
ラインハルトの興味をひいた。
(さてさて、予の優秀なる秘書官はどうしたのか―――?)
嗜虐的な疑問が、皇帝の脳裏をかすめる。
空いた手で胸の感触の楽しみつつ、何かに耐えているヒルダの表情を観察する。
その表情が、絶望に一転したとき、彼は何を伯爵令嬢が恐れていたのか知った。
粘り気のない黄色の液体が、精液と混ざってシーツに染みをつくってゆく……。
小雨も小雨、たいていの人間は気づかず通りすぎてしまう、その程度の水量でしかなかったが、
問題は中身である。
ヒルダの全身が震えていた。
涙が溢れて止まらない。
今後とも付き合ってゆかねばならぬ上司に放尿を見られるのは、
さぞやおぞましい体験であるに違いないな、と、ラインハルトは思う。
思いながらも、愛撫を止めようとはしなかったが。
それどころか、尿を直接舐めて、
「濃いな。疲れているのではないか?」
などと声をかけるあたり、自分でも何か間違っている気がしないでもない。
国務尚書のご令嬢は、とうとう声をあげて泣き出してしまった。
「泣くほどのこともあるまい……」
抱きあげ、ラインハルトは頬の涙を優しく舐めとってゆく。
そのたびに、ヒルダは喜んでいるのか悲しんでいるのか判断のつかない喘ぎをあげた。
ラインハルトの視線が、ふと卓上にふせられたワイングラスを捕らえる。
「泣きすぎだ、フロイライン。
水分が不足する」
白い手をのばし、グラスを取る。
ヒルダは何をされるのか、いまいちわからない様子でそれを眺めていた。
ラインハルトは、グラスを横に置くと、ヒルダを仰向かせる。
それから、気だるそうな動作で、股を開かせた。
「お止めください、陛下……」
哀願の声を無視して、ラインハルトは恥所を愛撫していた。
尿意を我慢しているのだろう、皮膚が痙攣している。
クリトリスをつつくと、全身を震わせてそれに応えた。
鼻から抜けるような音がする。
「あ、あぁ……それ以上はお赦しくださいまし、陛下……」
363 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/12(水) 00:20:53 ID:V4AwuDxr
お。まだ投下が続くのかな…?wktk
364 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/12(水) 05:31:53 ID:hlGRl42J
あ、投下が落ち着いてる。作者たん乙!
どこでレス入れていいかちと迷った
続きも楽しみにしとるよ〜
でもって、読んでると書いてみたくて辛抱たまらんようになったので俺もいつかトライする。ヒルダはともかく陛下が難しそうだけどな〜
365 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/12(水) 14:52:01 ID:gHd/AG5i
364さんぜひ書いてくれ!!
ま、たしかにカイザーはあれだからなぁ・・・・
別に相手はユリ坊とかでももれは萌えるが
366 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/12(水) 15:35:49 ID:MGfYOrS0
以前、本伝5巻でのふいんきに萌えて疾風×ヒルダに取り掛かった事があるんだが、
やはり疾風の愛妻家バリアが鉄壁過ぎて、エロパロ的妄想でも突破出来なかった。
公式じゃないカプの妄想は難しい。
書いてる人達はすげえや。
367 :
♯紀子
:2006/04/12(水) 15:36:40 ID:DJp8Q0p4
薬師寺涼子が泉田準一郎に犯されるのも良いな
室町警視と岸本明も良いな。
368 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/12(水) 16:12:21 ID:gHd/AG5i
それに対するラインハルトの返答は無慈悲だった。
「言葉ではなく行動で示してもらおう、フロイライン。
あなたの身体はもっとやってくれと言っている」
水音が部屋に響く。
黄金色の日差しが、蜜を輝かせていた。
ラインハルトの手が、ワイングラスを掴む。
そしてそれをそのまま、ヒルダの襞の刺激に使う。
「ひゃっ」
冷たさに、全身をすくませるヒルダ。
それと同時に、温かな液体がワイングラスへと降りそそいだ。
「―――いやっ!」
逃れようとするが、ラインハルトががっちりと抑えているので不可能であった。
白魚のような指で、彼はクリトリスを弄ぶ。
遊びで虫の羽をもぎとる幼児のような、残虐で楽しそうな光が蒼氷色の瞳に浮んでいた。
「止めて、止めてくださいまし!」
「ほう、止めろと言うのか。
ここで止められたらあなたも辛かろうに。
皇帝の寝台をあなたの排泄物で汚す気か?」
「それは……そんな……」
反論を封じこめられ、ヒルダは大きく目を見開いて加害者を見つめた。
青緑色の宝石のような猫目に、皇帝の冷たい笑みが映っている。
最後の一滴が、ラインハルトの手にかかった。
「美しい。
黄玉を液体化させたようだ」
ラインハルトは、ワイングラスを持った手を掲げてみせた。
零れた液体が、グラスを伝って、ヒルダの肌へと落ちてゆく。
彼女は、怯えきった表情で主君とグラスを等分に眺めやった。
陽光を透過して、グラスの中身はきらきら黄金に輝いている。
ラインハルトは、優しくヒルダの背中に腕をまわし、上半身を起こさせた。
そして、口元にワイングラスを持ってゆく。
どうやら飲まされそうだ、と気づいた伯爵令嬢は、身を震わせて顔を背けた。
「口を開けなさい、マリーンドルフ中佐」
命令されたが、ヒルダは何も答えず、幼い子どもが嫌嫌するように頭をふった。
ラインハルトは眉をしかめる。
「幼児ではないのだから、水分補給の重要性くらいわかっておろうに」
彼は渇いた笑い声をあげた。
「―――上官の命に違反するのは、軍人として失格だな。
実力行使もやむを得ず、だ」
白い指がヒルダの鼻をつまんで思い切り上を向かせた。
長い睫毛が頬に影をおとす。
ヒルダはしばらく耐えていたが、とうとう呼吸するために口を空けてしまった。
369 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/12(水) 16:13:45 ID:gHd/AG5i
黄色い液体が、口の中に注がれてゆく。
鼻は依然ふさがれたまま。
「ふぅ……ん」
ヒルダは顔を背けようとしたが、ラインハルトは身体全体でそれを阻止した。
「あぁ……苦しゅう……赦して……んぅん」
「はっきり言ってもらわねば困る」
ラインハルトは冷笑する。
呼吸とともに、液体が喉を通過したり、口から零れたりする。
ラインハルトは時々零れた液体を指で救っては、彼女の唇に押しつけた。
グラスを空にすると、ラインハルトは耳元でささやく。
「よく味わえよ、あなたの蜜と聖水のカクテルだ」
ヒルダは泣きながら自分の尿を飲みこんだ。
ラインハルトはしばらく空のグラスを眺めていた。
それを卓上に戻すと、令嬢の肌に零れ落ちた液体を舐め取ってゆく。
それは途中から愛撫に代わり、ラインハルトはヒルダの全身をくまなく舐めていった。
あぁ、という甘いささやきが漏れてゆく。
ラインハルトはどうやら限界に達したようで、部屋着と下着を同時におろした。
凶器を目に映して、ヒルダは顔を背ける。
(いや……何をされるの?)
怯えていた彼女であったが、皇帝が何もしようとしないことを不審に思い、そっと目を開けて彼の顔を覗きみた。
「……フロイライン」
感情の消えた声が彼女を呼ぶ。
「はい、陛下」
「あなたのどこに入れればよいのだ?」
(な、何をいまさら……)
ヒルダは絶句したが、弱りきった表情の皇帝に、胸の高鳴りを覚えた。
それから慌てて首をふる。
頬は桜色に染まっていた。
(だ、駄目! 陛下はわたくしのことなんか何ともお思いではないのだから。
ああ、それより質問に答えないと……)
しかしながら、ヒルダもどこに入れてよいかわからなかったため、答えられない。
というか、男性器は女性器に入れるものだと言うことすら教えられていなかったから、彼女は困り果ててしまった。
(どうしよう……)
考えこむヒルダを尻目に、彼女の主君は唐突に手を打った。
「そうだ、入りそうなところ全部に入れてしまえば問題はなかろう」
「へっ?」
「本来ならば、正確な情報を入手して攻略するのが筋というもの。
しかし今回は時間も戦力も充分にあるし、全てを攻略することによって目的を達すればよかろう」
ヒルダは、ラインハルトはやっぱり天才だと思った。
しかしながら、敵のことを考えないこと甚だしい。
(こんなときキルヒアイス提督がいてくださったら……)
ヒルダはいつものノリでそう考えたが、キルヒアイスがいて役に立つかどうかは疑問である。
370 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/12(水) 16:14:37 ID:gHd/AG5i
ところが、救いの手は意外な場所から現れた。
TV電話が突然作動して、軍務尚書オーベルシュタイン元帥の姿が映しだされたのだ。
「閣下、ご病気とうかがいましたが、早急に裁可を必要とする書類があり……」
そこでオーベルシュタインはヒルダの存在に気づき、冷たい義眼を彼女に向けた。
「失礼いたしました。お楽しみの最中でしたか」
悲鳴をあげてヒルダはシーツの中に潜りこんだ。
ラインハルトはそんな様子のヒルダを見てから、興ざめしたようにうなずく。
「わかった、居間で待つ」
「御意」
オーベルシュタインは敬礼した。
通信を切ると、後ろに控えていたアントン・フェルナーは顎に手をやりながら言った。
「いや驚きましたな、あの真面目な陛下がフロイライン・マリーンドルフをねぇ」
「何を言う。お二方ともはじめてだ」
フェルナーは眉をあげて上司を見た。
何で知っているんだ、という視線である。
「陛下のことだ、頭を打ったことと発熱が影響して混乱していらっしゃるのだろう。
王朝の繁栄を思うなら、ぜひこの機会に性の喜びをしっていただかねば……」
後半は独語であったが、フェルナーは力強くうなずいた。
「わかりました、オーベルシュタイン元帥閣下。
どのようなプレイにも応対できるよう、道具を取り揃えます」
オーベルシュタインはフェルナーを横目で見やり、首を傾げてからうなずいた。
「ああ、そうしてくれ。
むろん説明書もつけるように」
「はっ! ただいま」
フェルナーは退室していった。
実に面白いことになった、と思いながら。
二〇分後、オーベルシュタインが皇帝の私室に到着すると、苛ついたラインハルトがそれを迎えた。
「遅いではないか、オーベルシュタイン。
早急に裁可を必要とする、と言ったのはお前だぞ」
「申し訳ございません」
書類を処理すると、オーベルシュタインは一礼した。
「それはともかくとして、陛下。
私事ながら、陛下に献上したいものがございます。
むろん、賄賂というわけではございません」
「卿が賄賂などをよしとするほど殊勝ではないことを、予は充分過ぎるほど知っている。
して、何だ?」
珍しい軍務尚書の申し出に、興味をひかれたラインハルトは尋ねた。
オーベルシュタインが指をならすと、フェルナーが部下と一緒に二〇箱に及ぶダンボール箱をもって入り、
それらを置いて敬礼して退室していく。
「……?」
「陛下、ご覧になればすべてわかりますゆえ、臣はこれでさがらせていただきます」
「ん、ああ」
ラインハルトはオーベルシュタインが退室したことを確認してから、箱を開けた。
371 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/12(水) 16:16:07 ID:gHd/AG5i
そのころ、ヒルダはびくびくしながら「陛下」の帰りを待っていた。
スカーフで口を封じられ、スーツで両手を拘束されていたから、動くことも助けを求めることもかなわない。
ラインハルトが退室してから四〇分後、扉が開かれた。
「フロイライン・マリーンドルフ。
すまんが風呂にでも入っておいてくれ」
口と両手を自由にされ、ヒルダは驚いた表情で主君を見上げる。
彼はヒルダを抱きあげて浴室にもってゆくと、彼女をひとり残して鍵をかけた。
「どうされたのかしら」
軍務尚書に何か吹きこまれたかな。
ヒルダは身体を洗いながら、考える。
(問題はこの錯乱が一時的なものであるかどうか、よね……。
頭を打ち、発熱したせいで混乱をきたし、自由意志でない心神喪失状態であったとするなら、わたしは耐えましょう。
そして陛下が謝罪してきたならば、赦してこれまで通りお仕えしよう。
どちらにせよ裁判にもっていくことなんて不可能なのだから。
でも、もしも頭部の打撲と発熱が原因ではなく、発端であったとするなら?
陛下がサディストで、しかも相手の合意をえない行為に性的興奮を覚える方であったら?
性的奴隷として仕えることを強要されたら?
そのときは……)
ヒルダが決意をかためる一方、ラインハルトはキスリング親衛隊長に言いつけて、ダンボール箱をすべて寝室に運ばせた。
それから、通信を音声だけの設定に変更する。
ラインハルトはダンボール箱の中身をすべて確認していった。
軍務尚書の指示か、説明書が送付されている。
それを一時間かけて全部読み終えると、ラインハルトは嘆息した。
「あの男、よくやる……」
372 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/12(水) 16:17:44 ID:gHd/AG5i
オーベルシュタイン元帥はくしゃみして、鼻をかんだ。
「風邪ですか? お気をつけになりませんと」
フェルナーは礼儀上そう言った。
「……いや、そうではあるまい。
しかし、あの量はいささか多いように思えたのだが」
「いえいえ、まず衣装が三箱になりましてな。
まず基本である透けるドレス数十着に、それに合わせる下着でしょう。
それに、
・猫耳(犬耳と兼用)+ふわふわの下着(尻尾つき。茶と白とピンク)
・(クララから安く譲ってもらった)看護婦の白衣
・(ケスラーと物々交換の末手に入れた)セーラー服
・(普通に入手)レースクイーン
・(補給部隊の同期に言ってもらってきた)帝国同盟ともに階級ごとの軍服一着づつ
・レースたっぷりメイド服&エプロンなどなど。
それにボンテージ類を少々。
アクセサリーは首輪・足輪など基本から、豪華な宝石の指輪など多々揃えました。
縄や鞭や猿轡も数十種類、色違いもちゃんと揃えています。
バイブ・ローターは数百種類。
それにアナルのことも考えまして、浣腸を五種類ほど用意し、アナルボールも何個かいれておきました。
さらに、薬につきまして、媚薬は当然としても、声を奪う薬(むろん解毒剤あり)や、
動物の鳴き声しかでなくなる薬(動物の種類は犬・猫・豚など)や、心そのものを動物に変身させてしまう薬など、さらには」
「……もうよい」
いつまでもつづきそうな弁舌を、オーベルシュタインは遮った。
(皇帝の寝室盗撮でもして、ヒルダ親衛隊の面々に売ったら儲かるかな)
などとプレイ道具を箱につめこみながらフェルナーは考えたが、ばれたら色んな意味で怖いのでやめて置いた。
ちなみにヒルダ親衛隊とは、同盟(バーラド自治政府)のフレデリカファンクラブに競争心を刺激された帝国軍人の有志たちがつくりあげた隊で、
むろん非公式である。
ヒルダ護衛隊を務めたリリエンクローンが今回も隊長である。
同じような意味合いで「獅子帝ラインハルト陛下を愛し奉る会」や「ヤン・ウェンリー信仰会」なども存在し、前者はビッテンフェルト、
後者はユリアン・ミンツとフレデリカが書記長を務めている。
373 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/12(水) 16:24:58 ID:gHd/AG5i
とりあえず今回はこのへんで。
好き勝手かいてたら原稿用紙27枚にもなっちまったよ……
374 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/12(水) 18:18:42 ID:XvTgPrFn
二人にどれだけヤラセるつもりなんだw
ヒルダでなくカイザーの方が心配wwwwwwww
腎虚になるよ。
375 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/12(水) 19:00:09 ID:hlGRl42J
よりによってあのオーベルシュタインの口から
「性のよろこび」という言葉がっ(爆笑
すんげ面白い。また続きまってるよ〜
376 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/12(水) 21:57:00 ID:qRh9eznw
やべぇ面白すぎる!攻めな陛下イイ!続き楽しみにしてるよ〜
377 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 03:23:40 ID:4YfNd7/S
GJだよ!
378 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 16:28:17 ID:4YfNd7/S
みんなは銀英伝をどこで知ったんだ?
379 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 16:33:51 ID:zhM9u+VP
>>378
図書館に本が有ったから。
でも、創竜伝はすぐ読んだけど
銀英伝読んだのはわりと最近。
380 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 17:00:40 ID:Cd38cPYw
>>379
同じだー。図書館でとりあえず一冊借りてみたら面白いのなんの。
興奮して次の日に三冊、次にまたって感じで読破、自分でも購入。
ロ胃炎タールのくだりで目の汗が止まらず。
381 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 17:20:33 ID:LKYNO4zO
友達に勧められた。自分で買って一気に読破した。
>>380
自分は『魔術師、還らず』で目の汗が止まらなかったよ。
アニメになったときも、ここだけは見られなかった。
382 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 19:52:06 ID:yQlAxcTo
完全を期したフェルナーであったが、実は重大なミスを犯していた。
これを彼の失策と言うのはあまりに酷だが、さまざまな体位を説明した本は入っていても、肝心のどこにどう入れるのが正常だと言う説明はなかったのである。
「とりあえず、口前後が基本らしいが」
ラインハルトは首をひねった。
そこで、ヒルダをずっとほったらかしにしておいたことを思い出し、とりあえず浴室に向かう。
ヒルダはゆっくりと湯につかっていたが、突然ラインハルトが入ってきたので驚いて悲鳴をあげた。
「すまん」
と、引き返したカイザーであったが、もとの目的を思い出して苦笑した。
ラインハルトは、ヒルダに首輪を付けてみることにした。
(予が目指すのは完全勝利である。
つまり、降伏も逃亡も認めず、完全に撃破し支配下におくことだ。
となれば、逃げ道をふさぐための拘束具は必要であろう)
という、戦略的判断によるものである。
鈴のついた赤いリボンか、金剛石の飾りのついた黒い堅いものかさんざん迷ったが、結局後者にすることに決めて、ラインハルトは嫌がるヒルダの首に無理やり首輪を取り付ける。
「あの、これは……」
困惑したヒルダに、優しく微笑む皇帝ラインハルト。
「首輪だ」
「いや、それはわかるのですが」
「ならば問わずともよかろう」
(こういったときは首輪をつけるものなのかしら)
ヒルダは首をかしげたが、首輪につけられていた鎖を思い切り引っ張られて悲鳴をあげた。
そのまま浴槽の中に立たされる。
「あっ……何をなさいますの」
「気をつけ!」
強い言葉を投げかけられ、思わず直立して手を横に真っ直ぐしてしまうヒルダ。
全裸を異性の前にさらし、彼女の乳首は痛いほど立っていた。
「陛下……恥ずかしゅうございます、恥ずかしゅう……」
「いまさら何を言う」
ラインハルトは自分のものが立ちあがるのを感じた。
湯につかっていたせいか、肌はまるでミルクに紅薔薇の花弁を浮かべたような、想像を絶する美しい色合いになっている。
しっとりと肌に吸いついた髪は、少年のような、と評される女性の美貌を艶やかに見せていた。
ラインハルトはそのまま鎖をひくと、浴室の中にあった椅子に座る。
ヒルダは転ばないように、慌ててついてきた。
383 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 19:53:21 ID:yQlAxcTo
「あの、陛下……?」
困った顔の令嬢を尻目に、息も荒くカイザーは下半身を脱いだ。
きゃっ、と短い悲鳴をあげて、ヒルダは目を閉じ、顔を背ける。
「そのようなつれない反応をするものではない」
鎖を片手に巻きつけると、もう片方の手でラインハルトはヒルダの頭髪を握り、逸物へ近づける。
「舐めてくれ」
嫌嫌するように頭をふるヒルダ。
命令を聞き届けられなかったカイザーは、不機嫌になって、無理やりヒルダの口を開かせると咥えさせる。
「歯はたてず、舌で優しくするように」
もうどうしようもないと悟ったヒルダは、大人しく命令に従う。
従順になったヒルダの様子に満足したラインハルトは、下半身の刺激をたんのうした。
技術は稚拙もいいところだが、初心な様子が彼の心を打ったのだ。
(……ま、不味い)
ヒルダは顔をしかめながらも、ラインハルトの命令にとにかく忠実であろうとした。
臣下として、というよりは、刃向かったらどうなるかわからなかったためである。
(で、でもまさか、これで赤ちゃんが出来るなんてことはないわよね?
もしできたら……ああ、お父さまごめんなさい!)
涙が頬を伝う感触がしたが、ヒルダは気にせず必死でラインハルト自身を舐めていた。
いよいよラインハルトのものが怒張をまして、ヒルダの口の中に襲い掛かってくる。
「ふわ……」
口を離しかけたヒルダであったが、ラインハルトは頭を押さえこんでそれを止めさせた。
「味わって飲みこめ」
何しろ二三年間溜めこんできたものが一気に排出されたのである。
量の多さにヒルダは戸惑ったが、口を押さえられていては満足に呼吸もできなかったので、必死で飲み下していった。
(不味いよう……お父さま助けて)
何度目かわからぬ言葉を思いながら、ヒルダはごくごく飲んでいった。
粘つきのある液体で、ヒルダは喉にかかるのを感じたが、力をこめて胃に送りこんでゆく。
ようやく排出を終えると、ラインハルトは満足げにヒルダの頭髪を放す。
384 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 19:54:35 ID:yQlAxcTo
ヒルダは、疲れて床に臥していた。
ラインハルトは息を整え、鎖を壁の飾りに巻きつけておくと、いったん退出した。
彼に今まで戦略的な構想があったわけでもなく、「高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処」……つまり行き当たりばったりできたので、そろそろ真面目に構成を練ろうかと考えたのである。
興奮を排出して落ち着いたので、そんな余裕ができたとも言える。
「とりあえず、これで一つ目の孔は終ったわけだ。
問題はあとの二つだが……前から後か、後から前か……。
ふぅむ……。
しかし前の方は、さきほどさんざんかやったし、しばらく間をあけて、その間に後を済ませてしまおう、それがよい」
とりあえず基本的な流れは定まった。
「ええっと、確かこの辺りに説明書があったはずだな」
と、ダンボール箱をごそごそと漁りだすラインハルト。
皇帝の威厳はどこかへ消えてしまったようである。
ヒルダは、やっと少し体力と気力を回復していたが、次に何をされるのだろうかと怖かった。
これが通常のラインハルトならば、安心しきって身を任せるのだが。
(熱と頭をお打ちになられたことで少しおかしくなってしまわれたのだわ)
ということで、あいかわらず不安に打ちひしがれていた。
ラインハルトは潔癖な少年であったので、二三年間あまりこういった行為をしてこなかったのだろう。
それが一気に放出されてしまった。
どうなるのか、ヒルダにもわからない。
(付け加えれば多分ラインハルト自身にもよくわかっていない)
385 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 19:55:22 ID:yQlAxcTo
で、そのラインハルトが戻ってきた。
「フロイライン、いや、ヒルデガルド。
こういった行為の前には準備がいることをご存知か」
「……いいえ、存じません」
「そうか」
ほっとする笑顔を浮かべるラインハルトにつられて、ヒルダも短く微笑してしまう。
が、その微笑も、ラインハルトの持っている道具を見て吹き飛んだ。
液体の入った、注射器とも少し違う物体。
「あの、それは何でございましょうか」
悪寒が背筋を走る。
ラインハルトはわくわくした様子で回答した。
「ん、後の孔を使うときには、こういったものを使用するらしい」
ラインハルトは、そういい終えると、突然ヒルダの体を抑えにかかった。
びっくりしたヒルダは、まるで歯医者から逃れようとする患者のごとく、逃げまどう。
「少し大人しくしてくれ」
ラインハルトは、拘束具を使ってヒルダの両手を縛りあげると、尻をあげた形で足も固定した。
じっくりと尻に視線を這わせられて、ヒルダはあまりの恥ずかしさのあまり顔を真赤にする。
年頃の娘にしては、ヒルダのヒップは豊かではない。
が、ラインハルトはあまり気にしなかった。
中性的な雰囲気のヒルダが、ラインハルトのお気に入りだったからだ。
(まぁ、男を知って多少は女性らしくなるかもしれないが……。
それはそれで見ものかな)
それから、ラインハルトはゆっくりと尻を開かせ、グリセリン液を挿入していった。
ヒルダは入ってきたもののおぞましい感触に、身を震わせた。
(なんだかお腹が痛い……)
ラインハルトはすべて入れ終えると、ヒルダから離れて、椅子に座る。
教師を相手に悪戯をしかける悪童のような、極上の光を瞳に浮かべて、小さく震えるヒルダをつぶさに観察していた。
ヒルダは、急に便意をもよおして、とまどっている。
(な……この二日間ずっと便秘気味だったのに……。
だ、駄目。陛下にそんなこと知られるなんて)
恥ずかしさに耳まで赤くなりながらも、ヒルダは尻のあたりに意識を集中させる。
「あ……ぅんん……」
必死に肛門に力をいれ、ともすれば暴れだしそうになるのを我慢していたヒルダであったが、とうとうそれも限界点に達しそうになっていた。
「……陛下、その、お、お願いがあるのですけれど……」
うめくようにして、ヒルダはそう告げる。
「うん、何かな」
ラインハルトは計算されない優雅さで首をかしげた。
「その、身体を自由にしてくださいまし……」
「なぜそのようなことを頼む?」
意地悪なラインハルトの言葉に、顔を赤く染めて、ヒルダは説明する。
「あの、お、お手洗いに……いきとうございます」
「ほう? さきほど出したばかりであろう」
ヒルダはにやにや笑っているラインハルトを見つめた。
彼はそんな表情を浮かべてもなお美麗であったが、悪魔の微笑のように今のヒルダには映る。
386 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 19:56:31 ID:yQlAxcTo
で、そのラインハルトが戻ってきた。
「フロイライン、いや、ヒルデガルド。
こういった行為の前には準備がいることをご存知か」
「……いいえ、存じません」
「そうか」
ほっとする笑顔を浮かべるラインハルトにつられて、ヒルダも短く微笑してしまう。
が、その微笑も、ラインハルトの持っている道具を見て吹き飛んだ。
液体の入った、注射器とも少し違う物体。
「あの、それは何でございましょうか」
悪寒が背筋を走る。
ラインハルトはわくわくした様子で回答した。
「ん、後の孔を使うときには、こういったものを使用するらしい」
ラインハルトは、そういい終えると、突然ヒルダの体を抑えにかかった。
びっくりしたヒルダは、まるで歯医者から逃れようとする患者のごとく、逃げまどう。
「少し大人しくしてくれ」
ラインハルトは、拘束具を使ってヒルダの両手を縛りあげると、尻をあげた形で足も固定した。
じっくりと尻に視線を這わせられて、ヒルダはあまりの恥ずかしさのあまり顔を真赤にする。
年頃の娘にしては、ヒルダのヒップは豊かではない。
が、ラインハルトはあまり気にしなかった。
中性的な雰囲気のヒルダが、ラインハルトのお気に入りだったからだ。
(まぁ、男を知って多少は女性らしくなるかもしれないが……。
それはそれで見ものかな)
それから、ラインハルトはゆっくりと尻を開かせ、グリセリン液を挿入していった。
ヒルダは入ってきたもののおぞましい感触に、身を震わせた。
(なんだかお腹が痛い……)
ラインハルトはすべて入れ終えると、ヒルダから離れて、椅子に座る。
教師を相手に悪戯をしかける悪童のような、極上の光を瞳に浮かべて、小さく震えるヒルダをつぶさに観察していた。
ヒルダは、急に便意をもよおして、とまどっている。
(な……この二日間ずっと便秘気味だったのに……。
だ、駄目。陛下にそんなこと知られるなんて)
恥ずかしさに耳まで赤くなりながらも、ヒルダは尻のあたりに意識を集中させる。
「あ……ぅんん……」
必死に肛門に力をいれ、ともすれば暴れだしそうになるのを我慢していたヒルダであったが、とうとうそれも限界点に達しそうになっていた。
「……陛下、その、お、お願いがあるのですけれど……」
うめくようにして、ヒルダはそう告げる。
「うん、何かな」
ラインハルトは計算されない優雅さで首をかしげた。
「その、身体を自由にしてくださいまし……」
「なぜそのようなことを頼む?」
意地悪なラインハルトの言葉に、顔を赤く染めて、ヒルダは説明する。
「あの、お、お手洗いに……いきとうございます」
「ほう? さきほど出したばかりであろう」
ヒルダはにやにや笑っているラインハルトを見つめた。
彼はそんな表情を浮かべてもなお美麗であったが、悪魔の微笑のように今のヒルダには映る。
387 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 19:58:38 ID:yQlAxcTo
すまん間違って二度も書き込んでしまった。
にしても暗くて痛くてくそ重い話を書きたかったのにオーベルシュタイン出したらぶっ壊れてしまった……(鬱)
388 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 20:02:38 ID:yQlAxcTo
「だ……大きい方でございます……」
「大きい方というのは?」
ヒルダは目を潤ませ、全身を真赤にして答えた。
「その……あの……た、大便のことなのですが……」
「ふぅむ、大便か。もう少し率直に言うべきではないのか?」
ヒルダは喘いだようだった。
「……あ……その……うんち」
最後は消え入りそうなほど小さく、彼女は発音する。
「聞こえぬ」
「……うんちがしとうございます」
泣きながらヒルダは、少し大きな声で言ったが、ラインハルトは首を横にふる。
「駄目だ、フロイライン。それは許可せぬ」
「ああ、陛下、お願いですわ、陛下……」
ヒルダは泣いて哀願したが、ラインハルトはゆっくり首を振った。
「別にここでしてもよかろう。
後始末はしてやるから」
「そんな、陛下の御手をわずらわせるのは……」
「予がいいと言っておるのだ。従え」
ヒルダは絶望したようにうつむいた。
ラインハルトは、性的高揚感に全身がつつまれているのを感じた。
ヒルダの恥ずかしがる様子が、なんとも新鮮に映ったのだ。
この女性はこんなに弱く、そして美しかっただろうか。
少年のような体躯に美貌、そして唯一女性らしさを象徴する胸。
姉に抱くものとは違う、禍々しい愛情を、ラインハルトはヒルダに対して抱く。
ラインハルトにとってさえ高嶺の花といえたヒルダが恥辱に耐える様子は、彼を興奮させた。
伯爵令嬢としてひとり娘として、また、亡き妻の忘れ形見としてヒルダを大切に育ててきたであろうマリーンドルフ伯フランツに対する罪悪感も、ラインハルトの興奮を高めるのに役立った。
(マリーンドルフ父娘には迷惑な話であるが、そもそも君主が絶対者として他人に迷惑をかけようが何をしようが赦されるのが専制国家というものなのである。
ヒルデガルドはラインハルトを専制国家の王にと望んだのだから、好き勝手やってもらって本意であろう―――と、後世の歴史家(女性不信の民主主義者)は皮肉交じりに書いたが、この記述は多くの自称良識人(古きよき時代の帝政をなつかしむひとびと)から批判を受けた)
もともと注入した液は、適量よりも少ないほどであった。
ラインハルトも初めての経験だったので、少し怖かったのもある。
もともと、ゆっくり見物して楽しみたかったので、その意味では適量と言えたが。
全身を桃色に染め、唇を噛み、必死にヒルダは我慢していた。
(陛下の前で排便なんてできるものじゃないわ)
尻が震えているのを、ラインハルトは見ていた。
汗が真珠のように肌を飾っている。
視姦に飽いたのか、ラインハルトは優雅に立ちあがり、ヒルダに近寄った。
389 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 20:31:36 ID:XEMg6db0
いい加減にしろ。変態。
390 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 21:01:10 ID:Cd38cPYw
『好みと違えばスルー』がこの板のお約束だってば。
ちゃんと最初にそういう系統が入ると断り入ってただろ?
俺は楽しんでるぞ。
作者たん乙〜
カイザー、なんか可愛いな
391 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 21:23:15 ID:XEMg6db0
じゃあ、せめて名前欄に入れろよ。
スカトロヒルダとかさ。
そしたらNGワードで弾くから。
392 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 21:31:41 ID:EMpO7iFQ
そんな喧嘩腰にならずにまあまあ。
ということで作者サマ、以降の投下は<皇帝錯乱暴>とでも題付けてちょうだい。
つまりチェリーw
393 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 22:03:47 ID:EMpO7iFQ
「錯乱、某皇帝」のが題の座りがいいかな?
はい座布団没収すね?さいなら〜
あとやはりヒルダには露骨なカストロは可哀想なり…
最後のハッピーエンドは必ず必ずですよ〜よろしく頼んます!
394 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 22:12:55 ID:z+9O7PO7
もともと性奴ヒルダでスカトロ有りと断ってるのに、今さら文句言うのはなぜだ?
職人さんにはなんら落ち度はないので、好きなように書いてくれ。
毎日、楽しみにしてる。
>>391
IDで弾けばいいことなのに、どうしてしないんだ?
自分の怠惰で職人に余計な手間をかけてはいかんな。
395 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 22:13:46 ID:z+9O7PO7
×もともと性奴ヒルダで
○もともと性奴ヒルダに触発された話で
396 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 22:24:17 ID:XEMg6db0
>>394
IDは不変じゃない。
こいつは一日で全部投下してるわけじゃない。
397 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 22:39:23 ID:z+9O7PO7
>>396
毎日あぼーんすれば?
怠惰の言い訳もほどほどに。
398 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 22:47:09 ID:XEMg6db0
なにが怠惰だよ。しつこい奴だな。お前本人自演か?
特殊な趣味のもの書くなら、書くほうがタイトルに入れるもんだろ。
399 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 22:51:28 ID:yQlAxcTo
XEMg6db0さんいやな思いさせてすまん。
2ちゃんあんま慣れてないからゆるしてくれたら嬉しいです。
うーん、それじゃタイトルに「皇帝錯乱」とでも入れておくかな。
それでいい?
400 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/13(木) 23:08:07 ID:jJMpZtA/
>399
後々の事考えたらトリップも付けといた方がいいような。
嫌な人はトリップで弾くよろし
401 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/14(金) 00:04:20 ID:TJeKv4Mx
すまんトリップの付け方教えてくれ
つかこのまま投下やめた方がいいんかな
402 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/14(金) 00:24:13 ID:XImUOKh3
うんにゃ、自分は楽しく読ませてもらっているぞ。すげー事やりつつもどっかボケな陛下は”らしい”もん
しかしエロネタは好きでもカストロネタはダメな人もいるだろう
ただ、それを投下してくれる職人さんに伝えるにしてもいきなり>389みたいなケンカごし口調はいかがなものかと思うぞ
403 :
399
◆qk9Rolk1ms
:2006/04/14(金) 00:31:53 ID:yu0sTZbs
>399
名前欄にタイトルとか名前入れた後に、半角の#付けて好きなキーワードを入力して書き込むと
>301さんみたいな感じで、◆以降がランダムな文字列に変換された状態で表示される。
◆以降を再現するには元のキーワードを知らないとダメなので、何かあった時の本人証明手段になる。
ちなみに今自分の名前欄トリップ付きで表示されてるはずだけど、元の名前欄には
「402#来夢たんハァハァ」って入力してるw
「半角の#」と「他人に推測されにくいキーワード」さえ押さえとけば簡単。
こんなとこで生殺しはイヤソなので投下キボン。
投下の時だけトリップ付けて、終わったら名無しに戻ればこれ以上荒れることはないと思う。
(トリップ付けたままで延々雑談ってパターンは嫌がられる)
404 :
403
◆qk9Rolk1ms
:2006/04/14(金) 00:34:56 ID:yu0sTZbs
399さんと402さんを騙ってしまったよゴメンorz
カイザーが選ばなかった鈴付き赤リボンの首輪を巻いて逝ってくる
405 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/14(金) 05:12:32 ID:foa0HjMT
>>366
投下に埋もれてるが、聞き捨てならない発言だ。
負けるな。鉄壁を突破せよ。
406 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 13:27:52 ID:TJeKv4Mx
ええっと、こんな感じでいいかな
色々教えてくれたひとありがと!
407 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/14(金) 15:35:53 ID:HPhKVYcI
gj!それで良いよ
>>406
やはり皇帝目前でピーは避けられんのか…?ヒルダカワイソス(・ω・)
単なる希望ですからあまり言い過ぎないけどね。
全部取り入れたりしたら作者パンクっからw好きにお任せします。
408 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 17:42:45 ID:TJeKv4Mx
一応鬼畜要素はなるべく排除するように心がけたよ407さん。
最終的にはハッピー・エンドです、カイザー正気取り戻します。
ここに落すのは痛いが次からはけっこう甘めになるので。
ついでにここで言うのはあれだがミッタ×ヒルダは読んでみたい。
ラインハルトは、足で軽くヒルダの腹を蹴りあげた。
「きゃっ……!」
ヒルダはびくりと身体を振動させたが、慌てて肛門に力を入れなおす。
ラインハルトはそのまま、足で下腹部に刺激を与えつづけていた。
「は……ぅん……あぁ、陛下……。
止めて……」
「あなたは予に命令するのか?
予は秘書官の命令で女性を楽しむことを止めねばならないのか」
確かに、専制国家においては、基本的に人民は皇帝の所有物である。
さらに言えば、ヒルダはラインハルトの家臣であり、命令には服従する義務をおう。
それにヒルダは自ら望んでラインハルトに忠誠を誓い、仕えているのであって、強制されたわけではない。
うら若い幕僚と、これまた若い主君。
いくら皇帝が潔癖症だとはいえ、弱者を虐げることをよしとしない人柄であるとはいえ、こういった状況を覚悟しなかったのはヒルダの不明ではないのか。
理性はそうささやきかけるが、感性はそれを拒絶する。
ラインハルトはいまや暴君にヒルダの目には映っていた。
409 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 17:43:21 ID:TJeKv4Mx
(でも、やっぱり陛下に見せるのは……。
どうすればいいのかしら)
ヒルダは必死で頭を回転させていた。
あのミッターマイヤー元帥をして「一個艦体の武力にまさる」と言わしめた智謀は、あるひとつの策をヒルダに授けた。
「―――陛下」
ぞんがい冷たい声が出た、とヒルダは思った。
ラインハルトも気づいたようで、何となく恐々と、しかしそれを隠すように強くたずねる。
「何だろう、フロイライン」
「ゲームをしませんか?」
「ゲーム?」
「さようでございます。
このゲームに陛下がお勝ちあそばせれば、わたしは陛下のどんなご命令にも従います。
ですが、このゲームにわたくしが勝った場合、わたしの頼み事をお聞き入れくださいますよう」
ラインハルトは首をひねった。
「ゲームにもよるな。どのようなルールかな」
「石取りゲームです。
一三個の石をふたりで取り合うゲームですわ。
ただし、一回に取るのは三個までとさせていただきます」
ラインハルトはしばらく考えていたが、首をふった。
「あなたのことだ、どうせ必勝法を知っているのだろう。
情報戦で破れていることを知っている以上、猪突猛進はできぬ。
お断りさせていただこう」
ヒルダは心の中で舌打ちした。
頭を打ったのだから、少しばかり莫迦になっていてもよさそうなものなのに、というわけである。
(こういう遊びのストックはあまりないし……。
しょうがない、どっちにしても好きにやられるなら)
「では、陛下、じゃんけんはいかがでしょう?」
「じゃんけん?」
「はい、あれでしたら必勝法などというものは存在しないかと思います」
ラインハルトは少し考えこんだ。
それから、優美にうなずく。
「それがよかろう。
では一回勝負でよろしいかな」
「はい、陛下」
(大神オーディンよ、どうか力をお貸しくださいまし。
この偉大なる皇帝をこれ以上貶めぬように……)
ヒルダは、神々に祈りを捧げた。
もしかしたら何かの気まぐれで助けてくれるかもしれない。
410 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 17:44:41 ID:TJeKv4Mx
「では、最初はグー、じゃんけん」
ぽい。
カイザー グー
ヒルダ パー
「やった!」
思わず心の中でガッツポーズを取るヒルダ。
ラインハルトは深刻な打撃を受けたかに見えた。
「そんな……予は……」
それから、首を振る。
「フロイライン、約束だ。
要望を」
「自由にしていただきとうございます、陛下」
ヒルダの声は春の野をスキップするかのように軽かったが、ラインハルトの表情は雷雨の日の空のように暗かった。
彼女は拘束具をすべて外されると、部屋を出て行こうとしたが、
「…………」
肩を落として部屋の片隅で丸くなっている皇帝の姿に、足を止められた。
「……キルヒアイス……おれは女性ひとりを御しえない男だったのか……」
(二言目にはキルヒアイス元帥なのだから)
ヒルダはやや呆れた。
ラインハルトは唐突に叫んだ。
「―――予は、予は、全宇宙を手に入れてもなお、女性ひとりを貫きえぬのか?
おれに一生童貞のままで終えろと大神オーディンは言いたまうのか!」
(誰もそんなこと言ってないじゃない)
ヒルダはつっこみつつも、あまりにかわいそうなので言った。
「宮内尚書に言って美姫を五、六人連れてこさせましょうか」
「いやだ! 絶対経験がないってわかったら笑われる」
(初めてであることにコンプレックスをお感じなのかしら?
むしろ初めての相手に自分を選んでもらえて嬉しい方が多いのではないかしら)
「お言葉ですが、陛下、わたくしのときも初めてでございましたでしょう。
多分、ほとんどの女性は、緊張していて初体験はよくわからないと思いますよ」
「あなたは優しいから……」
ヒルダは、皇帝の顔をまじまじと見つめた。
頬が紅潮する。
そんな彼女の様子には気づかず、ラインハルトは脱力したまま言い放つ。
「予は、予は、さびしいのだ、フロイライン」
(突然何を言い出すのかしら、この方は)
と思いつつも、真剣に聞き入ってしまうヒルダ。
411 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 17:45:27 ID:TJeKv4Mx
「キルヒアイスは姉上と結婚してしまって予のもとを去ってしまったし、ヤン・ウェンリーは年金生活に入ってしまってちっとも予の相手をしてくれん!」
(あ、相手って……戦争をこの方は望まれているの?
ただまぁ、アンネローゼさまとキルヒアイス提督のことはわからないでもないけれど。
少年は永遠に少年ではありえないのだから。
人間の関係は不変ではないのだから。
ただし、それを認識することは、過去へ戻れないことを認識することと一緒のこと。
アンネローゼさまとキルヒアイス提督とラインハルト陛下の三者が、昔のようにあれないということを認識すること。
そのことが、この方は怖いのだろうか?
すべてに見捨てられたような気がするのだろうか?)
「フロイラインも予を見捨てるのか?」
ラインハルトがヒルダの心情を読み取ったかのように尋ねた。
「いや……見捨てるというわけでは……」
「そうだろう、どうせおれなんて。
戦争バカだしシスコンだし自己中心的だし金髪の小僧だし童貞だし人殺しだし、あなたが見捨ててもわからぬことではない」
蒼氷色の瞳には自虐的な光が浮んでいた。
ヒルダは冷や汗が額を伝うのを感じた。
「いや……そんなことは……」
「どこへでもゆくがよい。
キルヒアイスも姉上もヤン・ウェンリーもいなくなったし、あなたがいなくなったところで不思議でもない。
ミュラーとかの方が予よりもはるかに恋人なり愛人なりには妥当だろう」
E式の浴槽に腰掛、言い放つカイザーラインハルトに、ヒルダは弱り果ててしまった。
(どうしよう……。
とりあえずトイレに行ってこなければ、でも、今この方をひとりにしておいたらとんでもないことやらかしそうな気もするし)
(……ああもう、何でわたしの周りにはこういうひとばかり。
ハインリッヒにしても大切な講義の日に、どうしても会いたい、会ってくれなきゃ死んでやるなんて言うから会いにいったら大学の単位おとしかけたし、カストロプ家の坊ちゃんにしても……)
意外に男運の悪いヒルデガルド。
「どうした? ゆかないのか」
去ろうとしないヒルダに不思議そうに問いかけるラインハルト。
412 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 17:46:18 ID:TJeKv4Mx
「いえ、陛下、ですが……」
「別に予のことは気にするな。
敗者が勝者の言うことを聞くのは当然だ」
(あ、あのラインハルトさまが拗ねている……)
唇をとがらせそっぽをむく黄金の獅子が、ヒルダはちょっと愛しくなった。
「陛下、じゃあおまけしましょうか?」
彼女は微笑んだが、ラインハルトは怒った。
「まけ!? 予は別にこじきのように勝利を譲ってもらいたいのではないぞ!」
「いえ、陛下は捕虜となったひとたちに寛大な処置を取られたではありませんか。
わたくし、感動いたしました。
ですから、ひとつだけ陛下のおおせのとおりにいたします」
「いいのか?」
とまどったようにカイザーは言った。
「はい、よろしゅうございますよ」
もうどうしようもなかったのでヒルダは覚悟を決めてそう答えた。
ラインハルトはちょっとだけ明るくなった表情で言う。
「ではあなたの排便が見てみたいな」
「は?」
予想外の申し出に驚くヒルデガルド。
「やっぱり駄目かな……」
ぽつり、と、肩をおとして呟くラインハルト。
(そ、そんな顔で言われて断れないじゃない)
ヒルダは息を呑んだ。
「……はい、陛下、おおせにしたがいます」
やむをえぬ、とはヒルダは言わなかった。
413 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 17:47:52 ID:TJeKv4Mx
ラインハルトはあからさまに嬉しそうな顔をした。
「そうか、やはりあなたは優しいな」
(はいはい)
ラインハルトはヒルダを抱きあげた。
「へ、陛下!?」
お姫さま抱っこをされてとまどうヒルダに、ラインハルトは首をかしげた。
「いや、手洗いに行こうと思ったのだが……。
ここでした方がよいか」
「あ、いや、それじゃお願いします」
不敬にあたる言葉遣いだったが、彼は気にしなかった。
トイレまでヒルダを運びおえると、膝に腕をまわす格好、幼児に排出させる格好にもちなおす。
(これはけっこう恥ずかしいような)
上目でラインハルトを見ると、彼はわくわくした顔で待っていた。
「手伝おうか?」
などといって下腹部を撫でまわしたり、尻を触ったりする。
(こういうのをセクハラって言うのかしら)
いまさらながらにヒルダはそんなことを思った。
414 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 17:48:37 ID:TJeKv4Mx
半ば強制的な排出が終ると、ラインハルトはヒルダをシャワールームで丹念に洗った。
それからE式の浴槽に一緒につかる。
ヒルダは風呂に入りすぎて少し気分が悪くなったが、ラインハルトは嬉しそうだったので何も言わなかった。
「フロイラインは細いな、ちゃんと食べているのか?」
腰あたりを触りながら、ラインハルトはそうたずねた。
少年のような体躯に少しコンプレックスを持っているだけに、ヒルダはすぐに反応できなかった。
「……陛下こそ、エミールが嘆いておいででしたよ。
チシャやピーマンやシイタケやニンジンやブロッコリーやレバーもお食べになりませんと」
「予は好きなものしか食べぬ。
そうでなければ皇帝になった意味がないではないか」
(食事ぐらいで皇帝の意義は消滅しないと思うけど)
ヒルダはそう思ったが、あえて言葉にしようとは思わなかった。
415 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 17:50:18 ID:TJeKv4Mx
ヒルダはラインハルトに抱えられるようにして湯船につかっていたが、ラインハルトのものが立っているのでこそばゆい思いをした。
本当に自分が受け入れられるのだろうか、という疑問もある。
ラインハルトとヒルダは一〇分ほど談笑していたが、ついにラインハルトは我慢できなくなったようで、ヒルダを抱きかかえると浴室に出た。
それからクリームのようなものをヒルダの菊座に塗りつける。
緊張のためか、少し動作が荒い。
「その、痛かったらすぐに言ってくれ」
ヒルダは歯医者のことを思い出した。
歯医者も必ずそう言うが、痛いと言って止めてくれたことはない。
(……結局我慢させられるのよねぇ)
そんなことを思っているヒルダを尻目に、ラインハルトは彼女を押し倒すと、ゆっくり後ろから入れていった。
「ぅん……」
ヒルダは唾を飲みこんだ。
確かに痛いが、何だか奇妙な痛みである。
鈍いような熱いような、何ともわけのわからぬ痛み。
一方、ラインハルトの方も、ヒルダのほっそりした体躯が痛いほどしめつけてくるので、快感に苦痛の要素が混じっていたが、シチュエーションに充分燃えていたので止めようとはしなかった。
ゆっくりと律動を行うと、ヒルダから甘い吐息が漏れだしてくる。
ラインハルトは放出を行った。
416 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 17:52:10 ID:TJeKv4Mx
コスプレ要素が入ってくるので嫌いなひとは読まない方がいいかな。
ふたりはしばらく無言で息を整えていたが、タオルですべてを片づけると寝室へ向かう。
ヒルダはラインハルトの男らしい均整のとれた全裸を眺めながら、このひとに抱かれるのは光栄なことなのかもしれないな、と思った。
寝室につくと、ラインハルトが衣装を取り出しながら、まるで着せ替えごっこを楽しむ少女のような表情で言った。
「どれが着たい?」
「は?」
ヒルダは驚いた。
(どうせ脱ぐのに着るの?)
「しかしフロイラインにあまり下品な格好は似合わぬし。
そうだな、首輪もついていることだし猫でどうだ?」
「猫……でございますか」
「そうだ、かわいいだろう?」
ラインハルトが取り出したのは、純白のふわふわしたファー状の下着(なぜか尻尾がついている)と手袋と靴下と、猫耳のついているカチューシャだった。
(こ……これがかわいい??
陛下のご趣味って一体……)
思い切りひきまくるヒルダの様子に、ラインハルトは慌てた。
「いや、別に嫌なら無理にとは言わん。
猫目が綺麗だし……いやその別に白衣でも軍服でもかまわぬ」
「いえ、別にいいですけど」
ヒルダはショックを引きずったまま着衣した。
ヒルダが着替え終わると、ラインハルトは笑顔になった。
例の“水晶を透過した陽光”のような笑顔である。
(いや、そんな爽やかに微笑まれても)
ヒルダは少し恥ずかしかった。
「あと、この薬さえ飲めば完璧だ」
ピンクの小型カプセルを見て、ヒルダはさすがにひるんだ。
「そ、それは何でしょう」
「―――ん、大丈夫だ、有効時間は三時間だからな」
説明しないところが怖いが、(もうどうにでもなれ)と開き直ったヒルダはそれを飲みこんだ。
417 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 17:53:21 ID:TJeKv4Mx
「ん……ぁ……ニャ?」
飛び出した鳴き声に、ヒルダは驚愕して口を押さえる。
そんな様子を見て、ラインハルトは満足げにうなずく。
「よろしい、では、最後の仕上げといこうではないか」
ラインハルトは、寝台にヒルダを押し倒した。
「にゃぁあん……」という、色っぽいのか莫迦莫迦しいのか、いまいち判断につきかねる声がヒルダの口からもれる。
ま、とりあえずラインハルトは燃えたらしいので、よしとしよう。
彼は、ヒルダと舌と自分の舌を熱心に絡ませた。
彼女はそれだけで感じてしまったらしく、全身が真赤に染まる。
ラインハルトは服の上から強くヒルダの胸を揉んだ。
「にゃ……ぅん……」
悩ましい表情で反応する秘書官を見やり、彼は満足そうにうなずいた。
それから服をゆっくり脱がせてゆく。
ヒルダはどうせ脱がせるのならば着なくてもよかったのにと思ったが、脱がせたいというのは自然な男性の欲求であろう。
乳首を舌で嬲ると、全身を震わせてヒルダは応えた。
たまらず鳴く秘書官の声を、彼は楽しむ。
418 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 17:54:46 ID:TJeKv4Mx
贅肉などひとつもついていない太股から、妙に冷たい汗が流れ落ちてゆく。
ラインハルトは少し塩味のするそれらを、優しく舐め取っていく。
豪奢な金髪が、恥所をふさふさ嬲るので、ヒルダはにゃぅにゃぅと声をあげて反応してしまう。
(なんか気の抜ける声だな……。
しかしまぁ、こういうフロイラインもたまにはいいものだな)
最後の仕上げとしてクリトリスを力いっぱい弾くと、ヒルダは悲鳴をあげて全身を仰け反らせた。
同時にラインハルトは、充分にいきりたっている自身を挿入する。
「にゃぁぁあ!」
身を裂かれるような痛みに、ヒルダは涙を流したが、必死で耐えんとしてラインハルトの背に腕を回す。
律動が何度も行われ、そのたびにヒルダは痛みと快感を同時に貪った。
ラインハルトは、ヒルダの涙を舐め取ったりしていたが、不意にヒルダを抱きかかえたまま寝台の上で反転する。
これによってヒルダはラインハルトの上に跨る格好になってしまった。
「にゃぅん?」
不思議そうな顔をするヒルダに、彼は優しく微笑んだ。
「あなたから動いてくれ」
そういって、鎖を引っ張る。
だが、ヒルダは困惑したような顔をしているばかりである。
「腰をふればいいのだ」
ヒルダの顔が真赤に染まったが、何も言うことができず、ヒルダは腰を動かしはじめた。
痛みと羞恥と快感に、ヒルダは鳴く。
ラインハルトは目をつぶって律動を楽しんでいる。
(こんなに気持ちがいいのならさっさと襲っておくのだった)
(そうか、なぜみんな平和などという退屈な時代を歓迎するのかと思えば、こういうことを毎晩のようにやりたいからなのだな。
予はそれに気づかず、ずいぶん多くの血を流してしまったものだ……。
かくなるうえは、彼らの分までしっかりフロイラインを楽しもう)
決意するカイザー。
……死者が聞けば思わず「自己陶酔の極み!」と非難したくなるであろうが、あいにく天上の声は地上に届くようにはできていないのである。
それから、段々激しくなってゆくヒルダの動きに、ラインハルトは昇っていくのを感じた。
それでまた反転し、ヒルダを押し倒すと、
「出すぞ、ヒルダ!」
と宣言し、勢いよく注ぎこんだ。
419 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 17:55:38 ID:TJeKv4Mx
「ふぅ……」
と、さっぱりした気分で、ラインハルトは自身を引き抜く。
純潔を意味する血が樹液と混じって流れでている。
彼女は衝撃と疲れのためか、すぐに寝入ってしまっている。
(お疲れさま、ヒルデガルド……)
と、運動のおかげで熱がすっかりひいてしまったラインハルトも、あくびをひとつ噛み殺すと、眠りに入ったのだった。
420 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 17:56:19 ID:TJeKv4Mx
夜中二時 起床
皇帝ラインハルト・フォン・ローエングラムは、驚いた。
虫になっていたわけではない、隣に全裸の美女が寝ていたからである。
「フロイライン・マリーンドルフ?
何でこんなところに……」
踊り場で頭を打ってからの記憶が、さっぱり抜け落ちたラインハルトであった。
ヒルダはよほど疲れたようで昏倒している。
「まさか、予は……」
どんどん顔の蒼褪めていくラインハルト。
「いや、しかし、だが、……これは?」
手に握っていた鎖を見て、彼は首をかしげた。
その鎖がヒルダの首輪につながっているのを見て、彼は蒼白になる。
なぜか猫耳。
白皙の頬を伝う、いくつもの涙の痕。
こっそりシーツの中をのぞいた彼は、すでに黒く変色した血痕を確認した。
「……まさかとは思うが」
(ど、どうすればよいのだ!?)
恐慌におちいったカイザーである。
(あ、姉上かキルヒアイスに相談……いや待て駄目だふたりともフロイライン・マリーンドルフのことを高く評価している、絶対に軽蔑されるぞ。
それどこか絶縁されかねん。
ではミッターマイヤー……いやあいつも“一個艦体の武力にまさる”だとか絶賛していたな。ロイエンタールは……あいつに相談するのか!? 童貞だと言うことがばれたら絶対冷笑する、やつならしかねん!)
混乱した皇帝は、普段なら絶対にやらない人選をしてしまった。
つまり、軍務尚書パウル・フォン・オーベルシュタインにTV電話をかけてしまったのである。
421 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 17:57:16 ID:TJeKv4Mx
彼は呼び出しに一〇秒とかからず出てきた。
「何のご用でしょうか、皇帝陛下」
「……なぜこのような早朝から軍服を着ておるのだ、オーベルシュタイン。
まさか寝巻だと言うのではないだろうな」
「おそらくお呼び出しがあろうと存じておりましたから」
冷静沈着に答えるオーベルシュタインに、ラインハルトは絶叫した。
「卿かっ!」
「ぅん……ん」
あまりのうるささにヒルダが反応した。
ラインハルトはびくっとして声をひそめる。
「まさか卿、予が女性に興味を示さぬことを危機し行動を起こしたのか」
「ご冗談を。
もしそのような策を弄すなら、わざわざ外戚の活躍しそうなフロイライン・マリーンドルフなどを選びませぬ」
正論だったので、ラインハルトは黙った。
オーベルシュタインはたたみかける。
「フロイラインをお相手に望まれたのは陛下でございます。
国務尚書のご令嬢は皇妃としては不適当だと臣は考えますが、美しい娘をかわいがるのはどの皇帝でもやること、あえて異を唱えようとは思いませぬ」
「……もうよい、さがれ」
ラインハルトは通信を切ろうとしたが、オーベルシュタインの付け加えた言葉に驚愕した。
「昨夜のご様子を知りたいとお思いでしたら、ディスクを用意いたしますが」
422 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 17:58:11 ID:TJeKv4Mx
「な、なんだと!? 卿は皇帝の私室に」
「万が一のときに備えまして、皇帝の私室にカメラを設置するのはゴールデンバウム王朝において前例がございます」
「予の了解もとらずにか」
ラインハルトは不機嫌そうに言った。
「それは臣の不明であります。
いかなる処分もお待ちいたしましょう。
しかしながら、今回は役に立つかと存じますれば」
「……わかった、データを送ってくれ。こちらで書き写す」
(とりあえず、何をしたか知っていないとフロイラインに非礼な言動をしてしまうかもしれぬ)
「御意」
オーベルシュタインが消えてから、ラインハルトは嘆息した。
(予はあの参謀長を好きになったことは一度もない。
だが、考えてみると一番あれの提案にしたがっている気がするな)
423 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 17:58:55 ID:TJeKv4Mx
ラインハルトは、ソファに座り、明らかに編集されているディスクを見ていた。
ヒルダの頭を抱えこみ、ささやくシーン。
「予はあなたが食べたいのだ」
(なんというオリジナリティもない言葉を!
恥ずかしくないのか、卿は!)
ラインハルトは不快に思ったが、他者がいれば「つっこむところが違いますぞ!」と、諫言したくなるであろう。
そんなカイザーも、接吻から脱衣、愛撫と移っていく間に顔を真赤にしたり真っ青にしたりした。
(予は何ということを!
……にしても、オーベルシュタインのやつ、自分から編集したのかな。
もしもフロイラインの映像で抜いていたりしたらただではおかぬ)
しかしながら、オーベルシュタインの自慰シーンは、皇帝ラインハルトの知能をもってしても想像することは不可能だった。
(犬に舐めさせたりしているのか。それはそれで笑えるな)
そんなくだらないことを考えながら、尿を飲ませたり、咥えさせたり、浣腸したりと話が移ってゆくにつれ、ラインハルトは自分のものが脈動し始めているのを感じた。
(こ……この表情は反則だぞ、フロイライン。
つか、ヒルダタソ萌……いやいや予は皇帝なのだ、もう少し文学的感性にとんだ発言をすべきではないのか)
ヒルダがいれば反省するところが違うとつっこみたくなるだろうが、性的高揚感がラインハルトを捕らえていた。
424 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 17:59:47 ID:TJeKv4Mx
ディスクを見終えると、ラインハルトはもう一度ダンボール箱の中身を確かめた。
どうやらオーベルシュタインの用意したものであるらしいが……。
その中にあった「よいこのせいきょういく」入門編〜上級テクニック編まで五枚のディスクを取りだし、飛ばしながらもすべて確認してゆく。
(余談だが、このディスクは親から子へと代々伝わり、ローエングラム王朝の“聖典”となったが、そのローエングラム王家が没落してからは持ち主を転々とかえ、ついには帝国の恥を隠そうとうする者達の手によって歴史の闇に葬られてしまったという。
製作者には諸説あり、オーベルシュタインかフェルナーあたりではないか、というのが主流であるが、いやいやロイエンタール元帥が一番ありえそうだ、とか、実はアンネローゼが弟のことを思って作成したのだ、とかいう珍説もある)
「番外編 障害をのりこえて無事結ばれた夫婦たち19 〜早漏編〜」という、“しっぷううぉるふ”と“えば”の登場するアニメを見終えると、ラインハルトは感嘆した。
「なんという芸の細かさだ……」
(ここまで丹念につくられたデータ・ディスクを予は見たことがない。
軍務尚書のやつやるな……それにしても、本職の方にもう少しいかせばよいのに)
公に徹した報告書を想起しながら、ラインハルトがディスクを取り出そうとすると、
「うーん……よく寝た」
薬の効き目が切れたのだろう、ヒルダが背伸びして起きだした。
425 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 18:01:02 ID:TJeKv4Mx
ラインハルトが観察していると、自分の格好に驚いたように悲鳴をあげ、それから不思議そうにきょろきょろと周りを見渡し、主君の姿を視界にとらえると、すべて思い出した表情で、ぱたんと倒れてしまった。
どうやら寝たふりをすることに決めたらしい。
ラインハルトもどうしてよいかわからず、間の悪い沈黙が流れる。
(に、逃げてしまいたい……)
(しかし、皇帝として、男として、フロイラインを敬愛するひとりの人間として、謝らねばならぬ)
「……その、フロイライン」
「……はい、陛下」
シーツの中から、くぐもった声がした。
「予は、してはならぬことをした」
ヒルダは無言だった。
「その、予はもともと権力者が弱者を好きにいたぶることの出来る社会を打倒したかったのだ。公正を実現したかったのだ」
「存じあげております、陛下」
「だが予はあなたに……あなたを権力で屈服させてしまった。
赦しを請える立場にないことは充分にわかっている。
だが、予は、あなたを失いたくはないのだ。
皇妃となってくれぬか、フロイライン・マリーンドルフ」
426 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 18:01:53 ID:TJeKv4Mx
ヒルダは驚いた。
それから、シーツから顔を出し、ラインハルトの表情を見て、少し悲しくなった。
覇気と華麗さの消失した姿。
豪雨の中に捨てられた子犬のように、それは弱々しくて。
(このお方はわたしのことを愛していらっしゃらないのに。
ただ責任をお感じになっていらっしゃるだけ。
わたしに皇妃となるべき資格はない……。
でも、どうやってお伝えしたらよろしいのだろう?
どう伝えても、傷付いてしまわれるでしょうに)
「……陛下、責任をお感じになる必要はございませんわ。
陛下は、少しばかり夢を見ていらっしゃったのですから」
ヒルダは感情の海の中から、慎重に言葉を選んで、掬いあげていった。
「しかし、フロイライン、予は……あなたに猫の格好までさせてしまったし」
(……いや謝るところはそこなの?)
ラインハルトはうつむいた。
その白皙の頬を、涙が一筋つたう。
ヒルダは切なくなった。
427 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 18:02:46 ID:TJeKv4Mx
(ああ、陛下、どうお伝えすればよろしいのだろう。
でも、陛下の前で女性としてやってはならないことまでやってしまったし。
このまま皇妃だなんて、わたしには相応しくないのに。
でもそのことをそのままお伝えすれば、きっと悲しまれるに違いない)
そういえば、と彼女は思う。
ヒルダが一五歳で社交界にデビューするさい、ハンスは何とかしてヒルダを女の子らしくしようと、ロマンス小説や映画を大漁に見せたのだった。
そのほとんどが記憶から失われてしまったが、「ブルー・ローズ」という同盟からフェザーンを経由して帝国に届けられた映画だけは、覚えている。
同盟にスパイとして派遣された帝国女性と、それをそうとしらずに惚れてしまう同盟の軍人の話。
ありきたりな安っぽい映画であったが、政治・軍事・経済のことがきちんと書きこまれていてヒルダは感動したものである。
最後にそのスパイである帝国女性は、同盟軍人から結婚を申しこまれて断わる。
そのときの台詞が確か、
「求婚には世界中すべての薔薇が欲しいわ、これじゃ少なすぎる……」
だった。
(よし! これなら多分いける)
428 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 18:06:09 ID:TJeKv4Mx
「陛下、わたくしには夢がありましたの」
「……何かな」
ラインハルトは優しい表情で言った。
ヒルダは嘘をつくことが後ろめたくなったが、しかし、ゆっくりと情感をこめて話す。
「結婚するときは、宇宙すべての薔薇の花を集めた花束で求婚してほしいという夢でございます」
ラインハルトは、やや驚いたようにヒルダを見た。
「フロイラインはロマンチストだな」
「ですから、その願いが届けられない限り、結婚はできません。
お赦しくださいまし」
ヒルダは微笑んだ。
ラインハルトは、ゆっくりと、うなずいた。
「そうか、それならば仕方がない。
―――フロイライン、他に願いはあるかな」
「出来ますれば、半年ほどお休みをいただきとうございます」
ラインハルトは少し傷付いた顔をした。
ヒルダは胸が痛くなる。
彼女はラインハルトが嫌いなわけでもなかったが、今日からすぐ皇帝に仕えることはできそうになかった。
嫌悪からではない、羞恥からである。
それに彼女にもやりたいことがある。
(ヤン・ウェンリー一党にあって話をきくこと、この時代を生きたものとして、一冊本をまとめあげること)
がそれである。
今までは秘書官としての仕事があったため、かなわなかった想い。
この機会にやってしまおう。
429 :
皇帝錯乱
◆ll7dsHBA4Y
:2006/04/14(金) 18:06:42 ID:TJeKv4Mx
半年後。
マリーンドルフ邸とマリーンドルフ伯爵領は薔薇の花で埋めつくされるはめとなる。
初めは「宇宙人の侵略か!?」と帝国を賑わせたものだが、真相が明らかになると、ひとびとはあまりの壮大な求婚劇に溜息をついた。
この出来事によって、後世から薔薇妃の二つ名を贈られることとなるヒルデガルド皇妃は、夫ラインハルト一世をよく助け、帝国に安定と平和をもたらしたと言われている。
……ラインハルトが皇妃を迎えたその日から、
「ア、アンネローゼさま……にかわって、お、お仕置き……です、よ!」
や、
「わんわんわん」
や、
「ご主人さまぁ!」
などの奇声(?)が聞かれるようになったというが、キスリング親衛隊長はかたく沈黙を守っているので、真相は闇の中である。
後世において、ラインハルトの愛読書はすべての巻を合わせれば一万ページにも及ぶ「命名辞典」だったと伝えられている。ローエングラム王朝初代皇帝夫妻の肖像画は、多産を願う結婚祝いとして平民たちはよく贈りあったという。
マリーンドルフ伯爵領は薔薇の名産地としてローエングラム王朝が滅んだあとも栄えつづけ、そのロマンチックな逸話は多くの追随者を呼んだが、ラインハルト以外誰ひとりとしてこの方法で求婚しえたものはいないという。
……ローエングラム王朝初代の名将たちが時空を越えて未来にいけたとするならば、おそらく誰もが抱腹絶倒しかねないことに、後世においてオーベルシュタインは「愛のキューピット」としての地位を確立しているのであった……。
ラインハルトは妻だけを愛しつづけ、その子どもの数はギネスブックにおいてぶっちぎり一位に輝いている。
「予の辞書に不可能の文字はなし!」
という台詞は、ラインハルトのためにこそ存在する、と、歴史は語る。
おしまい。
430 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/14(金) 18:09:57 ID:TJeKv4Mx
ひたすら長い話でしたがとりあえず終わりました。
普通なのに戻りたいと思います。
荒れる原因をつくってすみませんでした(汗)
366さんミッタ×ヒルダ読んでみたいです(しつこいかなw)
431 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/14(金) 18:28:08 ID:HPhKVYcI
可愛い天使の羽しょって片肌脱いだあの白い衣装着た
オーベルシュタイン想像して吹いたwwwwwwwwwww
顔色の悪すぎる陰険顔のキューピッド!!
お疲れさんでした。GJ〜。
432 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/14(金) 19:29:21 ID:1RshHwJo
自虐カイザーになにやら胸キュン。
しかしヒルダ人が良すぎw
エピソードが二次のだいご味だな。あの二人、もうちょっと長く一緒にいられたら良かったのにとかオモタ。
作者タン乙でした〜
433 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/15(土) 00:24:55 ID:LPSUJdBI
「子供の数はぶっちぎり一位」ってw
そんなカイザー素敵だわv
エロ要素もさることながら、大いに笑いながら読ませて頂きました。乙でした!
434 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/15(土) 00:32:44 ID:kLsRtkVR
乙!笑いながら楽しく読めました。
スカトロも薄味だったので私は大丈夫だった。
途中で作風変わってからノリがよくなったような…
ギャグ向きの作家さんなんでしょうね。
435 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/15(土) 01:12:59 ID:ggutXMET
GJ!
436 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/15(土) 18:15:54 ID:bpwyiCPN
オーベルシュタイン印のコンドームとか売ってるのかな。
わりあい同盟人には受けそうだがw
437 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/15(土) 21:22:22 ID:7MU2im9Q
ミュラ−印のそれのほうが鉄壁感があるかも
本人激しく嫌がりそうだが
438 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/15(土) 21:28:45 ID:KHgTDWyD
ウォルフ印の疾風コンドーム
439 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/15(土) 21:31:55 ID:CKBu1pha
相手を追い越して終わっちまいそうだからいや、それは。
440 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/15(土) 22:54:32 ID:bpwyiCPN
いやミッタ印のコンドームは安全だろう、多分。
けっきょくエヴァたんとの間にこどもはできんかったっぽいし。
こわいのはラインハルト印のコンドーム。
つければ逆に百発百中。
441 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/15(土) 22:56:53 ID:7MU2im9Q
ビッテンフェルト印のおくれ
442 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/15(土) 23:05:56 ID:Y0rrCHc/
魔術師印ミラクルコンドーム。
443 :
364
:2006/04/16(日) 06:28:24 ID:VHderuvD
皇帝とヒルダものが続くんだけど許してほしい
前半ができたので投下、後半は全くの手付かずなので投下予定はたってない(絶対書くが)
※ほかの作品を投下したい人や雑談したい人へ
俺のは気にせずどうか遠慮なく流してね
444 :
フロイライン攻略 1
:2006/04/16(日) 06:29:01 ID:VHderuvD
夏の終わりにおこった、大本営幕僚総監ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフの突然の欠勤。
皇帝ラインハルトの近侍に過ぎないエミール・ゼッレには、残念ながらその詳しい理由はわからなかった。
暗殺事件の夜、とめどなく酒に溺れている皇帝の部屋の外、歯を食いしばり涙を堪えているところにフロイライン・マリーンドルフが現れた。
頼まれるまま中に通し、エミールは彼女が出てくるのを待った。
心配でたまらず、ラインハルトの様子を訊ねようと思ったのだ。
だがフロイラインのほっそりとした姿はなかなか現れなかった。
(きっと陛下のお心を、言葉を尽くしてお慰めてしておられるんだ。ヒルダ様は優秀な方だから)
辛抱強く待っていると、やがて、すすり泣きを堪えているような、ちいさな取り乱した響きがどこからかかすかにかすかに漏れきこえはじめ、あれは一体なんだろうと考えていると足音を忍ばせたキスリング准将がやってきて、否応無しに自室へと追いやられてしまった。
それがエミールの関わった、ヒルダ欠勤に関わるいきさつの全てである。
思春期とはいうものの、華麗絢爛にして潔癖極まりない皇帝ラインハルトに早くから仕え、その、世界に対する覇気と才能の薫陶を受けまくっているエミールは俗世では有り得ないほどに純真な少年だった。
しかもこれまでラインハルトとヒルダが一向に『そういう雰囲気』を醸し出した事がなかったから、余計にそういう方面への想像は働かなかった。
だから、次の日から仕事熱心なヒルダがいきなり欠勤しはじめ、ラインハルトが、酒は手放したもののなんとなく心ここにあらずの有様になったとて、その二つの現象を結びつけて考えることはやはりエミールには不可能だった。
ただ、日頃から健康で快活で、風邪をひいても二日と続けて休んだことも稀な幕僚総監の一週間にも及ぶ欠勤は少年をそこはかとない不安に陥れた。
エミールはヒルダが好きだったし、近侍からみても凄まじいラインハルトの激務を考えると、帝王に欠くべからざる有能な彼女という存在の欠如は大きいのではと思えるのだった。
まさかその皇帝陛下本人が彼女の欠勤の理由を作ったのだとは想像の埒外である。
だが喜ばしいことにそのヒルダはついに昨日、再びエミールの前に姿をあらわした。
見た目にやつれた様子もなく、少年に向ける笑顔もいつもの美しく明るいもので、エミールは胸をなでおろした。
これで陛下もご安心だろう、と思ったのである。
ただ…。
445 :
フロイライン攻略 2
:2006/04/16(日) 06:30:09 ID:VHderuvD
元に戻った日常の影に少々変化した事もある。
かつての皇帝は純粋な仕事以外でもマリーンドルフ伯爵令嬢を私室に招いてコーヒーを一緒に喫する時間なども持っていたのだが、それがさっぱりなくなった。
明敏で快活な令嬢と、崇拝する皇帝の、公の会議の場よりか幾分か和らいだ、かつ機知に富んだ会話を給仕をしつつ漏れ聞くのを自分だけの特権として楽しみにしていたエミールにすれば、まことに残念な変化である。
ラインハルトにその理由を訊ねるなど、エミールにとっては非常に畏れ多いことだったがそれでも勇気を奮って口を開いてみた事があった。
「あの…陛下、フロイライン・マリーンドルフは、お忙しいのでしょうか」
ぴくりと、カップの取っ手を持つラインハルトの彫刻のような手が動いた。
エミールの気のせいかもしれないが、豪奢な黄金の髪と華麗な軍服の隙間からのぞいた首すじのあたりがさっと赤みを帯びた。
彼が黙ったままなので、エミールは慌てて言葉を継いだ。
「こんな事をお訊ねして、どうかお許しください。でもこのところ、全然お茶にいらっしゃいませんので…」
いくぶんか乱暴に受け皿にカップを戻し、彼の軍神はエミールを眺めた。
微笑になり損ねたようなかすかな歪みを完璧な唇に貼付けて、皇帝は言った。
「そうだな、忙しいのだと思う。予が仕事をせずに、こうして怠けて遊んでいるからな」
「いえ、そんな…」
エミールは赤くなって口ごもり、ラインハルトが使い終わったクリーム入れを急いで銀盆に引き寄せた。
崇拝する主君にからかわれるのはいつもならば嬉しいのだが、なぜだか今日のラインハルトの口調は妙に苦々しいように思えた。
余計な事をいわねばよかった。信者エミールは後悔した。
銀器を集め、一礼して退出していくエミールの反省しきりの表情にラインハルトは気付いていたが、気の利いたフォローを入れてやる余裕はどこにもなかった。
少年の素朴な疑問は、皇帝の痛いところを突いたのである。
そう、フロイライン・マリーンドルフは復帰の挨拶から後一度もラインハルトの前に、私事で立つ事はなかった。
表面上はともかくラインハルトのあの夜の記憶に対する照れくささはかなりのものだったし、冷静な状態の彼女と仕事の話だけを事務的にこなせるとわかってほっとしたのは事実である。
だがその安堵は最初のうちだけだった。
復帰して十日もたつが、常に直線距離にして二人の間には五メートル以上の空間が開いているような気がする。
考え過ぎかと思っていたのだが、あれはたしか三日前。
ラインハルトが書類を受け取るためにふと手をのばすと同極の磁石のように滑らかな動きで彼女がよけたので、それが意識的に置かれた距離らしいということが彼にもわかった。
446 :
フロイライン攻略 3
:2006/04/16(日) 06:31:07 ID:VHderuvD
仮にも、あのような夜があったのである。
しかも、彼は逃げも隠れもせずにヒルダに、彼女の父親を巻き込んで正々堂々求婚しているのである。
いくらなんでも、彼と視線すら合わさないようにしているらしいのはいかがなものか。
安堵はゆっくりと疑問にかわり、解消されぬまま苛立ちへとかたちを歪めつつある。
ヒルダと話をしようにも、欠勤後の多忙を理由に、今日のようにお茶の誘いにものってこない。
このままでは苛立ちが怒りに進化を遂げるのも時間の問題だ。
得難い有能な大本営幕僚総監との関係を軟弱な理由で壊すなど、そのような不毛な事態はラインハルトには耐えられない。
(銀河の覇者がこれでいいのか。
キルヒアイス、俺はこの程度の男だったのか)
訊ねられても答えようもないような呟きを胸中の面影に漏らし、彼は豪奢な金髪を揺らして立ち上がった。
この生ける黄金獅子の行動様式はそもそも直情径行型のはた迷惑──いや、迅速なものである。
容姿の優美さを見くびった貴族の子弟たちを次々に血祭りにあげ、士官学校時代には(アンネローゼ以外のことでは彼の直情を果断に変える努力を怠らぬ)赤毛の親友と一緒に数々の武勇伝を轟かせたものだ。
いつまでも、己の本質とは別の領域の問題でうじうじと悩んでいるのは彼本来の性に合わぬ。
(そうだ。これ以上こじれぬうちに、フロイライン・マリーンドルフと話し合おう。
明晰なフロイラインの事だからきっと誠意は通じるはずだ。今こそ行動の時だ)
再考を促す親友の不在がこの場合歴史上の観点から見て良かったのか悪かったのか、それは後世の誰にもわからない。
ラインハルトは薄れはじめたコーヒーの残り香をかきわけて、扉へと向かった。
***
彼の美しい幕僚総監は唯一の上司が不意に部屋に押し掛けてきた事を知り、口に含んでいた菓子を危うく喉に詰まらせるところだった。
すぐに通すようヴィジフォン越しに受付の士官に伝え、ヒルダは急いで立ち上がると手にした包みを机の引き出しに押し込もうとした。
慌てたてもたついているうちにすぐさま執務室の扉が開いた。
ラインハルト以外のものでは有り得ない、豪奢な髪の色がさっと視界にとびこんでくる。
言う事をきかない引き出しを諦めて、ヒルダは躯の向きを変えた。
447 :
フロイライン攻略 4
:2006/04/16(日) 06:32:00 ID:VHderuvD
「陛下」
「ああ、急に、すまない」
ラインハルトは軽く片手を拡げて抑えるような仕草を見せると、執務室に備え付けの応接セットにまっすぐ進んでそのままソファに腰掛けた。
無造作な優雅さで脚を組み、彼女に呼びかける。
「フロイラインもこちらに。話があるのだ」
ヒルダはようやく引き出しを閉める事に成功した。
ラインハルトの蒼氷色の視線が、縁からはみ出した、学生が昼食を包むために使うような茶色の包み紙に止まった。
「…もしかして、食事中だったのだろうか」
ぎこちない口調は、まず世間話でふたりの間の微妙な雰囲気をやわらげようとする意図が見え見えで、ヒルダは思わず胸の中で微笑を浮かべた。
「いえ、もうほとんど済ませておりましたから」
「しかし…」
皇帝は、壁にかけられた昔風の意匠の時計にちらと目をやった。
「もう、四時に近い。フロイラインは、時間通りに昼食も摂られぬほどの量の仕事を抱えているのか」
ヒルダは机を回ってソファに近づき、控えめに立ち止まった。
気付いたラインハルトが自分の横を指し示す。
「どうやら予はあなたの才知に頼り過ぎて、過重な労働を強いているらしい」
「いいえ、そんな事はございません。今日はたまたま、このような流れになっただけの事でございます」
傍らに腰を下ろしたヒルダの短いくすんだ金髪がなびき、ラインハルトの鼻先にわずかな風を送ってきた。
近い距離でないと気付かぬ程度の、ほのかな香りがする。
ラインハルトは女性用の香水に詳しくもないし興味を持ったこともなかったが、それがあたためられた秋の陽射しを受けた林檎の匂いによく似ている事だけはわかった。
ヒルダが香水をつけているかどうかは知らないし、聞いてみた事もない。
もしかしたら化粧品とか、洗顔料の類かもしれない。
彼女に最も接近した夜──あの時に彼女からどんな匂いがしたか、それすら実はあまりよく覚えていない事に思い至って皇帝はかすかに頬を赤らめた。
だが、この香りの趣味は悪くない。
女としての彼女をほとんど意識せずにこれまで過ごしてきてしまったが、いま初めて気付いたこの事実は彼の心にヒルダに抱く自分の、異性としての好意を再確認させるに充分だった。
求婚までしておいて今更好意もなにもないのだが、ことラインハルトの場合にはその、非性的な分野に著しく偏った半生の特殊性を考慮せねばなるまい。
448 :
フロイライン攻略 5
:2006/04/16(日) 06:33:05 ID:VHderuvD
ヒルダはさりげなく、だが実は内心かなりの胸騒ぎを覚えつつ、急に黙り込んだラインハルトを見やった。
幕僚総監としての職務は欠勤後は完璧にこなしている。問題はないはずだ。
呼びつければいいものを皇帝自らここにわざわざ足を運ぶということは、さしたる理由がほかにない以上ラインハルトの話とはあの一件についてのものに決まっているのだ。
一夜を共に過ごし、その翌朝に求婚され、まだ彼女はこの一週間、否とも応とも返事を返してはいない。
ラインハルト以外の専制君主なら、怒り始める頃合いはもうとっくに過ぎているのである。
果断即決の彼らしくもなくヒルダに返事を促す事さえしないのは、彼自身事態の展開にとまどっているのだろうし、実際自分が本当にラインハルトにふさわしいのかどうか、それが彼女にわからないのだからどうしようもないのだが──。
皇帝の傍らにも関わらず、ぼんやりと考えにふけっていたヒルダはふいに刺激を感じて我を取り戻した。
瞳を膝にやると、ラインハルトのかたちのいい手が自分の手の甲に重なっている。
ヒルダの心臓が飛び跳ね、彼女はとっさに、気付かぬふうを装ってさりげなく手をひき抜こうかと考えた。
だが、ラインハルトの手は揺るごうとしない。偶然ではない意思の存在を窺わせた。
「フロイライン・マリーンドルフ」
真剣な響きを口調にこめて皇帝が呼びかけてくる。
耳朶に吐息があたるほどの至近距離である事に気付き、ヒルダは動揺した。
「はい」
快活で明快ないつもの態度にはないしおらしさで思わず俯き、ヒルダは高鳴る胸を持て余すした。
求婚されたとはいうもののヒルダがラインハルトの意思を知ったのは父マリーンドルフ伯を通じてのものであり、直接皇帝の口から聞いたわけではない。
蒼氷色の目が注がれているのを感じ取り、ヒルダの頬は目に見えるほどに染まった。
「他でもない、その、最近──」
「はい」
「この…」
「はい」
言いよどむラインハルトを愚かとは笑えない。
ヒルダの舌も、はい以外の言葉のかたちを忘れてしまったかのようである。
「この、林檎のような香りは、何なのだろうか」
「……は?」
ヒルダはブルーグリーンの瞳を見張り、間近の蒼氷色のそれを見つめた。
「林檎の汁を絞って作った香水、なのだろうか」
「…………」
噴き出せばいいのか、それとも淡々と答えればいいのか、ヒルダは迷った。
だがラインハルトの目が真面目なのでとりあえず後者を選ぶことにする。
「林檎の香水はつけておりません。たぶん、リンスかなにかの香りではないでしょうか」
「?」
「そういうものには、カモミールという保湿成分が使われる事があると聞きます。林檎と似た匂いがいたします」
ヒルダが唇を閉じると、ラインハルトは感心したように頷いた。
「フロイラインは、なんでもよく知っているのだな」
「よくは存じておりませんでしたが、先日たまたま見ておりました番組の広告で──」
ヒルダの言葉が途切れた。ラインハルトの目が近づいてきたような気がして、座ったままかすかに躯を退く。
「広告で?」
皇帝が促した。
意識過剰を恥じ、ヒルダは話を続けた。
「はい。広告で、丁度このたびフェザーンの製薬会社が新しく開発した天然素材仕様の──」
449 :
フロイライン攻略 6
:2006/04/16(日) 06:34:41 ID:VHderuvD
今度こそ、ヒルダは背をのけぞらせた。
ソファの背もたれに後退を遮られたヒルダの胸元ぎりぎりのところで黒と銀の華麗な装飾の軍服が止まった。
「フロイライン」
「…はい」
「申し訳ないが、予は、その、本当は匂いの正確な素性はどうでもよいのだ」
白磁のようなラインハルトの頬の輪郭が淡く染まっているのを目の当たりにし、こんな場合なのにヒルダはそれを美しいと思った。
「…最近あなたに避けられているのではないかと」
ラインハルトは、握ったヒルダのほっそりとした手を安堵したふうに眺めた。
「だが、やはり杞憂だった。もう愚かな邪推はしない」
「そのような…」
ヒルダは歯切れ悪く口ごもった。実はラインハルトの推測の通りなのである。
別に避けているわけではないが……いや、嘘である。最大限に避けているのだ。
あのような事があったのは事実で今さらどうにもならないのだが、いくら自分で決心し一夜は彼の役に立ったのだと割り切ったつもりでもどうにもラインハルトに面と向かうのが照れくさくてたまらない。
あの夜の決意自体には一点の後悔もないが、事後の照れくささといたたまれなさの点だけでいえば後悔していると言われても言い逃れができそうにない。
それは自分だけの問題であると思っていたのだが、ラインハルトがそんなふうに気にしているとは思わなかったのでヒルダは少し驚いた。
少なくとも彼は求婚という彼なりに考える最大限の誠意を示したことでもあり、まさかヒルダの気持ちを把握しかねて困惑しているとまでは考えが及ばなかったのである。
彼がじっとヒルダの答えを待っているのは、その寛容さによるものとのみ考えていた。
比類なく聡明な頭脳と優れた洞察力を持ちながら、恋愛関係に限って異常に疎い。
この男女はまことによく似た者同士であった。
ヒルダがまた黙ってしまったので、ラインハルトは気遣わし気にブルーグリーンの瞳を覗き込んだ。
「それとも、杞憂ではないのか。フロイラインは、予が、その。好ましくは思えないのだろうか」
ヒルダは真っ赤になった。
まさか。
「以前は」
ラインハルトは、ヒルダのくすんだ金髪に視線を逸らせた。
「あなたは、初めて会ったときからこれまで、予になんら腹蔵なく接してくれていた。このところ避けられているのは、やはりあのことがあったゆえなのだな」
「違います、陛下」
反射的にヒルダは否定したが、その反応が早すぎたらしい。
ラインハルトの目が寂寥の色あいを帯びた。
「気遣ってくれずとも良いのだ。これも自業自得というものだろう。女性は、歓びを与えてくれない男性には冷たくなるものだとロイエンタールが話しているのを聞いたことがある。…あなたはあの時、とても辛そうだったし」
一体どういう席での話か、こういう場合なのにヒルダは思わず興味を抱いたがすぐに本題に話を戻そうとした。
「陛下、お言葉ですがそれは…」
「予は、彼とは違って実戦の経験に無惨なまでに欠けている。あなたに嫌われても不思議はないな」
ラインハルトはゆっくりとヒルダから離れた。
ヒルダを助け起こし、そっと手を放す。
「フロイライン、久しぶりにあなたの目を見て喋る事ができて嬉しかった。食事を続けてほしい」
450 :
フロイライン攻略 7
:2006/04/16(日) 06:35:33 ID:VHderuvD
ソファから立ち上がるラインハルトに、ヒルダは呼びかけた。
「陛下」
無言で振り向いた蒼氷色の視線にぎこちなく微笑む。
「もしお許しをいただけますなら、少しだけ私の言い分を聞いてはいただけませんでしょうか」
ラインハルトは迷うように黄金の頭を傾げたが、彼女の横に再び腰をおろした。
座り直し、ヒルダは躯の向きをほんの少しラインハルトに向けた。そういえば、目を見ることも避け気味だったような気がする。
ラインハルトの言は勘違いも甚だしいが、その内に見え隠れする真情はヒルダの不安をほぐすには充分だった。
「ロイエンタール元帥のお言葉ですが、それが真実かどうか、判じかねますから私には言及はできません。ですが、そのような理由で陛下を避けているわけではないのです。信じていただけますでしょうか」
「だが」
ラインハルトは唇をひき結んだ。その、どこかだだっ子じみた表情はヒルダがあまり見た事のないものだった。
「あなたは予を傷つけまいとしているかも知れぬ。それに事こういった現象に関しては、その道に詳しい者の言葉に重みがあるというものではないか。彼の見識を疑うなど、常に公平なフロイラインらしくはない。理由を」
「理由は」
詰め寄られたヒルダは少しく赤くなった。
「…よ、歓び、に至るまでには…あの、まだ、私の方が…未熟なのではないかと…思われるからですわ」
「………!」
ラインハルトの目が理解に煌めいた。頬が上気し、ヒルダに改めて向き直る。
「許してくれ、フロイライン。予は愚かだった。自らの技能ばかり気にしていてその可能性をすっかり忘れていた。すまぬ」
すっかり忘れていたのだそうだ。微笑ましいのか身勝手なのか、流石のヒルダにも判断がつかない。
「いいえ、これは私個人の問題で、陛下のみ心をお騒がせするような問題ではないのです」
「いや、フロイライン」
ラインハルトは彼にしかできない無意識の優雅さで眉を寄せた。
「それは違う。自分の都合であなたを手折ったのは予なのだから、問題があるとすれば改善の為介入すべき責任と、義務があろう」
ヒルダは一瞬実に複雑な表情になったが、ラインハルトは気付かなかった。
「それに」
皇帝は顔を逸らして呟いた。頬の上気が収まっていない。
「予は、その……あなたが許してくれるなら、介入したいのだ」
ヒルダの目が最大限に見開かれた。
ここに男女の間の機微に通じた人物がいて彼女の心を訪れた膨大な感情を分析したならば、報告書に費やされるべき字数の総量は朝刊一日分を軽く越えるに違いない。
だが彼女は何も言わず(正確には何も言えず)、皇帝の手がさまよってきて自分の手にまた重ねられるのをじっと見つめるのみである。身じろぎをしないままの躯の中に荒れ狂う嵐は、ヒルダが生まれて初めて味わう類の興奮を伴っていた。
ラインハルトがここにやってきたのも、自分が今身動きできないのも、おそらく同根の感情によるものであることが、理性の分析というよりも彼女の躯自身が本能として知っているようだった。
皇帝は彼女に会いたくて、そしてそれはヒルダも同じだったのだ。
ラインハルトが体重をかすかに傾け、重なった手を軽くひかれた。
促されるようにヒルダは顔をあげ、蒼氷色の視線に包まれている事を知るとぱっと赤くなり、整った顔を再びさげようとした。
顎を皇帝のもう片方の指が軽くはさみ、彼女の動きを妨げる。
ラインハルトの唇が自分の唇に触れるのを、ヒルダは目を閉じるのも忘れてみつめていた。
彼はわずかに離れ、ヒルダが固まっているのに気付くと表情の選択に困ったような微笑を浮かべた。
「予は、あなたに無理強いしているのだろうか」
ヒルダは急いで首を振った。それだけは違う。
ラインハルトの目が和らぎ、ヒルダは肩から背中に皇帝の腕が廻された事で自分たちがこれからの事に同意しあった事を悟った。
これは本当に自分の執務室で起こり得べき事なのだろうか──ゆるやかに押し倒されながら、ヒルダはラインハルトの胸に震えている手を添えた。
451 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/16(日) 06:37:16 ID:VHderuvD
今回は以上。
随分いろいろ忘れているから、呼び掛けとかなんとか、違和感あったらご指摘ヨロシコ。
452 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/16(日) 15:26:57 ID:mTuSTy53
ほんとにヒルダ祭りみたいな感じになってきたな最近。
ヒルダ好きな自分は嬉しいがv
フロイライン攻略つづき楽しみにしてます!
カイザーはやはり笑えるw
453 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/16(日) 15:42:05 ID:p2Zt2+fA
すごい。GJ
前回より筆が乗ってるよね。引き込まれます。
続き激しくきぼん
454 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/16(日) 16:55:17 ID:VHderuvD
>453
すまん、どなたへのメッセージだろう
俺、このスレに投下するの初めてなんだ
455 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/16(日) 16:57:41 ID:p2Zt2+fA
そうなのか!失礼しました
直前のヒルダ話と混同してたよ…
吊ってくる
456 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/16(日) 17:29:48 ID:IZKcF/RH
>>451
超GJ。
ラインハルトがかわいいよ。
原作の雰囲気もしっかり引き継いでるし、ドキドキしながら読んでしまった。
457 :
366
:2006/04/17(月) 00:31:25 ID:7eE7A5g7
ミッタ×ヒルダを企んでる>366です。レスついてるし。
バーミリオンのふいんきに萌えたのはいいが、エロに持ち込めるか非常に謎なんですが、何とかある程度形になったら投下させて頂きます。
どう見ても特殊カプです本当にありg(ry なので、投下する際には題名にカプ表記した上に鳥つけますね。
458 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/17(月) 13:58:06 ID:MVEHEyIg
原作じゃあの一夜と新婚旅行時と、他にヤッてる機会が伺えないんだよなorz
と思ってたが、ラインハルトが同盟領に行く前という期間があったか!
なんとも美味しい展開でこの後が楽しみ過ぎます!!>>攻略の人
459 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/17(月) 14:53:47 ID:Y9fuyH0e
新婚旅行中か〜やってたのかな?
攻略と疾風に激しく期待。
やっぱりハイネセンに到着したあとあたりになるのかな?
460 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/18(火) 01:04:45 ID:Nl3OxrmE
GJ!
……って何だか忘れられてそーだけどカリンひとりエチねたいきます。
話とびとびになんけどゆるしてね。(あまりエロくもない)
461 :
カリンひとりエチ
:2006/04/18(火) 01:05:56 ID:Nl3OxrmE
ダヤン・ハーンにおいて初めてユリアンを見たとき、カリンは「甘いマスクで女の子を騙し、遊んで捨てる」典型的な男だと確信した。
それが時の経つにつれ、「誠実で不器用な男の子」と変わっていったが、それを認めるのは、カリンの中の何ものかが拒否していた。
ヤン・ウェンリーの死後、カリンは悲しみを心の内にしまって立ちつづける青年を見つづけてきた。
それは、悪意を持てるものではなく、むしろ好意的にすら思っていたのだが、それを認識することが何を意味するのか、カリンには充分過ぎるほどわかっていて、その先にあるものを遠ざけたいために、感想は胸の奥深くに封じこめられた。
462 :
カリンひとりエチ
:2006/04/18(火) 01:06:47 ID:Nl3OxrmE
訓練を終え、自室にひきとると、カリンは華奢な身体をベッドに預けた。
それからおもむろにブラウスのボタンを外してゆき、キャミソールを強引に上にあげると胸を揉んだ。
今日はユリアンと少し口論になってしまったのだ。
発端は、本当にささやかな、ささやかすぎるものであったが。
「―――何なのよ!」
怒りに任せて胸を揉みあげ、あまりの痛さに眉をしかめる。
そっとブラジャーのボタンを外すと、小さいが形のよい胸が姿を現した。
桜の蕾を優しく愛撫する。
自爆なんてあほらしい真似は、もうすまい。
「本当にいらつく男なのよあいつは。
優等生ぶっててそのくせ不器用で、もう少しなんとかならないものなの……!」
早口に独語する。
頭の中は、亜麻色の髪の青年に怒気をぶつけることで埋め尽くされている。
手は、まるでそれ自体が意思を持っているかのように、ベルトを外して下着の中に入りこんでいた。
「今日だってそうよ。
まったくあいつは……ぅうん!」
自らによって与えられた快楽に、カリンは小さな悲鳴をあげた。
それと被さるようにして、インターホンが鳴り、カリンのよく知る声が話しかけてきた。
「カリン?
僕、ユリアンだけど、謝まりたいんだ。
入ってもいいかな」
……いいわけ無いじゃない。
心の中でカリンは呟き、それから慌てて服を直して口喧嘩に備えた。
463 :
カリンひとりエチ
:2006/04/18(火) 01:07:37 ID:Nl3OxrmE
「お父さん、お父さん!」
泣きながら、ユリアンにすがりついたとき、カリンは自分の中にあった男性という種への憎悪が蒸発してゆくのを感じた。涙に溶けだしてしまったのかもしれない。ユリアンとの接吻を、カリンが自然に受け入れられたのは、そのせいだったのだろうか。
ワルター・フォン・シェーンコップという、三つの赤によって彩られた男の死が、新たなる歴史を紡ぎだし、ひとつの未来を照らしあげた。それは暖かで、優しい家庭像。
464 :
カリンひとりエチ
:2006/04/18(火) 01:09:31 ID:Nl3OxrmE
本来ならば仇とも言えるラインハルト・フォン・ローエングラムの死は、喪失感をカリンに与えた。
それは、ユリアンの表現を借りるのならば、「この時代を生きたものとして」の感傷であったのかもしれない。摂政皇太后として、銀河帝国の頂点にたった女性の、頬を伝った一筋の光のあとを思うと、胸が痛んだ。
愛するものにおいていかれる悲痛は、この時代を過ごした全ての人々が唯一共有できる感情であっただろう。
「星が落ちたよ、カリン」
ふたりの間を、風が吹き抜けてゆく。
ひとつの時代の終焉を、彼らは目の当たりにしたのだ。
黄金樹を焼き尽くして、その灰の中から新たに芽吹いた木々は銀河を覆い、緑の森をつくりあげた。
残された共和主義者たちは、その緑の森が腐り、人々を害そうとしたときのために、民主主義の理想を守り、後世に伝えなければならない。
カーテローゼ・フォン・クロイツェルはそっとユリアン・ミンツの横顔を見上げる。歴史作家として新たなる一歩を踏み出そうとする青年の肖像が、そこにはあった。……
465 :
カリンひとりエチ
:2006/04/18(火) 01:10:09 ID:Nl3OxrmE
カリンはその夜、確信した。自分がユリアン・ミンツを愛しているということを。そして、拳を握り締めて叫んだ。
「よし! これでユリアンをおかずにひとりエッチできるわ!」
「……いやふつーに僕とやってほしいんですけど」というユリアンの願望(つっこみ)は、カリンには届かなかったらしく、若き歴史作家はその後一年ほどお預けをくらうことになる……。
466 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/18(火) 02:49:55 ID:7xIY6ltz
カリンの続きキタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━ !!!
すげーGJ!忘れてなんかいませんよ!待っておりました。なんかすごくカリンっぽくて良かったです。そして最後に笑わせていただきました。一年もおあずけ!可哀相に(´Д`;)
漏れ的に
>>462
の後にそのまま始まっても良かったけどこれはこれでイイ!作者さん乙です!
一年後の話とかあったらまた読みたいです。
ヒルダ祭りといいこのスレが活気づいて嬉しい(´∀`)
467 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/18(火) 04:07:50 ID:A8TKyds2
同じく最後でたのしく笑わせてもらたーGJ!
…うん、なんかすげカリンぽいかもよ(笑
468 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/18(火) 08:05:51 ID:JjGOYgZt
最後のとこ、カリン→「イヤッホオォウ」の八頭身、ユリアン→1さんのAAで
想像してハゲワロスww
469 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/18(火) 20:54:58 ID:A8TKyds2
>>468
ちょおまw
それはそうと
>>466
同意 もしあったら、一年後も読みたい
えーと、脳内で祭りがとまらないので後編を急いで書き上げたんだよ
勢いでどーんと投下
470 :
フロイライン攻略 8
:2006/04/18(火) 20:55:49 ID:A8TKyds2
***
頬に、瞼に、黄金色の長めの髪が触れている。
「フロイライン・マリーンドルフ」
色気のない普段通りの呼びかけに伏せていた睫をあげると、ラインハルトが上気した顔で見つめていた。
蒼氷色の瞳に映り込んでいる自分の顔を認め、ヒルダは魅入られように微笑した。
ラインハルトの唇に呼応した微笑が浮かび、重みで負担をかけぬよう彼は肘をつきながらヒルダを座面に横たえた。
接客用の大きめのものとはいえソファはソファである。
狭苦しく不自由な体勢で縮まった距離に、双方ともに互いの少々倒錯めいた興奮を感じ取った。
「…嫌なら、今のうちに言ってほしい」
指先の温もりがヒルダの硬質の唇の輪郭をかすめて撫ではじめ、ヒルダは羞じらいをこらえながら、ラインハルトの指先が縁を越えて内側に入り込むのを許した。
ヒルダの唇を柔らかく摘んで揺らし、ラインハルトは彼女が厭がらないことを自分なりに納得したのか、ぐいと顔を近づけた。
午後遅くの光が窓全体からやや斜めに差し込み、執務室全体をどことなく現実離れした明るさに染め上げている。
再び接吻を受けながらヒルダは腕をあげ、頬を刺す黄金の髪に遠慮がちに掌を添えようと──して、口腔の刺激に注意をとらわれた。舌がヒルダの唇の内側に入り込み、滑らかな歯の表面を確かめるように撫でている。
確認されるのが恥ずかしくなって逃れるように顎を開くと、ラインハルトは遠慮の気配を見せず、さらに内部へと入り込んで来た。
豪奢な髪の流れを彼の額から掻き揚げるようにヒルダは掌を滑らせ、反射的に押しやろうとした。
軽くではあるが呼吸が苦しくなったせいもある。
押されるままに皇帝は顔をあげ、ヒルダの唇からわずかに離れた。
拒絶の仕草を見せてしまった事にヒルダは気付いたが、ラインハルトは怒りを覚えてはいないようだった。
どうやら彼の胸の内で迷いの時はすっかり終わりを告げたらしい。
蒼氷色の瞳をやや細めて息のあがっている彼女を眺め、彼は今度はかなりの力でヒルダに胸を押し付けて来た。
背に廻された腕に力がこもるのがわかり、ヒルダはほっそりとした躯をくねらせた。
その動き自体には特に意味はないのだが、ラインハルトはヒルダが身をよじるとますます強く抱きしめてくる。
「ダメだ。逃げる事は許さない、フロイライン」
「は、…あ…っ…」
すでに一度抱かれてはいても、酒の気配のないラインハルトに気合いを入れて取り組まれるのは当然ながらに初めてのヒルダは、その意思の強さと発散される雄の迫力を感じて一瞬怖じ気づいた。
締め上げてくる腕の環が彼女の躯を絡めとって身じろぎもできない。
「陛下、…逃げはいたしません、あの、く、苦し…!」
「あ」
耳元でラインハルトが呟いた。苦痛の声に、一瞬正気に戻ったようである。
急いで腕の力を緩め、彼はヒルダの顔を覗き込んだ。
「すまない。大丈夫か」
「は、はい」
ヒルダは息を整えながらおそるおそる、乱れた皇帝の髪を撫でた。さっき、抗う爪先で思い切り引っ張ったような気がする。
皇帝はそれに気付き、温かな微笑を漏らした。
「あなたの力程度ではそう痛くはない。フロイラインは心配性だな」
「お許し、くださいませ」
471 :
フロイライン攻略 9
:2006/04/18(火) 20:56:54 ID:A8TKyds2
自分たちが状況と乖離した的外れな会話を交わしている事にこの男女は気付いていない。
このごに及んでフロイライン呼ばわりをしているラインハルトもラインハルト、それに気付きもしないヒルダもヒルダである。
ラインハルトは額から垂れ下がっている自分の髪の先端を眺め、呟いた。
「もういい加減、長過ぎるのだ。そろそろ切ったほうがいいと今朝もエミールに言われた。わかってはいるのだが面倒で」
「陛下はご多忙でいらっしゃいますから、無理もないのではないでしょうか」
言い添えるヒルダのくすんだ輝きの金髪にラインハルトは指先を潜らせた。
「だが、そう言うあなたは忙しくてもいつも身綺麗にしているような気がする。心がけの問題だろう」
そのままヒルダの短い髪に顔を埋め、ラインハルトは呟いた。
「林檎」
ヒルダは頬を赤らめた。
「いや、なんといったかな…」
呟きはやんだ。
こめかみから頬にかけて唇を押し付けられ、ヒルダは居心地悪く反対の側に首を巡らせた。
視界の隅を鮮やかな色の布が流れる。
喉が空気に触れた頼りない気配に、襟元のスカーフを抜き取られた事に気付いた。
てきぱきとした作業過程である。敵、ではなかった、皇帝陛下の士気は高水準で維持されているようだ。
ヒルダは突如、自分の目の前に立ちふさがり至急の決断を迫っている分水嶺を発見した。
微妙に分かれて二方向。
ひとつは、まだ馴れておりませんどうか無作法をお許しください的遠慮勝ちにラインハルトの好き勝手にさせる側。
もうひとつは、二度目でもありますしできる限り協力させていただきます的開き直りでラインハルトのし放題にさせる側。
ヒルダがどちらを選んでも皇帝大満悦という結果に流れ込む点では同じだが、彼の心に与える印象は随分変わってくるに違いない。
(無理矢理ではなく)征服される側としてはなかなかに頭の痛い心構えの問題である。
最初の夜は悩む暇などなく、ただひたすらラインハルトに寄り添っているだけで精一杯だった。
してみると彼女にも、二度目の余裕が生まれているのかもしれない。
だがどちらの側を選んだとて、自分がその選択を厳守できるかどうか、ヒルダには自信が持てなかった。
ヒルダが悩んでいる間にも、黄金の獅子は彼の美しい花を愛でていた。
スカーフに隠れていた透き通るようなと形容するに相応しい柔肌に視線を止め、唇で輪郭を確認する。
舌越しに喉が震えている。
彼女がくすぐったげにおさえた喘ぎを漏らすとラインハルトの接吻は熱意の度を増した。
ヒルダの躯つきは優美ですんなりしたものであり、腕にはまりこむとまことに抱き心地がいい。
中性的な、美貌の少年めいた雰囲気を持つ彼女だが、こうして味わう躯の熱や柔らかさは男としてのラインハルトの欲望を刺激する。
大本営幕僚総監として、あるいは知的に対等な得難い相談相手としての彼女の半面はこの時ばかりはラインハルトの認識からどこか遠く離れた場所に滑り失せていた。
皇帝という立場にありながらラインハルトは、女関係での潔癖さにかけては原因はともかく結果的には同類の故ヤン・ウェンリー元帥と同じ位置に佇んでいたのだが、どうやらそれは適当な相手が身近に現れなかっただけということになりそうだった。
かといって、ヒルダが特殊な性的魅力を持ち合わせていたというわけでもない。
たまたま(あるとすれば)彼の好みに合致したのであろう。
472 :
フロイライン攻略 10
:2006/04/18(火) 20:57:40 ID:A8TKyds2
だがそんな後世の歴史家のややいかがわしげな考察は、好ましい女性を腕に抱き、先を急ぐ若者には関係のない事だった。
ラインハルトは顔をあげた。彼女の軍服の襟に手を滑らせた。
ヒルダはブルーグリーンの瞳を見開いて喘ぎつつ、どう反応すればよいのか未だに決めかねて迷ったように彼を見上げている。
その清楚に染まった美貌に誘われて、ラインハルトは唇の端に微笑になりかける寸前の表情を刻んだ。
フロイライン・マリーンドルフは可愛い。
その感慨をとりあえず胸の奥に畳み込む。
今は彼女を感じたいだけだ、好ましい理由についてくどくどと考えている暇はない。
あの夜とは違った熱が頭の奥に火照り、それが酒精どころではない酔いで彼を彼女に惹き付けている。
いかに構造を熟知していようが、他人の衣服は脱がしにくいものである。
ラインハルトが手間取っているのを察知したヒルダが、ためらいながらも繊細な指をその傍らに置いた。
協力しながら襟をくつろげ、少しずつ上着をはだけていく。
前がすっかり開いてしまうとラインハルトは彼女の指に指を絡ませて空中にのばした。
ソファから床までの空間に腕が重なって揺れ、もう片方の腕が背中を持ち上げるのをヒルダは感じた。
不安定な体勢を自力で維持するのは無理なのでラインハルトに任せると、彼は持ち上げたヒルダの肩から上着の袖を、ややもたつきながら抜き取った。
もう片方は背もたれのせいでもっと難しかったが、ラインハルトはやり遂げた。
ヒルダはその間手持ち無沙汰でもあり、やはり明るい場所が恥ずかしいのか長い睫をぴっちり閉じてしまっている。
思い出したように皇帝はその頬に接吻し、訊ねた。
「予も脱いだ方がいいと思うのだが、フロイラインはどう思う?」
瞼が揺れ、綺麗な色の瞳が現れた。
湖みたいな色だな、と皇帝はまた胸の奥に独創性には欠けるが真情のこもった感慨の切れ端を蓄えた。
ヒルダは紅潮したままの頬をラインハルトの唇に委ねながら小さな声で囁いた。
「陛下が、そうなさりたいのでしたら」
ラインハルトは頷くと、ヒルダの手をとった。襟に彼女の指をあてるとヒルダは理解し、協力作業を再開する。
その間にもラインハルトはヒルダのベルトを外し、さっさと緩めてズボンを引き下ろしてしまった。
この場合、彼女が男のような格好をしているのは彼にとって実に好都合である。
もし女の格好をしていたら、構造自体はともかく違和感にとまどって、かかった時間は倍どころではなかっただろう。
華麗な黒と銀の軍服の上下が床の絨毯に滑り落ち、彼女のそれと重なった。
ブラウスの生地がまとわりついたヒルダの細い躯に腕をまわすとラインハルトは動きやすくなった肩に彼女を引き寄せた。ヒルダの腕が背中に廻されたので満足し、膝をそっと押し上げて互いの脚を絡めていく。
自分でも知らぬ幼児性を持ち合わせているのか、皇帝陛下はとりあえず彼女にもっとくっつきたいのである。
密着すればするほどヒルダの躯はあたたかく、柔らかく思えて彼は自分でも驚いた事に非常に幸せな気持ちになった。
ブラウスの生地は上質であるがゆえにいささかひんやりと冷たいが、それも互いの体温で挟まれているとすぐに感触だけの存在になった。
その裾から手を差し入れてみるとヒルダの頬の色が濃くなった。
だが、彼女はじっと息をひそめてラインハルトを見上げている。
その縋るような目に頷き──どういう意味で頷いているのか、実は自分でもわかっていない──彼はブラウスとは比べ物にならない、しっとりと心地よい肌に掌を這わせた。
なめらかで遮るもののない柔肌は掌に染み通るような熱を抱いており、あちこちを探るとヒルダの唇から呼気のかたまりが少しずつ漏れる。さらに掌をおしあげ、彼は下着の存在に気がついた。
指で探るとレースらしき防御物で彼女の胸のかなりの部分が覆われている。
ラインハルトの、画家が描いたようにかたちのいい眉が顰められた。
473 :
フロイライン攻略 11
:2006/04/18(火) 20:58:40 ID:A8TKyds2
…わからない。前回、どうやって外しただろう。
ヒルダはラインハルトの困惑に気付かなかった。じりじりと太腿を押し広げられている脚のほうも気になるし、胸のあたりを這っていた手が急に動きをとめたのも休息が与えられたような気がしてほっとした程である。
だから、いきなりブラジャーの裾をくぐって彼の指が直に肌にめりこんできたので仰天した。
いくらヒルダがほっそりしているといっても躯にぴったりあった下着なのである。
そんな事をされれば痛いに決まっている。肩を竦め、ヒルダはラインハルトに視線をやった。
皇帝はしばらく指を動かしていたが、やがて癇癪をおこしたようにぐいと指の関節にひっかけて邪魔なブラをずりあげてしまった。
外せないのだわ、とヒルダは思い、こんな場合なのにそれがどうしようもなく可笑しくてラインハルトが愛しくなる。
急いで背中を浮かせてホックをゆるめようとするが、長身の彼の重みでうまくいかない。
「陛下」
ヒルダは囁こうとしたが、ラインハルトが頭をさげたので耳には届かなかったらしかった。
あらわになった淡い色の頂点に唇を感じ取り、ヒルダは協力を諦めた。
どうやらラインハルトは焦れているらしいと悟ったのもあるが、ヒルダにしてもいろいろ照れくさくてやりきれないのだ。
それに、すぐそんなささいな違和感は消えてしまった。
ラインハルトの唇が片方の乳房の先端に触れたあと、さまようように移動を繰り返し始めた。
ヒルダの胸は豊かというわけではないが、それでも細身なりにそれなりの質量を備えている。
柔らかく沈みこむような肌で形作られた重みも張りも充実しており、ラインハルトはその甘やかな感触にそっと顔を埋めながらもしみじみと思った。
(うむ。フロイラインは、まぎれもなく女性なのだな)
特に名は秘すが(秘さずとも丸判りだが)その武勇のみならず女性達との豊富な交流の数々でも名を馳せている元『薔薇の騎士』連隊長あたりが知れば不逞の仲間とともに床を蹴り付け腹を抱えて吼え笑いまじき感慨である。
だがこれでもこの、軍政覇道に著しく偏った人生を歩んで来た皇帝にしてみれば強い感動を伴った真摯な想いなのだ。
人生いろいろ、男もいろいろ、他者がどうのこうのとコメントを付け加えるべき問題ではなかろう。
***
人生いろいろ女もいろいろ、愛撫されている当のヒルダにしてみても皇帝を笑い者にできるほどの経験など生憎薬にしたくとも持ち合わせてはいなかった。
なにせ交渉相手は『この』ラインハルトだけ。
しかも前回彼は酔っぱらっていた上に深刻に救いを求めていたのである。
当然彼女も必死でラインハルトを『慰める』事だけで精一杯、快楽追求など有り得ない状況だったのだ。
だが今回は双方ともにそれとは全然別の状況だということが、彼女にはわかっていた。
ラインハルトはどうやらヒルダとこうしている事を『愉しんで』いるように見える。
さきほどからまごついているだけだったヒルダは、ラインハルトが乳房の輪郭を撫で、唇で啄みはじめるとついに腹を括った。
どこをどうすれば男性の気に入るのかさっぱりわからないが、現に彼はヒルダの躯に没頭している。
余計な気は使わなくてもいいのだ、そうなのだ。
媚びを厭い、これまで己の犀利な知性のみを武器として生きてきた彼女はまがりなりにもそう結論づけ、次の瞬間美しい唇のかたちを歪めた。
「あ、…はぁ、ん…んっ…?」
誰の口から出たはしたない喘ぎかと聞かぬふりで無視したくなったが、それはできなかった。
自分だ。甘くて頼りなくて常にはない色気を帯びている。
ヒルダはまだしっかり頭の片隅に残っている理性を総動員させて唇を閉ざした。
濡れた熱い感触が敏感な先端を覆っている。ラインハルトが口で覆って軽く吸っているらしい。
とてもその光景を視界にいれることができず、ヒルダは喉を仰向けて吐息を逃した。
ラインハルトが吸うたびに、自然と躯がびくびくと動く。
熱が離れたかと思うともう一方の頂きが襲われてヒルダは呻いた。
しっかりと歯を噛み締めてこらえていると、顔をあげた皇帝が囁いてきた。
「フロイライン」
「は、あ……は…い、へいか…」
くっきりとした返答ができなかった。ふちが蕩けてぼやけたような声で彼女は応え、ラインハルトが量るように乳房の重みを掌で持ち上げるとさらに溢れそうになる甘い声を押し殺した。
474 :
フロイライン攻略 12
:2006/04/18(火) 20:59:27 ID:A8TKyds2
「手を」
ラインハルトの首に廻していた腕をひかれ、ヒルダはようやく睫をあげた。
柔らかな重量に触れ、それが自分の乳房である事に気付いてけげんな顔をする。
ラインハルトはヒルダの繊細な指を掴むと、唾液でつやつやと濡れている彼女の乳首に誘導した。
確認させようと、ヒルダの指もろとも乳房の先端を摘む。
「ほら、こんなになった。綺麗で、可愛らしいかたちだ」
「……っ…」
びくん、とヒルダの躯がはねた。
鼓膜をくすぐるような声で彼女は啼き、喘ぎながら首を振った。
大きな掌の熱に包まれ、はるかに細く感じる自分の指先で敏感な芯を擦るなど、これまで想像もしたことのない強い快楽だった。
「あ……あ、いや…」
ラインハルトの得意げな表情に不審が滲んだ。
「いや?」
「お赦しください。いや、いやでございます…」
「綺麗なのに」
残念そうに呟いて、ラインハルトはそっとヒルダの指を放した。
だが彼女が急いで腕を戻しても機嫌を損ねた様子はなく、気を取り直したように掌を滑らせてくびれた胴を掴んだ。
胸が密着して見上げて来たヒルダの唇に、彼は唇を押し付けた。
「ん…」
すぐに舌が入ってきてヒルダは対応を余儀なくされた。
とはいっても大した対応をせずともラインハルトの舌は喜び勇んで彼女の内部を確認して回っている。
なんだか性急な動きだったから、ヒルダにも皇帝の興奮と期待がそのままつぶさに伝わってくる。
ヒルダは唇をさしだしながら、金髪の覇王の首から背中に掌をずらした。
引き寄せるように力をこめると、ラインハルトがうっすらと目を開いた。
いつもは鋭い蒼光色の瞳がけむったように和らいでいて、彼はその光に微量の了解を混ぜるとヒルダの背に再び片方の腕を廻した。
互いに好ましく思っている人間同士が仲良くくっついているのは、基本的に愉しい事なのである。
それが男女なら言わずもがな。
さっきからラインハルトがもう片方の掌で彼女の太腿の輪郭を撫でている事をヒルダは知っていたが、その力が強くなってきている。
肌を撫でながら時折ぐいと内側に親指をかけるようにしているので、どうしたいのかがあまりにも明白だ。
ヒルダはちょっと躊躇したが、少しずつ膝を緩めた。
たぶん今皇帝と彼女が行っているのはいわゆる『前戯』というものなのだろうが、どの程度で切り上げてもいいものか、おそらくラインハルトにはわからないのだろう。ヒルダも同様ではあるが。
その証拠にラインハルトは、しばらくヒルダの膝が緩んだ事に気付かなかった。
深い接吻が何度か繰り返され、彼女が新鮮な空気を求めて喉をそらしたので顔を離した彼のけむったような目がふいに輝いた。
整ってはいるが今は染まりきった顔に視線を投げ、彼女が伏せた目にぎこちない羞らいを含ませるとラインハルトは頷いた。
急いで腿を割る掌の動きはそれでも優しさを感じさせるものだったから、ヒルダの心遣いは報われたといってもいい。
挟み込んだラインハルトの腰は、いくらすらりとしていてもやはり男性だからきっちりと横幅がある。
締め付けぬよう精一杯腿を開こうとして、今の自分たちの体勢に随分無理がある事にヒルダは気付いた。
いや、体勢自体はこの種の行為には最も一般的とされるものなのだが、問題は場所にあった。
てっとりばやく言えば、ソファの背もたれが邪魔なのだ。
だがヒルダの当惑は短くて済んだ。皇帝自らが解決にのりだしたのだ。
ラインハルトはヒルダの脹ら脛を優雅に掴むと、そっとソファの背もたれにかけるようにして排除した。
そのごく自然な対処にヒルダは思わず賞賛を禁じ得なかったが、ただ、問題が解決してみるとこの姿勢は恥ずかしいどころの騒ぎではない。
皇帝の躯の下にいるからそれほど露ではないが、大股開きと称されるポーズに間違いはない。
そうと知った美貌の伯爵令嬢は真っ赤になったが、ラインハルトのほうは一向に動じた様子はなかった。
極めて珍しい調子を声に含ませて皇帝は彼女に呼びかけた。機嫌をとるような響きである。
475 :
フロイライン攻略 13
:2006/04/18(火) 21:00:15 ID:A8TKyds2
「フロイライン…」
そのまましばらく、狭苦しい体勢で鑑賞している様子なのでヒルダはついに叫んだ。
「陛下、どうかご覧にならないでくださいまし」
「…ああ」
夢から醒めたようにラインハルトは呟き、視線をヒルダのやわらかくひきしまった下腹部のあたりから持ち上げた。
「大丈夫。この姿勢では、あまりよくは見えない」
一瞬、自殺でもしかねない表情になったらしい。ラインハルトは慌てたそぶりで伯爵令嬢を引き寄せた。
舌打ち寸前の低い声で彼は呟いた。
「すまない。おれ、いや…予は失態ばかりしているな」
ヒルダは吐息をつき、ラインハルトに引き寄せられるままにしがみつく。
豪奢な髪が伝わる鼓動にあわせて目の前で揺れる。
ヒルダは溶けた黄金のようなその髪に指をくぐらせた。
至尊の冠を戴く男に対して畏れ多い振る舞いではあるのだが、どうしようもなく不器用なこの若者が無性に好ましいのはその特別な身分のせいではないのだからこの場合ばかりは許されるだろうと思う。
ラインハルトはヒルダにしがみつかれた感触をしばらく味わっている様子を見せたが、やがて彼女の腕を掴むと距離をおいた。背に廻されていた彼の掌がおりてゆき、やがて小さめの尻に落ち着いた。
さしこんだ掌で腰を軽く持ち上げられ、ヒルダの背に緊張が走る。
だがここまでくると今更どうのこうのうろたえられる状況でもない。彼女は余計な力を抜こうと試みた。
狭い入り口に熱い肉が触れる。
その感覚にヒルダが身をこわばらせる間を置かず、ラインハルトは先端を突き立てるように押し入ってきた。
声をあげず、ヒルダのやわらかい背がかるくのけぞった。
二度目だからとどこか楽観視していたのだが、やはり興奮した状態の男を楽に受け入れるにはまだ彼女の躯はこの行為に馴染んではいないのだ。
それでも、ラインハルトの侵入が乱暴ではないので彼女はすぐに我に返った。
目をあけると、気遣わし気に上気した顔で、皇帝が様子を眺めている。
ヒルダは頸をふり、頬にかかった短いくすんだ金髪を払った。
ラインハルトの肩に改めて掌を置き、自分から腰を押し付けるようにして控えめに次の行動を促した。
豪奢な金髪の若者はヒルダの躯を抱えなおし、侵入を再開した。
それがとてもゆるやかなので、きっと相当に気を遣ってくれているのだとわかった彼女の胸は熱くなった。
時間をかけてすっかり躯を密着し終えると、ラインハルトはヒルダの胸に黄金色の頭を落として軽い吐息をついた。
「…フロイライン」
声が胸郭に響く。
「心地いい」
美しい頭を抱きながら、ヒルダもそう思った。
馴れぬ肉を開かれた瞬間はともかく今は痛みはさほどではなく、それよりも全世界の誰よりも身近にこの若者を感じている現実に、頭がくらくらするほどの喜びを感じていた。
この喜びのためならば、どんな事でも耐えられる、かもしれない。
だから、ラインハルトが上体を起こし、貪るようなキスをはじめてもヒルダはもうなにも怖くはなかった。
唇を挟みあい、唾液を吸われながら彼が動き始めたのがわかった。
重く脈打つ違和感よりもその情熱的な速度のほうが今のヒルダには重要で、彼女は若者の躯をかき抱いた。
ただもうラインハルトが愛しく、彼に自分をそっくり与えることができるのが嬉しく、ヒルダは昂る熱のまま甘い声をあげはじめた。
その声の質をもはや恥ずかしいとは思わなかった。
ラインハルトが繰り返しおしあげるたびに革張りのソファとヒルダの汗ばんだ肌が異議をとなえて奇妙な音をたてていたが、双方ともに夢中になっていて気付きもしない。
突かれるごとにヒルダの思考が輪郭を失い、白く漂されていく。
自分がなくなってしまう恐怖は、だがこの場合ひどく甘美なものだった。
476 :
フロイライン攻略 14
:2006/04/18(火) 21:01:16 ID:A8TKyds2
普段の二人を考えると確かに常軌を逸していたこのひとときは、だが実際にはそれほど長い時間でもなかった。
ヒルダを労るあまり精一杯慎重に事をすすめてきたので、たがが弾けてみると一直線に疾走するしかなかったのだろう。やがてラインハルトは小さく呻き、美しい伯爵令嬢の腰を力任せに抱き寄せた。
いつのまにかソファから離れ、ラインハルトの腰に巻き付き、動きにあわせてぎこちなく揺れてたヒルダのすんなりした脚が震えた。
奥深くまで彼を呑みこんだ躯の芯が限界を越え、彼女はラインハルトの耳朶に頼りな気な啼き声を漏らすと体中の力を抜いて、くたくたとその腕に沈んだ。
最後の力で彼女を抱き直してその胎内に滾りを叩き付け、ラインハルトも優しい躯の上に崩れ落ちた。
***
身支度を手伝わねば、と起き上がろうとするがどうにも力が入らない様子のヒルダを制止して剥き出しのままの肩にひとつ接吻を落とし、ラインハルトは躯を起こした。
怠い。
いつの間にやら午後の陽射しはごく低い角度に変わり、室内に夕刻と呼んでもいい雰囲気を醸し出していた。
この後の予定は何だったろうと彼は考え、思い当たると、かなり乱れた豪奢な金髪を振った。
「…今夜は確か、お出かけのご予定がおありでは?」
ヒルダの声がしてラインハルトは振り向いた。
彼女が首席秘書官だった時分にはラインハルトの行動予定は全てその管理下にあった事を思い出し、彼は頬に微笑を刻んだ。
「ああ、今夜は舞台を…古典のバレエだったかな」
潤いを帯びたブルーグリーンの目が見開かれるのを、皇帝は少し楽しむような気分で眺めた。
「古典バレエ…ですか?」
非礼を忘れて訊ねてくるその驚きようがおかしくて声をたてて笑う。
「うむ。ビッテンフェルトと一緒に」
今度こそヒルダが呆然としたので、成功したいたずらを誇るこどもに似た表情を見せた若い皇帝は、ソファの傍らに立った。
ヒルダを助け起こし、それぞれ身支度を整えながら、ラインハルトはどうしようもなく塞いでいた胸の鬱屈がかなりのところまで吹き飛んでいるのを感じ取り、頷いた。
逢いに来たのは正解だった。
最初は話し合いのつもりで来たような気もするが、まあいいだろう。
フロイライン・マリーンドルフは先日の件を根に持ってはいないし、5メートル以内に近づける事もわかったし、求婚を受け入れてくれるかどうかは不明だが少なくともさっきの反応を見る限りでは希望が持てそうな雲行きである。
もうしばらく待つことに決め、ラインハルトはヒルダを見つめた。
「フロイライン」
なんとか見苦しくない程度に身支度を終えた彼女は、幕僚総監という要職には相応しくない表情で皇帝を見返した。
「はい、陛下」
「ありがとう」
ヒルダは赤くなり、俯いた。
それ以上の言葉はやめたラインハルトの脳裏に、ふと、いつもひたむきな少年の顔が浮かんだ。
477 :
フロイライン攻略 15
:2006/04/18(火) 21:02:10 ID:A8TKyds2
「…伝言を預かっているのだ。エミールが、フロイラインに今度ぜひお茶の時間に来て欲しい、と」
ヒルダは頸を傾げた。
「エミールが、ですか?」
「そう。エミールが」
ラインハルトの蒼氷色の瞳には苛烈さだけでない活き活きした光が宿っていて、ヒルダはわずかの間、見蕩れた。
「予の居間を提供するように頼まれている」
「………」
彼女はゆっくりと唇をほころばせた。ますます、幕僚総監には見えなかった。
「ぜひ伺うと、お伝えくださいまし」
「良かった。エミールが喜ぶ」
***
皇帝ラインハルトのすらりとした長身が幕僚総監の執務室の扉から現れた。
外の柱の傍には影のようにキスリング准将が控えており大本営の中心部にも関わらず周辺の廊下には人の気配が絶えていたが、黄金の獅子は一向構わず(気付かず)、自信と精彩に満ちた足取りで自分の部屋へと歩いていった。
皇帝とフロイライン・マリーンドルフの間柄に自分が果たした役割をエミール・ゼッレ少年が知る事は決してなかったが、知ったとすれば非常に喜んだことだろう。
おわり
478 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/18(火) 21:03:00 ID:A8TKyds2
以上です
読んでくれた人ありがとう
では元通りロムに以下略。おやすみー
479 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/18(火) 21:06:24 ID:2QlMwzo1
GJ!!
480 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/18(火) 21:09:33 ID:EtDA89WQ
リアルタイムで見せていただきました!
GJとしか言いようがありませぬな
陛下可愛いよヒルダタソ可愛いよ
そしてエミールとキスリングにも密かにGJをw
481 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/18(火) 21:59:57 ID:fTRdVqkq
GJGJGJ!!
初々しい二人が本当に可愛い。
お互いを気遣いあってるのも妙にほのぼのしてて良かったよ。
482 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/18(火) 22:08:31 ID:p+arcnzz
GJです!
ドキドキ。ヒルダかわいい。
483 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/18(火) 22:39:47 ID:Nl3OxrmE
作者さん乙! そしてエミール少年GJ!! ついでに林檎の香にもGJ!
キスリング准将はいいひとだなぁw
・・・・・にしても最近アニメでハルとヒルダのツーショット見るとどきどき&笑えてきてしょーがない。
484 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/19(水) 02:19:41 ID:03wRVIWo
ヒルダバンザーーーーーヽ(´∀`)ノーーーイ!!作者さん乙!ヒルダも陛下もかわいかったよ 萌えをありがとう!またやる気が出たら描いてください ロムにしとくにはもったいない
話変わりすぎだが、なんか久々に検索してみたら吟詠のノマカプで18禁アンソロが出るみたいなこと書いてあったけどマジですか(´Д`;)ハァハァ 野郎にも売ってくれるかな?
485 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/19(水) 14:45:18 ID:fiet4sXd
金さえ払えば売ってくれるものと期待したい。
486 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/19(水) 19:01:48 ID:+vmRJxxw
ヒルダたんはかわゆいな(´Д`;)ハァハァ
487 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/19(水) 19:14:06 ID:kw4ci2Ti
>486 同意ヒルダたん萌え
普通に考えたらラインハルトって貧乏な出だったから
れっきとした伯爵令嬢のヒルダたんとどうのこうのなんて
ゴールデンバウム王朝時代にはあり得なかったんだよな
下克上して良かったなぁおい
488 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/19(水) 20:50:14 ID:McmF0PMZ
遅ればせながら作者氏GJ。
エロの描写も良かったけど地の文の心情描写の
笑いを誘う比喩が最高でした。分水嶺最高。
489 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/19(水) 23:29:05 ID:GQzKTpvN
この場合、キスリングGJ!!だな(W
490 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/20(木) 09:38:45 ID:TueYMbqX
>>489
台詞なしで最初と最後にちらっと出てくるだけなのにな。
確かにGJw
キスリングにはぜひ回顧録書いてほしいが、口が固そうだ。
491 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/20(木) 11:35:26 ID:jziQOgEo
不慣れな二人がテラカワユス
文章も上手で楽しませてもらったよ!
作者たんGJ!
何か思いついたらまたぜひ読ませてください。
492 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/20(木) 13:45:26 ID:sBpAvtuN
ヒルダ神さま方乙です!
祭りに便乗して白状しちまうとエミール×ヒルダたんで妄想してしまったことがある・・・・
やはりショタになるのだろーか
493 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/20(木) 23:29:50 ID:qaPEB9pV
ちょ、一寸待って?ヒルダはいつパンツを脱いだ?
紐パン?それともずらして?まさか穴あ…(ガッ
なんにせよとてもとてもgjな二人でした。
ぜひとも、また書いて投下してください。おながいします。
494 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/20(木) 23:56:05 ID:AOWmRZBT
某作品群をいつも拝見してますがまさか銀英を書かれるとは!
ブログ見て驚いてます神よ
艶やかな文体を銀英でも拝めるとは思ってもみなかったですありがとう
乙でした
495 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/21(金) 02:17:18 ID:2x6d7W34
む。やっぱり姉弟妹妹のシリーズの人だったのか?
ガイエ好きだったというのは嬉しいな。
496 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/21(金) 02:31:11 ID:p9wosEVM
神GJ!
カイザー激ワロスwwww
>>484
多分あそこのサイトのノマカプアンソロだろうけど、普通に売ってくれるだろ。
あそこは以前にも同人出す企画があったような。出していたのかな?
497 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/21(金) 22:57:38 ID:3oJxI1RM
エミールとキスリングは表の功労者、裏功労者はぢつはロイエンタールだったり
しないか?(w
498 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/22(土) 04:22:02 ID:tQQfJJ2T
>>496
18禁じゃないノーマルカップルアンソロのことだったら出してたよ。
しかし・・・買ったけどさ。なんかもう痛々しくて読み返すのも辛かった。
文もあまりうまい人はいないが、何より絵がへたくそすぎて正視できない。
だから今回も期待薄。
499 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/22(土) 20:24:52 ID:bSteMkjX
始茉理で軽いの書きたいんだが、竜堂家の構造がわからない…orz
500 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/22(土) 22:25:11 ID:XuFjLw2g
同人話は同人板でやってくれ
>>492
エミールってヒルダの従弟のハインリッヒよりちょっと年下くらい?だったらショタまでは
いかないんじゃ?
年上のお姉さまに憧れる少年というシチュイイ!と思うv
501 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/23(日) 02:20:42 ID:0QyahWwN
それもいいが、ラインハルトが死没して数年後、皇帝が密やかにエミールにあてた遺言に従い
皇后陛下をお慰めさしあげる、なんてシチュでもいいな。
戸惑うヒルダに対しても、皇帝への忠誠心を優先って感じで。
502 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/23(日) 03:02:19 ID:LSgYWE6f
SOREDA!!
503 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/23(日) 04:25:38 ID:k0UIxENi
ヒルダ同盟軍兵士に林姦!これでいこう!
504 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/23(日) 05:17:53 ID:G6UcdKTr
一瞬、エヴァ×エルフリーデの百合ってどうよとか考えた。
…お前の脳の方がどうよ。
505 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/23(日) 05:40:23 ID:/Jsg/Cwu
>500
たしかフレデリカとユリアンくらいの
年齢差だったと記憶している
>ヒルダとエミール
506 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/23(日) 08:36:27 ID:QM0QRjmC
>>503
お前…毎回これでいこう!ばっかりで済ませてしかもageる奴だろ?
陵辱プレイが心底お好きなんだろうが、ここより↓に行ったら良いのでは?
[レイプ]鬼畜陵辱[スカトロ]第5章
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1138978450
507 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/24(月) 00:19:40 ID:gJLxw3tW
>>505
フレデリカとユリアンくらい?じゃあまったく無問題ですね
心身共にたくましい青年医師になったエミールと、女として円熟味を増してきた皇太后ヒルダの秘密の情事…
このシチュだけでご飯3杯はいけるな
508 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/24(月) 03:36:17 ID:XsXM2EVd
どうして男女ものにはうまい作家がいないのかな。
どっかから借りてきたようなエロ描写、
原作すら読んでないような階級だの地位だのの間違い。
へたくそばっかりが残っているのがいまの銀英の男女ものなんだろうか。
509 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/24(月) 04:33:20 ID:YXUbssxz
>>508
お前はこのスレに今まで投下してくれた職人に喧嘩売ってるのか
510 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/24(月) 04:46:33 ID:Pw1S/Kh3
>>509
まあまあ。
>>508
はなんか辛い事でもあったんだろ。
511 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/24(月) 05:07:51 ID:LKNFxfJh
文句が付けられないほど正確で極上なもんをお前が紹介して
>>508
して、どんなエロ描写ならお前は満足するのだ。
アブノーマルな非凡で過激なエロがいいのなら、該当スレ探して
そこにずっと安住してたら良いんでは。
512 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/24(月) 06:32:58 ID:gJLxw3tW
放置プレイ推奨
513 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/24(月) 12:02:31 ID:Rb+I9S0r
>>498
と
>>508
はもしかしたら一緒の人かもしれないけど違うにしろ
だ っ た ら お 前 が 書 け
書きもしない奴が偉そうに言うな どんな作品にせよ書くために努力をしてくれたことにたいしては敬意を払うべきだろう
いるんだよ「この程度で満足できない俺って高尚」とか思う奴は
そんなにすごいのがいいなら自分で書いて満足してくれ
反応してスマソ 以降は放置しよう
514 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/24(月) 13:16:48 ID:Pw1S/Kh3
この土日にアニメ見返した
ラインハルトの寝顔を見守るヒルダたん(´Д`;)ハァハァ
515 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/24(月) 13:18:55 ID:Pw1S/Kh3
だがつっこみたい
まくらもとにちゃんとブラウス畳んでおくヒルダたん…
余裕だな
516 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/24(月) 15:23:17 ID:ZNQ4Y3vG
アニメ見て思ったが、
ヒルダってブラつけてないのか??
どう見てもブラウスを素肌に羽織っているように見えるのだが……
517 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/25(火) 00:23:54 ID:ocsCr1F5
>>515
いや、あれをたたんだのはエミールかキスリング・・・だったら嫌だなw
518 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/25(火) 01:19:52 ID:2txNY5Cq
書いてる奴に悪口言うのはよくないが、
あまりにもミスが多すぎると萎えるのはたしか。
中尉を少尉と間違うくらいなら読み替えちゃうけど、
口の利き方とか、話癖とか、上下関係まちがってるのはちょっとな。
昔読んだので、アッテンボローが中尉だか少尉でフレデリカが大尉、
フレデリカの方がアッテンボローより上官になってるのがあって、
「お前は本当に銀英を見るか読むかし(ry」と小一時間問い詰めたくなったもんだ。
519 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/25(火) 02:21:18 ID:tvmXzWXe
どうしても蒸し返したいらしいが
その手のミスは801、ノマカプに限らず二次全般に見られることなのでノマカプ書いてる人だけ槍玉にあげるのは違うだろう
それに本人がオリジナルの設定張ってる可能性もあるから一概にミスとは言えない
まぁ
>>518
のやつは本当に間違えてるっぽいが
それに大して憤るのはわかるが少なくともこのスレにはそういった神様も職人さまも見られないのにここでそれを言うのはお門違いだろ
その話が気に入らないなら直接その作者に言え こんなところで匿名じゃないと言えないならロムっとけ
ヒルダはラインハルトが何もしないので自分で脱いだけどラインハルトが何もしてこない(本人はどうしたらいいかわからなくてうろたえている)ので
どうしたらいいかわからずとりあえずたたんでみた・・・ってことだと思ってたよ
あと確かにあれはノーブラに見える。気が動転していて忘れたのかもしれないがその場合 起きたラインハルトはヒルダの下着と遭遇することに!
「どうしたらいい?キルヒアイス?」
520 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/25(火) 02:47:38 ID:2txNY5Cq
どうしても蒸し返したいとか、ノマカプだけ槍玉とか興奮されても、
俺は昨夜の人たちじゃないから知らん。
ここはチャットじゃないんだし、何十レスも前の話でもないんだし、
そこまでお前に言われる筋合いはない。
それにここでもいただろ、アッテンボロー→ポプランが敬語、
ポプラン→アッテンボローがタメ口っていう上下関係おかしくなってるのが。
ポプラン「中佐」がアッテンボロー「中将」にタメ口をきける説得性がないなら
単にミスと思われてもしかたがないんじゃないか。
521 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/25(火) 03:06:22 ID:odoFyRMH
ふーん。
>>520
じゃあうっかり警察ものなんか書いた日にゃエライあら捜しされそうねw
522 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/25(火) 03:11:53 ID:odoFyRMH
そういや、ポプランもアッテンボローも終戦後は軍抜けていたんじゃ?
だからタメ口でもOK?とか思ってその時は読んでいたけれど。
軍退役後に会ったときでも、その上下関係を引きずるってのが「常識」なんだね。
523 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/25(火) 04:25:15 ID:zCoczhfo
>519
「滅多にない機会です。とりあえず頭におかぶりになってはいかがでしょう、ラインハルト様」
524 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/25(火) 07:31:41 ID:rlXhxV97
オリジナル設定の場合は投下前に一言ほしいとは思う。
心の準備ができていないところに原作と異なる設定を読むと
SS全体を受け付けなくなることもあるから。
銀英はいっぱい死んじゃうし、オリジナルにしないと書けないカップルも多いだろうから
設定をいじるのはしょうがないと思うよ。
525 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/25(火) 09:24:59 ID:+41oCSMW
あやつらが退役後も階級の上下をセコく遵守するもんかねw
定年後地域サークルに出る時に部長やら課長やら確認しあわんと
どうにもできない、哀しくも地位にしがみつく爺さんらじゃないんだから。
だからタメ口で良かったと思うよ俺は。
だがあの二人なら退役後も洒落で上下関係で通している可能性もある。
間違いだと怒ってた人はどう見てたんだろうか。
526 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/25(火) 09:31:14 ID:2txNY5Cq
>>525
アッテンボローとポプランが「互いにタメ口」ならミスなんて言わない。
戦後だからそういう設定にしたのかなくらいにしか思わないよ。
アッテンボローからポプランに敬語(冗談でやってるんじゃなく)なのに
ポプランハアッテンボローにタメ口だったからおかしいと書いたんだが。
527 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/25(火) 10:12:19 ID:tzsoUsTk
ここに何度か投下した事あるけど、書くときには原作のその辺読み返したりエンサイクロペディアでチェックしたりはした。
でもこれは俺が銀英にどっぷり浸かってる人間だから出来る事であって、この板のあちこちのスレを渡り歩いて投下していく「職人」にもそこまで求めるべきかどうかは判らん。
原作の一部読んだりとか、CS放映見たりして萌えたって理由で下調べせずに勢いで書いてもいいだろうよ。
つーか、他のエロパロスレ見ててもそんな職人当たり前に見かけるし。
俺も自分の萌えキャラ連中以外のカプネタ考えたりもしたけど、会話の妙とかに自信がない。
そもそも銀英って設定が多くて長い話だから、スレ住民の間でも知識や理解の差がある作品だと思う。
個人的についていけなかったら、もうその作品はスルーして欲しいよ。
528 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/25(火) 10:18:09 ID:+41oCSMW
じゃあ・・・年齢の差かいな?
529 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/25(火) 12:27:06 ID:G8TFos4k
ttp://tsuyama-web.hp.infoseek.co.jp/hirda/slave.htm
530 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/25(火) 12:33:32 ID:zCoczhfo
わーありあとー!!!
上のほうでもう一度読みたいといってた俺です
今夜家のパソに記憶させる!
感謝感激雨霰
531 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/25(火) 13:49:55 ID:w2sbOzjH
なんか微妙に設定問題もちあがっているらしいので聞いてみるが、
ヒルダって幕僚総監に任命されたあとも秘書官を兼任していたのか?
それ以前に幕僚総監の仕事って何かわからなくて調べたけど、やっぱりわけわかんないおれはバカ・・・・
532 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/25(火) 23:27:31 ID:/nB+sdFu
>>529
ありがたや!
これで寝れるぜ!
533 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/25(火) 23:50:20 ID:Q9rhGyKC
>>531
一言で言えば、皇帝の軍事面における助言者。
ヒルダは就任後、秘書官からは外されている筈。
詳しくは八巻後半〜九巻前半でどうぞ。
ついでにうろ覚えだけど、幕僚総監絡みの事情について書いてみる。
元々はロイエンタールが統帥本部長から新領土総督に「栄転」した為、
皇帝自ら「軍令」を決裁する必要が生じたのが契機。
初代はシュタインメッツ(予定)だったが、
回廊決戦の結果、「二代目」ヒルダが就任。
さらに翌年には「三代目」メックリンガーが就任している。
三者に共通しているのは、皇帝に阿る事なく直言できる点。
前半(五巻まで)のオーベルシュタインに比べると、
中盤(六巻〜八巻)のロイエンタールは深慮が過ぎて、
有能な事務屋に過ぎなかったのも事実。
この辺りも皇帝の人選に影響したのでは?
と書いてて気付いたのだが、全てが作者の計算された演出かも・・・
534 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/26(水) 13:57:57 ID:3YAmG/FH
すみません、いまのスレ空気の原因元の作者でございます。
いま泉田×お由紀書いてるんだが、警備部のお由紀が泉田と組んで
官僚不正の内偵するってのは有りなんかなあ。
越権行為やら、現実ありえない間違いですか?
なんかこういう不穏な雰囲気だし、事前予防ということで質問します。
NGなら取りやめますんでよろしく。
535 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/26(水) 14:28:01 ID:RX1v6LD4
そもそもあんな警察官がいることがフィクションなんだから、
「こういう設定」って説明してやりゃいいんじゃないのか。
いま話題になっているのは、「原作に書かれていること」についての間違いを
許せるかどうかっていう話が多いんだし。
っていうか、原因元ってアッテンボロー×ヒルダの人か?
だったらせっかくだから聞くけど、
ポプランの設定は単に間違いなのか、
特別な設定(ポプランの方がアッテンボローより上)ってのかどっちよ?
536 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/26(水) 15:40:01 ID:1YX0+Esz
>534
書いたら投下
さくさく投下
537 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/26(水) 16:28:46 ID:3YAmG/FH
>>528
が正解かな。
エンサイクロペディア持って無く自分のイメージ(反省
年齢=ヤン>ポプ>アッテンということで。
裏取らずに書いてしまったのは謝る。
けれどもお願いしたい。ss粛正ではなく穏便に。間違い指摘は簡潔に。
作者読者お互い居丈高にならないようにしよいじゃないか。
538 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/26(水) 20:43:25 ID:jVxVjfee
>534
それならお涼の胸先三寸でどうにでもなると思われ。
原作でも、「警備部のお由紀を一時的に自分の指揮下に入れたい」とお涼が上層部に働きかけ、
「異例の事だが緊急事態なのでおk」と許可がおりる描写がある。(「夜光曲」p.124)
>535の一行目もそうだけど、
お涼達が所属する「警視庁刑事部参事官室」という部署自体も架空のものだったはずなので
現実問題がどうとかはそれほど気にしなくてもいいんじゃないかな。
って事で楽しみにしてるw
つか、こんな男女カプがマイナーなジャンル内で言い争いしても不毛なだけだし、
多少の間違いは各自の脳内で適当に補完してマターリ行くってことでどうでしょうか。
539 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/26(水) 21:56:13 ID:N7qetfXE
賛成、賛成
540 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/26(水) 22:37:33 ID:QuTV/jai
>>538
さんに激しく同意。
アッテン×ヒルダ楽しく読めたし、泉田×お涼もいいssになりそうだし。
期待してます。
>>534
ついでにエルフリーデ×エヴァもふつうにありだとか言ってみる。
541 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/27(木) 01:20:27 ID:i81r5CLe
エロけりゃなんでもいいぜ!
542 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/27(木) 01:36:22 ID:lL3908Ha
>>537
一応指摘しておく。
年齢順なら、
ヤン、アッテン、ポプランの順番。
ポプランはアッテンボローの二歳年下で、アッテンボローが先に三十代になったのを
さんざんからかうシーンが原作、アニメ両方で見られる。
最後のブリュンヒルトへの突撃で、シェーンコップは戦死したが
ポプランは生き残った。で、アッテンボローと飲みながらそういう話をしていて、
「さてはお前もう三十歳になったろう。そうだろう」とアッテンボローにからかい返されてる。
(その当時、アッテンボローは三十一歳、もうじき三十二)。
だから、年齢、階級ともに、ポプランがアッテンボローより上になることはない。
543 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/27(木) 01:45:29 ID:H/g5yCNL
>>542
もういいじゃん…。せっかく
>>538
がまとめに持っていってくれたのにさ…
銀英が大好きだからこそ、基本的な間違いは許せないのかもしれない。その気持ちは分かる。
分かるんだが、空気ってモンをもうちょっと読もうぜ…
544 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/27(木) 01:47:00 ID:2CkPYD3U
問題の箇所の指摘について何度も書き込んでいる人?
>>542
もう世に出てウン年以上も経っているのにギッチリ正確に覚えている人が
まだ居るだなんて、銀英は名作だったんだなあとつくづく思ふ。
545 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/27(木) 01:51:53 ID:lL3908Ha
いや、多少の間違いが許せないというわけじゃないけど、
明らかに間違っていることを「(ポプランの方がアッテンボローより)年齢が上が正解か」って
書いていたから、それは間違いだって指摘しただけ。
何度も書き込んでいる人ってのがいるのか俺は知らないけど。
つうか、キャラの年齢設定ってそこそこには覚えていたんで、
そんなに言われるとは思わなかったよ。
546 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/27(木) 01:57:11 ID:lL3908Ha
ロイエンタールの方がミッターマイヤーより年上で、
ロイエンタールが女がらみの決闘のせいで降等処分にならなかったら
ミッターマイヤーよりも階級も上だったとかって覚えているのも「ギッチリ」って感じなんだろうか。
エロパロにそこまでのこだわりはいらんと思うけど、
そういうことも話の中でエッセンスとして使うんなら、間違わない方がいいと思うぞ。
まあ、楽しくやろうや。
547 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/27(木) 03:25:04 ID:2CkPYD3U
場を和ませるために一丁投下。皆様方ニヤリと笑っておくんなまし。
548 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/27(木) 03:27:44 ID:2CkPYD3U
暦ではすでに春半ばだというのに、今日の雨は季節が逆行したのかひどく冷たかった。
不味くてもなんでもパステルのコーヒーでもいいから、暖かい飲み物が欲しかったが
今に限ってはそれさえも叶えられそうにない。早くこいつを持っていかないと…
「あら、ずいぶんとずぶ濡れじゃないの?泉田警部補」
スーツをきちんと着こなした秀麗な美女に気遣われたというのに、私の返事はそっけなかった。
「これくらい、なんともありませんよ」
早足で歩きながら、そそくさと逃げ去るようにエレベーターホールに急いだのだが、
間の悪いときはあるもので、無常にも目の前で扉は閉じられてしまった。
(頼むからおとなしくしててくれよ…)
コートの下、胸元で柔らかく動くそれをコートの上からそっと押さえジリジリと待つ。
いつも魔女にこき使われている気の毒な男を哀れんでくれたのか、天の神は救いの手を
この場合はエレベーターを、私の前にすみやかに降ろしてくれた。
真っ先に乗り込みボタンを押し一息ついて、香しい空気が横に立っているのに気がついた。
「同じ階でいいのかしら?」
上昇するエレベーターの中には室町警視と私と二人きり。いや、正確にはもう一人…
「にゃーん」
「!」
「あら、なにかしら」
「な、なんでしょうねえ?」
「猫の鳴き声のような…?」
「気圧変化による耳鳴りじゃないでしょうか?にゃーんって、ほら。良くありますよ」
「…そうかしら?」
潔癖な風紀委員、いやいや端正な美女に見つめられたせいで胸が大きく鳴る。
だが胸を強く抑えすぎたのか、コート越しに柔らかいものがゴソゴソ動いたかと思うと
ポロリとエレベーターの床にそいつが転げ落ちた。
549 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/27(木) 03:28:24 ID:2CkPYD3U
由紀子の眉が跳ね上がった。次には叱責の声が飛んでくるかと思われたのだが
「やだ、かわいい!」
華やいだ声にあっけに取られ、そして視線を下にやると由紀子が子猫を抱き上げる所だった。
スーツのポケットからハンカチを出し、優しく子猫の濡れた毛を拭いてやっている。
とても絵になるというか、なんとも心温かくなるような光景でしばし惚けてしまったが
言いつけられた使命を思い出し、由紀子に正面から正直に申し出た。
「あの、署内にこんなの持ち込んじゃって誠にすみません!ちょっとの間だけですから
どうか見逃していただけませんか?」
「いいわよ」
「わりにあっさりしていますね」
「朝、あそこにいた仔でしょう?」
「ご存知だったんですか」
「そうか、泉田警部補が拾ったのね。よかったわねえお前」
「拾ったのは確かに私ですが…」
繊手にそっと優しく抱えられ、胸元に抱きかかえられた子猫は満足げに一声鳴いた。
羨ましいとか思ってなんかないんだからな、と子猫の様子を伺っているうちに
目的の階に到着した。私が扉を押さえ由紀子と子猫を先に降ろさせた。
なぜか、由紀子の顔が気のせいか赤くなっているように見える。目の錯覚だろうか?
「遅い!こっちはもう準備が出来ているっていうのにさ」
私の上司であり、子猫の真の拾い主である薬師寺涼子が私たち三人の元にやってきた。
つまり、雨の外出をしぶった涼子に命じられて私が子猫を拾ってきたという事情なのだ。
「もう大丈夫よ。私に拾われたからにはバラ色の未来が待ってるわよ」
由紀子の胸元から子猫の襟首を掴んで自慢の胸に突っ込み、こちらに向き直った。
「なにさ、ポーッとか顔赤くしちゃって。ははーん、わかったアレね」
「な、なによ」
「あまりにベタで却ってイジラシクなっちゃう。雨の日に猫を拾う男の人って素敵〜とか、
考えてたんでしょ!」
「それを見抜くってことは、あなたもそうだって白状してるのも同じじゃない!」
どっちも急所を突かれたのかグッと口を噤み黙り込んでしまった。
沈黙の時間が長引くほど、後の噴火時が危険なものとなると危惧した私は子猫の処遇について
さっさと話を進めることにした。
550 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/27(木) 03:29:19 ID:2CkPYD3U
「まずはこの仔を保護するのが先決です。体力が回復した後にパリに送るんでしたよね?」
「そうよ、パリのアパルトマンの天井裏でコードを噛み破るネズミを退治するという名誉ある職に、
私が採用してあげたんだから。リュシエンヌもきっと喜んでくれるわ」
「こんな可愛い仔を、あなたの世界征服の手先にしようっての?!」
「ふん。だって最初スカウトしたとき、この仔ちゃーんと返事してくれたんだもの」
涼子はああいってるが、なんのことはない。涼子が言う事ににゃーんと鳴いただけなんだが
胸の谷間でぬくぬくと安心して寛ぐ子猫を見るに、双方納得の上の契約であるようだ。
「とにかく、そういうことですから…ハックション!!」
この場を打ち切ったのは私の間抜けなクシャミであった。
雨にぬれ冷えたままだったのがいけなかったようだ。
心配そうな由紀子を安心させるよう頭を下げ、子猫を胸に入れ込んだ女王の後に続いたのだった。
――だがここで弱音を吐くべきではなかった。
机に上半身を寝かせている私の鼻腔になんとも凶悪な臭いが忍び込んできた。
「はい、玉子酒。」
トンと目の前に湯気を立てた湯飲みが置かれ、見上げればはにかんだ表情の絶世の美女。
これならどんな薬湯でも秘伝の漢方薬でも喜んで飲み干そうというのが男の感情だろうが
「なんですか!無理ですってこれ!」
湯飲みを覗き込めばすでに卵色ですらない濁った液体がふつふつと…
「ゆで卵も玉子酒も似たようなモンでしょ。作ったから飲みなさい!さあぐいっと!」
たしかにまずくてもなんでも暖かい飲み物をくれと思ったが、神様これはあんまりです…
神は日に二度も助ける気はないらしく、私は翌日午後からの出勤を余儀なくされたのであった。
551 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/27(木) 04:28:36 ID:K+OqjseE
(*^ーq).....ニヤリ
552 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/27(木) 09:38:23 ID:rvbody1G
何だかお伺いふいんきになってるので便乗。
ミッタ×ヒルダを何とか形にしようとしている>366ですけど、
やはりどうも愛妻家バリア(+ヒルダの良識家バリア)が鉄壁過ぎて突破できません。
「おいこれヒルダ萌えってだけじゃね?エロパロじゃねーじゃん」
みたいなネタが出来上がりつつあります。
かろうじて、ヒルダがほのかに年上既婚者に惹かれつつありますか?みたいなふいんきにしか…。
この場合、下記のどれがいいでしょう?
1.トリップつけたらNG指定できるから、前置きして鳥と題名つけて投下
2.エロ入らないならエロなしの専門スレ(ありましたよね?)に空気読んで投下・後でここからそっちへ誘導
3.そもそもエロパロじゃないなら投下すんな・このスレは忘れてチラシの裏に書くか自分でサイト作れ
後、長い話なんですが、数日毎に分割して投下した方がいいですかね?連載形式になるとうざい?
それとも、全て書き上がってから一気に投下?これは、かなりのレス数一気に食いそうですけど。
553 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/27(木) 10:25:10 ID:lL3908Ha
エロパロスレなんだから、エロじゃないならスレ違いじゃないか?
微エロでもエロいならこっちでいいと思うけど。
554 :
通りすがりの第三者
:2006/04/27(木) 11:50:23 ID:wz8JhVPt
>>544
いちばん最初に指摘したのは自分です(何度も書き込んでる人とは違う人)。
自分も基本的に二次創作だからいいか、とは思ってるけど、
でも原作のアッテンボローとポプランの掛け合いが、口調込みで大好きだったから、
口調が違ったのは違和感があったし、ちょっと寂しかった。
こういう銀英好きもいるということをわかってほしい。では名無しに戻ります。
555 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/27(木) 13:45:05 ID:Ucm8S0fu
>>554
さん気に病まないで。
変な方にいったのは「間違いだらけヘボ作家しか残ってない」の書込みあたりからだから。
まあまあ皆穏やかにスルー。
あとヒルダミッタの人、微エロすらないなら該当スレへ。あと鳥付けて。
あと投下前に見直しなw
556 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/28(金) 00:05:00 ID:nThz4nSM
>552
公式じゃないカプ+エロ無し+長い
荒れる要素が少なからず含まれてるから2.が無難かなという気はする。エロなしスレは↓
エロくない作品はこのスレに6
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1140876291/l50
あと、投下ペースについてはあっちのスレの雰囲気次第だろうけど
数日ごとの連載形式になると、雑談や他の人が投下しにくい雰囲気になる事もあるから
一気に投下できるのならそっちの方がいいかも。
557 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/28(金) 03:38:54 ID:bUIfiyYI
ちょいと質問。
このスレに於けるエロ無しや微エロ、エロありのラインて何処だろう…?
濃厚キスまでとか、連結手前とかは何て表記すればいいのか悩んでる…。
意見もらえると助かります
558 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/28(金) 07:38:56 ID:LJEANGgf
「前戯まで」って感じかね
559 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/28(金) 10:32:17 ID:s3PTrnDh
お互いに性欲持って触れている状態なら手を繋ぐだけでも私にとってはエロじゃ。
脳内妄想の描写もエロかなあ。
友愛、親愛はエロじゃない。やらしくないから。
同情から抱くってのはエロw
560 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/28(金) 11:02:11 ID:nnzs++HM
お互い好きあってて、そりゃもうベッドインしたくってしょうがないのに
人前だから、こっそり視線を交わすだけってのも書きようによっちゃエロだと思う。
好きで好きでしょうがないのに、お互い恋人や配偶者がいるから指一本触れ合えねえとか。
あと、昔の映画で、出征する恋人を見送りに来て
汽車の窓ガラスごしにキスするって場面があったんだけど、あれもエロかった。
561 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/28(金) 18:22:00 ID:ophsEy8b
個人的にはエロがなくても萌えられるなら大歓迎。
エロがあっても萌えられなかった作品は読み終わってがっかりする。
562 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/28(金) 22:41:39 ID:d2rdXhEp
ミッタ×ヒルダ、ちょっと触れ合うくらいでも書き方によってはエロになると思う。
できたらぜひ読みたいので、どれをとるにしても読み方(別スレに投下するならそのむね)教えてほしいです。
>>548
乙! にやり
なんか投下ブームが去ったらしく、少し寂しいのでライヒル小噺でも投下してみる。
563 :
夏休み補習授業
:2006/04/28(金) 22:45:42 ID:d2rdXhEp
〜夏の終わりのバラより〜
「フ、フロイライン」
「は、はい! 何でしょう、陛下」
「よ、予は女性を、だ、抱いたことがないのだが……」
「は、はい、陛下。(といっても私も処女なのだけれど)」
「貴女は、その、あるのかな」
「ご、ございませんわ、へ、陛下……」
「どうしよう……」
ナレーション「ラインハルトとヒルダは、公人としては完無であり、私人としてもごくわずかしか経験していない境遇にあった。即ち、困惑していたのである」
「そ、そうだ!」
「ど、どういたしましたの?(悪寒)」
「予は抜けていた。予であっても、初めからひとりでブラスターが撃てたわけではない。習い、練習したから出来たのだ」
「は、はぁ……(さらに悪寒)」
「キスリング!」
「は!(扉を開けて入ってきた)」
「ロイエンタールを新領土から呼び戻せ」
「了解いたしました!(退室していく)」
「へ、陛下……」
「何だフロイライン?(輝く笑顔)」
ナレーション「皇帝の笑顔に反論する気をそがれたヒルダは沈黙した。こうして、ロイエンタール叛逆事件は未然に防がれたのである」
ロイエンタール先生がふたりに何を教え込んだかはみなさんの想像にお任せします。
564 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/29(土) 00:14:05 ID:QKNolCpc
おっ乙!!笑いすぎて腹痛てぇ!!呼んですぐ出てきたということはキスリングはそれまでの会話も聞いていたのだろうか
ナレーションがそのまますぎて笑えました。乙です
思ったんだがエロがなくてもこういうギャグもおもしろいし、エロ無しでもかまわないんじゃないかな
極端にエロや恋愛に関係ない話(友情とか戦術論とか戦艦の話とか)を書かなければ桶ってことじゃだめだろうか
たまたま最近投下が続いたから選り好みできるように見えるけどそもそもここは過疎・・・(寂しいが)スレだったわけだし
投下してくれるだけでも有り難いと思う エロ無しでもエロティックな作品はたくさんあるし
かといって「エロティックな文章じゃないならエロ無し書くな」と注文つけてしまうと職人さんも尻込みして書けなくなってしまうし
投下ラッシュが途切れたのはいろいろと言ってしまったからじゃないかと思う
もともとマッタリスレだったからのんびりいきましょうや ただ公式カプ以外とかスカ●ロみたいに読む人を選ぶないようのやつは最初に明記することとコテハンつけるってことで
565 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/29(土) 00:21:39 ID:HuZJ7OSe
賛成賛成!
んでもって「い・け・な・い ロイエンタール先生」が何を教えたのかが気になりますえ
566 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/29(土) 02:38:31 ID:X6j1V2hw
同意。
>>564
実は田中キャラカップルだったら何の内容でもいいかなーとか思ってるんだが
そうするとスレ違いだって律儀な人が指摘しだしてスレ内が緊張するかなーと思って
よってエロ無しなら該当スレのがいいんじゃないかなーとさっき書いたんだ。
567 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/29(土) 06:48:36 ID:aaW9Ljkt
>563
ワラタ
銀河の歴史がまた一頁
568 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/29(土) 06:50:54 ID:aaW9Ljkt
あ、うっかり
>>564
大賛成
それでいきたいなー
ここは田中カップル読める貴重な場所だし
569 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/30(日) 03:43:50 ID:D5cBeLNz
「始さん…お願いだから、しばらく動かないで」
「ごめん、それはちょっとこの姿勢じゃ難しいかな」
「分かってるけど、無理を承知でお願い!!」
「最初に頼み込んできたのは茉理ちゃんのほうだろ?」
「きゃ!初めてなのに…」
「…痛い?」
「大丈夫、なんとか…我慢する」
「無理そうなら止めてもいいよ、茉理ちゃん」
「それは駄目!!」
「じゃあ、動かすよ?」
「ん…」
真っ昼間のリビングから洩れ聞こえる声に、つまみ食いに台所へ忍び入った彼の足が止まる。
共犯に仕立てようとした弟の耳を慌てて両手でふさぎ、おそるおそる扉の隙間から中を
覗き見ようとして、すぐ上の兄に猫の子のように襟首をつまみあげられた。
声をあげず口パクで抗議するも、廊下の窓ガラスに反射した室内の様子に目を奪われる――
ヨガピラティスのDVDをかけながらTシャツにジャージ姿でマットの上で
身体を捻る茉理とそれをサポートする始が、そこに映っていた…。
570 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/30(日) 03:46:37 ID:D5cBeLNz
おそまつさまでしたw
571 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/30(日) 06:27:39 ID:IT+5ls86
おkおk
572 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/30(日) 12:59:25 ID:tskSLiVL
来夢と耕平のエロパロは犯罪になるのかな・・・
573 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/30(日) 13:04:14 ID:C9/kAIEf
別にならん。両想いだし。
しかし来夢が成長せんと怪我するからそこんところは上手く設定すれば良いかと。
574 :
名無しさん@ピンキー
:2006/04/30(日) 18:37:35 ID:KM4lhmR6
素股とか。
575 :
557
:2006/05/01(月) 07:39:41 ID:GgEZ+XFB
答えてくれたお歴々、どうもサンクスです
>>564
氏に賛成という方が多いみたいですね
かくいう自分も勿論賛成
エロに限らず田中作品は出会える場所が少ないのでここに頼る日々w
エロ度表記に関しては、行為よりも雰囲気重視っぽいので一概に有りとか微とかは言えないようですな
やはり自分の感覚で申告するしかないか…
576 :
557
:2006/05/01(月) 07:46:45 ID:GgEZ+XFB
>>563
氏、
>>569
氏
誠にGJ!!
ガチなのもいいが、こういうのも和んで好きだなー
577 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/03(水) 01:21:51 ID:OpKZcjg6
復活
578 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/03(水) 02:18:39 ID:0R8LUytS
ユリアン×キャゼルヌ姉妹キボン
579 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/04(木) 03:14:58 ID:2Txjz9TV
ユリアン×フレデリカにしよう
580 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/04(木) 10:51:55 ID:zaYdhymy
>>573
一応、言っておくけど。現実的には犯罪だよ。
同意があっても行為自体がダメなの。
だから成長した後か、他人にバレないようにお願いします。
581 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/04(木) 18:45:59 ID:ndG1rp8F
結局来夢って成長するんだっけ??
借りて読んだから確かめらんない…
582 :
563
:2006/05/05(金) 23:42:13 ID:jr4lec3Y
>>569
さん GJ! 原作しらんのにワラタよ!
来夢は確か成長すると思うんだが、本がどっかに消えてしまったので詳しくはわからん。
・・・・なんとなくレスもらえて嬉しかったので調子のってもいっちょ投下してみる。
ライヒル・ギャグ(笑えるかどーかは保証できんが)嫌いなひとは軽くスルーしてくれ。
本編・オチ・おまけの三段階ですはい。
583 :
予習はしっかりやりましょう
:2006/05/05(金) 23:42:59 ID:jr4lec3Y
ナレーション「ロイエンタールは内心拍子抜けしながら、皇帝の談話室で一組の男女を見つめていた。皇帝からの突然の召還命令は、凶事以外の何ものにも思えなかったのだが、その理由は彼の想像していたどれとも違っていたのである」
ロ「(小娘の方はともかく、マイン・カイザーまでもが……!)」
ヒ「(顔を真赤にしてうつむいている)」
ラ「どうしたのだ、フロイライン。熱でもあるのか?」
ヒ「(無言で首をふる)」
ラ「ならばよい。ロイエンタール、始めぬか」
ロ「とりあえず、性交渉の何たるかはご存知でいらっしゃいますな」
ラ「女性器に男性器を入れればよいわけだろう」
ヒ「(何もそんなに堂々と回答なさらなくてもよろしかろうに……!)」
ラ「大丈夫か、フロイライン。顔がますます赤くなったぞ」
ロ「失礼、フロイラインには刺激が強すぎましたかな(冷笑)」
ヒ「(むか!)」
ロ「(無視)陛下、フロイラインは少しお疲れのようですから、どこかで休ませては……?」
ラ「だったら隣室の予のベッドで良かろう。一番近い」
ヒ「へ、陛下!」
ロ「その通りでございますな。ささ、フロイラインは席をおはずしになられますよう」
ナレーション「ヒルダは何か言おうとしたが、結局何も言わず、言えず、すごすごと隣室に移動した」
ロ「さて、陛下、ここから本番ですぞ」
ラ「う、うむ」
ロ「よろしいですか、まずは優しい言葉をかけておあげください。たいがい、処女というのは男に怯える生き物でしてな」
ラ「優しい言葉とはどんな言葉だ?」
ロ「え? ……そ、そうでございますな。例えば……」
ナレーション「よくよく考えれば、女性に優しい言葉などかけたこともないロイエンタールだった」
ロ「えーと、寒くないのか? とかそういうのはいかがでしょう」
ラ「なるほど、確かに今日はいつもよりも気温が低いな。で、その後はどうすれば良いのだ?」
ロ「まずは接吻でしょうな」
ラ「接吻!」
ロ「無論です。接吻なくして成功なしです。まずは軽く唇と唇を合わせてください。その後は、ゆっくりと舌をフロイラインのお口の中へ侵入させて、彼女の舌と絡めるのです」
ラ「うーむ、ようするに貴族連合軍を挑発して、のこのこ出てきたところを討つようなものだな」
ロ「(??? 何か違うような。まぁいいか)そんなところでございましょう」
ラ「その後はどうするのだ?」
ロ「服を脱がすなり一緒に風呂に入るなりすべきでしょうな」
ラ「服を脱がすか、風呂に入るか、か」
ロ「さようでございます。服を脱がす場合は、メックリンガー提督のように一枚づつ、丁寧に優しく脱がさなければなりません。間違ってもビッテンフェルト提督のように猪突猛進すれば……」
ラ「すれば?」
ロ「フロイラインの御心に深い傷が残りましょう」
ラ「そ、そうか。服を脱がせたあとは、どうすればいいのだ?」
ロ「え? ああ、その後は、そうですな、首筋に接吻を何回か落したあと、フロイラインの身体を舐めてさしあげるべきでしょう」
ラ「な、舐めるだと! 不潔ではないのか」
ロ「フロイラインのお身体はわりあい綺麗だと思いますよ」
ラ「……微妙にひっかかる言い方だが、まぁよい。して、そのあとは?」
ロ「何といってもはじめてのご体験ですから、フロイラインの身体が陛下を受け入れられるか少し心配です。愛撫を行い、何回かいかせるべきでしょう」
ラ「いかせる? どこへゆかせるのだ?」
ロ「!? て、天国(だろうか??)」
ラ「そんなことをすればフロイラインが死んでしまうではないか!」
ロ「(死ぬほど気持ちいい、という言葉はあるが。いやニュアンスが違う)これは比喩的表現でして、天国にいかせるほどに心地よい気分にさせることをいうのです」
ラ「なるほど」
ロ「膣、という、男性にはない穴が女性にはありますので、あとはそこに陛下の……(何というべきだろうか?)……陛下ご自身の、(息子といったら予に子どもはいないと返されそうだな)ものを挿入なされば終わりです」
ラ「ふぅむ。してみるとかなり手順を踏む必要があるな。卿は毎夜のごとくそれを行っていると聞く。疲れぬか」
ロ「いいえ、陛下。むしろ爽快な気分になることが可能です(スマイル)」
ラ「…………。(何か言いたそうだが、結局何も言わない。というより、言えない)では、出撃してくる」
ロ「こちらに控えております」
584 :
無記名白紙、よって0点
:2006/05/05(金) 23:44:10 ID:jr4lec3Y
ナレーション「ラインハルトが戻ってきた」
ラ「(´・ω・`)ショボーン」
ロ「どうかなされましたか」
ラ「待 ち く た び れ て 寝 て た」
ロ「(マイン・カイザーよ! …………orz)」
ナレーション「軽い眩暈を感じながらも、ロイエンタールは敬礼して退室した。男たちの間に木枯らしの吹き荒れる中、当のマリーンドルフ伯爵令嬢は眠神の心地よい愛撫に身を任せきっていた」
585 :
授業中居眠り厳禁!
:2006/05/05(金) 23:46:24 ID:jr4lec3Y
ラ「(寝顔はあんがい幼いな)」
ヒ「むにゃむにゃ……お父さまぁv(寝言)」
ラ「・・・・・・・・・・・」
予の立場っていったい何なのだろうかと小一時間以下省略。
エ「今夜の陛下の酒量は少し常軌を逸していらっしゃいました。何かおつらいことでもあられたのでしょうか? ぼくにできることなら、何でもしてさしあげたいのですが……」
ロ「チョークでも飛ばすかチョーク」
586 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/05(金) 23:52:28 ID:jr4lec3Y
ヒルダは父親ネタしか思いつけなかった・・・・orz
あんまり進んでないなと思ったので投下してみたが、よく考えてみるとゴールデンウィークだからか。
>>534
さん いろんなひとが言ってるけど原作自体“現実的ではない”のでパロディが現実的でなきゃならん理由はないと思うよ。
実は読んでみたい。
587 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/06(土) 00:07:09 ID:itek0GGD
何これサイコー!!
「余に子供はいないと返されそうだ」で鼻からコーヒー吹きそうでしたw
あー面白かったw職人さんdクスです
588 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/06(土) 00:53:33 ID:ZonB6p0O
ヤヴァイ!笑えた!いやむしろおかしすぎ!563氏GJ!!腹抱えて笑ってしまったよ。いいものをありがとう
589 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/06(土) 02:29:12 ID:DqyhSd26
ロイエンタールの助手としてエルフリーデをぜひ出して欲しい…
>>563
氏
こういう話大好きです。(´ー`)y─┛~~
590 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/07(日) 00:06:22 ID:gfMF0D4p
ロイエンタール激ワロス。↓がツボだったw
>「よくよく考えれば、女性に優しい言葉などかけたこともないロイエンタールだった」
591 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/08(月) 00:28:44 ID:mSHU99tJ
お涼さんは?
592 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/08(月) 00:40:52 ID:6rLqIuVu
呂胃炎タール→続
ラインハルト→始
昼だ→茉
でもいけそうw
話は変わって
お涼チーム vs SOS団だとどっちが強いんだろう?
593 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/08(月) 01:14:47 ID:DQa/RKPa
>>592
炉胃炎たーる→続
だと兄の立場がないから水池あたりにしとこうぜ
だが茉理なら寝言なんだろ…
「…松永くぅんv」かなw
なんかやってほしくなってきた
594 :
ご飯がおわるくん
:2006/05/08(月) 03:48:53 ID:bwrEUFL9
始「(寝顔はかわいい……かな)」
茉里「むにゃむにゃ……終くぅんv」
弟よお前はいったいいつ手を出していたのかと小一時間以下省略。
595 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/08(月) 03:50:14 ID:bwrEUFL9
やってみたが創竜伝「はじめ・つづく・おわる・あまる」が出てくる以外知らんのだ・・・・。
まぁ呼び方とか喋り方とかおかしいだろうがスルーよろ。
596 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/08(月) 07:49:33 ID:j3NQyIIE
松永君は途中で拾った子犬だったかな。
もう大分前に売り払ったので確認できない。
終は素直で行動力もあるので>594はいい線行ってるかもしれない。
597 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/08(月) 08:38:37 ID:DQa/RKPa
おぉ、まさか乗ってくれるとは…どうもクスです!
そうか終か。確かに仲よさ気だしありえるかも
そしてさりげにタイトル達が好きだw
>>596
そうそう。胸に抱かれたりシャワーの見張りしたり一緒に寝たり、ある意味一番のツワモノ。
598 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/08(月) 11:19:52 ID:awaPPReU
>>596
松永君は、始達と戦車ジャックをした水池が
虹川の家に転がり込む途中で拾った子犬だよ。
フルネームあるんだよな。
松永…何君だっけ??
599 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/08(月) 13:05:33 ID:lkAuE+CD
松永好彦(まつながよしひこ)だったかな?
子犬の名前は
600 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/08(月) 14:11:46 ID:GfBJWKW6
わんわん!と弾丸のごとく松永が竜堂兄弟の元に飛び出してきた。
茉理にあてがわれた寝室の扉が少し、開いている。
松永を見下ろしながら兄弟のうちに緊張が走った。茉理は仲間だとはいえ
やはり女性であるからボディーガードとして茉理の寝室に入れるのは松永だけ。
その松永が――人間なら血相を変えてというところだろうが犬なので顔色は不明だが
ともかく慌てたようにわんわんと怒ったように吠え立てる。
すわ、牛族の異形の部下達が茉理を襲いに来たのかと踵を浮かせかけたが
それにしても静かである。茉理は勇敢な女の子だから大人しく攫われるままじゃない。
事実、根城にしているホテルの寝室からは静寂しか伝わってこない。
「なんだ?お前怖い夢でも見たのか?夢遊病にしては元気だしなあ」
床から抱き上げ、終が松永の顔を覗き込む。
「松永君は犬だよ、終兄さん」
「犬も夢を見るんだそうですよ」
「のんきに動物豆知識披露している場合じゃないだろう」
溜息をついた始の顔を見て、松永がワン!と鋭く吠えた。低く唸りもう一声吠える。
「なにか松永君に叱られるようなことでもしましたか?兄さん」
「いや、そんなことはないと思うが…?」
「あれ?なんだお前。口になんかつけてるぞ…んむ。バターだ、これ!」
松永の口元を指ですくい、躊躇もなく口に突っ込んだ終が驚きの声を上げた。
続がなんとも言えない顔をしたが、瞬時の判断でそれを押さえ込んだ。
年少組をソファーの方に押し出しながら、始にそっと囁く。
「どうにも、ここは始兄さんが様子を見に行った方がいいでしょう」
「なんでだ?」
「いいから!こういうときは始兄さんであるべきです」
いやに説得力のある続の言葉に押し出されるように始は半信半疑のまま
茉理の寝室に向かった。いちおうレディであるから扉をノックして……
松永が、何故か始の部屋着
601 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/08(月) 14:12:55 ID:GfBJWKW6
すいません、最後の一行消し忘れです〜
602 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/08(月) 14:24:35 ID:GfBJWKW6
部屋の中からくぐもった声が聞こえる。
「は、始さん?!やだ!ちょっと待って、来ないで!」
「どうした、茉理ちゃん!!」
茉理の制止の声も聞かずに扉を開けてずかずかと部屋に押し入る。
普段の始ならそんなことはしないのだが、先ほどの松永の様子と続の強要、
さらには茉理の焦った声が、始の礼儀作法を空に吹き飛ばしているらしい。
茉理はベッドの上にいた。羽根布団が盛り上がり、茉理の剥き出しの肩が
そこから覗けている。近寄ろうとして、さすがに茉理の顔を見て立ち止まった。
「どうしたんだい?松永君が君の部屋から飛び出してきたんだが…」
「なんでもないの!ちょっとした意見の相違ってだけなの」
「茉理ちゃんらしくないな。いったい何をそんなに」
言いさして、茉理の顔が熟したように真っ赤なのを始は見た。
いやに恥ずかしがる茉理、そしてなぜか松永に叱られたわけ……バター。
ありえない妄想が始の脳内に広がる。足元が溶けて崩れるような平衡感覚。
(い、いやまて仮にも茉理ちゃんはお嬢様大学通学のしかも箱入り娘で)
始の思考能力もすっかり溶けてしまったようで埒もない言葉だけが渦巻いている。
「ま」の形に口を開いたまま始の言葉は喉から出てこなかった。
相変わらず茉理は顔が真っ赤に染まったままである。
603 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/08(月) 14:47:57 ID:GfBJWKW6
その茉理が意を決したように始の顔を見上げ、この固まった空気に切り込んだ。
「あの、いつもこういうことしているわけじゃないから」
「ああ分かってるさ」
本当は分かってもないのに、ついそのまま返事をしてしまった。
茉理も動転しているのだろう、そんな始の様子にも気付かずさらに続けた。
「本当に、たまによ」
「たまにある!?」
「…そんなに驚かなくってもいいじゃない…」
「ごめん!その…悪かったよ」
たまにある、たまにある…その言葉が始の脳内に何百回もリフレインする。
「それってどういう時にあるんだい?」
馬鹿な質問をしたものだと始は激しく後悔した。茉理の表面温度はさらに上昇したようだ。
「聞きたいの?」
正直言うとものすごく葛藤した。だが、だがしかし自分の気持ちに嘘は付けない。
ましてこの気持ちを向けている相手は茉理なのだ。ここは後学のため?聞いておくべきだろう。
「知りたい」
始の短い、けれども決意がこもった一言に、茉理の顔が恥ずかしげに俯いた。
だがそれも短い間のことで、決心したようにくっと上向きになり始の目を見つめてきた。
「どうしても、我慢できないときとかな」
始はなにも言えなかった。俺はそんなにも茉理ちゃんに我慢をさせてきたのか!!
604 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/08(月) 14:57:26 ID:GfBJWKW6
って、何をだ?という疑問は始の中には浮かばなかった。家長意識が強すぎるせいなのか。
ともかく自分に責任があるらしいということだけが始の意識に強く刻印されたのだ。
「ごめん、茉理ちゃん」
「なんで始さんが謝るの?だって…これは、始さんには何の関係もないことだもの」
関係ない。
自分の責任じゃないと言われて気が軽くなりそうなものなのに、始は深い穴に落ちた気分だった。
「そんな関係ないなんて言わないでくれよ、仮にも長い付き合いだろ。関係ないだなんて」
「だって始さんは、男の人だし」
始から視線を外して茉理はどこか冷めた口調で言い切った。完全に冷える前に始が言いつのる。
「そんなことない!男にだって、その、そういう気持ちはあるさ」
今度は茉理が驚く番だった。
「嘘!」
「嘘じゃないよ。俺だって、そのそういう時も………ある、かな。いやあるさ」
始自身とても気恥ずかしかったが、茉理との間に誤解を生じさせたくなかったのだ。
いや、今だって茉理ちゃんを誤解したままなのかもしれないが、せめて二人の心の誤差は埋めたい。
605 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/08(月) 15:31:44 ID:GfBJWKW6
「そっか、始さんにもそういうときってあるものなのね」
ようやくほっとしたように茉理の顔がゆるんだ。良い頃合かと見て始がベッドに近づいた。
「なんか、嬉しいな」
もともと美形である従妹の顔に、さらに魔法の結晶が降りかかったような煌めきが加わって
始はとうとう今もそうだとか口走りそうになってしまったが、強い理性がそれを押しとどめた。
「でも、こんな牛種との決戦の前に考えるべきことじゃなかったわね」
「まあその、もとは人間じゃないけど今は生身の姿なんだし、仕方ないんじゃないかな」
始の下手な慰めにもかかわらず、それでも茉理は充分にその言葉が嬉しかった。
「そういってもらえて、すっかり気が楽になったな」
のびのびと背伸びをした茉理から羽根布団が滑り落ち、部屋義にしているチューブトップと
ショートパンツからしなやかに伸びた脚が現れた。
「??!!」
「どうしたの?始さん。あ…見つかっちゃったわね。昼間買っておいたバターケーキ。
真夜中に甘いもの食べちゃダメっていうけど、やっぱり手が伸びちゃって」
茉理は照れたように微笑むが、始の全身は硬直したままだ。
「口止めに松永君にも一口食べさせたんだけど、お気に召さなかったみたいだわ」
そして始の顔がオカシイのに気がつく。
「なんだなんだそうだったのかいや、なに、そうならいいんだ」
「もう、始さんったらどうし」
たの、という言葉は聡明な従妹の口の中に飲み込まれてしまった。
「あ!やだ!!始さん、いったい何を考えていたのよ!!!!ちょっと怒るわよ!」
すぐ横の羽枕を引っつかんで、茉理は遠慮なく始の頭を叩きのめす。
その間にも先ほどまでの会話が茉理の脳内で再生されていき、一時ストップした。
「俺だって、そのそういう時も………ある、かな。いやあるさ」
606 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/08(月) 15:33:03 ID:GfBJWKW6
茉理の手が止まる。反省しきりの実に済まなそうな始の顔を見ながら茉理は微笑んだ。
「あのね、始さん」
「なんだい?」
ベッドの上に屈みこんだ始の顔が柔らかい両手にそっと包まれ、引き寄せられた。
「…これは、今回のことが終ったらという予約ということで」
すべてを了解した始の顔が照れが半分、嬉しさが八割といったように輝いた。
「それまで、ちょっとの間の我慢だな」
「そうよ。頑張ろうね」
頑張るのは牛種を倒すほうだよな、と一応落ち着いて考えた後、茉理に耳打ちをした。
「これなら堂々と夜食が食べられるわね」
そして今度は始のほうからさっきより少し長めのキスをして、二人で寝室を出た。
「…今回は特別だぞ」
一応重々しく言ってみたのだが、年少組二人の歓声がそれをすっかり打ち消してしまった。
始はそれを後ろに聞きながらルームサービスの番号をプッシュしている。
続はそっと茉理の横に立ち非常に失礼な誤解について謝罪したが、茉理はもちろん快く許した。
これが最後の平和な食事になるかもしれなかったが、とりあえず五人と一匹は幸福だった。
ドアベルの音が賑やかに部屋に響き渡る。
終わり〜ノシ
607 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/08(月) 15:44:15 ID:GfBJWKW6
えーっと、いつの時点での話だとかは考えてません。
フィクションですから「残りの男三人はどうした」とか「そこ何処だ」とか
不自然な箇所を発見しても石ぶつけないで下さい。すまん。そこを何とか。
じゃあまた。
608 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/08(月) 18:02:32 ID:DQa/RKPa
GGGGG〜J!!
そんなことないよな、と思いつつも見事に悶え踊らされちまいました…
誠にぐっじょぶ。ありがと。乙でした。
609 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/08(月) 22:45:17 ID:jmJl2/cA
こういうフェイント→がっかりシリーズ好きだ。
610 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/08(月) 23:54:43 ID:22la0PkW
ちょwww松永くん冤罪www
と思ってたら最後の最後で萌えた。
>592 お涼チームVS SOS団
ハルヒ未読なんだけどとりあえず資金力はお涼チームが勝ってるっぽい
あとメンバーの平均年齢は確実に上w
611 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/09(火) 01:17:15 ID:gZw7jb62
ちょっと小話。
「おい、水池。手に持っているのは一体なんだ?」
「ああ?この距離で分からんとは、老眼疑ったほうがいいんじゃないか」
二人の男の下で松永好彦が逃げ出そうとして小さい身体を素早く翻したが
「おっと待ちねえ」
「ギャウンギャウン!!!」
精一杯の抗議を試みるも、あっという間に水池の手に握られたそれに
手足を通されてしまい、あわれ松永君は首輪まで付けられてしまった。
「…気の毒になあ」
「ああ。ありゃ相手が悪い。全面的に悪い」
鼻息まじりの水池に精一杯地面に爪をたてて抵抗するも、着せられた
フリフリの可愛い服に邪魔され、松永君はとうとう拉致されてしまった。
そして数刻後。
がっくりと肩を落として帰ってきた水池と元気に跳ね回る松永君。
「だろうと思った」
「おお流石ブンヤ。どういうわけだか教えてくれるんだろ」
「簡単すぎて口にする労力も惜しいがまあいいだろう。キレイなお姉さんに
モテまくったのは奴ではなく、彼の方だったってわけさ」
「ああ!」
指さした下方に目線をやって納得いった。
当然でしょ!とばかりに尻尾を振って得意げな彼が、そこに鎮座していた。
612 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/09(火) 08:10:21 ID:4g6eXLo1
萌えた。笑った。楽しかった。
ありがとう、是非またやってねw
ところで松永君は良彦でしたので念の為。
613 :
♯紀子
:2006/05/09(火) 19:09:10 ID:wA3JOGBX
592、俺はお涼チームだと思う。
何故なら、お涼の仇名は凄い、ドラよけお涼、人間原子炉など色々あるから。
それに、部下も凄い。泉田準一郎、パリのアパルトマンには二人のメイドがいる。
614 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/10(水) 02:21:13 ID:FtPeoc6u
若さでSOS団に一票とかいったらお涼チームの女性陣から殺されてしまうだろうか・・・・
615 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/10(水) 03:14:02 ID:hCCIrUR6
>>614
「ハン、小娘の乳臭さに参るような男なんて手を下す価値もないわ」
「…ちょっとお涼、言葉が過ぎるわよ」
「おだまり委員長!」
「すいません、室町警視」
「泉田警部補が謝ることはないのよ」
「こらあ!アタシの許可も得ずに二人で何コソコソ話してんの!」
「ヤキモチですかあ?可愛いところもあったんですねえお涼サマ〜」
「(ムカッ)るっさい!」
涼子の見事な脚線美がこれまた優美な線を宙に描く。
「キャイン!」
悲惨な目に合いながらも、なぜかレオコンは幸せそうな笑顔で地に倒れた。
こんな感じかもw
616 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/10(水) 10:13:48 ID:NBFhyFGQ
職人さんGJ
流石は松永君、いいポジションだな
617 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/11(木) 02:29:45 ID:6Cs1T2Gk
だからお涼さんは?
618 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/11(木) 04:28:53 ID:TCym316H
べ、別に、そんなオボコイぶりっ子じゃないんだからそれぐらい知ってるし
それにアタシがその気になればいくらだってサンプルは見られるんだし、
でもいくら見目麗しい美男子のソレでも興味ない相手のなんて見たく…ない。
えっと、こないだ腰掛けた感じからして…その、あれぐらいならば、きっと
いやいや平常時とその時とでは成長率が違うっていうからそうなると――
「…なにしてらっしゃるんですか?」
「ううん!なにも!もうそっちのメニュー決めてあるから。いいわね?」
たかがランチだというのに横暴な上司に首に縄付けられてお供した先の
高そうなレストラン。一時失礼して席に戻ってみれば彼女は手持ち無沙汰なのか
ナプキンを筒型に丸めては思案顔。かと思うとあらぬ方向を見て溜息。
なかなかに珍しい光景なのでしばらく眺めていたら、教師に内職を見つかった
生徒のようにギクリとした様子を見せたがそれも一瞬のことだった。
ナプキンを 優雅に膝に広げ、いつものように確認という形の事後承諾を求められた。
何だろうと思ったがそこは気にせずスルーすることにして、私は上司の提案に頷いた。
「今回ばかりは鈍感で助かったわ」
「なんのことです?」
「別にいいの。ヒトリゴト」
…そんな昼下がり。
619 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/11(木) 20:36:10 ID:tIovpvse
GJ!!!
そわそわした処女のお涼が可愛すぎです!
620 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/12(金) 00:51:41 ID:y0qyS+BJ
膝によく乗っかってるのはサイズ確認のためだったのかw
泉田クンも毎回よく冷静でいられるというか、
お涼膝に乗っけた後、微妙に前かがみになってたりしたらワロス
「泉田クン姿勢悪いわよ?( ・ω・)ナンデマエカガミ?」
「いやその…ちょっと不可抗力というか…(´Д`)リユウガバレタラコロサレルorz」
621 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/12(金) 01:57:07 ID:8GFPdoy3
泉田クンの昔の彼女から披露宴の招待状が来て、
自分への当てつけが含まれてるんだろうなというのをわかりつつも、
まぁ、仕方がないかと言って出席する泉田クンにイライラするお涼さんの話が良いな。
で、勿論2次会会場へ乗り込んで元彼女の前で泉田クンをゲット。
当てつけを倍返しにするお涼さんに苦笑みたいな…。
622 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/12(金) 02:19:09 ID:7XY1TYzK
無理矢理設定されたお見合いに泉田が出向くと
相手は室町警視だった・・・
623 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/12(金) 02:44:21 ID:GxKdt5E2
よし、それでいこう!
624 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/12(金) 08:19:44 ID:ADyn7eQg
http://pinktower.com/www.h01.i-friends.st/index.php?in=yumitan2005
625 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/12(金) 09:06:44 ID:UWydK69K
>>621
そういう場合おそらく泉田は出席しないかも。
つまり「私は幸せだからねー」とアピールのみだと
分かる程度にはオトナだろうし、新婦を霞ませちゃ悪い
と良識派としての配慮もありw
626 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/14(日) 02:10:15 ID:mqZkJ1YS
お涼さ〜ん
627 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/14(日) 14:49:39 ID:ZPmbxyOq
男嫌いだけど性には奔放なカリンとか萌えるんだが。
「セックスなんて私が気持ちよくなるためにするのよ!」
ってな感じで気の強い女王様タイプ。ダメかな。
628 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/14(日) 19:48:25 ID:ixRAQ+RV
で、ユリアンにのしかかって「サービスサービスゥ」とか「お仕置きよv」とかやるのか?
629 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/15(月) 02:17:31 ID:U43T4BI9
三石キャラかよw
630 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/15(月) 02:19:22 ID:aJ+bc8/7
あ
631 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/15(月) 02:56:06 ID:sHF+l6z3
やって欲しいネタ。
・涼子、泉田クンの両親に会う。
猫を被るか、そのままか、興味深い。
632 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/15(月) 22:47:52 ID:x5KD5zfC
考えたので投下するよ
>>631
633 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/15(月) 22:48:57 ID:x5KD5zfC
「…別に、普通のオジサンとオバサンだったでしょう?」
「アタシが何考えてると思ったの?あなたの普段の活躍ぶりをフツーにご両親に報告しようと
しただけじゃない。上司として当然のことでしょ?」
普通、という単語が薬師寺涼子の口から出るとは珍しい。
今私たちが歩いているのは駅のホーム。電車に乗る私の両親を見送った後である。
「このあとどうしましょうか?」
今後の予定を立てた上でのお伺いではない。本当に決まっていないのだ。
そもそも、私の両親が東京見物にやってくるのに涼子がそこに来るというのが
予定に無いことだったのだ。
「あらー、東京の人ってみんなこんな垢抜けた美人さんばっかりなのかしらねぇ」
いいえ、この人は規格外、いやいや別格なんですよと言おうとしたのだが、
人の良いことが一番の美点である母親にわざわざ言う事はないと思ったのだ。
それに涼子も何枚も猫の毛皮を着込んで、いやいや立派な上司として振舞っているし、
そういうことで私はガイドの旗こそ持ってないものの、この集団の先頭に立って
にわかツアーを一日繰り広げたのであった。
流行のスポットに詳しくない私にとって、実は涼子の突然の参上は非常に有難かったのだが
それにしてもずいぶんと毛皮を着込んだものであった。父親はすっかり涼子に参ってしまったらしいが
母親はそれに目くじらを立てることも無く、涼子の見立てた服に(とても若やいだ雰囲気になった)
ニコニコと嬉しげに試着室から出てきたりと、はた目にはとても和やかなご一行様であった。
なんにせよ、涼子のお陰で両親はひさしぶりの都会をすっかり満喫してくれたようだし、
非常識で非科学的な事件を除き私の職務ぶりをこれまた高からず低からず涼子が話してくれたお陰で
東京土産とともに、不肖の息子がしっかり公僕として働いていることの安心を両親に持って帰って
もらうことが出来たのであった。
634 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/15(月) 22:50:16 ID:x5KD5zfC
「本当は、お母様のご希望を早く叶えて差し上げたいんだけど…本人の気持ちしだいだしねえ」
うちの母が何を言っていたのかしばし思い出そうと腕を組んで立ち止まる。
「嫌ですよ」
「嫌、ってそんな酷いじゃない!」
「酷いのはどっちですか」
「あ、そういうこと言うんだ。ちぇ、せっかく猫を被って一日頑張ったのにさ」
やっぱりそうだったのか。涼子の非常な努力ぶりにおもわず一瞬感動してしまった。
「いくらなんでも、すぐ昇進なんてできるもんじゃないでしょうが。殉職なら、ともかく」
「なによ、それ。今日はさすがに銃は携帯してないわ。それにそれ言ったのはお父様の方でしょ」
まったくもう!とプリプリと上司様は怒っておられる。
「違うってば。年頃の息子を持つ母親が望むことといったら一つしかないでしょう?」
「…無病息災?」
「この、おボケ!!」
そういってぐいっと腕を取られて涼子が勢い良く向かった先は最近オープンしたばかりの
外資系一流ホテルで、そこで私は遅まきながらようやく母親の言葉を思い出したのだった。
「早く可愛いお嫁さんと孫が欲しいわねえ」
すみません、可愛いという部分だけはどうにも無理です。お母さん貴女の期待に沿えません…
じゃなくって!!しかも嫁ならともかく孫っていうことはしかも目の前はシティホテルであのその
「ちょ、ちょっと待ってください」
「何?道路の真ん中で立ち止まらないでくれる?道交法違反よ!」
「歩きますから、ネクタイ引っ張らないで下さいって」
そうして連れて行かれたのはやっぱりそのホテルで私はどうにも進退窮まり天を仰いだ。
635 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/15(月) 22:51:56 ID:x5KD5zfC
涼子が歩みを止めたのはフロント、ではなくその横にあるティールーム。
「さて、これから何処行くかお茶しながら決めましょ」
私は乱れた呼吸と動悸をなだめるので精一杯だった。涼子はそんな私を見て涼しい顔だ。
「ふふん、何を考えていたのかあててやろうか?」
「やめて下さい!」
タダでさえ身の程知らずな勘違いをしてしまったというのにさらに言われてはたまらない。
「それについては本人の気持ち次第ですからってお母様にも言ったのに、聞いていなかったの?」
「はあ。まあ。申し訳ありません」
「私のシダイは決まってるんだけどな」
「?」
小さく溜息とともに呟いた単語はロビーの雑音にまぎれてよく聞き取れなかった。
「まあいいわ。私、泉田くんとのお母様とは上手くやれると思うわ」
「分かりました。また今度ガイドお願いするかもしれませんね」
「…お母様の希望はまだ当分叶えられそうに無いわね。言っとくけど、私の責任じゃないわよ?」
なんで涼子が責任を感じるのだろうかと思ったが、深く考える前にウェイターがこちらにやってきた。
「コーヒー、二つお願いします」
「…でもあれか。嫁ぐんじゃなくって貰うんだから、ちょっと大変かもしれないわね」
なにをぶつぶつ言っているんだろうか。
「ねえ、今度お母様の好きなもの聞いておいてね」
それぐらいお安い御用ですよ、と頷いたが、いつのまに涼子とうちの母親は親しくなったのか。
聞いてみたが、その質問はさりげなくかわされてしまった。
「ナ・イ・ショ。まああえて言うなら将を射んとすればまず馬を射よってことかな」
「なにを射るのか良く分かりませんが、頑張って下さいね」
「いいの?」
「狙ったものをあなたが外すことなんて、ありえませんから」
「そう?じゃあ、頑張るわ」
女王様は実に輝かしい笑顔を私に向けて、嬉しそうに微笑んで見せた。
――最近、母親から電話が良くかかってくるようになった。声が電話越しにも弾んでいるのが分かる。
あまり帰らないので寂しい思いをさせているようで気がかりだったが、この分なら心配なさそうだ。
「それでね準一郎、あなたの上司。涼子さん。今度はこちらに遊びに来てくれるように言ってくれないかしら」
「まあ、言うだけ言ってみるよ。親父は元気?」
「ええもうそりゃ元気で、こないだの東京見物の写真、近所の皆に見せて自慢しまくってるわ」
「自慢?」
「そう。準一郎はこんな別嬪さんと一緒に居るんだぞーって。本当に私も嬉しいわ。準一郎、頑張るのよ!」
そして電話がチンと、優しい音とともに切れた。母親の丁寧な仕草が目に浮かぶ。
ああもちろん、母に言われるまでもなく頑張ろう。公僕として、庶民の皆の為に。
636 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/15(月) 22:52:34 ID:x5KD5zfC
「本当に頑張ってくれないと。なんだか…心配だわ」
「大丈夫だよ。俺の息子なんだしな。母さんにプロポーズしたようにあいつもきっと、やってくれるさ」
「そうよね。あんなに綺麗な人が準一郎の相手だなんて私本当に嬉しくって」
「だが、あのお嬢さんかなり手ごわそうだけどな」
父親の含み笑いに、母親はそれをさらりと受け流しておおらかに笑って見せた。
「そんなヤワな子に育てたつもりはありませんよ。あの子にはあれぐらい元気な子の方が、上手くいくわ」
ピルピルピル…
「あら、涼子さん?さっき準一郎と電話してて。あらもうお気遣い無く。いいんです遠慮なくあの子を
持っていって下さいな。いいえ、東京に行ったころから私たちも心積もりありましたから、ええ。
こちらは大船に乗った気であの子を任せられますわ。お願いしますわね」
将を一番良く知る馬はとっくに先方の女将軍と気心を通わせあう仲になっていたというオハナシ。
637 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/15(月) 22:57:59 ID:x5KD5zfC
サゲ間違えてアゲてしまった…
まあ、そのすまん。じゃ。
638 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/15(月) 23:03:17 ID:VU58h4kB
GJ!
泉田くん、サッサとお涼さまに射止められちゃってー!
639 :
631
:2006/05/15(月) 23:13:10 ID:sHF+l6z3
>>632-636
いいね。
本編でもこういったシーンが出て来るのかどうか怪しいけど、
こんな感じの両親だろうなというのは納得。
640 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/15(月) 23:29:13 ID:hopavpy+
ぬこを分厚く着込んでても本性バレてるお涼ワロスww
この子にしてこの親ありというか、ご両親がそれらしい
GJ!
641 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/15(月) 23:46:23 ID:I/yOdbMV
GJ!(b゚Д゚)GJ!
本編にありそうでワロタ
早く観念しちゃえよ、泉田くん!
642 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/15(月) 23:49:15 ID:TOLClYWw
外堀から埋めにかかるお涼さまに萌えw
原作ではひっつきそうにないからせめてここでお涼さまに本懐を遂げて欲しい。
643 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/16(火) 22:33:11 ID:snZlrhqw
本懐というとやっぱりウェディングドレスかねえ。
644 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/16(火) 22:53:24 ID:yo7UToeA
泉田はお涼を無意識に喜ばせるのが上手いな。
さっさと射落とされてしまえw
645 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/16(火) 23:54:44 ID:hRpIkmMz
お涼さんが素敵すぎるん
646 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/17(水) 00:05:57 ID:/oxLRQGL
漫画版の「クレオパトラの葬送」は冒頭の風呂場に泉田呼びつけるシーンに
「このまま立ち上がって叫んでやるから!」で実際に立ち上がるお涼と
「悪い冗談はやめて下さい!」でうっかりお涼の方を振り返ってしまった泉田が真正面から鉢合わせ
→お涼は一瞬( ゚д゚)ポカーンとした後、我に返って慌てて風呂に潜る。泉田をゴルァするでもなくひたすら赤面
泉田も慌てて後ろ向いて「泡とかで隠れてるし見てないですから!!((((;゚Д゚)ガクガクブルブル」と必死こいて言い訳
という原作にないシーンがあって、あわよくば本懐遂げる?つもりで呼びつけといて
いざ見られたらウブな反応するお涼にかなり萌えたw
647 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/17(水) 00:52:47 ID:5vEIOilp
>>643
ウェディングドレスに赤い薔薇
648 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/17(水) 02:53:50 ID:9v2GA1pj
子作りしなきゃ♪
649 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/17(水) 06:07:36 ID:I5wKslNN
ここってage推奨?sage推奨?
どっちでもいいのかな?
650 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/17(水) 07:29:30 ID:XVCvhHMs
>>646
それを考えると、
本懐を遂げようとした時には恥ずかしすぎておかしくなるんじゃないかなw
651 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/17(水) 10:47:11 ID:nKJzjlz1
>>646
漫画版は漫画としてのお粗末さが余りにも際立ってしまってるんで
熱心に読んでなかったんだが…何か凄く楽しみになってきたw
652 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/17(水) 21:20:47 ID:9v2GA1pj
お涼さんがいいな〜
653 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/18(木) 01:45:36 ID:HdGO9P/M
>647
そういやお涼と泉田でそのものズバリの絵があったの思い出した<ウェディングドレスに赤い薔薇
エウリアン原画展用の描き下ろしだけどサムネイルはweb上で見れる↓
ttp://www.arch-club.net/common/artist/kakinouchi/027.html
654 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/18(木) 04:09:28 ID:L4/56PN5
>653超GJ.な、なんて美麗な……!
流石はお涼サマだ。
655 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/18(木) 17:29:27 ID:krrvG1QJ
それ、前スレだかで
「泉田逃げてー、超逃げてーな絵」
と紹介されてた奴だっけ?w
656 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/18(木) 20:30:30 ID:L4/56PN5
馬を射ようと頑張るお涼サマ最高
657 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/19(金) 00:05:36 ID:20/+1bbW
お涼さんの新刊いつでるんだ?
658 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/19(金) 13:56:41 ID:M7v6vNFx
さっさと泉田を射落してウェディングドレス着てほしい! いまさらながらGJ!!
お涼サマもいいけどお由紀さんも萌え〜……っていう同士はいない??
659 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/19(金) 16:36:25 ID:ipP1qdhD
泉田に惹かれつつ、お涼との絆を度々見せ付けられてあてられてるお由紀さんを創造すると萌える。
660 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/19(金) 17:13:14 ID:xBf0odhb
>>658
激しく賛同!!
661 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/20(土) 00:47:20 ID:nAu8R86x
期待あげ
662 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/20(土) 01:42:31 ID:uqJqmmQN
>>658
そろそろお由紀と泉田に、フラグもどきがあってもイイ頃だと思うんだけどね。
663 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/20(土) 02:25:15 ID:g8tZazqQ
流れぶった切って本当に悪いんだが
>>628
みたいなカリン×ユリアン浮かんだんだが小ネタ投下してもいいか?
664 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/20(土) 02:32:33 ID:fWTm6YK+
どんどんカモーン
>>663
665 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/20(土) 02:35:24 ID:x/bLSmdk
>>663
聞くまでもない
カモナベイベ!
666 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/20(土) 02:37:02 ID:x/bLSmdk
>>663
聞くまでもない
カモナベイベ!
667 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/20(土) 02:40:44 ID:x/bLSmdk
連投スマソ…
言葉がアレだけにかなり恥ずい…orz
668 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/21(日) 02:01:52 ID:oYjHPaCV
…………思わず妄想がでてきちゃったんだが、ライヒル小噺別バージョンでやっていいっすか??
あとユリ×カリ読みたい!
669 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/21(日) 03:13:33 ID:duyZDIJC
懲りずに言おう
カモナベイベ!
670 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/21(日) 19:33:41 ID:ckqLlOIf
もひとつオマケに
ライ×ヒル、カリ×ユリ
カモナベイべ!シェキナベイべ!
671 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/21(日) 21:23:09 ID:kDKOPWK9
反日小説家は死刑にしろ。
672 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/22(月) 05:48:06 ID:7QT/VOWH
パロなんでね。とりあえずドレスを着せてあげようと。
前の多数のグッジョブに気を良くした人が再度投下。
673 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/22(月) 05:48:36 ID:7QT/VOWH
――暗い空間の中を、七色の破片を纏った光が静かに降り注ぐ。
耳に響くは荘厳な賛美歌、そして祝福の成分が多分に含まれた笑いさざめく人々の声。
自分はといえば、白く艶やかに光るタキシードを着て、胸に小さなブーケを差している格好だ。
視線を後ろに転ずれば、重厚なビロードが床にまっすぐに敷かれており、その両脇には簡素なベンチが
ずらりと奥まで並んでいる。通路側は可憐な花で飾られリボンで仕切られており、その席の中に
案じるような目を私に送る母を見つけた。私は内の覚悟を伝えるよう、しっかりと頷いてみせる。
ほっと息をつく母の肩に父が優しく手を回すのが見えたその時、余韻を残しつつ賛美歌が止んだ。
その直後、パイプオルガンが教会全体を震わすかのように華麗な美声を鳴り響かせる。
一番奥の扉に光の筋が縦に走り、差し込んだ初夏の陽光の眩しさに私は目を細めた。
大きく開かれた扉からの光が周囲を白く染める中、ひときわ白く輝くものがその光の中立っている。
正装した初老の男性と手を携え、ゆっくりとその存在は一歩一歩、私に近づいてきた。
扉から差し込む光と、ステンドグラスからの光の粒子が精霊のように空間を飛び交う。
参列者の溜息が満ちる中、粛々と二人は進み、私が立つ壇上の手前で男性だけが立ち止まった。
私と同じ白い衣装を纏った女性はそのまま一段昇り、そして私の隣に寄り添うように立つ。
深くベールを被っているというのに、彼女の美しさは誰の目にも明らか過ぎるほど明らかだった。
そとおりひめ、衣通姫その名の通り美が衣を透過するほどの麗人が古代日本に居たのだという。
いにしえのお姫様は悲恋の伝説のヒロインであるが、現代の衣通姫は運命にただ流されるままではない。
運命がそっぽを向こうとすれば直ちに首根っこを掴んで無理やり方向転換させる、活劇のヒロインである。
そのお姫様がベール越しにまっすぐな視線を私に投げてきた。
「どう?三国一の花嫁を持った気分は」
自分で言うな、自分で。
「悪くない、といっておきましょうか」
「あら…今日は素直じゃない?」
私はそれ以上返事をしなかった。悪くないというのは嘘ではないが、ここから先のダンドリを
思い出すことで頭が一杯だったのだ。こっちはともかく主役である花嫁に恥をかかせてはならぬ。
まず神父の祝福の言葉があって、誓いの言葉があって、指輪交換、だったよな。
そんなことを考えているうちにパイプオルガンは華麗な和音を長く響かせ演奏の終わりを告げた。
余韻が消え去ったのち、マイクを通して上品なアナウンスがおごそかに式の開始を告げた。
「これより、帝国パレスウェディングフェア、模擬挙式を行います」
674 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/22(月) 05:49:28 ID:7QT/VOWH
そう、これは模擬なのだ。
本当は今日はゆっくり起きて洗濯などをして、図書館をコースに入れて気ままな散策をするはずだった。
それが何故かここに居て、神の目前で薬師寺涼子と永遠の愛を誓うハメ…いやいや模擬挙式しているのか。
色々なジジョウがあってのことなのだが、説明するには昨晩の一本の電話から話を始めねばなるまい。
以下、私の回想である。
「もしもし、準一郎?電話してくれたのね」
「携帯に着暦残ってましたから。それで、いったい何のご用で?」
「あのね、結婚式のことなんだけど」
「け、け結婚って?一体誰の?」
餌を喉に詰まらせたニワトリのような声が出てしまった。
「あなた、準一郎のよって言いたいところだけど…そうじゃなくて私の姪っ子のよ。この秋に挙式予定の」
「ああ…」
以前帰省したとき見せられた従妹とその婚約者の写真を私は思い出していた。
「それでね、挙式場所を探しているそうなんだけど、結婚式場のフェアの日程が重なってしまって。
それがどちらも候補になってるところなものだから、私が協力してあげるって姪っ子に言ったのよ」
「ええ?それは、つまり」
上手く繋がらない話を頭の中で整理しようとして、母の続けた言葉にようやく事情が飲み込めた。
「明日、私とお父さんとでそのもう一方の式場を見学に行くから、準一郎、あなた案内してくれるわね?」
「…ずいぶん急な話だね」
「だってこの話が出たのが今日の夕方だったんだもの」
「明日は非番ですが、私にも一応予定というものがあってですね」
「予定ったって、一日のんびりして図書館行くか映画見に行くかのもんでしょ?それともデートの予定でも
入ってるの?それなら喜んで私は遠慮しますけどね。で、どう?準一郎が居てくれたら助かるんだけど…」
さすが母親、あっさり私の日常を言い当てた。しばらく沈黙した私の様子を母は了解と受け取ったらしい。
それとも33にもなってあまりにカイショウナシな不肖の息子に嘆息していたか。そっちの気配が濃い気がする。
こちらの予定が白紙なのを知られていて、さらに母の頼みを断るのも気が引け、私は案内することを承諾した。
待ち合わせ場所を決めて電話を切り、近所のスーパーの惣菜と炊いたご飯とでささやかな夕飯を済ませた。
675 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/22(月) 05:52:25 ID:7QT/VOWH
そして今朝。駅の改札を出たところに母に連れられた父が立っているのを人ごみの中から見つけ出した。
母は式場のパンフを片手に、父はデジタルビデオカメラを肩から提げており、私に気付いて手を振った。
「ありがとう、準一郎」
「親孝行としてはささやか過ぎますが、これぐらいお安い御用ですよ」
「準一郎にしては珍しく気が利くわねえ。女性の方も連れてきてくれてるなんて」
「はあ?!」
「おはようございます、お母様、お父様」
聞き間違えようとしても間違えられないその声に私は油が切れたロボットのようにぎくしゃくと振り返った。
「グッモーニン、泉田クン」
そんなに爽やかな空気を纏っていたって私は騙されないぞ。一体なんでここに上司サマが参上あそばしたのか。
と顔に書いてあったらしい。涼子はパンフを覗き込んでいる両親をいいことに私の上着を掴んで引き寄せた。
「ちゃんとルス電に吹き込んであったでしょ。今日買い物に付き合いなさいって」
携帯を見ると確かに涼子からの着歴がある。とりあえず、再生して聞いてみる。
(まだ寝てるの?今日は買い物行くからさっさと起きて支度なさい。最寄の駅まで迎えに行って上げるから
アリガタク思いなさいよ。十時には着くからそこで待ってなさい)
それが両親の待ち合わせ場所と時間と一致していたのだ。まったく神サマはこの人に運を贔屓しまくりである。
その分、不運な廻り合わせがこちらにしわ寄せとなってくるわけで…あれ?
「そういう事は今朝いきなりとかじゃなくって、昨日のうちに言うとかしていただけませんか」
「したいと思ったときに行動する!それがあたしのポリシーよ。分かってるんじゃなかったの?」
自信満々に胸をそらされてもなあ。だいいち、今日の私には涼子の言いつけを断る正当な理由がある。
私に課せられた役目を説明すると、涼子の目は沈むどころか興味深そうにキラリと輝いた。まさか…
「今日は、よろしくお願いします。ご両親は東京に不慣れだと聞いておりますし、こういうことに男性は疎いと
相場が決まってますから、私がささやかながら姪御さんの慶事に力添えさせていただきたく」
「そんな、こちらこそありがとうございます。今の女性の好みってことならなおさら今日は心強いわ」
母は涼子の手を取り感激した面持ちである。父の方はといえば…ダメだ完全に涼子の猫被りスマイルに惚けている。
「それじゃ、あちらに車を待たせてありますから。出発!」
先導役をすっかり涼子に握られ、私は覚悟を決めたロバのように涼子所有の運転手付きリムジンに乗りこんだのだった。
676 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/22(月) 09:29:08 ID:9cYcALP4
>>672
朝からGJ!
泉田の母ちゃんが何気に食えない感じが良いね。
677 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/22(月) 10:58:47 ID:1Qkt9q8G
超GJ!!!
文章も原作ぽくて上手いし、女性陣が強いのもいい!
手順思い出すのに必死な泉田がまたらしくていいねえ。
678 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/22(月) 11:21:26 ID:7QT/VOWH
まだそれからあとにも色々なジジョウが発生したのだが、それはまた後で。
神父の祝福の言葉、そして結婚への心構えを説く言葉はいちいちごもっともなことばかりである。
これを何千というカップルが通り抜けているはずなのに、数年で離婚する人も居るというのは
天上の神様でも男女の仲については手が及ばないものらしい。
その神様が今回ばかりは聞き漏らしてくれるようにとこっそり心の中で願いつつ、私は口を開いた。
「汝、この女子を娶り、神の定めに従いて夫婦とならんとす。汝、その健やかなる時も、病める時も、
これを愛しこれを敬いこれを慰めこれを助け、その命の限り、固く節操を守らんことを誓いますか?」
「誓います」
幼きころの学芸会の数少ない舞台経験を思い出し、新郎らしく凛々しく張った声で答えた。
「汝、この男子に嫁ぎ、神の定めに従いて夫婦とならんとす。汝、その健やかなる時も、病める時も、
これを愛しこれを敬いこれを慰めこれを助け、その命の限り、固く節操を守らんことを誓いますか?」
「誓います」
花嫁らしくか細く可愛らしい声ではなく、先生にあてられた生徒が返事するような元気のよさはご愛嬌か。
そういうことで、主従の誓いをした涼子と私はさらに永遠の愛を誓ったことになるわけだ。
後者は模擬である。念のため言っておく。
前もって預けてあった指輪を神父の手から受け取り右手に持ちかえた。手袋を外した涼子の手を持ち
「…なんで握りこぶしなんですか」
「あ。嬉しくってつい、ね」
こういう時にガッツポーズを作る花嫁なんて普通いない。
白魚のような、という表現が凡百に思える涼子のすんなり美しく伸びた薬指に指輪をはめていく。
ついで涼子が私にはめてくれたのだが力任せに押し込むものだからあやうく付き指をしそうになった。
神父がわたしたちの右手を重ね、その上に自分の右手を置いて祝福の祈祷をしたあと見学者に宣言した。
「これで二人は晴れて結ばれました。神よ、祝福を」
模擬ですから、神様。
679 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/22(月) 11:31:00 ID:7QT/VOWH
「では、誓いのキスを」
ああ、はいはい…花嫁のベールをしわにならないように上げるんだって言われてたな。
注意深くベールをたくし上げたところで私の心臓はいきなり不整脈を刻みだした。
もともとが綺麗なところにプロの化粧を施された涼子の顔は三国一どころか宇宙一の花嫁で
緊張でもしているのかわずかに染まった頬が、えもいわれぬ美しさをかもし出している。
…これにキスしろってか。
まじまじと絶世の花嫁を見つめ、私は石像化寸前のありさまだった。そんな私に小さく涼子が囁く。
「早く、なさい」
「とはいってもヒトマエですよ」
私も小声で応対する。
「何言ってんの結婚式なんだから当たり前じゃない。ちゃんとやらなきゃ罰があたるわよ」
「こんな式場付属のチャペル、本式の教会じゃないんですから罰なんて当たりませんよ」
「カトリックだろうがプロテスタントだろうが日本製キリスト婚だろうが誓いの言葉は誓いの言葉、
口にしたからには男なら腹をくくってとっととする!」
このままでは涼子が持ったブーケで殴られかねない。私は敢然と清水の舞台から飛び降りた。
涼子の方へ身体を折って顔を近づけていき、少し顔を傾ける。羽が触れたような感触を一瞬唇に感じた。
「…まさかホントにするとはね」
「だって誓いのキスでしょう?」
「別に唇でなくったって額とか頬とかでOKなのよ。あたしはどこでもよかったんだけど」
よくなーい!と私は叫びたかったが、まだ式は終っていないし見学者は感動しているっぽいわで
私は涼子におとなしく片腕を差し出すしかなかった。
今度は二人で腕を組み、真っ白なバージンロードを仲良く見えるように歩いて教会の外に出た。
式場のスタッフが用意したのだろう。見学者から投げられた白い粒が式服にパラパラと音を立てる。
ライスシャワーというのだそうだ。そしてブーケトス、は最近はあまりないらしい。
ブーケにたくさんのリボンが結ばれており、女性の皆にくじ引きのようにリボンを引いてもらうのだ。
いろいろと結婚適齢期の女性には複雑な駆け引きと心情とやらがあるらしい。
「欲しいなら素直に手を出しゃいいのに、世間一般の女性ってのは一々面倒くさいわねえ」
世間一般からかなり離れたお嬢様はそう私に言ってのけたものだった。
とにかく、堅苦しい式はこれで済んだのだ。一つ伸びをして珍しく晴れた六月の空を見やっていると
揃いのスーツに身を包んだスタッフ達が私たちに速やかに駆け寄ってきた。
「どうもお疲れ様でした。午後から模擬披露宴がありますので、それまでご休憩ください」
純白のウェディングドレスの長く後ろに曳いた裾をお付きの人に持たした涼子と二人、ホテルの一室に
臨時に設えられた控え室に入っていった。
680 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/22(月) 13:17:12 ID:MkdyVqi+
凄え…あらゆる意味で違和感も無いし…
GJとしか言えない。
681 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/22(月) 14:36:39 ID:NzzfhzAJ
GJ!! お涼かわいい
682 :
♯紀子
:2006/05/22(月) 16:06:57 ID:2fTTzZFo
世界征服を考える何てさすが魔女王
683 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/22(月) 18:23:45 ID:7QT/VOWH
やっぱり事件がないと涼子じゃないよなあと思って色々付け足してます。
しばしお待ちください。
684 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/22(月) 18:48:49 ID:BfSMjnQh
GJ!
唇にしちゃう融通きかない泉田くんがnice!
685 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/22(月) 19:57:48 ID:vrPgiiNu
>680
激しく同意<違和感がない
633=673タンの中の人が実はガイエ本人だといわれても驚かないかも
>673=7QT/VOWH
超GJ!
ガッツポーズして指輪押し込むお涼テラカワユスww
きっちり唇にキスしちゃう泉田クンにも萌えた!
どんな事件が起こるのかwktkして続きを待ってる
686 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/22(月) 22:00:03 ID:7QT/VOWH
夏も近いとあって正装した格好はいささか暑くるしい。涼子はといえば汗一つかかずに涼しい顔だ。
というのも道理でお付きの人が甲斐甲斐しくアイスティーを差し出し扇で涼子に風を送っている。
「やっぱり式は花嫁さんが主役だものね。私のときも色々気遣ってもらったものよ」
控え室にやってきた両親があらためて涼子の美貌に見入っている。
涼子のウェディングドレス姿は昨今流行だという形では無く、首筋まで襟が高く立ち上がった
クラッシックなスタイルのものだ。今はベールを取り素の頭であるが、式の最中その頭上には
庶民には縁が無い価格の時価七億だとかいうダイヤモンドのティアラが載せられていたのである。
「本っ当に綺麗だったわ。私、すっかり感動して目が潤んでしまって」
「ええ、模擬とはいえなかなか本格的な式でしたからね」
「もうこれで肩の荷がすっかり降ろせるってものだよな、母さん」
「降ろすのはもうしばらく待ってて下さいよ。模擬なんですから、今日のは」
「…なによ、モギモギモギモギうるっさいわね」
「暗かった受験時代でも思い出しましたか」
「そんなもん、あたしにあるわけ無いでしょ」
そうでしたこの人はストレートで東大法学部に合格あそばされたんでした。
ちなみにこれは両親が他所を向いているときに交された、挙式直後のウイウイシイ会話である。
とりあえず、涼子は私の両親の前では猫をかぶり続けることに決めたようである。
少し時間を戻して、なぜ新郎新婦の役をすることになったのかを話すとしよう。
はた目には新郎新婦予定のカップルと新郎の両親といったテイサイでホテル入り口の受付に座り、
フェアの参加用紙にあれこれ記入していると、にわかに周囲があわただしい空気に包まれた。
今日の責任者らしい人が部下に耳打ちされ、顔色がみるみる変化する。その人の視線が
フェアの会場内を忙しくさ迷った後こちらを見て目を見開き、慌てたように駆け寄ってきた。
「まことに申し訳ございませんが、ウェディングドレス着ていただけないでしょうか?」
「え?」
一同が突然投げ込まれたお願いに目を丸くしたが、母に頼んだわけはないしもちろん私でもない。
責任者の目はすがるように涼子を見つめ続けている。
687 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/22(月) 22:02:02 ID:7QT/VOWH
「事情を聞かせてもらえますか?」
「はあ。その、今日の模擬結婚式の花嫁役のモデルが貧血とかで倒れてしまいまして、
代役も立てておらず今スタッフ一同手配で走り回っているのですが何分急を要することで。
そんなとき、まさに花嫁に相応しい方を見つけたものですから、お声がけさせて頂きました」
「お目が高い!」とはいわなかったが、これは面白いことになったと涼子の心が弾むのが分かった。
「もちろん謝礼はお支払いします。どうかお引き受け願えないでしょうか」
涼子はその頼みを快諾した。相手には涼子の微笑みが天女のごとく映ったことであろう。
「そういう事情ならお引き受けいたしましょう。けれども、謝礼は結構ですわ」
そういうわけにはいきません、と押し返されたがこちらが公務員であることを告げると口を閉じた。
「ですが、なにか今日のお礼をさせてはいただけないでしょうか?」
「でしたら」といって涼子は両親のほうを振り向いた。
「今日の宿は決めてらっしゃらないのでしょう?彼の両親に一つ部屋を用意して頂けませんか?」
「もちろん、お安い御用です。すぐ手配いたしましょう」
駅前の適当なホテルをとることを考えていた両親がこの幸運に喜ばないはずがない。
他人事のようにのほほんと構えていたら、なんと今度は私にお鉢が回ってきた。
「そのですね、お嬢様はすらりとして身長がおありになりますから、よって新郎役のモデルだと
いささか高さが不釣合いという事で、そちらの方にも新郎役をやっていただけないかな、と」
私は即答できなかった。代わりに涼子がさっさと了解の返事をしてしまっていた。
「ご両親の一泊の宿がかかってんのよ。親不孝になりたくなければ引き受けることね」
気が進まない、という消極的な理由を吹き飛ばす涼子のセリフに私は首を縦に振るしかなかった。
まあそういう事情で、今日の佳き日に涼子と私が挙式をする運びとなったのである。
休憩の後は模擬披露宴である。
色んなイベントがあるそうで、いくつか希望のものを選ばせてもらえた。
説明を聞きながらとりあえず無難なものを指定した。カクテルタワーだとかレーザー光線とか。
色々それらについて私も詳しくなったが、ガータートスについては積極的に辞退申し上げた。
興味のある諸氏は各自調べること。私の両親の手前、あからさまにガッカリはしなかったが
涼子はつまらなそうな顔つきになった。いや、危なかった。
さて、披露宴といえばドレス。ドレスといえば女性の夢。ということで母と涼子は衣装棚の中の
あれこれきらびやかなカクテルドレスを熱心に目で追っていたが、これは式側から指定された。
コーディネーターが選び抜いた今年の新作だそうなのだが、果たしてどんな姿で登場するのやら。
688 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/22(月) 23:47:29 ID:3AjZEDYY
土曜日に、あんなモノを見てしまったから
なんか涼子と泉田の一夜を想像すると
ディーバとリクのような感じになっちまう・・・
689 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/22(月) 23:53:18 ID:YHbyX0S3
読んでてニヤニヤが止まりません…GJ!
690 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/23(火) 00:15:01 ID:QvKXkMo9
>688
泉田が文字通り食われて鬱ENDかw
691 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/23(火) 01:38:22 ID:/nfaiORw
さきほどと同じように開始のアナウンスが場内に流れ、私と涼子はいまだに人気だという
タイタニックのテーマ曲で披露宴会場に入場した。
「花嫁なんですからゲンナリした顔しないで下さい。私だってシンボウしているんですから」
そう忠言するのも、会場中の視線が涼子に注がれているのが判っているからである。
涼子の胸元にあるのはイエローダイヤモンドが中央に輝く2億はするというネックレス。
それに勝るとも劣らぬ魅力を放つ完全無欠の美脚とハイヒールがドレスの裾を交互にさばく。
後ろから見るとロングなのだが、正面から見ると膝上20センチという変わった形のドレスで
涼子はその美貌で何でも着こなしてみせるが、このドレスは涼子のために仕立てられたと思えるほど
完璧に似合っていた。羨望とも嫉妬ともつかぬ溜息が満ちるテーブルの横を通り、ひな壇に着席する。
スタッフの教育も良く、進行もスムーズに披露宴は進む。ゴスペル歌手の美声が会場に響くころには
すっかり私にも余裕がうまれて、目の前の料理に手を出し始めた。
「ん。宴席料理は冷めて不味いというのが定説なのに、ここのはなかなかね。及第点上げてもいいわ」
食べないの?と涼子の目が問うが、花嫁にここまで堂々と食事されては窘める気も起きない。
その間にも目の前では挙式予約数を上げようと、さまざまに目を引くイベントが展開されている。
見学者から時おり歓声が上がるが、絶妙なジャグリングにもかかわらず涼子は退屈そうである。
コース料理はコーヒーまで進み、せいぜいお代わりをするぐらいの用事しか私たちには無い。
拍手がひときわ大きくなりショーが終った。芸人が退場しようとして、会場内に再び転げ込んできた。
涼子の鋭い勘が異変を感じ取り、退屈に沈んでいた眼がダイヤモンド以上に強く輝いた。
「待ってました!」
本当にどうして涼子と二人行動するとなにやら事件が起こるのだろうか。
止める間もなく涼子はすっかり片付いたテーブルをひらりと飛び越え絨毯を蹴って走り出していった。
花嫁に逃げられた花婿と見られては格好がつかないので私も急いで涼子の後を追いかける。
披露宴を放り出していきなりホールに飛び出してきた花嫁を見てスタッフが慌てて呼び戻そうとするが
「あたしは警視庁刑事部参事官、薬師寺警視よ!何が起こったのか誰か説明して!」
涼子が名乗る肩書きと絶世の美貌の花嫁を目の前にしてスタッフは聴覚と視覚に混乱をきたしたようだ。
仕方ないので私が手近なスタッフをつかまえて事情を聞きだした。
「強盗事件?」
「ええ、さきほどあなたが頭に載せていたダイヤのティアラが押し入った男に持ち去られたそうです」
「その男はどこに逃げたの?」
考えるまでもなかった。あちこちで男に突き倒されたのであろう悲鳴の先を辿ればいいのである。
世界一ゴージャスな花嫁が疾走する様にフェアにやってきた客たちの足が軒並み停止する。
申し訳ないが、幾人かそういう人を押しのけ涼子と二人廊下を走り続けた。
悲鳴との距離はだんだんと縮まっている。床が絨毯から大理石へと変わった。
陽光が明るく差し込む階段ホールにて、私たちは階段を転げるように走る強盗犯を眼下に発見した。
692 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/23(火) 01:39:14 ID:/nfaiORw
涼子の手がドレスの裾をふわりと跳ね上げた。まばゆいばかりの腿が目の前に露になる。
そこにあったのは色っぽいガーターベルト、ではなくバンドで止められたコルト三二口径だった。
「なんでそんなのをドレスの下に装備しているんですか!」
「拳銃を手にする花嫁なんて格好良いと思わない?」
「何を言ってるんですか!とにかく、発砲はいけません!」
「だってあいつ、もうあんなに先よ!」
男に突き飛ばされて倒れた人たちで目の前の階段は塞がれている。流れた血で大理石が赤く濡れている。
周囲を見回し他に降りられる所がないか懸命に探し――あった!
「下りのエスカレーターがあります!あっちへ!」
「それじゃ遅い!」
「ならどうやって追いかけるんですか?!」
「これよ!」
涼子がぴしりと指差したのは大理石の階段、の横の手すり。何を言わんとするかは分かったが、本気か?!
「泉田クン!あれをお持ち!早く!」
一体これで何をするんだという疑問が脳に到達するより先に脊髄反射で手が伸び、受付台の上にある
ドリンクを運んでいた長方形のステンレスの盆を腕に抱え込んで涼子のそばへ駆け寄っていった。
「ここに乗せる!」
手すりの一番上に私が置いたのを見て取った涼子は床を踏み切って、その長盆の上にひらりと飛び乗った。
重みが手にかかった刹那、手を離すとスケートボードよろしく涼子は手すりの上を長盆で滑降していく。
ドレスの裾が戦闘天使ワルキューレの羽のように華麗にはためく。それを視界の隅に捉えつつ
私も階段を三段飛ばしで駆け下りていく。終点が近くなり涼子は上体をやや起こしタイミングを計って
手すりの跳ね上げ部分から――飛んだ。
方向、距離も狙い過たず果敢なワルキューレが空を切って強奪犯を急襲する。涼子の動きの一つ一つが
スローモーションのように見えたが、実際はわずか四、五秒の間の出来事であったろう。
グバアアン!と派手な音と「ごわっ」という呻き声とともに、犯人はぐしゃりと涼子の一撃に崩れ落ちた。
犯人の手からティアラが離れ、カラカラと床を滑っていく。どうせ犯人は気絶してるだろうから
先にティアラに駆け寄りはっしと手に取り、胸から抜き取ったチーフにそれを包むと立ち上がった。
「お見事でした」
「あなたのアシストあってこそよ。さすがあたしの花婿!」
違う!まだそうじゃない!と即座に思ったが言って涼子を刺激するのもなんなので、黙っていた。
今日ぐらいは言わせておいてもいいだろう。一応模擬とはいえ式も挙げたことだし、うん。
「手に持ってるのは?泉田くん」
「取り戻したティアラですよ、ほら」
広げたチーフからダイヤモンドのきらめきが零れ出る。涼子はそれを優雅に取り上げ自分の頭に載せた。
「私の結婚式をよくも無茶苦茶にしてくれたもんだわね。あとでうんと絞り上げてやるから覚悟なさい!」
「気絶してるんだから聞いちゃいませんって」
念のため繰り返させてもらうが、私の結婚式じゃなくウェディングフェアの模擬結婚式です。
693 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/23(火) 01:41:42 ID:/nfaiORw
華麗なドレスに豪華なティアラを身につけた涼子は可憐な花嫁姿からは数億光年の距離にあった。
戴冠直後のエカテリーナ女帝かエリザベス女王のごとき、後光も差そうかという凛々しい立ち姿である。
…となると、私は花婿じゃなく従者か忠臣といったところであろうか。
足元でくたばっている現行犯を後ろ手にネクタイで縛り上げたところで女王様はいきなり駆け出した。
「ちょっと待ってください!あなたが強奪犯になってどうするんですか?」
「こんなの幾らでも買えるわよ失礼ね!これが単独犯のわけないでしょ?仲間が外で待機してるはずよ!」
カンカンとハイヒールの音も高く涼子はホールの外へと飛び出したが、休日開催のフェアであるから
外には沢山の人だかり。そのせいで誰が犯人のお仲間やら見分けがつかない。涼子も戸惑っているようだ。
「取ってきたぞ!受け取れ!!」
鋭い一声、そしてキラキラ光ったものが目の前を飛んでいった。男の手が人ごみの中から突き出る。
「お巡りさん!あのグレーのジャンパーを着た男の人です!」
それを掴んだ男が「なんだ!違うじゃねえか!」と叫んで地面に叩き付け、人ごみの中を逃げていく。
突然のアクシデントのお陰で私も涼子もその男の見分けがついたが、それよりもこの聞きなれた声は!
わたしたちが追う前に、制服警官がその男に詰め寄り地面に押し付け、手錠をカチリと嵌めていた。
屈強な身体を水色の上着と藍色のズボンに押し込めたその警官は、わたしたちの姿に驚きの目を向けてきた。
「これは…本日はお目出度うございます、お二方。私にお呼びがなかったのがいささか残念でありますが」
「本番にはちゃんと招待状を送るから安心なさい。こういう格好をしているのは事情があるの。また後でね」
「はっ」
頭上に冠を頂いた女王陛下にうやうやしく礼をして阿部巡査はパトカーに担いだ男を放り込み去っていった。
公務員がアルバイトしたってバレたらマズイよなあ。でも現金を貰っているわけではないから別にいいのか。
「まったく、心配するところが的外れなんだから」
「何のことでしょう?」
優雅に頭を振る涼子をその場において、私は犯人逮捕のきっかけとなった二人の姿を探し出した。
「準一郎!さっきのお巡りさんと知り合い?とても強そうだったわねえ」
「何やってるんですか二人とも!危ないことしないでくださいよ」
「だってほら、警察に協力するのは善良な市民の義務っていうじゃないか。なあ母さん」
「ええそうですよ。しかも息子が警察官だっていうのに見てみぬふりをする道理がありますか」
「そういう心ある市民の支えで私たち警察は職務に邁進できるのよ。泉田クン、ご両親に謝りなさい」
頭上と胸元に合計数億のダイヤを身につけた警察官らしからぬ姿で涼子が私に懇々とお説教をする。
どこかシャクゼンとしないまま、声を荒げてしまったことを私は母に詫びた。
694 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/23(火) 01:42:42 ID:/nfaiORw
「あ。」
涼子が突然棒立ちになる。猫の毛皮を脱ぎ捨てて逮捕劇で堂々主役を張ったことを思い出したらしい。
「涼子さん…」
「はい」
いまさら遅いが、しおらしく涼子が返事をする。
「あなた…」
教師の審判を待つ子供のように緊張した面持ちの涼子に助け舟を出そうと口を開きかけ
「格好よかったわぁ。本当に凛々しくって素敵だったわ、あなたの様な人が警察にいるなんて心強いわ」
そう言われた涼子の顔はなんといったらいいのだろう。照れていると見て取って、いいのだろうか。
「…ありがとう、ございます」
掛け値なしの本心で涼子が母に感謝の言葉を述べる。
「こんな娘がいてくれたらなあ、と思っていた通りの子で嬉しいよ。でかした!準一郎」
…正気か親父?とはこの場で言えるはずもなく、ようやく追いついたスタッフに強盗犯から
取り返したティアラを無事返却して我々一同はようやく安堵したのであった。
ホテルの客室のソファーに掛けていると、涼子は冷蔵庫を開けビールの缶を二つ開けて私によこした。
「ホントはシャンパンで乾杯、といきたいところだけど見当たらないし喉も渇いてしょうがないから
コレにしておきましょ」
さっきの大立ち回りで私も涼子と気持ちを同じくしていたので、その提案に進んで賛成した。
爽快な炭酸とアルコールが渇いた喉に染みとおっていく。
「ああ、キンベンに働いたあとの、しかも善いことをした後の一杯はほんっと最高よね」
「まったくです」
珍しく涼子と思いが一致したことにしみじみと感慨を抱きながら私は一本一気に飲みきった。
一息ついて、扉の開いたクローゼットに目がいった。…ああ、そうだった。
「な、なに脱いでんの泉田クン?!」
「この衣装で帰る気ですか?着てきた服が、ほらあそこにありますから着替えて帰りましょう」
頬が染まった涼子の狼狽え顔を見ている内に、血中に廻った酒精が余計な悪戯心を呼び起こしてしまった。
「このまま結婚式の続きして帰りましょうか?」
「つ、続きって!ナニ言ってんの?!」
「あなたが想像しているだろうことですよ」
涼子の顔がすっかりピンクに染まりきった。涼子の手の中で空き缶がパキパキと音をたてて潰れていく。
自分で言っておきながらあまりの効果に逆に驚きつつ、私はタキシードの上着を無造作に椅子にかけ
ネクタイに手をかけた。「なんてね」と続けようとして振り向きかけ、私の視界は縦に90度回転した。
695 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/23(火) 01:49:19 ID:/nfaiORw
「…そこまで言われて黙って引き下がるワケにはいかないわ」
涼子の顔が眼前に迫る。体をひねった不安定な姿勢を涼子に突かれてベッドに倒れこんだのだ。
喉元が涼しくなりボタンを外す音がして、自分の置かれた状況が分かった私は一気に酔いが醒めた。
「じょ、冗談ですってば」
「冗談で済ませようたって、あたしの耳に入ったからにはそれで済まない事ぐらい分かってるでしょ?」
「人が来ますって!」
「…そんなにイヤなの?」
涼子が私の上に乗ったまま悲しげに俯いた。女性を泣かせたというよりもコドモをいじめているような
なんともいえない自責の念が私の胸中に湧き上がってくる。しおれた花のような涼子の顔を見られず
視線を下げてしまった。2億のネックレスが目に眩しい。
…すみません正直に白状します。大きく開いたドレスの胸元から覗く艶かしい乳房の丸みに私の目は
釘付けになってしまった。しかし長々と見とれている訳にはいかない。
「嫌なわけじゃないですよ。ただ、あのですね、」
花嫁からベッドに押し倒され、しかも服を脱がされかけているのが新郎というのは、たぶん初夜として
珍しいパターンではないだろうか。
「イヤじゃないならこのまま進めるわよ」
「待って、落ち着いてください!」
どっちが花嫁のセリフやら。涼子の面目をつぶさずこの貞操の危機をどう回避しようかと頭を廻らせる。
「だから、ダメですって!式を挙げたといっても今日は模擬なんですよ」
「花嫁がいいって言ってるのに、何がダメなのよ」
「そういうことは本番のときまでしたくは無いんです!」
「ホンバン?」
「そうですよ、人生に一度きりの事なんですから模擬の式なんかで無駄遣いしてはいけません。
だから、その時まで…その、大事に取っておいてください」
「…分かったわ」
たっぷりの沈黙の後、そう言って涼子は私の上から衣擦れの音をさせつつ大人しく離れてくれた。
無事この場を切り抜けることができたようで私は大きく肩で息をつく。
コンコンとノックの音の後、式場のスタッフが涼子の着替えを手伝いに中へ入ってきた。
「…お取り込み中でしたか?」
「いいえ!」
とるものもとりあえず私は急いでタキシードを着替えて部屋の外へと飛び出したのだった。
696 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/23(火) 01:50:07 ID:/nfaiORw
廊下に飾られた水彩画を眺めながら待っていると、普段のスーツに着替えた涼子が姿を現した。
「待った?」
「いいえ、それほどは。思いとどまってくれたようでなによりです」
「なーんか言い方に気になるものがあるけど、確かに泉田クンの言うとおりだわ。それにそういうことは
それなりに準備というものが必要でもあるしね」
「そうですよ」
ようやく涼子と普通の会話ができるようになって、私はいつものペースを取り戻した。
「その時が楽しみだわ」
笑顔の涼子につられ私も笑顔になるが、いつに無く涼子が上機嫌なのはどういったわけだろうか。
ホテルに泊まる両親に見送られ、私と涼子はロビーを横切りホテルの玄関から足を踏み出した。
数歩歩いたところで、自分の左手に光るものを発見した。
「しまった!ちょっとホテルに戻って返して来ます」
「いいの。このまま帰りましょう」
上着を掴んで引き止めた涼子の左手に光っているのは、私と揃いの結婚指輪。
オカネモチの涼子サンがとっくにお買い上げを済ませたとのことだった。
「今日の記念よ。エンリョしないで貰っておきなさい」
「記念、ねえ」
「色んなことが今日はあったでしょ?だから、ね!」
朗らかに笑って涼子は初夏の宵の空に左手をかざして見せた。月に照らされたプラチナが涼やかに光る。
「無くしたりしたら承知しないわよ」
「はい、大事に部屋に保管させていただきます」
「ん、よろしい。本番まで私も着けないでおくけど」
今日は確かに式を挙げたが、模擬だったんだよな?その認識がどういうわけかどんどん揺らいでいく。
「泉田クンは何も気にしなくっていいの。世間が認めりゃ事実なんて後付けでかまわないのよ」
それってつまり…なにやら胸が騒ぐ予感を感じつつも、私は差し出された涼子の手を拒めなかった。
「あら、なんだかんだ言ってすっかり準一郎もその気じゃない」
「…来年あたりに式の予約入れて帰ろうか」
「まあそれは、二人に希望を聞いてみないとね」
そんな会話が後方で交わされているとも知らず、私と涼子は手をつないで満月の下をふたり歩いて帰った。
終わり。
697 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/23(火) 01:55:22 ID:32NlOrjO
すいませんあなた一昔前の魔天楼書いてたあたりのY.Tさんですか?
面白すぎました。GJ!
>違う!まだそうじゃない!
泉田クン「まだ」って言ってるね。てことは(ニヤリ)
698 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/23(火) 02:00:29 ID:/nfaiORw
違いますよー。
始茉理やら書いた人です。
>>697
699 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/23(火) 03:01:51 ID:77SkiTn7
烈しくグッジョブ!
地文が泉田らしくて、すごい萌える
ヒロインの強さ&可愛さも勿論だけど、泉田や始のちょっとヘタレたかっこよさの描写がホント秀逸ですね
また機会あったら、始茉理も書いてほしいな
誠にGJ!
ありがとでした!
700 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/23(火) 03:31:15 ID:vTGhqfn/
うん、自分もまた希望させて頂きたいです>始茉理
それにしてもGJ。
本っ当これしか言えんで申し訳無いけど。
701 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/23(火) 07:43:34 ID:G6d7NAGg
朝からいいのを読ませてもらった
顔がにまにまするのが止められないw
702 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/23(火) 11:36:15 ID:EmENAfj3
GOD JOB!!
未遂が残念だけど本番にとっておかないとねw
あ、自分も始茉理読みたいです
703 :
♯紀子
:2006/05/23(火) 13:28:13 ID:l06aGRcN
GJ!!
涼子&泉田は当たり前すぎる、室町由紀子警視&岸本明バージョンもお願い!!
704 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/23(火) 16:59:12 ID:XpSjKLe6
すげーよ!天才かよ!
705 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/23(火) 19:43:37 ID:ZMD8Omwb
ネ申キテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
もうね、萌えすぎてヤバイ。ヤバイよ。
>673にはスレ住人の萌えすぎの責任を取ってもらいたいwwwwwww
ワクテカ
706 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/23(火) 23:17:29 ID:pmPSmFlM
GJ!!!
マジですごすぎる。
未遂なのに、禿萌えた。
次回作に期待してもいいですか!!
707 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/24(水) 03:50:26 ID:2xBsF+Ht
おお。大反響(驚喜)
パロの次回作
↓
↓
708 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/24(水) 03:51:05 ID:2xBsF+Ht
「薬師寺警視、今晩空いてらっしゃいますか?」
私の問いかけに、コーヒーカップを優雅に傾ける動作が一時停止した。
「空いてないと言ったら、君どうするつもり?」
「だったら予定がない日にまたお声かけするまでです」
「へーえ、そんな熱意が泉田君にあっただなんて、ついぞ知らなかったわ」
露骨なカラカイに乗るほど私は未熟者ではない。そういう風に忍耐という美徳を
私にしっかり根付かせたのは、そうのたまう目の前の上司のお陰である。
「…指輪の件で。」
涼子の気取った微笑み顔に驚きが走り、指先はジノリのカップを取り落としかける。
私は一言、言っただけだというのに。
「そ、それは今晩の話なの?」
「できれば早めの方がいいのですが」
「わ…かったわ。ちょっとスケジュール調整するから待ってなさい!」
それが午前のお茶休憩での話。
そしてお昼を挟んだ午後には涼子の姿は消えており、私は溜まった書類仕事に没頭できた。
終業の鐘の10分前頃、私の肩に手が置かれた。見ずとも芳しい香りで相手が知れる。
「じゃ、その件とやらにつきあうとしましょうか」
「お店はもう押さえてありますが、予約時間には早いんですよね」
書類を机の上で揃えて鞄にしまいながらそう言うと涼子の顔がサッと染まった。
「そう、よね。あたしとしたことが、ついうっかり」
うっかり?涼子はそう言うが、どうみてもこれはウッカリという出で立ちではない。
髪はサラサラにブローされキューティクルが天使の輪を浮き立たせているし、
肌は風呂上りのようにピカピカ輝き艶やかな絹のようだし、さらに服が午前中と違う。
留守だった午後がいったい何に費やされていたのか、これでようやく分かった。
「…まったく」
私の嘆息を見て聞こえぬふりをして涼子が手を腰にあてて胸を張る。
「サボリじゃないわよ。半休申請したし、公金も使ってないわ」
「あなたがそういうことをする人じゃないってのは分かってますってば」
食事の前に喫茶店というのも中途半端だしなあ。さて、この時間をどう潰そうか。
だが悩む必要はなくなった。飛び込んできた事件によって。
時計の針は、終業一分前を差していた。
709 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/24(水) 03:53:06 ID:2xBsF+Ht
――ずいぶんこれまた、手酷い拷問されたもんだよなあ。
床の上に白目を向いて口から泡を吹くチンピラたちがずらりと十数名。
気絶している相手にさらに蹴りをヨウシャナク入れようとする涼子の足を見て
私はそれをどうにか思いとどまらせた。
「これ以上やったら過剰と見なされますよ」
「ゼンゼン足りないっ!それぐらいの重い重い罪をこいつらは犯したんだから!」
重いのか?水商売のスカウト同士が道路上で乱闘を起こした程度の罪が。
「もうこんな時間ですか。予約もお流れになってしまいましたね」
腕時計を眺めて溜息をついた。憤懣やるかたないといった涼子の顔が今度は暗く沈む。
「次はいつなら空いています?」
私の再度の申し込みに、涼子の顔が上向きになり私の顔を意外そうに見つめた。
「言ったでしょう、都合が合うまでお声掛けしますよって」
色あせた花が逆回転映像を見るように鮮やかな花にみるみる戻っていく。
「明日にでも!」
今日はどんな事件も終業間際に飛び込んてきたりせず、涼子にギャクタイされる
犯罪者も発生しなかった。二人で警視庁の自動ドアを抜け、先日より少し早めに
予約を入れた店に向かう。なぜか出る際に貝塚巡査がいやに熱心に涼子の手を取り
「がんばってください!」などと激励していたが、いったいなんだったのだろう。
「…まあね、そういう事だとはうすうす予想してたのよ。でもわずかな可能性に
期待しちゃうのもオンナノコってものだし」
「気に入りませんでしたか?」
「ううん、店はいいの。趣味のいい店で良くベンキョウしたのね泉田クン」
「そうおっしゃる割にはえらく笑顔が皮肉っぽくありませんか?」
「それが分からない男だとよーく知っててそうなんだから自己責任よ」
「指輪の代金には到底足りないでしょうが、今日のはキモチということで、一つ」
「はいはい」
「…あなたからそう言ってきたんではなかったんですか?」
「はいはい」
目の前の料理を気持ちいいほどに片付けていく涼子を見ながら私は腑におちないでいた。
(エンリョなく貰えったって、これプラチナですよ。すんなり貰えませんって)
(じゃあ今度夕食奢って頂戴よ。高くなくていいから、雰囲気のいいところヨロシクね!)
その通りにしたと言うのに、いったい何が足りなかったのだろうか。夜景か?
首をかしげつづける私に、とうとう涼子は何かが吹っ切れたかのように吹き出した。
追加のワインをオネダリしたので、私はウェイターに向かって合図を送ったのであった
710 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/24(水) 03:56:11 ID:2xBsF+Ht
何が足りなかったのかは書くまでもありませんねw
それじゃ。
711 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/24(水) 04:18:04 ID:vj6qU7kD
うおおおお〜!
お涼タンかわええ…
>>710
GJ!!
712 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/24(水) 05:00:52 ID:QDkIwCdP
ぐっじょぶ!
お涼も泉田もめっさ可愛いよ
っていうか泉田、いい歳してお前ってやつは…w
713 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/24(水) 09:18:18 ID:73PZeLGX
感想サンクス
エロパロ板だというのにエロ無し投下続けてしまいましたが、筆もこなれてきたので
次はエロ!取り掛かります。
714 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/24(水) 15:30:07 ID:K5T8vVSH
(b゚Д゚)<GODJOB!!
全く乙女心が解らない泉田くんですな!それが泉田くんなんだけどw
エロ!ついにエロですか!wktkで待ってます!(*´Д`)ハァハァ
715 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/24(水) 17:22:09 ID:QDkIwCdP
>>713
おぉ〜エロ始動っ!
ありがとう、お待ちしてます
いつまでもお待ちしてますので、713氏のペースでドゾ
あぁwktkだな…
716 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/24(水) 22:20:02 ID:C5PagjKx
>713
GJ!
お涼が午後の半休でwktkしながらボディに磨きかけたり
何着て行こうかとメイド相手にファッションショーしてるの想像してモエスw
お涼かわいいよお涼
そんでエロクル━━━━(゚∀゚)━━━━!?
wktkして待ってる。
717 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/25(木) 03:04:51 ID:Pb/bD8lo
続きを気体
718 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/25(木) 06:21:24 ID:FQ3mWKg9
お涼かわいい……
ありきたりな感想になってしまいますが
でも、やっぱりすごくよかった!!
エロの有無に関わらずお待ちしています!
719 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/25(木) 15:09:37 ID:Pb/bD8lo
最高GJ
720 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/25(木) 23:38:31 ID:LAzuc2MS
GJ!GJ!!
この鈍感さ!ありがとう、これぞ泉田
エロが無くてもいいから(いや、読みたいけど)
お待ちしております。
721 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/27(土) 23:32:53 ID:GCGPIHqR
漏れも続きを期待するぞ
722 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/29(月) 00:10:25 ID:sJ/3zLFr
期待あげ
723 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/30(火) 00:33:16 ID:iTf/GHKA
age
724 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/30(火) 06:52:14 ID:XZpg9+7S
ライヒルとかカリユリ予告してた方はどうしたのだろう…
お忙しい?
725 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/30(火) 23:24:35 ID:iTf/GHKA
銀英伝のその後が気になる。
神の降臨に期待。
726 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/30(火) 23:37:13 ID:UTI8186U
タイタニアのパロがないのが寂しい。
やっぱりみんな続刊が出ないから忘れてるのか?w
ジュスラン×フランシア(儚い系)とか
バルアミー×リディア(炉)とか
イドリス×テオドーラ(殺伐ハァハァ)とか
萌えカップル満載なんだけどなー。
727 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/30(火) 23:43:33 ID:L2FXd0oG
>タイタニア
やっぱ燃料が無い。
王女様キャラクター強烈って言うかなんと言うか。
好きなんだけどね。
728 :
名無しさん@ピンキー
:2006/05/31(水) 00:13:08 ID:k05/rjDZ
アル戦のパロもほしいな。
729 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 12:22:06 ID:JRVDILnZ
前置きを兼ねた泉田×涼子の小ネタ 開始
730 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 12:23:09 ID:JRVDILnZ
目の前のステージはまだ準備中らしく、スツールに掛けているバンドはチューニングの真っ最中。
周囲にはそれぞれ洒落た格好をした老若男女たちが席についている。若、の部分がやや少ないか。
日本語のほか、英語だけでない外国語が沸き立つシャンパンの泡のように耳に入ってくるが
その会話の切れ端のいくつかは、どうやら私の目の前に座っている人についてのものらしい。
だがそれも当然と思われる。ラメが織り込まれているノースリーブのニットの胸は形良く盛上がり
ゴールドの細い輪が幾つも腕で上品な光を放っている。ほの暗い照明の下でも光り輝くその美貌。
ミニタイトから伸び出た長い脚は、今晩の女性客の中でイチバンの札が下がっていること間違いない。
ジャズの夕べに相応しい、まことに見目麗しい姿である。
「泉田君。もうちょっとさ、何ていうか…スーツ以外の服って持ってないの?」
「警官の制服で来たらよかったですかね」
自分でも下手だと思う冗談を涼子はことさらツメタク無視してくれた。
「でも君があんな脳ミソが沸いたオヤジ達みたいになったら百年の恋も即刻冷めちゃうだろうから
まあ、その格好もカンベンしてあげるとするわ」
私もまた上司のザレゴトには手をつけないことにして
「私は、あなたが常々嘆かれている通りつまらない男です。ジャズに誘うのがそもそも間違いです」
それをつかれると涼子も弱いらしい。それ以上私の服装に文句をつけることをしなくなった。
「じゃあ言うけどさ、せめて靴ぐらい洒落たもん履きなさいよ」
「捜査聞き込みでくたびれた靴は、刑事の証です。職務熱心ということで良いじゃありませんか」
「ふん」
機嫌を損ねてしまった。そっぽを向いた涼子の硬質な唇から独り言か何やら漏れている。
「買ってあげるのが一番早いんだけど、そういうの泉田君嫌がるだろうしなぁ。それにそんな
押し付けがましい女のようなマネなんて絶対絶対やりたくないし。ああもう、面倒くさいっ!」
なにやらどんどん一人で不満をエスカレートさせていく上司と目を合わせないようにしつつ、
ライブハウスという初体験の場所を観察していると、たしかに色んな客が来ているものだ。
イタリア男なら似合うだろうが日本人ゆえ貧相な胸元を必要以上にはだけた頭の軽そうな中年男と、
これまた中途半端な年齢ゆえ開けた胸元が色気過剰になってしまっている女性とのカップルが
多いのに気がついた。うーむ、確かに涼子に言われるまでもなくアレはキビシイよな。
それにしても向こうに一人座っている黒髪の美しい女性は…もしや。
731 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 12:24:08 ID:JRVDILnZ
「ニューカンネックレスなんかにまんまと見とれてんじゃないわよ!」
と唐突にネクタイを引っ張られた。ああいうのをそう言うものなのか。漢字では乳間と書くらしい。
アホらしい。しかも知ったからといって誰に披露するべくもない要らん知識である。
「それを見てたんじゃありません」
それにソンナモノに目が行くわけがない。目の前の女性は無意識有意識に関わらずその場の視線を
地引網で掻っ攫っていくほどの魅力の持ち主なのだ。ただし、黙っているならという注釈が前に付く。
「じゃなくって、あの女性ですよ」
と本当に見ていたものを涼子に正直に言ったのだが瞬時に後悔した。
その女性とは、警視庁警備部参事官室町由紀子警視。
涼子の顔がイジワルに輝いた。ろくでもないことを考え付いたに間違いない表情である。
なにせ目の前にいるのは旧来のライバル、天敵、ハブとマングース、とまあこれだけ並べれば
二人の関係はご理解頂けるだろう。
こういう場所だけあってさすがに由紀子も堅苦しいスーツ姿ではないが、彼女が纏う知的な雰囲気は
このくだけた空間の中、そこだけ空気が違っているように見える。
「一人で来るなんてまったくブスイな女だこと!こういう所は男にエスコートされて来るものなのにさ」
ツンと鼻をあげるが、涼子はエスコートされた側ではなく、した側ではなかったろうか。
「いや、グラスが二つあるじゃないですか。相手の方と来てらっしゃるんですよ」
「あんなジャズのグルーヴも分からん女を誘うような物好きな相手、見ないわけには行かないわ」
椅子から立ち上がりかける涼子を慌てて引き止めた。
「ちょ、ちょっと待ってくださいって」
「あら?泉田君だってモノズキなその相手、気にならない?気になるでしょうが」
「そうやって決め付けないで下さいよ」
せめてもの意思表示として、軽く肩をすくめて溜息をついてみせる。
732 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 12:25:18 ID:JRVDILnZ
「なんでまたそんなに室町警視にからむんですか」
「あら、だってこれは自然な衝動よ。悪徳政治家の済まし顔のポスターに落書きしたくなるのと同じ」
それは犯罪です。公職選挙法でいうと、ポスターにいたずらしたら4年以下の懲役もしくは
禁錮または100万円以下の罰金。まあ涼子にとってはその程度はハシタ金なんだろう。じゃなくって。
それに由紀子は少々生硬なところは見受けられるものの、断じて悪徳なんかではない。
「だって、じゃないでしょう。小学生みたいなこと言わないで下さい」
「あたしは自分の感情に正直なだけよ」
「プライベートの時間ぐらい、お互い穏やかにしたらいかがです?」
特にあなたです、と言ってしまうと危機が私に向かうこと確実なのでここはケンメイに口を噤んだ。
「どうして皆が皆お由紀には甘いんだろ!不公平!」
「そんなことはありませんって」
「違わない!」
そう断言して手元のフルートグラスを粋な仕草でクッと煽った。
「だいたいね、どっちも同じだけの成果を挙げた場合、手放しで褒められるのは毎回お由紀、
私への評価は毎回留保付き!これがヒイキじゃなければなんだって言うのさ」
テーブルに肘をつくも気だるげなアンニュイには程遠く、まるで不貞腐れたコドモのようである。
私は数日前のとある出来事を思い出していた。たしかに涼子の言うとおりの状況があったのだ。
しかし…アレは留保付きでも認められるだけまだマシだったのではなかろうか。
それほど涼子のヤリクチは過激だったのだ。つまり、涼子の身から出たなんとやら。
それをハイヒールで天高く棚に蹴り上げておいて、お由紀が贔屓だなんだ言うとは笑止千万。
だがドレイとしてはそう言えるはずもなく、私は説得、つまり一番穏便な方法を採ることにした。
乗り切れるかどうかは天国の神様よりも地獄の悪魔に祈った方がいいのだろうが、はて祈りの文句は
何と言えば聞き届けてもらえるんだろうか。悪魔に祈りというのも何か変だが他に言いようもない。
「今晩ここに来たい、といって私の残業を早朝出勤に変えさせたのは、一体誰でしたっけね」
切り口上で言ってのけた私に涼子の視線が鋭くなる。まるで猛獣の前の調教師の気分である。
噛み付かれる前にもう一押し、ムチではなく言葉を続ける。
「よその女性が連れてる男に興味なんて引かれないで下さいよ。誘われた私の立場がありません」
まだ一杯目も干してないというのに、耳元でやけに脈音が大きく聞こえる。
これを男のみみっちい嫉妬と取られるなら取られたでかまわない。そもそも妬いていい立場じゃない。
ステージが始まる前のざわついた場内の中、私の周囲だけ無音になったように思われた。
733 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 12:26:34 ID:JRVDILnZ
涼子のそっとはかれた息とともに、小さく言葉が唇に紡がれた。
「…ゴメン」
誤った?いや謝ったのか涼子は。そのわりに態度は済まなそうじゃないし、声に優しい情感が篭っている。
正面向いた涼子の顔に私は息を呑んだ。美しい大人の顔に載せられた、可憐に上気した少女のような表情。
「妬いてくれたんだ」
さっきは是としたくせに、そう断言されてしまうとなぜか困ってしまう。だがここで否定すれば
純粋にデートで来ているだろう由紀子に多大な被害が及んでしまう。したがって返す言葉は
「まあ、その…そうですかね」
まったくこのジャジーな洒落た場所にそぐわない、不粋極まる歯切れの悪い返事である。
それでも今夜の女王様は追求の手を止める気になってくれたようだ。通りかかったウェイターに
「キールロワイヤル。」
「は、かしこまりました」
しつけの良いウェイターが背筋を伸ばし、混み合った椅子の間をスマートに歩き去っていく。
「ずいぶん可愛らしいものを頼みましたね」
「…そういう気分になるときも、あるの!」
多大な失言をやらかしたというのに、酔い覚ましのチェイサーの冷水を私にかけても来ない。
さきほどのやり取りが涼子の内部でどのような化学変化を遂げているのかは…神のみぞ知る。
由紀子の姿は、外人の集団が目の前の空席にきたことで既に隠れてしまっていた。
場内の照明がより一層落とされ、拍手とともに今夜の主役がシックな衣装でステージに登場した。
バンドの音が空間一杯に豊かに広がっていく。私はさっきまでの思考を放棄することに決め、
ハスキーなボーカルの声にのって、贅沢な時間へ涼子とともに漂い始めた。
734 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 12:29:56 ID:JRVDILnZ
ではまた夜に。
735 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 13:14:55 ID:fanBQeX1
うおー!!GJ!!!いい雰囲気〜〜(*´Д`)お涼テラカワユス
夜までwktkしながら待ってる!!!!
736 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 13:27:58 ID:W+nzr/Qg
いいよ!GJ!
737 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 17:44:29 ID:zAnnF/OP
GJ!待ってたよ〜!
738 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 18:51:20 ID:b/dY/59f
日がくれたよ!夜だよww
(;´Д` kwtk
739 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 19:01:54 ID:5it4qZF1
正座して待ってますよ(*´д`)ハァハァ
740 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 19:18:53 ID:JRVDILnZ
朝のすがすがしい空気を窓越しに感じながら、人気の無い警視庁の廊下に私の足音を聞く。
早朝出勤の原因は直行直帰の出張とやらだそうな。ああ上司を選べぬ宮仕えの悲しさよ。
と、愚痴すれすれの感想と一緒に生あくびをかみ殺していたところ
「お早う、泉田警部補。昨夜はどうもありがとう」
意外な声がして振り向くと、今朝はかっちりとしたスーツ姿の由紀子がそこに立っていた。
「お早うございます」
微笑の半歩手前ぐらいに由紀子の端正な口元がほころびた。
「お涼のお守も、お疲れ様」
「わたしたちに気付いてらしたんですね」
「そりゃあんな目立つ人ですもの、気付かないほうがありえないわ」
「いつもこんなにお早いんですか?」
「通勤のラッシュが苦手なのと、読書時間の確保でね」
私の素朴な疑問に由紀子は手持ちの書類鞄を軽く持ち上げて見せ、親切に答えてくれた。
「ははあなるほど」
一人静かに警察ミステリー小説をめくる、眼鏡の似合う知的美女。由紀子らしい日常である。
「あの、不躾な質問で怒られてしまわれるでしょうが…最後までお相手が来なかったような?」
「そうね。彼は来なかったけれど、昨日あの場所に彼は居たのよ」
まるで謎掛けのような言葉である。だが口元には過去を懐かしむような優しい笑みが浮かんでいた。
「唐突なお願いで驚くでしょうけど、今晩は私に付き合ってくれないかしら?今日お涼は出張でしょう」
本当にトウトツな由紀子の申し出だが、直属上司のそれ以上のトウトツに毎度のごとく付き合わされ、
慣れきっている身にとっては特に驚くほどの事でもない。
「それはいいですが…」
「もちろん、お涼にこの件は内密にして欲しいのだけど」
「別に知れたとしても私は困りはしませんが」
「よくもあのお涼を手なずけたもんだわね」
クスリと微笑まれた。いやこれは単なる猛獣使いが猛獣を扱うコツを覚えたようなもので、と思うが
それは言わないことにする。
いつもかち合うと、気圧の低いところで湯を沸かすがごとく即時沸点に達してしまう両者なので
…点火するのは涼子なのだが、こんな由紀子の笑顔を見るのは珍しいような気がする。
「あまり夜遅くならないよう帰しますから。あの不良娘とは違ってね」
食事だけですから。単なる同じ職場のよしみで食事するだけですから。と私は誰に聞かれたわけでもない
言い訳を頭の中で繰り返していた。
741 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 19:20:49 ID:JRVDILnZ
そして夕刻。暮れなずむ銀座の町並みを車窓に映しながら晴海通りをタクシーで西へ向かう。
打ち水がされ掃き清められた門構えは、帰りに一寸寄るとかそういう場所ではない。
政治家やら官僚やら悪代官が密談をするとかいう、かの有名な料亭という場所ではないか。
思わずスーツの上から財布のある場所を押さえてしまう。カードが使えない店なんてことはないよな。
「大丈夫よ。ここは私持ちだから」
「とはいっても高そうですよ」
庶民丸出しの私のセリフに呆れたそぶりはまったく見せず、由紀子は焦る私を手で制した。
「今日誘った訳は後で話しますから、ちょっとお願いしていいかしら?」
「桜花の間で予約しました者ですが」
由紀子に頼まれたのはこのセリフを店の入り口で言うことだった。予約を入れたのは由紀子なのだが
あとで話すと言われたことだし、別にたいしたことでもない。
和服の従業員に先導されて曲がりくねった廊下を歩き、ふすまがスラリと両に開かれた。
日本美にはまったくうとい私にでもこの部屋がずいぶんと税を、いや贅を凝らした部屋だと判る。
中央の座卓はどうみても漆塗りだし、掛けられた書は誰かは知らないが秀麗な句がしたためられている。
腰が沈むほどの座布団が敷かれた座椅子にかけると、ほどなく冷酒と小鉢が運ばれてきた。
「ここは懐石料理じゃなくって会席料理だから、あまり気構えなくて大丈夫よ」
どっちもカイセキという響きなので区別がつかないが、由紀子が言うなら気を緩めて大丈夫なのだろう。
由紀子の解説によって先ほどの小鉢は先付というのだと知れた。
「季節にちなんだ趣向をこらす場合が多いんだけど…あらもう食べてしまったのね」
「なんとも無作法ですみません。とにかく美味しいという事しか判りませんでした」
「それで充分よ。あれこれ薀蓄捻りまわして食べどき逃す方が料理人に対して失礼だわ」
由紀子の言葉に救われた私は安心して次の椀に手をつけることにした。
吸物、向付は今朝水揚げされた鯛、煮物はこっくりと煮た地鶏、揚物、焼物、蒸物は卸し蕪の海老蒸し。
ご飯が出るころにはすっかり満足しきりで、料亭での密談密約が江戸時代から一向に廃れない理由が
コッパ役人の私にもうかがい知れた。人の精神をすっかり蕩かすほどのものがここには確かに在る。
止め椀つまりみそ汁を飲み干し、あとは水物といわれる果物を食し、食事は以上で終了。
742 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 19:23:11 ID:JRVDILnZ
だが由紀子の目的が食事ではないのはこちらも承知している。銚子のお代わりを仲居に言いつけて
人払いをすると由紀子が懐紙で口を上品に拭った後に切り出した。
「盗聴器は仕掛けられてないようだから、大丈夫ね」
コトリと音がして携帯よりも小さな機械が座卓の上に出される。
いきなり不穏な単語が飛び出たものだから驚いたが、いったいそれは何のためなのだろうか。
「あの、お涼と泉田警部補は付き合ってるの?」
最後の緑茶を噴出しそうになって寸前でこらえて飲み込んで
「それは、その部下としてはどこにでも上司に付き合わざるを得ないといいますか」
まさか由紀子は我々が恋人同士だというとんでもない見込み違いをしているのだろうか。
そういう話をするのに料亭というのはずいぶんと大げさでもある。
ともかくこれ以上の誤解を招かないよう、きっぱり否定して後顧の憂いを断っておかなくては。
「つまりそういうことで、薬師寺警視とは恋人とかでは全く、天に掛けてもそれはありません」
「そう?片方はその気のように見えるのだけれど」
「違います。だいいち、彼女が私を男性としてみている態度に見えてるんですか?」
私としては無い威厳をかき集め重々しく言ったはずなのに、目の前の人はどうして噴き出すのだろう。
それにしてもいい笑顔だ。毎度飽きもせず衝突する二人を引率教師の目で見ていたが、涼子に並び
由紀子だって相当の美人なのだ。まさに高嶺の花といった風情なのに涼子がそれを地に落している。
重ねた杯の勢いでそんな内容のことを言うと、由紀子の目が驚いたように丸くなった後
再度クスクス笑い出した。由紀子は笑い上戸なのだろうか?
「ああ!だから泉田警部補がいる時はことさら私にニクマレ口叩いてきたのね。まったく、もう…
お涼も可愛げがあるというか、セコイというか」
苦笑ではなく優しげな、まるで姉が妹に向けてするような笑みだと酔った頭でぼんやり思う。
「学生時代から進歩がないんだから。ううん、それ以前からそうなのかもしれないけど」
言っている内容がまったく分からないといった顔でいる私に由紀子が向けてきたのは、
今度こそ間違いなく苦笑だった。
743 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 19:25:17 ID:JRVDILnZ
「お涼と恋人じゃなくても、あなたにしか頼めない事があるの」
と前置きをして由紀子が話し出したのは
「地上で一番の硬度を誇るダイヤモンドでも欠けることがあるっていう話は、ご存知?」
「いいえ、寡聞にて知りませんでした」
ダイヤモンドねえ。思い浮かべたのは一人の女性。だがあれはなんていうか…呪いのダイヤ?
「つまり硬度と靭性の違いって所なんだけれど。…私はまだ何も言ってないわよ」
スイと杯を口に運んだ由紀子が涼やかな微笑みを浮かべる。
「それで有名なのはホープダイヤね。他にも色々そういった話はあるのだけれど私には専門外だし
日常でダイヤが割れるなんてことはまずないって事だから安心していいのだけれど」
ダイヤの話になぞらえてはいるが、由紀子が言いたいことは私にも伝わってきた。
「私の出来る限り、努力します」
料亭で奢られたからではないぞ。敵に塩を送る潔い由紀子の態度に感銘を受けたからである。
「よろしくね」
仇敵を利するようなことをしたというのに由紀子は私の返答に心から満足したようだった。
涼子がダイヤだというなら、由紀子は一粒一粒吟味された真珠に喩えられるだろうか。
その由紀子の上半身ががたりと音をたてて座卓の上に崩れ落ちた。真珠を連ねる糸が切れたかの
ような有様に不吉な予感が私を襲う。由紀子はどうにか姿勢を立て直そうとしたようだが、
私が側に寄る前にとうとう畳にくたりと崩れ落ちてしまった。
744 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 19:29:45 ID:JRVDILnZ
これから後はしばらく…なのでショックな人はトリ付けるのでスルーを。
もしくは心の準備をして置いてください。
745 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 19:56:18 ID:zAnnF/OP
準備OK!
746 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 20:05:08 ID:NMhxzr1D
(屮゚Д゚)屮バッチコーイ
747 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 20:22:10 ID:JRVDILnZ
まだ危険信号はともっていないのでこのまま投下。アレなのは深夜に投下。
「どうしました!」
由紀子の肩を持ち抱き起こすと苦痛とは聞こえぬ呻きが漏れ出でた。
「な、に…?」
「お酒に酔われたんではないですか?」
「違うわ。いつもより飲んだ量も少ないし、この酔い方は…ありえないわ」
身体を支えようとして背中に手を添えるとビクンと身体が跳ねた
「い、や…熱い」
見ると由紀子の頬は上気して脈も異様に早まっている。
「医者を呼ばせましょうか」
「いいえ、自分の身体のことは自分で良く分かってるわ。にしても、こんなことだとはね…」
思うように動かせないらしい身体を捻って由紀子がスーツの上着を脱いだ。ブラウスが汗に濡れ
下着の線が見えてしまっている。視線のやりばに困りながら由紀子の言葉の続きを待った。
「今日ここに誘った本当の目的を言うわ」
額に浮かんだ汗がつっと秀麗な面を滑っていく。
「ここが如何わしい相談に使われているという内部告発が下から上がってきたのよ」
告発したのは私と同じ名も無きノンキャリア、そして出世コースに乗ったエリートからも。
「リーク元は他省庁の誰かとしか言えないけれど…ああっ!」
苦しげな様子の由紀子を座椅子に掛けさせようとして腕を回すが、身を捩られてしまった。
あまりに色っぽい仕草だが、このいきなりの媚態は不自然極まりない。そして告発したのは女性…
嫌な予感が私のうちで明確な輪郭を取りつつあった。
「ここで行われていた相談とは、エリート幹部が将来有望な女性を『説得』することだったようね。
単なる談合やら密談やら暴力団との接触のほうがよほどマシだわ」
「そんな下手なご冗談を」
「不謹慎だったかしらね。お涼と長年付き合ってきた副作用がこんなところで出たのかしら」
気丈に笑ってみせる由紀子だが、傷病で倒れた相手になら私にも知識と手段がある。
だが怪しげな症状にいたっては打つ手が無い。どうしたらいいものか手をあぐねていると
「…本当はこの件についてはしかるべき部署に任せるべきだと今も思ってるわ」
あの由紀子が、管轄違いだと分かっていながら手を出したのだ。何が彼女をそこまでして…
「私は、兵頭の悲劇をもう一人だって出したくなかったの」
あの後味の悪い故人のことを私は思い出した。美人警察官を死に追いやった蛇蝎のような男。
748 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 20:28:08 ID:JRVDILnZ
――真面目な人なんだなあ。お涼もそれは認めている。
「だいたい地方研修たって適当に年数過ごしてりゃいいのよ。私なんかは、そりゃ回りが放って
置いてくれなくて国際警察という場にひっぱられたんだけれどね」
上層部は厄介払いのつもりだったんだろうなあという推測はおいておく。
「頭のいいエリートさんたちは手を抜きまくってやる通過ポイントでしかないのに、ちっさいとこも
真面目に熱心におやりになったんでしょうよ!ほんっとうにドサ周り、ご苦労様だわ。
警視庁幹部候補でそういうことやれるのは、お由紀以外誰も居ないわ」
だがそういう顔つきは小悪党に対するイジワルなのとは違って、煙たい学級委員長をうるさがる
跳ね返りムスメといった風情であった。
「今日は下調べのつもりでここに来たのだけれど、下手に巻き込んでしまって御免なさいね」
「そんなちいさいこと気にしちゃいませんよ。それよりも私はどうしたら」
「とりあえず、このままでいいわ」
「そんな苦しそうなのに」
「どうせ数時間も続かないでしょう、こんなの」
畳に身体を横たえたまま、涼子ほどゴージャスとは言えないが形のよい胸が上下している。
「失礼します」
気の毒で見ておられず、一番上まで留められたブラウスのボタンを二つほど外し、両腕に由紀子を
抱え上げて立ち上がった。私の胸のうちには由紀子を気遣う気持ちの他腹立たしさが満ち満ちていた。
キャリアに見えたらしい私が、非力な美人部下を手篭めにしにきたと店側から見られていたのだから。
そんな極悪非道なこと誰がするか!上司はともかく私は虫も殺せぬ善良な市民なのだ。
(ええっと、たいていこういう場合は襖の向こうに布団が敷いてあるもんだよな)
由紀子を抱えたまま、行儀悪く足ですらりと開けるとまさにその光景が目の前にあった。
さきほどまでは推測でしかなかった最悪の行為が、実際にあったのだと実感せざるを得なかった。
749 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 20:45:55 ID:JRVDILnZ
私は日本人としては背が高い方だ。それをうっかり忘れて鴨居にしたたか額をぶつけてしまう。
「大丈夫?」
と由紀子は気遣ってくれるが
「こちらこそ床に放り出してしまって申し訳ありません」
「布団の上だから大丈夫、痛くもなんとも無いわ。お気遣いありがとう」
低い目線だから気付いたのだろうか、由紀子が畳の上から鍵を摘まみあげていた。
上を見るとさっきの衝撃で柱の飾りの能面が斜めに傾いている。
どうやらこの部屋にある金庫の鍵らしく、差しこみ扉を開けると…いやなんともはやな写真の数々。
まぎれもない犯罪の証拠を見つけたのだが、こんなところに隠しておくとは間抜けすぎる。
「これだけあれば刑事事件として立件出来るわ…あらなにかしら?縄?」
「あ、触らないほうが!…その、証拠ですし」
由紀子の手から慌てて取り上げたそれと、写真を拾い集めて脇に寄せる。ロコツなえげつない写真に
目がいきそうになるが刑事としてそういうものはしっかり慎んでいたのだが、その自制も由紀子の方に
振り向いた途端飛んでしまいそうになった。布団の上に座り込んだ由紀子のフレアスカートの裾が、
その、かなり上の方までまくれ上がっており…いや、これはまずい。ちょ、ちょっと待ってくれ。
あたふたと身を屈め、情けなくも由紀子に背を向けて座り込んだ。
「まさか!泉田警部補も?」
「まことに不覚ですが、こちらの膳にも何かあったようです」
「襲い掛かる女性には怪しい薬を、中高年の自分には強精剤とはね!呆れを通り越して吐き気がするわ」
まったく腹が立つ。こんなものまで必要な男だと店側に見られていたとは!
「私はともかくとして、泉田警部補はどう?」
「どうって言われましても…何と言ったらいいのやら見当もつきません」
どんどん頭の中が霞がかかったように思考の輪郭がぼやけていき、私の視界は暗転した。
750 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 20:47:27 ID:JRVDILnZ
ということで、これ以上アレな人は翌朝ご覧下さい。
オトナは深夜に蠢く。
751 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 22:09:10 ID:fanBQeX1
GJ!! もっと暗くなるまで待つのかー
…これカプって泉田×涼子だよね?
出来れば名前欄にカプいれて欲しいっす
752 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 22:11:28 ID:NMhxzr1D
>750
GJ!ワクテカして待ってる。
つーかコレお涼にバレたら泉田ちょんぎられるかすりつぶされるか(((((((( ;゚Д゚))))ガクガクブルブル
753 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/01(木) 22:55:36 ID:zAnnF/OP
>750
え、えっと今夜は遅くなるのよね…?
じゃあ今のうちにシャワー浴びておく、ね?
あ、でもその前に一つ言わせて。
あの……
wktk、です……//
754 :
由紀子×泉田
◆QTBUWlBVVQ
:2006/06/02(金) 03:38:52 ID:3qdbO+Vi
「泉田警部補?!しっかりして!」
肩をしきりに叩かれて、私は声のする方へ顔を向けた。自分の腕の中にその相手がいる。
「室町警視?いったいどうしてこんなところに」
「それは私が聞きたいところだわ。お願い、腕を緩めてくれないかしら」
気がつけばずいぶんと素晴らしい感触が体中のそこここに感じられる。慌てて腕を解くと
由紀子はいくぶんほつれた髪を撫で付けて私を下から見上げてきた。
「こんな事態になったのも、立場が上である私の判断ミスで起こったことだわ。
現場の責任を取るのがキャリアの役目。泉田警部補、私の上から退いてくださらない?」
由紀子らしい責任感溢れる言葉ではあるが、この場合の「責任を取る」って…
とりあえず圧し掛かったままでは色々とマズイ。浮かせた身体の下から滑り出た由紀子は
立ち上がり細い腰に手を回すとスカートを布団の上にふわりと落した。
私は目前の光景に息を吸い込み、吐き出すのを一瞬忘れてしまった。
「皺になってしまうから脱いだのだけど」
おかしいかしら?と由紀子の目が問うが、私のキャパシティーはもう限界に近づきつつある。
目の毒という単語その通りの姿だが、毒というにはあまりにも目に眩しい魅惑的な肢体。
「緊急避難ってあるわよね」
つまり、それは…喉が干上り舌が口内に張り付くのを感じる。
「お涼とは、恋人同士じゃないのよね?」
恐ろしいほどの緊張をはらんで無言で見つめ合う。
「さっきのは質問、これは確認よ」
立っているのは布団の上だと分かっているが、嵐の真っ最中の船の甲板に立っているかのように
ぐらぐらと視界が揺れている。向こうも同じなのだろう、私は由紀子に両腕を掴まれていた。
「私だって27の女よ、何も無かったわけじゃないわ」
「私も過去にそれなりにある33歳ですが」
しかし、こんな状況に付け入るわけには。
755 :
由紀子×泉田
◆QTBUWlBVVQ
:2006/06/02(金) 03:40:38 ID:3qdbO+Vi
「…正直言うと、身体が辛いの。泉田警部補が嫌じゃなければだけど…」
普段は怜悧に輝く瞳が、蜜をかけたように溶けて潤んでしまっている。
「お願い、助けて」
腕に飛び込まれてしまっては撥ね付けるわけにもいかず、だが腕はしっかりと由紀子を抱いていた。
というのも立っている気力がそこで尽きたらしい由紀子がその場で倒れそうになったからだ。
頭をぶつけないようにそっと布団の上に降ろして、由紀子と向かい合わせに座る。
す、と由紀子のすんなりした指が自らのボタンを外していく。体中が燃えるように熱い。
ネクタイを抜いたところで、由紀子が外の物音に気がついた。
「ここに水とグラスを用意しておきますので。どうぞ、お続きを」
そうだ、店が事情を知ってなければこんな狼藉がまかり通るわけがない。
「こうなったら何もせずに帰るなんて不自然なこと…」
出来ませんね、と続ける言葉が私の喉からなぜか出てこない。どうしてだ、私には気兼ねする
相手など今のところ誰も居ないというのに。
私の複雑な心境を知ってか知らずか自分の一部分は無闇に張り切っている状態だ。
最後に出た青豆ご飯、緑豆じゃなくって青い錠剤じゃなかったか?
「今日は何日?」
そう聞かれて腕時計の日付を答えるとなにやら数える声がして
「大丈夫だけど無いと駄目よね」
何のことだろうと声の方を向くと下着姿で床に手をついた由紀子が枕元を探している。
その艶姿に脳細胞がいくつか蒸発したらしく、頭の中でもつれた糸は瞬時に焼き切れていた。
そのまま成り行きに任せることにして、後ろからほっそりした身体を抱くと、私の腕に由紀子の手が
添えられるのを感じた。
「なにも、言わないで」
「ええ、私も言いません」
ゆっくりと身体を布団の上に横たえると由紀子は目を伏せた。
「泉田警部補って案外着痩せする性質なのね」
褒めてもらっているのだろう。これでも一度はSPに推薦された身であるからして。
756 :
由紀子×泉田
◆QTBUWlBVVQ
:2006/06/02(金) 03:42:54 ID:3qdbO+Vi
直接肌と肌が触れ合いその熱さに私は頭の芯まで酩酊した。
「ずいぶん熱いけれど、大丈夫?その、そういうのは心臓に負担がかかるとかって」
「オトシヨリならともかく私はまだ若いですよ。安心してください」
過去数年で一番の色っぽい状況なのに交される会話は散文的で、その落差が却っておかしかった。
「私は、大丈夫よ。…こっちもそうみたいだけど」
自身にしなやかな指が絡みつくのを感じ取り、快の波が身体を走り抜けた。
強精剤だけが原因ではない高ぶりが脚の間のものに満ちそそり勃っているのを私は自覚していた。
ということは由紀子のほうも
「っん!」
指先に柔毛が触れ、その奥には溶けた柔肉が淫らな水音をたてて指を呑みこんでいく。
お互いへの気遣いでまだ抑えた振る舞いだったのが、これを切っ掛けに双方とも決壊した。
性急に由紀子をかき抱き、手に余るほどではないが柔らかなふくらみを揉みしだく。
素肌をなぞると華奢な身体が小さく震え、形良く伸びた脚が私の足に絡みついてくる。
「もういいから、早…く」
「いきますよ」
いつの間にか解かれた長い黒髪がシーツの上に扇のように広がり、肢体の抜けるような白い肌と
あいまって一幅の画のような幽玄さを醸し出している。
恋人と別れて以来の余りにも強烈な刺激に見舞われた私はこの状況にすっかり溺れつつあった。
「っ……んんぅ……ぁ……ぁああっ」
弱々しくかぶりを振る仕草の下の方で、正反対に腰をくねらせて快感の波に身を任せる由紀子のさまは、
普段の彼女を知っているだけに情欲がいっそう煽られる。
「いずみだ…っんん!」
ぬめる内壁がうねるように動いて私を一層締め付け、たまらず痙攣しながら果ててしまった。
荒い息を付きながら私は股間に違和感を感じ続けていた。これがその効果というやつか。
由紀子も私が勢いを失っていないのが分かっているらしい。
「まあ」
感心したように呟かれて私は赤面した。
「大丈夫。責任はとるって言ったでしょう」
後のところはよく覚えていない、とトボケルにはあまりにも素晴らしいヒトトキだったとだけ
言っておこう。脳内で光が何度も炸裂して、そこで体力の限界が来たのか意識が突然途切れた。
――いいから忘れなさい。これは“上司命令”よ
757 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/02(金) 04:19:18 ID:3qdbO+Vi
あとはノーマルに戻ります。
758 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/02(金) 04:23:59 ID:3qdbO+Vi
チュンチュンと可愛らしく鳴くスズメの声と明るい光が障子越しに室内に溢れている。
昨夜はここで…なにやらあったらしいのだがその記憶は砂で築いた城のようにサラサラと
崩れ続けていて、細かいところまではもう思い出せない。
起き上がり、簡単な身支度をして襖をあけるとキリッと服を着た由紀子の視線と出くわした。
「お早う、泉田警部補」
「お早うございます、室町警視」
座卓の上には日本の正しい朝食といった支度が整えられている。
味噌汁を上品にすすって味の確かさを褒める由紀子の姿に、料理は一通り出来るという話を思い出す。
涼子はゆでたまごしかできないっていうのに。兵器としてならトルコ料理も作れるのだが。
「昨夜は捜査協力、ありがとう」
そう礼を言って座椅子の隣に置いた鞄を由紀子は軽く叩いた。
「これで奴らを叩けるわ」
「それにしても酷いですね」
「ええ全くだわ。エリートってみんなとは言わないけれど多いものなのかしら。内部で制約が多い分
その反動でとか言うらしいけれど」
私はジャクリーンこと若林のことを思い浮かべていた。その沈黙がどう取られたのかは知らないが
「いえ、私もそう決め付けるほど知っているとは言えないのだけれど…昔にね」
「昔っていうほどのトシでもないでしょうに」
「そう言ってくれてありがたいけれど、さすがに10年も経てば昔としか言いようがないわよね」
眼鏡越しに目を瞬かせたのち微笑んだ。
「ありきたりな話だけれど、それぐらいの時の恋愛って向こう見ずなところがあるでしょう。
彼と行きつけたバーは各国政府お偉方の溜まり場で彼のジャズの修行にはもってこいの場所だったの。
裏では彼らの息抜きの場所として。その時に…まあ色々と見た、というのかしら」
そのまま聞き入ろうとして引っかかった。今から10年前といったら…未成年じゃなかったか。
759 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/02(金) 04:26:38 ID:3qdbO+Vi
「堅い家に反発という気もあったのかしらね、ジャズシンガー志望という、そんな自分と正反対な彼に
あっという間に惹かれて、夢のように彼との毎日に酔ってたわ」
それで私が見たというのはと由紀子は続けたが、某司令官やら某高官やら某大人らのセキララな私生活に
私は箸を取り落とししてしまった。味噌汁を飲んでいたら噴いてしまっていただろう。
「それは…それはまた、すごい光景を」
「それぐらい、まだまだ可愛いほうよ。」
教師に品行を褒められた時の優等生がはにかむような笑みなのに、口にする内容は不良でさえ顔を赤らめ
口ごもるようなエリート達の凄まじい性癖列伝である。
彼女の証言どおりならば、日本は国際社会でトップに立つ最強のカードが手にあることになる。
一人の領事を自殺に追い込む前にこの女性を確保すべきと違うか?隣国の大使館の人。
こちらの気持ちを読んだか
「その気になればできるけれども、そんな後ろ暗い近道を使いたいとは思ってないの。
法と正義にのっとってルールに従った外交をすべきだと思うし。今は…期待できそうにないけど」
差し向かいで美女と朝食なんて天に舞うほどの夢ゴゴチのはずなのに、涼子一人だけでも手に余りまくって
いるのがさらにもう一人、それに匹敵する経歴の持ち主が現れただなんて、天の采配はお茶目に過ぎる。
万が一、二人が手を組んだりしたら世界征服など赤子の手を捻るより簡単に達成することだろう。
由紀子の生硬な性格が、世界の平和を(無自覚に)保っているのである。
760 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/02(金) 04:37:02 ID:IO0kC91c
連投支援パピコ
761 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/02(金) 04:48:25 ID:RtKh8585
こちらからも支援
もそっと続くよね?
762 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/02(金) 06:03:14 ID:a00tFWfl
巧いなぁ 早起きしたかいがあったよ
さらに支援
続き・・・かな?
763 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/02(金) 18:30:27 ID:WcfXYurW
いいもん書くな〜
尊敬するよ
764 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/02(金) 19:05:21 ID:tu7hkHSV
今後お涼サマとお由紀とで泥沼三角関係(*´д`)ハァハァ
765 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/03(土) 00:59:57 ID:JTKeUbG7
同じく賛同
766 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/03(土) 05:44:27 ID:9W39skCq
「一昨日は、彼の命日だったのよ」
「…事故とかで?」
「いいえ」
簡潔な返事は、それ以上踏み込まないでくれという意思表示と私は受け止めた。
「受験に取り組み始めて彼と疎遠がちになったころ、彼は転げ落ちてる最中だった。
そこのエリート達に知らぬ間に薬物に手を染めさせられて…止められなかった。
後でいくらでも取り戻せると思っていたのだけども、自分の受験だって大事だし、
そういう気持ちもあったことは、否定できないわ」
この人も幾万の人間と同じく、苦い思いを噛み締めて夜を越したことがあったのだ。
「だからこそ、私はしたり顔をして誠実に生きている人を足蹴にするような輩が許せないの!」
…だから由紀子は涼子を手厳しく指弾するのか。とすんなり納得しかけた私の顔を見て
「お涼はまたちょっとそれとは違うの。いつもああタカビシャでくるものだから、それで、」
色白の頬を紅潮させて由紀子がめずらしく慌てた口調で付け加えるが、途中で自分の言い訳が
子供じみているのに気付いたらしく、表情を隠すように眼鏡を指でくいと押し上げた。
「御飯、お代わりします?」
「…ええ、お願いします」
笑うのはどうにか堪えたが、肩が揺れるのは抑えきれなかった。
767 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/03(土) 05:45:12 ID:9W39skCq
「今日は良く晴れそうですね」
まだ早朝の気配が残る空は濃い水色から白色光へと水彩画のようなグラデーションを描いている。
「夜遅くならないよう帰しますって言ったのに、朝帰りになってしまったわね」
「気になさらないで結構ですよ。私は本日非番ですし」
それよりも気にしなければならないことが二人の間にはあるではないか。
まだひんやりとした涼しい風が街路樹を静かに揺らしている。
「泉田警部補があやまり屋さんなのは知っているけれど、今回は…」
そこで言葉を止め、由紀子はこちらをじっと見つめてきた。
「ええ。あやまるつもりはありません」
真剣な視線に、こちらも真摯に相対する。二人とも大人の男女であるからして、昨夜の一件は
どうとでもありふれた言葉で、例えば情事とかで片付くはずだったが、それは私の本意でないし
由紀子だって同じ心情であろう。朝からの由紀子の態度が昨夜と変わってないことを見ても、
二人の距離は恋人のそれに近づいてはおらず、馴れ合った風に変化してもいなかった。
それに、私も身勝手なのは充分すぎるほど自覚しているが、心の内をありていにぶちまけると
アレコレ為したというのに、私は由紀子を好ましい女性とは思ってはいるがこの時点に及んでも
恋愛の相手とは意識することが出来ないでいるのだった。
「いいわけじみたことはしたくありませんから」
いい歳になるのに、女性一人スマートにあしらうことができない自分のツマラナサぶりが今ほど
恨めしく思えたことはなかった。
「そんなしょげた顔をなさらないで、泉田警部補。最初から私は知ってたわ」
白皙の顔が近づいてきて、多少髭が伸びた顔をそっと慰めるように手のひらで撫でられた。
「知っていたって、いったい何をご存知なんですか?」
「泉田警部補の心を、とっくの昔に捕まえている女性」
768 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/03(土) 05:48:38 ID:9W39skCq
そんな…私にそういう相手なんていたっけなあ?
首を捻って心のうちを懸命に覗き込むが、私が恋焦がれる女性なんて今のところ居ないぞ?
私がそんなことをしている間に、由紀子はさっさと片手をあげてタクシーを呼び止めていた。
後部座席に乗り込みつつ今朝の空のような澄んだ笑顔でここでの別れを告げられ、扉が閉められた。
「…これについてだけは、お涼に同情するわ」
と、謎の一言を残してタクシーは桜田門の方へと走り出していった。
いったいどういう意味なんだろうか。それより、まだ体は寝足りないでいるようだ。
無理もない、あの錠剤の効果に引きずられて過去ありえないほど、その、むにゃむにゃ。
幸い今日は非番である。官舎に戻ってゆっくりと二度寝をするとしよう。
私もタクシー、ではなく地下鉄の駅に向かって歩き出していった。
終。
そういうことで、三角関係にはなりそうでなりませんでしたw
769 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/03(土) 07:45:36 ID:y6ghtm/n
ぐっじょぶ!
お由紀いい女だ…微妙な距離感がまたエロいね
よかったらまた他カプやラブい話も書いて星椅子…
乙でした!
770 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/03(土) 08:47:34 ID:l49FcHh0
超GJ!! です。
もうこれしか言えませんて。
本当に見事だ…
あの、他カプも是非お願いします。
自分で書けないのが恨めしい…orz
771 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/03(土) 15:07:30 ID:yAQCMUuS
いいもの読ませていただきました。
萌え過ぎて、この後の妄想してしまいましたよ(お涼×泉田で)
他カプでもエロくなくてもいいので、またお願いします。
ホントに乙でした!
772 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/03(土) 20:59:50 ID:fVz25yAQ
> ◆QTBUWlBVVQ
超GJ!
お由紀が酸いも甘いも噛み分けてていい女だ!
他カプでもエロなしでも何でも気が向いたらまたお願いします
>771
ノシ
自分もお涼×泉田の後日談妄想したw
773 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/04(日) 00:27:42 ID:BGvBkNyD
お由紀は退場(言い方悪いけど)するとしても
お涼が知ったときの関係性が想像するだに恐ろしくて萌える。
泉田クンは胃に穴があきそうだな。
774 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/04(日) 01:13:21 ID:oP4oArOk
いや、返って前に進むんじゃないか?
775 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/04(日) 01:17:10 ID:Vpb9bPT4
>773
お涼はそっち方面はてんでネンネっぽいから
頭に血が昇ってて、「緊急避難行動で、この先恋愛とかには発展しない」という泉田の説得に納得しないお涼
→とうとうお由紀に突撃かまそうとしたため、お涼を止めようとして泉田がキツイ態度を取る
→二重のショックでパニックに陥ったお涼がいきなり泣きだす
みたいな展開想像して萌えた
776 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/04(日) 23:56:14 ID:uv5u3wmW
774さんの言うようにむしろ、うかうかしてたら取られると思って進みそうな気が
する。
777 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/05(月) 00:22:01 ID:tvn14psR
エロは?エロパロだろ?
778 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/05(月) 01:25:31 ID:6ayNbwpt
流れに逆らって言ってみるがライ×ヒルとカリ×ユリ 待ってます
779 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/05(月) 03:46:11 ID:+R2wM4Vo
上に同じく!
ところで以前、茉理×始さがしてた人って今も居る?
780 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/05(月) 08:21:33 ID:yv3Kwqgr
ノシ
いや多分自分のことではないと思うが、
あの遣り取りの中には居ました。
何何何?!
781 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/05(月) 10:02:44 ID:uJ7KyqYS
>779
個人サイト晒すつもりなら、URL直貼りはやめれ。
検索のヒントだけね。
782 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/05(月) 11:07:23 ID:+R2wM4Vo
>781
大丈夫です。心添えサンクス
>780
どこぞのサイトさんでSS見かけたのでぐぐっと旅行に出かけて吉。
別のとこでは始茉理エロもあったし、エロ無しなら新しく何作か収穫できた
以上小躍りしながらご報告
783 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/05(月) 11:18:26 ID:yv3Kwqgr
おー、捜してみます、ありがとう!
784 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/05(月) 13:14:31 ID:+R2wM4Vo
おー、ガンガッテ-!
785 :
貝塚さとみの警察日誌
:2006/06/05(月) 17:20:43 ID:VyQfkKai
ちょっと趣向を変えまして…どーぞw
↓
786 :
貝塚さとみの警察日誌
:2006/06/05(月) 17:21:41 ID:VyQfkKai
あ、またあのお二人が廊下で女王対決していますう。泉田警部補が手を顔に当ててますう。
わたしが見慣れたぐらいだから、きっとそれ以上にやりあっていることなんでしょうねえ。
それにしても今回はなんなのでしょうねえ、いったい。
「遠目なら豪華な大輪の薔薇といった風情の二人なのに、近寄れば棘だらけだからなあ」
あれ、丸岡警部にマリちゃん。お昼はお蕎麦だったんですか。
「触らぬ神にタタリなしと通り過ぎたいところだが、どうも近寄れないっぽいな阿部クン」
「はっ、本官もそう見ます」
わたしもそう思ってるから、ここから帰れないんですう。
「今日もまた一段と艶やかな格好だねえ、お涼は」
はい、あれは香港で先行発売されて日本未上陸の最新ブランド物ですよお。すごいです。
「なにやら本日は室町警視がやや優勢のように見えるのですが、気のせいでしょうか」
意外にするどいんだあ、マリちゃんって。そうなんですよお。珍しいです。
「で、いい加減道をあけてくれないかしら?お涼。午後の勤務に遅れてしまうわ」
「だったらそこの通路を曲がってさっさと行けばいいじゃない。融通利かないったら!」
「そこを通らないと執務室に帰れないのよ!」
「仕方ない、通してやるとするか。その代わり、あたしの質問に答えること」
「あら、あなたに尋問されるようなことなんて私がしたかしら?」
「トボけるのもいい加減におし!!」
ひゃあ、あそこまで敵意むき出しにした薬師寺警視は初めてみますよお。どきどき…
「こりゃ午後勤の時間になっても席に戻れない奴らが大量にいそうだな」
そうですう。これじゃわたし残業決定ですよ、時間までに家に帰れないと困りますう!
録画の準備はバッチリですがリアルタイムでも見たいのがファン心理なのにい。
「仕方ないな。阿部クン、書類仕事は後回しにして聞き込みの方、やっておこうか」
「はっ」
ちょおっと待ってくださああい!怖いんだから置いていかないで下さいよお。
「やれやれ、気の毒な貝塚クンを置いてはいけなしな。じゃあそこの自販機で何か」
「玄米茶ですね」
すっかりいいコンビになってますねえお二人。
「貝塚巡査はジャスミン茶で良かったでしょうか」
はいよくご存知で。ありがとうございます。
「いつも貝塚クンのデスクから中国茶のいい香りがしているものな」
へへ、なんか照れます。
787 :
貝塚さとみの警察日誌
:2006/06/05(月) 17:22:55 ID:VyQfkKai
「あの二人は例えるならば薬師寺警視がラフィット製のコニャックで、室町警視ならそうさなあ
ボウモアのモルトってところかな」
どっちも高価そうなお酒だってことはなんとなく分かりますけど…
「どっちも単独で味わうなら風味絶佳だが、ブレンドすると刺激ばかりが強いってことさ」
なるほどー。見かけによらず結構ダンディーなんですねえ。あ!失礼でしたごめんなさい。
「本官も丸岡警部からは教わることばかりです」
「今度わたし等に混ざって飲みに行かないか、貝塚クン」
うわあ嬉しいですう。ぜひともお供させていただきますう!
おっと、それよりもいよいよ修羅場は佳境のようですよお。
「なんか、あんたらこの間から怪しいのよ」
「怪しいだけで捕まえて取り調べるなんて冤罪の始まりではないの、お涼」
「このあたしの勘にピンときたことでそれが間違いだったなんて過去一度もない!」
「そういって、過去いったい何人の人が無為な数十年を送った羽目になったのかしら」
「そんなムノーな警察官を引き合いに出してこられても困るわ。オホホホホ」
「笑って誤魔化そうというのかしら。あなたこそ後ろ暗いことがあるんじゃないの?」
マ、マリちゃああん怖いよおおお。
「ヤクザの事務所に踏み込んだ時以上の空気だな、これは…うーむ。」
そそそそ、そんなあ〜
「落ち着いてください。あのお二人は私たちに気付いていないのですから」
ありがとうマリちゃん、少し落ち着きましたあ。
「証拠ならあるわ」
「なにかしら」
「泉田君とお由紀の視線がかち合う回数が多い!」
「…なによ、それ。思いっきり主観的じゃない。それが証拠?笑わせないでほしいわ」
「まだあるわ」
「どうぞ」
あ、ちょっと警部補!マズイですよおっ!ああっ!
「泉田警部補の美徳と言っていい点だろうが、男女のことに関してはことマイナスだな」
そんな的確に論評している場合じゃないんじゃないでしょうか…
788 :
貝塚さとみの警察日誌
:2006/06/05(月) 17:25:44 ID:VyQfkKai
「ほら、あたしが見つめると何故か視線をロコツに逸らす」
「そんな攻撃的な視線じゃ誰でも目を合わせたくならないわ。当然でしょ」
「どうあっても尻尾を出さないつもりね、お由紀」
「もともと無い物をどうやって出せというのかしら。あなたは上手に隠しているようだけど」
「あたしにだって無いわよ」
「悪魔のシッポ。」
あ。ダメだ。
「「「ププッー!」」」
三人して思いっきり噴き出してしまって、きゃあ!とうとう見つかってしまいましたあ!!
「貝塚巡査に阿部巡査に、また丸岡警部までもなんでまた…」
警部補に呆れられるスジアイなんてないです!隣の二人も、ほら同意見ですう。
「もういいかしら?お涼」
「そうね。外聞もいい話じゃないことだし」
「私は別に聞かれても困らないけれど…もう少しぐらいお涼に付き合ってもいいわよ」
「仕切りなおし!さ、泉田クン帰るわよ。まったくもって時間のムダだったわ」
「威勢のいい啖呵だけど、逃げながら言うのはそれ、捨てゼリフっていうのよ」
きゃあああ!なんてことゆーんですかあ室町警視い!!!これじゃ午後仕事になりませんっ!!
皆の顔色も激変、四人は真っ青で一人は紅潮気味、室町警視だけが平然としてますぅ…うう。
薬師寺警視のハイヒールが止まって、1、2、3秒……静寂が耳に痛いですう。
「やあやあ皆さんお揃いで。もう昼休みは終わりだろう、ん?さ、仕事仕事」
刑事部長!その無神経さ、お役人ぶりが、今ばかりは本当に心の底から助かりましたあ!!
では薬師寺警視、午後のお茶はクイーンマリーでいいですよね?
「あいかわらずセレクトがいいわね、さとみチャン。それでヨロシク」
視線を見交わして、わたしとマリちゃんと丸岡警部はようやく机に戻ることができました。
泉田警部補がどうなったかって?…そんなの知りませえん!(ニコッ
789 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/05(月) 17:26:39 ID:VyQfkKai
さあ、泉田の明日はどっちだ!!
…どうしよっかなあwははは。
790 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/05(月) 20:11:33 ID:nrjbQ7U/
ちょwwww泉田wwww人生\(^o^)/オワル?
791 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/05(月) 21:39:26 ID:/AigvxWk
進んでると思ったら
笑ったよwww
792 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/05(月) 23:52:08 ID:rGItopLo
泉田クン死なないで!
お涼は多分エッチん時はカワイイよ!
793 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/06(火) 20:29:05 ID:tZ9aNI7r
ツンデレってことだな
それでいこう!
誰か書いて〜
794 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/06(火) 20:49:25 ID:QYC/W3JZ
…これ読んでさとみ×マリちゃんもいいかな、と思う今日この頃
795 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/07(水) 21:25:56 ID:DvDl3vwv
>>778
さんとか
ライ×ヒルの人ですが、
小噺読み返してみるとエロがないことに気づいたんですよ!
宣言しつつ投下しないのもあれだよなぁ〜と思ったので、違う小ネタ投下します。
神SSの後(途中?)でちょっとあれかな、とも思うのですが、
まぁ、エロ少な目/ですます調/多分ギャグ OKな人はどうぞ
796 :
皇帝夫妻、夜のお時間
:2006/06/07(水) 21:28:03 ID:DvDl3vwv
【少なくとも片方は大真面目、怖いのはもう片方も大真面目にやってそうなトコ】
ラインハルトが病気になりました。
全身に激痛の走る病です。
医者たちは、医学的根拠は今のところ発見されていないが、
経験上母乳を飲めば直る奇病だと判断しました。
ラインハルトは、夜、寝室でそのことを妻であるヒルダに伝え、
協力を願いました。
ヒルダは快諾しました。
寝台に上半身を起こしているラインハルトの膝に、彼女は腰をかけます。
自分から脱ぐのははしたない、と思ったのでしょうか、
彼女は動かずに夫を見上げていました。
ラインハルトはぎこちない動作で、ヒルダの薄い紗の夜着を脱がせます。
朝陽を燦々とあびた白百合のような、光り輝く柔肌が現れました。
武骨な指が這うと、しっとりと肌が吸いついて応えます。
薄紅のばらの蕾を優しく摘まむと、
真珠を溶かしたような色合いのミルクが指にからみました。
ラインハルトは、貌を近づけて、震える頂に接吻します。
そしてそのまま、頬ばり、ミルクをすすりました。
湿り気をおびた吐息が、
ヒルダの硬質な唇からもれて、彼の金髪を薄っすら濡らします。
「美味だな」
軽い衝撃と心地よい快感のおりまざった旋律で、
彼はそうつぶやきました。
むさぼるような愛撫を微笑ましげに眺めていたヒルダは、
少しちゃめっ気をふくんだ調子でたずねます。
「陛下、実は他にもほしいものがあられるのではございませんか」
ラインハルトは不思議そうに首をかしげてから、
破顔してたずね返しました。
「アップルトルテでもあるのか? 予の好物だが」
797 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/07(水) 21:30:08 ID:DvDl3vwv
ミルクには甘いものが付きものというお話。
ユリカリの人じゃありませんが、ふと小話思いつきましたんで、
よろしかったら笑ってやってください。
798 :
若き歴史作家と、その新妻の日常
:2006/06/07(水) 21:32:55 ID:DvDl3vwv
―朝―
「おはようユリアン……」
寝ぼけ眼のカリンは、朝食をつくるぼくに抱きつきました。
「カリンったら。危ないから少し離れていてよ」
「だめ、朝はどうしても気が立つのよ!」
傲然と言い放ち、カリンはぼくのエプロンを取ります。
「ああ、カリン……目玉焼きが……焦げるよ」
「勝手に焦がしなさい。どうせあんたが食べるんだから」
……やっぱり?
―昼―
「ねぇ、ユリアァン」
「駄目だよ、仕事中」
「仕事って、本読んでいるだけじゃない」
「歴史家は資料集めも仕事のうちなの」
背中を指がなぞって刺激します。
「ねぇったら〜」
「駄目ったら駄目。
今月中に“ゴールデンバウム王朝の発展と終焉”を書き上げないと、収入ゼロだよ!?」
「んじゃあ……ユリアンのためにジュースつくってきてあげるね」
珍しい妻の行為に、ぼくは驚くと同時に嬉しく思いました。
どことなく浮き足立ったカリンの動作は、ぼくが夢にまで見た“新妻”そのものでしたから。
出されたジュースはいつぞやの黒いジュース。
「飲みなさいよ」
「うん」
ぼくは笑顔で飲み干しました。
黒いジュースは催淫剤でした。
―夜―
「ユリアン……」
「駄目ったら駄目、ぼく徹夜するから!」
「いいじゃないの。
わたしが食べていける分の貯えはあるのだから」
「えっ……ぼくは?」
カリンはにっこり、かわいらしい笑顔を浮かべます。
そして、紅玉でつくられたバラの花弁のような、可憐な唇から、こんな言葉を吐き出しました。
「コンビニの賞味期限切れ弁当が狙い目よッ!」
ぷぎゃ。
え、え、何。
ぼくホームレス確定なの!?
革命軍司令官までつとめあげた男が、ホームレス!?
あれ、でも。
毎日寝て起きてお日様の下でのびのびと暮らす生活。
命令してくる女王もいないし。
え? けっこう天国?
そんなことを思っているうちに、下半身裸にされるぼく。
ぼくは、嘆息してから、たずねました。
否定してくれることを祈りつつ。
「カリン。ぼくの身体だけが目当てなの?」
カリンは舌をペロッと出して、答えました。
「……えへ☆」
せめて否定してほしかったな……と世を儚みながら小一時間以下省略。
799 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/07(水) 21:37:49 ID:DvDl3vwv
本家のユリ×カリ、なにげに待ってますとか言ってみる。
あと、お涼さんはツンツンがいいなぁ……。
800 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/08(木) 00:14:51 ID:f1CeCd0x
ツンツンお涼さんに期待あげ
801 :
室町警視の休日
:2006/06/08(木) 09:22:59 ID:WUvotuIZ
あら、こういうところでお会いするなんて。ええ、お久しぶりです。
私はここの会員なのですけれど、まあ!ここのオーナーでいらしたの。
いつも快適に利用させていただいてます。いいえ本当のことですわ。
この後?いいえ今日は非番でこのあとも特に予定はありませんが。
でもこの格好では差し障りが、え?ですがこちらは特別会員へのドアでしょう。
日頃のお礼ですからと言われましても。ですが、あの、あちらはともかく貴女には、
…ええ、分かりました。ありがたく招待を受けることにします。
食事まで頂くわけには、いえダイエットではないのですが…美容食?
ここまでして頂いてありがたいのですが、恐縮です。では、いただきます。
そうですか、大学卒業後趣味が高じてその道を究めるため世界をそのまま回られたと。
名のあるリゾート地ばかりではないですか。まあ、先日までドバイのホテルに!
そんな謙遜なさらなくても、かなりの料理の腕前とお見受けしますわ。
本当に美味しいです。これなら世界中からお呼びが掛かるのも当然ですわね。
はい、あとはマッサージを回れば今日のメニューは終了です。
そんな!オーナー自ら直接なんて恐れ多くて、いえお気持ちは嬉しいですが
手を離してくれないでしょうか。そんなに見つめられては…いえそのケはありません!
知り合いにされるというのはいささか気恥ずかしいものがありますね。ふふふ。
ええ、これぐらいで結構です。指の魔術師の異名そのとおりで驚いています…
え?ここでそれを聞かれますか?一言で言うなら、彼は優秀な警察官ですわ。
他に?その…かなり神経が鈍、いいえ太、じゃなくって…そう!肝が据わった人ですわ。
繊細な男性ではドラ、じゃなかった薬師寺警視の下では一日たりとも持たないでしょうから。
失礼なことを言ったような気がしますが、これは本心です。え、怒らないんですか?
ずいぶんと嬉しそうな顔をしてらっしゃいますが…。あ!そこ!本当に上手ですね。
はい知っています。本人はまるっきり気付かぬ風を装ってますが…ううん気付いてないわね。
あなたもそう見えてらっしゃるんですね。ええこれだけは涼子さんに同情します。
逆に、それぐらいの神経でないと大企業の入り婿は務まらないでしょうし…
まだ分からないとおっしゃいますが、本人はカクジツにその気ですよ。
ふむ、ロイヤルティーがこの点数なのは私も納得しますわ。フレキシビリティーも。
え、ソレの評価なんて私は知りませんよ!まず知りようが無いでしょう?
802 :
室町警視の休日
:2006/06/08(木) 09:24:31 ID:WUvotuIZ
はっ!その写真は!いえそんなココロアタリなんて…
…いっ痛あああああ!ちょ、そこを押されるとすっごく痛いのですがっ!!
分かった言います白状します。捜査の一環で泉田警部補をお借りしたときがあって。
それだけじゃないでしょうって、どこまで知ってらっしゃるんですか?
っ痛!きゃ、ダメですそれ以上は耐えられませんっ!!
断じて浮気じゃありませんし、そもそも私は彼にとって恋人の対象外ですから!!
ダメっ!そこもダメですけどそっちも押さないで下さいってお頼みしているでしょう?
これには訳があるんです。お話ししますから手を、手をお止めになってくださいっ!!
(中略)
つまり、そういう事情でそういう背景でたまたま偶然そうなったというだけなので
心配なさることはなにもありません!ああ良かった。納得いただけて嬉しいですわ。
え?肝心の評価がまだ…そ、それは泉田警部補の名誉が懸かってますから言、言えません!
(中略)
お願いですから許してください…私だって評価のしようがありませんけど、彼はかなり、その
良い、といってよいのではないかと。あの、ノックの音がしてますわ。
もう隠し事は一つもありません。お涼の耳に入っても仕方ないと覚悟も出来てますし。
えっ、私に全部任せてくださいって仰いますが大丈夫なんですか?いえ信用はしています。
ここまで妹思いな人が愁嘆場を引き起こすことはなさらないでしょうから。
手荒な真似をしてと謝られてらっしゃいますが…マッサージなんですから、もういいですわ。
顔をお上げになられてください。怒ってませんから、さあ。
それにしてもずいぶんとご家族思いなんですね。保護者代わりといいますがここまでのこと
普通は出来ませんわ。これは皮肉ではないですよ。これからお仕事の打ち合わせなんですか。
JACESの次期オーナーは妹だから、自分の食い扶持はご自分でと。その意気ご立派ですわ。
まあ、今度はカンクンに支店をお出しになるんですって?もうこれで支社が全世界に20店目?
まったくもって素晴らしいお仕事振り、尊敬します。
今日は色々とお世話になりました。ええ、ごきげんよう。
803 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/08(木) 09:25:19 ID:WUvotuIZ
さて残るは泉田のシマツだな。
804 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/08(木) 11:13:39 ID:3Iq4Xcmq
ちょwwww絹子さんktkr
本心は妹思いでも、
「おもしろそうだから」みたいな理由でひっかき回すとみたwwwww
805 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/08(木) 16:58:41 ID:XPSfqfGU
絹子さん最強ww
806 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/08(木) 17:14:33 ID:g/xj/ibq
き、絹子お姉さま(*´д`)ハァハァ
泉田クンは…どうなるんだろう。
807 :
紅茶はマリークイーン
:2006/06/08(木) 20:30:49 ID:WUvotuIZ
「泉田君、脱ぎなさい」
「な、なにを突然おっしゃいますやら」
「いいから!」
できませんとこの場を飛び出しても良かったのに、涼子の光る両目を見た私の足は
勝手に立ち止まってしまっていた。
「せっかくの白いシャツに紅茶の染みが付いちゃうでしょ?だから、早くおし!」
ミラノブランドのシャツじゃあるまいし、量販店のワゴン売りの安物なのだが
あたしの気遣いを無視する気?と絡まれてもまた厄介なので、私はネクタイを解き
しぶしぶワイシャツを脱いだ。湿気が多い日本のこと、汗対策に肌着は必須なので
ここで扉を開けられたとしてもまだ言い訳は付くだろうという計算もあった。
「火傷、してない?これじゃよくわかんないわ」
「…これも脱げとあなたはおっしゃるんですか」
「いくらあたしが超絶美人で超人的とはいえ、透視能力までは持っちゃいないわ」
ああ、もうどうしてくれよう。しかし目の前の上司は腕を組んで仁王立ちで
私が脱ぐのを待ち構えており、ここで振り切って逃げようものなら何と叫び出すやら、
とんだ逆セクハラくらったうえにセクハラの汚名を着せられてはたまったものではない。
しかたなく、嫌々、私は命令に従ったが男が身をくねらせて脱ぐのはキショクが悪いので
せいぜいガバっと音する勢いで綿のランニングシャツを首から抜いてみせた。
「大丈夫ですよ。もう紅茶はぬるくなっていましたし痛みもありませんから」
私はそう正直に言ったのに、この美しき審問官はそれを信用してくれないらしい。
「後ろをお向き」
「紅茶がこぼれたのは前面ですが…」
「なに?」
「はいはい」
「返事は一回!!」
まったくなんだって、こんなクツジョクの憂き目に合わねばならないのだろう。
貝塚巡査が淹れてくれた紅茶が冷めてしまったから淹れなおしてきて、と呼ばれたのが
つい三分前。まさかこんな署内でストリップする状況になるとは神にだって予想できまい。
書類にペンを走らせながら涼子が無造作にカップをこちらに手渡したときの事故、
だがひょっとしてこれは故意じゃないのかという疑惑が私の中に一気にわだかまる。
808 :
紅茶はマリークイーン
:2006/06/08(木) 20:32:10 ID:WUvotuIZ
いきなり背中をつっと滑らかな指先でなぞられ私は仰天した。いい加減セクハラだぞ?
振り向こうとして首がグキッと音をたてそうなほど後ろから伸びた手で挟まれてしまった。
「いいから、じっとする!よく見えないじゃない」
「何を見ようってんですか。いい加減に悪ふざけは止めてくれませんかね」
「ふーん。背中にオンナの爪跡があるかと思ったけど、残ってないわね」
「そんなものあるわけないでしょう!」
「へーえ。残ってないと叫ばないって事は、まあ第一段階はクリアってところね」
涼子から見えない私の前半分はあっという間に青ざめていた。あ、危なかったあ…
「カマかけても無い疑惑は出てきはしませんよ。もう服を着てもいいでしょう」
「ちょっと待った!」
「なんなんですか一体…」
「はい、コレ」
そういって涼子が執務室の重厚なデスクの引き出しから取り出したのはワゴンに並ぶ
べくもない、一見して高級そうな生地で作られた白いワイシャツであった。
「なんでしょう?」
「なに?これがレオタードにでも見える?」
「見えません!そうじゃなくって、こんな…良いもの戴けませんよ」
「もらってくれなきゃ困るのよ。だって泉田君以外着れないもの、このシャツ」
ほら、と目の前に突き出されたそれをそのまま受け取ってしまった以上
着ないわけにはいかず袖を通してボタンを閉じた。
「やっぱり、ほら見立てどおり!」
「なんだかすごく着易いんですが、どこのメーカーのものなんですか」
安月給ではそう買えないかもしれないが、もう一枚ぐらいは欲しいと思う着心地だった。
「あ、それは教えられないわ」
「またそんな意地悪を」
「だってそれオーダーメイドだもの。泉田君サイズ」
「ああどうりで…ええっ?!」
「ちょっと健康診断のデータ調べさせてもらったけど、これ程度ならプライバシーの
侵害じゃないわよね」
でもなあ。以前に一度だけスーツ仕立券で作ったことがあったが、身長胸囲だけじゃ
ここまでピッタリのものは作れないはずで…いったいいつの間にサイズ採りを?
きっとおそらく魔女王の不思議な手段か何かで私のデータを手に入れたのだろうと
私は深く考えるのを放棄した。せっかく胃薬の量も減ってきたということでもあるし…
809 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/08(木) 20:35:10 ID:WUvotuIZ
まあおそらくメイドたちがやったのではと、おそらく。
810 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/08(木) 21:23:31 ID:7xHHGz1G
メイドのオーダーですか
811 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/08(木) 21:31:04 ID:QB+PGhbJ
ついにバレるかとヒヤヒヤ&ワクワクした…危ないとこだったね、泉田w
812 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/08(木) 23:25:00 ID:g/xj/ibq
なんかこう巣にかかったカヨワイモンシロチョウ(泉田)をじわじわ追い詰めていく
文様だけは美しいクモ(お涼さま)みたいな構図ですね。
泉田クンが食われる獲物の幸福を味わえるといいんですが。
813 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/08(木) 23:44:27 ID:IadUoUf3
やっぱり、貝塚巡査とお涼さまはグルなんだろうか?
814 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/09(金) 00:39:22 ID:Rzh0Yl8p
ツンツンお涼さん家紋!
815 :
ソレは墓場まで
:2006/06/09(金) 03:49:08 ID:ZdOFOIzK
ざらざらと瓶を傾けて錠剤を出していると背中を優しく叩かれた。
「規定の用量は守ったほうがいいな。それに空の胃に入れるものじゃない」
そうして目の前に差し出されたのはアンパンの袋。違う方から牛乳のパックも。
「そうですよ。薬ばかりより、牛乳の方が自然ですし胃粘膜を保護するんです」
さらに心配そうに引き出しから漢方薬を出して勧めてくれる人も。
「ご心配おかけして申し訳ありません。ですがこれぐらいまだ平気ですよ」
「…そうですかあ?ここ数日みるみる胃薬が減っていってますよお」
「なにか心配事でもあられるのですか?」
ある、本当はものすごくあるのだがこんなこと誰にも言えるはずが無い。
室町警視と組んで深刻なセクハラを明るみに出した件については隠す必要も無いが、
その過程にアレやらコレやら闇に葬るしかない件が彼女との間に起こってしまい、
これは絶対にバレるわけにはいかない。特に涼子に対してだ。
だが、なぜ涼子に対してそういう意識が出るのだろう。ただその時のカタストロフを
思うと心臓が幾つあっても足りないだろうなあという思いと恐怖ばかりが先走り、
思考はそこから先に進まないでいた。
ちらり、と丸岡警部から目を向けられその先を見ると私の胃痛の原因が立っていた。
「ちょっと、話があるんだけど」
くいくいと手招きされては見ぬフリなぞ出来そうにもなかった。
「頑張ってくださ〜い」
三者三様の見守るような視線に送られて、私は廊下へ重い足を引きずり扉を開けた。
816 :
ソレは墓場まで
:2006/06/09(金) 03:49:52 ID:ZdOFOIzK
「単刀直入に聞くわ。泉田君、お由紀と何かあった?」
「あったといいますか、それは…」
「あとは私が説明するわ」
「室町警視!」
「あら、懸念のタネが向こうからやってくるなんて手間が省けたわ」
「この間、各省庁のトップエリート数人が処分されたでしょう」
「それで?」
美しき裁判官がこれまた美しい顎をくいと引いてその先を促す。
「あれは、私だけの手柄じゃないの。泉田警部補にも協力してもらったのよ」
「ふーん」
「だから、お涼が勘ぐることなど私と泉田警部補の間には何もなかったのよ」
「へー」
「ちょっと!!」
まるっきりマジメに聞こうとしない涼子の態度に由紀子の声が知らず高くなる。
「このあたしが、ソレ程度のことでいちいち騒ぎ立てると思う?ええ?
変態エリートが勝手に自滅したって話ならとっくにあたしの耳に入ってるわよ。
二人がアヤシイって裏づけがちゃんとあるからこそ、あたしは言ってるの」
「言ってみなさいよ。いい加減なことだったら只じゃ置かないからね」
「あれだけ情報料を弾んだんだもの。インチキな話であるわけがないッ」
「いくら払ったんですか」
「現金じゃないわ。『なでしこ飛行隊』のチャイナドレスバージョンよ!」
情報源は言うまでもあるまい。あんにゃろう!と唸り声を喉に押し込め宙を睨んだ。
「一、警視庁から二人でタクシーに乗り込むのを見た」
そして美しい指をさらにもう一本立てる。
「二、お由紀の服が翌日も同じ、しかも気だるそうな様子だった」
そして私と由紀子を超新星のような視線で射すくめ言い放った。
「これだけの状況が揃っていれば、二人の間にナニかがあったなんて明々白日!
さあさっさとキリキリ白状おし!私だって鬼じゃないんだから早くお言い!」
鬼じゃなくて魔女王様だろうなんて場を和ませる冗談など言える空気でもなく、
涼子の単なる直感があらゆるものを飛び越えていきなり事実を掴み取った驚きに
私も由紀子もしばらく口が訊けないでいた。
「勝負あったわね。さあ言い分でも聞きましょうか。どちらからでもいいけれど」
817 :
ソレは墓場まで
:2006/06/09(金) 03:51:52 ID:ZdOFOIzK
御使いが喇叭を吹き鳴らし、天の鉢が割れて終末のカタストロフが始まろうかと
思われたその時、場違いなほどほんわりとした響きの声が耳に入ってきた。
「良かったわ。どうやら間に合いましたようですわね」
硬直した時間の中、誰よりも早く反応したのが涼子だった。
「…おキヌ!何だってここに来たのさッ」
「あら、無用の誤解を解くお手伝いに参りましたのよ」
「誰が頼んだよ!」
「そんなこといわないでちょうだいな。涼子ちゃんだって人を疑うのは嫌でしょう?」
うーん、姉妹愛がなせるウツクシキ誤解である。さすが絹子さん。
「さ、さ、ちょっとお耳を貸しなさいな」
有無を言わさず涼子の手を引いて廊下の片隅に行きヒソヒソと話をする。
ときおり涼子の鋭い視線が頬に刺さるが、どうやらピンチは一時去ってくれたらしい。
安心する間もなく、今度は絹子さんがこちらにつかつかとやってきて同じように隅に
連れて行かれなにごとか囁かれた。のだが…それはなんていう話ですか?
「さ、これで万事上手く収まるわ。さ、頑張ってね泉田サン」
ポンと背中を叩かれ、涼子の前に歩み出る。涼子の態度はやや軟化しているように見える。
「そこまで泉田クンを悩ませていたなんて悪かったわ」
「いいえ、これは自業自得ですし」
「いいのよそんなに自分を責めないでも。それにしてもいくら恋愛の悩み相談だって
よりにもよってお由紀に指針を求めるなんて、ううん、それほど藁にもすがりたかった
というワケだったんだろうけど」
私の視界の端で眉を吊り上げる由紀子が見えたが、賢明にも彼女は沈黙を守ってくれている。
「泉田クンの気持ちはよーく分かったわ。あたしの一人相撲じゃないってことも分かったし。
さあ、エンリョせずにあたしの腕に飛び込んできなさい!」
「えーっと…」
「さあ!」
「あらまあこれでは、フレキシビリティはマイナス20点ね」
「絹子さん!貴女一体お涼になに吹き込んだんですか!」
「つまり、由紀子さんと二人料亭に行ったのは涼子への恋心を相談するためだったと」
「それはまたずいぶんと無茶な設定を思いついたものですね…」
なごやかに会話をする二人の美女に見とれる隙も与えず、目の前の美女が見る見る怒りの
ボルテージを上げていくのが気配で分かる。この期におよんでも涼子のまなじり吊り上げた顔さえ
美しいなあと見惚れている内に胃の痛みが全身に広がっていき…あれ、視界がなんだか暗く…?
「きゃあ!」
「泉田さん?」
「泉田クン!ちょっと!あたしへの告白は!!」
ネクタイを捕まれ肩を揺すぶられる感覚の中、私はどうやら気を失ってしまったらしい。
818 :
ソレは墓場まで
:2006/06/09(金) 03:52:46 ID:ZdOFOIzK
顔にぱたり、と暖かい雫が落ちる。唇の端に流れてきたそれを舐めてみると塩辛い。
眠たくて目が開けられず、手だけ動かして雫の元をたどると滑らかな輪郭に触れていた。
さらさらと柔らかい髪は短く、私の隣にいるのは涼子だと見ないうちから確信した。
さらにまたぱたりと雫が落ちて、顔を包んでいるらしい手に濡れた感触が走る。
「泣いているんですか…?」
まさかあの涼子が泣くなんて、という意外な思いと、なぜか胸が締め付けられる思いが交錯する。
「このあたしにここまで心配させるなんて…高くつくわよ」
「あなたの涙を戴いてしまったからには覚悟してますよ」
「なにをどれだけ保証しようってのさ」
「私の一生の忠誠を。それだけじゃ足りませんかね」
ようやく重い瞼を持ち上げて目の前の顔を見ると、陽光が雲の切れ間から差したような
笑みが視界に入った。手に入る力が増し、涼子の頬に添えた手をそのまま後頭部に回し
自分の方へ引き寄せた。
「泉田、クン…」
芳しい息が顔にかかる。
「あなたに恥じるようなことは何もありません。何もなかったんですよ」
「じゃあ、信じるわ。泉田クンだから、信じる」
「光栄です」
まだ胃は痛むが耐えられないほどではない。気絶してしまうだなんて情けなかったなあ。
「胃潰瘍の出血で一時的な貧血ですって。しばらく重湯の食事だろうけど仕方ないわよね」
「治ったら、また一緒に食事行きましょう」
「うん。」
「…ちょっとアレじゃ医務室に入れませんねえ」
「なにがあったのやら知らないが、まあ良かったんじゃないかね」
「まったく、人騒がせておいて…でも責任の一端は私にもあることだし、コホン」
「まあまあ一件落着という事で八方丸く収まってよろしゅうございましょう?」
皆さん方、聞こえているんですってば。
ここまで騒ぎが大きくなれば、さすがに何が原因なのであるかは私にだって察しが付く。
けれど、なんでだって私なのであろう。涼子であれば相手は選り取りみどりだろうに。
こちらも覚悟を決めてキスの一つでも涼子に奉げようかと思ったがギャラリーがこうまで
多くてはそれも出来ぬ。私は欧米人ではない、日本男子なのだ。いささか古めの。
「なにをするにせよ、まずは身体を直すのが先決よ。だから、ね。早く治すのよ」
唇に指を当てながらウインクをしてそう言った涼子は、寝ている私の唇をその指で触れて
「や・く・そ・く」
「了解しました」
窓から吹き込んだ風で薄いカーテンが強くなびいて、凛と立ち上がった涼子の周りで踊る。
その様に見惚れながら、私は久しぶりの幸福な眠りにゆっくりと落ちていった。
――まずは起きたらヤツを締め上げないとな。
819 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/09(金) 03:54:48 ID:ZdOFOIzK
そういうことで今度は某氏がエライ目に遭いそうですが
ヤツはどーでもいいので、キニシナイ!(・3・)
最初から延々長いパロ読んでくれてありがとね。ではまた次スレでヨロシク。
820 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/09(金) 08:21:05 ID:gLpfXbDP
最強絹子お姉様(・∀・)イラシタ!!
お涼の目にも涙(・∀・)アッタ!!
職人さんGJ!!何この洪水のような萌えは!!
えと、つ、続きは期待してもよろしゅう御座いますの?
821 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/09(金) 09:09:29 ID:CK+qZMFg
GGGGJ〜!!
お涼、おめでとうv
泉田、……オメデトウw
陽光が雲の〜とか原作をなぞった描写してくれるから、当たり前に萌える。ほんとGJ!
いつもアリガト-、今後も何卒ヨロシクですっ
822 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/09(金) 22:48:11 ID:iXxUreln
是非次は絹子さんとも…
823 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/10(土) 01:57:32 ID:Cq9q4LK9
そろそろ次スレだなあ
824 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/10(土) 07:36:15 ID:fSHw79gO
幸せな気持ちをありがとう!
また是非宜しく!
今491.4kか。
確かにそろそろ次スレ。
825 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/10(土) 23:41:06 ID:qvHQWmgU
お涼さんに萌えた
826 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/11(日) 06:24:09 ID:xMgn7Mhg
襲われる泉田を見たいー。涼子が男を食っちまうって感じがいいんだよな。
なんたって「目指せエカテリーナ」だから。ついでにハーレム作ってほすィ。
827 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/11(日) 09:06:05 ID:00mF8vXz
やだ。それは絹子さんの方が萌エス。
エカテリーナ目指してんのに鈍感泉田に惚れてんのが
涼子のキモなんすからw
828 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/11(日) 09:25:49 ID:zLRHd7fI
>827ドウーイ
お涼は、ある程度場数踏んだら泉田を襲う側に回りそうだけど
「食いまくってそうで実は…」とか「食うつもりで襲い掛かったけど食われますた」
みたいなギャップに萌えるw
というか男を食っちまうお涼ってのはそれ何て天使のなっちゃ(ry
そして絹子さんは「あらまあこれはこれは」とか口調だけはおっとりとしてるのに
作業がやたら手っ取り早くてあっという間に相手を裸にひん剥いてくれそうだw
829 :
♯紀子
:2006/06/12(月) 15:38:19 ID:9MsLjnCW
岸本明警部補には天使でもお涼は破壊神と泉田警部補が言うてるよ。
室町由紀子はライバル
830 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/12(月) 16:53:35 ID:SE4InKFi
仕事のライバルでも、恋愛のライバルにはならないとオモ。
いいかげん由紀子も涼子→泉田にも気付いているのにそれをあげつらって
馬鹿にするような発言は一切せず、涼子の恋路を妨害しようともしない。
(泉田に涼子の気持ちを教えるような事も一切しないけどw)
一歩引いて、涼子泉田の様子をやや呆れて見ているってのが由紀子の
オトナな所で、由紀子ファンはその器が大きいところが好きなんだよ。
いちいち涼子と泉田の仲を妨害するチマチマした陰険な由紀子って良いか?
ダメだろう。そう思うのだが。
けれど、涼子が「泉田もう要らない!」とかウッカリ言った日にゃ
「じゃあ私が貰いましょう」と即座に由紀子が手をあげるんだろうな。
(もちろん直後にやっぱりあたしのだからダメ!と涼子が焦りまくって
泉田が私ゃオモチャですか…とガックリするという構図がオヤクソク)
831 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/12(月) 17:32:28 ID:SE4InKFi
いったい、いつ次スレ立てたらいい?
もうしばらくネタ雑談しておく?
832 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/12(月) 19:31:50 ID:9ceFhjW+
遅いレスだが
>>795
さん乙!ラインハルト相変わらずなボケだな
そしてユリアンの生活が本気で羨ましい。毎日カリンの奥に入れまくりか・・・文句ねぇよ刺してもらえユリ坊。また小話とか浮かんだら投下おねがいします
833 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/12(月) 20:17:32 ID:ho6O3Cza
もう立ててもいいんでない、次
自分は立てらんないんで、どなたかお願いできますかー
834 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/12(月) 21:06:18 ID:56ffK36h
あげあげ!
835 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/12(月) 21:25:23 ID:+Irgt6dC
遅ればせながら、GJ!
自分の勝手な妄想では、バレる→強引にエチー→仲直りwだったけど
この結末のほうが、ずっと楽しめました♪
お涼、よかったなwww
836 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/12(月) 22:56:35 ID:627TgX/G
本当にGJ!
お椋さま最高!いいぞ、いいぞ!
このままガンガン行っちゃって〜!
W杯も今のところ一点入って、調子いいぞー!
ところで、次スレ立てましょうか?
このスレの1と同じでいいですよね?
と言っても、みんなテレビに釘付けか?
837 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/12(月) 23:03:44 ID:627TgX/G
次スレ立てたよ。
【ガイエ】田中芳樹作品エロパロ【ハァハァ伝説】 4
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1150120815/l50
埋め立て宜しく!
838 :
名無しさん@ピンキー
:2006/06/12(月) 23:58:39 ID:627TgX/G
SS読んでる間に、なんてこった!
うううっ…負けちまった…
三点も取られるなんて、どうした日本!
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