ルッツの苦悩 /1-972さん


 病院というものは本来嫌いな場所でしかなかった。生来丈夫が取り柄の私には縁も結びつくはずもない。立ち寄るときは
同僚や部下の見舞いがせいぜいといったところだ。
 その認識を一変する事件があった。私自身も被害を被った。一応入院を余儀なくされた傷も完治し、本来なら職務にいそしんでいるはずだ。いや、はずではなくそれが常識というものだ。
 だが私は病院特有の白を基調としたロビーで消毒用だろう薬品の匂いをかすかに感じながら自らの名を呼ばれるのを待っていた。
 スケジュールでは治療後の検査という名目であるが、実際には治療でも他人の見舞いでもない。一ミクロンの誤差のない私事でだ。
 本来軍関係者も治療を受ける病院だということで軍服で待っていてもさほど周囲の視線を浴びる事もないはずだが、上級大将という階級だとそういうわけにもいかない。
 階級に気がついた部下が通過するたびに敬礼していくのは何度目だろう。己がいるべき場所ではないという自覚があるので、鬱陶しくて仕方がない。
 スピーカより聞き覚えのある女声で自分の名前が流れた瞬間私は即座に立ち上がり、指定の部屋に早足で向かった。




 病室ということで大人しめにドアを開けるのとは対照的に駆け足で入室する。
 本来なら病室には鍵はないのだが、持参した簡易キーをポケットから取り出すと装着し密室状態を作り出す。
簡単に解錠しないことを確認してから
「クララ」
 ようやく一言呼ぶとベッドの上に座っていた看護師姿のクララを抱きしめる。
「もう、そんなに急がなくても私は逃げませんわ」
 クララは私の慌てぶりに苦笑しながら優しく抱きしめ返してくれた。
「だが時間は待ってくれないじゃないか」
 軍人と看護師では生活習慣の違いからほとんど会うことができない。
 苦肉の策として、すべき事ではないのは重々承知だが、どちらかのスケジュールにあわせての密会だった。
 といってもクララが陣営に来るなどないので私が検査を装ってということになった。
 今日だって私はもちろんクララ側でもスケジュールをやりくりしてようやくできた僅かな休憩時間に会う形になった。
 真面目なクララは仕事をサボタージュする事にいい顔はしなかった。
 情けないが二人きり出会わないと気が狂いそうだ、そう切々と訴えると渋々ながら私の我が侭を通してくれた。
「会いたかった」
 非常に率直ではあるが今の心境を語ると
「私も……」
 そう腕に力を込めながら語ってくれた。
 ここ数日廓寥としていた胸に充足感が駆け抜ける。いつもは薄い化粧をしているはずだが、このときは形のよい唇にほんのり桜色に染まっていた。吸い付きたい衝動に駆られやや強引に唇を重ねる。
 やや驚いたようだったが、すぐに私を迎えてくれた。唇は想像以上の柔らかさだった。時間をおかず唇を割り舌を味わった。遠慮がちに舌を絡めてきたクララに応えるべく包み込むよう重ね合わせる。
 唇を貪っている間に手を胸に沿わせる。白い制服の上から揉み下すと小気味よい反応がクララの口から漏れた。

 私としてはこのまま次の行程に移行することを熱望するのだが
「あまり性急に事を進めるのは感心しませんわ」
 などと言いながらやんわりと私の一手を逸らすのだった。クララには今日は会うだけだからと言っていたのでこの態度もやむを得ないのだが私としては落胆するしかない。
 思わず自分の髪をかき乱しながらクララを見つめる。クララの細い指が俺の髪を優しくなでつける。落ち着くように言いながら病室のベッドに腰掛けるよう促された。
 自分でもなぜこんなに焦っているのかわからない。私の様子にただならぬものを感じたらしいクララはベッドに横になるように言った。クララの言に従うとクララは体調をはかるため私の脈を取り始めた。一連の行動を熱か何かから来る症状だと思ったらしい。
「い、いや俺は病人ではないから」
「少なくともこの前まで怪我人だったでしょう。その後遺症があるかもしれないでじゃないですか」
「怪我人だった事実は認めるが、この症状は」
 君に出会ったからだ。とは流石に素面では言えないので、言いよどむ。
「何か心当たりがあるの?」
 看護師として訪ねるクララが粘膜密着型の体温計を取り出し私に銜えさせようとする。
 私は手で軽く制した。体温を計られるのが嫌なのだが、クララは体温計が気にくわないと取ったようで私の額に手を置き体温を計った。
 熱はないようね。そういいながら他に異常がないか見ていたクララは私の下半身を見やった瞬間動きを止めた。ズボンの一部分を突き破るように隆起している。
 男としての原始的感情を図らずも体現したその光景はクララには滑稽な姿だと写ったらしく口元に手をやりながら小さく笑われてしまった。
 「あらあら、大変。腫れているわね。さっそく治療しないといけないけれど何か治療法に希望はお有りかしら」
 目を細めながら患部のチャックに手を添え私の様子をうかがった。
 瞬間脳裏にありとあらゆる選択肢が浮かんだ。欲望のまま言ってみたい情思が浮かんでは消える。葛藤の末結局は、自由に。という短い一言だけ告げた。




「では、まずは患部を見せてもらいますね」
 そう告げながら作業をはじめる。ここでちょっとした問題が生じた。
 患部の隆起がチャックをおろすという行動を阻害しているのだ。ちょうど山頂のあたりでチャックの行進が止まってしまった。
 これ以上無理に進行するなら、患部にさらなる傷を負わせる結果にもつながる。クララが私に助けを求める。
 意識とは無関係に、衣服を突き破ろうとするかのように動く患部に半ばあきれながら、患部をなだめつつ外気にさらけ出した。
 よほど衣服の中が窮屈だったのか、すさまじい勢いで再び天に頭をむける。私も苦笑するしかなかった。
 自己主張激しい患部にクララが視診を始める。いろいろな方向から観察されるのだが、多大に羞恥心を刺激するものだった。視線で愛撫されている感覚におちいる。
「大きく腫れている以外は特に問題は無いようですね」
 あっては困る、とは思ったが口には出さない。患部の方は異論があるらしく、言葉の代わりに先端の傷口より透明な膿を出しはじめた。
 そのことに気づいたクララは膿の出る傷口に栓をするように指で塞ごうとした。敏感な場所に快い刺激を受けた結果更に出し続ける結果となる。
「そこばかり触らないでくれ」
「気持ちよく無かったかしら」
「いやどちらかと言えば良いんだが、そこは感じやすくて」
 それを聞いたクララは、数ミリ単位の振動を指で作り出し先端の傷口に与えはじめた。未知の刺激に思わず唸ってしまう。
「お気に召しまして?」
 その問いに無言で頷いた私に気をよくしたのか、余った一方の手で患部をマッサージし始める。曰く触診とのことだ。
 人差し指を筋に沿って軽くなでる。括れの部分は特に念入りにしているようだ。喉の奥から出かかった声をぐっと堪える。
 指先で患部を嬲っているクララに恍惚とした表情が伺える。楽しんでいるのは明らかだ。辛かったら声を出していいんですよ。と言われたが矜恃が許さない。息を荒げつつ
「いいんだ続けてくれ」
 と頼んだ。


  診断の結果膿は揉み出すことになったらしい。そう聞いたとき、私は一つの提案を切り出した。
「どうだろう、よろしければ私の上で施してもらえないだろうか」
 少し考え込んだ後、短くええ、と答えたクララは私の上に跨る。患部に向けて座ったクララは必然的に私の眼前に尻を向ける格好となった。
 クララはワセリンを自分の手につけると患部を包み込んだ。一瞬薬品の冷たさの後に柔らかな感触が全身を貫く。
 自然吐息が漏れる。
 患部を挟み込むように手を組んだクララはゆっくりと上下に揉み出す。私を慮るせいなのか、仕掛かりは触れているだけとほぼ変わらない具合だった。
 触れてもらえるのは非常に嬉しいことなのだが、それだけでは荒くれた患部を大人しくさせることは出来そうになかった。
「すまない。その程度では直ってくれないんだ」
「荒療治がお好みなのね。困ったこと」
 私の顔をちらりと見やり。小さく口元をあげたクララは手に力を込めつつ言い放った。
 しなやかな手首はまさに全てを絞り取らんばかりの動きだった。特に根本はより強めに、先端はやや弱めながらその分指の動きを激しいものとしている。望外の刺激につい声が漏れるのを許してしまった。
「よかった」
「何が良いんだ。」 
「だって、あなたったら意地をお張りになって何も仰らないのですもの。それではちゃんと治療になっているかどうか判りませんわ。でもちゃんと効果があるようね」
 嬉しそうに言い放つと指の動きは激しさを増した。
「ば、馬鹿。ううっ……」
 造形美を誇るクララの指に患部を弄ばれ、私の忍び声は徐々に多くなっていった。血も感覚も全て患部に集中するのがわかる。
「こんなに固くなって…… さあ、早くお出しになって」




 先端をいじめ抜かれようやく患部も観念したようだ。
 艶かしい声に導かれるように射精する。先端から吹き出すようにあふれる膿は患部を扱きつつけている手を汚してしまった。
「すごく濃い……」
 射精の余韻に浸っているとベトリと余す所無く付着した膿にクララは驚嘆の声を漏らした。指同士をこすりあわせ離すと細い糸ができるほどだった。
 細かい刺繍入りのハンカチを取り出すと付着したものを拭い去る。これで終り、とばかりに私の上から降りようとしたので、慌てて押し止める。
「ま、待ってくれ今度は私の番だ」
 言いながらスカートの中に手を差し入れまくり上げる。眼前には白衣にはアンバランスなほど真赤に染め抜かれた下着に包まれた肉付きのよい臀部が広がる。
「どうするつもりですの」
「診察さ。決まってるじゃないか」
「どこも悪くないですわ」
「それは診察してから私が決めるさ。……まずは」
 両手で臀部を鷲掴みにして感触を確かめる。適度な筋肉がついているため非常に弾力がある。しっとりとした肌は指に吸い付くようだった。
「なかなかのものだ……よし次は」
 下着上からクララの恥丘や秘所を指で撫でる。光沢のある絹の布地だが、中心部は湿り気を帯び光を失っていた。湿り気まじりの部分の上を強くなぞるとクララから甘い声をさえずる。
「なんだもう感じてるじゃないか」
「……」
 口元が動いたのだが、あまりの小声で聞こえなかった。聞こえないといって催促すると
「その……あまりにもあなたが気持ちよさそうにしてくれるんですもの……表情なんて特に、瞳までお変えになって……声まであんなに……つい私もその気になってしまって……」 
 顔面に血が上る。
「っ!? そこまで顔に……」
 返事の代わりに彼女はこくりと頷いた


 常々表情を読まれやすいとは思っていたが、まさかこんな時に関わってくるなんて予想外だ。今は別に問題はない。それどころかクララは喜んでいる。ここは恥ずかしさを堪え利用することにしよう。
「まあ、クララが喜ぶならいいさ。では気を取り直し診断の結果は今すぐ治療の余地ありに決定」
「ご、強引な……ぁん」
 下着生地を強引に横へずらし初期治療として花芯を摘み上げる。ある程度固くなっていたそれを軽く爪を押し当てると一際高い声をあげる。
「ひぃっ……んんぅ……ぁ……ぁああっ」
「あまり大きな声をだすと外に聞こえるぞ。いいのか?」
 病室の壁は病人の不意の時のため通常より声が通りやすくなっている。そのことを告げた上で更に花芯をいじると彼女は口に手を当て声を少しでも漏らさないようにする。
 それにより彼女は大きく声をあげることは無くなったが、ここで少し意地悪をしてみたくなった。
 両手の親指で花芯を引き続きいじりながら残りの指で花弁を押し広げた。そして今にもこぼれんばかりの蜜を舐め取り始める。
 これにはかなり驚いたようで彼女の口から悲鳴に近い嬌声を生み出すことに成功した。
「やあっ! そんなところに口をつけるなんてっ……」
「また声が大きい……」
「それはあなたがっ……んんっ、ひゃぁ……」
 更に奥に舌を差し入れかき回した。それで力が抜けたのか私の上で寝そべるようになった。





 その後も制止の声を含めつつ喘いでいたが、同じ人間の口でも上下では主張が違うらしい。ひと舐めするたびに歓喜の蜜をあふれ出す。
 しかも徐々に量が多くなっているため次第にじゅるじゅると音をたてねば舐め取れなくなってきていた。
 彼女にも聞こえるようになると恥ずかしさのためか腰をくねらせる。その動きがより一層の興奮を私に与えた。先ほど出したばかりだというのに患部がもたげ始める。
 力を取り戻しつつある患部を目にしたクララは
「ぁん……うぅん……また……こんなに……」
 そういって患部を再度治療すべく今度は口に含んだ。
 患部の先端が熱い唇に包まれる。先ほどさんざん弄ばれたため、少々鈍くなってはいたが身を走る感覚はすさまじいものがあった。一瞬私の動きが止まる。
「意地の悪いあなたお返しです」 
 くっ、とうめき声を出してしまった私に喘ぎすぎで息を荒くさせながら話す。
「な、なかなかいい返し方だな」
「喜んで頂けたなら嬉しいですわ」
「では私ももっと報いなければな」
 そして私は再開した。今度は舌だけでなく指を使って持てる技全てを使うべく没頭しようとした。呼応するようにクララも舌を使い始める。
 クララが口内でほどこす治療はかなり上手かった。先ほどの治療のためか非常に的確に舌を使い刺激する。唇をすぼめ患部を喉元まで含めたクララは全てを飲み込むかのように吸い続ける。
 すばらしい感覚のため下半身に意識が向かってしまい目の前の事に集中できない。
「クララ……いいかい?」
 クララは口から患部を離し、無言で頷いた。
 私はクララを体の上からおろし、体制を整えるとあらん限りの勢いで押し倒した。自らの下半身を持ちクララのそれに向け挿入しようとする。




 今まさに結合たらんと胸躍らせたときその胸に入れていた携帯通信TVから緊急呼び出しコール音がした。
「何っ!?」
 邪魔をされたことで通信TVに向かって怒りを表す。乱れた服装で出るわけにはいかないので、音声だけで通信を始める。
「失礼します」
 副官のグーテンゾーンからの通信だった。
「何だ」
 公人としてはあるまじき行為だが、この時不機嫌さを隠そうとしなかった。
「お忙しいところ大変申し訳ございません。カイザーより緊急の招集がかかりましたので至急大本営にお戻りください」
 口調で時機の悪さを悟ったようで、かなりばつの悪そうに告げるグーテンゾーンではあるがそれで私の気が晴れるわけではない。
 わかったと短く告げ通信を切る。それ以上何も言う気力は湧かなかった。
 そばで聞いていたクララも同じ思いだったに違いない。それでも私の身支度の手伝いをし始め
「これからいくらでも一緒に過ごす時間は作れましょう。ですから今日はあなたがいるべきところにお帰りください。」
 と、優しく言った。
「ああ……そうだな。来年になれば少しは暇になるだろうから、喪が明け次第にでも休暇を取ってどこか旅行に行こう。」
「ええ、喜んで。それにしても気が早いこと。ずいぶんと先の事じゃないですか。そんなに急がなくても私は二人でいけるならどこでも良いですわ」
「嬉しいことを言ってくれるじゃないか」
 華奢なクララの体を抱きしめる。少しでもクララの暖かさを覚えておきたかった。時間の無いことなのでほんの数秒にすぎなかったが、しばらくはこの掌にかかる温もりは消えることは無いだろう。
 入室時に取り付けた簡易キーを外し出口に向かう私に、クララは微笑をもって送ってくれた。
 その微笑を背に病院を後にする。
 先ほどまでの甘い感情は胸の奥底に秘め、今はただ一軍人として大本営に向かう。車に乗り込む時、不意に今日の暦の上では秋に差し掛かるのに日差しが強い事を感じた。
「今日は暑いな……九月になったというのに……」
 一瞬背中に不快な悪寒が走ったが、屋内から屋外に出たときの急な温度変化によるためと気にもとめず歩みを続ける。九月十日のことだった。







ヴァルハラネタ(?)「ルッツの真の苦悩」(スレ2-136さん):以下を反転してご覧下さい
服用上の注意:本編の雰囲気を著しく損なう恐れがあります
                        

ルッツの真の苦悩
金髪 「ルッツ。予は卿が医師の免許を持っているとは知らなかった。しかもずいぶんと腕利きのようだな
ルッツ「陛下。一体なんの……
    ……
    …………
    ………………



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  . |  ,,-‐‐   ‐‐-、 .:::| わ
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.   |    ::<      .::|あぁ
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