ヤン×フレデリカ  (2-250さん)



「大尉、あ、いや、少佐。その……寝室に、行こうか」

ヨシキタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━!!
よく言ったわヤン・ウェンリー!
あたしがんばる!

なんだかやる気まんまんのようで恥ずかしかったが…
なんとかプロポーズさせるところまでは良かったが、なにしろ二つ返事で了承するという醜態を見せてしまったのだ。
本当は古式ゆかしく「しばらく考えさせてください」ぐらい言ってみたかったのだけれど。
今さらこのぐらい構わないでしょう。
なにしろ 婚 約 したのだもの。




政府による停戦命令に従って、帝国軍との戦いは終わった。
戦死扱いにするメンバーについての事務処理もキャゼルヌ中将とわたしで猛スピードで片付け、
その他もろもろの緊急処理を終えてやっとゆっくり眠って、翌日ユリアンから夕食の誘いを受けた。
「提督とフレデリカさんのご婚約を祝って。ヒューベリオンの中ですし、ハイネセンやイゼルローンと違って
 特別な材料を用意できるわけでもないのでごく簡単なものしかできませんし、お二人と、
料理頭のぼくだけですけど、何かお祝いができたらなと思って…」
わたしは喜んで承知した。
ユリアンの料理の腕は確かだし、食堂や艦橋以外での手料理というのも久しぶり。それに何より、
初めて 婚 約 者 としてヤン家に招待されたのですもの、嬉しくならないほうがおかしい。
ああどうしよう、何を着ていったらいいかしら…と考えて愕然とする。ここは戦艦の中。
戦闘と業務だけの生活だから、軍服とパジャマと、せいぜい部屋で休息するときの部屋着程度しか
持ってきていない!
ああ、わたしのバカバカ。まさかこんなことになるとは。どうしよう。
せめてちょっとマシなワンピースぐらいあれば…
だいたいイゼルローンにいるときにプロポーズしてくれればこんなことにはならなかったのに。
あ、いけない。別にヤン提督が悪いわけじゃないわよね。
野望を抱いていながら、いざというときのための準備を怠ったわたしがいけないんだわ。
仕方がない、提督のために装うのはまた別の機会にして、今日は変わりばえのしない軍服だ。
せめてシャワーを浴びて、下着もとっておきのを身につけて
(下着は荷物にならないから、気分転換も兼ねていろいろ持ってきている)、
いつもの爽やか系よりちょっとオトナ系のコロンをつける。
食事に呼ばれたのに匂いをプンプンさせていくわけにいかないから、近くに寄ったときに香る程度。
そう、たとえば抱きしめられたときとか…きゃ、やだ。




定刻から5分遅れでヤン家を訪問。提督もユリアンもくつろいだ私服だ。
「フレデリカさん、今日はプライベートなんですから、お気遣いなく普段着で来ていただいてよかったのに」
ユリアンは軍服のわたしに驚いて気遣ってくれたが、男性と違って女性はそうはいかない。
特に 婚 約 したてのうら若き女性はね。ユリアンは聡くて賢い子だけれど、こういう女性心理に関しては
提督と似たようなものなのかもしれない。十六歳かそこらで女性心理に通じていても困るけれど。

ユリアンの作ってくれた食事は美味しかった。材料も限られた艦内で、よくこんなにいろんなメニューを揃えられると
感心してしまう。結婚してもユリアンがいてくれれば食事の不安はないのだけれど、頼っているばかりではいけない。
わたしも頑張って、得意料理のひとつふたつは出来るようにならなくちゃ。
…などとお気楽に考えていたら、衝撃の情報が出た。ユリアンは地球に行ってしまうという。
なんてこと。どうしよう。と、とりあえずわたしが作れるものって…と、表情に出さないよう必死に考える。
懸命に思い出しても片手で余るくらいなのが悲しい。でも、今ここで考えてもしょうがないわよね。
イゼルローンに帰ったらキャゼルヌ夫人もいることだし、わたしでも簡単に作れて美味しいものを教わろう。
退役するんだから、料理教室にだって通えるし。
気分を前向きに浮上させたところで、わたしにも唯一手伝える片づけが終わった。
濡れた手を拭くなり、ユリアンはアッテンボロー提督と約束がとかなんとかごにょごにょ言って、
出ていってしまった。
気を利かせてくれたに違いない。やっぱりいい子ね、ユリアン! イゼルローンに戻ったら、何かお礼を考えよう。

リビングに移動して、提督がブランデーを出している。わたしにはジンジャーエールで割ったもの。
気を遣ってくれたのだろう。食事中にもワインを飲んでいたから、そのままではキツイ。その心遣いが嬉しかった。
しかもアルコール入りだから、酔ったフリだってできる。
ユリアンもいないし…これは、チャンス?



他愛ない世間話や仕事の話。今までの上官−部下の立場でも交わしていたような話ばかりだけれど、
私室でお酒を飲みながら、しかも 婚 約 者 、それだけで何もかもが違うように感じる。
今回の帝国軍の行動や、それを受け入れた同盟政府のこと、ローエングラム元帥が会いたいと言ってきたこと、
現実的で硬い話ばかりなのに、なぜこんなに甘く聞こえるのだろう。
とはいえ、いつものわたしなら喜んで真面目に聞く話だけれど、ごめんなさいヤン提督。
今日はそれどころじゃないの。
話が途切れたところで、揃えていた膝をちょっとだけ崩して(スカートだったら効果的だったのに)、
ちょっとだけ提督にしなだれかかって、ちょっとだけ苦しそうに息を吐いてみせて、
ちょっとだけ目をうるませて提督の目を覗いてみる。明らかに狼狽したような顔。
提督の名を呼ぼうとして、はたと詰まる。なんて呼んだらいい?
婚 約 者 どうしなんだから、やっぱりファーストネームで呼びたい。
現に提督は「フレデリカ」って呼んでくれたし。ああ、あの不景気な補給基地でのことを思い出すと今でも…
…今は浸ってる場合じゃないわ。
E式だから、ウェンリーがファーストネームよね。でも、いきなり『ウェンリー』なんて…第一誰だかわかんないし。
『ヤンさん』? ビュコック夫人じゃないんだから。
『あなた』きゃあああ。…ちょっと早いような気がする。ええいしょうがない。

「提督…」
「…あ、ああ、ごめん、ちょっと濃かったかな。今、ミネラルウォーターでも…ええと、どこだったかな…」
「(ミネラルウォーターは普通、冷蔵庫にあるんじゃないかしら。まあいいけど)酔ってませんわ、提督」
「あ、いや、その…」
「気分が悪いんじゃありません。気分が…すごく、いいんです、とても……ずっとこうしていたいぐらい」
ゆっくりまばたき。
さあどうする、ヤン・ウェンリー?

「……大尉、あ、いや、少佐。その……寝室に、行こうか」

ヨシキタ━━━━━━━━(ry





お姫様だっこでもされたらどうしよう、やっぱり軍服じゃ絵にならない…と心配したが杞憂だった。
肩を抱いて寝室へ促され、ちゃんと自分で歩いていった。
扉を閉めて鍵をかけて。さあ、これでもう二人っきり。
嬉しくなって、提督に抱きついてしまった。恥ずかしいが、提督に任せていたら、
ここで戦史の講義が再開しかねない。そこがまたいいところなんだけど。
提督は一瞬戸惑ったようにおそるおそる、それでも力強く抱きしめ返してくれる。幸せ。コロンをつけてきてよかった。
顎を掴まれて、深いキス。ちょっと歯が当たって痛かったけど、そんなことは気にしない。
舌を絡めて唾液をわけあって、息が止まりそうだ。唾液が甘いものだとは知らなかった。ブランデーのせいだろうか。
キスしただけ、しかもまだ寝室の扉の前に立っている。それなのにもう、わたしの身体は痺れていた。
やっと離れた提督の唇は濡れていた。男性だけど、妙な淫靡さにぞくっとする。
わたしの唇も濡れて、魅力的に見えているといいのだけれど…
密着していてわかったが、わたしのお腹のあたりに提督のものが硬くなって当たっている。
さっきまでは全然そんなふうに見えなかったのに、今では視線が少し凶悪になっているようにも思う。
驚いた。でも今日わたしは蹂躙されたいのだ。これを、わたしの中に。



ベッドに座らされてスカーフを外し、ジャケットの前を開けられた。
女らしい私服で、 婚 約 して初めての夜を演出できなかったのは残念だけど、別の考え方もある。
普段と変わらない服装なのになにか違う感じって、逆に燃えるかも…やだ、わたしったら。
そうよね、最初なんだし、これからいくらでもチャンスはある。
また抱きしめられてキスをして、陶然としていたら胸に手が触れてきた。強く揉まれる。
「んっ…ん…」
口の端に少しこぼれた唾液を軽いキスで吸い取って、提督がわたしのネクタイを外しにかかった。
なんだかえらく苦労している。毎日自分のを締めたり外したりしているはずなのに。
わたしは提督の手を止め、自分でネクタイを取り、シャツの第一ボタンを外した。
ゆっくりと、しかももたつかず。指先まで気を遣って、開かれた喉元ができるだけきれいに見えるように。
提督の喉が鳴るのが聞こえた。
「ふ、フレデリカ、その…」
まだ言うか。んもう。こうしてやる。
「っ……」
内股をざわりと撫で上げてやった。処女がここまでしてるんだから、覚悟をきめなさい。
提督の表情から、落ち着かなさが消えた。




わたしの頭をかき抱くようにして、またキス。さっきよりも深く、ねっとりしてやわらかい。
耳からうなじへ、提督の唇が下りていく。
「あはっっ……んぅ…」
シャツを脱がされ、鎖骨や肩に噛みつくように口づけながら下着越しに胸を弄られて声が出た。
胸、脇、背中と撫でまわすように確かめながら、下着を外された。
誰にも見せたことがない場所。初めての感触と、それを与えてくれるのがこの人だという二つの歓びに震えた。
ぼうっと霞んだような頭の片隅に、なかなかホックが外せないとかいうことになったら
やっぱり自分で外すべきかなんて悩んでたけどわりと器用なのね、まあ年の功かしら、三十過ぎだし、
なんて、とりとめのないことが浮かんでくる。
余計なこと考えたりして、やっぱりちょっと怖いのかもしれない。
でも大丈夫。提督と一緒なら、どんなことだって。





提督がわたしの胸を握っている。ちょっと痛いけど、快感のほうが大きい。痛みすら快感の一部みたいだ。
もう片方の胸が口に含まれた。あっ、やだぁ、なにこれ…
思わず提督の頭を抱きしめてしまう。余計刺激が強くなった。
「んはっ、ああん…」
ちゅっと乳首を強く吸われて提督が離れる。いや、もっと…なんて思っている自分に驚いた。
スラックスのボタンとファスナーが外されて、ゆるんだウェストから手が入ってきた。
「…っ……!」
提督の指がわたしの脚の付け根を撫で、全身に強烈な痺れのような感覚が走った。
鼻から、声にならない短い溜息が出た。提督がわたしを見つめている。
自分でどんな顔をしているのかわからない。
ざわざわと這っていた指が、下着越しに中心を探って、あっと思う間もなく下着を割って滑り込んできた。
「あぁん、やっ…」
「びしょぬれだ、フレデリカ」
やだ、なんてこと言うんだろう。恥ずかしい。言われてまた熱さが増したような気がする。
提督が指を抜いて、わたしを見つめながら濡れた指をぱくりと口に入れた。
うそ。全身の火照りが温度を上げる。
スラックスが下着ごと引き抜かれ、全身が晒された。
自分から望んだくせに、恥ずかしくて胸を抱え、提督に背中を向けて脚をぴっちり閉じてしまった。
でもお尻は提督からまる見え。頭隠してなんとやらのダチョウを連想して情けなくなる。
理論と実践の差はこんなところでもあるのか。もっと大胆にできるはずだったのに。しっかりなさい、フレデリカ!
…わたしの内心の葛藤などにかかわらず、提督は大きな手で背中から腰を愛撫し、ときどきキスしてくれた。
脇腹や腰骨の裏側あたりはダメ。思わず声が漏れてしまう。
撫でられてキスされて気が遠くなっているうち、気づけば両脚を割られて間に提督が入っていた。
内股に口づけられて、思わず浮かせてしまった腰をしっかり捉えられ、中心に…あっ…
「ん、んあああああああぁっ、いやあっ!」
(以下描写不能)




提督が腕で顎を拭いながらわたしを見ている。
全身の力が抜け、呼吸するだけで精一杯のわたしはぼんやり見つめ返すことしかできない。
痺れたその場所に、また指が入ってきた。くちゅくちゅと音をさせながら、中をくまなく探っている。
一度昇りつめたと思った感覚がまたざわりと蠢き始めた。
胸を掴まれ、大きく揉みながら頂上を指でいたぶられて、上下2つの刺激に頭の芯がどろどろに溶けそうだ。
こんなに我を忘れたわたしを、提督には見せたくない。どうか、見ないで。でも、見て。止めないで。

「ああっ…はぁ…んん…」
提督が少しずつ入ってくる。痛かったり血が出たりはしなかった。
奥の方で少し違和感があったが、痛いというほどでもない。快感らしいものもまだ見あたらない。
肉体的なことよりも、提督がわたしを貫いている事実それ自体への歓びで、どうにかなってしまいそうだった。
「動いて大丈夫かい、フレデリカ」
わたしを気遣って、意図的に名前を呼んでくれているのがわかった。しっかりうなずく。
しっかりといっても、こう力が抜けて神経が異常事態になってしまっては、どこまでできたものか自分では疑わしい。
提督は目だけで「了解」を告げ(長いこと副官をやっているので、こういうのはすぐわかる)、
ゆっくりと動き出した。
突き上げられる息苦しさに戸惑ったが、意識して力を抜き、身を任せてみた。
奥に当たるたびに、身体の中心をつつかれているような鈍い違和感がある。
だんだん慣れてくると、提督自身が徐々に体積を増しているようなのがわかった。嬉しい。
少しずつ、身体の奥で熾火が再び燃えだしたような感覚が起こってきた。

「あ、ふぅっ…んっ…」
ああ、何なの。快感というほどかたちがはっきりしたものではないけれど、なんだか…
もっと、もっと欲しい。それが何か知りたい。わたしは思わず提督にぐっと腰を押しつけてしまった。
「んんっ…あはぁっ…」
そう。そうして、もっと、奥まで……ああっ…
「愛してる、フレデリカ」
「ああん…あっ、あああああああっ」
提督の腰とわたしのそれがひときわ強く当った部分が、本当にひとつに溶け合ってしまったような気がした。






本当のところ、わたしはキスだけは初めてではなかった。
士官学校にいた頃、パーティで出会った2学年上の卒業生。黒い髪で、なんだか一見優しそうな感じで、
要するに雰囲気に流されたようなものだったが、キスをして、胸に手が伸びてきたときにふと我に返って逃げたのだ。
同期の女友達は「けっこういい男だったのに勿体ない」と口を揃え、恋人自慢大会のような場で
かなり露骨な話題になったときにも「あんたも早く恋人作りなさいよ」などと揶揄されて赤面したりしていたが、
それもこれも、全てこの夜のためにあったのだと思う。
「捧げる」などという意識があったわけではないが、わたしの「初めて」は宇宙で一番素敵な人だと確信できる。
わたしを優しく抱きしめ、髪を撫でてくれている宇宙で一番素敵なこの人と、これからずっと一緒にいるのだ。

何年も、何十年も。 ずっと、一緒に。


◇◇◇ fin ◇◇◇

                                       

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