0と1の境目暁 紅龍作 ドラゴンドライブ二次創作
 繁華街の路地裏にある駄菓子屋「竜宮城」。そこは、昼間は小学生や幼稚園児が集う憩いの場であり、優しい店主のおばあちゃんが切り盛りしている至って普通の駄菓子屋さんなのである。
 だがそれは夕暮れとともにお店を閉める事で、様子が一変する。お店が閉まる頃合にお店の裏路地に中学生ぐらいの子供達が通って行くと、それから暫く姿を消すのであった。

「なぁ、龍司。お前竜が好きだよな?なぁ?!」
 そう切り出してきたのは幼馴染の修である。
「あぁ、お前なら俺の趣味とか趣向とか分かるだろ?」
 そう、俺は無類の竜好きであり、ケータイの待ち受けFlashも竜の物で、常にドラゴンな物を身に付けている状態である。
「だったらさっ!!今日の17時に地図情報のURL書いたメール送るからそこまで来てくれる?」
 念を押されるようにホームルームが終わった後に立ち去る修。
「ま、今日も暇だし。付き合ってやるか…。」
 俺は他の友人からは「すぐに冷める」とか「飽きっぽい」とか言われる。だが、飽きっぽいのではなく、そこにあるリアルな感覚が全くと言って感じられない。俺はもっとリアルなゲームや遊びをしてみたいのだ。
 一人で自宅までの道程を歩いていると、ケータイのメール着信音が鳴り響いた。無論、送信者は修である。『ここまで来てっ!! http://.....』と、地図情報のURLが貼りつけてあり、URLをクリックすると歩行支援ナビソフトが立ち上がり、「只今より目的地まで御案内します。」の表示の後にルートが表示された。街に出ていたので、それ程目的地までは離れていなかった。数百メートル先と言ったところだろうか。それ程遠くはなかった。
「龍司!よく来たなぁ!ここがゲームの会場だよ!」
「はぁ?ここがゲームの会場?」
 俺がそう思うのも無理は無い。何故ならそこは、多少錆付いたシャッターが降りている竜宮城という駄菓子屋なのだから。
「そう!じゃぁ行くよ!」
 そう言って修は俺の手を取ると店の奥へと連れて行く。
「えっと、こうだっけな」
 修は店奥のドアのドアホンを押す。しかし、呼び鈴は鳴らず、その代わりに機械音がすると『ようこそ、入場認証システムへ。』の表示がされている液晶画面が出て来たのであった。
『お持ちの発行した非接触ICカードをかざして下さい。』
 液晶画面の表示が変わる。どうやら液晶に直接かざすようである。修は慣れた手付きで画面に見慣れないICカードをかざし、認証を終えた。
「えぇっと、龍司のゲストカードを出しておかないとな。」
 液晶を操作して行くと、
『ゲストキーの発行を行います。ゲストの方の手の平を液晶画面に乗せて下さい。』
 なるほど、指紋認証なのか。そっと液晶に手を乗せる。
『只今システムに登録中です…。暫くお待ち下さい…。』
 暫くすると、スキャンが終わり、液晶機械部から一枚のカードが出て来た。
「そのカード無くすなよ〜?再発行するのに時間かかるから〜。じゃぁ行くか!」
 そうして修は店奥のドアを開ける。
「ちょ、お前!それはまずいんじゃ…?…あれ…?」
 古めかしいドアの先にあったのは先進的な構造をしたエレベーターらしき建物であった。
「何ぼーっと突っ立てるんだよ〜、いくよ!」
 あっけにとられながらもエレベーターに乗り込むとドアが閉じられ、地下へとエレベーターは突き進んでいくのであった。

 段々とスピードが落ちていくのを感じると、ドアは開かれた。
「ここは・・・。・・・すげぇ!!」
 俺は興奮した。なぜなら、そこには近未来的な構造をした地下設備、ゲーム中のライブ映像なのだろうか、大型スクリーンに映し出された巨大なドラゴンの姿が目に入ったのだから。
 それだけではない。会場にいるプレイヤーらしき人物がいわば「人外」なのだ。人外というのにふさわしく、そのプレイヤーたちの姿は皆ドラゴンと人を割った姿・・・、いわば竜人の姿をしているのだ。
「あぁ、これは『アバター』っていうシステムでね。みんなこんな姿でコミュニケーションを取ってるんだよ。龍司も自分のドラゴンが取得できたら施設の中で『アバター』になれるよ。」
「そ、そうなのか・・・っ!」
 俺はワクワクが止まらなかった。今までこんなゲームがあっただろうか。いや、俺の今まで体験したゲームでこんなにワクワクやどきどきするようなゲームは存在していなかった。
「あぁ、そうだった。ビギナーエントリーしなくちゃね。龍司、さっきのICカードある?」
「あるけど・・・。ICカードでなにするんだ?」
 そうやって修はICカードを扇子のように振りかざすと、ICカードが瞬く間に薄く透明なプラスティック状のデバイスに変わった。デバイスの表示部には様々な情報が表示されている。
「このICカードはD-Terminalっていって、施設内なら何でもできる総合デバイスなんだよ。」
 そうして龍司も修と同じくICカードを振りかざす。デバイスの表示部には「ようこそ!Dragon Driveへ!」との表示と「ビギナーエントリー受付中!」の表示があった。
「ドラゴン・・・ドライブ・・・?」
「あぁ、竜を操って戦うっていうゲームなのさ!さぁ、そのエントリーボタンを押して!」
 修に言われるがままにエントリーボタンを押す。すると、「エントリーの受付が完了しました。次のビギナーエントリーエキシビションは17:30〜です。」との表示に切り替わった。
「おぉ、間に合ったみたいだね、じゃぁ向こうの大型スクリーンの場所まで行こう!」

 そうして徐々に近づいていくと何やら実況をしているのだろうか、女性らしき声が聞こえる。
「さぁさぁ!まもなくビギナーエントリーエキシビションがはっじまるよ〜!!エントリーした子はステージまであがってきてね〜!!」
 すごく威勢のいい声がステージ上にあふれていた。
「あぁ、この人はLさんっていって、ここの対戦ステージの実況とか、ゲームの監督責任者なんだよ〜。」
「Lさんかぁ・・・。なるほど・・・。」
「おやおや???そこのアバターになってない二人組!もしかしてビギナーの子かな?かなかな?!」
 突然、Lさんが俺たちに話しかけてくる。
「あ、いや僕はすでにエントリー済みで、友人をエントリーさせにきましたっ!」
「ほうほう〜!じゃぁその子は参加しましょうねっ!さぁさぁ!ステージ際のいすに座って!」
 Lさんに促されるまま、右側の椅子に座る。
「じゃぁ!ビギナーエントリーエキシビション、はっじまるよ〜!!」
「ビギナー諸君!ようこそ!ドラゴンドライブへ!このゲームは、みんなでドラゴンを操って戦うゲームだよ!今から、みんなに見てほしい映像と、いくつかの質問が椅子から流れるから、よーく見てねっ!じゃ、はじまりはじまり〜!!」
 そうして椅子が若干倒されると、リラックスできるように座る位置に合わせて微調整が行われる。同時に顔の全面にプラスティックカバーがかぶせられ、耳にはヘッドフォンが装着される。ステージが暗転し、明るく照らされているのは4人の座っている椅子と、Lさんだ。
「・・・な、何が起きるんだ・・・?」
 そんな一抹の不安を覚えながらも、プラスティックカバーの部分に映像が表示される。映像には、様々なシチュエーションで楽しめる戦闘シーンや、出会った仲間たちとコミュニケーションを取るアバターの使用方法など、ビギナーがわかりにくい箇所がわかりやすく説明されていった。
『ここで、あなたに質問です。』
 映像が終わると、ヘッドフォンから自動音声の声が聞こえてくる。
『あなたは・・・。』
「はい・・・、いいえ・・・、はい・・・、はい・・・。」
『これで質問は終わりです!それではエキシビションをお楽しみください。』
「さぁさぁさぁ!!いよいよはじまるよぉ!!今日の戦闘クリア条件はこれだ!」
 大型スクリーンと、4人の椅子のスクリーンに映し出されたクリア条件は「敵ドラゴンを力を合わせて倒せ!」という内容だった。
「それじゃぁいくよぉ!!D-Drive!!」
「う・・・、うわぁ・・・っ!」
 突然意識が遠のくような感覚に襲われ、現実世界の自分は瞳を閉じたのであった。

「ん・・・?ここは・・・?」
 瞳を開くと、真っ暗な空間で何も見えない。すると、徐々に自分の手前側から場面が急展開する。
 建物の骨組みだろうか、ワイヤーフレームが幾本も表示が行われ、その上にテクスチャが塗られていくように表示され、あっという間にそこは普段住み慣れた繁華街のような街へと形を変えていったのであった。
「す、すっげぇ・・・。俺、今どうなってるんだ・・・?」
 改めて自分の周りを確認する。普段着ている服はもちろん、D-Terminalも持っている状態。そこは現実の自分と同じ環境。だが、一つだけ違うものがあった。それはD-Terminal上の表示。小さく表示されたその文字は読めそうで読めない。
『おーい!君!仲間たちがピンチだぞ〜???一人だけぼーっと突っ立ってていいのか〜?』
 D-Terminal上からLさんの声が聞こえる。そう、他の3名は既に戦闘を開始していたのであった。
『いいかい?君に選ばれたドラゴンは「サマナー系」って言って、君のD-Terminalに表示されている文字を詠唱しないとドラゴンが出てこないんだよ〜!』

『詠唱するヒントはさっきの質問で答えた言葉だよ!じゃぁ頑張って仲間たちを助けるんだ!』
 そして通信が終わると、先ほどの読めない文字を見る・・・。
「これが・・・。俺のドラゴンの召喚する文字・・・?いや、それよりも仲間たちが大変だっ!」
 そうしてD-Terminal上に表示されているチームのいる場所まで走っていったのであった。

 ガォォォ!!
 ガシャァンッ!!
 グルゥゥゥッ!

 近づいていくたびに仲間たちの戦闘音が聞こえてくる。
 目の前に現れたのは4体のドラゴン。そのうち3体の頭や首には人らしい姿が見える。しかし、他の3体の味方ドラゴンはほとんどライフポイントが残されていない状態であった。
「この・・・っ!俺はどうしたら・・・!えいっ!」
 敵ドラゴンの身体に戦闘で壊された建物のコンクリート片を思いっきり投げる。そのコンクリート片の向かう先・・・。それは敵ドラゴンの瞳。
 ドラゴンは飛翔物に気がついたのだろうかとっさに鋭い爪を持ち合わせた手で瞳を覆い隠す。
 グルゥゥゥ・・・ガゥゥゥウウウ!!
 ・・・どうやら俺の存在に気がついたようだ。
 敵ドラゴンが俺に向かって高温のブレスを吐く。
「うわぁっ!」俺は逃げたが、ブレスの着地した反動で身体が吹っ飛ばされる。そのときに負った傷や足首をひねってしまい、動けなくなってしまう。
「やっべ・・・。俺死ぬかな・・・。」
『・・・汝・・・。力が欲しいか・・・?・・・』
 身体の中から何かが聞こえてくる。重苦しい、だがなぜか懐かしい声。
「・・・欲しい・・・。仲間を救える力が欲しい・・・。」
 俺は心からそう願った。
『・・・ならば汝、我を解き放て・・・。』
「・・・あぁ・・・、そうだな・・・。」
 声に導かれるように詠唱していく・・・。

『「我を解き放て!出でよ!炎竜!グレン!」』

「うぉぉぉ!!!」
 俺は身体から沸き上がる力の赴くままに声を発した。そうして俺の身体は炎の竜巻に包まれ、その中で変化していく。 着ていた衣服類はすべて炎に焼かれ、裸の自分がいる。その身体の脚部は逞しい筋肉が張っており、足には鋭い純白の爪が生えそろう。指や足の形状が大きく変化していき、前指4本、後指1本の形に変化していく。踵であった部分は伸びていき、獣状の足へと変化していく。
 皮膚は段々と硬質化していき、大きい鱗状に変化していくと、盛り上がりを見せて割れていく。脚部の変化に合わせ、指の先端は燃えさかる橙の色に、足の甲から太ももにかけては黒い鱗に覆われる。脚部の変化が終わると、尻から円錐状の長細いものが現れる。そう、尻尾である。太さとしなやかさを持ち合わせたそれは、先端部に硬質なクリスタルが埋め込まれている。
 変化は腹部に到達し、どっしりとしながらも筋肉質な身体へと変化していく。胸部には鎧とでも言えるだろう、張り詰めた筋肉と堅い鱗で覆われている。その胸部から腹部までの鱗は橙色の蛇腹状の鱗が形成され、背部は黒く、微細な鱗に覆われている。胸部の変化と共に両腕も変化が起こる。ぐっと力を入れると、筋肉が張り詰め、どんどん発達していく。
 手の指の本数が変わり、4本指になり指の先端部には鋭い爪が形成されていく。その腕も上腕から前腕にかけての皮膚が硬質な黒い鱗に覆われる。身体の変化は最終段階に移行しようとしている。首が発達した胸部に合わせて太くなりつつも長さを変えて長く、しなやかになり胸部から、あご下までが橙色の蛇腹状の鱗に覆われる。首の背面は背中と同じく黒く輝く鱗に覆われている。
 頭も爬虫類状に扁平し、鼻からあごにかけての部位が前へ突き出すと、皮膚が変化していく。頭頂部からつきだしたマズルの先端部までは燃えさかるような紅色の鱗に、下あごの先端部は橙色の鱗に、そして全体的に黒い鱗に覆われる。そして耳は細長く、堅いものに変化し、頭頂部の両端からは一対の黒い角が姿を現す。背中からはぐっと力を入れると、一対の巨大な翼が姿を現す。それは空さえも覆い隠してしまいそうなほど巨大であった。
 身体を纏っていた炎の渦は徐々に身体に纏わり付き、身体を象徴するように橙で焼き書かれた炎を象徴した文様と共に、首の裏と足の部分に尻尾の先端と同様に硬質なクリスタルが埋め込まれていく。そうして姿が変わり、完了したものかと思われたその姿は炎の渦が一層勢いを増し、さらなる変化が起こる。それまでの変化が終わった姿は人の身長を少し大きくしたような形であったが、それは徐々に巨大化していく。まるで勢いを増した炎の渦を飲み込むような勢いであった。
 そして炎の渦を鋭い爪で切り裂くようにして現れた姿は、元の人の姿とは桁外れに異なるものであった。
「さ、サマナー系ドラゴン?!」
 そうつぶやいたのは観客席にいた修の姿であった。
「グルルルルゥゥゥゥ・・・。」
 龍司であったそのドラゴンは低いうなり声を上げ、敵ドラゴンを威嚇する。敵ドラゴンはうなり声に気がつき、臨戦態勢に入っている。
『汝、名を何という・・・?』
「俺は・・・龍司!日向龍司!」
『龍司・・・、我はグレンという名だ。そして汝を我のマスターとする。しかし、汝は我の身体には詳しくないだろう・・・。この戦闘は我が終わらせよう・・・っ!』
「グォォォォォォォォオオオンッ!!」
 グレンは大きく吠えると、敵に向かって上昇しながら距離を詰めていく。
「食らえっ!クロス・クラウッ!!」
 そうしてグレンは両腕を交差させて爪を目一杯引き出すと、敵ドラゴンに向けて両手を振りかざす。敵ドラゴンの急所にX状の深い爪痕が残され、敵ドラゴンは光の粒となって消えていった。

「戦闘終了〜!!ビギナーチームの勝利!!」
 Lさんの声が響く。チームメイトも俺の近くに寄ってくる。
「サマナー系ドラゴンかぁ・・・。すごいなぁ・・・。」
「グルルゥ・・・。ガゥゥ・・・???」
 俺はチームメイトに話そうと思ったが、竜のうなり声しかでなかった。
「あぁ、サマナー系ドラゴンは、身体を竜と共有してるから戦闘中はしゃべれないんだ。一旦解除しないと。竜と話して解除しよう。」
「グレン・・・、凄かったよ・・・。俺がお前になってるなんて・・・。」
『そうか・・・。それは光栄なことだ。だが、次は龍司が我を操るんだぞ?わかったな・・・?』
「おう・・・!」
 そうして、俺は元の姿に戻る。変化の時のように時間はかからず、先ほど倒したドラゴンのように光が包み込み、俺の身体が元に戻った。
「これで・・・どうかな・・・。」
 身体は元通りに戻っている。衣服も元通りだ。
「じゃぁログアウトしよう。元の世界に戻ろうか!」
 このゲーム、いや俺の新しい身体と世界に期待しながらログアウトしていった。
「いやぁ!凄い戦闘だった!!まさか龍司がサマナー系ドラゴンになっちゃうなんてね!!」
 修は既にアバターモードで待ちかねていた。修の姿は、いわば東洋龍と人を合わせた感じだろうか、緑色の鱗に、腹部は蛇腹のクリーム色の鱗。細長いマズルに長い髭、鋭い眼光の顔立ちに、幾本もの本数の角、そして空中に浮かぶ純白の宝玉。衣服はアバターモード専用の衣服がロードされており、いかにも仙人のような服装をしている。
「修も凄いな。東洋龍人か・・・?」
「うん、僕は東洋龍のサマナー系ドラゴンなんだ。じゃあ龍司もアバターモードになろうよ!」
「どうやって操作するんだ・・・?」
 D-Terminalを見つめながら操作するが項目が見つからず、修に操作してもらう。
「それじゃあ、アバターモードになるよ!」
 D-Terminalの設定モードでOKボタンを押すと、俺の身体は先ほどのグレンの姿でありながらも、人のサイズの状態であった。
「おぉ・・・。これが・・・。」
 自分の身体をまじまじと見つめる。まさか自分がドラゴンの姿になっているとは・・・。
「んで・・・。この衣装がいいかなっ!」
 そうして衣装もロードされると、自分の身体に衣服がロードされる。まるで西洋騎士のような、頑丈な黒皮でできたローブ。それと同系色のスカート。黒皮には赤い縁取りがされており、龍司も気に入ったようであった。
 これから、龍司の新しい生活が始まろうとしていた。あこがれていた竜の姿で・・・。


 完
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