遊び仲間への挑戦 暁 紅龍作 ポケットモンスター二次創作
 近年の技術の進歩は目まぐるしい。中でもコンピューターや携帯機器の技術は突出していた。
「うん、これで…どうかな…?…良かったぁ…。」
 一人の少年が二つ折りタイプの携帯ゲーム機で遊びながら笑顔を見せていた。彼はシュン、ある界隈では名の知れたゲームプレイヤーである。彼がプレイしているゲーム機の画面…。画面には様々な個性溢れるモンスターが描かれている。携帯ゲーム機黎明期に登場したポケモンだ。今も多くの年代層に支持されているゲームには違いないだろう。
 そしてプレイしているゲーム画面の中央にはシュンの一番のお気に入りのポケモンが映し出されている……。体色は鮮やかな光沢のあるオレンジ色、体全体が重量感ある逞しい体、それで居て野生味溢れる蒼く鋭い双眸…。背には大きな一対の内側が深緑色をしている翼に、細長くしなやかに伸びその先端には生命力を誇示するかのように激しく燃え盛る炎が印象的な尻尾…。そう、シュンが一番好きなのはリザードンと言う一見、ドラゴンに似たキャラクターだ。
「コンディションも良いみたいだし……、やっぱり良いな…。」
 そうしてセンサー画面に映るリザードンの頭を指の腹で優しく撫でるとリザードンも表情が緩くなり嬉しがっているようだ。その時、画面の右下にメッセージを受け取った旨のポップアップが表示された。
「何々……?……あぁ、何だ、ゴウか。」
 メッセージを表示するとシュンと幼なじみであるゴウからバトルの誘いが来ていた。
「望む所だよ……っと……。良し…、送信…。」
 軽くメッセージを打って了解した旨をゴウに送った。
「楽しみだな…。久し振りにバトルするからなぁ…。」
 明日に備えてゲーム機を充電してシュンはベッドに横になり眠ったのであった。そして迎えた翌日。
「遅いぞっ!シュン」
 待ち合わせていた時間にだいぶ遅れてシュンが来た。
「ゴメンゴメン……、ちょいと野暮用があってな…。」
 軽く駆け足でシュンはゴウの前まで来た。
「全く…、いつも君は遅れるんだから…。バトルできっちり返させてもらうからね!」
 ゴウはニヤリと笑顔を見せバトルに自信を見せる。
「まあ、いいよ。こっちも負ける気しないからな。」
 シュンもゴウに負けず劣らず笑みを浮かべ、両者の闘志にいよいよ火が灯された。

「良し……、リザードン…今日も宜しくな。頑張ってゴウなんか蹴散らしちゃおう。」
 画面に映し出されているリザードンも更に気迫が増して戦闘体制に入っている。
「準備はいいね……っ!それじゃあ、行くよ!」
 画面に表示されたアイコンをタッチしてゴウとの通信を始める。
『Now Loading…』画面には様々な文字の羅列が映し出される。
『Visionary impersonate&load intelligence acquire system… Vilias(ヴィリアス)Starting…。』
 接続完了と共に開始のメッセージが表示されると二人のいる空間が半球形のホログラムに包まれる…。
『さぁ!!始まりましたっ!!!Vilias(ヴィリアス)ネットコロッセウムっ!!久々の登場は…、プレイヤー・シュンだぁ…っ!!!』
 ホログラムの中は広大な闘技場で、レフリーの声と、ネット上でバトルを観戦しているプレイヤーの大声援が響き渡る中、両者は向かいあっている。
『そして対するは…、プレイヤー・ゴウっ!!』
 ゴウの名前がコールされると、更に会場は盛り上がりを見せる。
『Vilias(ヴィリアス)データを具現化完了…。必要な再具現化データを選択してください…。』
 Vilias(ヴィリアス)というこのホログラムシステムは、幻想情報具現装備システムといって、使う人間に仮想現実の世界を与える事ともう一つの機能がある…。お互いバトルに使うポケモンを選び、準備はすべて済んだ。
『…さぁ、お互い準備は整っているかっ?…それでは、バトル…スタートっ!!』
 スタートの合図と共に、両者の頭上には大きな燃え盛る炎の輪が現れ、地面を軽く蹴ると、空中に体は浮遊し炎の輪が体を通り抜けていこうとする。
   すると、互いに輪を通った後の体に変化が起きていた。シュンの真っ赤な髪の毛はまるで消えていくかのように無くなり、輪を通った頭部には一対のオレンジ色の角、角と同じ色の皮膚、鼻から下顎までがグンと前に伸びた顔になり、首は長く太く伸びると腕は若干縮まって小さくなり指の数も三本に数をへらしていくと共に鋭い円錐形の爪が先端に生えそろう。
 炎の輪は更に下半身を通り抜けていこうとすると、腹部は大きく丸みと重量感を帯びていき、足はその重量感ある体を低い姿勢で支えるかのように短いが、逞しい脚部になり、手と同様に足の指も三本に数を減らし、先端には鋭利に尖り、大地をしっかり踏みしめるための爪が生える。足の裏にはクッション状の卵色の肉球のような部位が一つづつ出来ると、背からは大きな翼、腹部から尻尾の先端までを卵色の皮膚が覆い、腰の辺りの背面からは長く太い尻尾が現れる。そして尻尾の先端部分が炎の輪を通り抜けた時、シュンは閉じていた瞳を開き、爛々と蒼く光輝く双眸を見せ付け、同時に尻尾からは激しい烈火の如く炎が灯る。
『シュンが選んだのはぁっ!!、相棒の名に相応しいリザードンだっ!!』
 そう、今のシュンの姿はシュンが育てていたリザードンの姿になっているのだ。

 一方、ゴウの体も、頭部の髪の毛は姿を消すと、変わりに柔らかい薄黄色の鳥毛が皮膚を覆い、その一方で顔面は燃え盛るように赤い皮膚になり、眉間からはブイの字のように角が姿を見せ、鼻から下顎までが鋭く尖りながら前方へ突き出していくとそれは嘴になっていく。大きく開かれた瞳は、白目は金色に黒目は蒼く、黒い縦割れの瞳孔が出来ると、睨み付けるように鋭くなる。
 後頭部から薄黄色の鳥毛がまるで翼のように大きく広がり、背面の途中までは同様の鳥毛、それを引き継ぐかのように猛火の如く赤く、胸にはワンポイントで黄色い鳥毛が覆っていく。それは両腕にも起こり、肩から手首の前部までは赤い鳥毛に、それから指先までが薄ネズミ色の硬質な鳥様の鱗質の皮膚にに変わり、指の数も三本に変わる。
 下半身に炎の輪が通り抜けると、上半身同様、真っ赤な鳥毛が皮膚を覆い隠し、膝から足首までを胸部のような鮮やかな黄色の鳥毛がグラデーションしていくように生えると、足先は鳥のように細く堅い鱗状の皮膚に覆われた指の長い足になり、先端には鋭利な爪が備わっている。全身が鍛え上げられた格闘家のような、いやそれ以上の身のこなしが出来る体つきのそれはまさしく人の姿ではない。
『さあ、ゴウも同じくほのおタイプのポケモン、バシャーモを選んだぞっ!!』
 ゴウもシュン同様、プレイ当初から育て、慣れ親しんだパートナーであるバシャーモの姿になったのであった。
 Vilias(ヴィリアス)のもう一つの機能と言うのが、今のシュン達に起きている状態で、決められたデータを自分の体に一時的に定着してあたかも自分の体の一部、または全身であるかのように使うことが出来るのだ。
「グルル…、ゴウもほのおタイプ…、バシャーモか…。ならばっ…。」
 リザードンのような低い声で話すシュンは背にある大きな翼をはためかすと、一気に闘技場の天井近くまで高く飛び出した。
「シュン…、俺がかくとうタイプだからさては……。良しっ!先手必勝っ!!」
 そう言い、バシャーモは体に力を込めると手首から激しく炎を出し始める。そして一度姿勢を低く構えると一気に高くジャンプをする。
「おりゃぁっ!!食らえっ!きあいパンチだぁっ!!」
 空中高く飛んでいるリザードン目掛けて激しく燃え盛る炎に包まれた拳がリザードンに向かう。
「おっとっ!!そう来ると思ったさ!!行くぜっ!つばさでうつ!!」
 そうしてバシャーモの技をかわしたリザードンはその大きく広げた翼をバシャーモのわき腹に繰り出す。
「ぐはっ!!」
 リザードンの攻撃はひこうタイプ…、かくとうタイプも含むバシャーモには効果抜群でそのまま地面に落下していく。リザードンもバランスを崩してしまい、バシャーモと同様に地面に叩きつけられる。

「ぐっ…、なんのこれしき…!!」
 お互いに落下した際に起こった土煙の中立ち上がり、更に今度は地上戦へともつれ込む。
「はぁぁっ!!にどげりっ!」
 バシャーモも負けじと素早い身のこなしで足技であるにどげりを繰り出す。攻撃はリザードンの腹部と胸部に当たり、リザードンは苦痛の表情を浮かべ、背を地面に摺りながら吹っ飛ぶ。
「ご、ゴウもなかなかやるじゃないか…。」
 リザードンは起き上がりながらバシャーモに向けて言い放つ。
「それは、おまえもな…。やられてばかりじゃ…、つまらないからなっ!」
 バシャーモもリザードンの先程の攻撃が効いているのか、息を切らせながらリザードンを睨み付けながら話す。
「次の攻撃で終わりにしてやるぜっ!!」
 バシャーモは全身に力を込め、一撃に全てを賭けようと集中し始める。
「それは俺の台詞だっ!!一撃で仕留めてやるっ!」
 リザードンも負けじとグッと体を構えて力をこめると、尻尾の炎もより激しく大きく燃え盛る。
「「これで終わりだぁ…っ!!!!!!」」
 両者が一斉に技を繰り出す。
「はぁぁっ!!ブレイズキックっ!!!」
 バシャーモはリザードン目掛けて燃え盛る足を繰り出す激しい足技を
「おりゃぁぁ!!!とどめだっ!ブラストバーンっ!!」
 対するリザードンは爆発の如く激しく燃え盛る炎で何もかもを焼き尽くす炎技を繰り出す。互いがすれ違い様に相手の急所目掛け技を繰り出すと、両者はしばらくそのまま立ち尽くす。
 しかしその沈黙も長くは続かない。
「……ぐあぁ……。」
 力無い声を上げて倒れ込んだのはバシャーモであった。
「うきゅぅ……。」
 バシャーモはその場で俯せに、目を回し嘴から舌を覗かして倒れ込み、動けなくなった。
「グゥ…グゥ…、危なかった…。」
 間髪入れずにリザードンも膝と片手を地面につけて苦しい表情を浮かべる。
『バトル終了っ!!勝者はプレイヤー・シュン!!惜しくも敗れてしまったが、素晴らしい闘いを見せてくれたプレイヤー・ゴウにも大きな拍手をっ!!』
 レフリーのジャッジと共に激しく闘った二人に拍手と大歓声が送られると、二人の体となっていたリザードンとバシャーモのデータは二人の体から元のゲーム機に戻り、二人とも元の人の体に戻った。
『Vilias Finissing…Seeyou next time…』
 そして二人の居た空間を包んでいたホログラムもViliasの終了と共に消え、何時もの街並みの風景に戻ったのであった。
「お〜いっ、何時まで伸びてるんだ…?もうViliasも自動終了したぞ…?」
 そうして未だに伸びているゴウをシュンは覗き込む。
「悔しいぃ〜っ!!」
 まるで覗き込まれるのを待っていたかのようにゴウはパチッと目を開き、足を寝転がりながらジタバタさせて悔しがる。
「こ…、今度こそっ!絶対倒してやるからなっ!!絶対だぞっ!!!」
 子供のようにゴウは言い放つとゆったりと立ち上がり、シュンの前から悔しそうに自宅へと帰っていった。
「ありがとな、リザードン…。」
 そうしてシュンはそれを後目にゲーム機を開くと画面上に疲れて気持ちよさそうに横になって寝ているリザードンの頭をそっと撫でて、今日の戦闘の頑張りを影ながら誉めて、家路についたのであった。


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