ウィーン…
謎の実験室。今まで入ったことなんてなかった。だって家に自動扉があったことも知らなかったし!
「この実験が終わるまでお前に入らせる気はなかった」
そう言う父がいつもより怖い。
「さて、これ飲め」
手渡されたのは黄色い不気味な液体が入った試験管。
「安心しろ。毒とかは言ってないから飲んでも死なん」
見た感じどろっとしていてこれを飲むのは…ちょっとアレだ。
なんか人類初めてタコを食べた(もちろん生で)人と同じ気持ちなんだろうな…とか思った。
「早く飲めよ。飲んでくれないと俺が自己満足できないだろ?」
いじめだ。虐待だ。これはひどい。しかしおそらく拒否れば強制的に飲まされる。
それなら自分の意志で飲んだ方がまだましだ。
「味はどんなのなんだ?」
「知らん。というか聞くな」
さっき飲んだって言っただろうがっ!もしかしてアレか?思い出したくないくらいマズイのか?
だとするとものすごく嫌な気分だ。しかしこれ以上父を待たせたら…強制摂取!覚悟を決めて…
ゴクリ。
味はなかった。においもなかった。むしろ飲んだ感じもしなかった。空気を飲んだ…みたいな
「安心しろ。途中で気を失うから。まぁ、俺見るのはいやだから散歩してくる」
「えっ…それ酷くね!?」
止めようとした矢先、体が動かなくなった。
「う"っ!?」
「じゃあな」
ぱたん、とドアが閉まった。それでも親かっ!
そして…変化が始まった―――
体が変わっていくのが分かる…汗がたくさん吹き出す…耳が伸びていく…気持ち悪い…吐きそうだ…
手も短くなっていく…
見るのが嫌になって目を閉じた。平衡感覚がどこかえへ吹っ飛びうつ伏せになる…手足をばたつかせる…けどあがこうともがこうと進行は進んでいく…
「き?もち?…わる…い?…」
まだなんとか人の声が出せるようだ…そのうち声が出なくなると思うと嫌な感じがする
不安だ…不思議だ…助けてほしい…目を開けた…顔がまさに変わっていくところだった
肌色だった顔が濃くなっていく…黄色に近づいていく
床がきれいに磨かれていたのをこれほど後悔したことはないだろう…
体が小さくなっていく…1m70cm位はあった身長は1mもない
顔も小さくなった…これならベットも潜れるかな…と楽になろうと他のことを考える
そんなときに体に激痛が走った――
「ぐはぁぁ!!」
意識が吹っ飛びそうになった
体の関節が変わっていく…今…薬飲んでから何分立っただろう…時間の感覚もまひしている感じだ
足が浮いた…?あぁ…うつ伏せになっているからか…そんなことも考える余裕もなくなっていく―――
「ぐぴ"ゃぁ"あ"あ"あ"!!」
変な声がとびでた…自分の声ではないのは確か…もう声帯もやられたか…?
まだ…ヒトでいた…い……―――
プツン
まさにそんな(ような)音がして意識が消えた。
時計の秒針の音が体に響く…耳はもう正常に動くのか…?手は…
「大丈夫か?」
声をかけられた…意識はもうろうとしている…
「ここは…?」
「ベットの上だ。どこから見てもただのピカチュウだ。実験は成功だな」
「僕は…?」
「お前はライトだ。これからそう名乗れ。それと必要なものはバックの中に入れといた。それはそうと…抱いていいか?」
「断る!」
…目が覚めた。こんな変態おやじ(目が爛々としている)に抱かれるとか!
「…あれ…おかしいな…実験は成功のはず…なぜ人間の声が出せるんだ…」
はっとした。確かに人の声が出せる…?声帯はやられたはず…
「まだ変身が終わってないのかもな」
続くのか!?あの痛みが。
「まぁ、さすが俺の子供だ。しっかり生きてるな。じゃあそこ動くなよ?」
「えっちょっと何する気だよ。これ以上拷問を…」
「タイムマシンで過去に送る。それだけだ」
…もう父のテンポが速すぎてついていけない。
「転送する前にそのかばん持て!後30秒!」
「動くなって言ってかばん持てって言って…「つべこべ言うな!」
…どういうことだよ!こっちは頼まれているってのに。その対応はねえだろっ
「こっちは新しい体で動きにくいんだよ!!」
「そこらへん気合いだ!!」
「体育会系か!!」
「その突込みがあれば大丈夫だな。ちゃんと歴史変えろよ!残り10秒」
かばんが遠い………もうちょっと…よし!つかんだ!
「3…2…じゃあな、よい旅を!」
「えっ心の準備…がちょっと待――っ――うわあぁぁあぁぁぁぁあああぁぁぁぁあああ!!」