本能のまま、気ままにドラゴンソウル作 ポケットモンスター二次創作

 ここは自然豊かなホウエン地方。
その悲劇は突然襲ってきた。
ポケモンバトルの最前線(と言うよりバトルテーマパーク)「バトルフロンティア」からホウエン地方本土に戻る船が、
突然の嵐に遭遇し沈没してしまった。
殆どのポケモントレーナーは相棒とも親友とも言える自分のポケモンと共に船から脱出し、沈んでゆく船を見守り続けていた。
その沈み行く船から一匹のポケモンが、猛スピードで何処かへ飛んでいくのを多数のトレーナー達が目撃した。



 沈没事故が起こった場所からやや遠くに離れた「空の柱」と言う高い塔の遺跡がある島で、
オレンジとも黄色ともいえる色をして、見た目と比べると小さい翼が背中に生えており、
ずんぐりした体格に温厚な顔をしているドラゴンのようなポケモン「カイリュー」が、先程産んだ1つの卵を大事そうに持っていた。
大事そうに持つ卵を見てそのポケモンは悲しそうに呟いた。
「ご主人様、許してください。あの事故からご主人様を助ける方法がこれしかなかったんです。」
そのポケモンは暫く空を見ると、傍らに置いてあったバッグも持ってどこかへと飛んでいった。


 その沈没事故から3年が経った。







「ふあぁ・・・。今日は晴れたなぁ・・・。」
 そこはバトルフロンティアやサイユウシティなどホウエン地方の南海に位置する名も無い島々。
そこに一匹のポケモンが暮らしていた。
それは先程にも登場したカイリューであるが、こちらは先程のとは違うポケモンであるようだ。
「んん〜。お腹空いたからなんか食べよっと。」
 伸びをしながらそう言って近くの気を揺さぶり、落ちてきた木の実をムシャムシャ食べる。
ある程度食べ終わると寝転がりそのまま寝てしまった。
このポケモンはマイペースな毎日を過ごしているようだ。
「ZZZZ・・・・・・。」
 こんな毎日を送っているこのポケモンには親はいない。
そのため自分のやりたいと思った事をやっている。

 このポケモンはいつ頃この島にいるのかは分かってない。
何せこの島は、ホウエン地方ではあまり目立たない普通の無人島だ。
でもその島には大きいポケモン(グラードン等、極端に大きいポケモンを除く)でも問題なく暮らせる、あまり深くない洞窟があるため、
その島には昔の時代に絶滅してしまったポケモンや、そのポケモンと共に暮らしていた人がいたのかもしれない。


「ふぁ〜あ。」
 おっと、ここでさっきのカイリューが目を覚ましたようだ。
既に空も暗くなりつつある。
「もう夜だ・・・。そろそろ戻ろう。」
 大きく伸びをしつつ、目をこすって居住地となっている洞窟に入った。


「うーん・・・またお腹が大きくなっちゃったなぁ。最近食べ過ぎちゃったからなぁ。」
 寝転がりながら自分の腹をポンポンと叩くカイリューは、洞窟の入り口から見える星空を見ていた。
「・・・僕はどうしてこんな島にいるんだろう。」
 前々から抱いていた疑問を今日も考える。


 親が居てくれたって良いのに、なぜ居ないのかも不思議に思った。
・・・僕が産まれた時は手も足も無いし、翼も無かった。
この島に1匹でいるのは怖かったけど、しばらくしてからすっかり慣れた。
しばらくこの島で暮らしていたら急に体が長くなって、尻尾の先に綺麗に輝く球が2つあった。
この体がまたしばらくして変化した。
手と足が生えて小さい翼が生えてきて、肌の色が思いっきり変わっちゃった。
僕はこの姿がとても気に入っているけど・・・、どうしてなんだろう?
ポケモンってある程度戦うと進化するって、この島で休息を取っていた鳥ポケモン達から聞いたし、
戦ってなくとも、非常にゆっくりだけど進化するって事も聞いた。
なのに・・・何で僕は戦っても無いのに、そんなに長くない時間でこんなに進化したんだろう?
気になるよ。




 その後も色々と考えていたカイリューだが、気が付くと朝になっていた。
「うーん・・・。」
 今日は何だか気分がさえないし、何だか頭がチクチク痛い。
「うー・・・。」
 前にも頭がチクチク痛むことがあった。
確か・・・進化する前だっけ?
また何かに進化するのだろうか?
でもこれ以上、何に進化するのだろう?
・・・と思っていたが、進化する兆しは見られなかった。
「・・・何だったんだろう?」
 気分がさえない時、よく彼は誰も見つからないように色んな所を飛び回る。
今日も彼はホウエンのどこかを飛ぶ事にした。


 さてと、飛び回るのは飽きてきたし、今日は前々からやっていたダイビングをしようと思う。
最初にダイビングを始めた所から何かが頭に引っかかるような気がして、ずっとその場所を潜っているのだ。
ちなみにゲームでもカイリューがダイビングを覚える事が出来る。
嘘だと思う方は試してみてください。

「えーと、此処辺りだったはず・・・、あっ、あった!」
 彼は人目がつかない所に付けた目印を発見した。
そこがダイビングポイントだ。
「よーっし・・・!」
 彼は思いっきり息を吸うと、海の中へ潜っていった。

 海の中は地上には無い色々な物がある。
実際彼は、海の中に入ってから食べれそうな魚をたまに魚を捕るようになった。(ポケモンとは別種の魚)
海の底に沈んだ古代のお宝やそうでもない物を潜って集めるなど、趣味も増えた。
さて、今日は妙に頭に引っかかる原因を調べよう。
彼は海の底へどんどん潜っていく。


(あっ、何か沈んでる・・・何だろ?)
 しばらく潜り続けて彼は深海に沈む何かを見つけた。
深い所まで潜ったため、あたりは暗くてよく見えない。
彼は沈んでいる物を良く見るため、その沈んでいる物に近づいた。
錆び付いた所があったり、海藻が張り付いてたりするが・・・船だ。
外見はいかにも連絡船と言った感じだ。
彼は好奇心で船にもっと近づいた。
船の表面には「タイドリップ号」と書かれている。
(・・・これタイドリップ号って言うんだ。大きいなぁ。・・・あれ?何かある・・・。)
 船を見回していると、閉じかかっている窓に何かが引っ掛かっているのを見つけた。
彼はそれを手にとった。
(えーっと・・・・・・うっ、苦しくなってきた・・・。そろそろ上がんなくちゃ!)
 この船をもっと見てみたかったんだけど・・・息がこれ以上続かない・・・、でもまぁ良いや、また今度調べてみよう、
彼はそう思って見つけた物と共に海上に上がる。




 住み慣れた洞窟の中で見つけた物を自然乾燥で乾ききるの待ちながら、彼は木の実を食べていた。
やがて見つけた物が乾ききった所で彼はそれを手にとってまじまじと見た。
「ばとる・・・ふろんてぃあ・・・?何だろ?ばとる・・・。」
 彼は一瞬黙り込み、考えた。
海底に沈んだ船、彼が手に持っている物にはバトルフロンティアと書かれている。
「タイドリップ号・・・バトルフロンティア・・・!!」  この2つを同時に考えていたとき、彼の頭の中で引っかかっていた何かが外れた。
「そうだ!!僕は元は人間なんだ!」
 彼の頭の中から、人間だった時の記憶が堰を切って溢れ出る。


 それは3年前の事だった。
バトルフロンティアの帰りぎわに、手持ちのポケモンをボールから出して何気なく倉庫を歩いていた時、突然船が大きく揺れたのだ!
咄嗟の事に対処できず、彼のポケモン達は体をぶつけて怪我をしてしまったが、
トレーナーの彼はぶつけ所が悪くそのまま気絶してしまったのである。

 でも何故ポケモンになっているのだろう?
そんな疑問が頭の中に浮かぶ中、背後から声が聞こえた。
「良かった。やっと思い出してくれたんだね。」
「!?誰!」
 洞窟の入り口付近には一匹のポケモンが安心した顔で彼を見ていた。
「あっ・・・!君は・・・!」
「そして僕の事も覚えててくれたんだね。良かったぁ。」
 そのポケモンは彼には覚えがあった。
砂漠を進んでた時に偶然捕獲したポケモンで、彼と同じドラゴンのような外見をしている。
フライゴンだ。
「どうしてここが・・・!?」
「僕と一緒にいたサイキッカーがこの日の事を予知して教えてくれたんだよ。」
「サイキッカーって・・・フーディンの事!?」
「当たり。それで僕はあの沈没事故の時に、どうして君がポケモンになったのかを教えるために来たんだ。」
「僕がポケモンになった理由・・・。」
「じゃあ教えるね。途中でビックリしても構わないから。」



「3年前のあの時、僕達はボールから出てたけど、気絶してしまった君は頭をうったんだ。」
「しかも打ち所が悪かった上に、出血までしてたんだ。」
「とにかく出血量が酷かったよ。そこで君を救うために、全員の意見一致である事をしたんだよ。」
「ある事・・・?」
「そ。その助けるための手段が、君を僕達みたいにポケモンにする事だったんだ。」
「僕を・・・ポケモンに・・・。でも・・・どうやって?」
「それがね・・・さっき出てきたフーディンが凄い事をしたんだ。君と一緒にいたカイリューのお腹の中に入れて卵にする事を考えたんだ。」
「嘘!?」
「嘘じゃないよ。フーディンは船が沈んでいっても冷静さを損なわなずに、超能力で君の体に特殊な膜を張ったんだ。」
「膜?」
「うん。超能力で出来た膜なんだ。その膜は君の体がカイリューの胃の中で消化されないように出来た膜なんだ。」
「えっ?消化?・・・もしかして・・・。」
「・・・君をカイリューの口の中から入れる事をみんなが提案したんだ。」
「・・・・・・。」(驚いて声が出ない。)
「驚くのも無理ないよね。ははは・・・。それで膜に覆われた君の体は消化されず、カイリューの腸のところへスルスルとかなり早く来たんだ。」
「・・・それもその膜の効果なんだね?」
「うん。しかもその膜は君の記憶が消えてしまわないように働いたんだ。」
「それで君はカイリューのお腹の中で卵に包まれてミニリュウになった。」
「・・・膜は僕の体と記憶を守るために張られた・・・じゃあ何で僕は卵から出た時に人間の記憶が無かったんだろう。」
「それなんだけど・・・、僕達は君の願いを叶えてあげたかったんだ。記憶が無いのは自力で思い出して欲しかったからさ。」
「日頃からポケモンになれたらなってみたいな、って言ってたよね。特にカイリューにね。」
「・・・そうだ、確かに僕はよくそう言ってたっけ。所でそのカイリューは?」
「あっ、・・・それなんだけど・・・。」
「・・・?」
「君を産んだ後、ジョウト地方のフスベって街に行っちゃったんだ。そこのあるトレーナーの元で生きていくって。」
「えっ・・・?」
「君をポケモンにする事しか助ける方法が無かった事に、内心悔やんでたらしいんだ。」
「君をポケモンにして救う事しか出来なかった自分が悔しいって事と、君の両親に申し訳ないって言ってね。」
「一心不乱に強くなろうとしてるんだ。」
「・・・。」
「それと君のこの住居は君のために僕達が作ったんだ。」
「僕の・・・ために?」
「うん。元は何も無かったこの島に木の実とか水とか、あとこの洞窟とか全部僕達が整理したんだ。」
「へぇーっ・・・。」


 そんな事で2匹のドラゴンポケモンの会話が終わった。
「ま、そんな事があったわけさ。」
「・・・。」
「あっ、それと君と一緒にいたポケモン達なら、いつでも呼べるようにしてあるってフーディンが言ってたよ。」
「・・・その事なんだけど。」
「?」
「呼ばなくて良いよ。」
「えっ?どうして?」
 驚くフライゴンに彼はカイリューの彼のペースで話し始めた。
「もう3年も経ってるから、みんなそれぞれの道を歩んでるよね。」
「あぁ・・・うん。確かにみんな別々の道を歩んでるよ。親になったのもいるし・・・。」
「だから無理矢理呼ぼうとは思わないよ。それに・・・。」
「それに?」
「父さんも母さんも僕はもう死んじゃったって事になってるでしょ?」
「えっ?うっ、うん。そうなってるよ。」
「じゃあ良いんだ。僕この姿の方が良いな。」
「えぇっ!?」
 また驚くフライゴンだが、カイリューは自分のペースを崩さないで話した。
「そうなっちゃたなら仕方ないよ。それにこの姿でいる方が自分に正直でいられる。好きな時に食べたり眠ったり出来るしね。」
「・・・。」
「まっ、そんな所だよ。教えに来てくれてありがとう。さっき言った事はフーディンに話といてくれるかい?」
「うっ、うん・・・。」




 夕日の中、カイリューはフライゴンが飛んでいくのをじっと見つめていた。
確かに親を悲しませるのは本望じゃないし、もう親に会う事は出来ないとなると、無性に涙が込み上げてくる。
それに苦楽を共にしたポケモン達とは、歴史が常に動いているように彼等も常に動いている。
恐らくもう会えないだろう。
でも僕はこの姿で生きていくと決心したんだ。
前にも言った通り、ここでは本能のままに生きていける。
だから・・・・・・、これで良いんだ。
夕日へと飛んでいく影が見えなくなり、彼は涙を拭いてそれまでの悲しさを振り払うように手に腰を当て、いつものペースで言った。


「さてと、今日は何を食べようかなぁー?最近お腹が出てきてるから、甘い物はしばらく我慢しようかなぁー?」






 そして彼はまたいつもの生活に戻る。
本能のままに食べて、寝て、空を飛んで・・・。
自分が元は人間である事を思い出し、再び生活を始めた野生のカイリューは、
その後あまり外交を持とうとせず、マイペースに暮らしたと言う。


 完
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