せかい〜第四巻〜ポケットモンスター二次創作 でぃあす作
ガサガサッ!
「ひぃぃぃっ!」

俺の名はショウゴ。見た目はサーナイトでも、中身は駆け出しのポケモントレーナーだ。
今は、この俺の元ポチエナのグラエナが引っ張って、たどり着いた森をさまよい歩いている。
で、このグラエナなんだが・・・

「なんだ、ただのネズミじゃないか」
「び、びっくりしたぁ・・・」
確かにこの森は薄暗く、少し不気味な雰囲気はあるが、昼間ということもあり、日の光は少し差し込んできてる。
たどいうのに、物音がしたぐらいでこの有り様だ。まったく、臆病なポケモンを捕まえてしまったような気がする。
「ふぅ・・・ それではグラエナの風格が台無しだぞ?」
「そ、そうは言ってもね! 中身はポチエナのまんまなんだから!」
まぁ、確かにそうだが、少し怯え過ぎじゃぁないか・・・?

「ところで、重いんですけど・・・」
ブルブルブルッ
「サーナイトが力ないの知ってるでしょぉ?」
ブルブルブルッ
「・・・はぁ」
なんでサーナイトがグラエナをおんぶして歩かなきゃならんのだ・・・
降ろそうにも、俺にしがみ付いて離れない。念力で離そうかともこころみたが、しっかりしがみ付いていて、にわかじこみの念力では離すことはできなかった。
しょうがないので、この状態のまま、森を散策することにしたのだ。

「っふぅーー・・・ よいしょっと」
おんぶに疲れた俺は、その辺の木の根元に腰を下ろし、休憩を取ることにした。
一応、グラエナも降りはするが、俺の体から離れようとはしない。まぁ、おんぶよりは楽だからいいか・・・
「・・・・・・」
今更ながら、変わり果てた自分の手足を眺めながら、ちょっと思いふけってみる。 サーナイトの身体になって2〜3時間、身体が違うというのはこうも違和感があるものだろうか。
一応、比較的人間に近い体型のポケモンだから、なんとか普通に行動できるが、もしも他のポケモンだったらどうなっていただろうか・・・?
例えば・・・

「うひゃあぁ!」
ここで怯えてるグラエナ。もしもこんな体のポケモンになってたらどうなっただろうか・・・?
・・・・・・ 四つんばいで歩くのは骨がおれそうだな・・・
まぁ、こんなつまようじみたいな足で歩くのも十分骨が折れるんだが・・・
「・・・・・・」
怯えるグラエナをなだめながら、ちょっと自分の体を触ってみる。
サーナイトとは、間接的に見ただけで、実際に手で触れたことは無かった。
できれば自分のポケモンにして、そしてその自分のサーナイトに触れてみたかったが・・・
まさかこんな形で触れる事になるとは・・・

触ってみると、なんだか独特の、これまでに触れたことの無い感触だった。
ヒトの肌とは違う、なんかスベスベとした、なんていうんだろう・・・ とにかく不思議な感触だった。
・・・ひょっとしてこのままサーナイトとして、ワケの分からない世界で過ごさなきゃならないのかな・・・?
そんなの絶対・・・ ・・・いや、いいかも・・・いや、よくないって! やっぱり人間で暮らす方が・・・ いや、でも・・・
「・・・ショウゴ?」
ふと気づくと、グラエナが不思議そうな顔をして俺を見ていた。
変な迷いが顔に出てたか・・・?
「俺達・・・ どうなっちゃうんだろうな・・・」
できれば人間に戻りたい、でも、このままでも構わない。そんな曖昧だが、しっかりとした結論になった。

「そ、そんな事、言われても・・・ ん? ひゃっ!」
また俺に飛びついた。しかし、今回は音が無かった。何があったのかと、グラエナが今チラッと見た方向を見てみる。
「・・・? 何も無いじゃないか」
「あ、あれれ・・・? さっき緑色の光がスーッと・・・」
緑色の光・・・? 自然の中でそんなのを見るなんて事は・・・
見間違い。と考えるのが妥当だが、不思議とそれで片付けてはいけない。と心のどこかでそう思った。
普段から面倒臭がりの俺が、こんな風に思うなんて、何なんだ・・・? 一体・・・
「あっ、またっ!」
「・・・!」
今度は俺にも見えた。確かに青白いならぬ、緑白い光の球が飛んでいった。
これだけ立派な森なんだから、森の精でもいるのかもしれない。  ・・・って、そんなの居るわけないだろー!
・・・多分。

「ん〜・・・ とりあえず、もう少し歩くか」
色々考えてる間に、休憩には十分な時間が経っていた。
というわけで立ち上がると、グラエナが飛びついて先ほどと同じ状態になる。
「はあぁぁ・・・・・・」
全身からため息をつくと、俺はまた歩き出す。
この臆病さはどうにかしないとな・・・

そして何分ぐらい歩いただろうか。森の中に、かなり開けた場所があった。
綺麗な円形になっていて、まるで森のコンサート会場とでも言わんばかりの雰囲気だった。
「すげぇー・・・」
こんな場所、ゲームかキャンプ場ぐらいだと思っていたが、自然の森にもこんな場所があるなんて・・・
と、関心をしていたその時・・・
「で、でたーー!」
死ぬかと思った。 いや、グラエナが首にしがみ付いてきただけなんだが。
で、改めて目の前を見ると、さっきの緑白い光が宙で静止していた。

「敵・・・?」
と思ったが、すぐにそうでないと分かった。
近づいてみることで分かったが、なんていうのか、すごく神々しい雰囲気に満ちているのだ。
殺気なんて微塵にも感じられない。
と、いろいろ考えていると、光がだんだん小さくなっていき、中にいたものの正体が明らかになった。
だが・・・
「な、なんだこいつ・・・? ポケモン・・・?」
さりげなく、グラエナに振ってみる。
「ポケモン・・・なのかなぁ? でも、こんなポケモン知らないよ?」
目の前に居たのは、緑を基調とした、ちっこい生き物。
どうにも変わった姿をしている。って、ポケモンなんて大体そうか・・・

「なんか、かわいい〜」
何をのんきな・・・ だが、確かに小さくて愛嬌のある姿である。
と、いろいろ言い合っていたその時・・・
「キミ・・・ 誰・・・?」
そのちっこいのが聞いてきた。 「オイラはポチエ・・・じゃなかった、グラエナ!」
「いや、キミじゃなくて・・・」
その一言に、グラエナはしゅんとなる。なんか漫画みたいに縦線を引いてやりたくなった。って、そうじゃなくって・・・
「俺は・・・ サーナイトだけど・・・」
「いや、違う・・・ なにか秘密があるでしょ?」
俺が人間だってことを気づいているのか・・・?
「確かに、俺はさっきまで人間だったが・・・」
「ニンゲン・・・? ニンゲンがなんでそんな格好に?」
こっちが聞きたいわ! と、一喝してやりたい気持ちを抑え、とりあえず俺にあった悲劇の一部始終を話した。

「・・・そんなことが・・・ よし、任せて!」
任せて・・・? って、いうことは・・・
ちっこいのが光りだした。と思ったら、自分たちの体も光りだした。
「ここはキミ達の世界とは違う世界。ここにいるべきではないと思うんだ。じゃぁ、またね」
「何・・・? 何を言って・・・うっ・・・」
その一言を聞いた直後、体に異変を感じた。
意識が朦朧とし、体が溶けるような、妙な感覚に陥る。そして、気を失った・・・

「・・・! ・チ・・・!」
意識が戻ってきた。そして傍で何かが叫んでいる。
「ポ・・チ! チ・・ー!」
「ん・・・っ」
気が付くと、目の前にはポチエナが俺に向かって吼えまくっている。
「うるさい!」
「ポギャッ!」
目覚まし時計を止めるかの如く、手でポチエナの頭を押さえつける
が、その時、さっきまでの違和感が消えてる事に気づいた。
「あれ・・・?」
その押さえつけた手を見てみると、それは人間の5本指の手だった。
「・・・戻った? 戻ってるよ!」
俺はうれしくなり、すくっと立ち上がる。
「チーチー!」
足元でポチエナがはしゃいでいる。そっか・・・ 人間に戻ったから言葉が・・・
周りを見渡すと、俺がサーナイトになる前にいた場所だった。
夢・・・? でも、夢にしてはリアル過ぎるような・・・
気づくと、辺りはオレンジ色で染まっていた。 そんなに寝ていたのに、誰も気づかなかったのか・・・?

「・・・帰るか」
ポチエナをモンスターボールに戻す。そうだよな、夢だったんだよな。人間がサーナイトになるわけが無いじゃないか。
すべては夢、そう片付けて、俺は明日からのトレーナー人生を歩むのだった。


 おしまい




「・・・ ニンゲン、またこないかな・・・」



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