サツマイモのたっぷりと入った穣子特製味噌汁のあった夕餉も終えた後、静葉の用意した風呂に浸かって、体をスッキリ温めた十和子がほっと座り込んでいると、それぞれ片付けに、また湯浴みを終えた穣子と静葉が戻ってくる。その2人に十和子は改めてお礼を述べれば、いやいや、良いのよこれくらい。と姉妹の揃う声が返ってはまたしばらく談笑の時間となる。
話題の主な事は他愛の無い事だった、世間話も混じれば、最近の寒さについても―今年は寒さが急に強まるのが印象的であった―混ざって、時折澱みつつ、次の瞬間に飛び出した新たな言葉に笑いが起きる、そんな具合で彼女等はすっかり盛り上がっていた。
だが何時の頃からだろうか、話に彼女等が夢中になっている間にその体同士が近くなっていたのは。当初は一定程度の間隔を空けて敷かれている布団を、敷物代わりにして足を伸ばしてくつろいでいたはずなのに、今となってはその距離は極めて近しくなっていて十和子を挟む様に秋の二柱はすっかり並んでいる。
「そうだよね、本当それって…」
口こそ変わらずその談笑に応じているのみ、しかし、その体は最早、十和子にすっかり預けている穣子。そしてそっと十和子の手をとってはその手をある場所へと導いている、静葉。
「はっはい、その通りですよね、穣子…さん」
十和子の言葉も微妙に変化している。先ほどまでのまだ敬している、との感が幾らか漂っていたものから、今は親しみと共に恥じらいの気配を載せたそれへと変わっていて、何より2人の名前に添えている敬称が「様」から「さん」へと変わっている。
三人共、似通った格好をしていた。それは寝間着だろう、白のその上に寒い時期ながらのはんてんを着込んだ姿ですっかり体を預け合っている顔はほんのり色づいていた。それは紅葉と言うよりも桃に桜に近い具合だろうか、何れにしても外をすっかり支配している冬の寒さとは対照的な、微笑ましさの中にある暖かさを共有しているのは明らかであって、それが熱へと変わるのももう、まもなくの事であった。
「んぁっ…」
「静葉さんったら…もう大きくなってます、よ?」
静葉が導いた先の膨らみに彼女自身が甘い喘ぎ声を漏らして、それに十和子がもぅっとでも言わんかのごとく頬を膨らませては指摘をする。
仕方ないじゃない、とは静葉の言葉だった。もう、さっきからしたくて仕方ないのよ、分かってよ、との言葉に十和子がうなずいた刹那、ひゃっと声を上げて身を軽く仰け反らせる。
「みーつけた、十和子の乳首ちゃん…」
その耳元でそっと漏らしながら、背後から覆いかぶさる姿勢で十和子の前へと手を伸ばしているのは穣子。静葉に導かれて十和子の体が動いたのを良い事に沿う様に動いて、すっと彼女を包み込む様にするのは造作無い事。やや薄めの寝間着越しに感じられる対となる出っ張りの正体は、それは十和子の乳房にある乳首そのものであって、それをくりくりっと指先で弄ぶだけでその声は嬌声へと変わり、静葉の股間の突っ張りに添えられている手が思わず、それを掴んでしまうのは快感の流れを考えれば自然なものであった。
はあ、穣子さん…ヤメ…て。との陳腐なセリフを十和子が漏らす、しかし穣子がそれに応じる訳がない。あらあら、そう?でも体は、との矢張り馴染みの言葉を耳を食みつつ返して乳首をより弄っては静葉の股間の突っ張り―もう書いてしまおう、それは陽物である―を掴ませる手の動きを間接的に操作していく。
「もう穣子に十和子ったら…気持ちいいの…っ」
両手を布団の上に突き、体を支えている静葉にその陽物を覆う布地を剥ぐ余裕はなかった。だから、十和子は空いている片手ですっと持ち上げ、そのまま中から屹立している陽物の根っこ近くを掴んでしまえば、後は容易い。外しざまにそれまで陽物に添えていた手を以って布地を剥いでしまえば、そこにあるのはそれは見事に出来上がって濡れだしている立派な陽物―男性器に他ならない。
「あらあら、静葉姉さんったら…相変わらずおっきいわねぇ」
「あん、穣子さ…ん」
「なーによ、乳房、前より大きくなってない?自慰の時に揉んでるの癖になったんじゃない?」
「そんなの…ああ、穣子さんのもあたってる」
今や姿勢はまた変わっている。3人で並んで体を預け合っていたのも過去の話、穣子と静葉に挟まれる十和子、とは変わってこそないものの、十和子はすっかり四つん這いに近い姿勢に変わっていて、その上にかぶさる穣子のそれは欲望にまみれた顔がその神としての、即ち、豊穣神としての本能を色濃く出しているとしか見れない。
対する静葉はそれはもう、相変わらずに体を両腕で支えながら、両足を大きく開いて時としては2人に視線を向け、あるいは喘ぎ声と共に首に体を仰け反らせて、当初とは違う意味で体を預けている。彼女が最も服を肌蹴させていたものだろう、今やはんてんはずり落ちて、引きずられるように帯び目を解かれた寝間着はそれこそ役目を半ば放棄していて、ふっとした膨らみの乳房を曝け出させてわずかに汗でまみれ、全身が上気しているのをこれでもか、と言わんばかりに股間にある陽物と共に見せつけてくる。
最も見るのは十和子と穣子でしかない、だから3人の間で気持ちはすっかり循環していた。1人が感じて、あるいは弄れば、それは即座に伝わってまた、の繰り返し。静葉のみならず十和子も、穣子も息を荒くしていく。十和子の寝間着も次第に解けていって、ふっと気づけばより直接的とも物理的とも言える熱い感触をその股間に彼女は感じていた。
「穣子…さんっ」
それは呼びかけであった、そして了承の意味でもあった。次なる瞬間、穣子の体がグッと動いて打ち込まれる。打ち込まれた先にあるのはそう、十和子の肉体。その肉体の中に穣子は、その己の陽物をぐっぐっと入れてはその感覚に仰け反って舌で大きく、その場の淫気に満ちた空気を舐めとって摂取しては、腰の動きを止めようとはしない。
「ああ、ひゃぁ、あん、穣子さん、穣子さん、穣子…っさん…っ!!」
十和子の声は最早遠慮とは無縁、その部屋中に響き渡らせる様に叫ぶに等しくて、その声に穣子はますます、その気持を真っ直ぐにし、半ば抱きつかれるようになった静葉は十和子の頭をふっと撫でては代わりに、と言わんばかりの具合でその乳首に乳房を撫でまわし、さらには耳を食み、また唇に舌を奪う。
んっくうっん…んふぅっ、はあっ、んん…っ!!―言葉は時折叫ばれる十和子の物以外になくなっていた。大半は3人の漏らす喘ぎ声、更に打ち付けられる腰の動きや愛液に唾液がもたらす水音のみになっていて、空気自体がまるで春の様になっている。
神であるのか、人であるのか、そににはもう区別はなかった。あるのは快楽を貪る二柱と1人、否、三柱あるいは3人でしかなく、それは少しの静けさの訪れにまもなく、ピークへと達するのが容易に感じられる。
「ああああっ!」
それがどの声から漏れたのは定かではなかった、ただ、そう、ただ穣子の体はこれまでに無く十和子の体に吸い込まれていたものだし、吸い込んだ十和子にしてももう唾液と涙に顔を染め上げて小さく呻くだけの口には、そっと静葉が口付けをしているだけで余韻の文字が殊の外似合う。
これは、そんな秋の姉妹とある1人の里の人間が織りなす、営みの物語の一コマ。神と人とで織りなす、その中にちょいと酔いしれるのもまたよろしいものであろう。