桃色スウツ顛末記冬風 狐作 協力でぃあす ポケットモンスター二次創作
 竜の村・・・とある大陸の片隅にある入り江にあるその小さな村はそう呼ばれていた。特に産業も無い何も無い村であったがその分静かで穏やかな時間に包まれそこにちょっと風変わりな住人達の日々の生活が花を添えていたのだった、そしてこれはその生活のちょっとした1コマである。

「おーいピンクいるー?」
 村の中に立つ幾つかの建物の中で一際大きな集合住宅、その中の一室の玄関の扉を開けて中に向けて大声で叫んでいる者がいた。その姿は薄紫色のすべすべの肌に包まれていて尻尾と4対の計8本の角を持つ竜人であった、彼はしばらく待つが中々返事は返ってこない。痺れを切らした彼が再び口を開きかけたその時も背後から強い衝撃が彼の脳天に下った。
「もうっ何勝手に人の家のぞいてるのよ、でぃあす!」
 頭を抱えて思わずうずくまる竜人・・・でぃあすと言う名前であるらしい彼に強い口調を浴びせる影、それはまだ若い女の子で右手には拳が握られている。恐らくその拳で先程の一撃を加えたのだろう、そしてその拳はまだ力が有り余っているのか軽くワナワナと震えていた。
「痛いじゃないかピンクぅ、手加減してくれよ・・・。」
 頭をさすりながらでぃあすはゆっくりとわずかに涙目になりつつ立ち上がって呟いた。
「手加減してくれじゃないでしょ、もう。女の子の家を勝手に覗くなんて最低。」
 だが勢いは明らかに負けていた、でぃあすはすっかりピンクと言う名の猫人の女の子に飲み込まれていたのである。例えて見れば猫の前で強がる鼠と言った感じだろう、確かに窮鼠猫を噛むと言う言葉がある様に土壇場での立場逆転と言う事もあるであろうが矢張り力の差と言う物はある。だからあの言葉の通りになるにはよほどの運がなくては難しいし何よりも無断で女の子の、つまりはピンクの部屋を覗き込んでいたと言う時点でもう分は悪すぎた。そう女の子故の論理にでぃあすはすっかり負けたと言うそれ以上でも以下でもなかったのだから。だからもうその時点で彼が勝つという見込みは完全に断たれていた・・・と言っても過言ではなかった。
「・・・で、何の用なの?でぃあす、人の部屋覗き込むくらいなんだから何か用があるんでしょ。」
 だがそこでピンクは態度を一変させて緩めると軽く溜息を吐きながらそう呟いた、腰の両脇に手をやる仕草からはもうすっかり慣れ切っている・・・そんな気配が漂っていた。
「んーちょっと預かってもらいたい物があるのさ。」
「預かってもらいたい物?何よいきなり・・・生ものは嫌よ、腐るし。」
「そ、そんな物じゃないさ。別に腐りもしない物だよ、ほらこれさ。」
 そう言ってでぃあすは冷や汗をかきながら傍らに挟んでいた包みを示した。腕組みをしながらじっとそれを見つめてピンクは静かに頷き黙り込む、でぃあすとしても目の前でそう黙り込まれてはどう動けばいいのか頭ではわかっているものの実際の所は動き辛くつられて動きを止めて苦笑いを浮かべながら沈黙した。そしてしばらく見詰め合う2人の間の奇妙な静寂は続き、でぃあすはただただ無駄に冷や汗の量を増やすばかりだった。
「・・・いいわよ、預かってあげる。」
「いいのか!?」
「良いって言っているんだから良いに決まっているでしょ?それとも何、何かまだあるのかしら。」
「いや、何も何もないさ。じゃよろしく、すぐに取りに戻るから。」
 そう言ってでぃあすは安堵をわずかに浮かべる間を作っただけで焦った調子でその包み、白い紙袋を紐で十字に包んだ包みを手渡すと軽く頭を下げると少しも落ち着かずにその場から足早に立ち去っていったのだった。その様にはピンクも思わず唖然とする他なく何も出来ずに片手が宙を彷徨っている所を、階段を駆け下りていく軽快な足音だけが包み響いていた。
「何なのよもう・・・。」
 との呟きだけが後に続いて。

   ようやく我に返ったピンクが辺りを見回し顔をわずかに赤らめて自室へと入ったのはそれからわずか数秒後の事だった。重い鉄扉が閉まりそして鍵のかかる音が何処か心強くその心に響いたのも気のせいではないだろう、加えてそれで気持ちも改まった所で深いため息を彼女は漏らし靴を脱ぎ上へと上がる。そして包みを脇に投げ出しあの一件を忘れようとでもするかの様に別の事に打ち込んだピンクが再びその包みに関心を戻すのは大分過ぎてからの事になる。
"そう言えばあの包み本当は何が入っているんだろ・・・。"
 一通り事をし終えて一段落し新たに出現した空いた時間、暇を前にもう慣れている筈なのに何処かそれを持て余す気がしてならなかったピンクの関心がでぃあすの寄越した包みへと行くのはある意味必然だった。部屋のちょうど隅に転がっている包みは脇にちょうどはまる大きさで長方形をしていた、しばし眺めていても袋は全く動ぜず生物・・・生き物がその内容物でない事は手に取る様に分かった。しかしでぃあす自身が生物ではないとは言えもう1つの生物でもないとは決して言い切れず少し信じられもしなかった。何故ならでぃあすにはある前科が存在していたからである。
 そうずっと昔、もう数年前に今回と同じ状況下ででぃあすから荷物を預かった事をピンクは今も克明に覚えている。あの時は今回と違い余裕のある寄越し方だったのだが逆に彼女の方が急いでいた所だったので中身を特に聞かずに・・・正確にはでぃあす自身は伝えたのかもしれないがピンクにはそれが伝わらぬまま、彼女は玄関の片隅にその荷物を置いて半日ほど家を留守にした。そしてようやく用事を終えて戻ってきた彼女が玄関の扉を開けて、一息吐きながら靴を脱いだその足で床の上へと上がったその時足の裏に何やら違和感を感じたのは言うまでもない。そしてその感触に彼女は背筋を震わせて悲鳴を上げたのだった。
 でぃあすがその時に預けた物、それは氷の塊だった。どうしてそんな物を持ち歩いていた挙句預けて来たのかは今を以っても謎のままだが、その日は初夏の暑い日で普段なら融けても少々、箱の中に留まって外には漏れない仕様であったのだがその日に限って暑さにより想定以上に氷の融けが激しく結果として漏れてしまったと言う事だ。何よりも彼女は猫人である、猫は水が苦手・・・特に彼女は冷たい水が大の苦手であった。だから悲鳴を上げて仰天したのであり、その一件以来なるたけその様な事は避けてきたのだがどう言う縁かまた引き受ける羽目となってしまったと言う事だ。

「・・・でぃあすには悪いけど確認させてもらお、前のような事があっちゃやだし・・・。」
 そう自らを説得する様に言いながらすっと袋を引き寄せると丁寧にその結び方を覚えて解き包みを解いた。紐を外しただけで手をかける間も無く力を失った包みは静かな音を立てて開くと、その白い包みの下から現れたのは原色も明るい水色そして白が目立つ代物だった。そしてそこから漂うかすかな匂いに彼女は覚えがあった。
「これってでぃあすの好きな物じゃない・・・また作ったんだ。」
 その独特なかすかな匂いとでぃあすは彼女の頭の中で簡単に結び付いた、それはスウツである。でぃあすが何にも増して好むそれ以外の何物でもなかった。そして特に何の考えもなしに手を伸ばして折り畳まれたスウツを手にとって彼女はそれを開いた、ただその時は今度はどう言ったスウツを作ったのだろうかと言う純粋な興味に押されての事だった。そうして床の上に開かれたスウツは水色と白を基調とし加えて紫が目立つ配色をしており、顔の額に当たる部分には矛の様な太さを保った水色の物体が存在していた。
  「ポケモンか・・・うーんこれはスイクンかな?でもあいつ好きって言ってたっけ・・・。」
 でぃあすの話し相手をした時に聞きうろ覚えに覚えていた記憶を解き解してふと思い浮かべる。だがどうにもはっきりとしないので深くは思うのを止めて再びそれへと視線を向けあちらこちらへと手を当ててみる。材質は当然スウツだから覚えのある独特のひんやりとした素材であるのは変わりない、しかし幾つか動かしている内にふとした違和感にピンクは気がついた。それは一言で"膨らみ"と表現できる物だった。
"こんなの・・・前触ったスウツには無かった筈。また何か変な物考えたのね、でぃあすったら。"
 ピンクはでぃあすが一体何の目的で作ったのかと言うよりも、一体どう言った機能をこの膨らみが担っているのかと気になって仕方がなくなっていた。しかし窓から見えるでぃあすの家にどうしても目が行ってしまう、見た所家にはいないようだが何処へ行ったのか、そして何時取りに戻ってくるのか皆目分からない状況下で無闇に自分の興味の赴くままに扱ってしまって良いのかと悩む。そのまま背中に開いた入り口の裂け目を前にして思わず唾を飲み込み見つめたその瞬間、ピンクはその耳にまた別の意味で気になる気配を感じたのだった。
 耳で感じた別の気配、それは彼女が最も嫌う物の1つ・・・虫の羽音だった。それもよりにもよって音からして蝿であるのは疑い無く急速に接近してくる。ピンクの心中は途端にざわめいて乱れた、だがそれでも留まっていようかと言うその時何の目的があってかその蝿は彼女の耳の天辺に降り立ったのである。その急転直下の事態に完全に我を忘れて取り乱したピンクは蝿を払おうとしつつ大いに慌て、手振り身振り激しく体を動かした拍子にどう言った訳か彼女の足が引き摺り込まれる様にスウツの中へと沈み込んだ。
 そこで普通の感覚ならその足を引き抜こうとするだろうが余程取り乱したせいだろう、まるでバスに乗り遅れるな、そんな調子で全身がスウツに収まるのに時間はかからなかった。何よりも全身が異質のスウツの感覚に包まれた事で安堵する始末であったのだから何処かでピンク自身が望んでいた逃避の結末ではないのだろうか。

「てっ何私リラックスしてるのよ・・・脱がなきゃ。」
 それでも我を取り戻したピンクは別の意味で慌てながらスウツを脱ごうと、ちょうど良い具合に股間の所に存在していた膨らみに手をかけて一気に脱ごうとした。しかしそれに触れた途端不思議な感覚が彼女の全神経を襲った、まるで腰が砕けて腑抜けてしまう様な得体が知れないと言うのに気持ちよさを感じてしまうその感覚に戸惑いを隠す事は出来なかった。同時に実際にそれを体感したのかと言う事へも疑問を抱かざるを得なかったのである、そして気持ちを昂ぶらせて怖い物見たさと言った思いに突き動かされて彼女は再び手をかけた途端に腰を砕かせる。
"う・・・何、たまんないよ・・・。"
 ピンク・・・いやすっかりその全身をスウツの下に隠したその姿からは彼女だとは一見しただけでは思えない。そうスイクン人と言う姿でありそれがそのままの本来の姿である様に体は動いていたのだった。その心中はこれ以上続けてはいけないという警告と好奇心がせめぎ合い、それらとは別に何やら彼女の心の底を突き破るような衝動が力を蓄えつつあった。そしてそれは揉み触れれば触れる度に着実に・・・そして後わずかで臨界点に達しそうと言う時に、もうピンクであってピンクでなくなり掛けたその時、唐突にその夢見心地の世界から彼女は解放されたのだ。
 そうでぃあすが戻ってきたのである。戻ってきたでぃあすはしばらく呼び鈴を鳴らしても一向に反応が無い事をいぶかしんで合鍵を使って立ち入り、危機的な状況にあったピンクを目にして救い出したのだった。当然ピンクの行動に対してでぃあすは怒ったのは言うまでも無く彼女はただ謝るしか術はなかった。ただそうとはなっても2人の根本的な関係は変わる筈が無く数日してほとぼりが醒めると何時もの2人がそこにはいた。


 完
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