「お兄ちゃんって凄いねぇ・・・かなり驚いちゃったけれどさ。もう一度見せてよ。」
あれから20分ほど経過した時、事態はすっかり落ち着いて好転していた。幸いにして順応性の高い妹の事、持ち前のその特性を遺憾なく発揮して事態を飲み込んで受け入れ互いに一息ついて安堵したのも束の間。黙っている事を条件に俺は妹の前でその姿を、スウツを着込んだ姿で様々なポーズを取らされる羽目になったのだ。
「まっまたか・・・今度は何だ?」
不平をもらしつつ言う事を聞いて取るのは兄の悲しき性だろうか、不思議としている内に嫌だと感じなくなるのだから肉親であるが故の事なのだろう。もしこれが友人であったら頑なに拒んだかもと思いつつ俺はポーズを取る、スーツの模っている姿のものになりきって・・・ポケモンで言うサーナイトに成り切って妹の要求に応じ続けた。実の所、俺と妹は大のポケモンマニアである。もう大学も目前と言うのに俺のこの部屋である小屋の中には勉強道具と本に次いでポケモングッズで溢れかえり、母屋の2階にある妹の部屋はそれ以上に凄い参上を呈している。
もう母親がポケモン屋敷と妹の部屋を呼ぶのは真に的を得た言葉であると思える。そんな俺と妹では当然の事ながら最もひいきにするポケモンは違う、俺は数ヶ月間文字通り心血注いで作ったこのスウツそのままにサーナイトが好きでたまらない。かつてはどうした訳かコダックが好きだったがサーナイトを見て以来すっかり心奪われてここまでに至っているのである、そして妹はと言えば・・・それは彼女自身に語ってもらうしかないだろう。
「お兄ちゃん、頼みがあるんだけれど・・・私にもそれ作ってくれない?そしたら本当に黙っていて上げるからね、受験勉強サボって造っていた事。」
全く予想通りに妹はそう言って来た、だが俺には断る余裕もないし何よりも道理は無かった。そしてどこかで自分以外の誰かとともお互いのスウツ姿を見せ合いたいと言う気持ちは抱いていたからある意味では歓迎すべき申し出であったのだ。
「いいぞ、造ってやるよ・・・何にする?」
俺が即答すると妹は大きく微笑みそして呟いた。
「もう分かってるのに酷いなぁお兄ちゃんは・・・ジラーチに決まっているじゃないの。」
そう言う妹の顔には満面の笑みが浮かんでいた。
そして季節は流れ数ヵ月後、無事地元の国立大学に受かった俺は大学に通いつつせっせと妹から頼まれた新たなスウツ、ジラーチスウツの製作にいそしんだ。ジラーチスウツは初めて作った自分用のサーナイトスウツと幾らか共通していたので造り易く、加えて妹の小柄な体に合わせてだから材料費が意外に安く済んだのもうれしい話だった。何よりも自分と同じくスウツを着る者が妹であると言う事・・・それに向けての期待感からいよいよ励み出来上がった時には部屋でくつろいでいた妹の下へ片手に掴んで飛び込むほどだった。
そして大学も妹の通う中学も休みの盆のある晩、両親が外出している間を利用して俺と妹はスウツを着て日常を過ごす等して大いに楽しんだ。そしてそれ以後も機会を見つけては互いに着て見せ合うなどして楽しみ続けた、新たなるスウツをお互いのラインナップに加えてじっくりと楽しむのだった。