一方LUNA店内・・・
「あけましておめでとうタケト君、今年もよろしくね。」
美也とタケトが挨拶を交わしている、その後ろでは吉康とサルサ、それに蘭、和泉夫妻、藤枝・・・等面々が思い思いに新年の挨拶を交し合っていた。
「おーい、つまみが尽きたぞタカハシ〜。」
「そうだそうだつまみ持って来い、高橋。」
そして高橋を扱き使うかなり酔ったウルフとポリネシア、すると奥から高橋がすまなそうな顔をして現れた。
「もうおつまみ無いよ、ウルフ。あんなに食べるんだから・・・箱ごと買ってきたのに。」
「じゃ買って来ーい。」
「簡単に言うなよ・・・寒いのに。お金だってかかるんだからさ。」
能天気なウルフに対して小言を言う高橋、すると銀星が立ち上がった。
「じゃあ俺が買いに行こう・・・外の空気もたまには吸わないと。」
「私も行くわ、ちょっと動きたいなって思っていた所だし・・・、行きましょうか銀星さん。」
すると真雪もそれに続いた、その姿は普通の人である。
「そうか、じゃあ着て行かないとな、真雪は・・・俺は毛があるから良いんだが。」
「あら、忘れないで。私だってあるんだからっ・・・はい、こんな感じにね。」
その言葉と共に真雪は瞬時に光った。服は来たままその首筋などには茶色の獣毛・・・吉康と全く同じ毛を生じ、耳と尻尾が現れていた。
「そう言えばそうだったな・・・すまない。」
「良いのよ良いのよ、まだなつたばかりだし・・・田中君も行かない?」
と真雪は蘭と話をしていた吉康に声をかけた。吉康は嬉しそうに反応を返す。
「うん、そうだねじゃあ僕も・・・でも不思議だよね、何度も言うようだけど真雪さんがこんなになるなんて・・・ごめんね。」
「謝る必要なんて無いわ、田中君。悪いのはあいつなんだからあいつ、田中君には感謝しているわよ、今年もよろしくね。全く新年早々そんな染み垂れていてどうするのよ、パッとしなさいパッと。さぁ行くわよ。」
「あぁそうしよう。」
そして支度を整えると3人は高橋から渡されたメモを手に夜の街へと買物に出た。その姿を見送った後で蘭が呟く。
「本当、不思議よね・・・人がワイルドハーフになるなんて。銀星も聞いた事無いって言っていたけどさ如何なのよサルサ?」
「銀星と犬使いのお前が分からぬ事が俺にわかるか、まぁどうも消滅していく人狼の生命力の一部である血を真雪が口にしたその時、吉康を思う情と目覚めかけた吉康の情が昂り同調した結果・・・らしいがな。あくまでも推測に過ぎないのだ。」
「そう・・・本当、君達の周りは情を巡って色々な事が起きるね・・・サルサと銀星の人狼もそうだし僕だって・・・ねぇまた白夜を下ろしてくれたりしない?」
「断る。あれは消耗するからな。それよりも今のお前には2人も仲間がいるではないか。」
「そうだよ、蘭ちゃん。その方が白夜も喜ぶよ。」
そう言われて思わず言葉を詰らせる蘭、しばらく視線を宙に漂わせるとしっかりと頷いた。
「そうね、それもそうかも・・・あれ?央子と奈穂子は?」
「あれさっきまでそこにいたんだけど・・・。どこに行ったんだろう?」
「台所にいるわよ、蘭さん。ミレイと一緒に何かしているわ。」
「あぁそうそれなら良かった・・・何か匂うけれど何をしているんだろうね。」
美也が2人の居場所を教えた。なるほどタケトがそっと覗きに行くと何かを3人でしているのが見えた。
「何をしているのでしょうかね・・・。」
そう呟いてタケトが一杯口をつけた時だった、3人の明るい声がこちらに向かってきた。何だか香ばしい匂いも漂っている・・・何か期待できそうな香りが。
"今年も良い年になりそうだな・・・楽しみだ。"
央子と奈穂子、そしてミレイの満面の笑みをたたえた顔を見て蘭はふと思い、そして立ち上がった。