宇宙で激闘を繰り広げた後に争いはようやく止まったけれど、 各国に対する被害は明らかなものだった。復興のために多大な費用と時間を 要するため、連合軍は地球へ、ザフト軍はプラントへと戻り、都市の復興作業を 手伝う活動をはじめた。
ザフト軍・連合軍は共に争いを繰り返さぬために敵地の環境調査を行う事になった。 そして連合軍からザフト軍・プラントに派遣されたのがキラ・ヤマト少尉。 ザフト軍から連合軍・地球へはどういう訳だかザフト軍の誇る赤服隊では無い者が 地球へと派遣された。


                [sbject.向こう岸に君と2人で]


「キラよく来たな!!元気だったか?」
連合軍のシャトルから乗って来たキラがキャビネットへ下りて来ると、 キラの元へとアスランが駆けつける。 あの争い後忙しくなり、互いに連絡が取れずにいたため2人にとっても久しき再開だった。
「アスラン!迎えに来てくれたんだ、ありがと」
アスランを見やりキラが微笑を向けるとアスランは思わずドキっとして 表情を緩ませてキラに手を差し出す。
「…行こう。プラントを案内する。連合からの派遣者を案内するのが 今の俺たちに与えられた任務なんだ」
「…ぇ!?アスランが?知ってる人で嬉しいな…でも"たち"って?」
差し出された手と、キラの笑みにアスランも微笑んで手を引き、キラが小首を 傾げるとアスランはくすっと笑って"後で紹介する"とだけ告げて キャビネット内を1つ、1つ案内していく。
かつて争いの際に入った時とは違い、堂々とキャビネットを案内されてキラは アスランに1つの部屋へと連れて行かれる。

キラは周りを物珍しそうに見回してアスランに促されるままにその部屋へと入る。
「キラはここでちょっと待っていてくれ。他の人員を連れて来る」
アスランは1人でキラの反応に楽しそうに笑ってキラに椅子を引いてやると 扉を静かに閉めて部屋を出て行く。
「ぇ?……あぁ、うん」
キラは促されるまま椅子に腰掛けてアスランを見上げると、アスランは笑みを 浮かべて部屋を出て行き、1人残されたキラは部屋の中を見渡す。
どうやらここは会議室のようで白い壁に、机がいくつか置いてあり、大きなスクリーンがある。 しばらくキラが1人で待っていると扉が叩かれる。遠慮の無いノック。 ゆっくりと扉が開いて外からひょっこりと中の様子を伺うかのように男が顔を覗かせる。
「よぉ、キラ。久し振りじゃねぇか。環境調査だってな」
中に入ってくる人物を見上げると、その聞き覚えのある声にキラは思わず笑みを浮かべて 椅子から立ち上がり扉の方へと駆け寄る。
「――ディアッカ!!久し振りだね。ぅん、環境調査なんだ。もしかして…ディアッカも 調査員の案内担当なの?」
瞳を細めたキラは周りに音の洩れ無いこの部屋内で自分よりも背の高いディアッカを 見上げて小首を傾げるとディアッカは小さく頷いて見せる。
「あぁ。派遣者の担当はザフトの誇る赤服組のアスラン・イザーク・そんで俺だぜ?」
ディアッカが口端を少し上げて笑むと口端から白い歯が覗いてキラも思わず つられて笑みがすぐにハっとしてディアッカの瞳を覗きこみ小首を傾げる。
「そっか……ぁ、ねぇ"イザーク"ってデュエルのパイロット?」
キラは眉を下げて笑みを消す。
無論当たり前だ。キラはイザ0九との面識がほとんど無いのだから。
争いの中でストライとデュエルとして出会い、その名は聞いたものの実際の 面識などほとんど無い。
無音の空気が微かに震えキラの表情がいつもよりも強張っているのがディアッカにも 分かったがディアッカは小さく苦笑してキラの肩を軽く叩くように肩に手を伸ばす。
「気にすんなって。もう争いじゃねぇんだし、俺たちにとってキラのエスコートは 任務だぜ?」
冗談めかして笑うディアッカに気を許すキラは小さく息をはいてディアッカを 見上げて静かに笑んだ。
そこにちょうど扉が叩かれてまた誰か入ってくる。今度のノックは少し遠慮がちに 室内に響く。扉が開くとそこにはアスランとアスランの後ろに見た事の無い プラチナブロンドの髪を揺らして歩く少年が入ってくる。青年と呼ぶには幼い顔立ちだ。
「キラお待たせ。彼が"イザーク・ジュール"そして俺たち3人がキラの護衛兼案内役だ」
キラはアスランの隣に立つイザークの顔を見上げて小さく微笑みかける。 キラの笑みは穏やかで優しさがあり、それでいて嫌味が無いのだがイザークは それから目をそらして疑うように横目でちらりとキラの笑みを見る。
「初めまして。キラ・ヤマトです――…その宜しく」
「…お前があのフリーダムのパイロットか。…フン。俺にはお前と宜しくする 義理なんて無いね」
イザークが腕組をして目線をそらして瞳を細めるとキラは小さく苦笑する。 だがディアッカが後ろからキラの肩に凭れるようにして圧し掛かりイぁークを見やり 小さく溜め息をつくように息をはいてキラの横顔を見やる。
「キラ気にすんなよ。イザークは人見知りだから初めはこんなもんだ」
「――ディアッカ…貴様!!」
「ディアッカ、キラから離れろ。イザークも…大事な客人だぞ」
アスラン・イザ0九がそれぞれ声を上げてディアッカを睨みつけるとディアッカは ぎょっとして瞳を見開いて2人を見やり小さく溜め息を洩らすとキラの肩から 手を引いてキラから離れるように後ろに大きく一歩下がり両手をあげて 唇を尖らせ息をはくと同時に口笛の音を立てる。
「…ちょ、ちょっとアスラン。僕はそんな事気にしないから!」
キラが思わずアスランの前に入ってアスランを見上げるとアスランはようやく 笑みを浮かべてキラを見やる。ディアッカは見たこともないようなアスランの 笑みにイザークの側へと移動してイザークの顔を苦笑して見やる。

アスランのこんな顔は誰も見たことが無い、キラ・ヤマト。
アスラン・ザラは完璧で何もかもに秀でている。
イザークはこんあアスランを見て拳をぎゅっと握り締めた。
そんなイザークの姿をディアッカは横目で見やるが、静かに 瞳を細めて見え無い振りをしておいた。


それから1日目のプランを終えるまで順番にキャビネット内や 軍の敷地内をキラに案内して、ようやくプランを終えるとキラに 1人部屋を用意してその向かいの部屋にアスラン、アスランの隣に それぞれイザークとディアッカの部屋が用意された。
今晩は特別にここでキラの護衛にあたるのだった。


   ******************


キラは1人部屋に入るとベッドに腰掛けて小さく溜め息をつく。
気になっているのはもちろんプラチナブロンドのさらりとした髪の彼のこと。 彼の名はイザーク・ジュール。
キラはベッドに寝転んで高い天井を見上げゆったりと息をはく。
「ふぅー…こんな事ならトリィを連れて来るんだったなァ」
ベッドに横になったまま天井を見つめて静かに瞳を閉じると ふいに部屋の扉がノックされる。外から誰かがセキュリティーに パスワードを打ち込んでいるのが分かり、キラはベッドから起き上がると 扉の方へと近付いていく。
「…――…誰?」
キラが短く尋ねる扉の向こうの人物はどうやらセキュリティーをクリアし、 セキュリティーに認められたようでスライドの扉が静かに開く。
「俺だ。明日の日程の説明をする、中に戻れ」
キラは思わず瞳を見開く。
まさに気になっていた人物が目の前に現れて、思わずイザークの澄んだ瞳を 見つめるがイザークはさっさとキラの部屋に入りソファーに腰掛ける。 キラも慌ててイザークに続いて部屋の中に戻り、イザークの向かいのソファーに腰掛ける。 イザークは気らが席に着くのを待つと紙を取り出して躊躇いも無く説明をはじめる。
明日はどうやら街の中の案内が主だったものらしい。
「――…で以上だが何か貴様の要望・質問はあるか?」
イザークが紙を見るのに目線を下げたままなげやりにキラに尋ねると キラはイザークの顔を覗き込む。そのイザークの瞳は凛としていて綺麗に澄んでいて恐れの 微塵も無い。そんなイザークの瞳をキラは真っ直ぐに見つめる。
「あのさ"貴様"っていうのは悲しいよ。君は僕の事を嫌いかもしれないけど、 せめて名前で呼んでくれないかな?それに出来たら目を見て話して欲しいんだ…… その、イザーク?」
キラははにかんだ笑みをイザークに見せて最後にそっとイザークに笑いかけると イザークはしばし表情を止めて、キラに名前を呼ばれるとハっとして我を取り戻し白い頬を 微かに染めてソファーから勢いよく立ち上がる。
「――なッ!…何なんだお前は――……全く」


本当に何なんだ
なんて恥ずかしい奴なんだ
コーディネーターのくせにナチュラルみらいな顔しやがって
男のくせに並みより強いくせに女みたいな顔をして
……まったく何なんだこいつは。


「イザーク…?…あの少しずつで良いから…」
イザークの様子の違いにキラは続けて声を洩らすがイザークは真っ直ぐに キラを見つめて緩んだ表情を消していつものクールな顔をして微かに笑む。
「この俺が案内してやるんだ。時間厳守だ!…分かったな、キラ」
イザークはキラを見やり儚に笑むと今度はさっさと部屋を出て行き、部屋に残された キラは呆気にとられてぼんやりとしながらも慌てて立ち上がるとイザークの背を見やる。
「―――…ッぁ、うん!」
イザークが部屋を出るとキラは1人、部屋で小さく微笑むと閉まった 扉を見つめた。 扉を出たイザークは瞳を閉じて右手で頬にくっきりと残る傷にそっと触れる。


"何のために戦う? 何を護るために?"
コタエなんて決まっている。"君だ、君を護るんだ。この俺が"


   ******************


「アスラン退け。キラこっちだ、行くぞ。遅い、早く来い!」
次の日にはキラの手を自ら引くイザークの姿が見られ、その姿を後ろから 追いかけるアスランの姿が見られた。
「ィ、イザーク!?お前…キラの手を離せ!!」
「煩い。貴様が仲良くしろと言ったのだろうが、大体俺とキラの事に口出しするな」
イザークがふっと足を止めて振り返るとキラの手をきゅっと握って アスランを真っ直ぐに睨み付けて小さくニヤリを笑みを浮かべる。 アスランもアスランで負けてはおらず、イザークを真っ直ぐに睨みつける。
そんな光景を少し離れた後ろから見やるディアッカはイザークとアスランのけたたましい声を 聞いては1人深く溜め息をつく。
「…おいおい。赤服着て街中出てる意味考えろよ」
「ちょっとちょっと!こんなトコで…アスランもイザークも落ち着いてよ!」
キラは小さく苦笑するが眉を下げてアスランとイザークの顔を交互に 見やり声を洩らす。
プラントの街中で有名な赤服の3人組と連合軍の服を着た 少年の騒ぎが民間に目撃されたいた。


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イザキラ第一弾。
実は最近イザキラプッシュをしております。
イザークの王子様っぽい所が好きなのです。
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