びくびくと全身の筋肉が痙攣しているのが自分で分かった。
一段と高く、喜びとも悲しみともつかぬ声で自分が叫んでいるのが、何処か別の世界のことのように感じられる。その声で寝室?が満たされていく。


 あ、・・・あがっ、はぁっ、もう、駄目、意識が、消え・・・る。


アスカの意識は、夢とも現(うつつ)とも付かぬ世界で尽き果てた。
相変わらず身体は勝手に反応し、幾度も弓なりに反り返り、男を迎え入れる夢を見ていたが、意識がついに焼き切れてしまったのだ。


「As-1、相関離れます。シンクロアウト!」
「As-2のシンクロ遮断。オフラインにて波形調整に入ります。」
「波形同調。」
 

 

 

 



As.−Treat me nice

『現の価値を』

komedokoro


 

 

 

 

「ん・・・」


酷い悪夢を見ていたようだ。寝汗がベッドパッドを通し、マットにまで浸透している。
切れ切れの場面を思い起こすと、余りのはしたなさに顔が熱くなった。
いったいどこから自分はあのような場面を紡ぎ出したのだろう。経験していない事を思い出す事などできないはずで、いつの間にか耳に入っていた歪んだ性知識が、どこかで肥大していたとでも言うのだろうか。
恥ずかしさで身体中が火照り、熱くなっている。
心臓の鼓動と弾んだ息がそんな夢を見ていたことを実証している。
思わず胸に手を当てると、乳首がかちかちになる程、勃起していた。


「・・・やだ。これは一体何?」


その上、身体を動かそうとして、汗だけではなく、もっと密やかな部分迄が酷く燃え上がり、酷い状態になっている事に気づいた。まるで失禁したかのように、その辺りは考えられないほどに濡れそぼっていた。ただ濡れているだけではなく、滑りを帯びたそれは、身体の奥底から未だこんこんと溢れて来て、指と指の間で糸を引く。その指がぶれて目が霞む。ほんの僅かスリットに触れただけなのに、肢体に夢の中と同じく言うに言われぬ快感が走り抜けた。


「はっ、うっ!」


 ・・・何なの、一体。あの夢は、あの淫らで思い出したくもない想いは。
 その感触が起きてからも自分の脳裏に、まるで現実にあった事のように現実感をもって甦る。


「あたしが忘れていただけ・・・?そんな馬鹿な!あたしはずっとシンジと一緒にいたし、穢れた行いなんか一つもした事はない。シンジとさえ・・・、え・・・」


 自分は一体誰の事を言っているのだろう。シンジ? それって・・・


「誰、シンジって一体誰のこと?あ、あたしは・・・あ、アスカ・・・名字、そうよ名字は、・・・え、ええっ、あたしは、あたしはっ!」


思い出したのは、ただ一人だけ、実の姉がいると言う事だけだった。

 同じ名前、同じ顔の・・・そうよ、記憶が、熱か何かで記憶が一時的に錯乱してるんだわ。
 落ち着いて、落ち着くのよ、アスカ。

自分にそう言い聞かせながら部屋を見回す。暗く、フットライトだけが点った室内。
窓一つない部屋の中に大きな鏡が一つだけあり、身体中を火照らせ薄いレースの際どい下着を身につけただけの自分が写っている。よろよろと立ち上がった。
その暗い灯りが、暗いがゆえにインナーを透過し、何も身につけていないように見えた。
上気したように、ぼうっと佇んでいる、虚ろな少女の姿。

 

 

 


 


 やっぱり・・・あれ、あたし・・・?

目が眩む様な思いがする。
呆れた事にその顔、姿さえが、初めてみたもののような気がする。これは自分だろうか。
似てはいるがどことなく違和感を覚える。思わず鏡に駆け寄ろうとして脚がもつれて転んだ。
ぶるぶると、快感に痙攣している脚は容易に言う事を聞かないのだ。
転倒し、脚や胸をいやと言う程絨毯に叩き付けてしまう。絨毯が目の前に迫ってくるのに、鍛え上げられたはずの身体が、受け身一つ取れはしなかった。
頬が、乱暴に擦り付けられたようになって倒れ伏した。


「あっ、ひっ!」


そのままそこに丸まって、打ち震える。そうなってしまう程の淫微な快楽が身体を貫いたのだ。
その快感は、酷く擦り付けてしまった頬から波のように広がって、打ち付けた肘や腿から沸き上った残虐な快感と一緒になり身体中を駆け巡った。
腰の奥から、乳房から、側腹から、背筋から、膝裏から凄まじい快感が湧き起り、それに耐えきれず、狂ったケダモノのように汗や涎をまき散らしながらアスカは床を転げ回った。


「いやっ、何なのこれってっ!あっ、あくぅっ!」


2回、3回と、絶頂に登り詰めさせられた挙げ句、やっとの思いで鏡にたどり着いた。
無惨に擦り切れた頬から赤い血がにじみ出ている。それを拭い、立ち上がろうとする。
鏡の中の自分。表情がアップになって、否も応もなく突き付けられた。
青い瞳の輪郭は蕩けたように滲み、発情した馬の目のように赤く充血している。
弾む息は、明らかに異性を欲して悶えているのが未経験のアスカにもはっきりと分かった。
ここに写った女は、唾棄すべきほど性に狂った、はしたなく、淫乱な発情した女だ。
異性を求めて股間を濡らし、喘ぎ、自分でもそれを押さえきれない蕩けた目の女が鏡の中にいる。


「だれ・・・これ・・」


気がつけば太股をうじうじとこすり合わせ、指をくぐらせ、涎まで垂らしている。
おぞましいと思っているのにもら関わらず、切なさに指を止める事をできないでいる自分。
そんな事が現実にあるなんて事自体が信じられなかった。


 だめッ、何をしてるの、こんな事しちゃいけない、それなのに、あっ。
 息を荒らし、自慰が止められないでいるの?
 それが、あたし・・・夢の中と同じ、淫乱な、男を求めて狂った最下層の淫売なの?

 そうじゃない、そんなはずはない、確かに記憶はないけどあたしはそんなんじゃない!
 確かに、今は憶えてないけど、愛する人がいて、いて・・・
 だからそれがだれだったのよっ!


バン! と鏡に両手を叩き付ける。


 これは、あたしじゃない!あたしであるはずがない。


そう思いながら擦り合わせずにはいられない。腿とその奥にある女性器から駆け昇ってくる快感が今しも再びアスカを絶頂へと導き始めている。際限なく膨れ上がっていく性の快美感。
何かを欲する空しい迄の焦燥感に、身体中が声を揃えて、男を求め悲鳴を上げているのだ。
耐えようと堪えれば堪える程、身体が業火に包まれたように燃え上がっていってしまう。
ついに我慢できず、自らの秘唇を乱暴に握り締めてまで耐えようとする。
だが、それは全く逆の結果を身体にもたらすだけだった。
涙を流しながらアスカは身体を縮め、身悶えし続けていた。


「あっ、あ・・うっ、だっ、だめっ!かはっ!」


大きなうねりがすぐそこ迄押し寄せている。
恐ろしさに身が竦む一方で、それを待ち構えている自分が自分の中にいる。
アスカをひと飲みにして快楽の中に発狂するまで、悶え転がす為に。
思わず助けを求めた。


「ひっ・・・ぃ、ぃやあ・・・誰か、誰か助けて・・・くぅっ。」


瞬間、誰かの顔が浮んだ。ほんの一瞬、その顔さえも思い出せないほど一瞬だったが。
それでもアスカは反射的に叫んでいた。


「し、シンジィッ。」


どっと涙が溢れた、真っ黒な暗闇の中で一瞬だけ輝いた光。あの光に縋りつけば。
アスカは確信し、ここを何とか逃げ出そうと恐るべき克己の意志を持って、性感を押さえつけた。
鏡のその向こうにはドアが隙間を開けている。そこに向かって震える身体を何とかコントロールしながら、じりじりと進み始めた。
身体中から噴き出し滝のように流れる汗、止めどなく湧き出す愛液に下肢をてらてらとぬらめかせながらも脱出を試みようとドアににじり寄っていく。悶絶寸前の身体を引きずるようにして。







「ほう、なかなかに頑張る。さすがはサードチルドレンの選び、愛した娘だけの事はあるな。常人ではとてもああはいかんだろう。大変な克己心だ。」
「ふふ・・・あの娘の記憶はないに等しいにも関わらず諦めが悪いったらないわね。叔父様、あのドアの向こうにはちょっとした悪戯を仕掛けておいたの。いい見ものになると思うわ。アスカにも気に入れば良いんだけどね。ま、そうじゃなくても気に入らせてあげるわ。」
「ほう、明日香君、それで君はどうしたいのかね。」
「少しずつ、あの娘の心にやすりをかけてあげるの。こりこりと、少しづつ禁忌を外してあげる。記憶がなくてもあの子の魂は決して全てを投げ出したりしないわ。あの生への執着は何なのかしら。それを自ら手放すようにしてあげるの。楽しい世界へ連れていってあげるわ。もう随分前から準備をしてあるのよ。叔父様も手伝って下さるわよね。」


目をきらきらと輝かせる。まるで夏休みの楽しい計画を父に聞かせるような、そんな様子だった。







「巡視艇では目だち過ぎるわ。私達はこの山を越えて裏手から入る。かなりヤバい橋みたいだけどね〜〜。時間が惜しいわっ。
日向君達は対象のマンションの正門を押さえて。いけそうなら貴方の判断で動いて。」
「特務は何やってんだ?かなりの数が動員されているはずだが。」


青葉がぼやく。


「分からん、何れ何処かで始ればあらわれるだろう。青葉、葛城さんから離れるなよ。」
「おう、まかせとけ。」
「よし、1班は移動する!葛城さん、おさき!」


日向達は先行してマンション正面に向かう。
ある程度の小火器は準備されていたが、敵の勢力がわからないだけに不安が募る。


「私らも行くわよ。これ以上待っていたら、それだけアスカが危険になる。」
「き、危険ってなんです。葛城さん。」
「女の勘がそう囁くのよ。当たるんだな、これがまた。」
「よしっ、前へ!」




波に揺られていた釣り舟の上。釣り竿はアンテナには実に効果的な隠れみのだ。


「お嬢ちゃん達が動き出したぜ。」
「そうか、素人達に正面突破させるのはまずいな、軽火器で一階は祓っておけ。」
「2−C班、状況開始せよ。」
「2−C感度良好。1階だけでいいのかい?それと軍隊用語は止めろ。虫酸が走らぁ。」
「と言ってますが、どうしますか。」
「2ーCの班長、とぼけた野郎だな。仕掛けてあるんなら楽に仕事させてやれ!」
「了解。」







やっとの思いでアスカが辿り着いた隣室へのドア。
そこは、もとの自分の部屋だった。部屋の壁際に置かれた勉強机と本棚。明るい壁紙。
ハンガーに吊るされた高校の制服。
ぼんやりとした霧の向こうにあるような記憶だったが、それでもアスカはその記憶に縋り付くしかなかった。それほど安心したのだ。
やった、あの事はやっぱり悪夢に過ぎなかったのだ。
この激しい身体の疼きは、悪夢の残滓に過ぎない、きっとそうだ。
必死で身体ごと部屋に転がりこむ。そこには自分のベッドがある、とにかくもこの悪夢から逃げ出すんだ。とにかく少しでも休みたい。
その時アスカは漸くベッドがギシギシと妙に揺らいでいる事に気づいた。
視線をゆっくりとベッドの上に移すと、アスカの顔が引き攣った。



「ああっ、だめえっ、もっと。」
「アスカッ、脚をもっと開いて、」
「あっ、いやあ、こんな格好はいやあっ!」



「え?」


アスカの目の前には、男に両腿を抱え上げられ、金髪を振り乱し、開ける限り脚を開いて、まるでカエルの様に白い腹を曝け出した少女が、汗みどろで仰け反り悶えていた。
その濡れそぼった股間は黒々とした信じられない程猛々しい男性器を深々と喰わえ込んでいる。
それはぬらぬらと光りながら、少女の下腹部を貫き、激しく抜き差しされている。
その度に雌の嬌声が、優しいラインを描く喉から迸る。
青白い身体は余りに細く痛々しい程に見える。驚きの余りアスカは引き攣ったように動けなかった。
他人の性行為を目の当たりにするなど初めての経験だった。


しかも、その少女は自分。他ならぬ自分自身が、あられもなくこれ以上不可能なほど脚を広げ、男性器を喜々として喰わえ込んでいる。汗みどろで嬌声を上げ、悶え狂ったように頭を振り回し腰を揺すり、身悶えしながら男をひっきりなしに求めているのだ。
後ろから座位で散々アスカを責め上げていた男は少女を畳むようにベッドにうつ伏せに組み敷き、次にその腰と尻だけを高々と抱え上げ、後方から激しく抽送を開始した。


「ひっ、あがああーーーっ、は、く。狂っちゃっ、や、やめっ、んああーーっ!アフッ、狂っちゃうよ、・・・ジ、赦して、ああっ!い・・・くっ!」


少女は、飛沫を飛び散らかして、激しく身体を震わせた。エクスタシーの瞬間。前に突き出した手がベッドの端をわしづかみにし、拒絶の言葉を吐く。しかしその豊かではあるがまだ少女の線も残した美しい尻は激しく揺さぶられ、男の魁偉をもっと飲み込もうと、その快感を逃すまいとゆらゆらと打ち振られている。
股間から溢れた蜜液が、腹を、腿を伝わり落ちて行く。

その姿態は淫乱極まりなく、その表情は既に正気を失って柔艶とした微笑みと苦渋とを交互交互に浮かべている。下腹部を手で押さえ付けながら白く細い指がその場所を弄び、腰ををくねらせ、引っ切り無しに叫びをあげている。

下腹の奥底で男の精を求めて止まぬものが痙攣している。その感覚は目を離せないでいるアスカにまで伝染したかの様に感じられ、思わず自分の下腹部を更に強く手のひらで押さえつけ、淫芽を擦りつけてしまう。


「あっ、あっあっだめっ、ひうっ!来ちゃうっ!出して!お願い出してえっ!シンジの精がほしいのおっ!」
「さあっ、いくよっ、ああッ!君の子宮の中に全部出すよっ!」


少女は絶叫した。信じられぬ程弓なりに撓ると、ベッドに身を投げ出して果てた。
倒れ伏した少女の股間からずるりと少年の性器が抜け落ちた。
アスカは驚きに目を見開き、崩折れた娘の後ろで額に落ちた髪を掻き揚げた男の顔を見つめた。それはアスカが仄かな思いを寄せていた写真部の碇シンジだった。


「い、碇くん・・・じ、じゃあこの女の子は、やっぱり、ね、姉さん?」
「ちがうよ。この女の子は明日香姉さんじゃない。この子はアスカ。惣流アスカさ。」
「えっ!・・・うそっ、じゃあ、あたしは・・・」


うしろから、大きな岩のような強靱な手が、彼女の頭をわし掴みにした。


「や、やめっ、痛い、痛いぃっ!」


その腕に手をかけ、思い切り引き剥がそうとするが万力のような力で宙にずるっと持ち上げられた。
身体中の力がその圧倒的な筋力に服従し、力が抜け落ちた。
アスカの身体は力なくその場にぶら下がり、後ろから回って来たゴツゴツした腕が伸びて、辛うじて身に纏わりついていた半透明と化したレースのインナーを引き毟った。


「いや、だめぇ・・・」


弱々しい声。自分でそれと意識しないまま両眼から涙が流れ落ちている。
シンジは身を起こすと全裸で寝台の脇に降り立ち、ぶら下げられた少女の股間に手を挿し入れた。
夥しい愛液が迸るように熱く大腿部を伝い、流れ落ちていく。


「あっ!ひっ!」


「ほら、こんな屈辱を受けながら、君はこんなに感じて、絶頂を待ち切れなくなってた。僕のアスカはそんなはしたない女じゃあ、ないよ。君は卑しい娼婦の明日香さ。」


「うそっ!うそよっ!あたしは惣流アスカ、そうよっ、惣流アスカラングレーだもの。」
「タイムロックが解けたかい、だが君は惣流アスカじゃない、それは入れ替えられた君の記憶に過ぎない。君は身体も心も汚れ切った淫売に作り替えられ、どんな男の性器にも喜んでしゃぶり付き、精液をもとめ、腰をふるような女になっているんだよ。」
「あ、あんたは誰っ、シンジじゃあないわね、あたしのシンジがそんな事言う訳無い。」


そう言った途端、腰の裏に、べっとりと何かが張り付けられた。


「え、な、なにっ。」
「君の本性を見せてあげる機械。君の身体中の全ての感覚を正直にしてくれる。まあ、一種の電磁パルス装置だね。見ものだよ・・・って言っても君は主演女優だ、見る訳には行かないか。あはは。」
「な、なにをいうかっ!」


思わずカッとなり叫びを上げたがそれはすぐに粉々になった。
ぶん、という振動音がしたその瞬間、五感の全てが飛び散ったように弾けた。


「ぐ、あが、あっーーーっ!きゃううーーーーーーーーーっ!」


絶叫が部屋いっぱいに広がった。


「し、死ぬ・・・、し、死んじゃうぅぅ・・・っ。」


気が狂う、と言った生易しいものではなかった。全ての感覚が針を一杯に振り切った状態。
痛覚でも、撃たれ、切り刻まれ、腹わたを引きずり出されて生きたまま喰われた時のような、想像をを絶する感覚がアスカの身体に満ち、弾け、それが又瞬時に淫猥な快楽に変容し、フィードバックされるのだ。
残虐に扱われれば扱われる程その痛みと屈辱が、快感と喜びになって、数百倍にも感じられる程に膨れ上がって戻ってくるのだ。
その快楽の中でも、ひときわ大きな痛みと快楽が後ろからのしかかるように身体に流れ込んでくる。
頭と手だけをいつの間にか床につかされ、両腿は後ろの男が抱え上げたままだ。
引き割られた股間に、何か巨大なものが押し当てられ、白く丸い尻が蠢き、会陰が千切れそうなまでに両側に引き攣っている。
みしみしと、骨盤が音を立てて歪み、腸液と淫水が肛門を柔らかくしていく。


「あ、ひっ!あぐっ、や、やめてっ、お願いおやめてえっ。痛いっ、千切れちゃうっ!」


メリメリと後ろ側の筋肉が押し広げられ、赤くめくれ上がった場所に太く巨大な樹肉が押し込まれて来る。
涙が新たに噴き出し、激しくかぶりを振るが、押し入ってくるものは、何のためらいも、哀れみもなく、肛門をいっぱいに満たし、引き裂こうとしているのだ。
どろどろに溶けた自分の分泌物が恥ずかし気もなく巨大な異物を身体に取り込もうとしているのだ。


「どう? いい気持ちでしょう、アスカ。いや、明日香姉さん。」


 目の前に立っているのは、・・・シンジ?


「アッアッアッ、お願い、もう酷い事しないで! お願い、あっ、ぎゃあああああっ!」


必死の懇請は、全く無視されたまま激烈な痛みが走り抜けた。
ついに筋肉を軋ませ、異物がアスカを貫き通したのだった。
部屋中がアスカのこの世のものとも思えない程の悲鳴に満たされ、巨大な肉塊がアスカの中に根元までずぶずぶと沈んでいく


 あたし、お尻でこんなにまで感じてる。なんていやらしい。穢らわしい、・・・変態!


屈辱と痛みに目を見開き喘ぎ続ける少女。
次にその強烈な痛みが全く正反の感覚となってアスカを苛む。
アスカの肉体は喜びにひくひくと震え、歓喜の声を、アスカの意志と関係なく上げさせる。
もはやこの地獄のような感覚の繰り返しにアスカの肉は狂い、虜となっている。
そんな自分を責める気持ちが、まだどこかに残っていてそれがアスカを2重3重に苦しめる。
大粒の涙がぼろぼろと零れ、それを激しく頭を振りまわしまき散らすアスカ。
再び繰り返される残虐な、望んでも得られぬ、異様な快感、禁断の快楽。
アスカの脳がさらに怪しく染めあげられていく。


「ぎゃああーーっ!いやあああ、あ、あふうっ、あ、あああんっ、もっとっ!ひいっ!」


泣き叫びながら、肉の戒めの続きをせがまずにいられないアスカの姿は凄絶ですらあった。
白い身体には静脈が浮きあがり、全身の肌が濃いピンクに染まっている。 
何時間も続いている拷問に感じられるがほんの2、30分に過ぎない。
時間の感覚まで狂いだしてしまったのだ。じきに理性と正常な判断力が崩壊する瞬間がやってくる。


「お願い−ーッ!やめて、止めて下さいっ、お願いですから止めて下さいっ、ひいいっ!」


交互に襲い掛かってくる激烈な痛みと、耐えきれず、失禁しかねない程の快感に少女は屈服し、必死になって慈悲を乞う。恥も外聞も無く縋りついて服従を誓う。哀願する。


「お願いです、何でもしますからっ、どんな事でも従いますからやめて、やめて下さい!あっ、ひいいっ、うはう〜っ、はっ、はあっ、あはあっ、ひいぃーーーっ!お願いです、お願いですぅっ!」


再び頭をつかまれ、ぶら下げられ、貫かれたまま、アスカは手放しで泣きながら叫んだ。

自分の身体は頭を掴み上げられて弓なりに宙に反り返っており、手はぶらんと下に落ち、男の雄大な一物に肛門をを貫ぬかれている。男の左の手が少女の太股の付け根を掴んで、自分のモノにアスカを押し引きしている。男の手とそこだけで繋がっているのだ。
耐えきれない苦痛だった。陵辱の限りを尽くされた身体にはもう力が残っていない。
ぼろ人形の扱われ、後ろの男の腰巻きのような形にされたまま激しい抽送が続けられている。
それに逆らう事も、逆らう気力ももはや尽き果てていた。
この痛みと快楽の連続という苦しみから逃れる為なら、何だってしようと思った。
自分が死にそうな程の快感に喘いでいる、淫らな雌犬のような姿をシンジに見られているなんて耐えられなかった。

もう自分がアスカだろうが明日香だろうがどうでもよかった。
自分はもしかしたら、本当に、最下層の淫売として月日を送った明日香なのかもしれない、だったら、大好きなシンジにこういう扱いを受けても仕方が無いのかも知れない。
そう思った。
だったらせめて、そこにいる汚れないアスカと、一緒に抱いて欲しいと思う。
もしかしたら、こうして乞い願えばそれがかなうかも知れない。


 ううん、愛情なんかひと欠片も無くたっていい。シンジに愛された記憶が欲しいのよ!


確かに記憶の中にある、惨たらしい初夜の記憶や酒場での記憶の中にほんの微かでもいい、シンジに愛してもらえた記憶を一度だけでも。その記憶を栞のように挟んでおきたい。
彼女はそう思ったのだった。
この先、自分がどういう人生を歩もうとも、それさえ、その記憶さえあれば耐えていける、と。

それは奇しくも、明日香が望んでついに果たせなかった想いと同じだった。


「そう、じゃあ、こっちへおいで。」


信じられない言葉がシンジの口から零れた。
攻め立てる男が前進するままに、アスカはベッドに手を伸ばした。
明日香か誰か分からないもう一人の自分が、しきりにシンジに愛撫されて幸せそうに絡まっている。
嫉妬と口惜しさからか、何か分からない感情に突き動かされアスカは快楽の叫びに苦渋を滲ませた。


「し、シンジ、いや。その女を離してっ。あうッ、いやあ、その女を抱いちゃいやっ。」


あたしも抱いてと、泣き縋るつもりだったのに、口からは、つい生意気な言葉が漏れて叫んでいた。
自分が身も世も無く叫び声を上げ、尻に男を受け入れて快感に打ち震えていようとも、シンジが他の女を抱いているのが許せないという気持ちが爆発的に燃え上がったのだ。
気が着くと、泣きながらそう叫んでいたのだ。


「ふうん、まだそんな事をいうゆとりがあるんだ。」
「いや、いやあっ。シンジはあたしのものだもん!はがっ!あひっ!はあっ!」
「自分は、そんなにもういきそうになって尻を揺さぶって喜んでるのに?随分勝手なんだねアスカって。そういう子は嫌いだな。」


心に染み付いたその優しい笑顔。その笑顔に支えられ、さらに頼んでしまう。
既に何の抑制も効かなくなっているのだ。拒絶されるのが分かっているのに。そんな氷のような笑顔なのに。


「おっ、お願いだから、頼むから・・・他の、他の女を抱かないで・・・下さい。」
「何よぉッ、この女、誰なのっ。シンジ、あんた浮気してたわね〜〜っ!」
「アスカあ、僕は何にも知らないよ。ただ、この子があんまり可哀想だから。」
「何よ!どうせ何もしてやれない子に、情をかけるのはかえって残酷ってもんよっ。ほら、あの子縋り付きそうな目をしてるじゃない。あの子は所詮あたし達のプレイの為に呼んだ淫売の娘よ?期待持たせたら、かえって可哀想じゃないの。」
「か、可哀想でも・・・何でもいいから・・・せめて・・・。あっ、あぐううっ!抱いて、抱いて下さい! 哀れみでも、なんでもいい・・・からっ!はあっ、はああっ、はあっ、きゃああああーーーっ。」


再び激しい波が襲いかかってくる。自分を犯している男が、乳房を握りつぶしたまま、アスカの奥底を激しく抉ったのだ。
濁った頭の中にシンジの顔と、自分を弄んで通り過ぎていった男達の顔が次々と浮ぶ。
それにかしづき、身体を開き続けて来た自分の日々が生々しく甦る。
絶頂が近い、今度これを味わってしまえば自分の意識は木の葉のように舞い上がってしまう。
もう、どうしようも無くなって、ただケダモノのように交わり続けるに違いない。その前に!

その途端、後ろの男が全ての動きを止めた。恐ろしい程の空虚の反動が襲い掛かってきた。
何の意図かといぶかしむ間もなく、身体の奥底をねじ切られるような虚ろが襲った。
ホワイトアウト、身体が一瞬で禁断症状を起こしたように収縮し、心臓が縮み上がる。
常態となった快楽を欲して、目が眩んだ。


「ひあっ、だ、だめっ!いやああ、なんで、いやああっ!だめえっ!」


信じられない言葉を叫んでいた。ベッドの上のカップルも其の抽挿を速める。
喘ぎが高く激しくなり、白い尻を振り回すように、狂気のように狼狽え切って叫んでいた。
男は構わずに肛門からモノを引き抜きはじめる。瞬間、脳が活動を停止した。


 あ・・・


自分の乳房を男の手の上から握りしめる。切なさに爪をたてる。
息が詰まる、諤々と頭を振り回し、汗に濡れた髪がバラバラに乱れ散る。
唇が喘ぎ、ひゅうひゅうと音がする。溶鉱炉のような煮えたぎったものが下腹の中で、腰の奥で、どろどろと蠢き、噴き出す!
膣がきゅうきゅうと悲鳴を上げている。こちらも埋めて欲しいと切ながって鳴いている。
それが、もう耐えきれない、うずきが、身体中に、ああ、もうだめ、欲しい、欲しいのよっ。
少女は身を震わせ、我知らず固く目をつぶったまま口走っていた。


「御願いっ、抜かないでえっ!いやだあっ、だめえっ!」


自分の叫びに一瞬呆然とするアスカ。何てことを叫んだの、あたしは、あたしはっ。
その言葉を聞いた瞬間ベッドの上のアスカの唇の端が笑った。カッと顔中が煮えたぎった。
が、次の瞬間再び巨大なモノに貫かれた反動でアスカの心と意識は、再び砕け散る。


「あがうっ、あっ、それ、それえええっ。」


 激しく腰と尻を揺さぶり、男から受けられるものの事しか頭になかった。
 早く、一刻も早く満たして欲しい、熱い滾りを注ぎ込んで欲しいっ。
 ベッドの端に手を突いたまま、獣のように吠えている自分がいる。
 爪を立てた仄白い乳房から細い血の線が引かれていく。淫らきわまりない、淫獣のようだ。


「そこッ、ああ、そこおっ、お願い、来て、来てッ、来てエエエエッ!!」


 目に映る、ベッドの上の幸せなまぐあい。それなのに、それなのにあたしはっ!


 真っ黒な絶望。最後のささやかな願いさえかなわない、何もかも引き毟られた自分。
 もう2度とかなわない、穢れない身体を、シンジに愛される幸せ。


いや、それは幻想で、もともと持っていなかったものを、アスカとしての記憶から、この身体が引き
出しているだけなのかもしれない・・・


 あたしは誰!あの子は誰!
 ここでこうやって汗みどろに悶えているあたし達は何処でどう繋がっていたの! 


悲しみがいびつな形で少女を覆い始めている。
ベッドの上を睨む顔がうらめしさから、狂気の色を帯びるまでに時間はかからなかった。


ゴトッ。


ベッドの端から、黒い塊が重い音を立ててアスカの前に落ちた。


 拳銃・・・拳銃?


アスカは最後の力を振り絞って男の身体を蹴飛ばした。
其の黒い塊を手にしてトリガーを躊躇わずに引いていた。幾度も、幾度も。


バン!バン、バン!バンバン!


其のグロテスクな重々しさに反した以外と軽い銃声が響いた。

正面に居た金髪の少女の下腹部と胸と額に。
少年の眉間と鼻の下に、ぼつぼつと黒い穴が穿たれた。2人は悲鳴を上げて倒れた。
少年は仰向けに血を流し、少女はベッドの脇に、布団と一緒に転がり落ちた。
真っ白なシーツが物凄い勢いで血染めになっていく。
おそらく只の銃弾ではなかったのだろう。
少女のわずかに見える背中には大きな穴が、身体を吹き飛ばしたように開いていた。
砕けた肋骨の尖りが、血塗れのその穴から白く突き出している。
その白さだけが妙に現実的だった。


 これは夢?

 それとも現?


体を転がすように振り返ると、後ろから自分を貫いていた男は、消えていた。
あんなにも自分を責めさいなんでいたはずの男は、消えていた。
アレもまた、あたしの作り出した、まぼろし?



「あああっ、ああああっ、きあああああ〜〜〜っ!」



血なまぐさい部屋の中で、アスカは泣き叫んだ。


 姉か、妹か。そしてシンジ。
 皆、皆、あたしがコロシテシマッタ。あたしがコロシテシマッタ!



 あああっ、ああああっ、きあああああ〜〜〜っ!



泣き叫ぶアスカの姿が、薄暗いモニタルームに浮かび上がっている。



「このシステムを、僅かな間にお前が造り出したと言うのか。」
「惣流アスカラングレ−の全てを奪い取り、あたしに与えて下くれた方の言葉ではないわね。アスカは確かに天才。でもその能力は今や眠っているに等しい。ならばそれを使い切ってあげるのは、むしろ親切ってもんよ。」
「心なし、口調までも似てきたようだな。」


男は苦笑いしながら言った。


「今迄水槽の中で、リツコが必死になってコントロールして来たスーパーバーチャルの世界とこのあたしの造り出した現実のバーチャルワールド。どちらが被験者にとって効果的かは言うまでもないわ。これが夢ではないかと疑う所に人間は縋り付く事ができる。否定しきれなければ過負荷の体内毒物の分泌によって自らを狂わせても見えるものを見まいとする。あたしは、そんな事は許さない。狂気になんて逃げ込ませはしない。ドーパミンからあらゆる不安物質まで、全てこの部屋の中の人間はシステムの支配下に入る。痛みも、快楽も、その精神構造も感情も判断力も、幻想も。それがこの部屋の価値。もう一つの現実、現(うつつ)の価値の中に取り込まれるといい。」



明日香の高い笑い声が、泣叫び、血の涙を流すアスカの姿に被さっていった。



「あはははははは、あははははははは・・・!」

 

 

 

 

 

As.25-treat me nice-『現の価値を』 2002-7-20

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