『初夜の記憶』
komedokoro
2020-01-26 11:00am
「僕が、目を離しさえしなければ・・・」
真っ暗な部屋の中でシンジはベッドに腰掛けたまま両手で額を支えて俯いていた。
「プロの護衛が3人周囲にいて、3人が3人とも死体になった。もし、あなたがあの場にいたら、連れ去られいたか一緒に転がる事になったかのいずれか。今回はあなたがいなくて正解だった。護衛の増員が1日遅かったらその後さえどうしようもなかったわ。」
隣の部屋でここ数日徹夜でPCに張り付いたままのレイが珍しくシンジの独り言に応じた。
シンジはレイの、頬がこけるほど疲れきっている様子を見遣りながら、言った。
「それは結果論だよ。その上・・・その上アスカにあんな真似まで・・・くっ。」
「あなたの言ってる事は仮定に過ぎない。しかも多分に歪められた情緒的情報。身体の傷は、必ず癒える。」
「綾波は女の子だろっ! なんて事いうんだよっ!あんな事されてアスカが平気でいられる訳無いじゃないかっ。」
「それは男の子のそうあって欲しいという女の子への願望。・・・夢に過ぎないわ。あなた達、男が思っているより女の子はずっと強い。あんな事ぐらいじゃ、負けない。何回辱められたって、平気。」
「なんだってっ!アスカを侮辱するのっ!」
寝不足のせいか、ちょっとした事でいらついて爆発する。綾波も負けていない。
「何故それが侮辱になるの。碇君はあそこにアスカの舌を噛んで死んだ証拠でもあれば、満足だった訳? アスカはどんなに陵辱されようともあなたの元に帰ってくる為に辱めに耐えたかも知れないのに、あなたはアスカが穢れたといって泣き言を言い続けるつもりなのっ。」
「そんな事ッ、誰が言ったよ。」
「少なくともアスカは生きている。生きてるのがわかっていながら、次にやる事は嫉妬して泣いてる事なの。少しは恥ずかしいと思いなさいっ!」
ばしっ!
シンジの頬が激しく鳴った。シンジは呆然と立ちすくんだ。
「もう2、3発殴らせてもらってもよかったかもしれない。」
「あ、綾波・・・」
あのいつも物静かな彼女が感情をむき出しにし、激しく怒った所を初めて見た。シンジは気押され、驚きに固まった。
「恋人になったんでしょ。アスカ、ホントに嬉しそうだった。真っ赤になってあなたの事色々話してくれた。シンジがこう言った。
シンジがああした。シンジが・・あなたは何!アスカはいい時だけの御人形なの?彼女は本物の人間。捨てるなんて、赦さない。
諦めるなんて、赦さない!」
手に握っていた書類の束で、ばしばしとシンジを叩き続ける。
「ま、待って!待ってよ綾波! 僕はそんな事思ってないってばっ!」
その細い腕を掴んで押さえると、レイの顔から涙の粒が飛び散った事に気づいた。
彼女の前で少年は力なく呟やく。
「・・・ごめん。君にそう思われても仕方なかったよね。ここ何日か僕は本当に腑抜けだったよね。心を入れ替えて頑張るから、だから赦してよ・・・綾波。」
「これ・・・今さっき入って来た情報。千葉で双児の金髪で青い目の少女を見かけた人がいる。多分先日アスカと入れ替わろうとした何者かが、アスカをここに何かの方法で軟禁してるんだと思う。女の子と2人だけならあの人が逃げられない訳がない。何かある。」
シンジは、レイから渡されたその書類を貪るように読み、輝く目を上げた。
「九十九里浜の南方、千倉って・・・っ?」
「五枚目あたりに地図を入れておいたわ。島になっているから荻窪から漁船をチャーターするのが一番早いと思う。葛城3佐はもう向かってるみたい。ネルフの特務も。」
「特務?保安部ではなくて?そんな部署は聞いた事無い。」
「色々秘密の多い組織だから。今迄潜んでいたのが動き出したと言う事は、今度は当たりの可能性が高いと言う事ね。」
シンジは部屋に飛んで戻ると、ミサトに預かっていた拳銃を勉強机から取り出した。戻ると、綾波レイもまたカーキ色の防弾チョッキとズボンに着替えていた。
「そ、その格好は?綾波。」
「私はもうエヴァに乗れない。その替わりにずっとこういった対人護衛の訓練を受けていたの。あなたとアスカを守る為、私の生き延びた意義を探す為に。」
シンジは、混乱したままレイを抱きしめた。固くかたく抱きしめていた。
「ありがとう。・・・ありがとう、綾波。」
「当たり前の・・・事だもの。私達は友達なんでしょう? 絆を、守りたいから。」
「そうだ。そうだよね、アスカを僕らが守るんだ。絶対守ってみせなけりゃ。」
「碇君の分もある。早く着替えて。」
シンジは頷くとレイを離して、素早く同じ格好に着替えた。その間にレイは靴箱の奥から重い軍靴を出し、あっという間に紐を編み上げて履いた。
「碇君は車の中で履けばいい。いきましょうっ。」
2人は一散にマンションの階段を駆け降り待機していたネルフのRVに飛び乗った。
車輪を軋ませるようにして、猛然と車両が飛び出して行く。
「お疲れ様ですっ。これを。」
助手席にいた若者が、シンジ達にレーションケ−スを渡してくれた。現金な物でこの数日、まるで喉を通らなかった食物を目の前にして、猛然と食欲が湧いた。水筒の水を飲み干し、コンビーフの缶詰めと味付け飯を一度にあけると、ガツガツと食べはじめた。食べるだけ食べると眠くなった。座席の後ろの荷台には余裕があったのでシートを乗り越えて横になる。たちまち眠ってしまった。
「アスカ、大分調子が出て来た様ですね。」
「いいえ、まだ身体は疲労が蓄積している。そう簡単に考えてはいけないわよ。十分なメディチェックが必要よ。まずは・・・のステップを・・・反応を・・」
往診にやって来た女医が難しい顔でいう。一緒にやって来た、ほっそりした助手の女性は、アスカの身体のあちこちに貼られた心電図?の波形をじっと眺めている。こんなもので躰の調子が分かるなんて凄いなあとアスカは感心した。言っている事は難しい専門の言葉が多くさっぱり分からない。その横に姉の明日香が立ってる。・・・何のかんの言ってもやっぱり姉ね。あたしの事、そんな難しい顔するくらい心配?
「今迄になく回復が遅いわね。・・・さあ、あなたはもういいわ。お薬を打ってあげるからもう暫く眠りなさい。」
「え−。もう寝あきちゃったなぁ。」
本当に、もう寝ているだけなのは真っ平だった。身体が動きたがってる。
「それは科学的ではない表現ね。寝飽きるなどという状態は存在しないわ。」
「はあい。」
(優秀な先生なのかも知れないけれど、この先生は何か苦手だなあ。)
アスカはそう思いながら隣室に戻リ、ベッドに横になった。
助手の先生がついて来て注射をした。
「さぁ、数を数えて御覧なさい。」
同級生といってもいいくらいの童顔。考えたらこの人も不思議な人だ。
「1・・・2・・・3・・・・・・4・・・・」
5を告げる声は口からでなかった。
「ステージ2・・・もう少し潜らせましょうか。ドパレヴェルは?」
(「・・・何のことだろう。」)
身体がベッドの中にずぶずぶと沈み込んでいくような感覚。
何処迄も沈んでいくと、魂だけが身体を残し、更に沈んでいくようだ。
ほら、ずっと上の方に小さく身体が見える。
豊かで長い金色の髪、白い腰と尻・・・投げ出されたような四肢が・・・
・・・ここは、どこ?
真っ暗な部屋の中だ。上半身を起こそうとしたが、ほんの僅かしか身体が動かない。
まぶたも・・・微かに開くだけだ。焦点をはっきりさせられない。
ぼんやりと、暗いという事を認識させる為のようなかすかな灯りが点っている。
まるで、ろうそくの灯りが滲んだような、赤味のかかった揺れる光だ。
・・・酷く、眠い。アスカの脳は相変わらず痺れた様な不快感を訴えている。
熱にうかされたような火照りが全身に回って、だるくて仕方がない。
「こちらでございます。」
え?誰かが入って来た。
「うん、ごくろうさんだったね。」
「ありがとうございます。では明け方までの5時間、ごゆるりと・・・」
男の、人! ええっ!
(「約束が違うッ。まだ、ずっと先だったはずっ。」)
・・・何よ、約束って。ここはどこよっ。
男が立ち上がって少女の枕元に立っている。じっと・・アスカを見下ろしている。
その男は屈み込むと、布団の襟元をめくった。真っ白な綿の襦袢に練り絹の白帯。
男の指が、アスカの桃の花びらのような鮮やかでつややかな唇をなぞっていく。
背筋が凍るような恐怖と、全身をぴりぴりと走る鳥肌が立つ程の嫌悪感。
柔らかく清楚な唇の感触を指が存分に味わうと男は指にべっとりと唾液を垂らす。
指に滴るそれを、自分の唇に垂らそうとしているのを理解した瞬間、渾身の力で、アスカは叫びを上げようとした。しかし、それはかなわない。僅かにまぶたの上の長い睫が震えただけだった。唾液で濡らされた唇は露に濡れた薔薇の花びらの様に輝いた。その感触を男は目を細めて再び味わう。その指が唇を割って、内側の更に優しい粘膜の部分に迄触れてゆく。
むっとするような男の匂いに吐きそうになる。だが実際には何も起らない。真珠のようなきらめきを放つ小さな歯が、綺麗に、何かを待っているかのように行儀よく並んで男を待ち受けている。男ははその優しく小さな顎に指をかけ、持ち上げる。
美しい細い首筋はまだ少女のものだ。しっかりと合わさった和服の襟元から、毅然とした様子の日常が伺われるようだ。だが、それはいま何の抵抗もできずに男の指のなすがまま、襟元を開かれていく。更に布団がめくりあげられ、まるで人形のようになって動けずにいる少女を冷たい視線が見下ろす。
この生き人形を得られる位置に来る迄に支払った代償が男の思いの中を一瞬のうちに通り過ぎる。この少女こそがその屈辱や恐怖や賭に打ち勝った証。忍従と努力と死線をかいくぐるようなビジネスの刃の上を渡って、この日の為に養われた少女を蹂躙する権利をこの国家の裏の総意として認められた証。支配者として、国の法の上位に受け入れられた標。この少女こそが自分の半生を形にしたものなのだ。別段この娘に価値がある訳ではない。この娘を『与えられたこと』に意義があるのだ。
この少女を家に連れ帰って飼い続けているものもあれば、この娘をしめ殺して快哉を叫ぶものもある。ナイフを突き立て腹を裂き血を啜り、肉を喰らった者もあったと聞く。褒美はどのような形に処分してもよいのだ。
だが、男は別にその種の変態的趣味を持つ人間ではなかった。ごく普通の男が女に求めたいと思っている行為を、普通に行おうと考えていた。但し、自分の欲望の儘に。禁忌とされている行為全てを行おうと思っていた。それが男の祝杯であった。
明日からこの少女がどのようになるかは知らない。知らない方がいいのだ。道端の小石に脚を取られるつもりはなかった。まだ、明日からがある。そう男は思うゆえに、今夜を十分楽しむ気になっていた。遠慮も怯みもなかった。
趣味のよいネクタイとシャツを脱ぎ放ち、ズボンと下着を投げ捨てた。
男の股間にはその履歴そのもののように、隆々とした気概に満ちたものが立ち上がって、天を突いていた。男は少女の着物の胸を覆う着物を両側に一気に拡げた。
馥郁とした娘の香りは、全身に焚き込められた香の薫り。それが非常に高貴なものである事は男も聞いていた。だが、それに比べて余りある程に娘の身体は真珠の様な輝きを放っていた。これほどの女の身体は抱いた事がないと男は思った。恐らくまだはたちにもなっていないであろうその少女の肢体は、この先どれほどの男の精を注がれ、飲み込み、輝くのであろうか、恐ろしい程だった。
最初の男でよかったと言うべきかな・・・次に出会った時には俺が喰われる。
柔らかな腹の上の帯を解き、青白くさえある肢体をすっかり曝け出させ、男はその身体を十分に鑑賞した。けぶるような下腹部の翳り、可憐な腰回りのラインと、それに反して十分に成熟したような乳房。だがその感触はまだ固く、腰の肉づきも、青さが残っていた。大腿部もまだ少年のような筋肉が残り内腿にやっと付きだした女の白い脂肪がまるで極上のラードのように指を吸い込む。自然に滴り落ち始めた最初の女の雫を楽しむと言う趣向なのか。おそらくよく眠っているとはいえ、無意識のうちにもこれから行われる男女の営みに、少女の肉体は耐えきれず悲鳴を上げ悶え苦しむであろう。血まみれになった少女を更に獣欲の虜になったまま無慈悲に苛み、蹂躙する自分の姿を想像して、男は陶然となった。
小机の上に置かれている小さな蓋付きの陶器の壷。蓋をあけると男はそれを少女の下腹部の上で傾けた。糸のような細い滴りが、娘の腹の上に文字を描くようにうねった。その雫の糸は下腹部から太股、少女の翳りに注がれさらに両の乳房と細い腕と可憐な首筋とニの腕に垂らされ、続けて男の手のひらがそれを、にちゃにちゃと音を立てながら塗り広げていく。少女の身体は香油によって僅かな光を照り返らせ清楚な故の淫靡で淫らな姿態をさらけだす。その柔らかな曲線が描く翳が男を誘い目を背ける事を緩さない。男の獣欲を最大限に迄引き出す姿態。汚辱にさらし、穢してやる。この精霊のような娘を2度と人目のある所へ出られない程に、醜く醜悪に、粉々になる程。
・・・ああ、やめてぇ・・・もう、気が狂ってしまう。
・・・碇くん・・・ママ・・・助けて・・・助けてようっ。
何の反応も示すことができぬままに、アスカはこの悪夢の中でのたうっていた。
現実でないとは思っていた。
夢に違いないとも思っていた。
だが、この夢は何時まで経ってもさめることがない。
それどころか、信じられないことに、はっきりとした快楽が身体を蝕むのだ。
見知らぬ男に僅かづつ開いていく身体。
嫌悪と嘔吐感の連続の中で、確実にアスカの身体はそれに応じて開いていく。
身体が男の指を追おうとうごめく。信じられない、その自分の淫らな動き。
指が乳首をなぞる度、動かない筋肉と声帯が、本当は痙攣を繰り返している。
そして、快感にどろどろになった、はしたない濡れきった叫びを、ひっきりなしに上げたがり、ひくついている。
その事を、アスカは嫌という程、思い知らされていた。
だめっ!
だめっ!
だめええっ!
アスカは自ら脚を大きく広げ、男の逞しい物を本能的に求め、腰を持ち上げて中心を打震わしている自分の姿をありありと想像した。秘裂からは透明な蜜液が溢れ返り、視線を定められない瞳は性欲に濁り、愛らしい口元からは涎が糸を引いている。
その淫らきわまりない姿態を曝す事で、さらにさらに欲望に火が付き、重なっていく。荒れた息は甘い吐息を男に吹き掛け、更に下腹をうねらせ、幼いながらに男を導こうと、腰を振り立てるのだった。気の触れた娘は男の精だけを求め、淫靡な汗を全身に噴き出させ、さらに息荒く男の固いものを待ち受けているのだった。
・・・お願い・・・ああ、おねがいっ・・・
だめえっ!
髪をうち振り、抵抗しようとしてみる。だが自分でそれを否定する。
・・・あたしを、あたしを貫いて血塗れにしてっ。
再び濡れそぼった腰を縦に振る。脚を開く。淫唇が割れる。
いやあああっ!
淫らきわまりない指がそこをこすり上げ、粘液がさらに溢れていく。
その蜜が雪のような内腿を垂れ落ちていく。
この、焔の煉獄から救われるには・・・
・・・犯して。はやくあたしを侵して。激しく!淫らに!あたしを壊して!
・・・あ、あなたの、逞しい幹で・・・あたしを串刺しにしてぇっ!
真っ白に、記憶が、全ての人格が崩壊し、火焔の中で燃え、舞い上がり、散り散りに消え去っていく。
・・・もっとッ!もっとよッ!
いやぁッ、助けてエッ、あたしが、消えちゃうっ!
・・・たすけて・・・ ・・・シンジ・・・
自分の中に潜む獣そのままの性欲の迸りにアスカは怯えた。怯えながらさらに求めた。誰とも知れぬ男の分厚い唇と舌が、両足を抱え上げ肩に各々の脚を載せアスカの股間を喰らうように舐め続け、蜜水を吸い上げ、女芽を嚼み続ける。身体の筋、ただひとすじも動かせず、掠れ声一つ上げられぬままその強烈な快感を局部と脳の感覚器だけが受け止め続けている。何一つ堪える事もできず、ただ秘裂から泉のごとく溢れる蜜液と、反応する大量の涎と全身から噴き出す汗だけが、娘がこの世で与うられる限りの快感を送り込まれ続けている事を示している。淫靡な音が部屋を満たしていく。息遣いとその音だけが満ちている。
身体に塗り込められた香油が肌と肌の僅かな接触からも強烈な快楽を脳髄の中心に、叩き込んでくる。その立ち上る蒸気が、一息毎に更に性の深淵へとアスカを引きずり込む。身体の形が崩れる・・・線が無くなってほどけていく。何処迄が自分の身体か分からないままひたすら強烈な怒濤にもまれ続け砕ける。
何もかもが、意味を持たなくなる。お前は卑しい淫売だと誰かが囁く。股間を広げ、男達の目の前にその部分を曝し、両手の指で唇陰を押し広げる。そこからは淫液が溢れ返り、男の野卑な歓声が轟く。酒場の大きなビールの樽の上でアスカはその行為を身をうち震わせる程の快感を持って行っている。疳高い快楽の声が押さえられない。スカートをめくり上げ、真っ白な股間と腹を胸の下迄曝け出す。細い可憐な指が一番敏感な部分を摘まみ上げ、揉み扱く。裂け目に這わせた指を激しく動かす。
涙。快楽に喜びの涙と屈辱の涙が流れ出す。手を伸ばしてそこを抉る下卑た男達の指を、背中がしなる程の喜びを持って感じている。何度も、何度も、数えきれない程の絶頂。更に指を3本、4本、ラム酒の瓶の口迄使って快楽を求めている。
いやっ、アスカは何をしているのっ!
『見ろよ、この娘、自分で止める事ができないんだぜ!』
あたしじゃないっ、あたしじゃないっ、あんなのあたしじゃないっ!
そう?あれはあんたの姿。心の底からあんたが望んだ姿。
あんたが心底望んでいる愛の形・・・爛れ、溺れきった軟体動物の粘膜・・・
蔑みの笑い、次々に吐きかけられる侮蔑の唾。その唾が美しい顔を流れ落ちる。
その男達の顔が・・だれ?あんたは誰・・・あんたは・・・ああ愛おしいのは。
ああっ、ああっ、あああああっ、そうよ、もっと、もっとよっ!もっとっ!
あう、あうあ、ひいぃっ。もっと、して、してよぅっ。
あ、ぐうっ、あ、あああっ!ぎゃああああーーーっ!
次の瞬間、アスカは尻に突き立てられた男の巨大な塊に悲痛な叫び声を上げていた。
「あああっ、あああああ〜〜〜っ!」
初めての声、初めての叫び、初めての抗い。吹きこぼれる涙。
激しく揺れる少女の身体に、男は獣となって全身で襲い掛かる。
少女は喰らわれる雌鹿のように倒れ、男に犯されるまま蹂躙され、悲鳴をあげる。
激痛の中で泣叫ぶ声に、全くお構いなく男が情け容赦なく責め立てる。その激痛が不思議な程簡単に転換し、尻を思わずうち振り悶え泣きしている自分を見い出す。
男が終って抜き出された肉樹に纏わり付いた、大量の鮮血と白濁した泡と粘液。自ら滴らせた獣液の迸りが真っ白なアスカの内太股に映え、流れていく。それを最後に確かに見届けたような気がした。男は尻から抜き出したそれをやっとアスカが求めきっていた膣口へとあてがう。喜びに、動かないはずの身体が男の肉幹を締め付ける。それが終った後は男にしがみついてでもあれを口いっぱいに頬張り、舌で味合わせてと懇願しようと思い、その痴態を想像して、ぞくぞくと身体に込み上げるものがある。
諤々と全身の筋肉が痙攣した。一段と高く、喜びとも悲しみともつかぬ嬌声が響く。
アスカは、夢とも現(うつつ)とも付かぬ世界で尽き果てた。
白衣姿の研究員達があわただしく出入りしている。先ほど迄のごく平和な室内は、一転して壁から現れた計測機器に埋め尽くされている。Jネルフの誇る移動式研究部隊が、この建物に巣喰っていたのだ。
巨大な水槽が部屋の中にセットされている。その中に、ごく薄い蛍光青の液体が満たされている。金色の髪をその液体にたなびかせた少女の身体が、びく、びくびく、と不規則に跳ねている。それに呼応するようにもう一人の、そっくりな少女の身体も同様に痙攣している。2人の身体には、無数のコードが取り付けられ、その頭部を覆う様にフルフェイスのヘルメット様の器具が取り付けられている。童顔の助手が金髪の上司と思われる女性に目を輝かせて話し掛けた。
「すごい・・・今迄の処理速度の優に2000倍以上ですね。」
「神経ポッドの指定点に的確にパルスを打ち込めるように改善したのよ。これでレイの時にはまる1日以上かかっていた記憶の移行が速やかに行えるようになったわ。」
「これでメモリーの書き換えもずっと速やかに行えるようになりますね。先輩。」
「これで全くの同記憶を持つ検体が2つ出来上がる。本来我々の考え通りに調整可能であるように作られていた人形に自由意志を持たせた事自体が間違いだったのよ。2号はそれでも我々の管理下にずっとあって全てのデータが揃っていた。でもアスカは、実験的にも余りに自由に振る舞わさせ過ぎた。息子に最後に仏心を出すとはあの人もまだ甘いと言う事ね。」
身体をわずかにうち振りながら、検体とよばれた少女達はわずかに喘ぎたまに口から泡が昇っていく。投げ出された四肢の肘や膝、腰が振られている。
「ふん・・・不様ね。明日香の初夜の記憶を手繰って流し込んでいる辺りかしら。」
「現在、15才を通過中です。16にかかり始めています。」
「自分達自身が忘れてしまっていた記憶も今回流し込んでいるから。また後でワッシュアウトして整えてあげるわ。それ迄せいぜい腰を振っているといい。アスカ・・・あの人の心をついに手放さなかった女の息子、その彼女だったのが不運だったかもね。いえ・・・どちらにしろあなたに、人としての喜びを与えたりなんかさせない。」
後ろ半分のつぶやきは既に呪の言葉だったかも知れない。
目を細めた女は金髪を揺らし、そこでモニターを操作している後輩の白衣に手を回した。
襟元に滑り込んだ指がブラジャーの中で乳首を指先で絞り回す。
「これが一区切りついたら・・・あなたも休ませてあげる。」
「は、あっ・・は、はい・・・。」
真っ赤な顔をした若い助手が悲鳴じみた息を吐き出して答える。
「ふ・・・マヤ。早く欲しかったら仕事を早くね。」
「は、はい・・・・」
ミサトが必死で探している赤木リツコは、婉然と微笑むと煙草をくわえ、火をつけた。
そして細く長く、煙を吐き出した。サングラス越しの視線は誰にも見えない。
そのサングラスの下から、2筋3筋、続けて涙が線を引いて落ちた。リツコはそれに気づくと苦笑してハンカチでそれを拭った。
「作業、アップ体制に入って下さい。」
マヤの声が流れた。
サブスタッフ達の動きがあわただしくなった。
As.-treat me nice-24 『初夜の記憶たち』 2002-07-01