アイドルパロ side蔵之介


※隠岐→蔵 ポンコツがアイドル、隠岐は蔵之介のオタク

「か、可愛い〜!!」

スマホを見つめてそう言いながら、デレデレと表情を崩す隠岐。そんな彼を見て、同じクラスであり同じ生駒隊隊員である真織はため息をつく。

「あんたそんなだらしない顔してたらファンの女の子減るで」
「そんなんおらんわ。それより見てや!さっき更新された蔵之介くんのインスタ!」

真織の言葉など聞こえていないかのように、隠岐が画面を見せてくる。そこには猫の写真と共に『かわいい』という文字が添えられていた。その投稿に付けられたいいねの数は投稿してから10分と経っていないにも関わらず500を超えており、彼がいかに愛されているかを物語っている。

「猫の写真あげて『かわいい』やって!確かに猫も可愛いけどこれ投稿してる蔵之介くんも可愛くない!?」
「……まあ、それは同意するわ」

隠岐の意見に同意しつつ、真織は再びため息をつく。

(ほんま女子みたいな思考しとんなぁ)

隠岐自身、ボーダー内の女性陣からよく「王子様みたい」「綺麗な顔をしている」と言われているのだが、当の本人は二人組男性アイドル「KK」の吉本蔵之介の大ファンであった。それも、所謂「リアコ」と言われる、推しを恋愛対象として見ているタイプのファンである。

「はぁ……可愛いなぁ……どんな顔でこれ投稿したんやろ……可愛い……」

スマホを眺めてうっとりとする隠岐を見て、また始まったと言わんばかりに真織はまたため息をつく。この状態の彼は放っておくしかないのだ。

「あ!!そうや清嗣くんの方のインスタをチェックすれ……ば……っ!!!!」

ビターーーン!!!と大きな音を立てていきなり机に突っ伏した隠岐に驚き、真織は彼の方を向いた。

「ど、どうしたん!?」
「……死ぬかもしれん……」
「何があったんよ!?」

真織の問いかけにも答えず、隠岐はただ静かに涙を流す。そして無言でスマホの画面を真織に差し出す。
そこに表示されていたのは蔵之介の相棒、清嗣のインスタで、猫の写真を撮る蔵之介を後ろから撮影した写真と共に「めっちゃご機嫌で写真撮っとる笑」という文章が添えられている。

「見てっ……この……可愛らしい後ろ姿……!ほんでご機嫌で写真撮っとるんやって!かわいすぎるやろ……!!」

熱く語る隠岐だが、真織にはいまいち理解ができない。

「まぁ……よかったな」
「うん!!!!」

蔵之介くんの写真見たかったら蔵之介くんのインスタより清嗣くんのインスタ見たほうが早いんよな〜と独り言のように呟く隠岐に、真織はふと疑問に思った事を尋ねた。

「隠岐ってさぁ、その……蔵之介くん?と付き合いたいって思ってるタイプのファンなんやろ?」
「うん」
「蔵之介くんに彼女とかおったらどうすんの?」
「ぐふぅ……っ」

その質問を受けた瞬間、苦しそうに胸を押さえて倒れ込む隠岐。

「や、やめてマリオ……それは……それは禁句や……っ!」
「え!?ご、ごめん!!」

なんとなく聞いてみた質問だったのに、隠岐が大ダメージを負ってしまったことに真織は焦りを感じる。慌てて話題を楽しいものに変えた。

「あっ、えっと、じゃあ、例えばどんな流れで蔵之介くんと付き合いたいとかあるん?」
「…………え〜?」

打って変わって頬を染め、もじもじとし始める隠岐。オタク特有の情緒不安定に真織は若干引きつつも、それを気にせず隠岐は楽しそうに話し出す。

「やっぱ、偶然の出会いってええよな〜!例えば俺がバイトしてるとこに偶然蔵之介くんが来て、『あ、いつもライブ来てくれてる人』って話しかけられるねん。んでそこからなんだかんだ仲良くなって、連絡先交換することになって〜♡」
「あんたバイトしてへんやん」

妄想を語り始めた隠岐に、真織は鋭く突っ込む。

「妄想やから細かいことはええの!とにかく街中とかで偶然蔵之介くんに出会って、そこから仲良くなって俺から告白して付き合うことになりたいの!わかる!?」
「いや全然わからんけど」
「なんや冷たいなぁ」

冷たく返されてぶーたれる隠岐だったが、すぐに気を取り直して再び語り始める。

「はぁ……防衛任務中にたまたま危ない目にあった蔵之介くんを俺がカッコよく助ける日とか来んかな……」
「そんな漫画みたいな展開現実にあるわけないやろ」
「そりゃそうなんやけどさぁ……」

ぶつぶつ言いながらも妄想を続ける隠岐を見て、真織は再びため息をついた。



***



『隠岐!南西50メートルのとこに民間人おるみたい!助けに行って!』
「了解」

その日の夜、生駒隊の防衛任務中にイレギュラーゲートが発生。警戒区域のギリギリ外だったようで、隠岐はグラスホッパーを使ってその場へと急いだ。
トリオン兵が民間人に襲いかかる瞬間だったので、攻撃よりも救助を優先し、襲われていた人物を抱き上げて一度距離を取ってからアイビスで撃ち抜く。

「は〜……焦ったわ。大丈夫ですか?」

くるりと助けた民間人の方を振り返り、隠岐はピシリと固まった。

「す、すげぇ……」

キラキラと尊敬の眼差しでこちらを見つめてくる「助けられた民間人」は、隠岐が愛してやまない蔵之介その人だった。

(も、妄想が現実になった……!!!!!!!!)

隠岐は思わず感動し、ぎゅっと目を瞑って天を仰ぐ。

「ありがとうございます……!!あの、ボーダーの方ですよね……?今のめっちゃカッコよかったです!」

ニッコリと笑って礼を言う蔵之介に、隠岐は内心悶えまくっていた。

(ウワーーーーーーーーーッッ!!!推しが目の前に!!!!しかも俺に笑いかけてくれてる!!!!!!!!)

「い、いや……あの……ありがとうございます……」

なんとか平静を装うものの、隠岐は今にも昇天してしまいそうな心地であった。

「もし良かったら今度お礼さしてください!美味しいもんご馳走するんで!」

ボーダー隊員として活動していると、助けた民間人からこういう言葉をかけられることは多々ある。純粋な厚意であれ、女の子からの下心満載な誘いであれ、隠岐は常に「当然のことをしただけなんで気にせんといてください」とだけ返してきた。
しかしこれは推しに近づける大チャンス。いつものように断ることができず、欲望の赴くままに頷く。

「じゃ、じゃあ……あの、言葉に甘えて……」
「はい!」

大好きな推しの満面の笑みを間近に見ながら、隠岐は嬉しさと興奮で卒倒しそうになった。



***



「……ってことがあったんやけどさぁ!!」
「そんな漫画みたいなことほんまにあるんや……」

防衛任務終了後、隠岐は興奮冷めやらぬ様子で真織に語った。

「なになに〜?珍しく大興奮やん。何があったん?」

にゅっと現れた生駒が話に加わる。すると隠岐はさらにヒートアップして、先程の出来事を語り始めた。

「それがですねイコさん!さっき助けた民間人が俺の推し、蔵之介くんやったんですよ!!」
「蔵之介くん?」
「助けた人がたまたま隠岐が大好きなアイドルやったんやって」
「え?なにそれ。漫画やん。すごない?」
「でしょ!?」

生駒が驚いたように言うと、隠岐はドヤ顔を浮かべて同意を求める。

「んで、その後どうなったん?」
「なんと……!『今度お礼にご飯ご馳走するから』って言ってくれて!LINE交換しちゃいました……っ!!」
「キャーーーッ♡やったわね隠岐子!」

表情はわかりにくいものの、生駒はテンションが上がったらしく、両手で頬を押さえている。そして何故かオネェ口調で隠岐のことも隠岐子呼ばわりし始めた。

「いやぁ……俺、今日命日かもしれません」

隠岐が感極まったのか、目元を抑え始めたので、真織は慌てて隠岐の背中をさすった。

「あんたはもう……すぐ死ぬかもとか言い出すやん!でもよかったなぁ」
「うん……。まさかこんなことになるなんて……」

真織の言葉に隠岐は目元の涙を拭いながら答えたが、不意に真面目な顔をして呟いた。

「俺、絶対に蔵之介くんと付き合う……」
「はいはい」

また始まった、と思いつつも、真織は適当に相槌を打っておいた。
すると隠岐のスマホが通知音を鳴らす。隠岐は即座に反応してポケットからスマホを取り出し、ロック画面で通知を確認する。

「はぁぁぁ……!!!蔵之介くんからLINEきたぁ……!!!!!」

興奮のあまり隠岐の手は震えており、スマホを落としそうな勢いだ。

「隠岐!落ち着け!スマホ落として壊れたら蔵之介くんの連絡先がパァやで!!」
「はっ……!!!」

生駒の一言により冷静さを取り戻したらしい隠岐は、ごくりと生唾を飲み込んでロックを解除し、蔵之介とのトーク画面を開く。そこには「こんばんは。さっきはほんまにありがとうございました。隠岐くんでええんよね?なんでもご馳走するから好きな食べ物教えてくれへん?」というメッセージが届いていた。

(推しが俺の名前を呼んでる……!!!!!!!!!!!!)

その事実だけで隠岐は幸せでどうにかなりそうになり、スマホを両手で胸に抱き締めて思わず天を仰ぐ。

「やっぱり今日が俺の命日かもしれん……」
「隠岐ーーーー!!!!」

LINEが来ただけでこんなに死にそうになっているのに、付き合うなんて本当に出来るのか?と思いながらも、真織は隠岐の恋路がうまくいくことを祈らずにはいられなかった。



***



隠岐が蔵之介と初めて会話を交わしてから1週間ほど経った。隠岐は生駒隊作戦室でソファに寝転がりながら、ぼへぇ……っと天井を見つめていた。

(蔵之介くんと付き合いたい……)

隠岐はそんなことを考えながら、この前蔵之介と交わしたやり取りを回想していた。
あの後、隠岐はさりげなく自分の好物を伝え、それを聞いた蔵之介は「了解!楽しみにしててや!」と返事を送ってくれた。そしてそれから何度かやりとりをしているのだが、未だに進展はない。
相手が多忙なためご飯に行くタイミングがなく、結局3日後の金曜日、つまり出会ってから10日後になった。LINEでやり取りはしているものの、それでもまだ最初の1回しか会っていないのだ。このままでは一生恋人になれないのではないか、と隠岐は不安になっていた。

(まぁ……アイドルとそのオタクやし……男同士やし……そもそも難しいやろうけど……)

ズン……とどんどんネガティブ思考になってゆく。隠岐はソファの上でごろんと寝返りを打ち、再び天井を眺めた。

「はぁぁ……」

大きな溜め息をつくと、隠岐は身体を起こして頭を抱えた。

「どうやったら蔵之介くんに恋愛対象として見てもらえるんやろ……」
「そんなん知らんわ」

独り言に返答があったせいか、隠岐はビクッと肩を大きく揺らす。振り返ると、いつの間に来たのか、扉の前には呆れたような表情をした水上が立っていた。

「水上先輩……」
「なに暗い顔しとんねん。いつものポジティブさはどこいったん?」
「だって……蔵之介くんと全然進展がないんですもん」
「そらアイドルと一般人じゃ接点がなさすぎるからしゃあないやん」
「わかってますよぉ……。男同士ってのもハードル高いですしね……。せめて俺が女の子やったらよかったのに……って思うときありますわ」

しゅんと項垂れる隠岐を見て、水上は「ふぅん」と言って腕を組む。

「蔵之介くんって同性の恋愛に偏見あるタイプなん?」
「え?……いや、そんな事ないと思いますけど……」

友達に同性カップルがいて、その二人が幸せそうで嬉しいと話していた事もあるし、偏見などはないと思う。

「だったらええやん」
「え……?」
「性別とか関係なしに、蔵之介くんはお前のことが気に入ってるから、食事に誘ってくれたんちゃうの?」
「……っ!」
「恋愛対象としてじゃなくて、まずは人間として好きになってもらうとこから始めれば?」
「そっか……。確かに、まずは信頼関係を築くとこからですよね……!」

隠岐はハッとした表情で呟く。そしてしばらく黙った後に、勢いよく立ち上がった。

「ありがとうございます!なんか元気出ました!!」
「おう。よかったな。頑張りや」
「はい!!!!」

そうと決まれば早速蔵之介とのご飯の時に着て行く服を考えなければ、と思い立った隠岐は、急いで作戦室から出て行ったのであった。



***



約束の金曜日になり、隠岐はソワソワと落ち着かない気持ちで通された座敷に座っていた。何が好きかと問われ、和食が好きだと答えたら高級料亭を予約してくれた。流石にそんな高い食事を奢ってもらう訳には!と言ったものの、お礼だから気にしないでと言われてしまった。
蔵之介の優しさにキュンとしながらも、隠岐は緊張で吐きそうになっていた。
仕事で少し遅れるから先に入っていて欲しいと連絡があり、「すみません、吉本で予約してくれてると思うんですけど」と店員に言うと奥の方の個室へと案内され、こうして待っているわけである。

(蔵之介くんまだかなぁ……)

期待と緊張で胸がバクバク鳴っている。しかし、暫くすると襖が開き、待ち人がやってきた。

「ごめんなぁ、待たせてもうて」
「いえいえ!!全然大丈夫です!!」

蔵之介の姿を見た瞬間、隠岐は心臓が止まりそうになった。カジュアルな私服を着ており、オフ感満載だ。髪はセットしておらず、服装に合わせたナチュラルな雰囲気の髪型になっている。

(推しがかっこいい……)

隠岐は思わず口元を押さえながら天を仰いだ。

「隠岐くん?どないしたん?気分悪い?」
「あっ、いや!なんでもないです!」

心配そうに顔を覗き込まれて、隠岐は慌てて首を横に振る。そしてなんとか落ち着きを取り戻し、蔵之介に促されて向かい側の席に着いた。

「ほな、とりあえず頼んでええ?」
「は、はい。もちろん!!」

蔵之介がメニュー表を開いて注文するものを選んでいる間に、隠岐は改めて目の前の人物を見つめる。

(ほんまにかっこええなぁ……。顔ちっちゃいし、足長いし、スタイルええし……)

「隠岐くんは何にする?」

優しく微笑まれ、隠岐は我に返る。

「あっ……はい!えへ、蔵之介くんは何頼むんですか?」
「俺はぁ、これとこれとこれと〜」

楽しそうにメニューを指差す蔵之介を見て、隠岐は「ああ、可愛い……」と心の中で呟く。

「あとこれも!」

にこーっという効果音がつくくらい満面の笑みを浮かべる蔵之介を見て、隠岐は「ぐぅ……」っと声にならない叫びをあげた。

「どないしたん?やっぱ体調わるい?」
「あ〜いえ、違います。ちょっと持病の発作が……」
「発作!?え、大丈夫??病院行ったほうがいいやつ??」
「あ、あはは。大丈夫です!多分すぐ治りますから」

蔵之介の可愛さに悶えて発作を起こしたなんて言ったら、ドン引きされてしまうだろう。隠岐は誤魔化すように笑って店員を呼び、注文をした。



***



運ばれてきた料理を食べ、会話も弾む。時折蔵之介が「隠岐くんって話おもろいなぁ」と言ってくれる度に、隠岐は嬉しくなった。

「蔵之介くんって結構食べるんですねぇ」

隠岐は蔵之介が食べている量を見て驚いた。

「ん〜、俺食べるの好きやねん!」

(カワイイーーーーーーーッッ!!!!!!!!)

キラキラした笑顔で言われてしまい、隠岐はまた心の中で叫ぶ。蔵之介の仕草一つひとつにキュンキュンしていると、蔵之介は「あ、せやった」と何かを思い出したような表情をする。

「こないだのお礼に、プレゼント持ってきたんやったわ」
「え!?」
「はいこれ!隠岐くんイケメンやから似合うと思う」

蔵之介は紙袋の中から綺麗に包装された袋を取り出し、隠岐に差し出した。

「開けてもええんですか?」
「うん」

リボンを解き、包装を解くと、中から黒のバケットハットが出てきた。高級ブランドのロゴが入っていて、オシャレで隠岐の好みのデザインだった。

「え!!これブランドの帽子やないですか!!こんな高いの受け取れませんて!!」
「あ〜……気に入らんかった?」
「いや、そうじゃなくて……!デザインはほんまに好きなんですけど!!……ほんまに貰ってもいいんですか?」
「もちろん!それ隠岐くんに似合うやろなぁって思って買ったんよ。被ってくれたら嬉しいなぁって思うんやけど」

蔵之介はニコニコしながら言う。

(はぁぁぁぁぁ……優しい……嬉しすぎる……生きてて良かった……)

隠岐は胸を押さえ、目を閉じて天を仰いだ。

「ありがとうございます……めっちゃ大切にしますね」
「ふふ、よかった!あのさぁ、隠岐くん俺と友達になってくれへん?」
「……え?」

隠岐は驚いて目を開ける。まさかそんなことを言われるとは思っていなかったのだ。

「俺前からボーダーに憧れとったんやけど、この前隠岐くんが助けてくれた時ほんまにカッコよくて……!もちろん話せんこともあるやろうけど、もしよかったらボーダーについて色々教えて欲しいなって……!」
「あ……そういうことですね。全然いいですよ!」

隠岐はホッとして返事をした。蔵之介は憧れの人なのだ。友達になりたいと思ってもらえるなんて、願ったり叶ったりである。しかし、隠岐は同時に複雑な気持ちでもあった。

(興味あるんは俺じゃなくてボーダーなんやなぁ……)

思わず微妙な顔をすると、蔵之介は慌てて手を振る。

「あっ、ごめん!言い方悪かったけどボーダー関係なく隠岐くんと仲良くなりたいねん!だからそんな顔せんといて!」
「えっ!?」
「あ、もちろん隠岐くんが嫌なら断ってええからな」

隠岐は予想外の言葉に驚く。そしてすぐに頬を緩ませた。

「いえ、へ……えへへ……嬉しいです!こちらこそよろしくお願いします!」

満面の笑みを浮かべ、隠岐は内心でガッツポーズする。

「ほんまに?よかった!隠岐くん俺と同い年やろ?敬語使わんでええよ」
「ええんですか?」
「うん。あと名前も呼び捨てで呼んでくれたらええし」
「そ、それはちょっとハードルが高いんで……」
「あはは、遠慮しすぎやって!」

蔵之介は楽しげに笑う。隠岐もつられて笑ってしまった。

「じゃあ、お言葉に甘えて……タメ口で話すことにするわ」
「ん。よろしくな、隠岐」

ニッコリと微笑む蔵之介を見ながら、隠岐は有頂天になる。

(ああ、やっぱり可愛ええなぁ……。もっと仲良うなれるように頑張るぞーーーーーーー!!!)

その後も楽しく食事会を続けたが、隠岐は蔵之介のことが気になりすぎて何度も視線を向けてしまう。その度に蔵之介が気づいて、ニコッと笑いかけてくれるものだから、隠岐は終始ドキドキしていた。



***



「なんかお前機嫌ええなぁ」

同じアイドルグループの相棒兼親友の清嗣が、蔵之介の顔を見て不思議そうな表情を浮かべた。

「ん〜、この前ボーダーの人に助けてもらったって言うたやん?あれから友達なったねん」
「え!!!社交性ゼロのお前が??嘘やろ?!?」
「ホンマやし!昨日一緒に飯食いに行ったから!!」
「マジで!?どんな奴なん?」
「隠岐っていうんやけど、イケメンで性格も良くてめっちゃいい人やで」

ほら、と昨日解散前に撮ったツーショット写真を見せると、清嗣は驚いたように声を上げた。

「え!?めちゃくちゃイケメンやんけ!こいつ芸能人か何かか?」
「だからボーダーやって!」
「ふ〜ん……。……ん?いや待てよ?俺こいつ見たことあるで」
「え?」
「ライブで見たことあるわ。男ファンってただでさえ目立つやん?そん中でもイケメンで余計目だっとったからよう覚えてる。お前のファンやった」
「えぇ!?!」

隠岐はそんな事一言も……いやでもそれにしては俺が高級料亭予約したりブランド物渡した時、恐縮しきりだったけど驚いてはいなかったような……と蔵之介は混乱する。

「ファンなの隠してたんか……まぁでも最初からファンです!って言われてたら蔵之介もついファン対応モード入ってもうてたやろし、これで良かったのかもしらんけど……」
「まぁ確かにそうやな!隠岐くんも俺のそういう性格見越して黙ってくれてたんかもしれん」

うんうん、と頷く蔵之介。そんな親友に微笑みながら、清嗣は言った。

「何にせよ友達できて良かったな!仲良くしぃや」
「おかんかよ」

はにかみながらも、蔵之介は笑顔で返した。
絶対に蔵之介と付き合いたい隠岐と、隠岐という友達ができて嬉しい蔵之介。二人の恋路はまだ始まったばかりである。








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