アクセサリー


※隠岐蔵

「なぁ蔵之介くん。俺がピアスプレゼントしたらつけてくれる?」

隠岐に突然そう話しかけられ、蔵之介はちらりと隣の隠岐に目線を向ける。
二人でダラダラとソファーに座って過ごす土曜日の午後。隠岐は身体ごと蔵之介の方を向き、いつものニコニコした表情で見つめていた。

「は?……まぁ、気にいるデザインなら普通につけるけど……」
「じゃあ今度買ってくるわ」
「なんやねん急に……」
「蔵之介くんが俺のもんって証つけたいだけ」

さらりとそんなことを言ってのける隠岐に、蔵之介は顔を赤らめる。そして恥ずかしさを隠すようにそっぽを向いた。

「……な、んやねんそれ……キモ……」
「ふふっ、照れてる顔も可愛いなぁ」
「うるさい!もう黙れ!」

蔵之介は耳まで赤くしながら隠岐の腕をぺちっと叩く。その行動さえも可愛らしくて、隠岐はまた笑みを深めた。

「俺いま独占欲丸出しな事言ってんのに、蔵之介くん嬉しいんや?」
「嬉しくないし!適当な事言うな!」
「ほんま〜?」

そう言いながら猫パンチを繰り出してくる蔵之介の手を取り、指を絡める。そのまま引き寄せると抵抗することなく、すっぽり腕の中に収まった。

「か〜わい♡」

ぎゅうっと抱きしめれば、抵抗することもなく素直に受け入れている。それが愛おしくて仕方ない。

「蔵之介くん好きやで〜♡」
「……知ってるし」

ぶっきらぼうに答える声とは裏腹に、絡ませた手をきゅっと握り返してくるところもいじらしい。
こんな風に自分を受け入れてくれてるのだから、もっと甘えてほしいと思うのだが、なかなか素直になってくれない。でもそういうところがまた可愛くもある。

「ピアスどんなんがええ?」
「……」
「シンプルなんも似合いそうやけど、ちょっと遊び心あるんも似合うかな〜とか考えてんねん」
「……」

隠岐の言葉を聞いているのかいないのか、蔵之介は無言のまま繋いだ手に視線を落とす。隠岐はその様子に気づいて、首を傾げた。

「どしたん?」
「……別に」

何か言いたいことがあるような気がして問いかけるが、蔵之介は何も答えなかった。

「なーん?なんか言いたいことあったんちゃうん?」
「……なんもない」

少し迷った後、小さく呟かれた言葉を聞き逃さなかった隠岐は、繋いでいた手を解き、蔵之介の両頬に手を添えて自分の方に向けさせる。そして優しく微笑んだ。

「言わんとキスするで」
「……!?」

突然の行動に驚いた蔵之介だったが、すぐに顔を真っ赤にして隠岐から目を逸らす。しかし隠岐がじっと見つめ続けると、観念したように口を開いた。

「……お揃いがいい……」

消え入りそうな声で告げられた内容に隠岐は一瞬固まる。

「……俺もピアス開けたらええんかな?」
「……そうじゃなくて……」

恥ずかしさの限界なのか、目をぎゅっと閉じながら蔵之介は絞り出すように言う。

「……っ、……指輪……」

そこまで聞いて隠岐は再び固まってしまった。そして数秒経ってやっと理解すると、ぶわっと体温が上がるのを感じる。

(何この子めっちゃ可愛いやん……!!)

普段あまりデレを見せない分、たまに見せるこういう所の破壊力が凄まじい。
隠岐は我慢出来ずに勢いよく抱きついた。

「ちょっ!苦しいって!」
「ごめん無理、可愛すぎて死にそうや」

隠岐はぐりぐりと頭を押し付けるように蔵之介を抱き締める。

「あかんよぉ……俺死んじゃうぅ……」
「勝手に死んどけ」
「ひどっ!」

冷たい態度を取る蔵之介だが、本気で嫌がっているわけではないことはわかっていた。だって耳まで赤いのだ。

「じゃあさ、明日買いに行く?」
「………………行く」

小さな声で肯定されて、隠岐はニヤリと笑う。そして蔵之介の肩を掴み、身体を離すとそのまま唇を重ねた。

「んっ……」

触れるだけの軽いものだったが、蔵之介の口から甘い吐息が漏れた。その反応に隠岐は満足気に笑ってもう一度軽く口付ける。

「蔵之介くんへのプレゼントやから、俺が選んでもええ?」
「……変なやつにすんなよ?」

少し照れたようにはにかむ蔵之介に、隠岐はまた胸がきゅーっと締め付けられる感覚を覚えた。蔵之介の肩に頭を預け、はぁとため息をつく。

「は〜〜〜……好き……」
「はいはい」
「ほんまに大好きやねんて……」
「わかったから」

蔵之介は隠岐の背中をぽんぽんと叩いて宥める。隠岐は蔵之介の肩に顔を埋めたまま、しばらく動かなかった。

「ほんまに好きやで、蔵之介くん」
「しつこいなぁ」
「蔵之介くんは?」
「……すき」

ぽつりと返ってきたその言葉に隠岐はバッと頭を上げる。

「えっ!!?今なんて言ったん!?好きって言うた!!?もう一回言うて!!!!」
「絶対言わん!」
「お願いやって!」
「言わんもんは言わん!もう帰るからな!お邪魔しました!!」

そう言って蔵之介はソファーに置いてあったリュックを背負うと足早にリビングを出ていった。

「嘘嘘嘘照れ隠しでほんまに帰ることある?!蔵之介くん待ってぇ〜!!!」

隠岐は慌てて追いかけるが時すでに遅し。蔵之介の姿は消えていた。

「あっ……もう!!今からがイチャイチャの本番やったのに!!蔵之介くんの照れ屋さんめ〜〜〜!!!」

隠岐の叫び声だけが虚しく響く。隠岐はその場にしゃがみ込み、項垂れるしかなかった。








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