策士水上


※隠岐→蔵

「水上先輩。好きな子に振り向いて貰うにはどうしたらええと思います?」
「……はぁ?」

ある日の生駒隊作戦室。まだ隊員は揃っておらず隠岐と水上、2人だけの状況。
そこで隠岐に突然投げかけられた質問に、水上は怪しげな目を向ける。

「何やねん急に」
「いやーちょっと色々ありまして……」
「ふぅん?まあ別に相談くらいやったら乗るけども」

そう言いながら水上は自分のパソコンを弄り始める。生駒隊のオペレーターである細井が今日は非番のため、今のうちにランク戦のデータを確認しているようだ。

「ありがとうございます。……で、本題ですけど。水上先輩って頭ええですやん?」
「そらおおきに。で?」
「ちょっとアドバイス貰いたいなって思いまして」
「アドバイスねぇ……。とりあえずその隠岐の『好きな子』がどんな子かわからな話始まらんわ」
「……それは、まあそうなんですけど」

なんとも歯切れの悪い回答だ。隠岐らしくないと思いつつも、水上は特に追求せず先を促す。

「で、その子を振り向かせたいんか?」
「はい。できれば付き合いたいと思ってます」
「ほぉー……!?︎」

まさかの告白宣言に水上は思わず椅子からずり落ちそうになった。そんな水上の反応を見て隠岐は慌てて続ける。

「驚かせてすいません。それでですね、相談内容なんですけど」
「はいよ」
「俺の好きな子が最近他の男と仲良さげにしてるんですよね」
「ほう」
「しかもそれがボーダー内でも人気のある奴でして」
「ふんふん」
「そいつ、めっちゃイケメンでついつい可愛がりたくなるような、生意気年下キャラらしいんですわ」
「へぇ〜」

(ヒュースか鳥丸…いや、隠岐の『好きな子』が年上の場合出水あたりもあり得るな)

「……なんか反応薄くありません?」
「気のせいやろ。続けてみ」
「はぁ……。で、人見知りやのにぎこちなくも話しかけてみたりとかして、やたらとそいつの事を気に入ってるから、なんでかなと思って本人に聞いてみたら、『顔がタイプやったから』とか言うんですよ」
「なるほどな〜。それで隠岐はそいつに好きな子を取られると思って焦ってると」
「……そういうことです。そいつより俺と仲良くして欲しいんですよ。なんかいい方法ありません?」

水上は顎に手を当てて考え込む素振りを見せる。

(ボーダー内のイケメンを気に入ってて隠岐とはそこまで仲良くない女子…あの辺か?)

隠岐の言葉から数人にあたりをつけられるが、あくまで予想に過ぎないため確信を得るべく水上は口を開いた。

「ちなみに隠岐はその子のどこが好きになったん?」
「え?あー……多分一目惚れみたいなもんですね」
「ほぉー?一目惚れねぇ」
「はい。見た目も好きだったんですけど、一緒にいるうちに中身まで好きになりました。真面目で努力家で頑張り屋さんなのにそれを鼻にかけたりしないところとか……」

隠岐の話を聞きながら水上は頭をフル回転させる。そしてある人物の顔を思い浮かべていた。

(氷見か?)

隠岐とそこまで仲良くなくて、人見知り。氷見が烏丸を好きな事は知っているが、隠岐によれば「最近仲良くしている」らしい。そこには当てはまらない気がするが、まぁ自分が見ていないだけで最近はそうなのかもしれない。 隠岐の『好きな人』が氷見だと仮定して水上は話を進めた。

「隠岐、お前もうその子と結構仲ええんちゃう?」
「……なんでですか?」
「だってその子人見知りやのに隠岐と普通に話しとるんやろ?年下イケメンとはぎこちないのに。もし隠岐の事苦手やって思ってたら緊張しっぱなしやろうし、そんな事ないならそこそこ距離は縮まってるはずやん」
「確かに!」

水上の意見を聞いて隠岐は目を輝かせる。
氷見は烏丸の事が好きだが、隠岐だって烏丸と張り合えるぐらいイケメンだ。やり方次第で十分付き合える可能性はあるだろうと水上は考えた。

「あとはその年下イケメンより隠岐の方がええなってその子に思ってもらうだけやな。」
「具体的にどうすれば良いんですかね?︎」
「まずその子に隠岐は恋愛対象として見られてるかどうか確かめる事から始めるんやな」
「な、なるほど……!それで、どうやって確認するんですか?」
「そりゃあ……デートに誘うしかないやろ」
「で、デート!?︎」

隠岐は目を見開いて驚いた。「せやで」水上はニヤリと笑う。

「い、いきなりそれはハードル高くないです?」
「そうか?俺は別に隠岐やったらええと思うけどな」
「どういう意味っすか?」

鳥丸と隠岐は似ているとよく言われている。つまり隠岐の顔も氷見にとってはタイプなはずだ。水上は少し間を置いて、ゆっくり言葉を紡いだ。

「隠岐がその子の事を好きなように、その子も隠岐の事を好きかもしれへんで?」
「……!?︎」

隠岐は一瞬固まったが、すぐに顔を赤く染めた。

「い、いやいやいや!!︎それはないですよ!?︎」
「なんで?」
「だって…だって!!!蔵之介くん絶対恋愛対象女の子ですやん!!!」

隠岐の放った一言に、シン…と静まり返る。

「……ん?蔵之介?」
「あっ……」

しまった、という顔をして隠岐は口を手で覆った。

「……え、ちょっと待って?お前の『好きな子』ってまさか……蔵之介なん?」

水上の言葉にこれでもかというぐらい顔を真っ赤にした隠岐は、視線を逸らしながらこくりと小さく頷いた。

(ま、マジか……)

なんの疑いもなく女子だと思って話を進めていたが、まさか男だったとは。しかし言われてみれば蔵之介も人見知りで年下の男(ヒュース)を気に入っている。盲点だった。

「え?隠岐お前蔵之介に一目惚れしとったん?!!?」
「言わんといてくださいよ!!」

水上が驚きのあまり立ち上がりながらそう言うと、隠岐は恥ずかしさに耐えられなかったのか手で顔を覆って俯いた。

「まじか……隠岐が蔵之介に片想いしてるなんて……お前男が好きやったんか……」
「だから言いたくなかったんですよ!!誰にも言わんといてくださいね?」
「当たり前やろ……こんな衝撃的な事実他の奴に言えるかいな……。」

隠岐の恋愛対象が男な事を初めて知り、水上は謎のショックを受けていたが、それを知ってか知らずか隠岐は口を開く。

「俺、別に男が好きなわけちゃうんですよ。今までは普通に女の子が好きやったし。」
「そ、そうなん……」
「でも蔵之介くんを初めて見た時、この人や!!って思って……なんかこう、ビビッときてもうたんですよ……」

苦しそうな、泣きそうな顔でそう告げる隠岐に、水上は胸が詰まった。まだ同性愛に偏見がある世の中。蔵之介を好きになってから、こいつは常に葛藤しながら生きて来たのだろう。それでも蔵之介を諦められない隠岐は、どれだけ辛い思いをしてきたことだろうか。水上は隠岐の頭をポンっと撫でた。

「隠岐、大丈夫やから」

優しく声をかけると隠岐はゆっくりと水上を見た。その目は今にも涙が零れ落ちそうな程潤んでいる。

「俺はお前の事応援しとる」
「水上先輩……」
「ほな、早速蔵之介を落とす方法考えてこか!」

水上が笑顔を向けると、隠岐は目を丸くした。そして、しばらくすると口元に笑みを浮かべる。

「ありがとうございます、水上先輩。頼りになりますわ」

隠岐は嬉しそうに言った。水上はそんな隠岐を見て、心の中で決意した。
隠岐のこの恋がどうなろうと、最後まできちんと見守ろうと。



***



そう決意して長期戦を覚悟したものの、隠岐の恋が成就する日は案外近いかもしれない。
水上はそんな予感がしていた。
隠岐の『好きな人』の正体が判明してから数日。隠岐は水上の的確なアドバイスにより、蔵之介との距離を大幅に詰めることに成功していた。隠岐曰く、「蔵之介くん、最近俺と一緒にお昼食べてくれるようになったんです!」とのこと。
隠岐から聞いた話によると、蔵之介は隠岐の事を誤解して一方的に悪感情を抱いていた。隠岐が近付こうとする度に警戒しており、親友である清嗣がいる時にしか隠岐と会話してくれない事が多かったそうだ。しかし水上によってその誤解は解け、今では隠岐とも仲良くしているらしい。ちなみに、最近自分にも笑いかけてくれるようになったが、その笑顔が大層可愛らしく、笑いかけられるたびにキュンとするのだとのこと。自然に惚気るな。

「せやけど、隠岐も結構頑張るやんけ」
「いやぁ、水上先輩のおかげですよ」

隠岐は照れたように笑う。
隠岐はあれからも蔵之介との距離を縮めようと積極的に話しかけている。隠岐のコミュニケーション能力の高さには驚かされるばかりだ。隠岐は蔵之介の好みを把握しており、蔵之介の好きそうな漫画やアニメを勧めたり、蔵之介の好きなゲームを一緒にやらないかと誘ってみたり、蔵之介が興味を持ちそうな事にどんどん触れていった。蔵之介の方も隠岐に興味が出てきたようで、最近は隠岐に対してかなり心を開いているようだ。

「ほんま凄いわ隠岐は」
「いや〜それほどでもないですよ〜」
「謙遜せんでええよ」

水上が褒めると隠岐はいつも以上にニコニコしながら謙遜してみせる。

「でも隠岐、蔵之介に告白せえへんのか?」

水上がそう聞くと、隠岐は一瞬固まった。
隠岐の蔵之介に対する気持ちはかなり強い。隠岐の話を聞く限り蔵之介もまんざらではない様子なので、付き合える可能性はあると思うのだが……。

「いや、だって……蔵之介くんは女の子が好きなんやし、友達としか思われてないし……」
「……」
「水上先輩おかげでこんなに仲良くなれたから、今はもうこの関係が壊れるのが怖いっていうか……『友達やと思ってたのに』って蔵之介くんに軽蔑されたらとか考えると……怖くて……」

隠岐は俯きながらそう言う。水上はその言葉を聞いて、隠岐の頭を撫でる。

「大丈夫や隠岐、蔵之介がそういう奴ちゃうっていうのは、お前の方がよう知っとるやろ?」
「……」
「隠岐が男…蔵之介の事が好きって知っても、きっと蔵之介は引いたりせえへん。まあもし蔵之介に引かれたら俺ん家来いや!匿ったるわ!」

水上の言葉に隠岐は顔を上げた。その顔は少しだけ明るくなっているように見える。

「ありがとうございます水上先輩……なんか元気出ました」

隠岐は水上に微笑んだ。水上は、なんだかんだ可愛く思っているこの後輩の片想いが上手くいきますように。そう思った。



***



隠岐と水上がそんな話をしていた頃、蔵之介もまた悩んでいた。
隠岐は水上の助言通り、ずっと蔵之介にアピールをしている。そのおかげで蔵之介に自分を意識させることに成功していた。残念ながら、隠岐本人は知らないが。

「なんやぽんすけ。悩み事か〜?俺でよかったら相談乗ったるで」

ちゅーっといちごミルクの紙パックを片手に、清嗣は隣で思い悩む蔵之介に声をかける。

「なんも……」
「隠岐の事?」

なんもない、と言おうとしたところを清嗣の言葉に遮られ、蔵之介はムッとした表情で黙りこんだ。

「ごめんごめん。でもお前わかりやすいわ」
「……分かりにくいってよう言われるけど」
「じゃあ親友の勘やな!」

わはは、と軽く笑い飛ばす清嗣を見て、蔵之介は脱力した。この友人は昔から自分の考えていることを先読みしてくる節がある。蔵之介はため息をつくと、観念して口を開いた。

「……隠岐が、最近変やねん」
「ほ〜、どんな風に?」
「最近俺ら仲良くなったやん?ほんで普通に話しとる時なんやけど、隠岐が妙にニヤけてるっちゅうか……嬉しそうにしてるっていうか」

蔵之介がそう言うと、清嗣はストローから口を離して腕を組んだ。

「隠岐の様子がおかしい原因、なんとなく分かる気ぃすんな〜」
「は?マジで?なんでなん?」

清嗣の言葉に蔵之介は目を丸くして驚く。すると清嗣は、にやりと笑ってみせた。

「隠岐に直接聞いてみたらええんちゃうか?」
「隠岐に聞いたけど『なんでもないよ〜』の一点張りや」
「ふぅ〜む」

清嗣は顎に手を当てて考え込む。
蔵之介の話を聞いていた限りだと、隠岐はまず間違いなく蔵之介に対して好意を抱いている。確かに以前からそういう気配はあった。しかし、最近になってそれが顕著になったように思える。 その事実を蔵之介本人が認識すれば、二人の関係は一気に進展するだろう。蔵之介の気持ちが隠岐にあるのなら、蔵之介と隠岐が付き合う事自体は賛成だ。隠岐は良い奴だし、共にボーダーで戦う仲間でもある。隠岐になら蔵之介を任せられる。

(……でも……)

最近になって蔵之介と隠岐が急接近した事には、間違いなく水上が絡んでいるだろう。しかし水上のアドバイスは的確だが、蔵之介の意思を尊重していない気がする。水上が隠岐を大切に思うように、清嗣も蔵之介の事が大切だ。もちろん仲間として、親友として。蔵之介の気持ちを無視して隠岐と付き合わせる事は絶対にできない。

「蔵之介は隠岐の事どう思ってんの?」
「は?何急に」

怪訝な顔を向けてくる蔵之介に、清嗣は真剣な眼差しで返す。

「隠岐のことは好きか嫌いかで言ったらどっちなん?恋愛対象になるかならないかって意味で」
「え?な、なに?恋愛対象?隠岐が?なんで急にそんな話なんねん……」

隠岐の様子が変だと相談したらいきなり訳の分からない質問をされた、と蔵之介は大いに狼狽えた。

「大体、ただ仲良くしてるだけやのにそんな事考えたら隠岐にも失礼……」
「いいから。もしもの話よ。隠岐がお前の事恋愛的な意味で好きやったらどうする?」

清嗣は有無を言わさぬ口調で問い詰める。蔵之介は眉間にシワを寄せながらしばらく黙り込んでいたが、やがて小さく口を開く。

「……そんな事言われても……隠岐は友達やし、考えた事ない……でも仮に隠岐にそういう意味で好かれてたとして、悪い気はせんと思う」

蔵之介の言葉を聞いて、清嗣は心の中で安堵した。蔵之介がそう思っているのなら、隠岐を応援してもいい。そう思った。



***



「く、蔵之介くん。ちょっと話あるんやけど……ええかな?」

放課後、隠岐は意を決して蔵之介に声をかけた。緊張しながらかしこまって話しかけてくる隠岐に、蔵之介の脳裏に昼間清嗣にされた『隠岐がお前の事恋愛的な意味で好きだったらどうする?』という言葉がよぎった。動揺しかけたがブンブンと頭を振り、すぐに平静を取り繕って隠岐と向き合う。

「……分かった」

蔵之介の返事を聞くと、隠岐は少し安心したような表情を見せた後、ゆっくりと深呼吸をして口を開いた。

「あの、じゃあちょっとついて来て欲しいんやけど…ええ?」
「……おー、」

蔵之介は歩き出した隠岐の後に続いて教室を出た。無言で通りについて行くと、隠岐が足を止める。そこは校舎の端っこに位置する空き教室の前であった。

「……ここ?」
「うん」

隠岐が扉を開けると、中には誰もいなかった。

「……入って」
「おう」

蔵之介が中に入ると、隠岐が後ろ手にドアを閉める。

「……蔵之介くん」
「……」

隠岐の声に振り返ると、隠岐は何かを決意したかのような顔で蔵之介を見つめていた。蔵之介はごくりと生唾を飲み込み、緊張した面持ちで隠岐の言葉を待った。

「俺、蔵之介くんのことが好きです」

隠岐の言葉に、蔵之介は思わず目を見開いた。まさか本当に告白されるとは。清嗣が突然あんな話をしてきたのも、これを見越していたのだろうか。

「隠岐……」

蔵之介は困惑したまま隠岐の顔を見る。隠岐の顔は真っ赤に染まっていた。

「初めて蔵之介くんを見た時からずっと好きでした!これからもっと仲良くなりたいと思ってます!」

隠岐の勢いに押されて蔵之介は一歩後ろに下がる。

「いや、えっと……」
「蔵之介くんは、その、俺みたいな男に好かれて気持ち悪いかもしれへんけど、蔵之介くんの事諦めたくないんです。俺の気持ちに応えて欲しいとは言わん…いやできれば応えて欲しいけどそうじゃなくて…あの、応えてくれなくてもいいので、これからも好きでおっていいですか!」
「ちょ、落ち着け隠岐!」

蔵之介は隠岐の肩を掴み、興奮気味の隠岐を宥めようとする。

「ご、ごめん…言い出したらなんかもう、抑えきれんくなって……」

隠岐は我に返ったのか、申し訳なさそうな顔をする。しかし、蔵之介はそんな隠岐を見て何故か胸の奥がきゅんと締め付けられる感覚を覚えた。

(なんだこれ……)

隠岐の事を恋愛対象として見た事は一度も無い。それなのに、清嗣に隠岐に好かれていたらどうするかと言われてモヤモヤし、実際に隠岐に好きだと言われてから妙な気分になっている自分がいる。

「……隠岐」
「は、はい」
「隠岐の気持ちはよくわかった」
「えっ」
「その、正直隠岐の事は友達やと思ってたからびっくりはしてるけど、俺をそういう風に見てるっていうのは、まあ、嫌やない」
「ほ、ほんま!?」

隠岐は目を輝かせ、身を乗り出すようにして言った。

「お、おう」
「じゃ、じゃあ、付き合ってくれるん?!」
「え?」

隠岐のあまりの食いつき具合に蔵之介が戸惑っていると、隠岐は急にシュンとした様子になり、「やっぱあかんかぁ……」と呟いた。

「分かってる……蔵之介くんは優しいから、俺の気持ちに応えようとしてくれてるだけやもんね」
「……」

蔵之介は悲しげに笑う隠岐の姿を見て、何故だか無性に腹が立った。

「隠岐のアホ!!なんで勝手に決めつけんねん!!」
「えっ!?」

急に怒りだした蔵之介に一瞬驚くものの、すぐに隠岐は持ち返した。

「じゃあ、蔵之介くんも俺のこと好きでいてくれてる?」
「……」

ぐっ、と言葉に詰まる蔵之介を見て、やはり違うのだと隠岐は確信する。

「無理せんでええんよ。蔵之介くんの優しさにつけ込むような真似してごめんなさい」

隠岐はそう言って立ち去ろうとする。

「隠岐」

隠岐の腕を掴んだ蔵之介は、言いづらそうにもごもごと口を動かす。

「俺、隠岐のこと好きかどうかとか正直よく分からんけど」
「……うん」
「今まで誰かに告白されても何も思ったこと無かったのに、さっき隠岐に告白してされた時、正直ドキドキした」
「えっ」
「これって俺、お前の事好きって事?」

照れているのか、赤い顔で眉間に皺を寄せる蔵之介の顔を見た途端、隠岐は頭の中で何かが爆発するら音を聞いた。

「〜ッ!それは反則やってぇ!!!」



***



その後たまたま空き教室の前を通りかかった生徒に、隠岐が真っ赤になった蔵之介にキスする場面を目撃され、二人は付き合い始めたらしいと噂が流れた。が、それが真実かどうかは誰も確かめなかった。確かめるまでもなく隠岐が死ぬほど浮かれており、一目瞭然だったからだ。
ちなみに、照れた蔵之介によって隠岐が説教された話はまた今度。






【後日談】

「ちなみに、蔵之介が『顔がタイプ』っつって気に入ってた年下のイケメン後輩ってヒュースで合ってる?」

隠岐と蔵之介が無事くっついたのを知り、協力者である水上と清嗣はお疲れ様会と称して食事に来ていた。

「あー、ハイ。そうっすね」

清嗣はもぐもぐとお好み焼きを頬張りながら言う。

「は〜!蔵之介も男が好きやったんか?」
「や、ちゃいますわ」

ごくんと口の中のものを飲み込んでから答える。

「ヒュースくんの見た目も言動もぽんすけが好きなゲームのキャラに似てるらしくて。それでやたらとヒュースくんのまわりをウロチョロしとったんですわ」
「なんやそんな理由かい!」

水上は呆れながらお好み焼きにコテを突き立てる。

「でもまぁ…隠岐も蔵之介も、収まるとこに収まってよかったな」
「そうですねぇ……」

蔵之介の顔を思い浮かべる。
蔵之介に恋人ができたことを喜んでいいのかわからない複雑な感情だ。

「ま、今日は飲もうや!」
「ソフトドリンクっすけどね」

カゲ〜!烏龍茶おかわり!と影浦に注文する水上を見て、清嗣は小さく笑った。








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