手料理が食べたい!


※隠岐→蔵

「この前蔵之介くんに料理作ってもらってんけどな」
「……は?」

いつも通り唐突に始まった生駒の話に、隠岐は即座に反応した。

「そん時になんか…ライスコロッケ?とかいうのをご馳走してもらってんけど、あれうまいなぁ!びっくりしたわ」
「ようそんな手の込んだもん作ってくれはりましたね」
「ちょっ……ちょっと待ってください」

いつもの調子で話す生駒と水上の話に割り込み、隠岐は生駒に尋ねた。

「な、なんですか?作ってもらった?」
「おん。ライスコロッケをな。あれめっちゃ…」
「誰にって言いました?」
「蔵之介くん」

その言葉を聞いた途端、隠岐は絶望的な顔をする。

「なんで!?!蔵之介くんの手料理!?俺も食べた事ないのに!!!」

隠岐は怒りに任せて生駒の両肩を掴む。

「なんで黙っとったんですか!!おれにも食べさしてくださいよ!!」
「ななな、なんや隠岐!急にどないしてん!!」

隠岐の形相があまりにも凄まじいものだったため、生駒もたじろぐ。

「落ち着けや隠岐」

水上は興奮する隠岐の方に手を置き、冷静に声をかける。

「だって…水上先輩!」
「イコさんは何も悪いことしてへんやろ」

正論を言われてしまい、隠岐は黙るしかなかった。

「それにしてもイコさん。何でそないな事になったんです?」
「お、おう…いやそれがな…」

生駒は説明した。腹が減りすぎて轟音を鳴らしながら歩いていたらたまたま清嗣と蔵之介に出会ったこと。哀れに思った蔵之介から、自分たちは今から食事にするが一緒にどうかと誘われたこと。食堂に行くものだと思い是非と返すと、何故か江須隊の作戦室に連れて行かれたこと。そこで蔵之介が手料理を振る舞ってくれたこと。

「う、羨ましい……」

生駒の話聞き、開口一番隠岐はそう言って項垂れた。

「おれも腹から轟音鳴り響かせながら江須隊の作戦室の近くでウロチョロしてたらええんかな…」
「ただの不審者やろ!やめろ」

やけくそといった風情の隠岐に、水上は即座にツッコミを入れた。

「なんでも、蔵之介くんは料理が趣味みたいでな?あの日もライスコロッケの仕込みまで終わらせてて、あとは揚げるだけの状態やったから『出来立てどうぞ』ってアツアツのやつすぐ出してくれたわ。それがもうめちゃくちゃうまくて」

生駒はその味を思い出しているのか、どこか満足気に頷いていた。

「えー……ずるいなぁ……ずるいわぁ……イコさんほんま羨ましすぎますわ……」
「そんなに羨ましい羨ましい言うんなら、頼んで作って貰えばええやんか」
「無理ですよ!!!」

隠岐は叫んだ。

「蔵之介くんは俺に冷たいんですよ!第一どうやって頼むんです!?」
「それは……せやなぁ……普通にお願いしたら断られるかもしれんしなぁ」

生駒も同意する。同意されて当たり前の話なのに、隠岐は少し傷付いた。

「う〜ん……あ、じゃあウボォーくんに頼んでみたらどや?!」
「え?清嗣くん?」
「せや。ウボォーくん、基本的に買い弁らしいんやけどな。たまに蔵之介くんの気が向いた時はお弁当作ってくれる言うてたわ。だからそれを…」
「愛妻弁当…!!」

隠岐は絶望のあまり、手で顔を覆い天を仰いだ。

「新妻の蔵之介くんが愛情込めて作ってくれた愛妻弁当…!?!??清嗣くんは前世でどんな徳を積んできたんです!?!??おれにも作ってほしい!!!」
「いや、新妻でも愛妻弁当でもないやろ」
「晩飯の残りもんが多かった時だけ作ってくれる言うてたで」
「それでも十分羨ましいです!!」

隠岐は吠え続けた。

「はいはい。話戻すで。で、イコさんはその愛妻弁当をウボォーから分けて貰えばええんちゃうかって言いたかったんですね?」
「せやせや。ウボォーくんなら隠岐も頼みやすいんちゃうか?」
「イコさん……!」

なるほど。そういう事か。隠岐には目の前の生駒が救世主に見えた。さすが自分達の隊長。頼りになる。

「分かりました!おれ頑張ってみます!!」
「おお!頑張れ隠岐!!」
「はい!!」

こうして、隠岐は清嗣に蔵之介が作ったお弁当を分けてもらうという目標を掲げ、奮闘する事となった。



***



「え?ごめん無理」
「そんなぁ〜!!」

情けない声を出す隠岐に、清嗣は困った顔をする。

「ごめんやけど今日の弁当はあげられへんわ。なんせ今日は唐揚げ弁当やからな。」
「そこをなんとか〜!!」

両手を合わせて懇願する隠岐に、清嗣は困惑しきりだった。朝おはようと挨拶してくるや否や、後に続く言葉が「今日買い弁じゃなくてお弁当!?」で「お願いします!俺の昼飯と交換してください!!」と続き、冒頭に至る。

「隠岐は何をそんなに必死になっとるん?弁当がそんなに食べたいんか?」
「食べたい!!!」

即答である。

「清嗣くんは蔵之介くんの手料理食べた事あるんやんな?」
「あるって言うか…ほぼ毎日食ってるけど」
「えぇ?!!?」

隠岐がいきなり奇声を上げたのに驚き、清嗣は肩をびくりと震わせた。

「ま、ま、毎日?蔵之介くんの手料理を…?」
「ほぼ、な。あいつの気が向かん時は適当に買いに行くけど」
「羨ましい!!!!」

いつも穏やかな隠岐が、気が狂ったとしか思えない取り乱し方をしているのに、清嗣はシンプルに恐怖を覚えた。

「隠岐、お前ちょっとおかしいで」
「おかしくないです!!俺だって蔵之介くんの手作りご飯を食べてみたい!!」
「あー……なるほど?」

怒涛のように訳の分からない詰められ方をし、目を白黒させるばかりで内容をよく理解していなかった清嗣だったが、ここでやっと合点がいった。
そういえばこいつは蔵之介に片想いしていたんだった。本人からそう打ち明けられた事はないが、側から見ていてバレバレである。

「悪いけど、これは渡されへん」
「……」
「やから、今日の晩飯一緒に食わん?今日は中華らしいわ。唐揚げはフライングで作ってもらってん」

あはは、と笑う清嗣に、隠岐は感動のあまり呟いた。

「神……?」
「もっと褒めてええよ」

隠岐はその時清嗣が本気で救いの神に見えた。先ほどまでの恨みつらみは無かったことにし、清嗣の優しさに感謝した。それはそれとして毎日蔵之介の手料理を食べているのは妬ましい事この上ないが、とにかくその日、隠岐は初めて蔵之介の手料理を食べる事が出来たのであった。



***



「いや〜すまんなぽんすけ!隠岐と中華の話しとったら盛り上がってもうて!」
「はぁ…もうええけど1人増えるならもっとはよ言えよな〜」

放課後。隊での用事など、やるべきことを全て済ませた後清嗣に連れられ江須隊の隊室に向かうと、そこには前髪をヘアピンで上げ、黒いエプロンをつけた不機嫌そうな蔵之介がいた。

「……めっちゃ可愛い……」

隠岐は思わずぼそりと本音を漏らしたが、蔵之介には聞こえていない様子だった。隠岐のすぐそばにいた清嗣にはバッチリ聞こえていたが。

「あ!そうや蔵之介くん!突然お邪魔してえらいすんません。つまらないものですがこちらを……」

と言い、隠岐は紙袋を差し出した。

「……!真心堂のフルーツ大福!?」

先程まで不機嫌そうな顔をしていた蔵之介は、その紙袋の中身を見るや否や目を輝かせた。

(うぅっ!!かわいい!!)

隠岐が見る蔵之介の顔といえば、いつも不機嫌そうな顔か蔵之介と過ごしている時の悪戯っぽい表情。もしくは真顔。この3種類だったので、初めて見るキラキラと嬉しそうな顔に内心大暴れしていた。

「隠岐!わざわざ悪かったなぁ!今お茶出すから座って待っとけや!!」

紙袋を手に嬉しそうにキッチンに駆けていく蔵之介は本当に愛らしく、隠岐は幸せいっぱいになった。

「清嗣くん……」
「何?」
「手土産のアドバイスくれてありがとう……」
「どういたしまして」

隠岐は後日、清嗣にお礼と称して高い焼肉を奢ったという。



***



「あぁだからちゃうって!も〜下手くそやな!」
「ごめんなぁ蔵之介くん」

ウキウキとお茶の準備をしてきた蔵之介にときめき、幸せそうに好物の大福を頬張る蔵之介にときめき、「お前案外ええ奴やな」と笑いかけられてときめき。かなり心臓に悪くも幸せな時間を過ごした後、「いきなり人数増えたから餃子の餡追加で作ったわ。これから3人で包むで」という蔵之介の言葉を皮切りに、3人での餃子作りが始まった。

「ほら、ちゃんと見ときや?ここをこう摘むやろ?」
「うんうん」

隠岐はふやけきっただらしない表情で、一生懸命餃子の作り方を隣で教えてくれる蔵之介をじーっと眺めていた。

「おい!聞いてんのか!」

至近距離で睨んでくる蔵之介だが、隠岐は一向に気にしていない。むしろこんなに近くで蔵之介を見れるなんて役得だとさえ思っていた。

「いつも料理せんから難しくて」

(だとしてもあんだけ教えられたら多少は出来るようになるやろ……)

隠岐の向かい側に座りながら黙々と餃子を包む清嗣は、内心でツッコミを入れた。

「はぁ…もう。隠岐、手ぇ貸せ」
「え!?」

一向に埒が開かないので元来短気な性格の蔵之介はすぐ堪忍袋の緒が切れ、隠岐の手を乱暴に掴むと自分の手を重ね合わせ、そのままやり方を教える。

「く、蔵之介くん、近……」
「ええから聞けって!!こっちの手のひらでひだを作って、指で皮の縁を掴む!ほら!!」
「あ、あかん。頭パンクしそう」
「お前の脳みそニワトリぐらいしかないんか!!?」

あまりにも近い距離感と、蔵之介の匂いや体温にキャパオーバーした隠岐は真っ赤になり、ついには机の上に突っ伏してしまった。

「マジでダウンした。嘘やろ?ポンコツすぎん?ようスナイパーやれとんな」
「ぽんすけ。そうちゃうねん。そうちゃうのよ。」

清嗣は内心で隠岐に合掌しながら、あまりに健気で報われない彼を哀れに思い、彼の恋路を自分のできる範囲で応援する事に決めたのであった。



***



「あ〜腹いっぱい」

満足げに蔵之介が呟き、両手を合わせて「ご馳走様でした」と唱えた。その様子にも隠岐は胸を撃ち抜かれ、もはや言葉が出なかった。食事前も頂きますと丁寧に手を合わせていたし、育ちが良いんだなと隠岐は蔵之介の新しい一面を知れて嬉しくなった。

「蔵之介くん、すごいよう食べたなあ」
「そうか?」
「こいつ見た目に反して大食漢なんよ」

唐揚げに餃子、麻婆豆腐に八宝菜と酢豚とチャーハン。ちょっとしたパーティーレベルで様々な中華料理を作り上げた蔵之介は、その全てをぺろりと平らげたのだ。ちなみに蔵之介が美味しそうにぱくぱくと全てを平らげていく様にも隠岐はキュンとしていた。今日だけで今までに知った蔵之介の情報量を遥かに超えるほど、この数時間で隠岐は蔵之介について知れた気がした。

「隠岐、ぽんすけの料理どうやった?」
「!めちゃくちゃおいしかった!」

これは本心だ。好きな人が作るものならなんでも美味しいとは思うが、それだけではなく単純に蔵之介は料理がうまかった。

「ふふん!まぁ〜な!!」

蔵之介は得意げに笑うと、ソファの上でふんぞり返った。

(得意げな蔵之介くんも可愛い〜!!)

そんな様子に隠岐はまたもや悶えそうになる。

「ンッ、ン"ンッ…蔵之介くん、ご飯作ってくれてありがとうなあ。今度お礼に何か奢るわ〜」

お礼という名目で、さりげなく蔵之介との食事の機会を作ろうとする隠岐に、清嗣は内心拍手を送った。

(隠岐お前…意外とやるやんけ!)

「別にええわ。俺が好きでやってる事やし」
「でも、こんなにご馳走してもらって悪いやん……」
「ええて!大福貰ったし!」

ニコッと笑って隠岐を見る蔵之介。お礼という名目で2人きりで食事に行く機会は失ってしまったが、蔵之介の笑顔が見れたからいいか…と隠岐が思ったところで、蔵之介から爆弾が落とされた。

「手土産、またええやつ持ってくるならいつでも食いにきてええぞ」
「へっ?」

一瞬時が止まったかのように静まり返り、数秒後。
隠岐は目を見開いて「ホンマに!?」と思わず立ち上がった。

「ほんまにええの?毎日来てええ?!!?」
「いや確かにいつでもとは言うたけど!!お前どんだけ来るつもりやねん!!ちょっとは遠慮せぇ!!」
「蔵之介くんの手料理毎日食べたい!!」
「子供か!?」

キャンキャン騒ぐ隠岐を驚いたような呆れたような複雑な心境であしらいながら、はぁと蔵之介はため息をついて言う。

「ま〜…ええっちゃええけど。毎日来るなら客扱いせんからな。作るの手伝えよ」
「喜んで!!!!」

手伝いということは、またあの餃子の包み方を教えてくれた時のような、至近距離でのドキドキ密着チャンスがあるかもしれないし、何より長い時間蔵之介と一緒に居られるという事だ。想像しただけでも幸せすぎて、隠岐はニヤケ顔を抑えられない。

(この調子やと隠岐の恋路は案外早く叶うかもなあ。良かったなぁ隠岐!!)

清嗣は内心で隠岐を応援しつつ、その横顔に優しい視線を送る。

「あ、でも客扱いはせんけど手土産は持ってこいよ」
「もちろんです!!」

ジャイアンみたいな事を言う蔵之介に、隠岐は満面の笑みで答えた。



***



「ほれ。隠岐の分」
「え!?」

次の日。登校すると蔵之介は隠岐のクラスまで赴いた。朝から蔵之介に「よぉ。」と挨拶されただけで有頂天になっていた隠岐は、紙袋を差し出してくる蔵之介に目を丸くした。

(これ、こ、これはまさか、噂の蔵之介くんの愛妻弁当では!?!!?!)

「昨日の残り物詰め合わせた弁当。というか弁当用に最初から取り分けてたんやけど。要らんかったら俺が…」
「いる!!いります!!!ありがとう!!!いただきます!!!」

隠岐は蔵之介の手からお弁当箱を奪い取ると、大事そうに抱え込む。蔵之介は「お、おう…」と引き気味だったが、そんなに自分の作った飯がうまかったのか?と満更でも無い気持ちだった。

「ほなそれだけ。使い捨ての容器に詰めてるから。じゃあな」

それだけ言って蔵之介はさっさと自分のクラスに帰ってしまう。その背中を隠岐はぽーっと頬を染めて見送った。

「……」
「……き、おい、隠岐?」
「なんか顔赤いぞ?」
「……!い、いや!なんでもあらへん!」

しばらく突っ立っていたが、クラスメイトに話しかけられて我に帰ると、隠岐は慌てて席に着く。そしてソワソワしながら午前中の授業をこなすと待ちに待った昼休みになり、隠岐はいそいそと早速蔵之介のお弁当を広げてみる。昨日のおかずが綺麗に詰め込まれ、彩りを考えてかレタスやトマトなどの野菜も添えられていた。几帳面な性格が見て取れるそのお弁当に、隠岐はまた新しい一面を知れたと嬉しくなった。

「ん?隠岐、今日手作り弁当なの?珍しいじゃん。てかうまそーー!」

隠岐の隣に座るクラスメイトが隠岐の広げているお弁当を見てそう言った。そうだろうそうだろう。蔵之介くんは料理上手なのだ。と隠岐は誇らしい気分になる。
「唐揚げもーらい!」と言いながら手を伸ばしてくるクラスメイトの手首を掴み、隠岐は地を這うような低い声で告げる。

「…………これ、俺のやねんけど」
「え、あ、うん。知ってる……よ?」

隠岐のあまりの迫力に、クラスメイトの顔色がサッと青くなる。

「手ぇ出さんといてや?」
「すみません……」
「わかればええんよ」

隠岐はいつもの調子に戻ってニコッと笑うと、掴んでいた手を離す。

「お、隠岐…?今めちゃくちゃ怖かったぞ…?」
「自分がおれの愛妻弁当に手ぇ出そうとするからやんか〜」
「え!?愛妻弁当!?!!」
遠巻きに隠岐の様子を伺っていた女子達が、クラスメイトの声にザッと一斉に振り返った。

「せや。これ好きな人が作ってくれたお弁当やねん。羨ましいやろ?」
「好きな人の手作り弁当!?!!?」

途端、クラスは主に隠岐に片想いしていた女子達による阿鼻叫喚に包まれた。

「ええええええ!!!」
「隠岐くん好きな人いたの?!?」
「ショックなんだけど〜!!」
「あ"ぁ"〜!!失"恋"し"た"〜!!」

地獄絵図のようになっている教室の一切合切を無視し、隠岐は目の前の弁当に集中する。唐揚げを一つ口に運び、味わいながらじっくりと咀嚼する。瞳を閉じれば、エプロン姿の蔵之介が『美味い?』と微笑みながら聞いてくる。

(はぁ…新妻の蔵之介くんが俺のために作ってくれた愛妻弁当…!蔵之介くんの作るご飯は最高や!!)

ツッコミ役がいないため、隠岐の脳内はノンストップであった。

「隠岐〜!!隠岐ってば!!隠岐!!」
「なんやうるさいな」

隠岐はハッと目を開けると、クラスメイトが心配そうな顔でこちらを見つめていた。

「お前大丈夫かよ……。さっきから呼んでんだぞ」
「あーごめん。考え事しててん」
「どんな?」
「内緒」

その後もじっくり蔵之介が作った弁当を味わいながら幸せそうにする隠岐をみて、隠岐は彼女にベタ惚れだだの、隠岐の彼女は料理上手だの、あの隠岐をここまで骨抜きにするなんて、彼女は相当な美少女だ、だのとクラスメイトはひそひそ噂した。

後日、隠岐の愛妻弁当事件は噂になった。クラスメイトの噂の尾鰭付きで。そんな中、また気まぐれに弁当を作ってきた蔵之介が隠岐に弁当を渡すところが目撃され、隠岐がベタ惚れしているという噂の『彼女』は隣のクラスの蔵之介だと大騒ぎになり、「隠岐ィ!!!」とブチ切れた蔵之介が隠岐のところに怒鳴り込ん来たのは別の話である。



***



「それにしてもさぁ、隠岐が彼女に愛妻弁当作ってもらってるって噂が流れんのはまぁわかるわ。あいつモテるしな。でも渡してるのが俺ってなったら『なんや友達か』ってならん?なんで『彼女じゃなくて彼氏だった!』になんねん。なぁ?」

心底不可解そうに愚痴る蔵之介に、清嗣は苦笑した。

「まぁ、噂って大体適当やし。いちいち突っ込んでてもキリないやろ」と無難に返すと、それもそうか…と蔵之介は納得した。
隠岐が弁当を貰うたび心底嬉しそうにするからそういう噂が流れたのだろうと清嗣は思ったが、あえて口にはしなかった。

「それより、今日の晩飯何?」
「あー、今日はなぁ…」








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