テストと節分 | 作・ぽんすけ

期末テストを目前に控えた2月の頭。江須隊の作戦室ではテスト前恒例の行事が行われていた。

蔵之介「はぁ〜……こんなん将来必要ないやろ……なんで勉強せなあかんねん」
清嗣「もうそれ言うの今日5回目やで」
網走「将来必要なくても今テストに必要やからね」

そう言って網走は蔵之介を机に向かわせようとするも、彼はなかなか動こうとしない。

蔵之介「だってこんなもんやって何になるん?どうせ大学行っても同じことするだけやんか。そん時役に立つならええけど……」
清嗣「お前またそんなこと言うて!いい加減にせえ!」
網走「まあまあ落ち着きぃや清嗣くん。クラがそう思うのも無理ないわ。俺も昔はそう思ってたし」
蔵之介「網走先生まで!?︎」
網走「でもな、高校のテストって社会に出た時に意外と役に立ったりするんよ。もちろんそれだけじゃなくて大学での勉強にも繋がるんやけどな。だからとりあえずやってみいひん?」
蔵之介「えぇ?……うーん……わかった……」

網走の説得により渋々といった様子で蔵之介は参考書を開いた。しかし数ページ捲ったところで手を止めてしまう。

蔵之介「……これほんまにやる意味あるん?」
清嗣「お前まだそのセリフ言っとるんかい!もうちょっとやる気出さんかい!」
蔵之介「嫌やーー!!勉強なんかやりたない!!えさん!!助けて!!」
江須「……フガッ」

ソファーでシロクマのぬいぐるみを抱きしめ、スヤスヤと気持ちよく寝ていた江須は突然泣きついてきた蔵之介に目を覚ました。そして状況を理解するために辺りを見渡す。

江須「……?なに?」
蔵之介「えさあああん!!!」
江須「ぽんすけうるさっ」
蔵之介「えさん!勉強したくない!助けて!!」

心底情けない理由で泣き付いてくる蔵之介だが、江須は特に気にした様子もなく、うーんと伸びをした。

江須「ん〜…じゃあなんか気分転換でもする?」
蔵之介「気分転換?例えばどんなん?」
江須「そうだなぁ…………あ、もうすぐ節分だし豆まきは?」
蔵之介「豆まき!?︎やりたい!!豆まいたら勉強頑張れる気がしてきた!!」
清嗣「現金な奴め……。」
網走「まぁでもそれで勉強するなら付き合ったってもええかなぁ」

2人は呆れたような顔をしながらも、江須の提案に賛成した。
何故か隊室に置いてあった鬼の仮面を装着し、準備万端となった4人はそれぞれ豆の入った枡を手に持ち、円になった。

網走「いくでー」

4人が一斉に掛け声とともに豆を投げると、それらは四方八方に飛び散り、床や壁に当たってパチンという音を立てた。

蔵之介「オラァ!死ねぇ!!」
清嗣「いった!!お前節分ご存じないわけ?!」
蔵之介「知るか〜!ストレス発散じゃ〜!」
清嗣「は?調子乗んな!!」
蔵之介「おい!お前は本気出すなや!俺のこと蜂の巣にする気か?!」
網走「2人とも元気やなぁ〜」
江須「鬼は〜そと〜」

豆まきというよりはサバゲーのようになってきた蔵之介と清嗣、それを見守る網走、マイペースに豆を撒く江須。場は混沌を極めているが、これが江須隊の日常風景でもあった。

網走「よし!その辺で終わりにしよっか!」
清嗣「結局ほとんどぽんすけしか投げてへんやんけ……」
蔵之介「ふふん!ほら見てみぃこの豆の数!!すごいやろ!!」
江須「……ふぅ終わった」

あたり一面には豆という豆が散らばり、足の踏み場もないほどだ。掃除をするにしても少し時間がかかりそうである。

網走「とりあえず片付けよか。みんな手伝ってくれる?」

3人はコクリと首を縦に振って返事をし、網走の指示に従って豆拾いを始めた。

清嗣「……ぽんすけお前後先考えずに投げすぎやろ。全然片付け終わらんねんけど」
蔵之介「お前もノリノリやったやんけ」
網走「あかんわ……ちょっと休憩しよか」

そう言って4人でソファの方へと移動すると、今度は雑談が始まった。話題は主にテストについてである。

網走「期末試験まであと1週間くらいやけど……クラは今回どうなん?」
蔵之介「まあまあやと思う」
清嗣「お前絶対それアカンやつやろ……」
蔵之介「でも留年は回避できる自信あるわ。たぶん」
清嗣「目標が留年回避は低すぎるやろ!太刀川さんみたいになってええんか!」
蔵之介「別にええやろ。あの人大学行っとるけど普通に単位落としたり授業出てない時もあるらしいし」
清嗣「悪い大人の見本がすぐ近くに!!」
網走「まぁまぁ。とりあえず今回は赤点取らんかったらええってことやんな?」
蔵之介「せやな。俺中間もそんなに悪くなかったから大丈夫ちゃう?」
網走「赤点ギリギリを悪くないとは言わんけどね……」
清嗣「……そういやえさんは勉強得意なんか?頭良さそうなイメージあるけど」
江須「…………えっと」

江須は困ったように目を逸らす。

網走「洋介くんは苦手やで」
清嗣「え!?︎意外やな!?︎」
江須「……あんまり好きじゃない」
網走「でも成績は優秀やでなぁ。学年順位はいつも上位やで」
蔵之介「えっすご」
江須「……勉強は嫌いだけど」
清嗣「ぽんすけは見習えよ!」
蔵之介「えさんも勉強嫌いやのにどうやって勉強しとるん」
江須「終わった後にご褒美があると頑張れる」
網走「あぁ〜たしかに。蔵之介もご褒美あればやる気出るん?」
蔵之介「終わった後と言わず今欲しいけど?」
清嗣「お前……」
網走「……ん〜……じゃあ次のテストで全部平均点超えたら好きなもん奢ったります!」
蔵之介「ほんま?!やった!!」
網走「基準甘すぎません?」
江須「……頑張れ」
蔵之介「よっしゃー!頑張るで!!」
網走「単純やなぁ〜」
清嗣「網走先輩の負担がデカすぎる気がするけど……やる気でたならええか!」
網走「じゃあ片付け再開しよか!終わったら勉強な」
蔵之介「はい先生!!」

黙々と豆を片付け終え、今度はすんなり机に向かう蔵之介。そしてその後ろでは清嗣と網走が苦笑いを浮かべていたのだった。








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